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診断(要約)
2.3
エルニーニョ現象
背景
エルニーニョ現象は、数年に一度、中部太平洋赤道域から南米沿岸までの広い海域で海面水温が
平年に比べて高くなる現象で、日本を含む世界各地の天候に大きな影響を及ぼす。
エルニーニョ現象とラニーニャ現象
データ
項目
期間
視点
太平洋およびインド洋熱帯域の
海面水温・表層水温、風、外向き
長波放射量、南方振動指数など
64 年間(1949~2012 年)
2007 年から 2012 年の状況
2009/10 エルニーニョ現象
2010/11 ラニーニャ現象
海面水温の監視海域と南方振動指数に用いる気圧の観測地点
エルニーニョ監視海域(NINO.3)の海面水温でエルニーニョ/ラニーニャ現象の
発生・終息を定義している。
診断
2006 年秋から 2006/07 年冬には、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差(「基準値と
の差」と略す)の 5 か月移動平均値(「NINO.3 監視指数」と略す)が 5 か月間+0.5℃以上となっ
たが、気象庁の定義するエルニーニョ現象の発生には至らなかった。2007 年春から 2008 年春には
ラニーニャ現象が発生した。2009 年 1 月と 2 月にも「NINO.3 監視指数」が-0.5℃以下になった
がラニーニャ現象の発生には至らなかった。
2009 年夏から 2010 年春にかけてはエルニーニョ現象が発生した(2009/10 エルニーニョ現象)
。
発生期間の 4 季節は平均よりやや短く、「基準値との差」の最大値(+1.4℃)は、特に大きかった
3 回のエルニーニョ現象(1972/73 年、1982/83 年、1997/98 年)を除く過去 10 回の平均と同じ値だ
った。
2010 年夏から 2011 年春にかけてはラニーニャ現象が発生した(2010/11 ラニーニャ現象)。発生
期間の 4 季節は平均よりやや短く、
「基準値との差」の最大値(-1.6℃)は、1949 年以降の 14 回
のラニーニャ現象のなかでは 5 番目に大きかった。発生期間中の 2010 年 12 月には南方振動指数
が 1973 年 11 月に次ぐ大きな値になるなど、大気の監視指数にラニーニャ現象時の傾向を強く示
す値がみられた。
その後は 2011 年秋から 2011/12 年冬にかけて「NINO.3 監視指数」が 5 か月連続して-0.5℃以
下となったがラニーニャ現象の発生には至らず、2012 年の夏には「NINO.3 監視指数」が 2 か月連
続して+0.5℃以上となったがエルニーニョ現象の発生には至らなかった。
日本の天候との関係では、九州北部地方から東海地方にかけての梅雨明けが記録的に遅れた
2009 年夏および冬型の気圧配置が弱く全国的に高温となった 2009/10 年冬の特徴に 2009/10 エルニ
ーニョ現象の影響が現れていると考えられる。また、統計を開始した 1898 年以降の第 1 位の高い
記録になった 2010 年夏の日本の平均気温の一因には、春まで発生していたエルニーニョ現象と、
この夏に発生したラニーニャ現象の合わさった影響の可能性が考えられ、2010 年 8 月から 9 月の
全国的な高温および 2011 年1月の西日本を中心とした全国的な低温の一因に 2010/11 ラニーニャ
現象の影響が考えられる。
エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差(℃)
細線は月の値、太線は 5 か月の移動平均により月々の変動を滑らかにした値を示す。エルニーニョ現象の期間を赤で、ラニーニ
ャ現象の期間を青で示している。
エルニーニョ現象_ :
(ラニーニャ現象)
用語
海面水温の基準値
:
エルニーニョ監視海域:
熱帯域__
:
南方振動指数
_:
外向き長波放射量
:
数年に一度、中部太平洋赤道域から南米沿岸までの広い海域で海面水温が平年に比べて高
く(低く)なる現象。気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の 5
か月移動平均値が 6 か月以上続けて+0.5℃以上(-0.5℃以下)となった場合をエルニー
ニョ現象(ラニーニャ現象)の期間としている。
エルニーニョ/ラニーニャ現象よりも長期的な海面水温の上昇傾向の影響を除くために、平
年値の代わりに基準として用いる比較対象の海面水温値。エルニーニョ監視海域の海面水
温の基準値は、対象とする年月の前年までの 30 年間の各月の平均値。
上記項目の図中の NINO.3 で示される北緯 5 度~南緯 5 度、西経 150 度~西経 90 度の海域。
赤道を中心に両回帰線に挟まれた範囲(北緯 23.5 度~南緯 23.5 度)の海域。
南方振動指数はタヒチとダーウィンの地上気圧の差を指数化したもので、貿易風の強さの
目安の 1 つである。正(負)の値は貿易風が強い(弱い)ことを表している。
地表面や雲からの赤外線のエネルギー量。対流活動の強さの指標として使用しており、小
さい値ほど背の高い積乱雲があることを示している。
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