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AGS Vol.20_web.
AGS news ・2011年度夏季IPoS実施報告 ・日産ワークショップ in IPoS 2011 ・COP17参加報告 ・AGSクラブ工場見学会 ・平成23年度AGS研究助成課題決まる ・平成23年度AGS研究会年次報告会 vol. 20 第20号 2012年 3月8日発行 東京大学AGS研究会 〒113-8654 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学国際本部 AGS推進室 TEL:03-5841-1548 FAX:03-5841-1545 2011年度夏季IPoS(IPoS 2011)実施報告 日時:2011年8月1日(月)~8月12日(金) 開催場所:タイ・カンチャナブリ県、パトゥムタニ県 IPoS概要 東京大学とアジア工科大学(AIT)は、持続可能な社会の構築を目指して国際的に活躍できるリーダー育成を目的に、サステイナ ビリティをテーマとする短期合宿形式の教育プログラムIntensive Program on Sustainability (IPoS)を2004年から実施している。開始当初数 年はタイにおける夏季セッションのみであったが、2006年からは日産科学技術振興財団の助成を得て夏・冬2セッション体制とし、同じ参 加者を対象に夏・冬で異なるテーマを扱うことでサステイナビリティへの重層的な教育を目指している。プログラムの詳細はホームページ <http://www.ipos.k.u-tokyo.ac.jp/>をご参照いただきたい。 2010年度は、タイの政情不安のため夏季セッション(IPoS2010)の開催を見送っ たため、2年ぶりのタイ開催となった。また、2011年度からは新しい方向性として、 研究の成果が社会に用いられていくプロセスに着目し、実証研究の現場に密着し た教育プログラムを目指すこととし、IPoS 2011では、適正技術の導入により地域 水環境の改善をはかるAITの実証研究プロジェクトを取り上げることにした。こ のプロジェクトは、人工湿地式の排水処理施設を地域コミュニティの中心である 寺院と小学校に設置し、小学生やお寺を訪れる地域住民の環境教育活動も併せて、 水環境改善を目指すものである。地域住民や地域行政の協力も得て、同プロジェ クトについて学ぶとともに地域の理解につとめ、研究プロジェクトをどのように 発展させて地域開発に結びつけることができるか提言を行った。最終発表には、 地域行政の長にもご参加いただき、貴重なコメントを得ることもできた。以下プ ログラムの詳細を紹介する。 ノートレクチャーの後、夜は、アイスブレー の健康リスクについての講義(Dr. Atitaya、 キング・ゲームで親睦を図った。 Dr. Nawatch)。午後は、プロジェクトを実 施する際に必要とされる参加型計画手法 2日目:8月2日(火) (Participatory planning)と ス テ ー ク ホ ル サステイナビリティ研究やプロジェクトに ダーとの対話(Stakeholder dialogues)に関 必要とされる学際的なアプローチについて する講義(Dr. Anisara)を行った。ネパール の講義(Dr. Thammarat)の後、ホテルでの で実施された衛生環境改善プロジェクトで 取り組みを見学。広大な敷地内で、バイオ 実施された参加型計画手法をケーススタ 1日目:8月1日(月) マスからのエネルギー回収や、安く購入し ディとして紹介(Mr. Mingma)し、エクササ カンチャナブリに移動しオープニングセ てきた壊れたソーラーパネルの修理、有機 イズとしては、実際にステークホルダー分 レモニーでプログラムを開始し、続けて課 農業など、様々な取り組みが行われている。 析を行って、重要ステークホルダーを見つ 題説明とキーノートレクチャーを配置し た。今年の課題はバンコク郊外パトゥム け出す練習を行った。 3日目:8月3日(水) 4日目:8月4日(木) タニ(Pathumtani)県のバンパトゥム(Ban Pathum)という地区の開発プランを考える 午前は、プロジェクトとは離れ、屎尿・廃水 もので同地では、AITが適正技術導入と環境 の処理と農地還元に関する日本の経験に関 教育の組み合わせにより水環境改善を図る する講義(小貫特 パイロットプロジェクトを実施しており、 任准教授)。異な これを題材とした。自ら調査し同地区の実 る国では、地理や 情の理解に努めながら、AITパイロットプ 気候、文化といっ ロジェクトをどのように発展させれば、同 た要因により異 地区の発展につなげられるかを考える課題 午前中は、最終発表課題で取り上げること なった技術が選 とした。