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マーケティング『クイーン・エリザベス号の厨房』

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マーケティング『クイーン・エリザベス号の厨房』
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エッセイ 素敵・発見!マーケティング 54
クイーン・エリザベス号の厨房
株式会社クリエイティブ・ワイズ 代表取締役 三宅曜子
近年、クルージングが注目されている。ラグ
ジュアリーでグレードが高いとされている船
がいくつかある中で、今回は夏季休暇を利用し
て、イギリス女王の名前を冠した『クイーン・
エリザベス号』に乗船した。この旅で、私が最
も注目したいことが『クックチル』だ。調理の
下ごしらえを比較的手の空いているアイドル
タイムに行い、2,000 名近くの乗客に対し、同
じ食事時間帯にフルコースのメニューをいか
に美味しく、美しい盛り付けで完璧にこなす事
が出来るかを実際に見てみたいと思う。
クイーン・エリザベス号
■エリザベステーラーが3度の新婚旅行に利用し、その後毎年乗った船
2010 年に 3 代目が竣工した客船『クイーン・エリザベス号』は、1930 年代にスコッ
トランドの造船所で建造され、イギリス国王ジョージ 6 世の妃である、エリザベスにち
なんで命名された、当時世界最大の客船である。現在は 3 代目で、キュナード社が建造、
総トン数 90,400t、全長は 294m で 2,092 人乗りである。この 3 代目は、初代の 1930
年代アールデコを基調としていてクラシックなイメージだが、設備は 4 年前に竣工した
旬レポ中国地域 2014 年 9 月号
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だけあって最新だ。
全長がカメラに収まらない大きさ
私はこのクイーン・エリザベス号でギリシャのアテネから 8 日間の地中海クルーズに
行った。今回のクルーズの乗船客は 2,000 名強。国別乗客はイギリス人が 986 名、オー
ストラリア人が 239 名、アメリカ人が 219 名、ギリシャ人が 150 名、ドイツ人が 93 名、
ついで日本人が 75 名と 6 番目。そ
の後カナダ、スペイン、ニュージー
ランド、フランスと続く。今回の旅
で私にとって一番の収穫は、これま
で気になっていた船内の厨房の仕
組みを知ることができたことだっ
た。仕事柄、ホテルやレストランの
厨房を見学する機会は何度かあっ
たが、船内の厨房は今回が初めてだ
った。言葉も嗜好も異なる各国の乗
客に対して毎日食事を提供してい
る、最先端の厨房を見学させてもらった。
旬レポ中国地域 2014 年 9 月号
1日3回食事を
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■とにかく整理整頓、美しい厨房がすべてを物語る!
ダイニングルームは客室のグレードにより、大きく分けて 3 か所のレストランと、終
日食事やデザートが出されるビュッフェレストラン、またアジアン料理やイタリアンが
出される専用のテーマ別レストランもある。これらのレストランでわがままな乗客のリ
クエストに応える様々なコース料理を的確に出すために、セントラルキッチンと、各グ
レード別のフロアキッチンの連携で作られる。見学させてもらったのは中心となるセン
トラルキッチンだ。
ちょうど朝食と昼食の間の
10 時半から入らせてもらった
が、すでにすべての道具や食器
が片づけられ、ステンレスもピ
カピカに磨かれた状態であっ
た。
船の中という限られた環境の
中で、シェフたちが最も気を遣
うのが食中毒だ。これまで私は
職業柄メニュー開発や商品開
発を行っているため、ホテルの
朝食が終わって 1 時間半後の厨房の様子。床もきれい。
レストラン厨房など、様々な場
所のキッチンを見てきたが、ス
イスのジラルデなど、海外の老舗三ツ星レストランの厨房はどこも同様に、食事の最後
のデザートの頃は、厨房内にはほとんどものが置かれていない状況だ。整理整頓、使っ
たらすぐに片づける、徹底した掃除、床の美しさなど共通項が多い。この船内のセント
ラルキッチンは、排気熱も油汚れも全くない。
ちょうどデザートとスープの仕
込みと単体リクエストメニュー
を若干作っている状況であった。
スープの仕込み中。後方にはサラマンダーが。
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本日のランチ用スープの盛り付け例
ホールとつながっているデシャップは、グラスひとつ置かれていない。ホテルのレス
トランのデシャップは伝票やグラス類、ドリンク瓶などが雑然と置かれているところも
見られるが、それは全くなくスッキリとしていた。
コース料理はメインディッシュだけでも 1 日 100 種類はあり、毎日メニューの内容が
替わる。
料理長は厨房内にあるガラスで囲われた小さな部屋のデスクで、メニュー構成や材料、
アレルギー食やイスラムのハラル食、ベジタリアンなど、様々な要望に対応するため、
パソコンの前で悩んでいる様子。どこのホテルや旅館でも同様の光景がみられる。
スーシェフがガラス張りの小部屋で
メニュー作り
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広い厨房はコースのカテゴリーで分かれていて、すでにメイン料理などはなかったが、
デザートのケーキ作りが行われていた。
デザート作りの最中
先ほど作っていたケーキがこのように!
