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川辺べぶ暦
川辺べぶ暦 南薩地域振興局農政普及課 畜産担当 H19 , 4 , 2 0 発 行 今回のべぶ暦では,管内の農家でイタリアンライグラスによる牛の硝酸塩窒素中毒が 心配される事例がみられましたので,牛の硝酸塩中毒についてお話しします。 牛の硝酸塩中毒って何? 1 植 物 の た め に 窒 素 ( N) 有 る ほ ど 良 い ? 植物の肥料として窒素は大切な成分であ 根 : 硝 酸 塩 ( NO 3 - ) 吸 収 る こ と は 皆 さ ん ご 存 じ の と お り で す 。で は , 窒素があるほど良いのでしょうか? ↓←←太陽光 葉:光合成 植 物 は 根 か ら 水 分 と 一 緒 に 窒 素 の 変 化( イ タンパク質合成 オ ン 化 ) し た 硝 酸 塩 ( NO3 -) を 吸 収 し , 光合成によって植物の体(タンパク質)を 硝酸塩 過剰 ↓ ◎植物体の成長 × 硝酸塩集積 作 り ま す ( 図 1 )。 と こ ろ が , 吸 収 し た 硝 酸 塩が多すぎたり,光合成がうまくできなか (図1)植物の硝酸塩利用 ったりすると,硝酸塩は植物の体に蓄積して硝酸塩を多く含んだ植物が生産されてし まいます。何事も,過ぎたるは及ばざるがごとしです。飼料作の適正施肥を心がけま し ょ う 。( 10a基 準 : 牛 堆 肥 2 t + N10kg) 2牛の硝酸塩中毒とは? 硝酸中毒とは 硝 酸 塩 を 牛 が 大 量 に 摂 取 す る こ と で 症 生 し ま す 。硝 酸 塩( NO 3 - )は , 通 常 は 第 一 胃 の 中 で 微 生 物 に 分 解 さ れ 、 亜 硝 酸 塩 ( NO 2 - ) に な り 最 終 的 に ア ン モ ニ ア になって尿から体外に出ます。しかし,第一胃内に亜硝酸が大量に増えると,血液中 に吸収され,酸素を運ぶ働きを持つヘモグロビ結合反応して、酸素を運べなくしてし ま い ま す 。( 図 2 ) こ れ に よ り , 牛 は 酸 素 欠 乏 を 起 こ し 、 急 性 の 場 合 は 死 亡 す る こ と もあります。また,慢性中毒にも注意が必要です。 第1胃 (急性中毒の主な症状) ・呼吸困難→死亡 ・乳頭・眼・唇・外陰部が青 NO 3 - → NO 2 - NO 3 - → NO 2 - 大量発生 → NH 4 → → 尿 ◎ 血管 ヘモグロビン(鮮赤) 紫に変色 ・歩行のふらつき・ふるえ (慢性中毒主のな症状) ・乳質・乳量の変化 メ ト ヘ モ グ ロ ビ ン( 暗 赤 ) ・乳房炎の発生 ・食欲不振・下痢発生 牛:窒息状態 (図2)牛体内の硝酸塩の流れ ・繁殖障害・流産 ・肝機能障害 3自給粗飼料の硝酸塩集積に注意! 近年,飼料畑への堆 (図)冬草の収穫時期と硝酸態窒素濃度(ppm) 肥の過剰投入などから, 自給粗飼料で硝酸塩が 多く含まれるものが見 られます。冬作のイタ リアン・エン麦などは 硝酸塩を集積しやすい 35 30 25 件 20 数 15 10 5 0 飼料作物ですので,特 4000以上 4000以下 3500以下 2000以下 1500以下 1000以下 12月・1月 2月・3月 4月・5月 に注意が必要です。 昨年,県内他地域の冬季自給飼料 の硝酸塩濃度は右表のとおりです。 給与しても安全と言われる硝酸塩濃 度 1,000ppm以 下 の 飼 料 は 全 体 の 6 割弱しか無く,急性中毒の危険があ る と 言 わ れ る 4,000ppm以 上 の も の が15%以上も有りました。また, 硝酸塩濃(ppm) 粗飼料給与時の安全基準 1000以下 給与しても安全 1000~1500 妊娠していなければ安全 1500~2000 飼料乾物中50%以下 2000~3500 飼料乾物中30%以下 3500~4000 飼料乾物中25%,妊娠畜不可 4000以上 毒性有り,慢性及び急性中毒の危険性 比較的高濃度の飼料を毎日継続して 給与していると慢性中毒が心配されます。 4硝酸塩中毒を防止するために 我が家の牛を硝酸塩中毒から守るためにはどうすればよいのでしょ うか?硝酸塩中毒の防止策について下表にまとめました。 ①過剰な施肥をしない 堆肥・化学肥料とも過剰にやりすぎると危険! 普及センターの分析では堆肥過剰畑で硝酸塩集積が多く みられました。自分の畑の肥料投入量を確認しよう! ②若刈りをしない 成 長 段 階 で は ,植 物 が 硝 酸 塩 を ど ん ど ん 吸 い 上 げ て お り , 一時的に硝酸塩濃度が高くなる可能性があります。 ③大量に給与しない 若刈りしたものや葉色の濃いものなど心配な飼料作物は 一 度 に た く さ ん 与 え ず ,ワ ラ 等 と 混 ぜ て 給 与 し ま し ょ う 。 ④弱い牛には給与しない 病牛・子牛・妊娠牛には心配な飼料作物は与えない。牛 の体力が低下していると,硝酸塩に抵抗できない。 ⑤刈り取り前に分析する 飼料作物刈り取り後はなかなか硝酸塩を減らすことはで きません。心配な飼料があれば,刈り取り前に普及セン ターで分析し安全を確認しましょう。 ⑥分析する 自給飼料以外でも,青々した乾草・ヘイキューブ・井戸 水なども注意が必要です。分析は1週間前後で結果が出 ます。給与前にチェックしましょう。