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電気抵抗の実験 - cloudfront.net
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本書を発行するにあたって,内容に誤りのないようできる限りの注意を払いましたが,
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・オーム社出版局「(書名を明記)」係宛,E-mail([email protected])
または書状,FAX(03-3293-2824)にてお願いします.
は
電
じ
め
に
気は、人間生活においてかかせないものです。
しかし電気は、一方では、わかりにくい、理解し難いものの代名詞にもなっています。
本書では、この理解し難いとされている電気を、実験を通して誰でもが楽しく学べ、かつ、よく
理解できる本となっています。
電磁気学を専門に学ぼうというみなさんにとっても、少し骨のある実験が用意されています。マ
ニアックな視点からも十分に楽しめると思います。
一方、小学校の高学年のみなさんにも、夏休みの課題として、親子で本書の実験に取り組んでほ
しいと思います。科学コンテストなどに応募するときの参考になると思います。
そのために、入口は小学校の低学年のみなさんにも十分になじみのある磁石遊びや静電気遊びか
ら入っていて、気がつけばガウスの法則など大学の基礎レベルの話にまで発展できる内容が紹介
されています。
中高校生のみなさんはもちろん、小学生のみなさんでも強い好奇心をもったみなさんは、本書を
読み進めながら実験に親しむことにより、次の時代の科学者やエンジニアに育ってくれることと
思います。
また、第 2 の人生の余暇を子どもたちと楽しもうという方には、是非、本書に紹介された実験
で、近所の子どもたちを集めて実験教室を開いていただき、先生として子どもたちに電気の実験
のおもしろさを伝えていっていただければと願っています。最近の子どもたちの理科離れ・理科
嫌いを改善し、是非、理科好きの子どもたちを共に育てていければと願っています。
本書の実験は、東京理科大学理学部第一部物理学科川村研究室の「理科大好き実験教室」に、
日々実際に参加してくれた小学生から大人のみなさんが、当研究室の学生たちと共に学んだ結晶
です。是非、一粒一粒をご賞味ください。
2012 年 2 月
川村 康文 iii
目 次
❶ 磁石の実験 ∼磁石の性質を調べよう∼
⓪⓪②
❶─① ぷかぷか方位磁針をつくろう 002
❶─② 平面的な磁力線の観察をしてみよう 003
❶─③ 簡易立体磁力線観察装置をつくろう 005
❶─④ よくわかる立体磁力線観察装置をつくろう 006
❶─⑤ 切っても切っても磁石実験をしてみよう:磁石はダイポール 007
❷ 静電気の実験 ∼静電気の不思議を体験しよう∼
⓪①⓪
❷─① 好き好き・イヤイヤくるくるストロー実験をしてみよう 010
❷─② 白熱!空き缶コロコロレースをしてみよう 012
❷─③ 手づくりバンデグラーフをつくろう 014
❷─④ フライング・バンデをつくろう 016
❸ 電気抵抗の実験 ∼テスタを使って調べてみよう∼
⓪①⑧
❸─① 「メートル + 1 ブリッジ」と手づくり直流電源器をつくろう 019
❸─② 導体の長さと抵抗の関係を調べてみよう 020
❸─③ オームの法則ってどんな法則か確かめてみよう 021
❸─④ 直列接続、並列接続の合成抵抗を求めよう 023
❸─⑤ 豆電球は非オーム抵抗 !? を調べてみよう 024
❹ 電磁石をつくろう ∼最強の電磁石へ挑戦しよう∼
⓪②⑥
❹─① 万能条件調節可能電磁石をつくろう 026
❹─② 導線の太さで磁力は変わるのか調べてみよう 027
❹─③ 鉄芯の代わりに別の材質を芯にしてみよう 028
❹─④ 強力 !! U 字型電磁石をつくろう 030
❹─⑤ 超強力 !! ダンベル電磁石をつくろう 032
iv
理論がわかる 電気の手づくり実験◎目 次
❺ モータをつくろう
⓪③④
❺─① クリップモータカーレースにチャレンジしよう 035
❺─② 3 極モータを手づくりしよう 038
❻ リニアモータカーをつくろう
⓪④②
❻─① リニアモータバーをつくろう 042
❻─② 簡易リニアモータカーをつくろう 043
❻─③ リニアモータカーをつくろう 046
❼ 手づくり検流計をつくろう
⓪⑤⓪
❼─① 磁石がふれる検流計をつくろう 050
❼─② コイルがふれる検流計をつくろう 052
❼─③ 検流計を直流電圧計にしてみよう 054
❽ 静磁場の実験 ∼磁極にはたらく力を調べよう∼
⓪⑤⑥
❽─① 磁極に作用する力を測定しよう 056
❽─② 複数の磁荷から受ける力と磁場を観察しよう 061
❾ 静電場の実験 ∼電場の性質を調べてみよう∼
⓪⑥②
❾─① 静電気力を調べてみよう 062
❾─② 手づくりバンデで導体球の周りの電場を可視化しよう 064
❾─③ 2 つの電荷がつくる電場を観察しよう 065
❾─④ 平行電場の観察をしよう 067
❿ ガウスの法則の学習 ∼電気力線のモデルをつくろう∼
⓪⑦⓪
⓫ コンデンサの実験 ∼コンデンサのはたらきを調べよう∼
⓪⑦④
❿─① 電気力線のモデル実験をしよう 071
⓫─① ペットボトルはく検電器をつくろう 074
⓫─② パチッ、ビリ !! 手づくり平行板コンデンサをつくろう 076
v
⓫─③ 手元でできる雷実験をしよう 081
⓫─④ 巨大雷実験機を体験しよう 082
⓫─⑤ コンデンサを放電しよう 083
⓬ いろいろな電気回路をつくろう
⓪⑧④
⓬─① ホイートストンブリッジ実験をしよう 088
⓬─② 乾電池の起電力測定をしよう 089
⓬─③ ポテンショメータ実験をしよう 090
⓭ 電流がつくる磁場をみよう
⓪⑨②
⓭─① 磁場可視化ケーブルをつくろう 092
⓭─② 電気ブランコで、フレミングの左手の法則を理解しよう 098
