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Harmony Flight 2015

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Harmony Flight 2015
Destination
HELSINKI
2015/11/15-20
いきいきいばらき女性塾事業
Harmony Flight 2015
OUR REPORT about FINLAND
多様な生き方を創る
Harmony Flight 2015
今後の活躍を期待して
茨城県知事
橋 本 昌
近年、我が国が人口減少・超高齢社会を迎える中、女性一人ひとりの能力が存分に発揮され、
活躍できる環境整備は急務となっております。
国におきましては、女性の活躍は日本社会のあり方を変える大きな政策課題として取り組
み、昨年9月には、企業や国、地方自治体に女性登用の数値目標の設定・公表を義務付ける「女
性の職業生活における活躍の推進に関する法律」が施行されました。
本県では、全国5番目に男女共同参画推進条例を策定しますとともに、茨城県男女共同参
画基本計画に基づき、役員・管理職への女性の登用促進、男女の働き方の見直し、地域の女
性リーダー育成、さらには企業のトップをはじめとした県民の意識改革など、女性関連施策
を総合的に推進しております。
女性の海外派遣事業も、国際的視野と指導力を持った地域の女性リーダーの育成を目的と
して昭和 57 年度に始まり、今回で 33 回目を迎えました。これまで 826 名の研修員を輩出し、
参加された皆様には、議会議員や自治体の各種委員をはじめ、幅広い分野で活躍いただいて
おります。
今回の「ハーモニーフライトいばらき 2015」は、庄司一子リーダーをはじめとする 14 名
の方々が、6日間にわたりフィンランドを訪問されました。福祉国家としても名高いフィン
ランドは、世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数ランキングなどが常に上位で、
社会保障、教育、子育て支援等で世界の注目を浴びております。
訪問先では、男女共同参画に関する先進的な取組みや制度に加え、ワーク・ライフ・バラ
ンスについて積極的に学ばれ、また、研修員の皆様が自ら選定したテーマである教育や福祉、
フィンランドブランドについて、現地の調査・研究を精力的に行うなど、有意義な研修であっ
たと伺っております。
研修員の皆様におかれましては、今回の事業で得られた貴重な経験のもとに、政策・方針
決定過程への参画、活動の場の拡大など、地域や職場のリーダーとして大いに御活躍されま
すことを期待しております。結びに、この事業の実施に当たり、格別の御支援、御協力をい
ただきました関係者の皆様に心から感謝申し上げます。
-1-
Harmony Flight 2015
フィンランドに学ぶ人権尊重と男女平等
― 女性の力を社会の力に ―
ハーモニーフライト 2015 リーダー
庄 司 一 子
このたび、県のご配慮によりハーモニーフライト 2015 に参加させていただきました。今
回で 33 回目とのことですが、全国で取り組みを続けているのは2県だけだそうです。茨城
県の男女共同参画推進への意識の高さを感じました。
今年度の視察先はフィンランドです。視察の目的や課題、今後の発展を考え全員で決定し
ました。一行15 名は入念な下調べの後、5つのテーマを決め、各々の課題と期待を胸に 11 月
15 日から 20 日までの4泊6日の研修に向かいました。
10 時間のフライト後、ヘルシンキに着くと晩秋の曇り空が私たちを迎えてくれました。こ
れからやって来る厳しい冬の前の景色です。12 月に入ると一気に雪景色に変わり街が明るく
なる、訪れたのはそんな季節でした。
一行は初日から精力的に研修を行いました。職人と芸術家の村を訪ね、子育て支援・男女
共同の子育てを学び、デザインデストリクト見学、先進的教育を進める中学校訪問、フィン
ランド女性起業家連盟と女性団体連盟中央本部でワークライフバランス、男女共同参画を学
び、最終日の午後は小雨の中を生誕 150 年のシベリウス記念公園を訪ね、夕方帰国の途につ
きました。
フィンランドは「人権」と「男女平等」がすべての中心でした。フィンランドは 100 年以
上前から政治的意思決定プロセスに女性が参加していますが、これは十分な教育を受け、高
い評価を受けている積極的な女性たちのたゆまぬ努力の結果であり、社会の発展、推進にこ
れが必要不可欠であることを女性自らが認識しています。また社会において相互に「信頼」
があることに誇りをもち、人材育成こそ財産と考え教育に投資しているとのことでした。
急速なグローバル化、社会の変化が進む中、これからの日本は社会の構成員一人ひとりが
互いにその存在や人権を認め、幸福を感じて生きられる社会になることが必要です。性別、
年齢、障害、国籍など様ざまな違いを含めすべての人が共に生きる努力をし相互に協力する
能力を備えることが求められています。そのための教育、環境整備、女性の一層の社会参加、
一人ひとりの責任ある行動が求められています。フィンランドでの学びを通してフライト
2015 のメンバー全員がそれを胸に研修を終えることができました。私たち一行にフライトが
もらしてくれた、大きな実りと言えるでしょう。
最後に本事業の取り組みを継続し、この機会を与えてくださった茨城県橋本知事、事前研
修会や空港まで足を運び応援してくださった諸先輩方、ご支援いただいた関係企業の皆さま、
すべての関係の方々に心よりお礼申し上げます。今後この取り組みがますます発展し、研修
の学びが茨城県の発展につながることを祈ってやみません。
-2-
Harmony Flight 2015
INDEX
(1)研修の記録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3P
(2)フィンランドの概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5P
(3)個性が地域を光らせる・・・・・・・・・ブランド化班・・・・・ 6P
(4)育む・子育て支援・・・・・・・・・・・福 祉 班・・・・・・ 8P
(5)未来への学び・・・・・・・・・・・・・教 育 班・・・・・・10P
(6)多様な働き方を求めて・・・・・・・・・ワーク・ライフ・バランス担当・・・12P
