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輸入真菌症フローチャート - 真菌症フォーラム

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輸入真菌症フローチャート - 真菌症フォーラム
第 1 章 深在性真菌症の診断と治療のフローチャート
I
輸入真菌症フローチャート
基礎疾患
細胞性免疫障害
(特に AIDS)
特になし
(COPD、
少量ステロイドなど)
流行地
➡解説 222∼230 頁
疾患名
東南アジア
治療
L-AMB
ITCZ
マルネッフェイ型
ペニシリウム症
東南アジア
米国ミシシッピ川下流
中南米(メキシコなど)
アフリカ*
ヒストプラスマ症
(急性肺感染、播種性)
L-AMB
ITCZ
*ズボアジィ型ヒストプラスマ
症(アフリカの流行地のみ)
慢性肺ヒストプラスマ症
特になし
(男性、COPD)
中南米(ブラジル)
パラコクシジオイデス症
L-AMB
ITCZ
特になし
(細胞性免疫障害、妊娠など)
米国(カリフォルニア、
アリゾナなど)
コクシジオイデス症
L-AMB
FLCZ
ヒストプラスマ症
A.どのような患者がハイリスクか
予防投与
(注)
・流行地
への渡航歴のある患者(健常
者も含む)
・COPD、新生児、AIDS、血液悪性疾患、
臓器移植、血液幹細胞移植、免疫抑制
薬使用(ステロイド、生物学的製剤)
、先
天性 T 細胞欠損(IFN-γ受容体欠損症、
高 IgM 症候群、その他)
流行地で臓器移植を施行された患
者、流行地出身の臓器移植患者で
は予防投与を考慮する
B.どのような場合に発症を疑うか
臨床症状:感冒様症状(急性型)
、喀血・呼
吸不全(慢性空洞型)や、全身
衰弱や、皮膚・粘膜潰瘍、肝脾
腫、リンパ節腫大など(播種型)
画像診断:結節影(単発・多発)
、びまん性
陰影、肺門リンパ節腫脹、胸水貯
留
(急性型)
。空洞影
(慢性空洞型)
。
びまん性間質性陰影、粒状網状
影、粟粒状陰影など(播種型)
血清診断:各種抗体・抗原検査(専門機関
依頼)
C.どのような検査を実施するか
48
一般に行わない
標的治療
注:米国中央部のミシシッピ渓谷からオハイオ渓谷
が中心であるが、中南米、東南アジア、オース
トラリア、ヨーロッパ、アフリカなど
培養検査:一般医療機関では原則として培
養は行わない(専門機関へ相
談)
病理組織学的診断:病 変 部 の 生 検 で肉芽
腫などの証明
経験的治療
確定
診断例
■軽症∼中等症の急性型(限局性)
多くは自然軽快するが
[AⅢ]
、診断のついた症例は原則として治療を行う。
ITCZ 200 mg/回 1 日 1 回点滴静注(loading dose:200 mg/回 1 日 3 回
点滴静注を 3 日間)あるいは、ITCZ 内用液またはカプセル剤 200 mg/回 1
日 1∼2 回経口投与を 6∼12 週
[BⅢ]
■重症の急性肺ヒストプラスマ症(びまん性)
L-AMB 3 ∼5 mg /kg /回 1 日 1 回点滴静注を 1∼2 週間投与後、ITCZ
200 mg/回 1 日 1 回点滴静注(loading dose:200 mg/回 1 日 3 回点滴静
注を 3 日間)あるいは、ITCZ 内用液またはカプセル剤 200 mg/回 1 日 1∼2
回経口投与 6∼12 週間
[AⅢ]
。重篤な呼吸不全がある場合には、メチルプ
レドニゾロン 0.5∼1 mg/kg/日点滴静注の併用も考慮する
[C1Ⅲ]
■慢性空洞型
・ITCZ 200 mg/回 1 日 1 回点滴静注(loading dose:200 mg/回 1 日 3 回
