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最終レポート5(PDF:572KB)
2008年度山西大学奨学生派遣「最終レポート」 池田 澄夫 さん 1 年間の留学生活が終わりました。 年齢を重ねると感動することがだんだん少なくなっていきますが、この 1 年 間は「感動・感激」の連続の 1 年でした。関係者の皆さん及び留守中を支えて くれた家族にまずは感謝したいと思います。 さて一年間、中国に滞在してみて、これはあくまで私見ですが、中国・中国 人の素晴らしいところと同時に気になるところをいくつか発見いたしました。 最後に「中国太好、不太好!」を書いて終了報告といたします。 1 「中国太好!」 ①何しろ世話好き 中国人の世話好きには驚かされました。昨年 10 月ごろ、高血圧や何やらで 熟睡できない日々が続いていた時、太原に来て最初に知り合いとなった中国人 のシュウハさんにそのことを話すと、早速太原市で一番有名な漢方専門病院(中 医)を紹介してくれました。 漢方の治療にもチョット興味がありましたので、 「中医」に行き「太夫」と呼 ばれる医者から問診を受けたのですが、私の中国語のレベルではとても「太夫」 の問診内容が理解できません。するとシュウハさんが仕事の合間に病院に駆け つけてくれて、私の通訳 をしてくれます。処方された漢方薬は 毎日 3 時間ジ ックリ煎じて 3 回に分けて飲むのですが、今度はシュウハさんの友達の王さん が煎じてくれます。私は毎日頭の下がる思いで王さんの家に漢方薬を取りに行 きました。 このシュウハさんには、旅行代理店でもなかなか切符が取れない時期にいと も簡単に切符を取ってもらったり、薬を煎じてくれた王さんには何度も有名観 光地に連れて行ってもらったり、春節には家に招待してもらったりで、何から 何までお世話になりました。 中国人の人間関係を大事にする考え方は、まだまだ純粋に残っていると感じ ました。 ある時、なぜか聞いてみたところ「応該的(インガイダ)」(当然だ) という答えでした。 ②若い人が多く、活力がみなぎっている 昨年 8 月に初めて太原に来て最初に感じた街の印象は「人と車」の多さでし た。 特に若い人がどこにでも一杯いて(余談ながら、スタイルのいい女性も多く驚 かされます)、この国が「一人っ子政策」を取っているとはとても思えませんで した。1 年間で北京・開封・鄭州・大連・上海・杭州・蘇州・瀋陽を旅行しまし たが、どの街に行っても「ヒト・人・ヒト」で街全体が活気に満ち溢れていま す。このエネルギーとパワーは、経済をはじめ各分野で近いうちに必ず日本を 追い抜いて行くことを予感させます。 ここにきて日本も子育て支援や教育費補助などの少子化対策を打ち出して いますが、国家の活力の源泉は「人口増」というのも十分に頷けました。 ③老若男女がよく勉強する 中国は競争の厳しい社会です、学生はよく勉強しています。 大学校内では、本を片手に持ち、大きな声で暗唱を繰り返す学生の姿をよく 見かけます。学生寮は 4 人部屋でスペースが無いため夕方からは大学の教室が 開放されそこで勉強するのですが、毎日教室の勉強場所を確保するため学生は 必死になります。 また太原市の中心部にある「五一広場」の一角では、毎朝 7 時から日本語を 勉強する会が25年も続いていて、その中には 17 年間一度も休まず出席してい る58歳の公務員もいます。勉強することに熱心な人たちが沢山いることは確 かです。 ④なにしろ物価が安い 特に交通関係と飲食関連の費用はとてつもなく安くてビックリします。 例えば 4 月に開通した北京まで 3 時間で行く新幹線(動車)の運賃が158 元(2400 円)、太原市内のバスは高くても 2 元、北京の地下鉄 2 元などで日本と 比べると異常なぐらい低く抑えられています。逆に日本では成田空港から都心 に出るだけで 3000 円(200 元)はしますから、中国人は日本の交通費の高さに ビックリしています。 それに飲食関係、私は毎朝「老豆腐(硬めの木綿豆腐)」と「油条(揚げパン のようなもの)」をモーニングのように食べていましたが、これは 2 元(30 円)、 昼のガイハン(日本の丼ぶり)もせいぜい 20 元以内で食費はほとんどかかりま せん。旅行とか特別の出費がなければ私の場合 1 月 2500 元(38000円) ですべて賄えましたから、日本人にしてみると生活し易い環境です。 (中国生活 も慣れてくると 1500 元でも生活可能のようです) 2 「中国不太好」 ①鉄道編 中国のJRにあたる「中国鉄路」、この鉄道会社には何度となく腹が立ちま した。 要するに鉄道に乗せてやっているという発想で、乗客を一段下に見下し ている様子がありありです。例えば切符を買う時、どういうわけかどこの駅で も長蛇の列が切符販売窓口にできています。ところが窓口の販売員の休憩時間 になると販売員はサッサと窓口を離れてどこかに行ってしまいます。