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県内個人消費の近年の動向と今後の課題

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県内個人消費の近年の動向と今後の課題
この公表資料は当店ホームページに掲載しています。
ホームページアドレス
http://www3.boj.or.jp/kagoshima/
2015 年 5 月 15 日
日本銀行鹿児島支店
県内個人消費の近年の動向と今後の課題
<概要>
【当地における個人消費の全体評価】
 近年の県内個人消費の動きをみると、リーマンショックに伴う景気の落ち
込み等から一時的に弱い動きが続いたが、その後は、雇用・所得環境が緩や
かに改善する中で、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動を伴い
つつも、全体として底堅く推移している。
【長期的な消費者の行動変化】
 こうした中、長期的な消費者の行動変化をみると、消費者のメリハリ消費
がより顕著にみられるようになって来ているほか、最近ではネット通販の利
用といった購入チャネルの多様化が進んでいる。また、中心市街地の小規模
小売店から郊外型大型商業施設への購買先のシフトが続いているほか、コン
ビニのプレゼンスも高まっている。
【先を見据えた経営面の取り組み】
 競争環境が厳しくなる中、近年の消費者の行動変化も加わり、小売業者を
巡る経営環境は厳しさを増している。こうした中、以下のような問題意識・
観点に対する対策を講じて、一定の成果を上げている企業もあり、先を見据
えたこのような取り組みの広がりが期待される。
① 高齢者向けサービスの拡充
 県内では全国よりも早いペースで高齢化が進んでおり、高齢者向けのサー
ビス・商品の品揃えを充実させる必要があるが、一部の企業では、移動販売
や商品の宅配サービスの拡充等、高齢者向けの販売サービスを拡充する取り
組みがみられている。
② 他社との差別化による消費者ニーズの取り込み
 今後さらに消費者ニーズが多様化する中で、他社との差別化を図るために、
経営資源の限られた企業では、顧客ターゲットを絞った販売戦略を採ってい
るほか、業種・業界を超えた取り組みを通じて、お互いの強みを活かし、弱
点を補い合いながら消費者のニーズにきめ細かく対応している企業もある。
③ 外国人観光客に対する消費の促進
 観光庁の外国人観光客に対する行動調査によると、全体の約 8 割が「ショ
ッピング」をしたと回答するなど、外国人観光客の購買意欲は高く、そのウ
エイトは高まっている。そうした中、免税対応や外国語表記を導入する企業
が増加するなど、外国人観光客が買い物しやすい環境整備が進められている。
1. 近年の県内個人消費の概要
近年の県内個人消費の動きをみると、リーマンショックに伴う景気の落ち込
み等から弱い動きが続いたが、その後は、雇用・所得環境が緩やかに改善する
中で、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動を伴いつつも、全体と
して底堅く推移している。この間、大型商業施設における相次ぐリニューアル
や大手コンビニチェーン店の新規出店の動きも個人消費の底上げに貢献してい
る。
(大型小売店<百貨店・郊外型大型商業施設>)
近年の大型小売店の動向をみると、リーマンショックに伴う景気の落ち込み
に加え、三越鹿児島店の閉店(2009/5 月)により、2009 年にかけて大幅に減少
した。その後、三越鹿児島店の営業を引き継いだマルヤガーデンズの開業
(2010/4 月)、イオンモール鹿児島の増床(2013/11 月)、アミュプラザ鹿児島
プレミアム館のオープン(2014/9 月)など、大型商業施設のリニューアルが続
いたことや、景気の緩やかな回復もあり、足許の大型小売店売上高は概ね横ば
いで推移している。
ここ最近の動きとしては、2014/4 月の消費税率引き上げに伴う、増税前の駆
け込み需要とその反動がみられたが、食料品については昨年夏場頃にはほぼ解
消し、耐久消費財については秋以降順次、反動減の影響は解消しつつあり、足
許は食料品を中心に底堅く推移している(図表 1)。