点滴静注を 3 日間)あるいは、ITCZ 内用液またはカプセル剤 200 mg/回 1
日 1∼2 回経口投与を少なくとも 12 か月、できれば 18∼24 か月
[AⅡ]
血中濃度測定は、開始から 2 週間後以降に行う
[AⅢ]
■播種型
・孤発性や安定した病変の場合(mild-to-moderate)
ITCZ 200 mg/回 1 日 1 回点滴静注(loading dose:200 mg/回 1 日 3 回
点滴静注を 3 日間)あるいは、ITCZ 内用液またはカプセル剤 200 mg/回 1
日 1∼2 回経口投与を少なくとも 12 か月行う
[AⅡ]
・広範な病変や進行性の場合(moderately severe to severe)
L-AMB 3 mg/kg/回 1 日 1 回点滴静注を 1∼2 週間投与後、ITCZ 200 mg/
回 1 日 1 回点滴静注(loading dose:200 mg/回 1 日 3 回点滴静注を 3 日
間)あるいは、ITCZ 内用液またはカプセル剤 200 mg/回 1 日 1∼2 回経口
投与を 12 か月
[AⅠ]
・中枢神経病変を伴う場合
L-AMB 5 mg/kg/回 1 日 1 回点滴静注を目処に、4∼6 週間以上行った後、
ITCZ 内用液またはカプセル剤 200 mg/回 1 日 1 回経口投与を 12 か月以上、
髄液の抗原値など、髄液の異常が改善されるまで継続する
[BⅢ]
・免疫不全状態が改善できない場合
[AⅡ]
や適切な治療後も再発を繰り返す場
合生涯にわたる ITCZ 内用液またはカプセル剤 200 mg/回 1日 1 回経口投与
の継続が必要な場合もある
[BⅢ]
血中濃度測定は、開始から 2 週間後以降に行う
[BⅢ]
I 輸入真菌症フローチャート
第
1
章
[AⅢ]
、わ
欧米では注意深く経過観察するとされているが
ヒストプラスマ症
が国では診断のついた症例は治療対象とし、ITCZ で治療
[BⅢ]
。基礎疾患がなくても、重症例では、初期治療
する
[AⅢ]
。
として L-AMB を用い、その後 ITCZ に切り替える
[診断]
この場合、呼吸不全などの合併があれば、メチルプレドニ
ヒストプラスマ症は、二形性真菌であるヒストプラスマ
属菌による感染症である 。ヒトの原因真菌としては
、
が知られてきたが、
近年菌種の再分類が進んでいる。土壌中に生息し、汚染さ
れた地域の土木建築工事やコウモリの生息する洞窟探検な
ゾロンの併用も考慮する
[C1Ⅲ]
。
慢性肺ヒストプラスマ症では、全例が治療対象となり、
ITCZ の長期投与が第一選択薬である
[AⅡ]
。ITCZ 不耐
例や無効例では、L-AMB を考慮する。
播種性ヒストプラスマ症は、L-AMB による初期導入療
どによる集団発生がしばしば報告されている。また、明ら
。
法後に、ITCZ の長期投与による維持療法を行う[AⅠ]
かな渡航歴を認めない症例もあり、国内での感染も疑われ
また、腎毒性が問題とならない場合には L-AMB の代わ
ている。病型としては、大きく三つに分類され、急性肺ヒ
[AⅢ]
。中枢神経系のヒストプラ
りに AMPH-B でもよい
ストプラスマ症、慢性肺ヒストプラスマ症、播種性ヒスト
スマ症の合併例では、L-AMB による初期導入はより強力
プラスマ症がある。診断法としては、培養・同定検査、病
に行う
[BⅢ]
。FLCZ も有効性の報告があるが、ITCZ に
理組織学的診断、血清診断があり、遺伝子検査が可能な場
劣ることが示されている。やむを得ず FLCZ を使用する
