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2010年度「保険事例研究会」研究事例(東京) № 実施日・報告者 判決言
HP 掲載 2010年度「保険事例研究会」研究事例(東京) № 実施日・報告者 判決言渡日 1 2010 年 5 月 12 日(水) 最決平 21.7.3(平21 ( オ )765 内容 号 、 平 21(受)888 号)不受理 復活時の告知 保険料銀行口座振替契約につき、保険料が振替ができなかったと 義務違反と失 き、契約者に失効する旨を説明しており、当該生命保険会社は、失 効の有効性 効することのないよう努力を尽くし、説明を行っており失効の効力 決定 は生じるとし、復活請求書は、契約者の依頼を受けて実妹が代筆し 東京高判平 21.1.29(平 たが、過去の告知から本件告知も本人の意思による告知とされる。 成 20 年(ネ)4676 号) 有効な告知と認め契約解除が公序良俗違反とはいえないとされ 東京地判平 20.8.28 請求棄却された事例。 (平 18(ワ)17197 号) 2 2010 年 6 月 9 日 東京地判平 21.3.5 保険金受取人 保険契約者が本件契約所定の受取人変更手続のうち保険証券に保 (平 20(ワ)17734 号) 変更と約款所 険金受取人に係る裏書を受ける手続を完了しないまま死亡した。そ 〔確定〕 定の手続きと の後、被告が原告(新受取人)及び旧受取人の双方から本件契約に基 供託 づく保険金の支払を求められたが、いずれも被告が支払を拒絶のう え、供託した。対抗要件を具備する時期又は受取人を誤った場合の 免責の有無についても学説上争いがあり、さらに、保険契約者が保 険金受取人を変更する旨の意思表示をしたものの、保険者に対する 対抗要件を備えていなかった場合であっても、変更後の保険金受取 人にも保険金に係る期待権が発生し、保険会社には支払留保又は供 託義務が生じる可能性があるとの見解があることは公知の事実で あるので、本件供託は過失なく有効とされた事例。 1 HP 掲載 3 2010 年 7 月 7 日 仙台高判平 20.9.5(平 給付金請求時 被保険者は、両下肢が麻痺したなどとして傷害給付金の請求をした 19(ネ)532 号)〔確定〕 に お け る 詐 欺 ものであるが、実際は麻痺は生じておらず、給付金の要件を充たし 仙 台 地 判 平 19.11.28 による重大事 ていないことを知りながら、請求したことは、保険契約当事者間の (平 16(ワ)1421 号、平 由による解除 信頼関係を破壊し、本件保険契約の継続を著しく困難ならしめたも 17(ワ)223 号) ので、詐欺による給付金請求に当たるとして、重大事由による解除 にあたるものとされた事例。 4 2010 年 9 月 8 日 東京高判平 21.9.30(平 失効約款の有 21 年(ネ)207 号) 効性 民法が契約を解除するにはまず相当の期間を定めた履行の催告 をし、…契約の解除をするために一定の要件を課し、履行遅滞に陥 〔上告中〕 りを債務者の権利の保護を図る趣旨であることが明らかであり、第 横浜地判平 20.12.4(平 2 回目以後の保険料の支払に関して本件無催告失効条項は、保険契 成 20 年(ヮ)721 号 ) 約者がその保険料支払債務を履行しない場合に保険者がその履行 金融法務事情 1882- の催告をすることを要しないとしている点及び保険者が保険契約 82 者に対して契約解除の意思表示をすることを要しないとしている 他 点において、同法の公の秩序に関しない規定(同法 540 条 1 項及び 541 条)の適用による場合に比し、消費者である保険契約者の権利 を制限し、本件無催告失効条項により消費者である保険契約者側が 被る不利益は大きいから、民法 1 条 2 項に規定する基本原則であ る信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するもので あるといわざるを得ないとして、控訴審において認容された事例。 