⓭─③ 平行電流の間にはたらく力の観察しよう 099
⓮ 電磁誘導の実験 ∼ファラデーの法則を体感しよう∼
①⓪②
⓮─① コイルの近くで磁石を動かすとどうなるかみてみよう 102
⓮─② プラコップでスピーカ&マイクをつくろう 104
⓮─③ シャカシャカふるライトをつくろう 106
⓯ 相互誘導と自己誘導を調べよう
①⓪⑧
⓯─① 相互誘導でショーアップをしよう 108
⓯─② トランス式 AC アダプタを分解して活用しよう 111
⓯─③ コイルと乾電池で大電圧!自己誘導実験をしよう 112
⓯─④ リアクタンスを測定してみよう 114
⓰ 渦電流の実験 ∼磁石と導体でできる不思議な現象∼
①①⑥
⓰─① 磁石回転器をつくろう 116
⓰─② アラゴーの円板の実験をしよう 117
⓰─③ ミニアラゴーで遊ぼう 119
⓰─④ 渦電流でホットケーキをつくろう 121
vi
理論がわかる 電気の手づくり実験◎目 次
⓰─⑤ ふわふわ落ちる磁石の秘密を探ろう 122
⓰─⑥ 空飛ぶコインを追いかけよう 123
⓱ 交流発電の実験 ∼交流発電機をつくって発電しよう∼
①②④
⓱─① 手づくり交流発電機をつくろう 124
⓱─② 手づくり交流発電機をモータにしよう 126
⓱─③ 野菜水切り器で発電機をつくろう 127
⓱─④ 自転車で非接触発電の仕組みを知ろう 129
⓱─⑤ 地球ゴマ発電機をつくろう 130
⓲ サボニウス型風車風力発電機をつくろう
①③④
⓲─① ふーふー発電をつくろう 135
⓲─② 自然に吹く風でテレビをつけよう 137
⓳ 交流電流計・電圧計をつくろう
①④⓪
⓳─① 平行電流の実験をしよう 140
⓳─② 手づくり交流電流計 1 をつくろう 141
⓳─③ 手づくり交流電流計 2 をつくろう 143
⓴ 交流回路の実験 ∼ RLC 回路の活用を考えよう∼
①④⑥
⓴─① オシロスコープを使って RLC 直列回路を観察しよう 146
⓴─② 手づくり検流計を使って RLC 並列回路を観察しよう 147
⓴─③ RLC 回路利用実験 1 をしよう ∼ハイパス・ローパス∼ 148
⓴─④ RLC 回路利用実験 2 をしよう ∼直列共振回路∼ 150
㉑ 半導体素子で電子工作をしよう
①⑤②
㉑─① 3 つのタイプの整流回路をつくろう ∼半波整流回路∼ 155
㉑─② 3 つのタイプの整流回路をつくろう ∼全波整流回路∼ 156
㉑─③ 3 つのタイプの整流回路をつくろう ∼倍電圧整流回路∼ 158
vii
㉒ 色素増感太陽電池をつくろう
①⑥⓪
㉒─① 色素増感太陽電池をつくろう 160
㉒─② 電子メロディを組み立ててみよう 164
㉒─③ 模型自動車を太陽光で走らせよう 166
㉓ いろいろな素子での実験
①⑥⑧
㉓─① 炎と氷でペルチェ素子自動車をつくろう 168
㉓─② 水晶を擦ると光る !? たたくと光る !? をためしてみよう 172
㉓─③ 蛍光灯をピカピカ光らせてみよう 172
㉓─④ 圧電素子で音楽を聴いてみよう 173
㉓─⑤ あしふみ発電をためしてみよう 173
㉓─⑥ 発電床をつくろう 174
㉓─⑦ パンチング発電をつくろう 175
㉓─⑧ 熱電対の実験をしよう 177
㉔ 電磁波とラジオ
①⑦⑧
㉔─① ヘルツの実験で電磁波を体感しよう 178
㉔─② コヒーラを使って無線通信の原理を知ろう 180
㉔─③ 電池もアンテナもいらない“えこらじお”をつくろう 181
㉔─④ “えこらじお”の音をトランジスタで増幅しよう 184
㉔─⑤ 光通信をしてみよう 186
あとがき 188
索 引 190
189
参考文献 viii
リカちゃん(17 歳)
★元気系 JK
2年生。
都内の学校に通う高校
理からハ
じつは手先が器用。料
いける。
こう
けっ
ンダづけまで
ハカセ(32 歳)
★イケメン
系物理学者
カガクくん
嘱望される
の指導教官
。将来を
にしてこ
天才研究者
の年ですで
に教授。ど
んな難問
でもスマー
トに解いて
しまう。
カガクくん(21 歳)
★やんちゃ系サイエンス男子
大学 3 年生。理学部物理学科。バスケと
スケボーが得意。
リカの親友の兄である。
y
or
st
リカちゃんは高校 2 年生。親友カズコのお兄さんカガクくんにあこがれて選択科目は
物理をえらんだ
理数系とか好きだし!楽勝じゃん◇
のだが、授業がすすんでいくにつれて
…………ていうか、マジ?むずかしくない ? ブツリ !!! 電気の実験 とかちょーワ
ケわかんないしっ ! どーしよ成績落ちゃうよー ! リカ、 ピーンチ! ヽ ( ≧Д≦ ) ノ
…………………というわけで、リカちゃん、ことあるごとにカガクくんがボランティア
で講師をつとめる「実験教室」へでかけてはカガクくんの指導教官であるハカセ教授の
ジャマする教えを乞うことに。思ってもみなかったような質問を次々繰り出すリカちゃ
んに、さすがの若き天才物理学者もタジタジになることしばしば、でも彼女の旺盛な好
奇心にニコニコ、でもある日々なのだった─。
❶ 磁石の実験
∼磁石の性質を調べよう∼
大航海時代、多くの船が海をわたり、国と国との交流が急速に発展しました。しかし、今のよ
うに GPS などもない時代に、どうしてそのようなことが可能だったのでしょうか? その答え
は、羅針盤、つまり方位磁針です。磁石は、ギリシャのマグネシア地方で発見され、地名にちな
んでマグネットと名づけられてから、多くの迷える旅人たちを助けてきました。そして今でも、
モータの中など、磁石は普段から身近にあって私たちはよく利用しています。しかし、その性質
について深く考えることはあまりありません。この章では、磁石と磁力線についての実験を通し
て、磁石にはどのような性質があるのか考えていきます。それでは、私たちも電磁気の旅を始め
ましょう。旅に出る前に、まずは大切な相棒の方位磁針をつくりましょう。
実
は、地球は大きな磁石であり、北極には強力な S 極が、南極には強力な N 極があります。
