...

報告書 - 札幌国際大学

by user

on
Category: Documents
1

views

Report

Comments

Transcript

報告書 - 札幌国際大学
平成 26 年度奨励共同研究(特別教育プロジェクト推進経費)助成課題
スポーツ交流によるまちづくり-美唄市をモデルに-
札幌国際大学
スポーツ指導学科 国田賢治
心理学科 清田岳臣
スポーツ指導学科 阿南浩司
目次
1.
はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
2. 札幌国際大学卓球部によるレッスン・交流試合 ・・・・・・・・・
(1)第 1 弾 (平成 26 年 6 月 8 日)
(2)第 2 弾 (平成 26 年 11 月 22 日)
(3)第 3 弾 (平成 27 年 1 月 24 日)
3.
卓球ストローク時の動作と上肢筋および体幹上部筋
の筋電図活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
23
4. 成果報告会(平成 27 年 1 月 31 日)
・・・・・・・・・・・・・・ 32
5.
6.
参考資料
美唄サテライト・キャンパスのホームページ・・・・・・・・・
37
まとめにかえて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
40
1
1.
はじめに
本学と美唄市は、地域活性化、人材育成および学術振興などの面で、連携を
推進するために、平成 21 年 7 月 1 日に「美唄市と札幌国際大学との連携に関す
る協定」を締結した。この協定に基づき、本学では、美唄市において、市民対
象講座、行動調査および、高等学校出前講座を柱とする連携事業を実施してい
る。スポーツ健康領域では、平成 24 年度、市民対象講座として、「実践!健康
づくり」が開講された。著者は、
「健康づくりは、日常生活動作のちょっとした
工夫から」という題目で講演を行った。またさらに、平成 25 年度では、美唄市
体育協会スポーツ交流事業として、「子どもの競技力向上の秘訣:身体運動の”
カラクリ“」という題目で講演を行った。
美唄市が平成 23 年 3 月に策定した「びばい未来交響プラン(第 6 期美唄市総
合計画)」では、施策の柱の一つに健康体力づくりを挙げている。同計画では、
具体的な健康体力づくりの課題の一つは運動習慣の獲得であると指摘している。
学童思春期(6~17 歳)の運動習慣の形成および体力向上の解決に向けてのプロ
グラムの企画立案、実施、検証といった一連の流れが重要であると提言されて
いる。
美唄市は、平成元年に開催された、はまなす国体の「卓球」の主会場となっ
た。これ以降、美唄市では、ジュニアスポーツの一つとして、
「卓球」が盛んに
行われている。上述した美唄市の課題解決を図るため、卓球のプレー中の身体
運動データを可視化し、そのデータをもとに、技能向上への指導技法を開発す
ることを目的に本研究を行った。具体的には、ラケット操作時の上肢筋および
体幹上部筋の筋電図を測定し、さらに、全身動作を三次元動作解析装置にて収
録した。収録したデータを分析した後の可視化データを活用して、卓球の指導
を行った。これら過程を通じて、地域共創「スポーツ交流によるまちづくり」
2
を推進するようこころみた。本研究を遂行するにあたり、3 つの企画を行った。
第 1 弾(平成 26 年 6 月 8 日):美唄市教育委員会主催の全空知卓球大会参加
者を対象に卓球のフォームの動画撮影を行い、記録したフォームを提示し、ワ
ンポイントレッスンを実施した。その後、これと関連する卓球技能向上指導を
札幌国際大学卓球部員とともに行った。
第 2 弾(平成 26 年 11 月 22 日):美唄市の小・中学生と、札幌国際大学の卓
球部員を対象に、ラケット操作時の上肢筋および体幹上部筋から発する電気活
動(筋電図)の測定と高速度カメラでの撮影を同時に行った。あわせて、美唄
市の小・中学生と札幌国際大学卓球部員が札幌国際大学で合同練習を行った。
後日、分析結果をもとに、技能向上のための工夫内容を考究した。
第 3 弾(平成 27 年 1 月 24 日)
:測定結果と技能向上のための工夫内容を小中
学生に提案し、技能向上につながる練習を札幌国際大学で行った。
これら3つの企画について、以下に章を設けその詳細について述べるととも
に、本研究の成果発表会の概要についても報告する。
3
2.
