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国際化と食料・農産物輸入 (3)

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国際化と食料・農産物輸入 (3)
年次報告 50 年を振り返って
(3)
国際化と食料・農産物輸入
主な動き ○ 昭和 30(1955)年にガットに加入し、昭和 35(1960)年に農産品 121 品目の輸
入自由化。以降、昭和 36(1961)年大豆等、昭和 38(1963)年バナナ、粗糖等の自
由化。
○ ガット・ケネディ・ラウンド交渉妥結(昭和 42(1967)年)を受け、植物性油脂、
チョコレート、ビスケット類、グレープフルーツ、豚肉、配合飼料等の自由化。
○ 昭和 47(1972)年、農林水産物のうち 50%強(270 品目)の関税引き下げ等。
○ ガット・東京ラウンド妥結(昭和 53(1978)年)を受け、牛肉・かんきつの輸入枠
を拡大。
○ 日米農産物交渉(昭和 63(1988)年)において、牛肉・かんきつの輸入枠の順次拡
大、輸入数量制限を撤廃等合意。
○ 平成5(1993)年、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉合意。農産品について
すべて関税化。米に関しては関税化の代わりにミニマム・アクセス機会の提供等。
○ 平成7(1995)年に WTO(世界貿易機関)が発足し、平成 13(2001)年、WTO
ドーハ・ラウンド交渉開始。
○ 平成 11(1999)年、ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づき適用してきた米の関税
化の特例措置について、関税化措置へ切換え。
○ 平成 14(2002)年、シンガポールとの間で EPA(経済連携協定)が初めて発効。以降、
平成 23(2011)年2月までにメキシコ、マレーシア、フィリピン、タイ、インド、ペ
ルー等 13 の国・地域との EPA が発効・署名・交渉完了。
主な指標 昭和 35 年
(1960)
平成 22 年
(2010)
■ 農産物輸入額
6,223 億円
⇒
4 兆 8,281 億円
うち穀物
1,049 億円
⇒
6,969 億円
果実
75 億円
⇒
3,485 億円
野菜
38 億円
⇒
3,451 億円
1,449 億円
⇒
1 兆 2,351 億円
畜産物
資料:財務省「貿易統計」
400
農林水産物の自由化の推移
輸入数量
制限品目
主な出来事
主な輸入数量制限撤廃品目
昭和 30 年
(1955)
−
ガット加入
35
(1960)
−
121 品目輸入自由化
ライ麦、コーヒー豆、ココア豆
36
(1961)
−
貿易為替自由化の基本方針決定
大豆、しょうが
37
(1962)
103 *
81
38
(1963)
76
41
(1966)
73
42
(1967)
73
45
(1970)
58
豚の脂身、マーガリン、レモン果汁
46
(1971)
28
ぶどう、りんご、グレープフルーツ、植物性油脂、
チョコレート、ビスケット類、生きている牛、豚肉、
紅茶、なたね
47
(1972)
24
配合飼料、ハム・ベーコン、精製糖
49
(1974)
22
麦芽
53
(1978)
22
日米農産物交渉決着(牛肉・かんきつ)
54
(1979)
22
ガット・東京ラウンド決着(昭和 48 年〜)
59
(1984)
22
日米農産物交渉決着(牛肉・かんきつ)
60
(1985)
22
豚肉調製品(一部)
61
(1986)
22
グレープフルーツ果汁
63
(1988)
22〔39〕
平成元
(1989)
20〔37〕
プロセスチーズ、トマトジュース、トマトケチャ
ップ・ソース、豚肉調製品
2
(1990)
17〔31〕
フルーツピューレ・ペースト、パイナップル缶詰、
非かんきつ果汁、牛肉調製品
3
(1991)
14〔26〕
牛肉、オレンジ
4
(1992)
12〔22〕
オレンジ果汁
5
(1993)
12〔22〕
7
(1995)
5〔8〕
小麦、 大麦、 乳製品(バター、 脱脂粉乳等)、
でん粉、雑豆、落花生、こんにゃく芋、生糸・
繭
11
(1999)
5〔8〕
米
12
(2000)
5〔8〕
羊毛、たまねぎ、鶏卵、鶏肉、にんにく
ガット 11 条国へ移行
落花生、バナナ、粗糖
ココア粉
ガット・ケネディ・ラウンド決着(昭和 39 年〜)
ハム・ベーコン缶詰
日米農産物交渉決着(牛肉・かんきつ、12 品目) ひよこ豆
ウルグアイ・ラウンド決着(昭和 61 年〜)
WTO 農業交渉開始
401
巻末付録
資料:農林水産省作成
注:1)
輸入数量制限品目数は、各年末現在の数である(CCCN(関税協力理事会品目表)4桁分類。
〔 〕内は HS(国
際統一商品分類)の 4 桁分類)
2)
昭和 37(1962)年4月、輸入管理方式がネガディブリスト方式となった。* は昭和 37(1962)年4月の輸入
数量制限品目数
3)
品目名については、商品の分類に関する国際条約で定められた名称によらず、一般的な名称により表記したも
のを含む。
4)
日米農産物交渉における 12 品目とは、①プロセスチーズ、②フルーツピューレ・ペースト、③フルーツパルプ・
パインナップル缶詰、④非かんきつ果汁、⑤トマト加工品(トマトジュース及びトマトケチャップ・ソース)、