(7)男女共同参画の基礎は家庭から・・・・・男女共同参画担当・・・14P
(8)研修を終えて~メンバーの言葉・・・・・・・・・・・・・・・・18P
研修の記録
実施日
内 容
7/18(土)、19(日) 第 1 回研修会
実施場所
< レイクエコー > 茨城県女性プラザ
8/20(木)
結団式
茨城県庁会議室
9/12(土)
第 2 回研修会
シェアオフィス SSS
10/17(土)
第 3 回研修会及び女性のつばさ壮行会
女性プラザ男女共同参画支援室
11/ 6(金)
出発前報告会
茨城県庁講堂
11/15(日)
成田出発 11:50 < AY074 >
ヘルシンキ
ヘルシンキ到着 15:20
11/16(月)
【ブランド化】事例視察(フィスカルス村・市内)
ヘルシンキ市内消防署・カッリオ図書館見学
ヘルシンキ
11/17(火)
【福祉テーマ】ネウボラについて受講
ネウボラ・ブランド化関係・市内視察
ヘルシンキ
11/18(水)
【教育テーマ】カサヴォリ中学校視察
【ワークライフバランス】
フィンランド女性起業家連盟にて受講
ヘルシンキ
11/19(木)
【男女共同参画】フィンランド女性国家評議会にて受講
国立博物館見学
ヘルシンキ出発 17:20 < AY073 >
ヘルシンキ
11/20(金)
成田到着 10:00
12/27(日)
事後研修会
茨城県庁会議室
研修報告
< レイクエコー > 茨城県女性プラザ
2/13(土)
-3-
-4-
フィンランド共和国の基礎データ
Republic of Finland
一 般 事 情
1
2
3
4
5
6
面積:33.8 万平方キロメートル
人口:約 547 万人(2015 年 7 月末時点)
首都:ヘルシンキ(約 60 万人)
言語:フィンランド語、スウェーデン語(人口全体の約 5.4%)
宗教:福音ルーテル教(国教)、正教会(国教)
略史:1917年 ロシアより独立、フィンランド共和国成立
1955年 国連加盟
1975年 CSCE(欧州安全保障協力会議)開催
1986年 EFTA(欧州自由貿易連合)正式加盟
1995年 EU(欧州連合)加盟
1999年 EMU(欧州通貨連盟)加盟
2002年 ユーロ導入
二 国 関 係
(1)日本との二国間貿易
(ア)貿易収支
2009年より対フィンランド貿易は輸入超過が続
いている。 (単位:億円、出典:財務省通関統計)
年
対フィンランド輸出 対フィンランド輸入
収支
2007年
2,967
1,981
986
2008年
2,438
1,970
468
2009年
797
1,076
-279
2010年
871
1,374
-503
2011年
877
1,055
-179
2012年
471
1,067
-596
2013年
487
1,484
-997
2014年
463
1,677
-1,214
(イ)主要輸出品目(2013 年)
(括弧内は二国間貿易全体に占める割合(%))
フィンランド
への輸出
フィンランド
からの輸入
輸送用機器(自動車・部品等 24.8%)、一
般機械(原動機・金属加工機械・鉱山用機
械等 23.6%)、電気機器(半導体等電子部
品・電気計測機械等 20.8%)、ゴム製品(ゴ
ムタイヤ及びチューブ等 6.3%)他
木材(18.7%)、紙類および同製品(12.2%)、
電気機器(重電機器等 10.9%)、非鉄金属
(コバルト等 10.1%)、一般機械(荷役機械
等 8.6%)、木製品及びコルク製品(8.6%)
他
日本との投資関係
(出典:財務省通関統計)
(単位:億円、出典:日銀「国際収支統計」)
(注)(純流動(資本撤退や投資回収を含む))
年
2014年
(2)投資関連
(ア)日本の対フィンランド進出企業
フィンランドに進出している日系企業は 138 社
(2014 年外務省)である。日本企業によるフィン
ランド企業の買収事例も多く、近年では、ザ・スイッ
チ、シムコープ、スーパーセル、ムラタエレクロト
ニクス、ロックラといった起業の買収があげられる。
また、日本からフィンランドへは週に 28 便の直行
便が就航しており、日本にとり北欧・東欧地域等へ
のゲートウェイとなっている。
(イ)フィンランドの対日進出企業
現在、在日フィンランド商工会議所には 60 社登
録されている。フィンランドの売上高上位企業であ
るノキア、ストラ・エンソ、UPM キュンメネ、オ
ウトクンプなどが日本に支社を置いている。
イッタラ(陶器)、マリメッコ(衣類)、スーント(時
計)などは、日本でも知られているブランドである。
(ウ)福祉関連事業
日本のビジネスに関心のあるフィンランドの福祉
関連企業が、仙台市の行政、研究機関及び産業界と
共同で「フィンランド健康福祉センタープロジェク
ト」(2005 年開所)に参加している。またこのプ
ログラムは新潟県阿賀野市(2009 年開所)、愛媛
県西条市(2010 年開所)でも行われている。こ
れらのセンターでは、フィンランドの福祉に関する
ノウハウを取り入れている。
(3)在留邦人数:1,782 人(2015 年 9 月現在)
日本の対フィンランド投資金額
フィンランドの対日投資金額
159 億円(フロー)
5 億円(フロー)
(4)在日当該国人数:673 人(2014 年12 月現在)
-5-
Harmony Flight 2015
【ブランド化】
「個性が地域を光らせる」
~フィスカルス村(Fiskars Village)を事例に~
「フィスカルス」ブランドのはさみが製造されて
いた場所である。
「フィスカルス社」が工場移転により村を去っ
た後、残された歴史ある建物群に 10 ~ 15 組の
アーティストが移り住み、芸術活動を始めたこと
がきっかけで脚光を浴びるようになった。
フィスカルス村の魅力は、昔の建物とモダンな
デザイン、そしてのどかな村の雰囲気が混在する
不思議な空間だ。
川岸に建つ学校や工場跡が、博物館やギャラ
リー、アトリエやカフェなどに生まれ変わった
ONOMA 組合長でガラス作家の Moberg 氏
訪問日:2015 年 11 月 16 日
視察先:ザ コーペレイティブ オブ アーティサンズ、デザイナーズ
アンドアーティスト イン フィスカルス(ONOMA)
説明者:カミーラ モバーグさん(M.A.Designer、組合長)
担 当:島袋・明石・大里・富山・山崎
フィスカルス村には現在、一般住民を含めて 500
~ 600 人が暮らしている。
3 ONOMA(協同組合)の運営方法
