Comments
Transcript
洋 の 東 西 を 問 わ ず “ 瞬 間 消 費 主 義 者 ” と 化 す 若 者 た ち 欧 米
砂川 肇 トレンドスポッター 洋の東西を問わず“瞬間消 費主義者”と化す若者たち 東京の、週末土曜日の明け方。 お 台 場 に あ る ク ラ ブ の ポ ー チ で は、 踊り疲れた若者たちが、コーラ飲料を 手に朝焼けを眺めている。 と、符合する別の何かが誰かに寄付さ 記号を意訳すると「バイ・ワン、ギブ・ ワン」 、つまり私たちが何か商品を買う うか? 最新顔は、オンラインでネクタイを 売るフィグズ社だ。同社のサイトで さていま、B1G1の動きはさらに 広がっている。 わけだ。 洋の東西を問わず、最近の若者たち には“瞬間消費主義者”というニック ネームがふさわしい。 れていく、という企業活動を指す。 れている。私が同社の水を リットル 日本では、飲料水企業ボルヴィック の「 1L for 10L 」プロジェクトが知ら 「いま、具体的にできる、新鮮で面白 そうなこと」に跳びついて、その一瞬 一瞬を即席消費して楽しむのだ。退屈 は“敵”だ。暇なときなど、あるはず いそ はない。具体的な“消費”行動に勤し 万円ほどのネクタイを1本買うと、ア フリカの子供に制服が1着寄付される。 香水を買うと、売上の一部が盲導犬協 歩く若者のグループがいる。そう離れ たちを命名したのは、ポーランド生ま ちなみに、瞬間的、言い換えれば断 片的な生活を好む彼ら、と現代の若者 収集に目の色を変えているからだ。 て、次なる新しい“瞬間体験”の情報 という活動を開始していた。 足を南米の身体の悪い子供に寄付する、 2006年、客が1足買うと、もう1 私の知る限り、動きを率先したのは、 米国の靴企業トムズ社だった。同社は フリカに手渡される、という概要だ。 利益が、蜂の巣の維持管理に回される ースをPB(プライベート・ブランド) 同社は、敷地内に蜂の巣を設置して 蜂蜜を採り、それをブレンドしたジュ イギリスの大手スーパー、セインズ ベリーの展開も興味深い。 ト社も新機軸だ。 会に寄付される豪州の化粧品企業キッ ていない東京駅では、その日で運行を れの社会学者、 バウマン教授だ。いわく、 という寸法だ。 買うと、 リットル分の清潔な水がア 終える列車を惜しんで写真を撮ろうと 「彼らは、短期的なプロジェクトをつね 主力商品は、キャンバス布でつくら れ る カ ジ ュ ア ル・ シ ュ ー ズ な の だ が、 お台場の別の場所には、対岸に広が る工場群を双眼鏡で覗きながらそぞろ 待機する若者が、プラットホームを埋 に接ぎ穂し続け、まさに流動的という 創業者がアルゼンチンを旅行中に出会 いぶか 車場の出入り口には発電ブロックを敷 いており、クルマの出入りに応じて自 蜂の巣を持つことは、言うまでもな く“エコ主義”の象徴にほかならない。 家発電する。 どうか」と応じて、ついには「寄付す 周辺の農家が受粉を支援してくれてお り、動きはコミュニティとの協働作業 ちなみに同社の蜂の巣活動は、B1 G1Bと呼ばれる。最後のBは蜂を指 たのだ。 まり、自分でお金を払ってボランティ している。 にもなっているのだ。 アをしにいく旅行が誕生してしまった 「ボランツーリズム」 これがのちに、 と呼ばれる営みにつながっていく。つ る靴を自分で手渡すツアー」へと転じ 「本当に寄付されるのか?」と訝った 客に、 「では、あなたが直接、届けたら 商品として販売している。そこからの め尽くしている。ちょっと遠くの東池 べき日々を送っている」 ほ 袋にある乙女ロードでは、新発売の同 つ 人誌グッズを買おうとする若者たちが、 専門店の前で列をなしている。 本人が気づかぬ時間や場所で秘密に写 しかし同社の動きは、これにとどま らなかった。 同社は、「エコ・スーパー」を自任す る。雨水をためて有効活用するし、駐 んでいないときは、パソコンに向かっ 1 った靴がヒントになっている、という その、同じ時刻。 1 背景が活動に結びついたらしい。 10 瞬間消費主義者のために企てられる ニュービジネスも、異色だ。警告なし に自分を拉致させ、 時間ほど拘束さ 東京と同じような時刻。ある若者は、 懐かしのハム無線の交信にのめり込ん 事情は、ニューヨークでも似ている。 で い る。 彼 の 部 屋 の 真 下 の 歩 道 で は、 真を撮らせるのは、一般人を対象にす せる新顔は、文字通り「誘拐サービス」 。 最近復活した原付バイク暴走族たちが、 「B1G1」という表現をご存じだろ 欧米で広がっている 「B1G1」の動き る「パパラッチ サ ・ ービス」??? 今日のコースはどこにしようかと論じ 合っている。 隣のマンションの一室では、なんと 旧石器時代に生きた穴居人の料理を再 現して楽しむパーティーを終えたグル ープが、後片付けの真っ最中だ。 Shokokai 2010.6 51 10