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第2 監査結果

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第2 監査結果
第2 監査結果
Ⅰ 健康福祉局 子ども部
1 母子・寡婦福祉資金貸付金
(1)制度の概要
母子家庭や寡婦などに対し、経済的自立の助成と生活意欲の助長を図り、併せてそ
の扶養している児童の福祉を増進するための制度であり、母子福祉資金と寡婦福祉資
金に区分される。
母子福祉資金貸付金は、
配偶者のない女子で 20 歳未満の子を扶養している者又はそ
の扶養している子、並びに父母のいない子に対して実施される。寡婦福祉資金貸付金
は、過去に母子家庭の母でその状況は変わらず子が 20 歳を超えた者又はその 20 歳以
上の子、並びに 40 歳以上の配偶者のいない女子に対して実施される。
母子・寡婦福祉資金貸付金の財源については、3 分の 1 を地方公共団体が負担し、3
分の 2 を国が負担することとなっている。また、母子及び寡婦福祉法に基づき特別会
計で運営されており、
中核市移譲事務として平成 8 年度に大阪府より移譲されている。
平成 16 年度においては、13 種類の資金貸付けがあり、各資金別の内容は、以下の
とおりである。貸付限度額及び貸付利子、償還条件等は資金の種類により異なってお
り、貸付利子については無利子、有利子のものに区分されるほか、償還条件について
もそれぞれの据置き期間経過後 3 年から 20 年以内での償還が求められる。また、資金
を借りるにあたっては保証人を付すことが求められている。
資
金
名
資
金
使
途
事業開始資金
事業を始めるための資金
事業継続資金
事業を続けるための資金
修学資金
児童又は寡婦の扶養している子が、高校・大学等の修学に必要な資金
就職支度資金
本人及び母子家庭の子が就職の際に必要な資金
医療介護資金
母子家庭の母もしくはその養育する児童又は寡婦が医療を受けるのに必要
な資金及び母子家庭の母又は寡婦が介護保険法に規定する保険給付に係る
サービスを受けるのに必要な資金
技能習得資金
知識技能を習得するための資金
生活資金
住宅資金
技能習得資金又は医療介護資金の貸付けを受けている期間中又は失業中の
期間、及び母子家庭になって 7 年以内の世帯で生活の安定に必要な資金
住宅の増改築(補修)に必要な資金
98
転宅資金
公営住宅等に入居する時の敷金等にあてる資金
就学支度資金
児童又は寡婦が扶養している子が、高校、大学等に入学の際必要な資金
修業資金
児童又は寡婦が扶養している子が、知識技能を習うため必要な資金
結婚資金
母子家庭の子又は寡婦が扶養している 20 歳以上の子の結婚に必要な資金
特例児童扶養資金
平成 14 年 7 月まで児童扶養手当を受給し、かつ同年 8 月以降も同手当を受
給しており、同年 8 月以降の児童扶養手当の受給額が減額となる母子家庭の
母が児童扶養に必要な資金
(2)根拠法令等
母子及び寡婦福祉法(昭和 39 年法律第 129 号)
母子及び寡婦福祉法施行令(昭和 39 年政令第 224 号)
母子及び寡婦福祉法施行規則(昭和 39 年厚生省令第 32 号)
堺市母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸付規則(平成 8 年規則第 35 号)
堺市母子・寡婦福祉資金貸付業務に係る事務取扱要綱
(3)所管部署
健康福祉局 子ども部 子ども家庭課
市民人権局 各支所 保健福祉総合センター 地域福祉課
(4)貸付金の全般的状況
①
全般的状況
【表Ⅰ−1】直近 3 年間の状況
(単位:千円)
新規貸付
期首残高
平成 14 年度
1,315,561
630
258,389
92,631
−
1,481,319
平成 15 年度
1,481,319
723
319,092
98,858
−
1,701,554
平成 16 年度
1,701,554
787
354,949
110,229
−
1,946,273
件数
金額
回収
期末残高
年度
件数
金額
(注)1.平成 8 年度における大阪府からの債権譲渡総額は、705,845 千円である。
(注)2.残高については、各年度の「決算事項別明細書」の収入未済額(除く利子)と各年度の
「財産に関する調書」
(調定未済額)の合計である。
