...

Untitled - 国立曽爾青少年自然の家

by user

on
Category: Documents
20

views

Report

Comments

Transcript

Untitled - 国立曽爾青少年自然の家
◇曽爾で出会う鉱物と岩石 (おもなもの)
セキエイ
チョウ石
花こう岩
クロウンモ
カクセン石
へん ま がん
せん緑岩
へん き りょくがん
片麻岩
さ がん
れき岩
ザクロ石
変輝緑岩
でいがん
砂岩
(貝化石を含む)
泥岩
チャート
◇時の流れ1億年[ 曽爾の大地のあゆみ ]
ほ 乳 類 の 時 代
曽 爾
古曽爾湖
は虫類(恐竜)の時代
室生火山
古室生湖
第一瀬戸内海
新 生 代
できた時代
土台の岩石が
地下で曽爾の
中 生 代
陸 の 時 代
現在
1
2
3
4
5
6
7
8
10
9
11
曽爾地域の鉱物と岩石
1 はじめに
私たちが生活しているところは、地球の表面すなわち大地の表面(地表面)で、岩石や小石、
砂、ねんど、火山灰などが水や火山などのはたらきによって積み重なった地層などからできて
います。その生活の場の土台である大地について、みなさんはその成り立ちを考えたことがあ
りますか。
ここ、曽爾地域の大地は、約1憶年前の岩石を土台として、その上に海や湖にたい積した地
層や激しい火山活動にともなってできた岩石や地層などがおおってできています。それらの岩
石や岩石の中に含まれている鉱物について、紹介しながら曽爾地域の大地の成り立ちや生い
立ちについて考えてみましょう。
2 曽爾で出会う鉱物
すべての岩石は、いくつかの種類の鉱物が集まってできています。曽爾地域にある岩石をつ
くっている鉱物のおもなものは、次のようです。
なお、岩石や鉱物を見分けるには、ルーペがあれば細かいところまで観察できます。
(1)セキエイ……うすく灰色がかった透明の鉱物で、貝がらのような割れ口になっています。
けっしょう
大きな結晶は、そろばん玉から6角柱状のもの(水晶)もあります。曽爾でみ
られるセキエイは、岩石中に含まれているため自形(水晶)のものは見られ
ません。結晶の大きさは、他の鉱物と等しいぐらいのものですが、時には岩
石中に数センチメートルの脈状に入っていることがあります。
(2)チョウ石 ……白色からうすい桃色をした鉱物で、四角く割れます。マグマが冷えてできた
火成岩には、たいてい含まれています。
(3)クロウンモ …黒くてぴかぴか光った板状の鉱物で、うすくはがれやすい性質を持ってい
ます。
(4)カクセン石…黒色から緑黒色をした長柱状の鉱物で、割れ口は竹をわったようにすっきり
しています。
(5)ザクロ石……暗赤色をした球状に近い形の鉱物で、紙やすりの材料などに用いられます。
ぎょうかいがん
火成岩や室生凝灰岩にわずかに含まれることがあります。
3 曽爾で出会う岩石
しょう れん じ がわ
曽爾地域の中心を流れる青蓮寺川の河原には、いろいろな石ころ(れき)が集まっています。
そのれきを調べると、上流周辺の地域がどのような岩石によって大地がつくられているかが分
かります。また、道路沿いやがけにあらわれている岩石の露頭を調べることによってもその地
域の大地の成り立ちが分かってきます。
(1)おもな観察地点で見られる岩石
ア 河原の石ころ(J
A曽爾の裏、太良路橋など)
へん ま がん
へん き りょく がん
さ がん
でい がん
よう けつ ぎょうかい がん
片麻岩、せん緑岩、変輝緑岩、花こう岩、れき岩、砂岩、泥岩、凝灰岩(溶結凝灰岩)、
チャートなど
イ 河原(上曽爾小学校前、J
A曽爾の裏、太良路橋)や道路沿いに露出する岩石
片麻岩、せん緑岩、変輝緑岩、花こう岩、れき岩、砂岩、泥岩など
だん がい へき
ウ 室生火山にかかわっての露頭と岩石(断崖壁をつくっている柱状節理の岩石)
溶結凝灰岩
(2)観察できる岩石について
◎曽爾の土台の岩石
この地域で一番底にある岩石(基盤岩)は、奈良県の北半分の底を作っているのと同じもの
です。いくつかの種類がありますがおもなものは、片麻岩と花こう岩です。新太良路橋周辺の
河原や少し上流の嶽見橋周辺の河原で見られます。
ア 花こう岩
マグマが地下深いところでゆっくりと冷えて固まってできた岩石で、主にセキエイ、チョ
ウ石、クロウンモなどの鉱物を含みます。曽爾地域の基盤をつくる岩石の1つです。なお、
はん じょう そ しき
この地域の花こう岩は、灰色で粒があらく、しばしば斑状組織(大きい結晶はチョウ石)を
し、弱い片理(鉱物が一定方向並ぶ)があります。詳しくはクロウンモ斑状花こう岩です。
イ せん緑岩
花こう岩と同じようにしてできた岩石ですが、花こう岩に比べて少し黒く見えます。セキ
エイ、チョウ石、カクセン石などの鉱物を含みます。この地域のせん緑岩は、片麻状セキ
エイせん緑岩で、クロウンモに富む暗色部とセキエイ、チョウ石に富む灰白色部が交互
に層状にならび、しま模様のようになっている岩石です。
