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非食用系植物油脂の燃料化基礎技術の研究開発
研究レポート 非食用系植物油脂の燃料化基礎技術の研究開発 エネルギア総合研究所 バイオマス利用技術推進担当 内山 一郎 1 まえがき カンボジアの農村部における電化率は低く,電化の 推進は喫緊の課題であり,未電化地区で利用可能なバ イオマス発電技術が望まれている。 我々は,非食用系バイオマス資源を活用した発電技 術をカンボジアの研究機関であるカンボジア工科大学 (ITC)と,カンボジア国鉱工業エネルギー省(MIME) と共同で研究開発を実施した。 平成21年度に送電能力20kW級のジャトロファ油 発電の試験装置を設置して行った実証試験および国内 で実施した搾油残渣ガス化試験の結果について報告す る。 2 概 要 (1)長時間運転評価の実施 カンボジア産ジャトロファ油を燃料としたディーゼ ルエンジンの運転特性,環境特性に関する試験データ を採取しながら,カンボジア産ジャトロファ油(脱リ ン処理およびろ過処理を実施)のみを燃料とした約 300時間のディーゼルエンジンの運転を実施し安定的 な発電が可能であることを確認した(図1) 。 (2)脱リン技術(目標除去率90%以上)の開発 ジャトロファ油にはリン成分が含有しており,燃料 噴射ノズルや燃焼室内における未燃炭素堆積の原因と なることが知られている。また,燃料噴射ノズルの詰 まりは,燃焼室内での不完全燃焼を引き起こし未燃炭 素分の堆積を助長する。油中に含まれるリン濃度は栽 培土壌のリン濃度に左右されると考えられる。 そのため,カンボジアで利用可能な簡易な脱リン処 理技術の開発(図2)を行い,処理前のジャトロファ 油中のリン濃度に関係なく,ジャトロファ油中のリン 濃度を10ppm程度まで除去できることを確認した(図 3) 。脱リン処理後のジャトロファ油は,ディーゼルエ ンジンの運転試験で使用し,順調な運転を確認してい る。 また,ジャトロファ油中リン濃度を測定可能な簡易 リン測定方法を開発した。 写真1 パイロット試験装置外観 600 発電出力 (kW) 500 燃料温度 (℃) 排気温度 (℃) 【熱交換前】 排気温度 (℃) 【熱交換後】 燃料流量 (L/H) 400 300 2 O(%) 200 CO (ppm) NOx(ppm) 100 CO(%) 2 0 0 50 100 150 運転時間(h) 200 250 300 図1 長時間運転試験 Page 4 エネルギア総研レビュー No.23 非食用系植物油脂の燃料化基礎技術の研究開発 表1 排ガス中のホルボールエステル 50.0 100 90 80 40.0 70 30.0 50 60 40 20.0 30 20 10.0 0.0 リン除去率 [%] 油中リン濃度 [ppm (mg-p/kg-oil) ] リン濃度 リン除去率 10 処理前 5wt%H2O処理 10wt%H2O処理 15wt%H2O処理 Phorbol esters成分の 測定結果(合計値)※1 ジャトロファ種子(ジクロロメタン抽出) 1.52mg/g 搾油後ジャトロファ油(脱リン前) 4.73mg/g 脱リン後のジャトロファ油 4.40mg/g フィルタープレス後のジャトロファ油 3.90mg/g エンジン排出ガス No.1(入口側) 未検出※2 ※1:TPA濃度に換算 ※2:検出限界未満の0.0016mg/(エンジン排出ガス)L未満である エンジン排出ガス118㎥/時間で運転した (Jatropha精製油6.72L/時間, 排出ガスを1L/分で50分間, 40mLのメタノールで捕集して分析した) 図2 簡易脱リン処理方法のフロー 60.0 試料名 0 図3 脱リン処理結果 (3)未燃成分低減およびホルボールエステルの分解 特性の把握 カンボジア産ジャトロファ油を燃料としたディーゼ ルエンジンの運転特性,環境特性に関する試験データ を採取した。また,燃焼を改善するため,燃料の加温 による低粘度化,燃料噴射圧による燃焼調整を行った。 ジャトロファ油専焼運転中でのCO濃度は,当初の 木材やもみ殻原料のブリケットのガス化に比べ,冷 ガス効率は20ポイント程度低い値となった。一方で, ジャトロファ残渣にもみ殻を混合して作ったブリケッ ト(ジャトロファ残渣:もみ殻=4:6)のガス化では, 木材やもみ殻原料のブリケットのガス化と同等以上の 冷ガス効率となった。その理由として,ジャトロファ 残渣ブリケットが含有する油分やその成形状態等が影 響していると考えられる。現在,カンボジアに併設し たガス化試験装置により,もみ殻混合比のほか,エンジ ン混焼率・負荷率等を変化させた試験を実施中である。 開発目標500ppmを下回ることを確認した。また,燃 焼調整の結果,燃料噴射圧力を機器標準圧力の16% upとすることで燃焼状態が改善(CO濃度が低下)さ れることを確認した。これは,燃料噴射圧力を高めた ことで,軽油に比べて粘度の高いジャトロファ油の燃 料噴射時の霧化・拡散状態が改善されたことによると 考える。 また,ジャトロファ油にはホルボールエステルを主 とした毒性物質が含まれており,パイロット試験装置 の運転でエンジン排ガス等を測定した結果,排ガス中 のホルボールエステルは検出されなかった(表1) 。 (4)搾油残渣等のガス化特性試験 ジャトロファ種子搾油残渣で作ったブリケットを原 料に,ダウンドラフト方式ガス化試験装置を用い,そ のガス化特性を把握する国内試験を行った(写真2) 。 その結果,ジャトロファ残渣ブリケットのガス化では, エネルギア総研レビュー No.23 写真2 ダウンドラフト方式ガス化試験装置 3 今後の展開 今後は発電システムの実用化を進めるため,イニ シャルコスト,ランニングコストの削減など,本研究 協力事業の研究コンソーシアムをベースに検討を進め る必要がある。 本研究は,新エネルギー・産業技術総合開発機構助 成事業の一環として行ったものであり,ここに記して 関係各位に感謝の意を表します。 Page 5