(注)3.期末残高の件数については、把握されていないため、記載していない。
99
② 回収の状況
【表Ⅰ−2】直近 3 年間の回収状況
年度
区分
平成 14 年度
平成 15 年度
平成 16 年度
(単位:千円)
調定額
収入済額
収入未済額
回収率
現年度
111,343
85,294
26,048
76.6%
過年度
129,626
8,060
121,566
6.2%
合計
240,970
93,354
147,615
38.7%
現年度
122,503
93,039
29,463
75.9%
過年度
147,615
6,403
141,212
4.3%
合計
270,118
99,443
170,675
36.8%
現年度
138,095
105,314
32,781
76.3%
過年度
170,675
5,496
165,178
3.2%
合計
308,771
110,810
197,960
35.9%
(注)1.上記金額には、利子を含めて記載している(制度上無利子のものを除く)
。
(注)2.現年度、過年度の区分については、子ども家庭課作成の母子・寡婦福祉資金貸付償還金
の年度別収納状況に基づいている。
【表Ⅰ−3】貸付種類別の直近 3 年間の回収状況
平成 14 年度
貸付種類
収入済額
(単位:千円)
平成 15 年度
平成 16 年度
回収率
収入済額
回収率
収入済額
回収率
事業開始資金
2,197
7.7%
284
1.0%
684
2.4%
事業継続資金
622
6.7%
742
7.5%
690
6.7%
65,489
46.6%
72,007
44.9%
79,268
43.0%
就職支度資金
24
13.1%
22
11.0%
61
20.0%
医療介護資金
416
89.4%
133
52.6%
143
50.4%
技能習得資金
1,593
32.0%
1,845
32.5%
2,614
37.1%
生活資金
3,186
34.5%
3,248
31.0%
4,064
31.0%
住宅資金
1,562
37.2%
1,226
27.5%
1,341
26.5%
転宅資金
6,234
44.4%
7,529
41.6%
7,905
37.1%
10,319
42.9%
10,429
38.5%
11,428
36.9%
修業資金
998
26.9%
1,398
29.3%
1,913
32.0%
結婚資金
167
18.9%
122
14.4%
161
17.8%
児童扶養資金
542
82.6%
431
70.0%
404
62.4%
−
−%
18
33.9%
126
76.8%
93,354
38.7%
99,443
36.8%
110,810
35.9%
修学資金
就学支度資金
特例児童扶養資金
合
計
(注)1.上記金額には、利子を含めて記載している(制度上無利子のものを除く)
。
100
③ 残高の状況
【表Ⅰ−4】平成 16 年度末貸付種類別残高
貸付種類
期末残高
(単位:千円)
調定額
収入未済額
事業開始資金
28,143
27,459
事業継続資金
10,324
9,633
184,489
105,220
就職支度資金
305
244
医療介護資金
284
141
技能習得資金
7,048
4,433
生活資金
13,101
9,036
住宅資金
5,063
3,721
転宅資金
21,302
13,396
就学支度資金
31,011
19,582
修業資金
5,977
4,063
結婚資金
907
745
児童扶養資金
647
243
特例児童扶養資金
164
38
308,771
197,960
修学資金
合 計
1,946,273
(注)1.上記期末残高には利子を含めていないが、調定額及び収入未済額には、利子を含めて記
載している(制度上無利子のものを除く)
。
(注)2.貸付種類別の期末残高については、把握されていないため、記載していない。
(5)実施した監査の手続
① 貸付実行業務については、
東支所の平成 16 年度の貸付けから任意に抽出した取引に
ついて、貸付申請書、貸付決定通知書、貸付金借用証書等関係書類を閲覧及び照合し、
堺市母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸付規則及び堺市母子・寡婦福祉資金貸付業務に
係る事務取扱要綱等に準拠して適切に審査されたうえで、貸し付けられていることを
検証した。
なお、貸付事務等の業務について、子ども家庭課で「堺市母子寡婦福祉資金貸付金