販売員不 在の窓口で 30 分ほど待たされることになります。 列への割り込みも頻繁で、見ていて決して愉快ではありません、割り込みを 承知していながら切符を販売する販売員にも呆れてしまいます。列車の中では 乗務員がゴミ箱のゴミを窓の外にドンドン放り投げるし、駅の駅名表示は 1 か 所しかないし、アナウンスも聞き取れないくらい小さな声だったり、食堂車に 行けばまるで乗務員の休憩室のようだったり、乗務員は「サービス」とは何か がわかっていません。 沈陽から北京まで動車に乗った時こんなことがありました。私の隣の席の人 が弁当を食べ終わり、清掃係に弁当箱を持っていってもらおうとするのですが、 清掃係は後で来るからと言ってなかなか空の弁当箱をもっていってくれません。 そこにたまたま列車長の名札を着けた乗務員が通りがかり、やっと空の弁当箱 をもっていってくれました。 清掃係の人は決められたこと決められた時間にするだけで、 「顧客の満足」が サービスだということが理解できていません。組織の上層部には「サービス」 の本質が浸透してきているものの、まだまだ下層部まで伝わっていないのでし ょう。現場を管理 監督すべきマネージャーも育っていないようです。 「中国鉄路の本部」も遅ればせながら改革に着手するようですが、既得権益 と古い体質から抜け出るのには時間がかかりそうです。 ②警察編 町の十字路におまわりさんが立って交通整理をしているのに、自動車は信号 を無視して勝手気ままに走っている光景を日本では想像できますか? おそらく違反者が多すぎて注意しきれないのでしょう。自動車の運転も日本 人からみると滅茶苦茶で、日本人はほとんど中国では運転できないと思います。 日本の車間距離が1mとすると中国は 30cm、運転テクニックも相当なレベル でとてもかないません。 割り込み・逆走・車線変更・急停車急発進もあたりまえ、歩行者も信号など 全く気にせずセンターライン上に柵があったところで、それを乗り越えていき ますし、最初のころは 道路を横断するのが命がけだったことを思い出します。 事故が起きれば、道路のど真ん中で喧嘩をはじめるし、タイヤ交換もど真ん 中でやっているしそれを見ている警察官も何も注意しませんし、交通秩序を維 持管理するという警察の本来業務が解っていなのでしょうか? ③販売店 店に入った途端「何しに来たんだ!」という怖い顔つきで見られてしまうお 店も結構ありました。 北京の日系スーパーで買い物をした時、どうも従業員同 士の会話を中断させてしまったらしく、買ったものを放り投げられた時は驚く 以上に怒りを感じました。 壊れやすいお菓子をビニール袋に放り投げる従業員がいる店とか、挙げれば キリがないほど、カリカリすることがあります。 中国人はこのような店員の態度を不愉快と思わないのでしょうか?諦めて いるのでしょうか? サービスの本質が理解できていない店や店員はいずれ淘汰されるのでしょ うが、当分はこのような店や店員と付き合わねばなりません。 ④入館料 中国の観光地の施設入館料は、他の物価と比べて突出して高く、まだまだ観 光そのものが庶民にとって贅沢品であることを窺わせます。太原で最も有名な 観光地「晋詞」は入場料 70 元、世界遺産の「平遥古城」は 80 元、 「五台山」に 至っては 200 元もかかります。日本人観光客にとってはさほどの金額ではない ものの、地元の人からするとかなりの高額な料金です。太原に着いた当初、ほ とんどの学生が「晋詞」に行ったことが無く、中国の学生は歴史や観光に興味 を持たないのかと思ったのですが、理由はあまりに高い入場料にあった訳です。 所得の向上と余暇時間の拡大で観光事業も重要な地場産業になってきています、 これからはもっと安い料金で多くの人が入場できることを期待しています。 ⑤トイレ 北京等の大都会の公衆トイレはだいぶ清潔になってきていますが、地方では 驚くようなトイレも少なくありません。ただ中国の友人の家庭に訪問すると、 どこの家庭でもトイレが清潔でこれもビックリします。 3 最後に 「太好」 「不太好」な出来事がたくさんあって書き切れませんが、印象に残っ たことを書き綴ってみました。日本では当たり前のことも中国では当たり前で なかったり文化・習慣の違いもありますし、感じるところは多かった 1 年間で した。また昨年の 9 月から 11 回にわたり、拙い文章で長々といろんなことを書 かせてもらいましたが、レポートを提出すると必ずコメント付で返信メールが 帰ってきましたから、苦労されて読まれたのだと思います。1 年間お付き合いあ りがとうございました。 この留学で県民に対してお役に立てることがありましたら、何なりとお申し 付けください。できるかぎり還元したいと思います。 (太原市の中心にある「五一広場」で25年間 毎朝開かれている日本語勉強会) (面倒見のいい王さんと黄河の壺口で(黄河で一番有名な滝がある観光地) ) (入場料が80元の世界遺産平遥古城の景色)