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エボラウイルス感染症 アウトブレイクに関する情報
「INFECTION CONTROL」誌 臨時 web 速報 必読! エボラウイルス感染症 アウトブレイクに関する情報 自治医科大学附属病院 感染制御部長 森澤雄司 西アフリカ地域(ギニア,リベリア,シエラレ れまでの情報によれば,万一,日本にエボラウイ オネ,ナイジェリア[8 月 16 日現在])で過去最 ルス感染症の症例が入国したとしても,医療機関 大のエボラウイルス感染症によるアウトブレイク における適切な感染対策により社会的な流行とな が発生しています.世界保健機関(WHO)をは る可能性はないと考えられます. じめとする世界的な協力によって封じ込めが図ら ここでは念のため,日本の病院・医療機関で感 れていますが,現地の社会資源や社会情勢のため 染対策を担当するスタッフのために,知っておき にアウトブレイクはまだ進行しているようです. たいエボラウイルス感染症のポイントを表 1 にま WHO は「国際的な公衆衛生上の緊急事態(public とめます. health emergency of international concern, 今回のアウトブレイクはザイール・エボラウイ PHEIC)」に該当すると認定しました.多くのメ ルスによることが確認されており,致死率は約 ディアはこれを「非常事態宣言」と喧伝していま 55%と報告されていますが,わが国にとっての脅 す.しかし,現時点(8 月 16 日現在)でエボラ 威となる可能性はきわめて低いと考えられます. ウイルス感染症は日本の一般社会に対して脅威を 正しい情報に基づく冷静な対応が求められていま もたらす可能性はほとんどありません.また,こ す. 表1 エボラウイルス感染症のポイント ・エボラウイルス感染症の症例は発症後から感染力を生じるとされており,潜伏期には感染性がないと考えられていま す. ・血液・体液との直接接触により感染伝播するため,適切に個人防護具(手袋,ガウン,マスク,フェイスシールド) を着用すること(接触・飛沫予防策)により感染を防止できます. ・空気感染伝播を確定する報告はありません. ・エボラウイルス感染症を疑うポイントは,①発症前の 3 週間以内にエボラ出血熱が流行している西アフリカ地域(シ エラレオネ,ギニア,リベリア,ナイジェリア)から帰国した患者に,②体温 38.6℃を超える発熱,さらに頭痛, 筋肉痛,嘔吐,下痢,腹痛,原因不明の出血などの臨床症状を認めた場合ということになります. ・アフリカから帰国した発熱患者がすべてエボラウイルス感染症のリスクがあるわけではなく,不適切な診療拒否など があってはなりません.そのような症例では,むしろ熱帯熱マラリアを見逃さないことの方が重要です. ・状況が刻々と変化することから,感染対策担当者は最新の情報を収集するよう努めるべきです.以下に日本語で記載 されている有用なサイトをあげます. 国立国際医療研究センター 国際感染症センター 国際感染症対策室 http://www.dcc-ncgm.info/ 外務省・海外安全ページ http://www.anzen.mofa.go.jp/ 厚生労働省・検疫所ウェブサイト http://www.forth.go.jp/ 6(948)INFECTION CONTROL 2014 vol.23 no.10 ◎本記事は,病院感染対策の総合専門誌「INFECTION CONTROL」誌(メディカ出版)23 巻 10 月号に掲載予定のも のです.状況を考慮し,速報として web にて掲載しています. ◎本記事の無断引用・転載を禁じます.