貸付事務マニュアル」
(以下、
「貸付マニュアル」という。
)を作成している。この貸付
マニュアルが、堺市母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸付規則、並びに堺市母子・寡婦
福祉資金貸付業務に係る事務取扱要綱に則して作成されているかを検討した。また、
抽出した取引について、この貸付マニュアルに則って適切に処理されていることを検
証した。
② 債権管理業務については、
東支所の平成 16 年度の回収から任意に抽出した取引につ
いて、償還開始者リスト、貸付台帳、収納一覧表、領収済証書等を閲覧及び照合し、
101
貸付台帳への転記を確認するとともに、適切に回収手続及び管理がなされていること
を検証した。
延滞債権については、東支所の貸付台帳、催告書送付簿等の閲覧及び担当者への質
問により、督促、滞納処理の記録等が行われていることを検証した。また、東支所の
管轄の借受人については、延滞となった経緯及び現状を担当者に質問し、延滞債権に
対する対応が適切であるかを検討した。
③ 債権管理には、各支所の地域福祉課管理の手書きの貸付台帳のほかに、母子寡婦福
祉システムを運用しており、子ども家庭課で入力及びデータ管理を行っているため、
東支所で任意に抽出した貸付けについて、母子寡婦福祉システムの母子寡婦福祉資金
貸付償還原票と手書きの貸付台帳の整合性を検証した。
また、平成 16 年度における新規貸付額及び回収額について、母子寡婦福祉システム
データと母子寡婦福祉資金貸付事業特別会計計上額とを照合し、整合性を検証した。
(6)監査の結果及び意見
① 延滞債権について
ア.延滞債権の状況について
平成 16 年度末の延滞債権の貸付年度別内訳は、以下のとおりである。
【表Ⅰ−5】延滞債権の貸付年度別内訳
貸付年度
件数
(単位:千円)
金額
平成8年度以前
−
43,498
平成9年度∼平成13年度
−
72,385
平成14年度∼平成16年度
−
82,076
合 計
−
197,960
(注)1.内訳については、滞納繰越額、収入未済額及び不納欠損額にかかる調書に基づいている。
(注)2.延滞債権の状況別内訳及び償還期限到来年度別の滞納年数管理は行われていないため、
貸付年度別とした。なお、大阪府より移譲された平成 8 年度以前については、貸付年度別
の金額が把握されていないため、合算した金額を記載している。
(注)3.件数は、把握されていないため、記載していない。
(注)4.上記金額には、利子を含めて記載している(制度上無利子のものを除く)
。
上記の延滞債権については、延滞者リストが母子寡婦福祉システムから出力され、
地域福祉課より納期 1 ヶ月後に督促状、
年 1 回収入未済額について催告書を送付し、
必要に応じて電話、戸別訪問を実施している。しかし、延滞者の現状及び入金状況、
入金予定等を地域福祉課担当者が書面によって上長等に報告する仕組みになって
いない。
102
延滞債権については、延滞債権に関する回収経過、滞納理由、回収見込み及び対
応等を記載した書面による報告を定期的に行い、上長等による検閲承認を受けるこ
とが望ましい。
イ.延滞金の徴収について
母子及び寡婦福祉法施行令第 17 条及び第 38 条において、償還を延滞したときは
年 10.75%の違約金(以下、延滞金という。
)を徴収すると規定されている。しかし、
堺市母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸付規則には延滞金の徴収について記載され
ておらず、現状においても、延滞が発生しているものの延滞金の徴収は一切行われ
ていない。なお、大阪府等においても、同様の状況であると説明を受けている。
本来ならば、母子及び寡婦福祉法施行令と堺市母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸
付規則における趣旨は合致すべきものと考える。したがって、母子及び寡婦福祉法
施行令において延滞金の徴収について記載しているのであれば、堺市母子福祉資金
及び寡婦福祉資金貸付規則においても延滞金について規定し、延滞金の徴収を行う
よう検討する必要がある。
ウ.履行期限の延長について
母子及び寡婦福祉法施行令第 19 条及び第 38 条において、
「償還金の支払を猶予
することができる」と規定されているが、履行期限の延長については、堺市母子福