1996 年、村に住むアーティスト自らが発案
1 視察の目的
し た 協 同 組 合 ONOMA(The Cooperative of
茨城県は、資源に恵まれた豊かなところだが、
が発足した。
その魅力を伝えるブランド力が不足している。資
入会条件は、職業を持っていること、フィスカ
源を活かし、人を活かすヒントを今回の研修で得
ルス村に住んでいることの 2 つである。入会金は
たいと考え、フィスカルス村を視察先に選定した。
400 ユーロ、入退会は自由意志となっている。現
Artisans, Designers and Artists in Fiskars)
在、組合員はアーティスト、ダンサー、音楽家、
2 フィスカルス村について
ライターなど約 120 名で構成されている。
フィスカルス村(Fiskars Village)は、首都ヘ
回会議で年間の方針やプロジェクト(イベント、
ルシンキから、車で1時間半、静かな自然に囲ま
商品開発)等について議論している。
れた「アーティスト村」である。
組合設立のメリットは、一個人では受けにく
この場所はかつて、工業地帯として栄えた。特
い国や自治 体 からの 補 助が 受け や すいことで
に 17 世紀から鉄製品の製造が盛んで、有名な
あ る。 ま た、 組 合 員 協 同 の 展 示 場「ONOMA
同組合は、組合員がボランティアで行い、年2
SHOP」や組合主催の夏の大展示会「Summer
exhibitions」への出品によって、アーティスト
自身の作品を売るチャンネルが増えることなどが
挙げられる。
組合の活動は、組合員が年 2 回の会議で年間の
方針やプロジェクト(イベント、商品開発)等に
ついて議論し決定している。また、組合は組合員
のボランティアにより運営されている為、個々の
意識を高め、積極性を引き出し、維持することが
フィスカルス村の様子
必要となってくる。
-6-
Harmony Flight 2015
村に住む職人やアーティストは、自分の制作活動
4 フィスカルス村での生活
に没頭してしまう傾向があり、詳細な市場調査を
フィスカルス村に住むアーティストは、大学な
行っていない場合がある。そのため、アーティス
どで教鞭をとるなど、村以外で他の職種を兼務し
ト自身がマーケティングについて学ぶことが課題
活動している人も多い。平均年齢は約 50 歳で、
となっている。
下は 20 代から最高齢は 86 歳である。
フィスカルス村は、首都ヘルシンキからも2時
村には、組合員自身のショップや住居が点在し
間以内で訪問できる自然豊かな場所のため、避暑
ている。住居やアトリエは、賃貸、買取、土地を
地としても名高く、そのため夏を中心に、10 万
購入して建築することもあるが、現在、村に空き
人もの観光客が訪れる。しかし、オフシーズンは
物件はないという。個々ショップは、冬場不定期
観光客の足が遠のき、組合員も不在となる日が多
で閉まっていることも多い。
く、村は閑散としてしまうため、冬期の村の活か
し方を検討しているところである。
6 フィスカルス村での学びを茨城へ
フィスカルス村は、首都まで 1.5 時間の距離に
あること、自然が豊かなことなど、茨城県が置か
れた状況と非常によく似ている。
フィスカルス村が 30 年もの間アーティストや
観光客を惹きつけて来ることができたのは、アー
ティスト個人と ONOMA 全体で、高いクオリティ
のある作品を発信しつづけてきたことが最大の要
因であると考える。
上段左)カフェランドリー(クリーニング店をカフェに改装)
上段右)協同組合長 カミーラ モバーグのガラス作品
下 段)テキスタイル アーティスト ディーパ ナンチャミア
のアトリエ兼住居の外観とクラフト作品
人を絶えず惹きつける地域をつくるためには、
地域に住む一人ひとりが、自身の能力や技術の向
上を図り、その結果地域の発展があるのではない
組合の会員数は、1985 年の 30 名から、現在
だろうか。
は 4 倍に増えた。その理由として「芸術家を集約
また、地域に住む多様な人と個性をお互いに尊
し、作品制作の環境を与える」という組合のコン
重し合い、コラボレーションすることで、新しい
セプトに賛同を得たためである。また、フィンラ
動きがめばえ、葛藤を乗り越えながら人間関係を
ンド国内に、この様な環境・優遇を受けられる場
高め合える新たな地域づくりにつながっていくの
所が他に無かったことも大きい。
だろう。
自然が豊かなこの村で、集中して創作したり時
には芸術家同士が出会い、互いに交流し合うこと
がここの大きな利点であろう。一方、少し遠出を
して首都ヘルシンキに出かけることもでき、また
異なったインスピレーションを得るということも
この優れたロケーションである利点もある。
5 現在の課題
フィンランド人は日本人に似て、自らをアピー
ルする力が弱い傾向にあるという。フィスカルス
-7-
「ONOMA SHOP」の前で
Harmony Flight 2015
【 福 祉 】「 育む・子育て支援」
3 ネウボラ設立から現在
日 時:2015 年 11 月 17 日
内 容:< 午前 > ホテル会議室にて川村・パルム
ネン・博子さんによる『ヘルシンキの出
産・子どもネウボラ』のレクチヤー
< 午後 > 外部から ターベサセマハルス
テーション(ヘルスケアセンター)の
ネウボラを2か所見学
担 当:堤・小貫・渋谷・塚田
1 ネウボラ視察の趣意
日本では子どもの問題行動や親による虐待・ネ
グレクトなどが社会問題になっており、2015 年
の「世界幸福度ランキング」によると国民の幸福
度も先進国の中では低く、出生率も低下している。
一方、フィンランドでは女性や子どものための
福祉制度が充実しており、
「お母さんに優しい国
ランキング」では常に上位を占めている。それは、
社会全体で子育て支援を行っているからだとい
う。
例えば、妊娠期から就学前までの子育てを支援
する「ネウボラ」
、出産・育児のための両親の「休
業制度」や「子ども・母親手当」がある。また、
その母親手当の中には、出産に必要な用品が入っ
た「育児パッケージ」が、親になる自覚を目的の
一つとして無料で配られる。
今回は、子育て支援の中でも日本で関心の高
まっているネウボラを視察した。
2 ネウボラとは
ネウボラは 1922 年に小児科医アルヴォ・ウルッ
ポが、乳児の死亡率を下げるために、ヘルシンキ
市内のラステンリンナ小児科病院に併設した民間
団体の活動が始まりである。それにより乳児死亡
