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スピーチ【PDF:6.75KB】

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スピーチ【PDF:6.75KB】
ぼくは留学生
ユン
ヒジュン
みなさん、こんにちは。
ぼくは、ユンと申します。
韓国人です。
そして、島根県立大学の「留学生」です。
日本には、今約8万人の留学生がいるそうです。
今日は、「ぼくのような留学生もいるのだ」ということをみなさんに知ってもらいたいと思って
ここに来ました。
ぼくは、ちょっと年寄りの大学生です。
というのは、実は、韓国で短期大学を卒業しているし、軍隊にも入っていたからです。
島根県立大学は、キャンパスの中に寮があって、寮では、6,7名の学生が一つのグループを作っ
て生活しています。それぞれのグループには、台所やリビングなどの共同スペースと各自の個室が
あります。各自の個室はとても狭くて、ベッドと勉強机とトイレしかありません。
大学に入学して、寮に入った時、ぼくは、日本人の学生との生活がとても苦しかったです。
それはなぜかと言うと、日本人のルームメイト同士がぜんぜんケンカをしないからです。
ぼくは、意見を戦わすケンカはいいことだと思っていました。韓国では、
「男は御飯より自尊心を
食べて生きる」という感じなので、自分と意見が違ったり気にさわることがあったら、とにかく戦
いを始めます。ぼくは、
「サッカー選手の契約金は誰が一番高いか」ということで一晩中激しいケン
カをしたこともあります。だけど、その後でもっと仲良くなれます。
トラブルがあった時に、日本人学生がすぐに「ごめん」と言ってお詫びをするのを見て、ぼくは、
「チョット!腹が立ったんなら、汚い言葉を言って戦えよ!」と言ったりしました。
日本人学生の食事の仕方もぼくには、いやな感じがしました。韓国では、仲のいい友達はお互い
の皿に箸をのばしておかずを分け合います。ぼくは、ルームメイトに食べ物を分け合うよう強要し
ました。
みんなが個室に鍵をかけるのも面白くないと思っていました。
ぼくは年上だったし、共同生活の経験者だったので、みんながぼくの習慣に合わせて生活するべ
きだと思っていました。そんなぼくの態度のせいで、当然ルームメイトとの関係はうまくいかなく
なっていきました。
それで、ぼくはイライラして大声を出したり、物にあたって、グループのごみ箱を壊したりしま
した。そして、とうとうぼくには「ヤクザ」というあだ名がついてしまいました。
自分でもさすがに「ヤバイな」と思いました。
それで、素直に相談してみました。そうしたら、「ユンさん、そんなに人と戦ったら痛くない?」
と聞かれました。「ずっと同じ大学に一緒にいるのに、後で困るでしょ」と言われました。ぼくは
初めて、トラブルを起こさないように相手を尊重する暮らし方に心を傾けました。ぼくが、相手の
ことを知ろうとしないで、ただ自分を正しいと信じて行動していたことに気付きました。「話して
くれてありがとう。もっと早く話したかったな」と思いました。
思い返してみると、ぼくの共同生活の強烈な経験は、軍隊でした。
こんなことがありました。
訓練のはじめに個人の持ち物として1本のスプーンと2枚の白いパンツが支給されます。これは、
何よりも大切なものです。なぜかと言うと、スプーンがなくなったら、御飯が食べられなくなりま
す。また、パンツは、時々きれいなパンツをはいているかどうか検査されます。そのためには洗濯
しなければなりません。洗濯するためには、脱がなければならないわけですから、2枚のうち1枚
なくすと、どうなるかお分かりですね。
それが、ある日、ぼくの大切なパンツがなくなってしまったんです。
「どうしよう」と悩んでいる間もぼくのはいているパンツは徐々に汚れていきます。
「あー、困ったぁ」
と、その時、
「ユンさん、ぼくのパンツを一緒にはこう」と言ってくれたヤツがいました。
「いいんですか?」
それから残りの訓練期間は3枚のパンツを2人ではきました。
軍隊生活では、命がけのこともたくさんありました。でも、韓国の男に生まれたからには国を守
るのは大切な任務ですから、頑張りました。こんな時間を共にした仲間は一生友達です。
たぶん、このようにかけがえのない友達を得ることができたのは、特殊な環境の中での熱く濃密
な共同生活を通して、感情を共有してきたからだと思います。
それなのに、ぼくは、大学の寮で初めて会った日本人学生に、いきなり濃密なつきあいを求めま
した。親元でプライバシーの守られた生活をしてきた日本の学生は、きっと戸惑ったと思います。
ぼく流の共同生活に対する考え方は、韓国の文化に加えて、ぼくの経験から出来上がっているので
す。
たぶんこれからも、ぼくは、ぼくのやり方で失敗したり、まわりに迷惑をかけたりしながら友達
を作っていくと思います。でも、これからは少しは相手のことに配慮してやって行けるのではと思
っています。
最近、嬉しいことがありました。ルームメイトが、韓国の文化に興味を持ってくれて、韓国語の
勉強を始めたのです。ぼくといい関係ができてきました。
初めに申し上げましたが、今日本には約 8 万人の留学生がいます。
これからもっと増えるそうです。
留学生は、以前のぼくみたいにイライラしているかも知れませんし、寂しかったり、困ったりし
ているかもしれません。皆さんと友達になりたがっているかもしれません。声をかけてみてくださ
いませんか。
「文化の違いを越えてつくる友人関係は本当に素晴らしく、留学の価値はそこにある」とぼくは
確信しています。そして、それはきっと留学生の友達になる人にとっても価値あることのはずです。
「留学生」をどうぞよろしくお願いいたします。
最後まで聞いてくださってありがとうございました。
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