札幌国際大学卓球部によるレッスン・交流試合
(1)第 1 弾(平成 26 年 6 月 8 日)
美唄サテライト・キャンパスにおける「地域と大学との連携による協働事業」
の一部として、「札幌国際大学卓球部によるレッスン・交流試合」を実施した。
第 1 弾では、身体の発達過程の小中学生が、質の高い指導を受け、さらに交流
試合を経験することによって、技術の向上が図られることを目的として実施し
た(資料1-1~資料1-4)。
第 1 弾は、平成 26 年 6 月 8 日(日)に美唄市総合体育館のサブアリーナで
実施された。実施内容は、美唄市教育委員会主催の全空知卓球大会をアリーナ
で実施している間に、随時レッスンを実施するというものである(資料1-2)。
この際に、小中学生の卓球のフォームを高速度ビデオカメラで記録し、記録し
たフォームを見せながら、ワンポイントレッスンを実施した(資料1-5~1
-8)。その後、希望に応じて、大学生との交流試合を行った。これらの取組み
は、北海道新聞(資料1-9)と空知プレス(資料1-10)に掲載された。
4
資料1-1
美唄市と大学の連携による連携授業の実施決定について(Press Release)
5
資料1-2
札幌国際大学卓球部によるレッスン・交流試合実施要領
6
資料1-3
札幌国際大学卓球部によるレッスン・交流試合(Press Release)
7
資料1-4
札幌国際大学卓球部によるレッスン・交流試合進行シナリオ
8
資料1-5
ワンポイントレッスンの様子1
資料1-6
ワンポイントレッスンの様子2
9
資料1-7
ワンポイントレッスンの様子3
資料1-8
ワンポイントレッスンの様子4
視察する高橋市長
10
資料1-9
北海道新聞の掲載記事(2014 年 6 月 10 日)
11
資料1-10
空知プレスの掲載記事(2014 年 6 月 11 日)
12
(2)第2弾(平成 26 年 11 月 22 日)
第2弾では、美唄市内の小中学生の卓球部員が札幌国際大学に来学され、レ
ッスン・交流試合を実施した(資料2-1)。卓球のフォームを映像等で記録し、
記録したフォームを見せながら、個別に細かなレッスンを実施した(資料2-
2、資料2-3)。また、筋電図装置を使用して、ラケット操作時の上肢筋およ
び体幹上部の筋肉の電気活動を記録した(資料2-4、資料2-5)。その後、
希望に応じて、札幌国際大学の卓球部員との交流試合を行った(資料2-6~
資料2-8)。映像および筋電図の記録は、札幌国際大学測定室で、交流試合は
同大学アリーナにて実施した。
13
資料2-1
札幌国際大学卓球部によるレッスン・交流試合(第2弾)開催の案内
14
資料2-2
高速度カメラでの卓球フォーム撮影の様子
資料2-3
個別レッスンの様子
15
資料2-4
筋電図装置の装着風景
資料2-5
被験者Tの筋電図活動の測定風景
16
資料2-6
札幌国際大学の卓球部員との交流試合1
資料2-7
札幌国際大学の卓球部員との交流試合2
17
資料2-8
札幌国際大学の卓球部員との交流試合3
18
(3)第 3 弾(平成 27 年 1 月 24 日)
第3弾では、第2弾で記録した卓球フォームおよび筋電図波形等をもとに、
技能向上のための工夫内容を小中学生に提案し、技能向上につながる練習を札
幌国際大学で行った(資料3-1)。
第2弾で記録した卓球のフォーム映像および筋活動に基づいて、卓球技術向
上の秘訣についてレクチャーを実施した(資料3-2、資料3-3)。その後、
希望に応じて、卓球のフォームの映像と筋活動の記録に基づくワンポイントレ
ッスンや大学生との交流試合を行った(資料3-4)。映像および筋電図の記録
は、札幌国際大学測定室で、交流試合は同大学アリーナにて実施された。
19
資料3-1
札幌国際大学卓球部によるレッスン・交流試合(第3弾)開催の案内
20
資料3-2
卓球技術の向上についてのレクチャーの様子1
資料3-3
卓球技術の向上についてのレクチャーの様子2
21
資料3-4