地球のもっている磁力を利用して方位を知ることができる方位磁針をつくりましょう。
❶−① ぷかぷか方位磁針をつくろう
準備するもの★フェライト磁石、発泡スチロール、油性マジック、水を入れたボウルなど
実験・工作の手順★発泡スチロールを切る⇒フェライト磁石をつける⇒完成
①発泡スチロールを好きな形にデザインし、フェ
ライト磁石を埋め込む溝をカッターで彫りま
す。このとき、カッターで手をケガしないよう
に注意するのと同時に、磁石の N 極や S 極が
図 1 のように横向きになるようにしましょう。
②発泡スチロールに色などを塗って仕上げれば完
成です。水に浮かべれば、あら不思議! N 極
図 1 ■ぷかぷか方位磁針
が北を指します。
地球のもっている磁力に引きつけられて、N 極は北を、S 極は南を指します。また、N 極の
N は、北を意味する英語の north、S 極の S は南を意味する south の頭文字をとっているので覚
えておきましょう。図 2 と図 3 に作品例を紹介します。
磁石の性質として、
・N 極と S 極がある
・N 極同士、S 極同士を近づけると反発する
・N 極と S 極を近づけると引き合う
・鉄と引きつけ合う
002
実験❶−①
❶ 磁石の実験
作品例
図 3 ■やまと(齋藤光一君作)
図 2 ■日本地図(島宗知生君のアイデア)
といったことはみなさんも知っていると思います。ただ、それだけで終わってしまってはおもし
ろくありません。磁石は周りの空間にどのような影響を及ぼすのか、はたまた磁石の内部構造は
どのようになっているのか、磁石の性質を学んでみましょう。
磁
石の周りの磁力線はどうなっているのでしょうか。磁力線そのものは目にみえないので、
みようとすると道具を使うことになります。今回は鉄粉を使います。
❶−② 平面的な磁力線の観察をしてみよう
準備するもの★粒径の細かい鉄粉、棒磁石・
フェライト磁石・U 字磁石などいろいろな磁
石、A4 サイズの紙、A4 の紙が入る大きさの
トレー、スプレーのり、ラミネーター、透明
な下敷き、方位磁針、発泡スチロールの立方
体(2 cm×2 cm×2 cm)8 個
実験・工作の手順★トレーに紙を敷く⇒鉄粉
をまく⇒紙の上に下敷きを浮かせてのせる⇒
下敷きの上に磁石を置く⇒トレーを細かくた
たく⇒磁力線を観察する
図 4 ■磁力線の観察
①トレーに白い紙を敷き、ペットボトルのふたに千枚通しで穴をあけたもので、鉄粉をま
んべんなくまきます。
②発泡スチロールの立方体を下敷きに取りつけ、①で敷いた紙の上にのせます。
③下敷きの真ん中に磁石を好きな形にのせ(図 4)
、トレーを細かくたたくと図 5 のよう
に敷いた紙の上に磁力線がみえてきます。
④磁力線を保存したい場合は、スプレーのりを吹きかけて固めます。周りがスプレーのり
で汚れないよう、ダンボールの中などで行ってください。また、紙に近づけすぎると風
圧で模様が崩れるので、十分離して吹きかけてください。
⑤固まったらラミネートをします。のりでべたつくこともなく、きれいに保存できます。
003
実験❶−②
❶ 磁石の実験
図 5 ■鉄粉を使った例
図 7 ■ N 極同士を向かい合わせたと
きの磁力線
図 6 ■棒磁石の周りの磁力線
図 8 ■ N 極と S 極を向かい合わせ
たときの磁力線
図 9 ■ U 字磁石の周りの磁力線
図 5 は図 6 のように棒磁石を置いたときの例なので、参考にしてください。また、磁石の置
き方によって模様が変化します。図 7 ∼ 9 を参考にしてください。
予想は当たりましたか?
ポイントをまとめると以下のようになります。
・磁力線は N 極から出て S 極に入ります。途中で消えたり湧き出したりしません。
・磁極に近いところほど、磁力線が密になっています。
棒磁石の周りの磁力線は、N 極と S 極が近くにあることによって、図 6 のようになります。
ポイントは、
・磁力線は N 極から出て S 極に入る
・磁力線は途中で消えたり現れたりしない
の 2 つを確認してください。
鉄粉を使うと後片づけで集めるのが大変ですが、鉄粉
のかわりに約 1 cm の長さに切ったビニタイを使うと扱
いが楽になります。しかしそれ以上にビニタイを使うメ
リットは、磁力線を立体的に観察できることです。ト
レーの下にネオジム磁石をおいて、約 1 cm に切ったビ
図 10 ■ビニタイを用いた実験
ニタイをばらまき、トレーを優しく数回叩くと、図 10 のようになります。しかし、ビニタイが
混み入っていて細かいところがよくみえませんね。次は、この磁力線が立体的に観察できる実験
装置をつくりましょう。
004
実験❶−②
❶ 磁石の実験
紙
と砂鉄・鉄粉では磁力線は平面的にしか観察できませんが、磁力線は実際には立体的に広
がっています。続いて、鉄粉と油を用いて立体磁力線観察装置をつくりましょう。
❶−③ 簡易立体磁力線観察装置をつくろう
準備するもの★鉄粉(メッシュは 200)、キャノーラ油
またはミシン油(ミシン油はキャノーラ油より高いです
が、透明度が高く観察しやすくなります)
、化粧水の詰
め替え容器などの 50 mL 程度の透明な密封容器、フェ
N
ライト磁石 4 個程度(ネオジム磁石では鉄粉を引き寄
S
せすぎるので、フェライト磁石を使いましょう)、バッ
ト、漏斗、薬さじ、かくはん棒
実験・工作の手順★油に鉄粉を入れてかき混ぜる⇒容器
に移す⇒密封する⇒完成
図 11 ■簡易立体磁力線観察装置
※ここでは、密封容器の容量を 50 mL として解説します。
①ビーカーなどの適当な容器にキャノーラ油またはミシン油を 80 mL 程度注ぎます。
②鉄粉を薬さじの小さいほうで 2 杯ほど入れ、よくかくはんします。
③かくはんを止めて、大きな鉄粉の粒が沈んだのを確認したら、漏斗で上澄み液を密封容
器に移します。
④キャップを締めて密封したら完成です。
図 12 ■立体磁力線観察装置のつくり方
⑤立体磁力線観察装置を振って鉄粉を容器全体に散らしてから、立体磁力線観察装置に磁