率が急速に低下した実績から、1944 年には制度
化され、市町村自治体にネウボラ設置が義務づけ
られて出産・子どもネウボラが定着していった。
それからおよそ 70 年の間、表面化した社会問
題と対峙するため、子ども福祉・子育支援の法改
正が度々行われ、対話と信頼に基づく「切れ目の
ない支援」の根幹は変えずに、その対象の枠を広
げた。
最近は、胎児や妊婦の健康及び子どもの心身の
健全な成長・発達の促進と観察といった身体的の
状況の支援だけでなく、家族全体への心身両面の
支援、家庭環境や家族の生活習慣の健全さを促進
するとともに、早期に子どもと家族が必要とする
支援が重要に
な っ て き た。
また、必要に
よっては専門
家による検査
や治療に誘導
したりもして
いる。
4 ネウボラで働く資格
ネウボラは、
フィンランド語でネウボ「NEUVO」
=相談する、
「LA」= 場所を意味し、相談・助言
をする場所である。
フィンランドでは妊娠の兆候があるとすぐに
「ネウボラ」に行くという。
例えば首都ヘルシンキの人口約 62 万人、年間
約 7000 件の出産があり、ネウボラ 24 か所、保
健師 209 人で対応しており、利用率は 97%であ
る(2015 年現在)
。
ネウボラを指導・監督しているのは社会保健省
であり、
その運営は市町村自治体(クンタ)が担い、
職員はその自治体の正規職員である。
日本 で い う高 校 教 育 を 受 け た 後、職 業 大 学
(AMK)で4年間の課程を修了し保健師の資格を
得て、子ども・家族・働き盛りの大人・高齢者の
健康管理教育を受ける。
さらに助産師の資格を取り、出産ネウボラと子
どもネウボラを兼務することもある。
ヘルシンキでは年2
回市が研修を実施し、
保健師が福祉と理学
療法に関して学び、親
により適切な助言がで
きるようにしている。
-8-
Harmony Flight 2015
5 研修の概要
ヘルシンキ在住のネウボラを利用した日本人の
女性と話す機会があった。彼女によると「お母さ
んたちに聞くと、ネウボラは担当してくれる保健
師さんによって対応の内容に差があり、満足度が
ちがうようです。私としては相談への対応が遅い
と思います。こちらの人たちの考え方のせいなの
か、緊急なら病院へ行くだろうという判断なのか
と思いますが、返事が3日後になるのは普通です」
と話してくれ、
「特に問題がない人の場合、ネウ
ボラで行う健診は最低限のこと」だった。
川村・パルムネン・博子さん(中央)
ネウボラの部屋に直接入ることはできなかった
が、その場所はヘルスセンターや病院に隣接し、
気軽に立ち寄れる場所であった。研修員の一人が
「日本にも同じような保健センターがある」と言っ
ていたが、日本でも子どもの健診が受けられる場
所は各自治体で設けられている。
日本とフィンランドの支援の大きな違いは、
「ネ
ウボラ」にいる保健師が妊娠の兆候があった時か
ら就学前まで、母子だけでなく家族全体を対話に
よって、支援し、信頼関係をきずき、必要に応じ
て医師・心理士・ソーシャルワーカー・児童相談
所へとつないで連携を図ることだ。しかもその間、
継続して同じ保健師が相談者の担当をする。ネウ
ボラの保健師が『ネウボラおばさん』と親しみの
ある言葉で呼ばれるのはこのためだろう。なお、
子どものデーターは 50 年間保管される。
6 今後の課題
現在のフィンランドのネウボラは、きょうだい
をも含む家族全員の健康調査を行う総合健診に枠
を広げ、その公共サービスの再編成が今後の課題
となっている。それは、いじめ、児童虐待や夫婦
間での暴力、アルコール依存などが原因で起きる
社会問題を未然に発見し、乳幼児期の子どもが健
全なる成長を遂げるためにも早期解決をはかるこ
とが目的にある。
このことは現在の日本にも合い通じる点があり、
日本もフィンランドと同じ課題があるといえる。
7 おわりに
日本でも女性の社会進出と共に、出生率低下の
懸念から『切れ目のない支援』をめざし、様々な
法改正や制度、支援が行われている。
本県でも平成 27 年4月より助産師による「助
産師なんでも出張相談」を開始している。各自治
体では、笠間市で同年3月に妊娠・出産・子育て
の相談に応じたり、必要なサービスを紹介したり
する子育て世代包括支援センター「みらい」を保
健センター内に併設したり、古河市では同年3月
に子育て支援に特化した財団を立ち上げ試行して
いる。また、日立市でも同年 12 月に 18 歳未満
の子どもたちとその家庭を切れ目なく総合的に支
援する「日立市子どもセンター」を開所している。
もともと日本では児童福祉法・母子保健法によ
り母子、そして子どもへの支援体制の基礎は作ら
れている。だが、福祉と保健と窓口が異なり、小
学校就学までの子どもを対象にした場合、厚労省
と文科省と同じように窓口が異なっており、一貫
した支援を行うには難しい現状である。もし行政
上の理由が切れ目の一因なら、民間との連携、協
働により、もしくはバックアップで切れ目のない
支援につなげることが出来るのではないだろう
か。
また、行政保健師は幅広い年齢を対象とし、そ
の仕事も多岐に渡っており、人員確保に苦慮して
いる現状である。そこで、保健師、助産師などの
専門職を軸に地域の子育て経験者と連携し、ベ
ビーカーでも気軽に立ちよれる小さなネウボラの
ような拠点がもっとあってもよいのではないか。
ネウボラの根幹にあるのは、対話と信頼によっ
て結ばれた『人と人とのつながり』であり、それ
が絆となり、切れ目のない支援になっているので
ある。
-9-
Harmony Flight 2015
【 教 育 】「 未 来 へ の 学 び」
~新カリキュラムモデル校の視察~
2 新カリキュラムについて
◎将来(2030 年をイメージ)に必要な能力を身に
つけるための学習(※1)。
中高あわせた生徒数は750 名。
教師は60 名。クラスの編成は18 人程。
訪問日:2015 年 11月18 日
視察先:カサヴォリ中高学校
説明者:マリョケッキ先生
担 当:今泉・大川・山本・横田
担当の先生・教頭
先生・校長先生
1 フィンランドの学校制度と視察校について
国際的に高い評価を受けているフィンランド
の教育。そのカリキュラムが次年度(28 年8月)
から変わるという中、既に新カリキュラムを実施
◎教師から学ぶという受動的なものから、生徒が中心
となり、自ら進んで学習するといったスタイル(※2)。
◎総合学習に重点が置かれ