サステイナビリティに関するもの となる研究サイトの概要に関する講義と、 択されることを (味埜教授)と、モデルで物事を考えるとき パイロットプロジェクトで用いられてい 理解する目的で、 に注意するべき点について(住教授)のキー る廃水再利用技術と、廃水を再利用した際 グループディス THE Alliance for Global Sustainability 2 AGS news Vol.20 カッションを行った。研究サイトに技術的 提案をする際も、きちんと地域のバックグ ラウンドを理解することが重要である。午 後は、限られた予算、時間、スタッフで地 8日目:8月8日(月) えないと実際の役には役立たない。 」という 厳しいものだったが、このようなコメント 休息日。 は学生が今後同様のプロジェクトに携わる 9日目:8月9日(火) ときに、重要な糧になるだろうと期待され 域の定性的な情報を可能な限りたくさん 研究サイトのバ る。冬の日産ワークショップでは是非枠か 集 め る た め の 方 法 で あ るRapid Appraisal ンパトゥムを見 ら飛び出したところを見せて欲しい。 Techniques( 従来より迅速な調査手法の一 学。 企 業( ペ ッ 種)の講義(Dr. Soparth)。グループごとに トフード工場) リーディングマテリアルを渡し、ケースス や 農 家( キ ノ コ 最終日。クロージングセレモニーにおいて タディを行った。 栽培農家、タロ栽培農家、野菜の水耕栽培 修了証書とプログラム内容をおさめたDVD 農家など)、水供給システムなどを見学、午 を授与し、全日程を終了した。 5日目:8月5日(金) 午前は食料安全保障と生計手段に関する講 12日目:8月12日(金) 後はバンパトゥムの行政出張所でステーク ホルダーミーティング。 今年は、研究成果が社会に還元されていく 義。これを受けて午後は、有機農家を訪問 過程に注目し、AITの実証研究の場をテーマ し、農家の方々のインタビューを行った。 に選ぶという新しい試みを行った。議論が この有機農家は優良農家で、タイ航空とも 具体的になり、学生には概ね好評だったよ 取引があるそうだ。 うである。来年度以降も、同様の方向性で ブラッシュアップを目指す予定である。そ して、今度は地元の地区長にもおもしろい といっていただけるような提案が出てくる ことを目指したい。また、IPoS2011参加者 は、4ヶ月後の12月には日本へ招待されて、 10 日目:8月10日(水) グループごとに追加調査。 11日目:8月11日(木) 6日目:8月6日(土) バンパトゥムの地区長の参加も得て、最終 午前中は、日本が経験した東日本大震災、 発表会を行った。各グループ、同地区の開 津波、原発事故についてのスペシャルセッ 発プラン、環境改善プランを提案した。多 ション(小貫特任准教授)。今回のテーマと くのグループは、学生各自が普段学んでい は直接関係しないが、日々の暮らし、人々 る技術的な解決を一方的に提案するものが の福祉の持続性が破られたという意味で、 多かった。地区長からいただいたコメント サステイナビリティの危機であると言え も「学校で学んだものを出しているだけで、 る。午後は、全体グループワークの中間発 まだまだその枠の外へ出ていない。もっと 表。ここまでに学んできた論点・視点と社 枠からはみ出して、現実に即して物事を考 会調査手法を併せて、研究サイトのどのよ うな点をどのような方法で調査するかにつ いて発表した。夜はカルチャラル・ナイト。 伝統衣装を持ち寄り、劇あり、ダンスあり で大変盛り上がった。 7日目:8月7日(日) 移 動 日。 カ ン チ ャ ナ ブ リから、研究サイトのパ トゥムタニ県バンパトゥ ムへ移動。到着後、すぐ に研究サイトのウォーキ ングツアー。パイロット プロジェクトで人工湿地 式の廃水処理システムが導入されている小 学校を見学した。 THE Alliance for Global Sustainability 3 日産ワークショップ(Nissan Workshop in IPoS 2011)へ参加している。そちらについ ては別記事を参照されたい。 (小貫元治) 日産ワークショップ (Nissan Workshop in IPoS 2011) 開催報告 - 技術と社会 - エネルギーと交通 in 柏の葉 2011年12月、日産ワークショップ(Nissan は夏にタイのバンコク郊外でIPoS2011を 発表においては、現在柏の葉地域が抱える Workshop in IPoS 2011, 以下Nissan WS)が 実施し、人工湿地式の排水処理施設という 問題と、公民学連携で提唱する様々な先進 開 催 さ れ た。Nissan WSは、AGSの 支 援 の 適正技術を地域に導入することで地域水環 技術を理解した上で、それぞれのグループ もと、東京大学とアジア工科大学院(AIT)が 境の改善を図るアジア工科大学院の実証研 が考える、柏の葉地区におけるサステイナ 開始したアジアと地球の持続可能性を考え 究プロジェクトを取り上げ、環境改善の余 ブルなエネルギー・交通システムについて るサマーワークショップIntensive Program 地が多い開発途上地域における適正技術の 提案を行った。