石を近づけます。磁石の数や向き、配置を変え、磁力線を観察してみましょう。
磁力線は平面的なものではなく、立体的に広がっていることが目でみてわかります。
次
は外から磁石を近づけるのではなく、磁石を中に入れて磁石の周りの磁力線を観察できる
装置をつくってみましょう(図 13)
。
005
実験❶−③
❶ 磁石の実験
❶−④ よくわかる立体磁力線観察装置をつくろう
準備するもの★ミシン油、凹凸の少ない炭酸飲料用の 500 mL
ペ ッ ト ボ ト ル、 試 験 管 2 本( 直 径 21 mm と 18 mm を 1 本 ず
つ)、直径 18 mm の試験管に入る棒磁石(アルニコ磁石など)
、
スポンジ、実験&工作❶−③と同じ用具
Point 癲 試験管を 2 本使うと、磁石の角度が調整しやすくなります。
実験・工作の手順★ミシン油に鉄粉を入れる⇒ペットボトルに詰
める⇒直径 21 mm の試験管を挿し込む⇒直径 18 mm の試験管
に磁石を入れる⇒完成
①実験&工作❶−③と同様の手順でペットボトルにミシン油と
鉄粉を満杯にならないよう注意して入れ、直径 21 mm の試
験管を挿し込みます。これを、試験管Ⓐとします。試験管Ⓐ
図 13 ■立体的な磁力線
は隙間を埋めなくてもぴったりとペットボトルの口にはまり
ます。
②直径 18 mm の試験管(これを試験管Ⓑとします)の底に切ったスポンジを緩衝材とし
て入れ、棒磁石を入れておきます。
③このときスポンジは、磁石がペットボトルの真ん中にくるように大きさを調整します。
④はじめに試験管Ⓑを入れない状態でキャップを締め、ペットボトルをふって鉄粉をまん
べんなく散らし、少し落ち着くのを待ちます。その後、試験管Ⓑをそっと挿し込みます。
注意! 試験管を勢いよく入れると割れてしまうので、静かに入れましょう。使わないとき
は試験管Ⓑも入れた状態でキャップを締めて保管します。
私たちは、方位磁針などを使うときについつい 2 次元で考えてしまいますが、実は磁石が周
りに及ぼす影響は 3 次元で広がっています。また、地球も実はとても巨大な磁石なのですが、磁
石からでる磁力線が 3 次元であるためにちょっと困ったことがおきてしまいました。なんと、北
極を目指して旅をしていた冒険家が、北極は地下に埋まっているといいだしたのです。これは
いったいどういうことなのでしょう?
方位磁針の指し示す向き
地球と地磁気の磁力線を重ねて描くと図 14 のように
なり、地球上のほとんどの場所で地面と磁力線が平行で
ないので、原理的には方位磁針は水平にはならずに傾く
ことになります。
ある場所での水平面と磁力線のなす角を伏角といい、
磁力線が水平面にささる向きのとき、伏角は正と決めら
れています ( 図 15)。また、方位磁針が指し示す北(磁
北)は地球を大きな磁石と考えたときの S 極で、北磁
極(磁北極)と呼ばれます。図 14 からわかるように、
北極点と北磁極の位置は少しずれているので、方位磁針
006
実験❶−④
図 14 ■地球と地磁気
❶ 磁石の実験
図 15 ■伏 角
図 16 ■偏 角
は北極点(真北)を指してはいません。ある場所での真北と磁北のずれの角を偏角(磁気偏角)
といいます ( 図 16)。
磁
気テープを使って磁石の内部の構造を探ってみましょう。音楽テープなどの磁気テープを
ある程度の長さで切ると、その長さの磁石になります。テープはハサミで簡単に切ること
ができるので、磁石を切ったときにどうなるか、簡単に調べられます。
❶−⑤ 切っても切っても磁石実験をしてみよう:磁石はダイポール
準備するもの★未使用の 8 mm ビデオテープまたは音楽用カ
セットテープ、水を張ったボウル、磁石(フェライト磁石など)
、
押しピンまたは安全ピン、セロハンテープ
実験・工作の手順★磁気テープを長さ 5 cm 程度に切る⇒水に
浮かべる⇒テープに磁石を近づけたり、ハサミで切って観察す
る
①テープを 5 cm 程に切り、図 17 のように水に浮かべ、テー
プの端に磁石を近づけて極性を調べ、N 極側には目印とし
図 17 ■水を張ったボウルに
磁気テープを浮かべ
る
てピンで穴をあけます。
②テープを水中で図 18 のように切り、磁石を近づ
けてそれぞれの断面の極性を調べましょう。
③一度垂直に切ったテープをさらに短く切ってい
き、それぞれの断面の極性を調べましょう。
④一度切ったテープをセロハンテープでつなぎ、
テープの端とつなぎ目の極性を調べてみましょ
う。
007
実験❶−⑤
図 18 ■磁気テープを垂直に切る
❶ 磁石の実験
図 18 は A 側が N 極、B 側が S 極として描いています。テープは磁石になっているので、水
に浮かべると、穴をあけた方が方位磁針のように北を指します。テープを真ん中で切ると、N
極(A)の反対の C には S 極、S 極(B)の反対の D には N 極が現れます。そして、何度切っ
ても、N 極の反対には S 極が、S 極の反対には N 極が現れます。一度切ったテープをセロハン
テープでつなぐと、元の長さの磁石になり、つなぎ目に磁石を近づけても反応しません。
磁石をいくら切っても、N 極の反対には S 極が、S 極の反対には N 極が現れて磁石となり、
N 極・S 極を単独で取りだすことはできないことがわかります。これはとても大切な性質なの
で、もう少し深く考えてみましょう。磁気テープは、図 19 にみるように小さな磁石の並びで情
報を記録しています。
図 19 ■磁気配列の図
ここで、図 20 のような薄い円筒形のフェライト磁石をたくさん用意し、それを図 21 のよう
にたくさんつないで、長い磁石をつくることを考えます。イメージしやすいように、磁極(N
極と S 極)には砂鉄をつけています。
図 20 ■フェライト磁石
図 21 ■磁石の連結
何個もつなげると、図 21 のように左側に N 極、右側に S 極の長い磁石になります。そして
つないだところには砂鉄はついていないので、磁極がないことがわかります。では、この磁石を