(図表 1)大型小売店売上高(全店ベース)
2,500
(前年比%)
(億円)
大型小売店販売額
鹿児島(前年比)
全国(前年比)
8.0
6.0
2,000
4.0
2.0
1,500
0.0
1,000
▲ 2.0
▲ 4.0
500
▲ 6.0
0
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
【年ベース】
2013
13/10-12月
2014
(年)
14/1-3月
4-6月
7-9月
10-12月
【四半期ベース】
(出典)経済産業省「商業動態統計」
(乗用車新車登録台数)
乗用車新車登録台数は、東日本大震災の影響から 2011 年に大幅に減少した。
その後は、翌年のエコカー補助金の再導入等の影響のほか、消費税率引き上げ
前の駆け込み需要の影響を受けて、登録台数は増加した。足許は、消費税率引
き上げ後の反動減を受けつつも、持ち直しつつある(図表 2)。
1
▲ 8.0
(図表 2)新車登録台数(普通+小型+軽合計)
80,000
(前年比%)
(台)
60.0
新車登録台数
70,000
鹿児島(右目盛)
130
125
登録台数(11~13年平
均=100)
全国(右目盛)
40.0
60,000
120
115
50,000
20.0
110
105
40,000
100
0.0
30,000
95
20,000
▲ 20.0
10,000
90
85
▲ 40.0
0
80
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
13/10-12月
14/1-3月
4-6月
7-9月
10-12月
15/1-3月
(年)
(出典)鹿児島運輸支局、軽自動車検査協会鹿児島事務所、日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会
(雇用・所得環境)
この間、雇用・所得環境をみると、有効求人倍率は 09/6 月頃をボトムに上昇
傾向を辿り、景気回復に伴って直近(2015/3 月)では 0.86 倍と 1991/11 月以来
の高い水準に達している。また、現金給与総額も、2006 年以降、減少傾向が続
いていたが、2012 年から上昇に転じており、2014 年は 5 年振りの水準となる
など、全体として改善の動きが続いている(図表 3、4)。
(図表 3)有効求人倍率(鹿児島県)
1.20
(図表 4)現金給与総額(名目、2010=100、鹿児島県)
(倍)
115.0
1.00
(2010=100)
110.0
0.80
105.0
0.60
100.0
0.40
95.0
0.20
0.00
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
(出典)厚生労働省
(年)
90.0
2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
(注)事業所規模 5 人以上。2014 年平均は 1~12 月
の指数を単純平均した値を使用。
(出典)厚生労働省
(年)
2.消費税率引き上げの影響について
2014/4 月に実施された消費税率引き上げの個人消費への影響について、1997
年の消費税率引き上げ(3%→5%)時の影響と比較すると、駆け込み需要は前
2
回増税時よりもやや大きかったとみられる一方で、雇用・所得環境が改善傾向
にあることなどの影響もあって、反動減は、これまでのところ前回よりも小さ
いと評価することが出来る(図表 5)。
(図表 5)消費税率引き上げの影響比較(1997 年・2014 年増税時、鹿児島県)
<大型小売店売上高前年比【四半期】>
(前年比%)
6.0
4.0
<新車登録台数前年比【四半期】>
(前年比%)
25.0
今回
前回
20.0
15.0
2.0
今回
前回
10.0
0.0
5.0
▲ 2.0
0.0
▲ 5.0
▲ 4.0
▲ 10.0
▲ 6.0
▲ 15.0
▲ 20.0
▲ 8.0
T-5 T-4 T-3 T-2 T-1
T
T-5 T-4 T-3 T-2 T-1
T+1 T+2
T
T+1 T+2
(注)消費税率の引き上げが行われた時点T期として、駆け込み需要とその後の反動減の大きさを比較(今