ている。
しているカサヴォリ中高学校を視察。
フィンランドでは、基礎教育課程が7歳から始
まり、1〜9学年が日本の小・中学生にあたる。
総合学習の一環として
行われたトイレの修繕
今回の視察校カサヴォリ中高学校は基礎教育7〜
9学年(日本の中学)と後期中等教育(日本の高校)
◎男女平等(男女共同参画を含む)に重点が置か
れている。
のいわゆる中高一貫校である。
カリキュラムの変更は、10年ぶりに行われるも
ので、国が定期的に教育システムの大枠を決める
が、手法は現場に任せ、教員の採用も各学校に一
任されている。その権限を持つ校長は教職経験者
ではなく、議会で決定された政治家であった。
研修の様子
フィンランド社会におけるすべての基礎は「信
頼」から成り立ち、人材こそ財産であるという考
3 学びの様子
えのもと、教師は修士課程修了という高学歴であ
この学校では、タブレット、コンピュータ、ス
り、最も尊敬される職業となっている。
マートフォンなどを使用し、ノートを取ることは
また、全ての人が平等に質の高い教育を受ける
せず、宿題や家庭とのやりとりも、クラウドシス
という理念のもと、全ての学校が公立であり、教
テムを利用するなど、IT化が進んでいる。しか
育費は高等教育(大学または高等職業専門学校)
し、これはツールのひとつであり、人と人とのか
まで無償である。
かわりを大切に考え、face to face の学習をしっ
- 10 -
Harmony Flight 2015
か り と 行 い、 グ
ループでの学習を
重視している。
教師はインター
ネ ッ ト icloud を
使って情報共有
少人数によるディスカッションの授業
し、意見交換をす
るなど相互の学び
合いも行いながら生徒の能力の把握やコントロー
ルにつとめ実現可能なゴールへと導く。
また、教室内では生徒がリラックスして学んで
いる様子がうかがえた。
2000年から始まった OECD 生徒の学習到達
度調査(PISA)により、フィンランドの学力水
準の高さが注目されるようになり、多くの国が
フィンランドに学んできた。近年(2012)年こそ、
日本がフィンランドを上回る結果となったが、来
年度 10 年ぶりにそのシステムが変わる前、今回
のモデル校の視察ができたことは大いに意義があ
る。新システムの結果を知るのは 2018 年になる
が、常に上位に位置する中、
「競争」ではなく、
「学
ぶことの楽しさ」が重視されたフィンランドの教
育(テストでの順位付けはなく、進学のための9
年生以外通知表というものもない)には、数字で
は表せない、人として生きるための学びがあった。
カッリオ図書館
5 研修を終えて
信頼により社会が成り立っているフィンラン
ド。この信頼という文化も、生きる力を育てる教
育の大きな成果かも知れない。
日本でも現行の学習指導要領に於いて「生きる
力」に目が向けられ、時に企業や地域の方々を講
師として招くことや、民間校長の起用など国内に
おいても地域や企業との連携に目を向けた、様々
な取り組みが行われている。
茨城県では、企業や団体の協力体制によりすべ
ての中学校で職場体験が実施されている。しかし、
その期間は半数以上が3日以内である。働く実感
を持つためには、最低5日間が必要というこの体
験を、更に実のあるものにするには、私たち社会
全体がもっとキャリア教育に理解を示し、子ども
達を未来の納税者に育てていかなければならない。
牛久市で実施している「学びあい」のような先
進的な取り組みや、
2014 年末、
国が次の教育改革、
として打ち出した「アクティブ・ラーニング 」
「
、総
将来は物理学者になると
いう夢をもつ9年生は、
たくさんの質問に臆する
こともなく、最後の挨拶
で「僕は皆さまに満足の
いく答えができましたで
しょうか」と訪問者を気
遣う姿勢もみせた。
合的な学習の時間」などが検討されていることに
期待し、今後の取り組みが、子どもたちそれぞれ
の隠れた才能を伸ばすことに繋がり、学ぶことが、
人生を通じて楽しいと思えるような内容になるこ
とを願う。
引用文献 ※ 1 カサヴォリ中学校“ドリームスクールスライド”P5
※2 カサヴォリ中学校“ドリームスクールスライド”P4
4 読書について
学校の図書室自体は小さな一角でしかなく、特
に重点を置いている風は見られなかったが、この
国では、当たり前のように本があり、いたるとこ
ろに活字があふれている。
途中に立ち寄った、多くの利用者が訪れるヘル
シンキ市内のカッリオ図書館は、建物も魅力的で
あり、子連れでも訪れやすい空間であった。
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Harmony Flight 2015
【ワーク・ライフ・バランス】
「多様な働き方を求めて」
盛んであり、金融の国際化、IT化、研究開発によっ
訪問日:2015 年 11 月 18 日
て経済成長した。国民の約 65% は中小企業(※1)
視察先:フィンランド女性起業家連盟
(フィンランド経営者連合会内)
で働いているが、日本よりは大企業の割合が多い。
説明者:事務局長マリウ・スランディア氏、経
営者連合会国際部門担当トーマス氏、
弁護士アッテン氏
担 当:明石、今泉、大里、島袋、堤、冨山、山崎
フィンランドでは女性の就業率が 67.8% と高い。
また、男女差がほぼ無く、男女とも働き続けること
が定着している。
しかしフィンランドの女性の働いている職種は、
医療・福祉、教育関係などの公務員やサービス業が
ワーク・ライフ・バランスに関して企業の事例を
多く、民間企業それも製造業などが比較的多い男性
学びたいと視察の申し入れをし、フィンランド女性
と比べると平均収入が低い。収入の格差は年金の格
起業家連盟と経営者連合会から、フィンランドの職
差につながり、高齢女性の生活困窮問題がある。ま
場と女性の働き方について、さらにフィンランドで
た、女性従業員の多い企業では産前産後休暇の負担
の起業の状況やサポートについてレクチャーを受け
が重いことも問題となっており、企業負担の平等化
た。
が長期的な目標になっている。
女性起業家連盟は1947年に設立され、7 千名の
女性経営者が会員。女性が創業しやすく、女性経営
者が働きやすい制度を作り、男女平等を推進するこ
とをミッションとしている。
女性起業家連盟の事務局長マリウさん自身も創業体験者
2 多様な働き方
女性が設立した会員企業「Mam Work」が紹介