N 極と S 極の中間で分割したら、N 極だけ、S 極だけの磁石になるのでしょうか?答えはもち
ろん No です。分割しても図 22 のように、元の磁石の半分の長さの磁石が 2 つできるだけです。
008
実験❶−⑤
❶ 磁石の実験
図 22 ■半分に分割したとき
図 23 ■切断したとき
では、さらに二度、三度と分割したらどうなるでしょうか。結果としては、最後には図 20 の
フェライト磁石 1 個にたどりつきます。ならばと、フェライト磁石を図 23 のように切断したり、
さらには砕いてみたらどうでしょうか? やはりさらに小さな磁石ができるだけです。つまり、
大きな磁石は小さな磁石の集まりなのです。
N 極だけ、S 極だけ(磁気単極子あるいはモノポールといいます)を探す研究は行われていま
すが、現在のところみつかっていません。
009
実験❶−⑤
❷ 静電気の実験
∼静電気の不思議を体験しよう∼
紀元前 600 年ごろ、ギリシャのタレスという学者がコハクを
羽毛で擦ると「不思議な力」で羽毛がつくことを発見しました。
しかし、これがエリザベス女王の侍医ギルバートによって静電気
であることが発見されたのは、西暦 1600 年になってからのこと
でした。みなさんも髪の毛を下敷きで擦って、逆立たせて遊んだ
経験はあると思います。実は、知らずしらずのうちに歴史的な発
見を体験していたのです。
図 1 ■タレス
図 2 ■静電気で髪の毛が引きつけられる様子
な
ぜ髪の毛を下敷きで擦ると、引きつけられるのでしょうか。それでは、くるくるストロー
の実験をして確認してみましょう! 磁石に N 極、S 極があるように、静電気にもプラ
スの静電気とマイナスの静電気があります。プラスの静電気とマイナスの静電気は引きつけ合
い、プラスの静電気同士、マイナスの静電気同士は反発し合う性質があります。そして、この静
電気による力を静電気力といいます。
❷−① 好き好き・イヤイヤくるくるストロー実験をしてみよう
準備するもの★紙コップ、ストロー 2 本、画びょう、セロテープ、ティシュペーパー、消
しゴム
実験・工作の手順★紙コップの底に画びょうを固定する⇒ストローの中心を画びょうの先に
のせる⇒一方のストローをティッシュペーパーで擦り、ティッシュペーパーと消しゴムで
擦ったストローを近づけて観察する
①図 3 のように、紙コップの底に画びょうをさし、セロハンテープで固定します。
010
実験❷−①
❷ 静電気の実験
図 4 ■くるくるストロー完成
図 3 ■くるくるストローのつくり方
②ストローの中心に片面だけ穴を空け、画びょうの先にのせます。このとき、ストローが
スムーズに回ることを確かめてください。
③画びょうにのせたストローをティッシュペーパーで擦り、もう 1 本のストローも同じ
くティッシュペーパーで擦って画びょうの先端にのせたストローに近づけます。
④画びょうにのせたストローをティッシュペーパーで擦り、もう 1 本のストローを消し
ゴムで擦って、画びょうの先端にのせたストローに近づけます。
ストローをティッシュペーパーで擦るとストローにマイナスの電気がたまり、消しゴムで擦る
とストローにプラスの電気がたまります。つまり、手にもったストローをティッシュペーパーで
擦った場合には、マイナスの電気同士で反発し、消しゴムで擦った場合には、プラスの電気とマ
イナスの電気で引き合ったのです。また、電気がたまることを電気が帯びると書いて、帯電する
といいます。
では、静電気のたまり方はどうなっているのでしょうか。実は、実験によって求められた電気
のたまりやすさの順に並べた表があります。それを帯電列(図 5)といいます。帯電列では、プ
ラスの電気を帯びやすい物質ほど左側に、マイナスの電気を帯びやすい物質ほど右側に並べられ
ています。
帯電列をみてみると、紙は真ん中付近にあり、ポリプロピレンと塩化ビニールは右側にありま
図 5 ■帯電列
011
実験❷−①
❷ 静電気の実験
す。実は、ストローの素材は主にポリプロピレンで、消しゴムは塩化ビニールです。つまり、ポ
リプロピレンより左側にある紙で擦ったときにはストローはマイナスに帯電し、消しゴムで擦っ
たときにはプラスに帯電したというわけです。
静
電気を利用して空き缶を動かしてレースをする実験をしてみましょう。
❷−② 白熱!空き缶コロコロレースをしてみよう
準備するもの★空き缶、ストローや塩化ビニールパイプ(以下、塩ビパイプとする)
、アク
リルパイプ、フリースやマフラー、紙などパイプを擦って静電気を生じるもの、陶器やガラ
スのビン
実験・工作の手順★空き缶にさまざまな物質のパイプを擦って近づける⇒空き缶の代わりに
陶器やガラスのビンで行う⇒観察する
①空き缶レースのルールを説明します。平らな机の上で、静電気がたまった棒で空き缶を
引きつけて早くゴールした人が勝ちです。
Point 癲 ストローを 3 本平行に並べれば十分引きつけられますが、もっと白熱した競争をしたけ
れば、硬くて折れない塩ビやアクリルのパイプを使いましょう。
②空き缶は電気を通す物体ですが、電気を通さない陶器やガラスのビンではどうなるで
しょうか。チャレンジしてみましょう。
マイナスの電気がたまったストローなどを空き缶に近づけると、ストロー側の空き缶の表面に
プラスの電気が引き寄せられ、ストローのマイナスの電気と引き合うので、空き缶はストローに
引きつけられコロコロ転がります。金属のように電気を通す物質は電子、すなわち物質内部を自
由に動き回ることのできる自由電子をもっています。自由電子が集まった部分はマイナスに帯電
したことになり、不足した部分はプラスに帯電したことになります。この現象を静電誘導といい
図 6 ■空き缶ころころレース
012
実験❷−②
❷ 静電気の実験
図 7 ■電子が移動する様子
ます。
また、陶器やガラスのビンを転がすこともできます。陶器やガラスのビンは電気を通さない物
質なので、電子は自由には動けず、原子の中でプラスとマイナスに偏ります。この現象を誘電分
極といいます。