非常に短期間のプログラム on Sustainability (IPoS)の フ ォ ロ ー ア ッ プ 導入の在り方と地域文脈の理解を目的とし であったが、学生達は夏季のIPoSで習得し コースである。本プログラムは、日産科学 た。一方、Nissan WSでは、東京大学柏キャ た概念や手法を効果的に用いて、多様なス 振興財団による助成のもと、IPoS参加者を ンパスが所在する千葉県柏市柏の葉地区に テークホルダーの意見を組み込んだ提案を 再び招集し、持続可能性について夏季の おける様々な技術システムの実証研究プロ 行うことが出来た。しかし、日程調整の問 IPoSとは異なるトピックから考える教育プ ジェクト、日産自動車(株)の取り組みなど 題などから、学生の最終発表の場に地域の ログラムである。 を取り上げ、技術先進国日本における、技 方々にご参加いただくことは出来なかった 術と地域社会との関係や技術の社会的意 ため、来年度は必ずそのような場を設け、 Nissan WS in IPoS 2011の開催概要 義、将来社会構築にむけた重要視点を学ぶ 地域への貢献につなげていきたい。 Nissan WS in IPoS 2011は12月5日(月) ことを目的とした。柏の葉地区は、もとも ~12日(月)の8日間にわたり、千葉県 と東京大学、柏市に大手民間デベロッパー 柏市柏の葉地区にて開催された。本年 を加えた公民学連携により、環境配慮型の 次年度も夏季にIPoS、冬季にはNissan WS 度の参加者は、学生18名(世界8大学、 街作りや次世代交通システムの実証実験が を実施する予定であり、関係者による準備 国籍8カ国。IPoS参加者22名中18名)が 進められてきた地区である。 ワーキンググループがすでに進行してい 参加、講師・スタッフ陣22名(3大学、国 籍5カ国)であった。 以下にスケジュールを簡単に紹介する。 今後の予定 以下に講義・モジュール・エクスカーショ る。今年度の取り組みは、地域社会との連 ンの具体的内容を紹介する。冒頭には、松 携という点から十分に成果を得たと考えて 本三和夫教授(東大・人文社会系研究科)に おり、来年度も今年度のスキームを踏襲し、 よ る「The Underdetermination of Policy in さらに発展させていく予定である。例年、 Nuclear Waste Disposal after ‘Structural IPoS及びNissan WSは多くの関係者の多大 初日の朝便で成田に到着した学生及び前 Disaster’」と題したキーノートスピーチを なご尽力の元、運営されている。本年度も、 日に柏のホテルに宿泊した学生はバスで、 配し、続いて、柏市、UDCK、三井不動産に 参加学生のみならず講師の方々にとっても それ以外の学生は各自、会場である柏の葉 よる柏の葉開発の取り組みについての講義 更に充実したプログラムとなるよう、改善 アーバンデザインセンター(UDCK)に集合 と街歩きを行った。その上で、主に交通に を続けていきたい。 し、オープニングセレモニーを行った。2日 かんする、東大教員による柏の葉での実証 目~6日目の午前中にかけては、講義、演習、 プロジェクト、震災後の気候変動とエネル エクスカーションを組み合わせた教育演習 ギーの問題、システム思考に関する講義・ が実施された。6日目午後と7日目午前は、 演習と、日産自動車追浜プラントへのエク 学生による最終課題発表会とその準備にあ スカーションを実施 てられた。7日目午後に学生による最終発 した。講義の最終日 表会が行われ、その内容にかんし、参加者 には、柏の葉住民を 及び講師・スタッフにより活発な議論が行 招待し、柏の葉にお われた。最終日(12月12日)にはクロージン ける交通とエネル グセレモニーを行い、修了証書と記念DVD ギーの取り組みにつ を授与し、解散となった。 いて、インタビュー 調査を実施した。上 Nissan WS in IPoS 2011のプログラム詳細 記プログラムを通じ 今年度からはIPoSの新しい方向性とし て、学生は、行政・企 て、研究の成果が社会に用いられていくプ 業・地域住民と様々 ロセスに着目し、実証研究の現場に密着し な意見交換をするこ た教育プログラムを模索している。今年度 と が 出 来 た。 最 終 THE Alliance for Global Sustainability 4 (関山牧子) AGS news Vol.20 COP17参加報告 新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻 修士課程 1年 高橋智輝 インタビュー 総合センターにて、COP17についての報告 南アフリカの都市ダーバンにて気候変動枠 日本の若者が持つ思いを声明文という形 会を行いました。