合もある。
場合は、十分量( 400∼800 mg/日)を用い、注意深く経過
[治療]
治療薬の中心は、ITCZ および L-AMB であり、治療薬
の選択は、重症度および基礎疾患を加味して行う。
基礎疾患のない軽症例では、無治療でも予後良好であり、
を観察する。アゾール系薬である VRCZ に対しても
で感受性があり、有効性が期待されるが、症例数が少
なくエビデンスは不十分である。したがって、ITCZ や
L-AMB が使用できない場合に限って第二選択薬として考
慮してもよいと考えられる。
輸入真菌症
I
49
第 1 章 深在性真菌症の診断と治療のフローチャート
I
輸入真菌症フローチャート
➡解説 222∼230 頁
コクシジオイデス症
A.どのような患者がハイリスクか
予防投与
(注)
・流行地
への渡航歴のある患者(健常者も含む)
・ステロイド・免疫抑制薬の投与、 AIDS 患者、
HSCT・臓器移植患者、妊婦、有色人種など
流行地で臓器移植を施行された患者、流行地出身の臓器移
植患者、ドナーが流行地出身であった場合や、本症の既往
歴のある患者では予防投与を考慮する
・FLCZ 400 mg/回 1 日 1 回経口投与、または ITCZ 内用液
[C1Ⅲ]
あるいはカプセル剤 200 mg/回 1 日 1 回経口投与
注:米国南西部(アリゾナ州、カリフォルニア州南部、ニュー
メキシコ州など)
、中南米
B.どのような場合に発症を疑うか
経験的治療
臨床症状:無症状∼咳嗽、喀痰、発熱、胸痛など
画像診断:肺門リンパ節腫脹を伴う浸潤影(急性の
場合)
、結節影(単発・多発)
、空洞影(慢
性の場合)
血清診断:各種抗体・抗原検査(専門機関依頼)
一般に行わない
標的治療
#
C.どのような検査を実施するか
培養検査:一般医療機関では原則として行わない
(専門機関へ相談)
病理組織学的診断:病変部の生検で特徴的な菌体成
分(球状体)の確認
確定診断例
・FLCZ 400 mg/回 1 日 1 回経口または静脈内投与 [AⅢ]
・ITCZ 内用液またはカプセル剤 200 mg/回 1 日 1∼2 回経
口投与、あるいは 200 mg/回 1 日 1 回点滴静注(loading
[BⅢ]
dose:1 日 2 回点滴静注を 2 日間)
重症例:
・L-AMB 2∼6 mg/kg/日 1 日 1 回点滴静注、改善が見ら
[AⅢ]
れるまで。その後アゾール系経口薬
・慢性型で病変が限局していれば外科的切除も考慮する
[BⅢ]
・播種型で改善に乏しい場合は高用量アゾール系薬を考慮
[BⅢ]
する
# FLCZ は 1 分間に 10 mL を超えない速度で投与する
パラコクシジオイデス症
A.どのような患者がハイリスクか
予防投与
(注)
・流行地
に長期滞在歴のある患者
・アルコール多飲、喫煙歴のある中年男性
一般に行わない
注:ブラジルを中心にメキシコ∼アルゼンチンに広がる中南
米の広範囲(特に農村部)
B.どのような場合に発症を疑うか
経験的治療
臨床症状:慢性の咳嗽、喀痰、血痰、労作時呼吸困難、
発熱、体重減少、盗汗などの消耗性症状、
上気道の粘膜病変、頸部リンパ節腫脹
画像診断:肺門リンパ節腫脹を伴う両側びまん性間質
影、空洞影、結節影
血清診断:抗体検査(専門機関依頼)
一般に行わない
C.どのような検査を実施するか
培養検査:本菌は極めて成長が遅いため診断的意義は
低い(必要な場合は専門機関へ相談)
病理組織学的診断:病変部の生検で特徴的な酵母の
確認
50
標的治療
確定診断例
・ITCZ 内用液またはカプセル剤 100 mg/回 1 日 1 回経口投
[AⅢ]
与