レースに勝つためには、大きな静電気力が必要です。そのためにはどうしたらよいのかいろい
ろと工夫してみてください。ヒントは帯電列です。
帯電列では、プラスの電気を帯びやすい物質からマイナスの電気を帯びやすい物質へと左から
右に並べられていると書きましたが、実はこれは電子の離れやすさを表しています。
図 7 のように、プラスチックの下敷きを羊毛のセーターなどで擦ると、帯電列の左側にある
羊毛の方が電子を放出しやすいので、羊毛から下敷きへとマイナスの電気が移動します。そのた
め、マイナスに帯電した下敷きが紙に誘電分極を起こさせ、紙が下敷きに引き寄せられたのです。
そして、帯電列の左へ行けばいくほど電子を放出しやすく、右へ行けばいくほど電子を放出しに
くいので、帯電列の離れているもの同士を擦ると強い静電気が起こりやすくなります。これが空
き缶レースの必勝法です。
もちろん一生懸命擦れば静電気はたまっていきますが、アクリルパイプを塩化ビニールの消し
ゴムで一所懸命に擦るよりは、塩化ビニールの棒を髪の毛で擦る方がよほど簡単に静電気をため
ることができます。また、このことから、ポリエステルのジャージの上に、羊毛のセーターを着
ると、脱ぐときに静電気でバチバチなってしまうのは容易に説明することができます。
効
率よく静電気をためるにはどうしたらよいのでしょうか? それを可能にするのがバンデ
グラーフです。バンデグラーフは市販品を購入することもできますが、一般にとても高価
です。ここでは、簡単に手に入る材料で自作でき、静電気がたまっていることがはっきりと確認
できる手づくりバンデグラーフを作成しましょう。
013
実験❷−②
❷ 静電気の実験
❷−③ 手づくりバンデグラーフをつくろう
準備するもの★ 2 L のペットボトル、ペットボト
ルのふた 4 個、ゴムバンド(2 cm×18 cm 程度)
、
カラーボール、アルミ箔、アルミ皿、マイクロファ
イバー繊維のモップ、塩ビパイプ(直径約 2 cm
×5 cm)、菜
、シリカゲル(乾燥剤)、タイヤ
(直径 10 cm 程度)、ネオン管、A4 用紙 3 枚
実験・工作の手順★ペットボトルの胴体に窓をあ
ける⇒上下にローラーをつける⇒ゴムバンドを張
る⇒下のローラーにハンドルをつける⇒完成
①図 9 のように、ペットボトルにカッターで窓
をあけます。このとき、なるべく外の湿気を
入れないように一辺は切り取らずに残してお
図 8 ■手づくりバンデグラーフ
きます。
②図 10 のように、直径 2 cm 程度の塩ビパイ
プの中心にセロハンテープを貼ります(ゴム
がずれないようにするため)。
③上部ローラーは、図 11 のように②の塩ビパ
イプとゴムバンドを菜
に通して、両端は穴
をあけたペットボトルのふたを取りつけま
図 9 ■ペットボトルの加工
す。
④帯電球は、図 12 のようにカラーボールにア
ルミ箔を巻き、その先端を穴をあけたペット
ボトルのふたに差します。その後、バーベ
キュー用のアルミ皿を切って集電板をつく
図 10 ■塩ビパイプにセロハンテープを巻く
り、帯電球の先端に取りつけます。また、集
電板は図 12 のように先端がギザギザになる
ようにしましょう。さらに、帯電球の先端に
は、モップなどに使われている掃除用のマイ
クロファイバー繊維の糸を切ってセロハン
テープで貼ります。
⑤図 13 のように、タイヤに短く切った菜
を
差し込み、下部ローラーを回すハンドルをつ
くります。
⑥下部ローラーは、菜
図 11 ■上部ローラーの取りつけ
に縦に 4 分の 1 に細く
切 っ た A4 用 紙 を ず れ な い よ う に 3 枚 分 巻
き、ローラーの直径が約 2 cm になるように
します。⑤のタイヤと、ペットボトルのふた
をその両端につけます。
⑦最後に約 5 cm×10 cm に切り出したアルミ
皿でアースをつくり、下部ローラーにたまっ
た 電 気 が 地 面 へ 逃 げ る よ う に し ま す( 図
014
実験❷−③
図 12 ■帯電球と集電板の作成
❷ 静電気の実験
図 13 ■ハンドル
15)。シリカゲルも中に入
れておくと役に立ちます。
⑧バンデグラーフが完成し
たら、下部ローラーの取っ
手を回してみましょう。ま
た、ネオン管を近づけてみ
ましょう。
図 14 ■完成図
図 15 ■アースの取りつけ
バンデグラーフの下部ローラーを回すと、帯電球にマ
イナスの電気がたまって、マイクロファイバーの糸が広
がります。また、上部ローラーと下部ローラーを交換し、
上に紙、下に塩ビパイプがくるようにすると、帯電球に
たまる電気はプラスになります。また、このときハンド
ルは上部ローラーに取りつけます。
毛は上手く逆立ったでしょうか。では、なぜバンデグ
ラーフでローラーをくるくる回すと、静電気がたまるの
でしょうか。実は、ここでも大事なのは帯電列です。
図 16 のように、取っ手を回すと塩ビパイプ、ゴム、
紙が回転し摩擦が生じます。このとき、紙とゴムを帯電
図 16 ■バンデグラーフの構造
列でみるとゴムの方がマイナス側なので、ゴムにはマイ
ナス、紙にはプラスの電気がたまります。そして、ゴムにたまったマイナスの電気はゴムの回転
とともに上へと運ばれ、紙にたまったプラスの電気はアースから指や地面へと逃がされていきま
す。また、ゴムと塩ビパイプでは塩ビパイプの方がマイナス側なので塩ビパイプがマイナスに帯
電し、ゴムがプラスに帯電します。結果としてゴムにたまったプラスの電気は、また下に運ばれ、
塩ビパイプにたまったマイナスの電気は集電板から帯電球へと運ばれていき、帯電球がマイナス
に帯電します。
015
実験❷−③
❷ 静電気の実験
静
電気の力を利用してアルミフィルムテープを飛ばすフライング・バンデを作成しましょ
う。
❷−④ フライング・バンデをつくろう
準備するもの★ 500 mL のペットボトル、ミニ四
駆用高速モータ、ミニ四駆用タイヤ、塩ビパイプ
(内径 2 cm)、ゴムバンド(1.8 cm×12 cm 程度)
、