1 企業や雇用の状況
された。
フィンランドは、豊かな森林資源を活用した紙・
この会社を創設したのは子どものいる女性。産前
パルプ製造業、金属・機械製造業、情報通信産業が
産後休暇で家にいる女性が登録し、短期的、臨時的
規模別従業員数構成比(※1)
に専門的な技術を持つ人材がほしい企業に、登録人
材を紹介している会社である。企業とネットワーク
を構築し、産前産後休暇中の登録者が在宅等で無
理無く働けるようにしたことで、個人の専門技術の
維持や、時間を有効に活用した収入につながってい
る。産休が終わって元の職場に復職するまでの間の
仕事、もしくは仕事を辞めた人にとっては「次の仕
事までのつなぎとしての仕事」の役割も持つ。登録
者にはITやマーケティングの専門家など、様々な
フィンランド:フィンランド女性企業家連盟 当日プレゼンデータから引用
日本:平成26年経済センサス-基礎調査結果(総務省統計局)
職種の人がいる。
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Harmony Flight 2015
これら在宅ワークを雇用されて行う形態もあれ
終身雇用を基本にした社会制度設計から、多様な
ば、創業していくつもの会社の仕事を受ける形態も
ワークスタイルに対応できるように再設計が必要で
考えられる。きちんとした倫理観があれば一社専業
ある。
型ではないマルチジョブも可能性がある。
一方、自分の人生をライフステージに応じて主体
的に選択していくには、自分の中に選択できる根拠
3 働き方の選択肢としての創業
となる知識や経験、スキルが必要である。常に学び、
フィンランドでは近年起業が増えており、2014 年
あることがそれを支えるであろう。
1 年間で 43,000 件起業したという。これは、全企
マリウさんは、幼稚園の時代から「自分のしたい
業の 15% にあたる。現代には様々な社会問題があ
ことをして、自分がなりたいものになる」という教
るが、それを解決していくための技術開発や新し
育が大切であると語った。帰国してテーマの検討を
いサービスなど色々なチャンスが開けている。例え
する私たちに、重みをもって蘇る言葉であった。
ば、高齢者対応ビジネスやエネルギー対策、ロボッ
※ 1:従業員規模 250 人未満を中小企業と定義したが、日
本側は統計の区分の都合上 300 人未満のデータを使用
している。
高めていくための教育の機会が、社会の中に多様に
トテクノロジーな
ど。新しい経営者の
中には、専門職を経
就業率(2013 年)
験している高学歴の
人も少なくない。し
かし経営の経験は乏
しく、経営者連合会
では「ヘルプライン」
に弁護士を置き、法
律や制度などのアドバイスを無料で行っている。
また、1人だけの会社が 17 万社あり、企業総数
の 60% を占める。他人を雇用するには至ってはい
フィンランドと EU のデータ:OECD Database"Lsbour Force Statistics”
(2014年 9 月)
日本:総務省統計局労働力調査(2014 年 8 月)
ないものの、自分の働く場と働き方を作っている。
フィンランドでは女性経営者も多く28%に該当す
るが、女性経営者は個人事業も含めた小規模企業が
多く、大手民間企業の役員はまだ少ない。社会的な
影響力を発揮するポジションへのチャレンジに対す
るエンパワーメントは同連盟でも力を入れている。
4 研修を終えて~社会にも自分にも選択肢を
日本の女性の就業率も年々増えて 62.4% に達し
トーマスさんからレクチャーの様子
ているが、男性の就業率との差が 18.4% もあり、
30 歳代で離職する女性が多いことから、子育てを
しながら働く環境整備が急がれている。さらに在宅
ワークや時短ワークなど働き方の選択肢が増えるこ
とは、小さな子どものいる母親ばかりか、在宅介護
をしている人や、病気や障害のある人にとっても、
社会とつながり、収入を得るうえで重要である。
ワーク・ライフ・バランスは、ライフステージに
よって変化するものである。豊かな人生のためには、
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トーマスさんとマリウさんに記念品を贈呈
Harmony Flight 2015
【男女共同参画】
「男女共同参画の基礎は家庭から」
② 女性の労働力を活かし、経済界における地位
を確立すること。
③ 産休取得の男女平等を推進し、家事と仕事の
両立がなされるようにすること。
④ 政策は平等を考えて行うこと。
⑤ 難民、特に女性・子どもの立場の現状を知ら
せること。
⑥ 売春を合法化しようとするアムネスティ(N
GO・国際人権救援機構)の方針に反対する。
リーサ・カトラインさん(右)とレーナ・ケンキラさん(左)
連盟は、会員団体と密接な関係にあるため、幅
広い分野から重要な専門知識を得て、的確な行動
日 時:2015 年 11 月 19 日
を素早くとることができる。女性の政治団体が加
視察先:フィンランド女性団体連盟 中央本部
入していることもあって、議会や内閣との繋がり
説明者:リーサ・カトライン、レーナ・ケンキラ
も深まってきた。そのため法制定は男女平等を考
担 当:大川・小貫・渋谷・塚田・山本・横田
慮して行うようになり、政治に圧力をかけやすく
なった。
1 創設の目的
フィンランド女性団体連盟は、1911 年に国際女
性団体のフィンランド代表として設立され、現在
では 57 団体 40 万人以上の人々が参加している。
政治団体とは無関係で、中立の立場をとり、男
女平等のために活動する女性の包括的な組織で
ある。社会における全ての決定に、女性の割合を
増やすこと、女性への暴力をなくすこと、女性の
立場を改善することなどを目的として活動してい
る。
また、メディアに声明を発表したり、キャンペー
ン活動やデモストレーションを展開して、男女平
等や女性の人権について、より多くの人に認識し
2 活動の内容
てもらえるよう活動している。
連盟の活動は、政治的に中立の立場で、施策決
3 現状の課題
定には透明性が重視されている。この半年間では、
下記のような呼びかけを行ってきた。
社会の経済状況の悪化により、 国から様々な団
体への予算カットが行われているため、活動の幅
① 低所得者、シニアの年金状況を調査し、貧困
にならないよう手立てをすること。
が縮少する恐れがある。
女性の平均賃金は、男性の約80%。原因は女