祉資金及び寡婦福祉資金貸付規則等に記載がない。現状において、履行期限の延長
を受ける場合は、履行期限の延長を受けようとする者が分納計画書等必要と認める
書類を添えて書面により地域福祉課長に申請することとなっているが、地域福祉課
長による供覧が行われるのみであり履行期限の延長の可否は決裁されない。また、
分納計画書等を提出せず、履行期限の延長が認められないまま滞納している者もい
る。履行期限の延長が認められている債権は、延滞債権と取り扱われないため、現
状の延滞債権の全てが、履行期限の延長の手続を行っていない状態と言える。
また、利子は、元利均等償還されるため、貸付け時に月額を決定しているが、履
行期限の延長が認められた場合には、延長後の回収条件に基づいて改めて算定し調
定されている。しかし、履行期限の延長の申請をしないまま滞納した場合には、当
初計算された利子しか調定されていないため、延滞期間分の利子は回収されていな
い。母子及び寡婦福祉法施行令を運用するうえで、他市においても同様の取扱いを
行っているとのことであるが、このような方法は、規定に則って手続した者の方が
多く利子を支払うことになり、公平性を欠くだけでなく、年利を定めた母子寡婦福
祉法施行令第 8 条及び第 37 条に準拠していないものと考えられる。
そのため、各支所の担当者及び上長がやむを得ないと判断した場合には、履行期
限の延長を申請するよう助言し、履行期限の延長については、供覧だけではなく、
履行期限の延長の可否を決裁すべきである。また、現状において延滞金の徴収は行
われていないが、延滞金の徴収を行わないのであれば、延長後の回収条件に基づい
て算定された利子を調定し、回収するよう検討する必要がある。
103
エ.返還の特例について
返還の特例として、母子及び寡婦福祉法施行令第 16 条(準用規定第 38 条を含む)
において、第 1 号から第 6 号のいずれかに該当するときは、償還期間に拘らず、貸
付金の全部又は一部を一時に償還させることができる旨が規定されている。
第 2 号には「償還金の支払を怠ったとき」が条件として上げられているが、この
条項が履行期限の延長に係る所定の手続をとらない滞納者に対するものと解する
限り、第 1 号の「目的以外の目的に使用したとき」
「偽りその他不正な手段により
貸付けを受けたとき」等と共に一時に返還させるべきものであると考えられる。現
状においては、堺市母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸付規則に返還の特例の記載は
ないが、現状の運用を継続するとしても、どのような場合に、一時に返還させるの
かを堺市母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸付規則又は回収マニュアル等に明確に
規定しておくことが望まれる。
オ.不納欠損処理について
延滞債権には、
【表Ⅰ−5】に記載のように、償還期限到来後 10 年以上経過した
回収可能性が極めて低いものが含まれている。地方自治法施行令第 171 条の 7 は、
普通地方公共団体の長は、債務者が無資力又はこれに近い状態にあるため履行延期
の特約又は処分をした債権について、当初の履行期限から 10 年を経過した後にお
いて、なお、債務者が無資力又はこれに近い状態にあり、かつ、弁済することがで
きる見込みがないと認められるときは、当該債権及びこれに係る損害賠償金等を免
除することができると、免除について規定している。しかし、既に述べたように履
行期限の延長(履行延期の特約)の手続がとられていないため、無資力の状態が継
続し、弁済の見込みがない場合でも、市長の判断では免除できない状態となってい
る。免除の対象となる債権については、履行期限の延長の手続を実施し、市長の決
裁による免除を行うべきである。
また、行方不明となっている借受人もおり、回収活動が不可能な債権も含まれて
いる。免除ができないこれらの債権を不納欠損処理するためには、市議会の承認を
受けて債権放棄を行うことが唯一の手段である。
回収見込みのない不良債権を資産として認識せず、債権管理に係る事務コストを
軽減し、市の財政状態を適正に把握するために、実態に応じて不納欠損処理するこ
とは有効である。したがって、公平性や延滞債権を発生させた責任等、不納欠損処
理の実施には、困難な問題が伴うことは理解できるが、事務を軽減化するために、
