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小学生には安心感を、中学生には自信を与える小中連携を目指して
小学生には安心感を、中学生には自信を与える小中連携を目指して 伊丹市立西中学校 主幹教諭 石田 悦子 1 取組の内容・方法 (1)取組のきっかけ 小学校の学習指導要領では、平成23年度から外国語活動(5・6年生対象) が全面実施となり、本市の「中学校教育研究会英語部会」でも小学校の「外国語 活動」から中学校「英語授業」への円滑な接続のため小中連携をすすめていた。 それ故、本校でも小中連携の方法を模索することとなった。 (2)取組の実際 具体的に小中連携を考えた時には次の3つの形態が考えられる。 ①生徒と児童の交流(中学生による小学生への出前授業) ②教師と児童の安心感のある出会い(中学校教師による小学生への出前授業) ③中学校教師と小学校教師の連携(教師間の情報交換や授業参観) その中から①と②についての実践を紹介させていただく。 ①生徒と児童の交流 平成23年度より卒業を控えた3年生たちが、校区の小学校2校の6年生の すべての教室へ出かけ、中学校入学前の小学生たちに英語の出前授業を行う。 【出 前 授 業】 ・公立高等学校推薦受検者や私立高等 学校専願者など、すでに卒業前に進 路が確定している生徒(6~7名程 度)でチームを編成する。 ・小学校外国語活動で使用しているテ キスト「Hi! Friends」で小学生の 既習表現を把握する ▲まずは簡単な英語で自己紹介 ・45分の活動の流れを組み立てる。 ・活動に必要な準備物を作製する。 ・出前授業に出かける ・反省会(小学生の反応や理解度をも とに問題点などを出し合う)をもつ。 ・次年度の3年生への申し送り事項を 整理する。 *生徒は原則出身小学校に出かける ▲かがんで小学生にアドバイス 【本年度の活動の流れ】 ・あいさつ(代表生徒) ・自己紹介(中学生側) ○名前 ○好きなもの(好きなこと) ○上手にできること ○将来の夢 ・英語によるスピーチの披露 (本年度市内スピーチ大会出場者) ・クイズ(グループ対抗) ○Who am I ? ▲Who am I? クイズの答えを絵で描 く小学生 ○ Let’s find a different word. ・身近な食べ物とスポーツをリズム読み ・自分の好きな食べ物とスポーツについ て I like ~ . で表現する ・好きな食べものと好きなスポーツを集 計しクラスのトップ3を発表 ・終わりのあいさつと感想(代表生徒) ▲クイズの答えを発表する中学生 ②教師と児童の安心感のある出会い 小中連携の一環として昨年度末校区の6年生全クラス(現中学1年生)を対象 に外国語活動を行う機会(*市教育委員会から、主に小学校教員の研修として示 範授業の依頼)をいただいた。ねらいは小学校外国語活動の時間に児童が慣れ親 しんだ「Hi, Friends!」での表現をできるだけ多く取り入れ「しっかり聞き取る」 「大きな声で話す」こととした。また活動の中心をグループワークにすることで、 児童と指導者の間の緊張感が緩和できるようにした。 ・あいさつ(英語で) ・指導者の自己紹介 ・リスニング活動 ○身の周りの単語を聞きとる ○聞こえてきた単語の順を発表する ・グループワーク(クイズ) ○異種の単語をあてるクイズ ○can を含んだ Who am I? クイズ ○Can you ?でインタビューゲーム ▲伊丹市立稲野小学校6年1組にて 2 取組の成果 (1)生徒と児童の交流(出前授業)を終えて 英語出前授業は本年度の3年生で4年目となる。2月下旬に出前授業に出向く メンバーを募ったところ、彼らの中には6年生の時に先輩達が来てくれたことを 鮮明に覚えている者もおり、大変興味を示してくれた。感想は次のとおりである。 ○ 私たちが6年生の時も先輩方が来て下さったことを思い出しました。私 はその時中学校から本格的に始まる英語に不安を抱いていました。私のよ うな6年生も多くいると思ったので英語を「不安」から「楽しみ」に変え られるように計画しました。出前授業に行った他のメンバーと協力して場 を盛り上げることができたので良かったです。小学校と中学校の良い連携 だと思いました。すごく充実した時間でした。【女子生徒より】 ○ ぼくは友だちの誘いを受けて英語を小学生に教えに行くプロジェクトに 参加しました。最初は正直乗り気ではありませんでしたが、いざ本番にな ると今まで味わったことのない楽しさが一気にわき上がって「無茶苦茶楽 しいイベントやん!」と思えるほどになりました。また小学生に教えるこ とで、自分の英語力がまだまだ未熟だということも感じました。この経験 を機に更に英語に関する知識を身につけていきたいと強く思えるように なりました。【男子生徒より】 ○ 母校の後輩達とたくさんコミュニケーションをとることができました。 うまく授業を進められるか不安もありましたが、6年生のみなさんは笑顔 で私たちを迎えてくれ、また楽しんでくれたのでとても安心しました。3 時間で3クラスをまわったので、最後にはとても疲れました。同時に大き な達成感も得ることができました。貴重な体験を卒業前にすることができ 本当に良かったです。【女子生徒より】 出前授業に参加した生徒は各クラス一部の限られた生徒ではあるが、彼らの感 想にもあるようにこの取組は生徒の自尊感情を育む活動であったと言える。同時 に代表生徒による4分以上の英語スピーチを聞き終えた後には、小学生たちから 感嘆の声があがった。中学校での3年間でここまで英語が堪能になることへのあ こがれとも思える声であった。 また、グループワーク中に小学生にアドバイスを行う際など、自ら小学生の目 線に合わせて話しかける光景も見られた。これはほん の一例ではあるが、この活動が他者への思いやりを育 む一助となったと言えるのではないだろうか。卒業を 控えた児童と生徒たちが学びの場を共にすることで、 中学生たちには自信を与え、小学生たちには中学校生 活への安心感を与えることができたと思われる。 (2)教師と児童の安心感のある出会い(教師からの出前授業)を終えて 小学生にとって中学校から始まる英語は楽しみである反面、過度な不安を抱く 材料にもなりかねない。中学校教師が小学生に外国語活動を行うことでその不安 (中 1 ギャップ)解消につながるであろう成果も垣間見ることができた。このこ とは彼らの感想からも伺える。 3 課題及び今後の取組の方向 本校で行っている「英語出前授業」は小学校の先生方や小学生には好評を得てい るが、この取組を継続していく上で、小中での校時開始時間のずれや派遣生徒の選出、 引率など多くの調整をはかる必要がある。 また「小学校外国語活動」を原則学級担任が指導することになるが、教科外の英 語を教えることに尻込みをされているとも聞いていた。今後も様々な形態の連携をし ていくことが、小学校の先生方との情報交換の場となるととらえている。双方の効果 的な指導内容についてのすり合わせや課題を明確にする場としていきたい。