回T期…2014/4-6 月、前回T期…1997/4-6 月)
。
(出典)経済産業省
(出典)鹿児島運輸支局、軽自動車検査協会鹿児
島事務所、日本自動車販売協会連合会
3.消費者の行動変化
上記のような消費動向の中、消費者の行動変化への対応が県内小売企業にと
っての大きな課題の一つとなっている。
(1)メリハリ消費の拡大
民間シンクタンクが実施している全国アンケートによると、
「価格が安くて経
済的なものを買う」消費者の割合が減少する一方で、
「多少値段が高くても、品
質の良いものを買う」や「自分のライフスタイルにこだわって商品を選ぶ」と
いった消費者の割合が増加してきている。昨年の消費税率引き上げが、こうし
た消費にメリハリをつける行動に拍車をかけているようである。消費税の税率
が上がった後に取る予定の行動に関する全国調査をみると、
「とにかく安くて経
済的な商品を選ぶようにする」(45.1%)との回答が最も多い一方で、「節約す
るものとお金をかけるものとを明確に分ける」
(34.7%)と回答した割合も全体
の 3 割に上っている(図表 6、7)。
鹿児島市における家計の支出動向をみると、消費税率の引き上げが行われた
2014/2Q に減少したが、その後、基礎的支出(食料、光熱費、保健医療サービ
ス等)は緩やかに回復している。一方で、選択的支出(旅行、外食、パソコン
やエアコン等の家電等)」は、消費増税以降減少が続いている。もっとも、こう
3
した節約志向の中においても、娯楽用家電(パソコン、カメラ等)や旅行、スポーツ
等に関する消費は、概ね 2013 年並みの支出額が維持されている。実際、当地の
小売業者からも、「気に入った商品があれば高額なものでも購入に繋がってい
る」、「クリスマスやバレンタインデーなどのイベント時には客単価が一気に上
がる」などの声が聞かれており、「メリハリ消費(消費の二極化)」の動きが一
段と明確になってきている(図表 8、9)。
(図表 6)消費者動向の変化(全国)
(図表 7)消費税の税率が上がった
後に取る予定の行動(複数回答、
回答率上位 3 位、全国)
(%)
60
50
40
30
20
10
0
とにかく安くて経済
的なものを買う
多少値段が高くて
も、品質の良いもの
を買う
自分のライフスタイ
ルにこだわって商品
を選ぶ
2000年
50.2
40.0
22.9
2006年
45.3
43.3
31.5
2012年
41.2
46.4
36.0
(出典)野村総合研究所「生活者 1 万人アンケート調査」
同じ商品でも、とにかく 45.1%
安くて経済的な商品を選
ぶようにする
特売・期間限定の値引き 38.1%
の対象となっている商品
を買うことが増える
節約するものとお金を使 34.7%
うものを明確に分けるよ
うになる
(出典)野村総合研究所「日常生活に関す
るアンケート(2013 年 12 月)
」
(図表 8)家計の支出動向(鹿児島市、二人以上の世帯、1 世帯あたりの 3 か月平均の支出額)
【基礎的支出・選択的支出の推移】
【教養娯楽関係費のうち選択的支出の推移】
(2013年四半期平均=100)
2014年
2015年
1-3月 4-6月 7-9月 10-12月 1-3月
教養娯楽関係費
98
107
100
102
94
耐久財
155
203
75
176
59
非耐久財
94
100
102
96
97
読書
71
87
80
80
141
聴視・観覧
68
122
94
83
74
旅行
114
105
127
116
124
スポーツ
90
106
106
118
84
月謝
84
110
67
50
70
会費・つきあい費
86
99
105
114
118
その他の教養娯楽
93
79
98
93
85
(年)
(注1) 2015/1Q は、15/1、2、3 月実績値を基に当方にて算出。
(注2) 図表「教養娯楽関係費のうち選択的支出の推移」は、家計が支出した教養娯楽関係費(3 か月平均)のうち、選択
的支出に該当する項目のみを抽出し作成。なお、各項目に該当する具体的な品目・サービスは以下の通り。
耐久財…パソコン、ビデオカメラ、カメラ、楽器等
読書…書籍
聴視・観覧…ケーブルテレビ受信料、映画・演劇等入場料等
旅行…宿泊料、外国パック旅行費等 スポーツ…運動用具類、スポーツクラブ使用料等 月謝…語学月謝、音楽月謝等