2 HP 掲載 5 2010 年 10 月 6 日 さ い た ま 地 判 平 一部告知およ 被保険者が営業職員(被保険者の娘)に高血糖の薬を飲んでいる 20.9.16(平 19(ワ)126 び営業職員が と告げたとしても、営業職員には告知受領権が付与されていない、 号) 被保険者の親 仮に営業職員が被保険者の代理として支部長に伝えたとしても適 〔確定〕 族のときの告 正な告知がされたものとは評価できない。白内障の治療の入院先病 知義務違反 院などにその原因を追究のため保険会社が照会する義務は認めら れない。営業職員の指導監督に不十分な点が認められるが、これを 知らなかったことにつき過失があったとはいえないと請求棄却さ れた事例。 6 2010 年 11 月 10 日 東京地判平 21.7.29(平 承諾前死亡 被保険者は、被告の担当診査医に対し、身体の異常があり、高血圧 20(ワ)19161 号)控訴 症で降圧剤を処方されていることを告知した。また、診査当日、診 判例秘書、ウエストロ 査医により 2 回の心電図検査の結果、いずれも異常所見が認めら ー・ジャパンから検索 れたので、保険会社は本件保険契約について、年間保険料を割増す 出典 れば保険を引き受けられるとの内部的な決定をした。 被保険者の健康状態は、現在又は将来において、高血圧症等に起 因する心臓疾患を有し、又は有するに至る危険が比較的高いものと 認められるから,被保険者が保険適格性を有するものとは認められ ないと判示した。 保険料の割増を条件とした内部決定を本件代理店に通知したこ とが認められるが、本件代理店が本件税理士ら原告の関係者に内部 決定の具体的内容を通知した事実は認められないとされた事例。 3 HP 掲載 7 8 2010 年 12 月 8 日 2011 年 1 月 12 日 最判平 21.6.2(平成 21 同時死亡(約款 無理真珠と認定された事案につき、保険契約者兼被保険者と保険金 年(受)226 号) に受取人先死 受取人が同時に死亡したと推定された事案につき、保険金請求権者 民集第 63 巻 5 号 953 頁 亡の規定なし) につき、指定受取人の法定相続人又はその順次の法定相続人であっ 大阪高判平 20.10.31 (兵 て被保険者の死亡時に現に生存する者をいい(最高裁平成 5 年 9 月 20 年(寝)1285 号、1465 7 日)、ここでいう法定相続人は民法の規定に従って確定されるべ 号、1467 号) きものであって、指定受取人の死亡の時点で生存していなかった者 神戸地判平 20.3.25(平 はその法定相続人になる余地はない(民法 8 8 2 条)として、保険金 19(ワ)827 号) 受取人の相続人が受取人となるとされた事例。 神戸地判平 21.7.13(平 認知症ある者 被保険者が、歩道橋が接している道路にて横断中に遭遇して障害を 20(ワ)1861 号) の重大なる過 負った。被保険者は、本件交通事故以前の段階でも、相当程度認知 控訴後和解 失による事故 症が重症であり、精神障害中の事故、重大なる過失による事故とし 招致(障害給付 て免責とされた。 金) 9 2011 年 2 月 9 日 東京地判平 21.6.30(平 遺言記載事項 本件遺言の記載内容から,本件保険契約に係る保険金及び都民共済 21(ワ)5778 号) から保険金受 の保険金の全額を取得させようとしていたことが明らかであり、自 〔確定〕 取人変更の意 分が死亡した場合に支払われる死亡保険金請求権を直接原告に取 思が認められ 得させるという趣旨を、遺言書の上で「相続する事」と表現したもの るか と解するのが相当である。死亡保険金の受取人を原告に変更すると いう趣旨であるとされた事例。 4 HP 掲載 2010 年度「保険事例研究会」研究事例(大阪) № 実施月日・報告者 1 2010 年 5 月 14 日(金) 判決言渡日 内容 最判平 21.6.2(平成 〔保険金請 19 年(受)1349 号) 求権の帰属〕 されるべきものであるところ、本件条項にいう法定相続人は民法の規 判時 2050-151 札幌高裁平 19.5.18(平 本件条項は、指定受取人と被共済者とが同時に死亡した場合にも適用 定に従って確定されるべきものであって、指定受取人の死亡の時点で 同時死亡 生存していなかった者はその法定相続人になる余地はない(民法 8 8 2 (約款に受 条)。