⑥ぶどう糖・乳糖等、⑦砂糖を主成分とする調製食料品、⑧粉乳・れん乳等乳製品、⑨でん粉、⑩雑豆、⑪落花生、
⑫牛肉及び豚肉調製品
5)
現 在の輸入数量制限品目は、水産物輸入割当対象品目(HS4 桁分類の 0301、0302、0303、0304、0305、
0307、1212、2106 の一部)
年次報告 50 年を振り返って
農産物貿易自由化の進展
塩飽 二郎氏 (元農林水産省農林水産審議官)
グローバリゼーションの進展に伴い、農業・食料に係る国際問題は伝統的な貿易や開発
問題に加え、生物多様性、気候変動等幅広い領域への対応を余儀なくされています。
貿易に限って見ると、我が国がガット加盟後に参加したケネデイ・ラウンドや東京ラウ
ンドでは関税のある程度の引き下げ結果にとどまりましたが、1986 年に開始されたウル
グアイ・ラウンドでは、
輸入と輸出に加え国内政策もカバーし、
包括的な規律の設定と支持・
保護の引き下げが実現しました。さらに、70 年代・80 年代には貿易黒字の増加を背景に、
牛肉・かんきつの自由化交渉や 12 品目に対するガット提訴とパネル裁定が行われました。
また、2001 年からはガットの後継機関である WTO において、途上国の経済水準の向上
を重点に掲げ「ドーハ開発アジェンダ」の名称の下に多角的貿易交渉が行われてきました
が、農業や途上国に対するセーフガードを巡る対立が主因で未だに決着がついていません。
このこともあって、多角的貿易主義の信奉国であった我が国も二国間取り決め志向に転
換し、すでに 13 か国との FTAs を締結したほか、さらに豪州、韓国、EU 等との交渉に取
り組んでいます。他方、一次産品の価格安定のための商品協定交渉が、小麦、砂糖、コー
ヒー、ココア、脱脂粉乳などについて行われましたが、その国際カルテル的性格に対する
米国などの批判から現在では嘗てのような価格条項のない協定になっています。
以上のように、我が国は過去 50 年間にわたって様々な貿易交渉に対応してきました。
その場合、一貫して農産物部門の市場アクセス拡大に対する輸出国の攻勢に対する受身の
defence に圧倒的な力点が置かれたことに特色がありました。また、我が国の基本的立場
を支えた理念は、時代により表現に変化はあったものの、農業の持つ多面的な役割への配
慮の必要性でした。アングロサクソン特有の功利的な哲学に裏打ちされたガットや WTO
においては、このような理念の主張のみを掲げた交渉には著しい限界があります。とりわ
けウルグアイ・ラウンド交渉においては、関税を唯一の保護手段に掲げ、ウエーバーによ
る輸入制限や可変課徴金などの非関税障壁はもちろん、生産制限の実効性維持のために正
当化されてきた輸入制限についてすら「例外のない関税化」が圧倒的な要求になりました。
このような場合、それに対抗する実効的手だてを理念に求めることは大きな制約がありま
す。バーゲンとしての交渉に着目した歯止めとしての相手国市場へのアクセス要求、その
裏打ちとしての恒常的な農産物の輸出の存在が不可欠な所以です。
402
半世紀のお付き合い
岸 康彦氏 (元日本経済新聞論説委員)
私は 1959(昭和 34)年 10 月に新聞社へ入り、その月から農林省(現在の農林水産省)
を担当しました。農業基本法制定の準備が進んでいた時期です。以来、農業との関わりは
切れることなく続いていますから、白書とのお付き合いも、読み方の濃淡はあるにせよ
49 冊全部ということになります。
38 年に及んだ農基法の時代を仮に前半と後半に分ければ、前半の白書は、農業経済の
概観、農産物の需給と価格、そして農業経営の動向という3本建てで構成されることが多
かったと思います。加速する経済成長の中で他産業との格差が拡大するのを、何とかして
埋めようという目的でできた農基法ですから、白書もまた、法の理念をそのまま反映した
内容でした。
風向きが変わってきたのは、農政審議会が 「80 年代の農政の基本方向」を答申した
1980 年あたりからと記憶しています。答申は過剰が深刻化する米の消費を増やす狙いも
あって、ご飯を中心とする日本型食生活を提唱したことで知られていますが、一方では
食品産業の振興を強調していました。白書でも次第に食料消費、食品産業などが重要テー
マとなります。農基法の条文には「消費者」も「食品産業」も出てきませんでしたが、時
代が農政にそれを求め始めたのです。
ウルグアイ・ラウンド終盤の 1992 年に農林水産省が決めた「新しい食料・農業・農村
政策の方向」(新政策)は、農政の柱として農業のほかに食料と農村を加え、さらに「国
民的視点に立った政策展開」を打ち出しました。押し寄せるグローバル化の波に対抗する
には、国民の農業理解が欠かせません。この前後からカラー印刷の写真やグラフを増やし、
くだけた書きぶりの「コラム」をはさむなど、白書も親しみやすさをアピールするように
なりました。
そして今、食料・農業・農村基本法の時代には、白書も現状報告にとどまらず、国民へ
のメッセージという性格をさらに強めています。ここ数年の白書が巻頭に「トピックス」
を置き、重要テーマを平易に解説しているのも、その役割を意識してのことでしょう。
文章を書いたこともあります。それでも、白書が農業と農政の動きを知るための最良のテ
キストであることに変わりはありません。
403
巻末付録
毎年のことですから、白書にも充実度に何がしか差が出るのは当然で、私自身、批判の
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