会費つきあい費…つきあい費(親睦・交際的要素のある会費)、その他教養娯楽…インターネット接続料、ペットフード、動物病院代等
(出典)総務省統計局「家計調査
家計収支編」
4
(図表 9)小売店から聞かれた二極化を指摘する声
事例
増税後も、高級な国産和牛やフルーツなど、これまであまり購入がみ
られなかった高額な商品は店頭に並べれば完売するほどの好調な売れ
行きとなっている。
消費者は、気に入った商品があればたとえ高額なものでも購入に繋が
っている一方で、セールなどではどんなに安くしても納得のいく商品が
なければ、購入しない。
日常の食料品に関しては増税後財布の紐が固く、節約志向が強まって
おり、安いものに集中する傾向にある。一方で、クリスマスやバレンタ
インデーなどのイベント時には客単価が一気に上がるなど特別な日だ
けの贅沢がみられている。
A社
(スーパー)
B社
(商業施設)
C社
(スーパー)
(出典)日本銀行鹿児島支店調べ。
(2)購入チャネルの多様化
こうした中、最近ではインターネットの普及に伴ってネット通販市場が拡大
していることを受けて、当地においても若い世代を中心にインターネットを通
じた商品購入の動きが広がっている(図表 10、11)。
インターネットで購入した商品の内訳をみると、最も多いのが衣料品で約6
割を占め、次いで本・電子書籍、日用品・生活雑貨・家電製品などとなってお
り、生鮮食料品などの非耐久消費財をインターネットで購入したことがある割
合は現状、約2割程度に止まっている(鹿児島経済研究所調べ)。
(図表 10)インターネットでの買い物したことがある人の割合(鹿児島県)
100
ネット購入者割合 (%)
80
60
40
20
0
全体
10~19歳 20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70歳以上
(注)調査時点:2014 年 10 月下旬 調査対象:鹿児島銀行の県内本支店窓口来店者
(出典)鹿児島経済研究所
(図表 11)通信販売の利用媒体(鹿児島県)
2003 年
2009 年
2012 年
カタログ
ショッピング
インター
ネット
テレビ
ショッピング
新聞・雑誌の
広告
その他
75.5%
54.6%
52.2%
6.3%
26.2%
34.3%
10.5%
11.6%
9.1%
5.8%
5.7%
3.4%
1.9%
1.9%
1.0%
(出典)鹿児島県「消費者購買動向調査報告書」
5
(3)商店街からロードサイドへ
幹線道路沿いの大型店舗の進出が広がる中、買い物の際の交通手段をみると、
一段と自家用車を利用する形態が定着している。消費者が買い物をする際に店
舗を選ぶ基準としても、
「駐車場があること」が上位となっている。こうした流
れが、地元中心市街地に立地する中小・零細の小売業者からの客離れの一因に
なっており、小規模小売業者の企業数は減少傾向にある(図表 12-1、12-2、13)。
鹿児島市天文館地区の空き店舗の割合をみると、各種取り組みの成果もあっ
て、数年前の 9.9%という高い水準からは低下しているが、景気に回復の動きが
みられる中でも、再びじりじりと上昇している(図表 14)。
(図表 12-1)買い物の際の交通手段(鹿児島県)
(%)
年
最寄品
買回品
2003
2009
2012
2003
2009
2012
自家用
車
64.7
79.9
78.4
74.5
87.1
85.8
徒歩
17.9
9.9
11.7
4.0
2.3
5.7
自転車
等
13.1
8.4
8.1
5.5
3.3
3.4
バス等
その他
2.9
0.9
1.1
13.5
5.2
3.1
1.3
0.9
0.8
2.5
2.1
2.0
(図表 13)従業者規模別事業所数(卸・小売、鹿児島県)
160
11.0
<回答上位 3 位>
・自宅からの距離 …60.4%
・ポイントカード …53.3%
・駐車場あり
…40.2%
(出典)新日本スーパーマーケット協会
「消費者調査 2013」
(注)最寄品:食料品、日用雑貨品、実用衣料品
買回品:高級衣料品、身回品、文化品、贈答用品
(出典)鹿児島県「消費者購買動向調査報告書」
(2005=100)
(図表 12-2)スーパーマーケット利用
順位の決定要因(全国)
