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フッ化水素/Hydrogen fluoride(7664-39-3)

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フッ化水素/Hydrogen fluoride(7664-39-3)
急性曝露ガイドライン濃度 (AEGL)
Hydrogen fluoride (7664-39-3)
フッ化水素
Table
AEGL 設定値
Hydrogen fluoride
7664-39-3
(Final)
ppm
10 min
30 min
60 min
4 hr
8 hr
AEGL 1
1
1
1
1
1
AEGL 2
95
34
24
12
12
AEGL 3
170
62
44
22
22
設定根拠(要約):
フッ化水素(HF)は、刺激性が強く腐食性のある無色の気体である。水と急速に反応して、熱とフ
ッ化水素酸を発生する。HF は、合成氷晶石の製造や、アルミニウム、フルオロカーボン、六フッ
化ウランの生産に用いられたり、石油精製におけるアルキル化処理の触媒として使用されたり、
また、フッ化塩の製造やステンレス鋼の酸洗い工程でも使用される。その他、ガラスのエッチン
グに用いられたり、金属表面処理における洗浄剤として使用されたりする。
HF は、眼、皮膚、鼻腔に対して極めて強い刺激性を示し、高濃度では、肺まで浸透して水腫や出
血を生じることがある。急性曝露ガイドラインレベル(AEGL)値の導出には、ヒトにおける刺激作
用に関するデータと、哺乳類 6 種(サル、イヌ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ)における
致死および亜致死作用に関するデータを使用した。規定の 5 つの曝露時間について 3 段階の AEGL
値を導出するには、これらのデータで十分であると判断した。被験動物種における致死に関する
濃度-曝露時間の報告値を回帰分析し、濃度と時間の関係が、式 C2 × t = k(ここで、C = 濃度、t = 時
間、k は定数)を満たすと判断した。
AEGL-1 は、運動中の健康な成人 20 名を対象に行われた 3 ppm(範囲:0.85~2.93 ppm)での 1 時間
曝露試験(Lund et al. 1999)に基づいた。この曝露で、気管支肺胞洗浄液中の CD3 細胞やミエロペ
ルオキシダーゼなどの炎症性パラメータの割合が上昇し、当該曝露量が肺炎に関する閾値である
ことが証明された。この濃度や 1 段階高い 4.7 ppm(範囲:3.05~6.34 ppm)という曝露濃度では、
好中球、好酸球、蛋白質、およびメチルヒスタミンの上昇は認められなかった。これらの濃度で
は、肺機能の変化は認められず、軽微な刺激症状のみが認めらた(Lund et al. 1997)。被験者は健康
な成人であったが、曝露後、数名にアトピーを示唆する免疫因子の増加が認められた。感受性の
高い人を保護するため、種内不確実係数 3 を適用して、3 ppm を 3 で除算した。健康な成人の呼
吸パラメータへの影響は、Lundet al.(1997)の試験において、6.34 ppm の曝露濃度まで認められず、
1
また、最大 8.1 ppm の濃度での 1 日 6 時間の反復曝露で認められなかったことからも支持され
(Largent 1960, 1961)、したがって、算出された各 AEGL-1 値は、喘息患者を保護できる値である
と思われる。Lund et al.(1999)の試験における曝露時間は 1 時間のみであったが、支持試験(Largent
1960, 1961)でより高濃度かつより長時間の曝露が行われており、また、軽度の感覚刺激に対して
は順応が起こるという事実から、1 ppm を 8 時間までの曝露時間に適用しても妥当であることが
示されている。
10 分間 AEGL-2 値は、HF を 10 分間、ラットの気管に直接投与した試験(Dalbey 1996; Dalbey et al.