アルミ箔、アルミフィルムテープ、アルミ皿、乾
電池単 3 形 2 個、導線約 20 cm、竹串、ラップの
芯、紙
実験・工作の手順★ペットボトルに静電気が発生
するようゴムバンドと 2 つのローラーを取りつけ
る⇒手前のローラーにミニ四駆用高速モータをつ
図 17 ■フライング・バンデ
ける⇒アルミフィルムテープのリングを飛ばす
①図 18 のように、ゴムの長さに合わせて竹串を通す穴を 3 ヶ所と、2 cm×3 cm の切り
込みを 1 ヶ所あけます。また、底にも切り込みを入れます。ゴムは少したわむくらい
がちょうどよいです。
図 18 ■ペットボトルの加工
図 19 ■竹串に紙を巻く
②紙を 3.5 cm の幅で切り、竹串に直径が
1cm 程度になるまできつく巻いていき
ます。最後に 5mm の幅に切った紙を中
央に 5 周ほど巻いてゴムがずれないよう
にします。これを図 20 のように取りつ
けます。このとき、忘れずにゴムバンド
を通しましょう。また、アルミ皿を切っ
図 20 ■紙ローラーの取りつけ
てつくった集電板を、ペットボトルの
口に取りつけます。
③次に、ラップの芯にアルミ箔を巻きま
すが、アルミ箔は長めに切って先端は
ラップの芯の内側に折り込みます。そ
うすることで、集電板の先端にアルミ
箔が触れるようにします(図 21)。
016
実験❷−④
図 21 ■先端部の作成
❷ 静電気の実験
④ 2 つのミニ四駆用タイヤを向かい合わ
せてセロハンテープで固定します。そ
れを、モータに取りつけ、塩ビパイプ
をかぶせます。また、タイヤの反対側
に は 竹 串 を 取 り つ け ま す( 図 22)
。
モータが合うようにマット用スポンジ
に穴をあけ、取りつけます。
図 22 ■下部ローラーの組み立て
⑤ペットボトル下部の組み立てです。図
23 のように、アルミ皿を切ってつくっ
たアースを①で入れた切り込みから取
りつけ、スイッチを押したときに指が
触れるようにします。なおスイッチは
アルミ箔でつくります。
※スイッチは、アルミ箔を使って接触
すると ON、離れると OFF となるよ
うにします。
図 23 ■スイッチとアースの作成
⑥③のラップの芯をペットボトルの先端に取りつけます。そして、④で組み立てた下部
ローラーを取りつけ、電池をつけて図 24 のように配線をすれば完成です。
図 24 ■先端部分の取りつけと配線
⑦アルミフィルムテープを図 25 のようにセロハン
テープかノリで丸く止めます。それを、フライン
グ・バンデの先端部にのせ、フライング・バンデの
スイッチを入れます。
⑧やがて、アルミフィルムテープにプラスの電気がた
まり、アルミフィルムテープが浮き上がります。ア
図 25 ■アルミフィルムテープの作成
(マイクロファイバー繊維で電気クラ
ゲ浮遊実験もできます)
ルミフィルムテープの代わりにマイクロファイバー
繊維で電気クラゲ実験もできます。
フライング・バンデの原理は、バンデグラーフとほぼ同じで、先端にたまったプラスの電気が
アルミフィルムテープにも移動し、先端と反発することによって空中に浮き上がります。
017
実験❷−④
❸ 電気抵抗の実験
∼テスタを使って調べてみよう∼
電圧 V、電流 I、抵抗 R の間には、オームの法則 V=RI という基本的な法則があります。回
路設計に適切な抵抗が手元にない場合、直列接続と並列接続を組み合わせて合成抵抗をつくりま
しょう。
テスタを使いこなそう
電気回路を組んだとき、ある部分にはどれだけの電流が流れているのか、またどれだけの電圧
がかかっているのかを調べないと、その回路が正常に作動しているのかどうかがわかりません。
そこで普通は電流計や電圧計を使います。しかし電流計は、直流電流計と交流電流計があり、ま
た直流電流計でも微小な電流を測定する場合には、マイクロアンメータを使うことになります。
こうなると、いろいろな電流計や電圧計をたくさん用意しないといけません。そんなときに大活
躍するのがテスタです。
テスタを使う場合も、電流計や電圧計のつなぎ方は守らないといけません。抵抗値を測定する
ときはテスタだけでも測定できます。電流を測定する場合は、テスタを直列につなぎます(図 1)
。
電圧の場合は並列につなぎます(図 2)
。測定は大きなレンジから順に行っていきましょう。
図 1 ■電流の測定
電
図 2 ■電圧の測定
気抵抗では、長さと抵抗の関係はどうなっているでしょうか? ニクロム線を用いて実験
をすることが多いですが、ここでは記録タイマー用放電テープを使ってみましょう。実験
用の線は導体であれば、抵抗があまり小さすぎず、断面積が一様なものであれば実験可能です。
018
実験❸−①
❸ 電気抵抗の実験
❸−①「メートル+1 ブリッジ」と手づくり直流電源器をつくろう
準備するもの★
●メートル+1 ブリッジ:プラスチック段ボール(100+1 cm×2 cm)
、放電テープ(100
+1 cm、80 Ω程度)、導電性バインダクリップ(塗料が塗られていない全体が銀色のもの)
2 個、リード線 (50 cm 程度 )2 本、油性ペン、両面テープ
● AC アダプタ実験用電源:AC アダプタ(直流 5.0 V 程度に変換できるもの。いろいろ
あってもよい)、みの虫クリップ 2 個
実験・工作の手順★
●メートル+ 1 ブリッジ
台紙をつくる⇒ 10 cm 間隔で目盛を入れる⇒放電テープを貼る⇒完成
①プ ラ ス チ ッ ク 段 ボ ー ル を
101 cm×2 cm の 大 き さ に
切り、台紙とします。プラ
スチック段ボールを使用す
ることで丈夫で軽く、もち
図 3 ■目盛りのつけ方
運びや取り扱いが便利であ
り、長期保存できるものになります。
②図 3 のように①の両端 0.5 cm ずつを
残して 10 cm 間隔で線を引き、目盛り
とします。印をつけるだけでなく、端
から端まで縦に線を引いてください。
③放電テープを 101 cm に切ります。
④図 4 のように放電テープの白い面を上
にして、両面テープで②に貼りつけま