大学生との交流試合の様子
22
3.卓球ストローク時の動作と上肢および体幹上部筋の筋電図活動
本研究では、前述した第 2 弾および第 3 弾において、美唄市の小中学生の卓
球選手を対象に卓球ストローク時の高速度カメラによる画像と上肢筋および体
幹上部筋の筋電図活動を記録した。資料1は、卓球ストローク時の筋電図活動
の測定風景である。
卓球ストローク時の動作を測定するために、被験者の右側 5.5m および前方
3.5m の位置に高速度ビデオカメラ(CASIO, EX-F1, Japan)を設置し(資料2)、
矢状面および前額面から秒間 300 コマで記録した。
筋電図は、粘着性のゲルの付いた銀一塩化銀表面電極(直径 30mm, 記録部分の
直径 13mm, M-00-S; Medicotest, Denmak)を用いて記録した。以下の筋の表面筋電
図を記録するために、表面電極を双極配置で取り付けた:大胸筋、広背筋、三
角筋前部線維、三角筋中部線維、三角筋後部線維、上腕二頭筋、上腕三頭筋、
腕橈骨筋、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、第一
背側骨間筋。いずれも利き手側の筋とした。電極配置は、筋腹の中央とした。
各筋に対し、除毛しアルコールで皮膚を清潔にした後で、電極間距離 3 ㎝にて
長軸方向に沿って電極を取り付けた。電極の入力抵抗は 5kΩ 以下とした。電極
からの信号は、無線筋電図アンプ(MQ16(8)-SK; Kissei comtec,Japan)を用いて増幅
し(×4000)、バンドパスフィルター(1.6‐500Hz)を通した。LED 信号によりカメ
23
ラ画像と筋電図を同期した。
打球時点を計測するために、小型の単方向加速度計(AS-5GM; Kyowa, Japan)
を用いて加速度を記録した。その加速度計は、感度がストローク方向に沿うよ
うに、ラケットの背面にテープで取り付けた。
後の分析の為に、EMG アンプ、加速度計からの信号は、A/D 変換機(ADA16‐
32/2(CB)F;Contec,Japan)を介して、16 ビットの分解能、1KHz でコンピューター
(DIMENSION E521,Dell Japan,Japan)に送られた。これらの信号は、Vital recorder
II(Kissei comtec,Japan)を用いて記録された。筋電図波形の分析には、BIMTASⅡ
software (Kissei comtec,Japan)を用いて行った。
本測定の結果、卓球の経験年数が 2 年未満の中学生の被験者 T では、フォア
ハンドストローク時では、大胸筋、三角筋前部線維および上腕二頭筋が主に活
動した(資料3)、バックハンドストローク時には、広背筋および橈側手根伸筋
が活動した(資料4)。これに対して、小学生ながら卓球歴が 3 年以上の習熟し
た被験者 K では、フォアハンドストローク時には、大胸筋、三角筋前部線維、
上腕二頭筋、腕橈骨筋および尺側手根屈筋の多くの筋がシナジー的に(資料5)、
またさらにバックハンドストローク時には、三角筋の前部・中部・後部線維、
上腕二頭筋および上腕三頭筋がシナジー的に活動した(資料6)。これらのこと
は、卓球ストローク時の上肢筋および体幹筋のシナジー制御の運動経験による
24
差異を示しているものと強く示唆される。今後、上肢、体幹および下肢の卓球
ストローク時のシナジー制御の運動経験による差異について、検討を行う。
25
資料1
卓球ストローク時の筋電図活動の測定風景
26
資料2
撮影に使用した高速度ビデオカメラ
27
資料3
被験者Tのフォアハンド筋電図波形
大胸筋
三角筋前部
上腕二頭筋
28
資料4
被験者Tのバックハンド筋電図波形
広背筋
橈側手根伸筋
29
資料5
被験者Kのフォアハンド筋電図波形
大胸筋
三角筋前部
上腕二頭筋
腕橈骨筋
尺側手根屈筋
30
資料6
被験者Kのバックハンド筋電図波形
三角筋前部
三角筋中部
三角筋後部
上腕二頭筋