1998a)において、重篤な有害作用(肺症状など)が認められなかった濃度(950 ppm)に基づいた。ラ
ットは、別の試験では感受性が最も高い動物種ではないため(ただし、気管への直接曝露では、高
感受性モデルである)、種間不確実係数 3 を適用し、感受性の高い人を保護するため、種内不確実
係数 3 を適用した。したがって、総不確実係数 10 で、その 10 分間の報告値(950 ppm)を補正した。
算出された 10 分間 AEGL-2 値は、サル、ラット、イヌ、マウス、モルモット、ウサギにおける試
験で重大な損傷を引き起こした濃度よりも、明らかに小さい値である。
30 分間、1 時間、4 時間、および 8 時間の AEGL-2 値は、Rosenholtz et al.(1963)の試験において、
1 時間曝露されたイヌで、瞬目、くしゃみ、発咳が認められた濃度(243 ppm)に基づいた。同様の
濃度(291 ppm)で曝露されたラットでは、眼や鼻に中等度の刺激症状が認められている。これより
1 段階高い濃度(489 ppm)で 1 時間曝露されたラットでは、AEGL-2 に関して定義されている徴候
よりも重い、呼吸困難や重度の眼・鼻刺激症状が認められている。イヌで中等度の眼・鼻刺激症状
が認められた濃度(243 ppm)を、危険回避能力が損なわれる閾値とみなした。イヌは感覚刺激に対
する感受性が高いため、種間不確実係数 3 を適用し、感受性の高い人を保護するため、種内不確
実係数 3 を適用した。したがって、総不確実係数 10 で、その 1 時間値(243 ppm)を補正した。算
出された値を、式 Cn × t = k を用い(n = 2 として)、時間スケーリングを行った。n の値は、動物に
おける致死試験のデータから求めた濃度-曝露時間の関係を用いて導出した。算出した 30 分間
AEGL-2 値(34 ppm)が、Machle et al.(1934)の試験において、被験者が数分間しか耐えられなかっ
た濃度(32 ppm)に近いことに注目すべきである。総不確実係数を 10 より大きい値、例えば 30 と
すると、1 時間値は 8 ppm となり、Largent(1960, 1961)の試験において、間欠反復曝露中に健康な
成人に軽微な刺激しか引き起こさなかった濃度となってしまう。8 時間 AEGL-2 値については、
時間スケーリングによる算出値(8.6 ppm)では、Largent(1960, 1961)の試験において、8.1 ppm で間
欠吸入曝露された被験者が、軽微な刺激症状以外の影響を示さなかったことと矛盾するため、4
時間 AEGL-2 値と同じとした。
10 分間 AEGL-3 値は、Dalbey(1996)および Dalbey et al.(1998)の試験において、カニューレを挿管
して経口曝露させたラットで報告された 10 分間致死閾値(1,764 ppm)に基づいた。この値を 1,700
ppm に丸め、マウスとラットでは LC50 値(半数致死濃度)に約 2~4 倍の開きがあるため、種間不
確実係数 3 を適用し、感受性の高い人を保護するため、種内不確実係数 3 を適用した。したがっ
て、10 分間 AEGL-3 値の導出には、総不確実係数 10 を適用した。総不確実係数を 10 より大きく
すると、10 分間 AEGL-3 値が 10 分間 AEGL-2 値より低い値となってしまう。
2
30 分間、1 時間、4 時間、および 8 時間の AEGL-3 値は、Wohlslagel et al.(1976)の試験において、
マウスを 1 時間曝露して死亡しなかった濃度から導出した。この試験では、致死閾値が 263 ppm
であることが示唆されている。また、動物種間の LC50 値の比較によって、感受性が最も高いのは
マウスであることが示されている。マウスの感受性が最も高いため、種間不確実係数 1 を適用し、
感受性の高い人を保護するため、種内不確実係数 3 を適用して、1 時間の致死閾値(263 ppm)を補
正した。さらに、最も高い非致死濃度が LC50 値(342 ppm)に近似であったことを考慮して、修正
係数 2 を適用して補正した。得られた値から、式 Cn × t = k(ここでは n = 2)を用いて時間スケーリ
ングを行い、他の AEGL-3 値を導出した。総補正係数として 20(種間不確実係数 3、種内不確実係
数 3、修正係数 2)を適用すると、推定される 6 時間 AEGL-3 値が 5.4 ppm となり、Largent(1960, 1961)
の試験においてヒトに軽微な刺激症状を生じた最高濃度の 8.1 ppm より低い値となってしまうた
め、総補正係数としては、6 が妥当であり、これで十分である。HF は低濃度では十分に洗い落と
されることと、時間スケーリングして求めた 8 時間 AEGL-3 値(15 ppm)では動物を用いた反復曝
露試験のデータと矛盾してしまうことから、8 時間値を 4 時間値と同じ値とした。
Table に、AEGL 値をまとめて示す。
----------------------注:本物質の特性理解のため、参考として国際化学物質安全性カード(ICSC)を添付する。
3
国際化学物質安全性カード
ICSC番号:0283
フッ化水素
フッ化水素
HYDROGEN FLUORIDE
Hydrofluoric acid, anhydrous
(圧力容器)
HF
分子量:20.0
CAS登録番号:7664-39-3
RTECS番号:MW7875000
ICSC番号:0283
国連番号:1052
EC番号:009-002-00-6
災害/
暴露のタイプ
一次災害/
急性症状
火災
不燃性。
多くの反応により、火災や爆発を
生じることがある。
応急処置/
消火薬剤
予防
周辺の火災時:適切な消火薬剤
を使用する。
火災時:水を噴霧して圧力容器
を冷却するが、水が直接かからな
いようにする。
安全な場所から消火作業を行
う。
爆発
あらゆる接触を避ける!
身体への暴露
いずれの場合も医師に相談!