図 4 ■放電テープの貼り方
す。両面テープは短めに何ヶ所も貼る
とよいです。また、放電テープを貼る
際、 プ ラ ス チ ッ ク 段 ボ ー ル に そ っ て
まっすぐに貼りましょう。
⑤バインダクリップにリード線の片側を
つけたものを 2 つつくります。
⑥図 5 のように⑤を④の両端に取りつけ
図 5 ■メートル+ 1 ブリッジ
ます。取りつける際、バインダクリッ
プが端から 0.5 cm の線と重なるよう
にしましょう。
●手づくり直流電源器
コードを切る⇒導線にみの虫クリップを
つける⇒完成
① AC アダプタのコードを切り、導線を
2 つにわけます。
②ショートしないように長さを変えて、
導線のビニールをペンチではがし、
みの
虫クリップをそれぞれつけます(図 6)
。
019
実験❸−①
図 6 ■手づくり直流電源器
❸ 電気抵抗の実験
作製したメートル+1 ブリッ
ジは可変抵抗(スライド抵抗)
としても使えるので便利です。
手づくり直流電源器と組み合わ
せた電源装置としての使い方を
図 7 に 示 し ま す。 こ れ を 電 源
装置として実験を進めていきま
す。
図 7 ■電源装置
❸−② 導体の長さと抵抗の関係を調べてみよう
準 備 す る も の ★ メ ー ト ル+1 ブ リ ッ ジ、 プ ラ ス チ ッ ク 段 ボ ー ル 100 cm、 ニ ク ロ ム 線
(100 cm、14 Ω程度)、テスタ
実験・工作の手順★回路を組む⇒10 cm ずつ長さを長くして抵抗を測定する⇒グラフを作
成する⇒グラフの傾きを調べる
①ニクロム線をまっすぐのばした
状態で両面テープでプラスチッ
ク段ボールに貼りつけます。
②図 8 のように回路を組みます。
③基準となる位置を決め、テスタ
の片方を端に固定します。この
図 8 ■回路図
位置が 0 cm となります。
④テスタのもう片方を導体に触れ、基準の位置からの長さとそのときの抵抗値を測定します。
⑤メートル+ 1 ブリッジとニクロム線の両方で測定を行います。
⑥縦軸を抵抗値、横軸を基準からの長さとしてグラフを作成し、傾きを調べます。
図 9 のグラフをみると、記録タイマー用放電テープの場合もニクロム線の場合も、抵抗値と
長さは比例しています。グラフの作成は、データをグラフ上に示し、どの点からも距離が等しく
なるように近似直線を引きます。このとき、必ずしもすべての点を通る必要はありません。測定
したデータには誤差が含まれるからです。また、Excel などの表計算ソフトを使ってもよいです。
図 9 ■抵抗と長さの関係
020
実験❸−②
❸ 電気抵抗の実験
導
体の電圧、電流、抵抗の関係を示すのが、オームの法則です。電圧を V〔V〕
、電流を
I〔A〕
、抵抗を R〔X〕とすると、V=RI という関係が成り立ちます。実験を通して確か
めてみましょう。
❸−③ オームの法則ってどんな法則か確かめてみよう
準備するもの★抵抗 100 Ω、200 Ω、300 Ω(数種類あるとよいです)
、メートル+ 1 ブリッ
ジ、手づくり直流電源器、テスタ 2 個、導線
実験・工作の手順★回路を組む⇒電流・電圧を
測定する⇒グラフを作成する
①図 10 のような回路を組みます。
②メートル+ 1 ブリッジをスライド抵抗器
として回路に加える電圧を変えていき、回
路中の抵抗に流れる電流と加わる電圧を測
定していきます。
③縦軸を電圧、横軸を電流としてグラフを作
成します。
④回路中の抵抗を取り換え、同様にグラフを
図 10 ■オームの法則の回路図
作成します。
作成したグラフをみると、どの抵
抗の場合においても回路中の抵抗に
加わる電圧と流れる電流は比例の関
係になっていることがわかります
(図 11)。また抵抗によって傾きが
異なりますが、このグラフの傾きが
抵 抗 値 を 示 し て い ま す。 電 圧 を
V〔V〕
、電流を I〔A〕とし、傾き(比
図 11 ■電流と電圧の関係
例定数)を抵抗 R〔X〕とすると、
V=RI という関係が得られます。
021
実験❸−③
❸ 電気抵抗の実験
例えば 100 X の抵抗しかないときに 300 X が必要になったり、200 X の抵抗しかないときに
100 X が必要になったら、どうしたらよいでしょうか。合成抵抗の求め方を知っていれば簡単に
必要な抵抗を得られます。
まず、直列接続について考えます(図 12)
。2
つの抵抗 R1、R2 を直列に接続して電圧を加える
と、各抵抗には等しい電流が流れます。合成抵抗
を R とし、電圧 V〔V〕を加えたとすると、
V=R1I+R2I=
(R1+R2)
I=RI
となり、合成抵抗は、
R=R1+R2
となります。同様に n 個の抵抗 R1、R2、…、Rn
を直列に接続して電圧 V〔V〕を加えると、
図 12 ■直列接続
V=R1I+R2I+…+RnI=
(R1+R2+…+Rn)
I
となり、合成抵抗は、
R=R1+R2+…+Rn
となります。つまり、直列接続したときの合成抵抗は各抵抗の和となります。
次に、並列接続について考えます。2 つの抵抗 R1、R2 を並列に接続して電圧を加えると、各
抵抗には等しい電圧が加わります。合成抵抗を R とし、電圧 V〔V〕を加えたとすると合成抵抗
に流れる電流はそれぞれの抵抗に流れる電流の
合計なので、
V
V
V
1
1
=
+
=Ø
+
ŒV
R
R1
R2
R1
R2
となり、合成抵抗は、
1
1
1
=
+
R R1 R2
となります。同様に n 個の抵抗 R1、R2、…、Rn
を並列に接続して電圧 V〔V〕を加えると、
図 13 ■並列接続
V
V
V
V
1
1
1
=
+
+…+
=Ø
+
+…+
ŒV
R
R1
R2
Rn
R1 R2
Rn
となり、合成抵抗は、
1
1
1
1
=
+
+…+
R R1 R2
Rn
となります。つまり、並列接続したときの合成抵抗の逆数は各抵抗の逆数の和となります。
それでは実験で確かめてみましょう。
022
実験❸−③
Fly UP