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建築家と雨戸 『雨戸を語る』

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建築家と雨戸 『雨戸を語る』
Nara Women's University Digital Information Repository
Title
建築家と雨戸 『雨戸を語る』
Author(s)
藤森, 照信; 神戸, 美音; 伊藤, 理恵
Citation
大学院生の自主企画による研究セミナー : 奈良女子大学大学院人間
文化研究科「魅力ある大学院教育」イニシアティブ生活環境の課題
発見・解決型女性研究者養成(文部科学省採択教育プログラム), 平成
20年度, pp.9-14
Issue Date
2009-03-25
Description
2008年7月13日(日)13:30∼15:30 奈良女子大学構内 佐保会館
1階第二和室にて開催された研究セミナー「建築家と雨戸『雨戸を
語る』」の実施報告書
URL
http://hdl.handle.net/10935/1445
Textversion
publisher
This document is downloaded at: 2017-03-31T17:39:56Z
http://nwudir.lib.nara-w.ac.jp/dspace
奈良女子大学大学院人間文化研究科 平成20年度「魅力ある大学院教育」イニシアディプ
生活環境の課題発見・解決型女性研究者養成(平成17年度文部科学省採択教育プログラム)
大学院生の自主企画による研究セミナー
建築家と雨P 『雨pを語る』
平成20年度「魅力ある大学院教育」イニシアティブ支援プロジェクト
大学院生の自主企画による研究セミナー一一・・実施報告書
1.企画内容
(1)セミナーの名称
「建築家と雨戸 『雨戸を語る』」
(2)開催日時・会場
2008年7,月13日(日) 13:30∼15:30奈良女子大学構内佐保会館1階第二和室
(3)講演者
藤森 照信
(建築史家・建築家・東京大学教授)
(4)企画者
神戸 美音(人間文化研究科博士後期課程社会生活環境学専攻生活環境計画学コーース)
伊東 理恵(人間文化研究科博士後期課程社会生活環境学専攻生活環境計画学コース)
(5)支援教員
今井 範子(大学院人間文化研究科教授)
(6)参加人数
39名(内訳:E学内]教職員2名,大学院生3名,学部学生11名,[学外]23名)
※講師を含め40名
(7)セミナー概要
目的:
雨戸は現在の住宅に必要なものなのか。現代の住宅における雨戸の存在意義を問う研究
を進めてきた。そして雨戸の存在意義を確認する一方で、雨戸を取り巻く矛盾に気づく。
雨戸は実際多く設置されているし、必要とされている。しかし建築本の中には「雨戸は必
要なくなった」とあり、雨戸は過去のものとみなされている。雨戸は住宅の中で大きな可
能性を秘めている。雨戸は生活によって「動く」壁である。また、住宅の内と外の関係を
調節するものである。これらの特徴から「生活」「景観」「コミュニティ」「環境共生」「プ
ライバシー」「防犯」など現代の住宅を考える上で重要な多くの要素が雨戸の問題には含ま
一9一
れている。雨戸について考えることは非常に現代的かつ意義深いことなのである。雨戸は
一方では住宅に設置され続け、また一方で過去のものとして語られ続けるという矛盾した
存在である。ここで一度、雨戸としっかり向き合う必要があるのではないだろうか。そこ
で雨戸を考えるきっかけとしてこのセミナーを企画した。
今回、著書の中で雨戸についての記述が多くみられ、欝欝史家として、また建築家とし
てもご活躍されている藤森照信先生を講師に迎え、「建築家と雨戸」というテーマでお話し
ていただくことにした。
内容:
はじめに本セミナー開催に至った経緯、セミナーの目的について企画者から話をした。
その後、藤森先生に「建築家と雨戸」というテーマでお話をしていただいた。その後質疑
応答を行った。なお、会場は通常の会議室ではなく、佐保会館1階の和室を利用した。会
場に隣接した縁側には木製の雨戸があり、最初は雨戸が開いている状態で行い、その後ス
ライドを用いての講演時には雨戸を閉めて行った。
成果:
今回のセミナN・…一・の目的は、これまであまり語られることのなかった雨戸について語ると
いうことであった。そして雨戸について考えるきっかけとなればという思いでセミナーを
企画した。予想していた通り、テーマよりも講師に関心があったため申し込んだという参
加者の方が多かったが、藤森先生のお話を通じて、雨戸に興味を持ったという意見が多く、
今回のセミナーが雨戸を考えるきっかけになればという思いは達成されたと思う。