吸入
灼熱感、咳、めまい、頭痛、息苦 換気、局所排気、または呼吸用 新鮮な空気、安静。半座位。医
しさ、吐き気、息切れ、咽頭痛、 保護具。
療機関に連絡する。
嘔吐。
症状は遅れて現われることがある
(「注」参照)。
皮膚
吸収される可能性あり!
保護手袋、保護衣。
発赤、痛み、重度の皮膚熱傷、
水疱。
「吸入」参照。
汚染された衣服を脱がせる。多
量の水かシャワーで皮膚を洗い流
す。医療機関に連絡する。
発赤、痛み、重度の熱傷。
顔面シールド、または呼吸用保
護具と眼用保護具の併用。
数分間多量の水で洗い流し(でき
ればコンタクトレンズをはずして)、
医師に連れて行く。
腹痛、灼熱感、下痢、吐き気、
嘔吐、脱力感、虚脱。
作業中は飲食、喫煙をしない。
食事前に手を洗う。
口をすすぐ。吐かせない。 医療
機関に連絡する。
眼
経口摂取
漏洩物処理
貯蔵
・危険区域から立ち退く!
・専門家に相談する!
・換気。
・細かな噴霧水を用いて蒸気を除去す
る。
・(個人用保護具:自給式呼吸器付気
密化学保護衣.)
・耐火設備(条件)。
・食品や飼料から離しておく。
・「化学的危険性」参照。
・涼しい場所。
・換気のよい場所に保管。
包装・表示
・食品や飼料と一緒に輸送してはならな
い。
・EU分類
記号 : T+, C
R : 26/27/28-35
S : (1/2-)7/9-26-36/37/39-45
・国連危険物分類(UN Haz Class):8
・国連の副次的危険性による分類(UN
Subsidiary Risks):6.1
・国連包装等級(UN Packing Group):I
重要データは次ページ参照
ICSC番号:0283
Prepared in the context of cooperation between the International Programme on Chemical Safety & the
Commission of the European Communities © IPCS CEC 1993
国際化学物質安全性カード
ICSC番号:0283
フッ化水素
暴露の経路:
物理的状態; 外観:
刺激臭のある、無色の気体あるいは無色の発煙性 体内への吸収経路:吸入、経皮、経口摂取
の液体
吸入の危険性:
容器を開放すると、空気中でこの気体はきわめて
物理的危険性:
急速に有害濃度に達する。
重
要
デ
|
タ
物理的性質
化学的危険性:
強酸であり、塩基と激しく反応し、腐食性を示す。
多くの化合物と激しく反応し、火災および爆発の
危険をもたらす。金属、ガラス、ある種のプラスチッ
ク、ゴム、被膜剤を侵す。
短期暴露の影響:
眼、皮膚、気道に対して腐食性を示す。この気体
や蒸気を吸入すると、肺水腫を引き起こすことがあ
る(「注」参照)。低カルシウム血を引き起こすことが
ある。許容濃度を超えると、死に至ることがある。こ
れらの影響は遅れて現われることがある。医学的
な経過観察が必要である。
許容濃度:
TLV:(Fとして) 0.5 ppm(TWA); 3 ppm(天井値);
長期または反復暴露の影響:
BEI(生物学的暴露指標)記載あり; (ACGIH
2005) (訳注:詳細は ACGHI の TLVs and BEIs フッ素沈着を引き起こすことがある。
を参照)
MAK:1 ppm, 0.83 mg/m3; ピーク暴露限度カテゴ
リー:I(2); 妊娠中のリスクグループ:C; BAT:7
mg/gクレアチニン (DFG 2005) (訳注:詳細は
DFG の List of MAK and BAT values を参照)
・沸点:20℃
・融点:-83℃
・比重(水=1):1.0 (液体、4℃)
・水への溶解性:非常によく溶ける
・蒸気圧:122 kPa(25℃)
・相対蒸気密度(空気=1):0.7
環境に関する
データ
注
・他の国連番号:1790(フッ化水素水溶液)、国連危険物分類:8、国連の副次的危険性による分類:6.1、 国連包装等級:I
(>60%)
・作業時のどの時点でも、許容濃度(天井値)を超えてはならない。
・肺水腫の症状は 2~3 時間経過するまで現われない場合が多く、安静を保たないと悪化する。したがって、安静と経過観
察が不可欠である。
・医師または医師が認定した者による適切な吸入療法の迅速な施行を検討する。
・暴露の程度によっては、定期検診が必要である。
・圧力容器が漏出しているときは、気体が液状で漏れるのを防ぐため、洩れ口を上にする。
Transport Emergency Card(輸送時応急処理カード):TEC(R)-80S1052 または 80GCT1-I
NFPA(米国防火協会)コード:H(健康危険性)3;F(燃焼危険性)0;R(反応危険性)2;
付加情報
ICSC番号:0283
更新日:2000.04
フッ化水素
© IPCS, CEC, 1993
国立医薬品食品衛生研究所
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