・FLCZ 200∼600 mg/回 1 日 1 回経口投与
[BⅢ]
・アゾール系薬の効果が不十分な場合
[BⅢ]
L-AMB 2∼5 mg/kg/回 1 日 1 回点滴静注
I 輸入真菌症フローチャート
コクシジオイデス症
[診断]
による感染症である。本
菌はブラジルを中心とした中南米の広い範囲(メキシコ、
州、カリフォルニア州南部、ニューメキシコ州、テキサス
アルゼンチンなど)に分布しており、経気道的に感染し、
州西部など)
、中南米(ブラジル、アルゼンチン、コロン
肺に初感染巣を形成する。進行は極めて緩徐で、10 年以
ビアなど)が流行地域である。本菌は極めて感染力が強く、
上経過して発症することが特徴であるため、流行地での滞
流行地を通過しただけで感染したという報告もあり、診断
在歴を十分に遡って聴取することが大切である。本症は流
の際には詳細な渡航歴の聴取が必須である。健常者も罹患
行地での長期居住歴のある患者に発症することがほとんど
する疾患であるが免疫低下宿主、妊婦、有色人種では重篤
で、しかも中年の男性が 9 割を占める。アルコールの多飲、
化しやすいとされている。原則として菌糸形である分節型
喫煙もリスクファクターとされている。臨床症状は極めて
分生子を経気道的に吸入することで感染する。症状はほと
非特異的で、慢性呼吸器症状(咳嗽、喀痰、血痰、労作時
んど目立たないか、一過性に発熱、咳嗽、喀痰などが出現
息切れ)
、発熱、盗汗、体重減少などの消耗症状を認める。
する程度のことが多いため、わが国では感染に気付かない
そのほか鼻・口腔・咽喉頭などの粘膜の有痛性潰瘍性病変、
まま帰国し検診で異常影を指摘されるという症例(慢性肺
頸部リンパ節腫大などがみられることもある。画像所見は
コクシジオイデス症)が大多数を占める。その場合、画像
両側性のびまん性間質影、空洞影、結節影であり、緩徐に
所見としては主として単発あるいは多発結節影もしくは空
進行し最終的には呼吸不全に至る。診断は病変部生検標本
洞影を呈する。本菌は極めて感染力が強いため、一般医療
の病理組織学的診断が基本である。血清抗体検査測定も用
機関での培養は検査室内感染の危険があり、行うべきでは
いられる(専門機関に依頼、226 頁参照)
。
組み合わせて診断を行うべきである。なお、本症は 4 類感
[治療]
原則として診断例は全例、長期の治療が必要である。
染症に指定されており、最寄りの保健所への届出が必要で
ITCZ 100 mg/日が第一選択薬であり、12 か月以上の継続
ある。
[AⅢ]
。FLCZ は ITCZ に比較して一般的に
が必要となる
[治療]
章
[診断]
って起こる感染症であり、主として米国南西部(アリゾナ
高い(感度はやや低い)
。渡航歴、画像所見、血清診断を
1
パラコクシジオイデス症
コクシジオイデス症はコクシジオイデス属菌が原因とな
ない。血清診断として抗体検査が有用で、特異度は極めて
第
効果が劣るとされている。アゾール系薬の効果が不十分な
場合は L-AMB の投与を行い、効果がみられたらアゾー
海外のガイドラインでは無症状であれば経過観察すると
ル系薬への変更を行う
[BⅢ]
。本症は再発しやすいことも
記載されているものが多いが、上述のとおり有色人種では
特徴で、数十年の経過での再発例も知られているので持続
重篤化しやすいとされているため、原則として全例治療す
的な経過観察が必要である。
[C1Ⅲ]
。肺コクシジオイデス症
べきであると考えられる
に対する第一選択薬は FLCZ 400 mg/日(経口または静脈
内投与)もしくは ITCZ 200∼400 mg/日を 3∼6 か月継続