(図表 14)天文館地区空き店舖率
(%)
140
120
7.0
100
80
1~19人
20~99人
60
100~300人以上
3.0
40
2005
2009
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014(年)
2012 (年)
(出典)総務省統計局「経済センサス」
(出典)鹿児島市経済振興部産業支援課
(4)コンビニのプレゼンスの増大
コンビニエンスストアの動向をみると、県内では長年大手3社を中心に店舗
が展開されて来たが、2011 年に大手コンビニチェーン店が新たに県内に進出す
るなど、新規出店が相次いでいる結果、県内のコンビニエンスストア店舗数は
ここ2年間で 1.3 倍に増加しており、消費動向をみるうえでも重要な要素になっ
ている(図表 15)。
6
(図表 15)コンビニエンスストア店舗数(鹿児島県)
700
(店)
550
(注)大手コンビニ 3 社の店舗数計
(年 3 月時点の店舗数)
。各社のデ
ィスクロージャー資料から作成。
400
250
(出典)日本銀行鹿児島支店調べ。
100
2005
2008
2011
2014
(年)
4. 今後の課題
少子高齢化による県内小売市場の縮小が先々見込まれるほか、消費者行動も
変化してきており、競争環境も厳しい中、小売業者を巡る経営環境は厳しさを
増している。一部の企業では、こうした経営課題に対して、①高齢者向けサー
ビスの拡充、②他社との差別化による消費者ニーズの取り組み、③外国人観光
客に対する消費の促進、などの対策を講じている。
こうした取り組み事例も参考にしつつ、将来を見据えて消費者のニーズを的
確に捉えて需要を取り込む戦略が幅広く講じられていくことが期待される。
(1)高齢者向けサービスの拡充
鹿児島県は、若年層の県外流出が他県より多いこともあって、県内人口は 1955
年をピークに減少傾向が続いているほか、65 歳以上人口が県全体の 26.5%に上
るなど、全国(23.0%)よりも早いペースで高齢化が進んでいるため1、高齢者
向けのサービス・商品の品揃えを充実させる必要がある。既に一部の企業では
高齢者向けの販売サービスを拡充するなどの取り組みがみられているが、こう
した動きは住民の「買い物難民化」
(周辺商店が減少する中、高齢化に伴う自動
車運転の困難化で生活用品などの購入に困る人々)を回避する取り組みとして
も期待されている(図表 16)。
(図表 16)高齢者のニーズへの対応を強化している事例
D社
(スーパー)
E社
(スーパー)
1
事例
高齢者向けに野菜や惣菜などを中心とした小分け販売を強化。ま
た、店舗に買い物に行くことが難しい消費者向けのネットスーパー
や、インターネット等の利用が不得手な高齢消費者を対象にとした電
話による注文サービスを実施している。
食料品や日用品の移動販売を実施し、山間地域に居住する世帯向け
の販売を実施。こうした移動販売の取り組みは、地元住民の新しいコ
ミュニケーションの場としても活用されている。
2010 年国勢調査から記載。
7
F社
(コンビニ)
G社
(家具)
H社
(運輸)
市街地だけでなく、敢えて過疎地域であっても新規出店を行い、地
域住民のコミュニケーションの場所としても活用出来るような店舗
作りを行って、集客力を高める工夫を行っている。
高齢者を主なターゲットとして、部屋の模様替え時に必要な家具や
間取りの採寸代行サービスを行い、消費者の家具の買い替え需要を喚
起する取り組みを行っている。
買い物に不便を感じている消費者を対象とした「買い物代行サービ
ス」を実施するほか、高齢者などの体調確認も並行して実施。
(出典)日本銀行鹿児島支店調べ。
(2)他社との差別化による消費者ニーズの取り込み
消費者ニーズが多様化する中では、如何に他社との違いを出すかが重要であ
るが、県内企業の中には、地域限定の郷土料理の製造・販売によって地元の顧
客を確保しているほか、品揃えの豊富さから地元客だけでなく、県外客の獲得
に成功している事例もある。
また、一部の企業では、地元有名飲食店とタイアップして、人気メニューを
商品化したり、季節に応じて地元百貨店のカタログ販売を取り扱うなど、業種・
業態を超えて、お互いの強みを活かすことによって、他社との差別化を図って