上腕三頭筋
31
4.成果報告会(平成27年1月31日)
『スポーツ交流によるまちづくり-美唄をモデルに-』(成果発表会からの書き起こし)
(サテライト・キャンパス協働事業名:札幌国際大学卓球部によるレッスンと交流試合
発表者:札幌国際大学スポーツ人間学部 教授 国田 賢治
札幌国際大学の国田と申します。どうぞ
よろしくお願い致します。今回、このよう
な機会をいただきました美唄市長の髙橋様、
関係者の方々に厚くお礼を申し上げます。
このサテライト・キャンパスを実施するに
あたって、昨年の2、3月頃に美唄市から、
東様(当時美唄市企画課主幹。現、空知総
合振興局地域政策課長)や谷村様を含め3
図1
成果発表会の様子
図2
発表タイトル
図3
目的
名の方がいらっしゃり、熱く語られました。
それで、今までにはない取り組み、スポー
ツの科学的な観点から、子どもたちに教え
ることができるのではないかと考えまして、
初めてのケースではありましたが、試行錯
誤を重ねて参りました。学ぶことの方が多
かったのですが、その内容について、あら
ためて私自身が振り返りながら、成果発表
をしたいと思います(図1、図2)
。
ここにありますように、美唄市にいらっ
しゃる小・中学生が質の高い指導を受け、
これはまだスポーツ科学の部分では取り組
まれていない内容で、私自身も中々ここま
では至ってはおりませんが、できるだけ取
り組ませてもらい、大学生との交流試合を
経験することによって、子どもたちの技術
向上に関わっていけたらな、ということで
進めさせてもらいました(図3)。
6月8日に美唄市総合体育館のサブアリ
ーナをお借りしまして、レッスン・交流試
合の実施を9時から5時くらいまでさせて
いただきました。大きく分けて二つ行いま
した。一つ目は、美唄市の方が実際のレッ
スンについてわかりやすく説明されました。 図4 レッスン・交流試合の進行シナリオ
32
それを踏まえまして、二つ目を行いました。
まず、来てくれた小・中学校の方々の記録
を高速度カメラで記録して、そのフォーム
を見てもらって、その上で私なりの伝えら
れるものを伝えさせていただきました。そ
の後に希望に応じてサブアリーナにて、札
幌国際大学の卓球部員と交流試合を行い
ました(図4)
。
どのような記録を行ったかを説明します
図5
レッスン・交流試合の様子
図6
レッスン・交流試合の第2弾の概要
図7
筋電装置の取り付けの様子
と、選手にボールを打ってもらって、そこ
で30ミリ秒ごとにフォームをゆっくり
見ることができるカメラで記録して、その
後すぐに大きな画面で映して見てもらい
ました。小学生や中学生の方は、直接こう
いうものを見ることはないので、まずは見
てもらうだけで新しい発見があるのでは
ないか、見せることに意義があるのではな
いかということで行いました。
これはカメラで測定している時の風景
ですが、髙橋市長を含めて応援に来て下さ
って、こういう形の記録の機械があり、そ
れを大きなスクリーンに出し、私なりに説
明し、その子が映像を見ながら自分なりに
フォームを工夫しているところです。フェ
ンスを隔てた向こう側で札幌国際大学の卓
球部員たちが交流試合を行っています(図
5)。
その後、11月22日の土曜日にレッス
ン・交流試合の第2弾を行いました(図6)
。
午前中にラケット操作時の腕の運動のフ
ォームの映像を細かく記録することと腕
のところの筋肉活動を記録致しました。ロ
ーテーションで撮影している方以外は、札
幌国際大学の卓球部員との交流試合を行
図8
筋肉の活動の測定の様子(フォアハンド)
いました。
実際にどんなことをしたかと言いますと、本学の測定室にて、筋電装置をつけるので
すが、正確な筋肉の場所につけるのに時間がかかりました。中学生は、まだ発達途中な
33
ので、正確な場所を見つけるのがすごく
難しくて、先生たちが何人かとスポーツ
指導学科の私のゼミ生が本格的に携わっ
てくれました(図7)。
マシンから飛んでくるボールに対する