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Harmony Flight 2015
性重役が少ないためと考えられる。また女性就業
者の割合は、一般企業の 56%に対し、公務員は
5 伝えたいこと
72%と、社会福祉や病院に多く、賃金の低い所
男女による職種の偏りを改善していくことが必
に女性が多いためでもある。福祉予算のカットは、
要である。そのためには幼いころから学校でも男
女性の賃金カットに直結する問題なので、大きな
女平等の考え方を育て、さらに女性の自己実現に
課題である。
向けてサポートしていく体制を作っていくことが
重要である。
男女平等の考え方は、社会で育てていかなけれ
ばならない。たとえば、家庭では夫婦が家事を分
担し、感謝しあっていれば、子どもはそれを見な
がら家庭内の男女共同を具体的な事柄としてとら
えつつ成長するだろう。学校では、男女ともその
子らしい良さに自信を持って楽しく生きていける
ように指導できる学校であったら、男女平等など
と、取りたてて言わなくとも、互いの人権を認め
合える子どもに育てられるだろう。
男女共同参画の基礎は家庭から、まずは夫婦
4 日本へのアドバイス
で親子でお互いに相手の立場をわかりあう前提が
あってこそ成り立つものであることを忘れてはな
男女共同参画推進のためには、圧力団体、市民
らない。お互い様という日本人特有の考え方があ
団体が、国から予算を得て、自由な活動を行うこ
る。相手を信頼し、自分の役割をはたして、支え
とが大切である。さらに、ひとりではなく、いろ
あう社会こそが男女共同参画を推進するのではな
いろな団体が共に意見や力を集約して声明文を出
いだろうか。
し、政治への圧力を高めるのである。
この問題には、まだまだ問題が多すぎると思わ
れるが、家庭や職場、公の立場から発信していく。
国民一人一人に訴えていくことが大事である。
2011 年に創立 100 周年を迎えた
活動歴を伝える冊子
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PHOTO ALBUM
8/20結団式
10/17壮行会
11/6出発前報告会
FINNAIR AY074
夜遅くまでのミーティング
/15
11
成田空港にて
/16
11
に到着
フィスカルス村
野外で明かりのアート展示も
(フィスカルス村) テキスタイル アーティスト ディーパさんのアトリエ
/17
11
ラを訪ねる
市内のネウボ
地下鉄・
トラムで移動
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デザインミュージアム
/18
11
ルーム
明るいランチ
生徒から質問をうける
オリジナル ソコス ホテル プレジデンティ ヘルシンキ
(ガイド兼通訳 石田さんと)
/19
11
カンピ礼拝堂
ガイド兼通訳の佐藤さん
国立博物館(シベリウス生誕150周年展)
/20
11
成田空港到着
/27
12
研修まとめ
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Harmony Flight 2015
研 修 員 か ら
幸せに生きるための学び
横 田 照 実
女性フォーラム10期生として教育を考える中、い
つかはと思っていた国。昨今の PISA でこそ日本が
フィンランドを上回るようになったが、
「競争」で
はなく「学ぶことの楽しさ」からの教育は、今の日
本で失われつつある「信頼」と「人として幸せに生
きるための学び」があった。また、森と湖の自然溢
れる風景に茨城にも似た居心地の良さを感じた。
フィンランド研修
明石 麻衣子
私の「dream school」
今 泉 広 子
「主体的な体験を通して感じる事全てが学習となり
生きる力を培う!」これは「dream school」と銘
うったカサヴォリ中学校の教育から私が強く感じた
事です。振り返ると準備から報告までの半年以上に
及ぶハーモニーフライトの活動はまさに私にとって
の「dream school」でした。貴重な体験をさせて
いただき本当に有難うございました。
私を変えた国
大 川 千 翔
研修先にフィンランドを選んでよかったと思えたの
は、彼らの国民性を見たとき。派手でなく、「信頼」
を軸にしている。どこか似てないでしょうか。ここ
茨城でもと、いろいろな示唆を与えてくれるような
ところでした。彼らを見て、私たちがまだ開けてな
い可能性とそれと同時に問題点をも見せてくれたよ
うに感じました。
研修という目的で訪問した国、フィンランド。私が
暮らす日本とは、歴史政治において大きく違うこと
を実感しました。温かさよりもシャープさを感じ
たのは、多くの女性が個を持ち堂々と見えたからで
しょうか。特に学んだ中で「男女の不平等は不経済
である。」という言葉が強烈でした。そして出会え
た仲間の皆様に感謝です。
品格のある国を訪ねて
大人の国 フィンランド
山 﨑 庸 江
塚 田 幸 子
長年の希望を叶え研修員になり訪問した学校の教え
は「楽しい学習は辛い事を忘れる」と言う事でした。
10 歳前後の幼少期から温かな教育を受け学ぶ子供
達は皆「今後の長い人生をきっと豊かに幸せに歩む
のだろう」と思わせる佇まいでした。幼い頃から大
人に至るまで教育の大切さを教えて頂くとても良い
機会をありがとうございました。
財政の問題が福祉予算の削減にまで迫りそうだとい
う。利益の多い企業と少ない企業で税率が同じであ
ることへの不公平感や、医療が無料とはいえ地域格
差を我慢する必要もあり、すべてが円満ではない。
しかし、衣食住には贅沢ではない豊かさがあり、人
と人の信頼や社会と家庭の共助により堅実に生きる
国という印象をもった。
人と人との信頼関係の重要性
フィンランドを訪問して
非日常の世界への旅であり、人生のターニングポイ
ントとなったフィンランド研修でした。幸福度が高
い国への訪問で学んだことは、「人と人」との信頼
関係の大切さが、最も重要であるということでした。
今後は、研修で学んで得たスキルを地域の活動に幅
広く活かしたいと思います。
自らの意志で行動し、社会に発信している多くの女
性に会った。その姿は凛としてまぶしかった。私は、
調和を大切にした大和の心に育まれ、今に至ってい
る。これからは彼女たちの姿から学び得たことを加
味させて、日々の研鑽に努めたいと思う。
人生を創造する日本人
kiitos!