いる事例がみられている(図表 17)。
(図表 17)他社との差別化により消費者ニーズの取り込みを図っている事例
I社
(スーパー)
J社
(スーパー)
K社
(コンビニ)
事例
他社との差別化を図るために、地元食材はもちろん全国各地や世界
各国を訪問し、珍しい商品を店頭に並べているほか、消費者の購入意
欲を掻き立てるような広告作りや店舗づくりを実施しており、遠方か
らの来店もみられている。
惣菜のほか、豆腐やデザートなどの食品も手作りの製法に拘ってい
るほか、他社では中々入手出来ないような珍しい国内外の食品を取り
揃え、地元産の食材と調理する方法などを紹介している。また、高齢
者や身障者が不自由なく買い物ができるよう電子マネーを導入して
いる。
複数の地元飲食店とタイアップした商品を販売することで、消費者
の購買意欲を促進するとともに、商品の宣伝効果にも繋がり、タイア
ップ先の飲食店への来店も伸びるなどの相乗効果がみられている。
(出典)日本銀行鹿児島支店調べ。
(3)外国人観光客に対する消費の促進
近年、円安効果や国際線の新規就航等もあって、外国人観光客は増加傾向に
あり、それに伴って、外国人観光客の観光消費額も増加している。観光庁の調
査によると、外国人観光客が日本で行った行動の中で、全体の約 8 割が「ショ
ッピング」をしたと回答するなど、外国人観光客の購買意欲は高く、実際、県
8
内消費に占めるウエイトも少しずつ高まっている。今後、地域の人口が減少し
ていく中においては、観光客、特に外国人観光客の消費需要を如何にして取り
込んでいくか重要となって来ている。(図表 18、19)
こうした中、2014/10 月に外国人観光客向けの消費税免税制度が改正され、免
税対象商品が拡充されたことに伴って、地元の小売業者の中には、店舗内に免
税コーナーや外国語表記の案内板を設置するなど、外国人観光客の受入態勢を
整備したり、外国人観光客向けのイベントを開催して消費を喚起しようとする
動きがみられている(図表 20)。
(図表 18)鹿児島県内外国人観光客延べ宿泊者数の推移と消費額の試算
県内外国人述べ宿泊者数(A)
2011 年
2012 年
2013 年
2014 年
92,890 人
170,570 人
214,810 人
269,110 人
94,844 円
県内外国人客の消費単価(B)
外国人宿泊客の県内消費額(A×B)
88.1 億円
161.7 億円
203.7 億円
255.2 億円
(注)外国人客の消費単価は、観光庁「全国観光入込客統計に関する共通基準」の県内外国人客消費額単価(観光
目的・宿泊客)を採用し、各年の振れをならすために 2011~2013 年平均値を用いた。
(出典)観光庁「宿泊旅行統計調査」
、
「全国観光入込客統計に関する共通基準」より日本銀行鹿児島支店試算。
(図表 19)訪日外国人観光客の活動内容(全国)
1位
2位
3位
4位
した活動
日本食を
食べるこ
と 96.6%
ショッピ
ン
グ
77.2%
繁華街の
街 歩 き
66.6%
自然・景
勝地観光
56.9%
次回実施
したい活
動
日本食を
食べるこ
と 47.0%
温泉入浴
ショッピ
ン
グ
40.6%
自然・景
勝地観光
39.8%
今回実施
47.0%
(出典)観光庁「訪日外国人の消費動向
(平成 25 年年次報告書)
」
(図表 20)外国人観光客の消費需要の取り込みを図っている事例
L社
(百貨店)
M社
(百貨店)
N社
(商店街)
事例
外国人観光客の来店を促すために、館内無料の Wi-Fi(多国語対
応)や外国語表記の案内板を設置。また、2015 年の春節期間中には、
中国語アルバイトを配置するなどして、接客サービスを強化した。
系列のホテルで外国人観光客の受入態勢を整備することにより、
外国人観光客に宿泊してもらい、その外国人観光客の買い物の場所
として同百貨店を紹介し、インバウンド需要を取り込んでいこうと
している。
外国人観光客の消費需要を地元商店街にも波及させていくととも
に、地元小売業にとっても外国人観光客の受け入れに対する意識を
高めるため、春節期間中、商店街内でイベントを開催した。
(出典)日本銀行鹿児島支店調べ。
以
9
上
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