ラケット操作を正面と横からと2方向か
ら撮ります。さらに、筋肉の活動をリア
ルタイムで記録しているというものです
(図8)。
図9
筋肉の活動の測定の様子(バックハンド)
これはバックハンドです。他の中学生の
方が見守っている中で、それぞれの顧問
の先生がついて、打っている内容を確認
してくれています(図9)。
また、先に述べましたように、本学の
卓球場にあたる体育館では、大学生が小
中学生と交流試合を行っておりました。
ここでは、美唄で長く卓球に携わってお
られる猪谷先生が、本学キャプテンと打ち 図10 交流試合の様子1
合わせをしながら交流試合を進めて下さ
いました。
この写真に写っている大学生は、高校時
代に卓球しかしておらず、強くなることに
特化してきた子なので、大学に入って初め
て人に「何かを伝える」ということを教育
の場として頂いております。小中学生の子
と試合をしながら、精一杯の説明をしたり、
指導をしたりしております(図10、図
図11
交流試合の様子2
11)
。大学生の選手は、目配り、気配り
をしながら場を読むということをやって
いたそうです。
1月24日の土曜日にはレッスン・交流
試合の第3弾を実施させていただき、本学
で測定した結果を伝える場をいただきま
した(図12)
。
図12
ラケット操作時の筋肉の活動がどのよう
に行われているのかについて調べました。
34
レッスン・交流試合の第3弾の概要
そのために、背中や、肩まわり、腕、手の先
の筋肉の活動を測りました。フォアハンドの
時には、胸の筋肉や肩の前の筋肉や腕の握り
こぶしの筋肉が一斉に活動してから、ボール
に当たるという筋肉の働きを確認すること
ができました(図13)
。バックハンドの時
には、背中の筋肉と前腕の部分が働いている
というのがわかりました。これは21世紀で
もまだ分かっていないことなので、子どもた
ちのこういう結果を直接、早く伝えられる時 図13 フォアハンドの筋電図波形1
代になったかなと。今は結果が出てからお伝
えすることしかできないですけれども。そし
て3回目の先週の時に、顧問の先生に直接伝
えることができました。ここに先程の筋肉の
活動を示しております(図14)
。
これは猪谷先生が育てている木村さんと
いう方の動画です(動画にて説明)
。まだ小
学校4年生です。すごく小さい子ですけれど 図14 顧問の先生への説明の様子
も、ものすごく良い振りをされています。
それを見てもらえたらと思います。小さいで
すけれども、とんでもなく速い球を打つこと
ができます。これを見た時に非常に驚きまし
た。全ての筋肉を使って打つ上手な打ち方だ
と惚れ惚れして見ていました。ラケットの先
の返しがものすごく早いので、高速度で記録
しているにも関わらず、画像がぶれていまし
た。ラケットを自分の中の方に引き入れると
いうのは、小学校4年生では中々手に入れる
図15
フォアハンドの筋電図波形2
ことはできない技術です。そのようなことを
日々先生が木村さんに伝えていらっしゃるの
ではないかと思います。
このスウィングについて筋肉の活動をみた
ところ、胸の筋肉、肩の前の筋肉、握りこぶ
しの筋肉、なかなか使わない小指の筋肉を順
番に上手に活動させた後で、最後にラケット
をひっくり返す筋肉群を同時にとても短時間
図16
35
バックハンドの筋電図波形
で活動させています。他の筋肉にはほとんど力を入れることなく、一瞬でこのような芸
術的な筋活動を行っていることがわかりました(図15)
。次にバックハンドの筋肉の
データです。ここでは、ラケットを引き込むための筋活動と打つための筋活動が2つの
時相に分かれてスウィングが行われている
ことがわかりました(図16)。これらはま
だ誰も知らない内容なので、すごく奥が深い
と思います。
今迄の内容は、子どもたちの卓球のスウ
ィング動作時の筋活動についてのご報告で
す。私は、今回の調査を通じて得た発見が、
これからどのように発展していくかを自分
なりに考えました。
私は大学1年生のころより、恩師から「ど