大里 ひろみ
島 袋 典 子
今回の研修のために買った本で、日本人青年がフィ
ンランドで仲間と立ち上げたブランドを知りショッ
プを訪ねてみた。Fiskars では日本人アーティスト
がメンバーになっていた。我々一行の通訳兼ガイド
も、ヘルシンキ在住の日本女性。彼女の高い見識に
サポートされて、フィンランドの実情に触れること
ができた。多謝!
小 貫 広 子
堤 玲
研修で、フィンランドを(少し)知ることができた。
また自分自身にも大きな気づきを与えてくれる研修
だった。自分が暮らす地域や日本のことをまだまだ
知らずにいること、好奇心を満たす勉強の楽しさ、
そして新しい仲間、先輩たちとの出会いによる刺激。
緊張とワクワク感が同居する約半年だった。全てに
感謝です。
- 18 -
Harmony Flight 2015
研 修 員 か ら
育ってきた環境
渋 谷 悦 子
“働く女性に、母親に優しい国”と言われるフィン
ランドで研修をして印象に残ったことは、幼い頃か
ら男女平等や人権について、社会で、優しい環境の
中で育てると自然に大人になっても受け入れやすく
なること、人と人との信頼感が強くなることを学ん
だ。
そこには、教育の充実と重要性が基礎になっている
のではないかと思った。
感 謝
山本 みゆき
多くの先輩方に見守られ、時には背中を押していた
だき、フィンランドへ飛び立つことができました。
6 日間の研修は、感性を刺激される日々でしたが、
自分に足りないものを見つめ直す貴重な時間にもな
りました。
支えてくださったすべての方々、そして 2015 フラ
イトメンバーに感謝すると共に学んできたことを活
かしてまいります。
教育が人を育て、地域を作り、国を動かす
冨山 かなえ
ハーモニーフライトの経験を通して、幼い頃から自
分を磨き続けることができる教育が、地域の価値を
高め、そして、国力の向上につながるという気づき
を得ました。これからも茨城を盛り上げていくため
のキャリア教育に携わっていきたいと改めて強く思
いました。参加させていただき、本当にありがとう
ございました。
ハーモニーフライトいばらき 2015に同行して
尊い「命」を次代につなぐ-今取り組むべきは、社会全体の意識改革!
茨城県女性政策統括監 森田 百合子
常に他国に支配されたフィンランド。男性が戦場に
とられ、国を運営しなければならなかったフィンラン
ドの女性達は、残された子どもの貴重な「命」を大切
に育まなければならないと一丸となった。
性別や年齢、社会背景にかかわらず、国民一人一人
の能力を高め、その能力を発揮しなければ国が存続で
きない。質の高い労働力を提供するには、まず、自分
自身が心身ともに健康で、責任ある仕事をしなければ
ならないと心を一つに行動していく中で、国民相互に
高い信頼性が生まれた。日没とともに帰宅して、残さ
れた子どもとの時間を大切に過ごす。子どもに対して
は、自分には何ができて、何ができないのか、自分の
課題を見つけ、自己解決能力を高めるよう見守りなが
ら生きる力を育み、未来の納税者に育てたという。
国の独立を守るため、第二次世界大戦まで戦いを余
儀なくされたフィンランド。この間の女性のエンパ
ワーメントが、今私たちに求められている。
原点は「命」。授かった尊い命を心身ともに、より
強く次の世代につなぐ。豊かな自然、資源に感謝し、
これらを活かす努力を続けることの大切さを再認識し
た研修であった。
我が国が、今取り組むべきは、社会全体の意識改革。
2040 年の本県人口は、現状の 297 万人から 242 万人
に減少すると推定されている。これを有事と認識し、
社会全体で働き方を見直し、男性が家事・育児・介護
へ参画する時間を増やし、国民希望出生率 1.8 に向け、
女性が働きながら子育てができる環境を社会全体で整
えること。これが急務である。
いきいきいばらき女性塾事業(ハーモニーフライトいばらき2015)は
下記の企業の御支援により実施しました。
株式会社常陽銀行 株式会社筑波銀行 茨城県信用組合 株式会社坂東太郎
水戸ヤクルト販売株式会社 木内酒造合資会社 (順不同)
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茨城県知事公室女性青少年課
〒310-8550 水戸市笠原町 978-6
TEL.029-301-2178 FAX.029-301-2189
E-mail: [email protected]
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