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補足説明資料 提案 認可「こども園」(仮称)について
補足説明資料 提案 認可「こども園」(仮称)について 墨田区横川さくら保育園 園 長 長田 朋久 第 2 回認定こども園制度の在り方に関する検討会の際に提案 させていただいた、認可「こども園」(仮称)に関して、誤解の 生じる事のないように、今回補足説明をさせていただきます。 Ⅰ.幼保一元化(案)に関して 提案の主旨は、子どもたちを育てる事が、親個人の私事と同時に、社会の重要な公的な 仕事と位置づけて、現行の幼稚園制度よりも保育所制度よりも、より高い基準で認可「こ ども園」(仮称)を位置づけることにより、結果的に数年、若しくは十数年かけて自然に幼保 一元化に収束していくという一元化提案なので、その間は幼保三元化として位置づけると いう手法を提案しています。強制的に一元化に踏み切るのではなく、事業者の選択として、 結果的に一元化に向かうという方法論を提唱しています。 これは、ほとんどの事業者が、子どもたちの本当の幸せを願って日々従事しているとい う実感から、現行制度よりも子どもたちにとって、そしてそこに働く職員にとってもより いい基準で教育・保育が展開できるならば、必ずや認可「こども園」(仮称)に移行していく のではないかと考えているものです。 Ⅱ.幼保一元化の展開・・・①の第一類型のみにする 認可「こども園」 (仮称)と提唱している事から当然推察できる事ですが、幼稚園の認可 と保育所の認可を両方取得するということではなく、認可「こども園」(仮称)だけの認可を 取るという事を想定しており、そのための省庁を独立して設け、国庫負担金としての運営 費をその省庁より一元的に負担していただく。 その国庫負担金は、 「社会的生活を必要とする」全ての子どもたちに、その児童の 4 月 1 日現在の年齢に応じた月単位の国庫負担金とし、介護保険のような出来高払いのような設 定としない。運営費のほとんどが人件費である関係上、園児が出席しようが欠席しようが 職員は出勤し月額として給与を負担する関係上、安定的な運営ができるような制度としま す。 また、 「社会的生活を必要とする」は「集団生活を必要とする」という意味も含めて用い ています。改訂幼稚園教育要領や保育所保育指針に個別の働きかけの重要性も謳われてい ることから、安易に「集団生活」という単語を使わずに「社会的生活」という文言を使っ てみましたが、もっといい表現があるならばこの文言にこだわりません。 そして、保育所では、この「保育に欠ける」という文言が、現行の国庫負担金の根拠と なっており、児童福祉施設としての位置付けの源となっているため、 「保育に欠ける」とい う児童福祉法第 24 条にとてもこだわっていますが、新たな「社会的生活を必要とする」を この国庫負担金の支出根拠とすれば、 「保育に欠ける」表現にこだわる必要はなくなるので はないかと推察します。 ただし、認可「こども園」 (仮称)を児童福祉施設に位置付けることができるのか?位置 付ける必要があるのか?福祉施設でなかったら教育施設になるのか?それとも新たな「児 童施設(児童機関?)」的な位置付けが必要なのかどうか、私自身、勉強不足ではっきりし てません。多くの皆様方から、ご教示をいただきたいところです。 Ⅲ.幼保一元化の展開・・・ ②直接契約制度を廃止し、公的な責任を含む制度とする 現行の認定こども園は、保護者と園で直接入所の契約をし、その後に市町村において「保 育に欠ける」かどうかの判定をし、保育所対象児童かどうか決まってきます。これには入 所の優先度の判定を含めて、現行の保育所制度との矛盾を抱えていて、公的な責任との整 合性がとれていません。 認可「こども園」(仮称)では、全ての就学前児童を、公的な責任の下に健全育成するとい う観点から、どうしても社会的弱者である人たちの入所優先度の判定は欠かせません。