債権放棄等の債権償却の実施を判断するためのプロジェクトチームを編成し、「回
収見込みがない」と判断する基準を設けたうえで、適時に不納欠損処理を行うこと
が望ましい。なお、過去における不納欠損処理の実績はない。
また、地方自治法施行令第 171 条の 5 は、普通地方公共団体の長は、債権で履行
期限後相当の期間を経過してもなお完全に履行されないものについて、債務者が事
業を休止し、将来その事業を再開する見込みが全くないか、債務者の所在が不明で
あり、かついずれの場合も差し押えることができる財産の価額が強制執行の費用を
104
こえないと認められるとき、又は債権金額が少額で取立てに要する費用に満たない
と認められるときで、これを履行させることが著しく困難又は不適当であると認め
るときは、以後その保全及び取立てをしないことができると、徴収停止について規
定している。既に述べたように、行方不明等、回収活動が不可能な債権については、
議会承認による不納欠損処理することが望まれるが、不納欠損処理されない場合で
も、債権管理に要する事務コストを軽減するために、少なくとも地方自治法施行令
第 171 条の 5 に規定する徴収停止の手続をしておくべきである。
② 貸付業務について
ア.貸付審査の強化について
母子寡婦福祉資金貸付金の回収率は【表Ⅰ−2】に記載のとおり、平成 14 年度
38.7%、平成 15 年度 36.8%、平成 16 年 35.9%と年々減少している。また、過
年度の回収率については、平成 16 年度は 3.2%と著しく低い回収率となっており、
延滞債権も年々増加している。
回収率の改善にはまずは回収強化に努めることが挙げられるが、延滞債権の発生
を未然に防止するためにも、厳格な貸付審査の実施が必要と考えられる。現状、堺
市母子・寡婦福祉資金貸付業務に係る事務取扱要綱等に基づいた調査が行われ、審
査会が審査を行ったうえで貸付けを決定している。審査の手続には問題はないが、
現状は国の制度趣旨から回収可能性の判断よりも経済的な自立を図ることに主眼
が置かれているため、回収不能危険率は高いものとなっている。今後は、貸付マニ
ュアルの強化を図り、所得に見合った貸付額の設定や、他の借入の状況を調査し、
その返済を考慮しても回収が見込めるのかを判断する等、経済的自立支援のみに主
眼を置くのではなく、回収可能性とのバランスの取れた審査体制を構築することが
望まれる。特に、事業開始資金、事業継続資金の回収率は低く、金額も多額のため、
将来キャッシュフローに基づく貸付金額の算定が必要である。
また、他の社会福祉事業等による補助又は交付にて対応可能なものがないかも検
討する必要があると思われる。
イ.回収マニュアルについて
事務取扱要綱、貸付マニュアルは作成されているものの、回収に関する事務取扱
要綱等の回収マニュアルが作成されておらず、現状においては、延滞債権に係る戸
別訪問による回収業務については母子自立支援の一環として結果的に母子自立支
援員が行っている状況にある。そのため、履行期限の延長申請の徹底が行われてお
らず、連帯保証人への督促に関しても統一された基準はなく、母子自立支援員の裁
量によるところが大きい。なお、現状においては、借受人との連絡が取れている場
合には連帯保証人に対する連絡、督促状の送付は行っていない(東支所)
。
回収に関する事務取扱要綱等の回収マニュアルを作成し、連帯保証人への督促、
強制執行等の実施に係る判断基準を設けるとともに、母子自立支援員と債権回収担
当者を区分し、回収率を高めることが望まれる。さらには、延滞債権については、
105
上長等を含む回収チームを編成、もしくは、行政機関個人情報保護法に抵触しない
よう配慮したうえで回収業務をアウトソーシングする等、回収業務の強化を図るこ
とが望まれる。
ウ.管理台帳について
貸付け、回収等の債権管理は、子ども家庭課にて管理及び運営されている母子寡
婦福祉システム及び地域福祉課における手書きの貸付台帳により行われている。し
かし、償還があった場合、地域福祉課においては子ども家庭課から送付される領収
済証書により台帳の消込みを行うが、口座振替については期日通りの返済があった
という理由により台帳の消込みは行わない。そのため、貸付台帳からは貸付金残高
及び延滞債権の把握は困難であるとともに、母子寡婦福祉システムとの照合も行わ
れていない。
手書きの貸付台帳は大阪府より事務移譲された時から引き継いでいるものであ