したがって、指定受取人と当該指定受取人が先に死亡したとす 取人左記死 ればその相続人となるべき者とが同時に死亡した場合において、その 18.12.13(平 18(ワ) 亡 の 規 定 あ 者は、本件条項にいう「死亡給付金受取人の死亡時の法定相続人」に当 11 号) たらず、その者の相続人が、本件条項にいう「その順次の法定相続人」 19(ネ)19 号) 札幌地裁滝川支部平 り) として、死亡給付金受取人になることはないと解すべきであるとされ た事例。 2 2010 年 6 月 11 日(金) 大阪高判平 20.9.3 〔保険料払 (平 20(ネ)985 号、 込みと失効〕 保険契約の失効は、保険者からの通知や催告の有無にかかわらず、保 大阪地判平 20.3.12(平 催告と失効 原審は、保険契約の失効は有効とされた事例につき、控訴された。 険料の不払いの事実によって当然に生じるものであるとされ、本件契 19 年(ワ)3248 号) 約において、契約者は住所変更の届出義務があり、この届出がなかっ 〔確定〕 た場合、保険者の知った最後の住所又は通信先に発信した通知は、契 約者に着いたものと取扱われることから、保険者が保険料の振替え等 ができなかった旨の通知を発したとしても、保険契約者が認識しない うちに保険契約が失効し・・・事態が生じ得ることは否定できないが、 そのことから直ちに上記約款が不合理であるということはできない とされた事例。 5 HP 掲載 3 2010 年 7 月 9 日(金) 東 京 地 判 平 21.3.31 〔免責〕 営業職員が保険契約者との間で合意をし、保険料の払込みを行った結 (平 19(ワ)10385 保険料口座 果、保険契約者をして外務員が同行為を継続することに対する強い期 号)控訴後和解 振替につき、 待を抱かせたことは容易に推認することができ、また、失効した後復 保険外務員 活手続きをしたが、復活書面には、復活日から 2 年以内に被保険者が にその管理 自殺されたときには保険金が支払われない旨の記載があったが、保険 を委ねてい 契約者が自殺するに際して残した紙片の内容によれば、認識があった た行為 とは認められず、保険契約者にも、本来、自ら行うべき本件保険料の 支払を営業職員に委ね、営業職員の好意による本件保険料の立替え入 金に安易に依存していたこと等をも総合して勘案すると、本件免責規 定により、保険者が本件保険金の支払を拒絶することは、本件保険金 の 6 割を超える部分、すなわち 4 割(2 0 0 0 万円)の部分につき、信義 則に反し、許されないというべきであるとされた事例。 4 2010 年 9 月 10 日(金) 東京高判平 21.7.7(平 〔名義変更〕 保険契約者名義変更手続きを行うに際して、店頭にて保険者の職員 21(ネ)1915 号) 〔確定〕 保 険 契 約 者 の面前にて請求書を作成したが、一部本人が記載すべき箇所を原告が 東京地判平 21.3.11(平 の名義変更 記載したので、 不備とされ、訂正された名義変更請求書が被告に到 20(ワ)29004 号) 手続き 着した当日に区役所から差押通知書(滞納金 3829 万円強)が、送達 〔確定〕 された(平 20.8.11 日)。その後、被告は、平成 20 年 8 月 20 日名義 変更手続きに応じられない旨を通知した。 原告主張は、名義変更は商法 509 条の「平常の取引」にあたり、遅 滞なく諾否を発することを要し、これを怠ったので承諾したものとみ なされると主張した。名義変更は営業の部類に属する取引には当たら ないので、名義変更はされていなかったものと判示した。二審は、内 部手続きが遅延したとしても名義変更手続きが終了したものとはみ 6 HP 掲載 なされないとされた事例。 5 6 2010 年 10 月 8 日(金) 大阪地判平 21.5.15(平 〔偶発性と C、F生命 4 件の生命保険契約を締結していたが、被保険者は、長野 18(ワ)222 号) 〔控訴後 重過失〕 県松原湖畔にて、テント内にて練炭による中毒死した事案につき、不 和解〕 テント内で 慮の事故か否かが争われ、故意の立証がなされず、偶発性が認められ 練炭を使用 るとして約款に定める「不慮の事故」に該当するとされ、テント内で しての中毒 練炭を燃焼する行為は、著しく保険事故の発生を防止するための注意 死 義務を怠り、重大な過失といえるとされた事例。 