ただ今回は、企画者そして講師が「雨戸を語り」、雨戸の存在が認識されたということで
ある。これまでの雨戸を取り巻く状況を考えれば大きな一歩であるが、研究セミナーとし
ては、「雨戸を語り合う」、各自が雨戸に対して意見を持ち、議論しあえたらと考える。
齪
一10一
R.実施報告
はじめに、企画者から「なぜ雨戸を語るのか」という点について、今回のセミナー開催に至った
経緯と趣旨説明を行った。企画者自身の研究を踏まえ、「なぜ今、雨戸を語るのか」、「なぜここで
語るのか」、「なぜ藤森先生に語っていただくのか」という点から説明を行った。
そして講師の藤森照信先生から「建築家と雨戸」というテーマでお話していただいた。日本の建
築が欧米やアジアの建築とどのように違うかという点から、建築生産の問題、部屋の成立と基準
寸法、雨戸がいっごろできたのかなどという点について、さらに雨戸のようなものが日本以外に
も存在するのかということでヨーロッパと日本の開口部の問題、防御の問題などについてお話い
ただいた。その後、近代の建築家はデザイン的な面で雨戸を使わなかったが全員が使わなかった
わけではないとして、藤森先生が建築史家として出会った雨戸について、スライドを用いて紹介
していただいた。レーモンドの夏の家や吉村順三の軽井沢の山荘など、非常に有名な作品におい
て、建築雑誌や写真からはわからなかった建築家と雨戸の関係や雨戸の詳細など貴重なお話を伺
うことができた。また藤森先生が手がけた一本松ハウス、ニラハウスなどの雨戸問題について、
建築家としての立場からお話いただいた。
最後に会場から質疑応答が行われ、学生や設計者、そして雨戸についてほとんど知らなかった
参加者など、様々な立場の参加者から質問や意見が寄せられた。
皿.おわりに
今回のセミナーは、私自身の研究対象である「雨戸」をテーマとしている。しかし、セミナーの
目的は研究者同士の議論や交流を促すものではなく、これまで公に語られることのなかった雨戸
について、まず、語るということであった。もちろん私自身が藤森先生からお話を伺いたいとい
う思いもあったが、それ以上に先生のお話を通じて参加者に、雨戸について気づいてもらいたい、
考えてもらいたいという思いがあった。
実際に参加者は「雨戸を語る」というテL一一一一・マよりも講師に関心があり申し込んだ方が多かった。
しかし、実際に藤森先生のお話を聞き、雨戸について興味を持った、新しい住宅の見方ができた
という意見が多くみられ、雨戸を考えるきっかけになればという当初の思いは達成されたと思う。
ただ今回は、企画者そして講師が「雨戸を語り」、参加者たちに雨戸の存在が認識されたという
ことである。次は、「雨戸を語り合う」ことができればと考える。そのためには、研究の発展と同
様に、語り合うための話す力、進行する力を身につける必要があると実感した。
最後になりましたが、講師を引き受けてくださった藤森照信先生、そして参加者の皆様、ご支
援いただいた方々に深く感謝いたします。
(文責:神戸 美音)
一11一
参加者アンケート集計結果1
■7/13『雨戸を語る』参加者アンケート(回答者25名)
『雨戸を語る』について
質問①セミナーに参加しようと思われたのはなぜですか(いくつでも)。
1
内容に関心があった
2
講師に関心があった
3
学生が企画するセミナーに関心があった
悩
質問②セミナーの情報はどのように入手されましたか
1
奈良女子大学のHP、メールマガジン
2
Kenchikuのイベント情報
11
3
JIA近畿支部HPの掲示板
0
4
JIA近畿支部のメールマガジン
3
5
ポスター
0
6
案内状
0
7
知人の誘い
8
8
その他
3
3
質問③全体として、セミナーの内容はいかがでしたか。
1
大変良かった
2
良かった
9
3
どちらともいえない
0
4
良くなかった
0
16
質問④本日のセミナーについて、ご意見・ご感想などをご自由にお書き下さい。
■今まで見向きもしなかった雨戸というものを考える機会を得られたことがたいへんよかったで
す。(男性/23歳/学生/奈良)
■新しい住宅の見方ができて良かったです。少し家からでっぱってるのもカワイイと思いました
…(男性/23歳/学生/大阪)
■雨戸とか、すごくマニアックでおもしろかったです。どう切り崩して話していくのかが楽しく
てお話もおもしろかったです。(女性/22歳/学生/大阪)
■奈良の小さな女子大にお越し頂いてお話をうかがえたことは私にとって本当に幸福な体験でし
た。有難うございました!(女性/19歳/学生/大阪)
■北海道出身の私には、とても興味深くためになるお話でした。藤森先生のお話を聴けて、本当
一12一
参加者アンケート集計結果2
にうれしかったです。ありがとうございました。ユーモアのあるお話で、とても楽しかったです。