[BⅢ]
である。病変が限局している場合は外科的
する治療
輸入真菌症
I
[BⅢ]
。重症例は初期治療として
切除も検討すべきである
L-AMB 2∼6 mg/kg/日を症状の改善がみられるまで継続
し、その後アゾール系薬に変更、計 12 か月以上の治療継
[AⅢ]
。播種性では高用量のアゾール系薬の投
続を要する
[BⅢ]
。本症の既往のある患者や流行地で臓
与も考慮する
器移植を施行された患者、流行地出身の臓器移植患者、臓
器ドナーが流行地出身などの場合は、免疫抑制薬使用時な
どに F L C Z 4 0 0 m g/回 1 日 1 回経口もしくは I T C Z
[C1Ⅲ]
。
200 mg/回 1 日 1 回の予防投与を考慮する
51
第 1 章 深在性真菌症の診断と治療のフローチャート
I
輸入真菌症フローチャート
➡解説 222∼230 頁
マルネッフェイ型ペニシリウム症
A.どのような患者がハイリスクか
予防投与
(注)
・流行地
への渡航歴のある患者
・AIDS 患者など重度の細胞性免疫低下患者、HSCT・
臓器移植患者、ステロイドの投与
一般に行わない
注:ベトナム北部山岳地帯、中国・ベトナム国境地帯、タイ、マレ
ーシア、インド東部、オセアニアなど
B.どのような場合に発症を疑うか
経験的治療
臨床症状:無症状∼咳嗽、喀痰、発熱、胸痛、頭痛、貧
血、体重減少、皮疹、リンパ節腫大、肝脾腫
大など
画像診断:胸部のみではなく、全身病変の確認が必要
血清診断:β-D-グルカン値が上昇することがある
一般に行わない
標的治療
C.どのような検査を実施するか
培養検査:一般医療機関では原則として行わない(専門
機関へ相談)
病理組織学的診断:病変部の生検で特徴的な菌体成分
の確認
確定診断例
第一選択薬
・L-AMB 3∼5 mg/kg/回 1 日 1 回を点滴静注で 2 週間、
経過がよければ ITCZ 内用液またはカプセル剤
200 mg/回 1 日 2 回経口投与に変更して 10 週間継続
[AⅢ]
)
・軽症の場合には最初から ITCZ 内用液またはカプセル
[BⅢ]
剤を用いてもよい
・HIV 感染者では、再発の予防に ITCZ 内用液またはカプ
[AⅡ]
セル剤の有効性が示されている
ブラストミセス症
A.どのような患者がハイリスクか
予防投与
(注)
・流行地
への渡航歴のある患者(健常者も含む)
・ステロイド・免疫抑制薬の投与、AIDS 患者、HSCT・
臓器移植患者、COPD 患者、高齢者など
一般に行わない
注:米国オハイオ川∼ミシシッピ川流域、五大湖周辺、セントロー
レンス川流域など
B.どのような場合に発症を疑うか
経験的治療
臨床症状:慢性の咳嗽、喀痰、血痰、労作時呼吸困難、
胸痛、発熱、体重減少、盗汗などの消耗性症
状など。皮膚・粘膜に無痛性の隆起病変、潰
瘍性病変
画像診断:浸潤影(急性の場合)
、間質影、網状粒状影、
結節影(単発・多発)
、空洞影(慢性の場合)
一般に行わない
標的治療
C.どのような検査を実施するか
培養検査:一般医療機関では原則として行わない(専門
機関へ相談)
病理組織学的診断:病変部の生検で特徴的な菌体成分
の確認
52
確定診断例
・L-AMB 2∼5 mg/kg/回 1 日 1 回点滴静注、改善後に
ITCZ 内用液またはカプセル剤 200 mg/回 1 日 1∼2 回
[AⅡ]
経口投与
軽症:
・ITCZ 内用液またはカプセル剤 200 mg/回 1 日 1∼2 回
[AⅡ]
経口投与
播種型、重症例:
・L-AMB 3∼5 mg/kg/回 1 日 1 回点滴静注、改善後に
[BⅢ]
アゾール系経口薬