ま た現行の保育所入所の場合は、多くの市町村が保護者の就労という観点で入所優先度の行 っていますが、子どもにとって入所が必要であるかどうかを考慮しているところは少ない でしょう。例えば障害児や障害の傾向のある児童で、幼稚園や保育所での生活がその子の 発達に重要な意味を持つ場合でも、入所優先度が上がるわけではありません。 「社会的生活を必要とする」かどうかの判定は基本的に保護者が行いますが、もちろん 専門機関等の判定も重要な要素であり、あくまでも子どもに視点を当てた入所要件とする ところが、現行の保育所制度との大きな相違点です。 ○ 直接契約をなぜ廃止しなければいけないか。 子育て支援や教育・保育はとても公共性の高い事業です。子どもが健やかに育つこと により利益を得るのは保護者だけでなく、社会全体が利益を得ます。将来の質の高い労 働力という観点から見ると、企業も受益者です。 認可「こども園」(仮称)は、就学前の全ての子どもたちが更なる質の高い教育・保育 を日本中で受けられるようになることが目的です。 しかし、現行の認定こども園のように、保護者との直接契約制度となっている場合は、 一見、大都市では「保護者が自由に選択できる」が保護者の最大のメリットとして強調 されていますが、決してメリットとなりません。また地方では実際に選択できないとこ ろが多いのが実情です。 例えば ・ 自宅周辺に施設が少なければ選べない。 ・ 人気のある施設に応募が集中し、結果的に希望どおり入れない子が多く出る。 ・ 待機児童という概念がなくなるので、園が思うように増えないし、行政も責任はない。 ・ 人気のある園は保育料を高くするかもしれないので、入れない子が出る。 ・ 保育料を安くすると、質の低下が危惧される。 ・ 入れる入れないは保護者の自己責任になり「自分で探しまわる」ようになる。しかし、 行政に責任は無い ・ 直接の契約では、保育料収入は利用料収入となり、企業会計でいう「売上金」のよう な性格となるらしい。法人の資金活用の自由度が増し、法人としての「利益」も出せ るようになるらしい。多額の公費(税金)負担の必要性から鑑み、全額子どもの為に使 わなければならない現行の国庫負担金制度を残すべき。 等々 ・ 経営が自己責任になるため、2008 年 10 月の MK グループの破綻のような事も起き かねない。 のように、「自由に選択できる」の背景には、大きな制度の転換があり、公的な責 任を含む制度でなければ、国が日本の子どもたちに責任を持って取り組む事ができな くなります。 幼稚園の方々には、この点がとても受け入れ難い内容となる事は承知の上で、提案 しておりますが、この直接契約の廃止は、あくまでも子どもの最善の利益を大前提に 提案するもので、必ずや幼稚園団体の方々にもご理解いただけるものと信じておりま す。そして、この事が私立幼稚園の理念や建学の精神を冒すものではなく、反対に今 まで以上に子どもの最善の利益の為に、その理念や建学の精神を展開できるものと思 っています。 Ⅳ.幼保一元化の展開・・・④こどもの視点で、基準を上げる 開所時間は、就労中の保護者も含まれるため、現行の「保育所の開所時間 11 時間」をそ のまま踏襲し、延長保育等も必要に応じて実施するものとします。 一人の子どもの保育時間は、最低 6 時間以上としましたが、これは、単純に幼稚園の 4 時間と保育園の 8 時間の中間を取ったものですが、園で「社会的生活を営む」為に必要な 時間は、もう少し長くてもいいのかなとも思っています。幼稚園が 4 時間から急に 8 時間 だと認可「こども園」(仮称)に移行を希望する際に、抵抗があるのかもしれないという事を 配慮した結果だが、現実多くの幼稚園で「預かり保育」を実施している状況から推察すれ ば、案外 8 時間という長さに抵抗感が薄いようであれば、 「最低 6 時間以上」ではなく、 「原 則 8 時間」でも当然「社会的生活を営む」上で好ましいと考えます。 ○別表の基準ですが、設置主体を「非営利法人に限定」として理由は、先日の MK グルー プのような事態が絶対に起こらないようにしたいからです。 