ウ 片麻岩
白と黒のしま模様がよく発達した岩石で、もとの岩石がまわりから高い温度や圧力をう
けて変化してできたものです。含まれる鉱物は、花こう岩のものとよく似ています。詳しく
は、しま状片麻岩です。
エ 変輝緑岩
マグマが冷え固まった岩石が、のちにまわりから高い温度や圧力をうけて変化してでき
たもので、カクセン石が多く暗緑色の岩石です。
◎海や湖などにたい積してできた岩石
オ 泥岩
海や湖の底にたまった泥が、固まってできた岩石です。化石を含むことがあります。
カ 砂岩
砂が固まってできた岩石です。化石を含むことがあります。
キ れき岩
れき(小石)が固まってできた岩石です。
ク チャート
ほう さん ちゅう
び せい ぶつ
放散虫という微生物の死がいが固まったり、水中の成分が沈殿してできた非常に硬い
岩石で、曽爾では、れきとして地層に含まれています。
◎火山活動にともなってできた岩石
ケ 凝灰岩
火山灰が固まってできた岩石です。火山灰が熱でくっついて固くなったものを特に溶
結凝灰岩といいます。
4 曽爾の大地の生い立ち〔1億年の旅〕
曽爾の大地は、さまざまな岩石、地層が積み重なってできています。これらの岩石・地層は、
はるか昔の大地の歴史を私たちに語りかけています。その大地の物語に耳を傾けてみましょ
う。おおまかに次の4つの時代になります。
(1)大陸の一部だった時代
はく あ
はるかな昔、曽爾の大地はアジア大陸の一部でした。約1億年ぐらい前(中生代の白亜
き
紀)のことです。大地の深いところにあった岩石が、熱や圧力の長い間のはたらきで、別の
新しい岩石に生まれ変わりました。これが領家複合岩類(花こう岩、せん緑岩、片麻岩、変
輝緑岩など)と呼ばれている岩石で、今、曽爾の大地の土台になっています。
(2)海の時代(第一瀬戸内海)
約2,
500万年前、アジア大陸の東の端にさけ目
ができ、そのさけ目はしだいに広がって、日本海
と大陸から離れた日本列島が誕生しました。曽
爾の大地もその列島の一部として、大陸から離
れました。
そして約1,
700万年前には、曽爾あたりは伊勢
湾の方から海水が入り込んで、海になりました。
それは土台になった岩石(基盤岩)の上に、海
やま
の貝の化石を含む砂や泥がたい積した地層(山
がす そう ぐん
粕層群)が見られることからわかります。この海を
第一瀬戸内海と呼びます。この海にたい積した
地層は、紀伊半島の中北部に残っています。
(3)湖と火山の時代(古室生湖と室生火山)
その後、大地がもりあがり、海はしだいにしりぞいて、ところどころに湖ができました。その
一つが、曽爾のあたりにあった古室生湖です。海の時代のたい積の地層の上に、この湖に
たい積した地層(曽爾層群)が見られます。約1,
500万年前、この古室生湖のそばで激しい
火山活動が何回も起こりました。これが室生火山の活動で、まわりの湖や湿地など曽爾の
大地に火砕流と火山灰が大量に積もって、広大な火山灰台地をつくりました。その火山灰
は熱をもったまま大量につもり、熱と火山灰の重みで、粒どうしがくっついて固まって岩石
(溶結凝灰岩)ができました。この厚い溶結凝灰岩
のがけを曽爾に見ることができます。
びょう ぶ いわ
かぶとだけ
よろいだけ
く ろ そ やま
屏風岩、兜岳、鎧岳や倶留尊山などで、がけに
は大きく横すじが入っていて(火砕流のさかい目)
火山活動の激しさを知ることができます。
(4)その後の時代(古曽爾湖とその後)
火山活動が終わって後には、広大な凝灰岩の
台地が残りました。その後の大地のもりあがりもあ
って、大地を流れる川はしだいに凝灰岩をけずっ
ていきました。曽爾の谷は深く、また広くけずられ
凝灰岩やその下にある古い地層や岩石が地表にあらわれてきました。
そして、青蓮寺川の下流がせき止められて、曽爾の谷は湖(古曽爾湖)になりました。そこ
にたい積した地層や川のはんらんなどによる地層(今井累層)が見られます。それらの地層
も一部けずられて、今の地形となっています。
◆ さらに詳しくは、国立曽爾少年自然の家発行の(シリーズ 曽爾のこともの 22 曽爾と室
生火山)(曽爾地域の魅惑を求めて 〈大地の生い立ち〉)を見てください。
5 おわりに
曽爾の大地のことについて紹介してきました。さて、みなさんが生活している大地はどのよう
なものでできているのでしょうか、その生い立ちはどうでしょうか。近くの河原にころがっている
石ころや道路脇やがけなどにあらわれている岩石や地層を調べてみませんか。過去からの大
地のメッセージを読みとることができるでしょう。
発行年月 平成13年3月
執筆者 東森 文昭
参考文献(おもなもの)
・曽爾村史編纂委員会(1972)曽爾村史
・奈良県企画部(1986)土地分類基本調査「上野・名張」
・日本の地質「近畿地方」編集委員会(1987)共立出版(株)
・国立曽爾少年自然の家(1997)曽爾地域の魅惑を求めて 〈大地の生い立ち〉
Fly UP