うして人が身構えるのか」というテーマ
図17
大学時代の写真(左)と身構え姿勢(右)
をいただき、研究をずっとしております(図17)。
研究を通して、ヒトの身構え姿勢には意味があるとい
うことがわかってきました。頚をニョキっとする卓球
の構えのような姿勢をとりますと、目でパッと見るま
での時間が短くなることを見つけました。卓球で言う
と40㎝くらい早くボールをキャッチすることがで
きるということを見つけております。どうやらそれは、
脳が活性化しているらしいというのがわかってきま
した。スポーツを4年間やっている人は、そうじゃな
い人に比べて、身構え効果があるというのがわかりま
したし、実際に3週間トレーニングをするだけで、
図18
スポーツ経験と脳の活性化
一時的ではありますが、身構えると脳が活性化すると
いうことを見つけることができました(図18、
図19)。
したがって、卓球のスウィング動作時の筋活動パタ
ーンは、子どもたちが身構えることで、状況によって
は学習効率が良くなるなど、いろいろな良いことがあ
るのではないかと、今は考えています。このように、
いろいろと考える機会を下さいました関係各位や、4
月の時に力強く応援して下さいました本学の越塚学
長には厚くお礼申し上げます。成果発表は以上です。
ありがとうございました。
図19
36
脳の活性化のトレーニング効果
5.
参考資料
美唄市サテライト・キャンパスのホームページ
ホームページ画像1
37
ホームページ画像2
38
ホームページ画像3
39
6.
まとめにかえて
本研究は、平成 26 年 2 月に東
貴弘様(当時 美唄市企画課主幹。現、空知
総合振興局地域政策課長)と谷村泰尚様(当時
美唄市教育委員会生涯学習課
主査。現、美唄市教育委員会生涯学習課サテライト・キャンパス推進室室長)
が札幌国際大学に来学され、3 名にて、以下のことを確認し、想いを語りあった。
1)札幌国際大学と美唄市は、地域活性化、人材育成および学術振興などの面
で、連携を推進するために、平成 21 年 7 月 1 日に「美唄市と札幌国際大学と
の連携に関する協定」を行った。この点を出席者で再確認した。
2)美唄市が策定した「びばい未来交響プラン(第 6 期美唄市総合計画)」では、
施策の柱の一つに健康体力づくりを挙げている。同計画では、具体的な健康
体力づくりの課題の一つは運動習慣の獲得であると指摘している。学童思春
期(6~17 歳)の運動習慣の形成および体力向上の解決に向けてのプログラム
の企画立案、実施、検証といった一連の流れが重要であると認識した。
3)美唄市は、平成元年に開催された、はまなす国体の「卓球競技」の主会場
となった。これ以降、美唄市では、ジュニアスポーツの一つとして、「卓球」
が盛んに行われている。美唄市の東主幹・谷村主査から、平成 26 年度の美唄
サテライトキャンパス(地域と大学の連携による協働事業)として、
「札幌国
際大学卓球部によるレッスン・交流試合」を小中学生に向けて実施してほし
い旨の依頼がなされた。この協働事業を通じて、ラケット操作時の上肢に焦
点を当て、筋肉から発する電気活動(筋電図)と高速度カメラ画像を測定し、
スポーツにおける運動技能向上について研究し、指導技法を確立することと
した。
4)レッスン・交流試合およびそれと関連する研究による検討を通じて、上述
40
した美唄市の課題解決を図るとともに、
「スポーツ交流によるまちづくりの一
つのモデル」を形成することを確認した。
この時の熱い語らいは、一生の思い出となっている。これら研究を推進する
ことで、子どもたち一人ひとりの運動技能が向上し、これらを通じて、まちづ
くりの活性化が高まることを願ってやまない。
最後に、美唄市の髙橋幹夫市長、北海道議会(美唄市選挙区)の柿木克弘議
員、またさらに、札幌国際大学の越塚宗孝学長からは、本研究を推進するにあ
たり大きな励ましをいただきました。あらためて、深謝申し上げます。
2015 年 3 月 31 日
国田賢治
41
Fly UP