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「柑橘果実の寒害と資材による寒害防止効果」

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「柑橘果実の寒害と資材による寒害防止効果」
平成 24 年 1 月
果
樹
普及だより
5
「柑橘果実の寒害と資材による寒害防止効果」
温度(℃)
平成 22 年1月 15 日∼16 日にかけての非常に強い寒波により、中晩柑類の果実が凍結する
被害にあったことは記憶に新しいことと思います。
現地では、紙袋やサンテなどで果実を包み、
7
A地点(0m)戸外
6
B地点(100m)戸外
寒さから果実を守る対策を講じていますが、
5
1月15日
1月16日
その種類によって効果に違いがみられます。
4
3
気象庁によると、この冬も低温になりやす
2
1
いラニーニャ現象が起きていると報告されて
0
0
2
4
6
8
10 12
おり、有効な寒さ対策を行う必要があること
-1 12 14 16 18 20 22
-2
から、果実袋の種類と寒害防止効果の違いに
-3
-4
ついて紹介します。
-5
時刻
●果実の凍結温度と障害
-6
積雪による果皮障害の発生や低温による果
八幡浜地区における平成23年1月15∼16日の気温
実の凍害は、−3℃が7時間以上、あるいは
−6℃が3時間以上続くと発生し、被害果は苦味や「す上
がり」の発生が懸念されます。
果肉の苦味は、果実が低温を受けて凍結すると融解して
5時間後には認められるようになり、7∼10 日でピークと
なります。その後、樹上果は苦味が減少します。
また、
「す上がり」は、果実が凍結して被害を受けてから、
20∼30 日後から始まり、1∼2か月でかなり明瞭になりま
す。
表1 貯蔵後のす上がり (せとか)
●各種果実袋と寒害防止効果
(平成16年 愛媛果試)
寒気や降雨を防ぐ目的で、現地では一重や二重の紙袋、
す上がり
あるいは化繊製のサンテが使われていますが、その効果
発生率(%) 発生度
二重紙袋
34.4
13.5
は資材の種類によって異なります。
一重紙袋
48.4
22.6
果実温度の低下は、裸果に比べて二重紙袋は1∼2時
裸果
49.0
26.5
間、サンテは 0.5∼1 時間ほど遅れることから、低温遭遇
表2 被覆資材と果皮の水腐れ(甘平)
時間を短縮できます。一重紙袋は遅延効果がありません。 (平成23年 JA西宇和、八幡浜産地育成室)
そのため、
「す上がり」を防ぐには、二重以上の紙袋が
発生率(%)
二
重紙袋
0
最も有効で、一重紙袋やサンテでは効果がほとんどあり
一重紙袋
2
ません。
サンテ
18
果皮の水腐れの発生は、紙袋では雨や雪が果皮に直接
あたらないためほとんど発生しませんが、サンテは水が浸み込むため被害が多発します。
●まとめ
寒害を回避するには、果実の温度低下が緩やかな二重紙袋が適当と考えられます。
さらに、水腐れ防止には、紙袋の口をしっかり閉じ水の浸入を防ぐことがポイントです。
一部で使用している三重紙袋は、二重紙袋に比べ、効果が若干高くなりますが、袋の口が
閉じ難いことや資材費が 70%程度高くなります。
なお、低温が長時間続くと紙袋でも裸果より低温となる場合があるため、寒害の頻発園地
では品種の見直しを含めた検討が必要です。
平成 24 年 1 月
農
産
普及だより
6
「農業者戸別所得補償制度における
“戦略作物”の取り組みについて」
平成 23 年度から農業者戸別所得補償制度が本格実施となりました。国では米に対する所
得補償や麦、大豆、飼料作物、飼料米、ソバなどの“戦略作物”に助成を行い、生産者の経
営安定と食料自給率の向上を目指しています。
裸麦の生産は愛媛県が日本一ですが、需要に対して生産量が不足する状況であり(H23 年
約 3,000t不足)、管内では、二条裸麦「ユメサキボシ」を導入することで産地化を進めてい
るところです。現在の「マンネンボシ」と比べて粒が大きいことや耐倒伏性・収量性も期待
できるため、水田だけでなく畑地においても作付拡大を進めています。
またソバは、現在中国など海外からの輸入に頼っていますが、国産品の需要が大きくなっ
ています。機械化による栽培体系も確立できており、病害虫防除や除草作業が必要でなく省
力化が可能です。今後も有力な品目の一つです。
【管内の主な取り組み】
○大洲市上須戒の国営パイロット
農地の有効利用と、更には葉タバコの廃作が進むなかでソバと麦の輪作体系を導入して
います。ソバや麦は畑作物で湿害に弱いため、安定した生産が期待されます。
○大洲市菅田町
今年度から JA の米麦生産出荷協議会飼料米研究会が中心となり、飼料用米の取組みを
始めています(今年度の栽培面積約9ha)。
○西予市宇和町
・ 平成 21 年度から国補事業「国産原材料サプライチェーン構築事業」を活用し、ソバの
生産から加工、販売までの連携を深めて産地化の取り組みを行っています(今年度の栽培
面積約 19ha)。
・ 県内唯一の小麦産地ですが、普通期米の導入と併せて熟期の早い裸麦の導入と収穫時期
等の降雨による品質低下が懸念されるなかで、リスクを分散する目的で「ユメサキボシ」
を導入しています(24 年産の栽培面積約6ha)。
このような“戦略作物”は、機械化体系による栽培が可能であるため、野菜等の経営の柱
と併せての取組みや、集落営農での取組みなどそれぞれの地域で検討していただきたいと思
います。
大洲市上須戒のソバ栽培
西予市宇和町の「ユメサキボシ」栽培
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