2010 年 11 月 12 日(金) 仙 台 高 判 平 19.5.30 〔告知義務〕 団体信用生命保険においては、信用金庫の従業員が生命保険会社 (平成 18 年(ネ)第 団体信用生 が本件保険契約締結を拒否する可能性のある事項を生命保険会社 464 号)〔確定〕 命保険にお に伝達して生命保険契約の締結が拒否された場合、信用金庫と借 仙台地判平 18,9.7(平 いて金融機 主(告知義務者)との貸付契約も不成立となるおそれがあるから、 成 16 年(ヮ)第 153 号) 関 の 職 員 に 信用金庫の従業員が借主(告知義務者)から口頭告知を受けた事項 金融法務事情 1877-48 対する口頭 を生命保険会社に伝達することは期待できない、信用金庫の従業 告知 員を生命保険会社の履行補助者と位置付けたとしても、同従業員 に対する口頭告知をもって生命保険会社に対する告知がなされた と信義則上みることはできないとされた事例。 7 2010 年 12 月 10 日(金) 大 阪 高 判 平 21.9.17 〔不慮の事 本件は、Y1損保の傷害特約付所得保険とY2生保の災害保障特約 平 21 年(ネ)第 1293 故〕 付き団体定期保険の被保険者が、JR西日本○○駅 3 番ホームから転 号(確定) 傷害保険契 落し、走行中の鉄道車両と衝突して轢死するという事故により死亡し 金融・商事判例№1334 約における た事案につき、原審は、「故意又は重大なる過失」規定が信義則に反 -34 偶然性の立 する規定ではない、当該各規定が公の秩序に関しない規定の適用によ 大阪地判平 21・3・23、 証 責 任 が 争 る場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する 平成 20 年(ワ)第 4987 号 われた事例 ものと認めることはできなく、消費者の利益を一方的に害するものと 7 HP 掲載 認めることもできない、被保険者の自殺である可能性を否定できない として、請求を棄却した。 控訴審判決は、最 2 小判平成 13 年 4 月 20 日を引用し、保険金請 求者側に保険事故の偶然性に主張立証責があるとし、その上で、受取 人側に対し、①保険金支払要件の「急激かつ偶然の」 、 「不慮の事故」 の部分が信義則ないし消費者契約法 10 条により無効をきたすもので あると解されず、また、②最 2 小判平成 16 年 12 月 13 日の事案は、 火災保険や盗難保険等の損害保険に関する偶然性の立証責任に関す る最高裁判決と抵触するものではないとされた事例。 8 2011 年 1 月 14 日(金) 最決平 21.7.3(平21 〔告知義務〕 保険料が口座振替ができなかったとき、契約者に失効する旨を説明 ( オ )765 復活時の告 しており、当該生命保険会社は、失効防止の努力を尽くし、復活請求 21(受)888 号)不受理 知義務違反 書は、契約者の依頼を受けて実妹が代筆したが、契約時・転換時の告 東京高判平 21.1.29(平 と失効の有 知書は、本人が「ない」と告知をしているもので、本件告知も本人の 成 20 年(ネ)4676 号) 効性 意思による告知とされるものとされ、解除が公序良俗違反とはいえな 号 、 平 東京地判平 20.8.28 いとされた事例。 (平 18(ワ)17197 号) 9 2011 年 2 月 18 日(金) 仙台地石巻支判平 〔外来性〕 被共済者が頭蓋内出血を発症し、意識障害により用水路に転落して溺 21.3.26(平 20(ワ)14 号) 外来性の有 死した場合、外来の事故に当たるとして、共済金の支払請求が認容さ 判時 2056-143 無 れた。被共済者は、用水路内に転落して大量に泥水を吸引したという 〔確定〕 身体の外部からの作用による事故で死亡したのであって、かつ、免責 条項が定める事情は見当らないのであるから、受取人側らの本訴請求 には理由がある、本訴請求を認容された事例。 8