I 輸入真菌症フローチャート
マルネッフェイ型ペニシリウム症
[診断]
第
1
章
ブラストミセス症
[診断]
ペニシリウム症は、二形性真菌である
が原因となって起こる全身性感染症である。ペ
ニシリウム属菌としては、
ブラストミセス症は
による
感染症である。本症は幸いわが国での発症の報告はない
のみ例外的にはヒ
( 2014 年 1 月現在)
。流行地は主として米国オハイオ川か
トへの病原性を有するが、輸入真菌症のなかでは感染力は
らミシシッピ川にかけての河川流域、五大湖周辺の湿潤し
比較的弱く、通常は AIDS などの重篤な細胞性免疫低下
た土壌の分布する地域である。健常者でも感染するが免疫
宿主に多い。流行地域は、ベトナム北部山岳地帯、中国・
低下宿主、COPD 患者、高齢者のほか、アフリカ系人種
ベトナム国境地帯、タイ、マレーシア、インド東部、オセ
などは重症化しやすい。無症状であることも多いが慢性の
アニアでも報告がみられる。
咳嗽・喀痰、労作時呼吸困難、胸痛のほか、発熱、体重減
経気道感染によって発症すると推測されているが、呼吸
少、盗汗などの消耗性症状が持続することもある。そのほ
器症状は目立たず、胸部 X 線、CT でも肺病変が確認され
か皮膚や粘膜に痛みを伴わない隆起性、潰瘍性病変を呈す
ないことが多い。全身播種を起こすと、播種性ヒストプラ
ることがある。画像所見は結節影、空洞影、間質影などで
スマ症と類似した病像を示す。主な全身症状は、発熱、貧
あり、特徴的な所見に乏しい。渡航歴、各種所見からはヒ
血、体重減少、皮疹、リンパ節腫大、肝脾腫大である。ペ
ストプラスマ症との鑑別が重要である。臨床的には血清診
ニシリウム症の診断法としては、培養・同定、病理学的診
断(抗原検査、抗体検査など)はあまり有用ではなく、診
断である。血清β-D-グルカン値が上昇する例もある。遺
断のためには病変部の生検標本の病理組織学的診断が必要
伝子診断も可能な場合がある。
である。
[治療および予後]
[治療]
致死率は非常に高く、早期診断と早期の適切な治療が重
診断された症例は原則として全例治療を行うべきである
要である。また、抗真菌薬が奏効しても、治療終了後、6
と考えられる。軽症の場合は ITCZ 200 mg/回 1 日 1∼2
か月以内に再発する症例が少なくないため、再発を予防す
回経口投与を 12 か月以上継続のみで治療を行うこともあ
るための予防投与も考慮する。
る[AⅡ]
が、一般的には初期治療として L-AM B 3∼
第一選択薬は、L-AMB 3∼5 mg/kg/日を 2 週間継続す
る。経過が良ければ、ITCZ 400 mg/日に変更して、さら
5 mg/kg/日の投与を行い、その後 ITCZ への切り替えを
[AⅡ]
。
行う
[AⅡ]
。軽症の場合は、ITCZ を最初か
に 10 週間継続する
ら用いてもよい
[BⅢ]
。FLCZ は有効性が若干落ちること
が知られており、第一選択とはなりにくいが、ITCZ が使
用できない場合には選択の対象となる。VRCZ も
で活性であり有効性が期待されるが、症例が少なく十分な
データが集まっていない。ITCZ や L-AMB が使用できな
い場合の第二選択として考慮しても良いと考えられる。
輸入真菌症
I
では、MCZ、KCZ、5-FC にも感受性がある。特に
AIDS 患者では、治療終了後も放置すると約 50 %が 6 か
月以内に再発するので、ITCZ 200 mg/日の予防投与が勧
められる
[AⅡ]
。
53
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