るが、その役割は母子寡婦福祉システム導入により低下したものと思われ、必要に
応じて地域福祉課が子ども家庭課よりデータを取り寄せることで足りると考える。
もしくは、貸付台帳をより実効性のあるものとするためにデータ管理し、地域福祉
課のデータと母子寡婦福祉システムのデータを適時照合する体制を構築すること
も有意義である。いずれにしても、現状の貸付台帳の意義は薄れており、早急の対
応が望まれる。なお、将来的には、管理コスト削減の観点からも地域福祉課も含め
たシステムによる一元管理を行うことが望ましい。
③ 母子寡婦福祉システムの機能について
ア.調定額の集計について
母子寡婦福祉システムにおいては、年度当初に年度中に納期を迎える納付書を出
力する機能があるとともに、調定額の集計機能も備わっている。しかし、年度末に
調定額を集計する際には、いったん母子寡婦福祉システムの納付書データをアクセ
スに落とし込み加工したうえで集計が行われている。これは、システムエラーによ
り実際の調定額と母子寡婦福祉システムにおける調定額が一致していないことに
起因するがその原因は不明である。
作業を効率化するため、調定額を集計できるプログラムに修正することが望まし
い。
イ.基準日の集計について
母子寡婦福祉システムにおいては、貸付け、回収、滞納等のデータを集計し出力
する機能が備わっているが、有効な機能にも拘らず、実際に使われていない機能が
存在する。また、各データの集計に関して現時点のデータしか把握できず、基準日
(年度末)の状況が把握できないものがある。
効率的で有効な管理を行うためにデータを有効的に利用し、また、作業を効率化
するためにも基準日(年度末)の状況を集計するプログラムとする必要がある。
106
ウ.残高及び延滞債権の管理について
母子寡婦福祉システムにおいては、個別の償還残高、償還期限到来年度別及び貸
付発生年度別の把握はできるが、それを集計する機能が備わっていない。そのため、
基準日貸付金残高の集計及び延滞債権の年齢管理等が行えない状況である。
貸付金を管理するうえでは、貸付額、回収額に加えて残高管理は必須である。母
子寡婦福祉システムにおける個別の償還残高データを資金別、個人別、発生年度別、
償還期限到来年度別等の目的にあった数値が集計できるプログラムにすることが
望ましい。
また、現状において、延滞債権の状況は各母子自立支援員が把握しているが報告
されていないため、状況別内訳の把握ができない状況となっているが、状況別内訳
は現状把握のほか、今後の対応を検討するうえでも重要な情報である。そのため延
滞債権については、然るべき担当者が延滞理由を行方不明、市外転出、生活保護等
の数種類に区分し実態を報告し、母子寡婦福祉システムに反映できるような体制を
整えたうえで、システム上その理由別に集計できるようプログラムし、状況別内訳
を把握できるようにする必要がある。
エ.変更履歴について
母子寡婦福祉システムにおいて、入力されたデータを誤って削除した場合には、
母子寡婦福祉システムから完全に削除されるため、今後納付書の出力及び貸付金の
回収も実施されない状況になってしまう。
データ削除については、変更履歴が残るシステムに修正することが望ましい。
④ 根拠法令等の整合性について
母子・寡婦福祉資金貸付金における根拠法令等は、国が定める母子及び寡婦福祉
法、母子及び寡婦福祉法施行令、母子及び寡婦福祉法施行規則と、市が定める堺市
母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸付規則、堺市母子・寡婦福祉資金貸付業務に係る
事務取扱要綱であり、国が定める母子及び寡婦福祉法等は平成 15 年に改正されて
いるが、市が定める貸付規則等の改正がおこなわれていない。そのため、市が定め
る貸付規則等が、国が定める母子及び寡婦福祉法等を参照する際に、参照条文が相
違しているため、条文間の整合性が取れていない。
早急に堺市母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸付規則及び堺市母子・寡婦福祉資金
貸付業務に係る事務取扱要綱を、国が定める母子及び寡婦福祉法等と整合性が取れ
るように改正する必要がある。
上記のほかに、特記すべき事項は発見されなかった。
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