Ⅴ.その他 保護者の理解・・・ 現在、小学校において、幼稚園出身の保護者と保育園出身の保護者が PTA 活動等を通 してお互いの理解不足などの理由により、意見の対立等が見られると伺っています。ま た、この検討会においても、認定「こども園」内の保護者同士にも同様の傾向があると いう話を伺いました。 この事は、日本における長年の幼稚園制度と保育所制度の二元化がもたらした弊害で はないかと感じています。一方で昨今では、母親が働いていれば保育所、専業主婦なら ば幼稚園と、国民には非常に分かりやすく定着している事は、二元化の利点でもありま す。 この度、 「総合施設」という位置付けから認定こども園制度が発足した事により、母親 が働いていてもいなくても、同じような年齢の子どもを持つ保護者同志が、お互いを理 解し合い、協力し合いながら、健やかな子ども育成を願うという視点でわかりあえるよ うな社会を目指すきっかけになるよう望んでいます。 保護者の経済的負担の軽減 少子化対策でもっとも重要な事項の一つに経済的負担の軽減があると思います。今回 の認定こども園制度の見直しの際に、是非現行以上の保護者負担の軽減を盛り込んでい ただければと思います。 幼稚園事業者と保育所事業者の壁 永年の幼保の二元行政と、折からの少子化の影響も受けて、両事業者間には大きな隔 たりがある事は周知の事実であります。 制度としても、保育所は公費によって長時間の保育を行い近年の女性の社会進出も追 い風となり、待機児童との追いかけっこ状態が永らく続いています。一方で誤解を恐れ ず言いますと、幼稚園はその逆となり、いわゆる勝ち組と負け組に分かれ、少子化の影 響から経営的には厳しい状況が続いているようです。 今回の認定こども園は制度や事業者間の相違などを乗り越え、子どもの視点・保護者 の視点から生まれた制度であり、これを発展させる道筋には、必ずや幼稚園と保育所の 両事業者が相互に理解しあい、お互いの手法は違っても本来の子どもの健全育成の視点 から協力し合っていく必要があります。この制度を子どもにとってより良いものに作り 上げる事で必ずやこの道筋が現れてくるものと信じています。 サービスの供給者・受給者・・・ 50 年振りの児童福祉法改正論議が世間を賑わせていた、平成 9 年当時。世の中に初め て「保育サービス」という言葉が用いられ、保育界に衝撃を与えた事は今でも記憶に新 しいところです。 その後産業分類でも保育所は「サービス業」に入るのではないかと言われ、とても違 和感を覚えていました。それならば「福祉施設」という分類を作って欲しいとも思った くらいです。 それから、10 年くらいの時間が経ちましたが、サービスという言葉にならされてきた だけでなく、制度や保育所の対応、保護者の考え方まで「サービス」という言葉に翻弄 されているような気がしてなりません。 本来、大切な子どもたちを健全に育成しようという際は、預ける保護者と預かる保育 所や幼稚園が信頼関係を構築し、お互いに理解し・協力し合いながら親も教諭・保育士 も一緒になって、双方が成長していける関係の中で子どもを育てていく事が、人間を育 てるという事ではないかと思っています。 誤解を恐れずに言うと、保育をサービスと呼び、あたかも「保育」を商売の如く金銭 で売買され、供給者と受給者の関係を持ち出して、相互の信頼関係を前提としない経済 活動のように表現される事は、その中心に位置してしまった子ども自身にいい影響を与 えないのではないかと危惧しています。 介護保険のように、介護を商品とし、必要なサービスや時間数を点数化し、あるお宅 では毎回違う方が月に何十人も自宅内を出入りし、杓子定規に老人のお世話やお掃除・ 買い物などを行うという対人サービス制度は、絶対に子育てに取り入れてはならない制 度と思っていますので、今回の認定こども園制度の改正においても、このような点を充 分にご理解をいただきながら進めていただければありがたいと思います。 以 上