料理の仕上げの
エリアにはすべて
の盛り付け例が写
真で掲示されてお
り、確認しながら
盛り付けているこ
とがわかる。フラ
ンス料理が中心な
ので、ソースの描
き方まで指示され
ている。これがア
ミューズ、スープ、
サラダ、メイン、
本日のメインメニューの盛り付け例の一部
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サブ、ブレッド、オードブルにスイーツ、フルーツまで、1 人につき 8 種類程度、メニ
ューリストから好みのものをチョイスする仕組みになっていて、それを毎日変化させる。
スタッフ同士のあうんの呼吸で作られていく。限られた時間の中で間違えず、的確にこ
なしていかなければならない。
また、レストランのレベルがよくわかるのが、厨房内で働くスタッフの服装だ。きち
んとした着こなしができていること、汚れていないこと、靴にまで意識が向けられてい
ることなど、責任者の徹底的な管理の元に着用されている。私もチェックしてみたが、
とてもきれいで安心した。
厨房内はステンレス製の機器が中心であるが、厨房機器はもちろんのこと、食器に盛り
付け後、提供するまでに保管する冷蔵庫の中やオーブン内までも、きれいに掃除が行き
届いていた。
わがままな客の要望に応えるシェフ達。服装もきちんとしている。
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きれいに磨きこまれた冷温蔵庫
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ホールもスタッフのレベルが非常に高い。ステーキを仕上げ、舌平目の骨を抜き、きれ
いに盛り付ける手さばきは見事で、特にトーションの使い方、サービングカトラリーの
使いこなしはお手本にしたいと思った。
支配人自らが目の前のワゴンで
舌平目のムニエルの骨を抜く
きれいに仕上げられた舌平目、レモンには
種が出ないようガーゼのカバーが!
ほぼ毎日 3 食を飽きさせず、感動さ
せ、「ありがとう」と、皆から声が出る。できそうでなかなかできないことをさらりと
こなすための努力と繊細な心配りは、これからの日本がテーマにしている“おもてなし”
の心にも通じるものがある。
毎日のアフタヌーンティータイムに部屋に持ってくるアミューズの美しさ、紅茶の温度
と淹れ方のこだわり、曇りひとつないグラス類、シルバーのカトラリーは美しく磨かれ
ている。
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これまでイギリスの料理は、どちらかというとあまり美味しくなく、良いイメージがな
かったが、それを完全に打ち砕く 8 日間であった。
一緒に連れて行った母は私以上に大満足。いい親孝行が出来た。
その晩の船長主催の晩さん会で、トップ達を紹介
マーケティングコンサルタントとして、中小企業支援及び指導、商業活
性化事業、まちづくり事業等、顧客のニーズを的確に捉えた市場開発とア
プローチ手法等、幅広い分野におけるマーケティング全般のアドバイスを
全国各地で手掛ける。また、平成 19 年度より地域資源活用事業の政策審議
委員、国会での参考人をはじめ、全国で地域資源を活用した事業推進、農
商工連携事業、JAPANブランドプロデューサーなど幅広く活躍中。
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経済産業省地域中小企業サポーター
同、伝統的産業工芸品産地プロデューサー
中小企業基盤整備機構経営支援アドバイザー
同、地域ブランドアドバイザー
内閣官房 地域活性化伝道師
広島県総合計画審議会委員 他
経済産業省 中国経済産業局 広報誌
旬レポ中国地域 2014 年 9 月号
Copyright 2014 Chugoku Bureau of Economy , Trade and Industry.
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