(女性/20歳/学生/北海道出身)
■先生のお話をうかがいたくて参加しました。雨戸については講演直前に調べて知ったので、今
後外で住宅を見ていくときの視点が変わると思います。(女性/19歳/学生/北海道出身現在奈
良)
■今まで雨戸に関して、深く考えた事がなかったのですが、この講演を通して雨戸のことを少し
考えるようになりそうなのでいい経験ができてよかったです。(男性/23歳/学生/大阪)
■いろいろな建物を雨戸を中心に見たのは初めてでとても新鮮でした。(男性/22歳/学生/滋
賀)
■近距離でこのような和やかな講演がきけたことは貴重な体験になりました。ありがとうござい
ました。(女性/29歳/建築設計/大阪)
■先生の気さくな雰囲気がよかった。(男性/55歳/公務員/兵庫)
■大変有意義な時間でした。ありがとうございました。(女性/51歳/無職/奈良)
■実際に建築を見て、建築家の話を聴く、それが多ければ多いほど、その経験に価値が出るもの
だなと、藤森先生のお話を聴いて感じました。(女性/22歳/学生/奈良)
■今まで建築雑誌などの写真に戸袋やサッシがうつっていないことに疑問を感じていたので、お
話を興味深く聞かせて頂くことができました。(女性/21歳/学生/奈良)
□藤森先生のお話が大変興味深く、おもしろい話などもあって楽しかったです。実際の建築の例
を見ながらのお話でわかりやすく、また、余談で雨戸と関係のない話もおもしろく、とても興味
がわきました。(女性/21歳/学生/奈良)
■藤森先生はとてもフランクな方でした。先生の作品はタンポポだったり、ニラだったり、いろ
んな植物を使っていて、すごくおもしろいなと思って注目しています。今後の活躍をきたいして
います。(女性/22歳/学生/奈良)
□雨戸についての歴史や建築家の話など、しちない話もたくさん聞けてタメになりました。楽し
い時間をありがとうございました。(22歳/学生/奈良)
雨戸について
質問⑤あなたの好きな雨戸、あるいは気になる雨戸などはありますか。
1
ある
6
2
ない
15
3
その他※
3
不明
1
※「あまり意識して雨戸を考えたことがなかった」「雨戸について考えたことはなかった」「桂離宮にあるのか…」
一13一
参加者アンケート集計結果3
質問⑥上の質問で「1.ある」と回答された方、差し支えのない範囲でお書き下さい。
・清風荘
・場所:実家(兵庫)
理由:シャッターの雨戸しか見たことがなかったので
・少し建てつけの悪くなった古い雨戸 場所:昔に住んでいた家
理由:郷愁を感じる
・ジャバラ、鉄製の雨戸(右図参照)
場所:大阪
理由:細かい板のくり返し、うすさ、軽やかさ
・一 {松ハウス
e
8cmほど
理由:戸袋が邪魔をしていなかったので!
質問⑦その他、雨戸に対するご意見・ご感想などございましたら、お書き下さい。
■現代に必要とされなくなったものであるが、新しい意味づけや考え方で、デザインに応用でき
ないかなと思いました。おもしろかったです。(男性/23歳/学生/大阪)
■雨が降る、台風がくる、防犯…と人が何かに備えて家を守る行為、慣習としてくり返されてき
たことに興味があります。人と建築のつき合い方のひとつかと思います。機密性をカバーするた
めに、ぴったり閉めるのではなく、重ね重ね閉ざしていくということに、日本的なものを感じま
す。(女性/23歳/学生/奈良)
■様々な工夫で、雨戸、戸袋がその建物の表情をつくることになるのだととても楽しかったです。
(女性/19歳/学生/大阪)
■今回雨戸を部屋の中から見た側面について語られているように感じました。(男性/24歳/学
生/京都)
■今まで雨戸について考える機会がなかったが雨戸について考えるいい機会となりました。(男性
/24歳/学生/京都)
■これから注目していこうと思いました。(女性/29歳/建築設計/大阪)
□見栄えや機能を追及した雨戸というものが、これからどのように考えられていくのか、興味が
わきました。(女性/21歳/学生/奈良)
■昔、雨戸で急病人を運んでいたという話をきいて雨戸ってすごいなあと感じました。(女性/21
歳/学生/奈良)
■私も生まれてからずっと雨戸のある家で育ったので雨戸のある生活があたり前だと思っていま
したが、今日お話をうかがって、改めて興味を持ちました。内と外をつなぐ境界として新しい雨
戸のあり方ができていったらいいなと思いました。(女性/22歳/学生/奈良)
■大変勉強になりました。雨戸について私ももう少し意識して観察しようと思います。ちなみに
我が家の2Fの窓には雨戸ありませんが、快適です。(女性/設計事務所/京都)
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