当日はIPCCの温室効果ガ 組条約第17回締結国会議(COP17)、および京 にし、COP会期前に外務省・環境省・経済産 スインベントリタスクフォースで共同議長 都議定書第7回締結国会議(COP/MOP7)が開 業省の3省に対して提出しました。また、声 を務める平石尹彦氏の講演に加え、分科会 催されました。9日での終了を予定していた 明文の提出の際および会期中にお時間をい として4種類のワークショップを行いまし 会議は1日延長したにも関わらず議論がまと ただき、各省の関係者の計5名の方々に対 た。当日は学生・社会人合わせて30名以上 まらず、さらに翌日11日の早朝まで延長す してインタビューを行いました。交渉に参 の方にお越しいただき、各分科会で活発な るという異例の展開でした。 加しない若者が実際のCOPでの交渉に影響 議論が行われました。 2011年11月28日から12月11日までの間、 今年度もAGSからの支援をいただきま を与えることはもちろん難しいことです。 学生がCOPに参加する意義 し て、AGS-UTSC(東 京 大 学 学 生 コ ミ ュ ニ しかし、若者の抱いている思いを政府に伝 ティ)の中の気候変動ワーキンググループ える意味は大きいのではないかと感じまし 今回私がCCWGのメンバーとして参加し (CCWG)の中から6名の学生が現地で会議を た。また、政府関係者からのインタビュー て感じたのが、日本政府とNGOの間で、日本 傍聴することができました。 からは、各国が自国の利益を追求する中で、 政府の立場に対する見解の大きな乖離がみ 気候変動対策を実効的なものにしていくこ られるということでした。特に、日本の立場 との難しさを教えていただきました。 は各国に理解されていると主張する政府と、 COP17の結果 日本が交渉の主要アクターでないために他 今回の会議で大きな焦点となっていたの は、①京都議定書第二約束期間の設定、② 国が日本に対して意見を言うことがないの ② 現地での活動 全ての締約国が参加する新しい枠組みの COPの会場で、福島原子力発電所の事故 だとするNGOの間で対立が大きいことが印 ロードマップ、の2つです。京都議定書に の現状を訴え、原子力発電所の危険性を訴 象的でした。両者の意見を聞いてそうした 関しては、第二約束期間が設定されること えるとともに、震災時に多くの支援を下さっ 対立に気づくことができたのは、学生という となり、期間(5年か8年かの2案)・各国の削 た世界の人々に感謝をすることをテーマと 中立な立場があってこそだと実感していま 減目標に関しては2012年にカタールで行わ して活動を行いました。原子力発電につい す。こうした中立的な視点をもち、そこで気 れるCOP18で話し合われることになりまし ては、経済的な利益が大きいことや、二酸化 付いた経験を周りに還元できるという点で、 た。新しい枠組みに関しては、ダーバン・ 炭素排出量が少ないことから、事故以降も 学生がCOPに参加する意味合いは大きいの プラットフォームという名前になり、これ 存続の必要性を訴える人も多くいますし、 ではないかと感じています。 について話し合う作業部会の設立が決定し 私達もそうした優位性があることは理解し ました。15年までのなるべく早いうちに採 ていました。しかし、そうした利益を踏ま 択し、2020年に発行することが決まりまし えても私達が経験した事故の悲惨さという た。また、COP議長が直接扱うほど南アフ ものはすさまじく、それを世界に向けて訴 リカが熱意を見せていた緑の気候基金や、 えていくことは日本の若者として必要なの COP16で採択されたカンクン合意実施のた ではないかと考え、このような活動を行い めの一連の事項(適応委員会の内容や技術 ました。具体的には放射線の防護服を模し 執行委員会の内容)も決定されました。 た格好をし、ポスターを使って事故の現状 ◆ 派遣メンバー 公共政策大学院 経済政策コース 修士2年 室屋孟門 新領域創成科学研究科 環境システム学専攻 修士2年 議論の停滞により、再開会合の可能性さ を伝えました。しかし、それだけでは「福島 え報道された中で、このような合意に至っ は汚染された場所だ」というイメージを植え たことで、COP17は一定の成果を得たと言 付けてしまい、復興に向かって努力してい 農学生命科学研究科 えるのではないかと考えられます。 る福島の素晴らしさや、事故の後多くの援 応用生命工学専攻 修士1年 助を下さった海外の方への感謝を伝えるこ 脇山慎平 COP17でのCCWGの活動 とができないと考えました。そこで、COPの 今回の私達の活動において前年までと大 参加者にペンで防護服にハートを書いても きく異なる点は、他団体との連携です。今 らうという活動を同時に行い、皆さんの福 回の派遣プロジェクトでは、日本の若者に 島県への愛を示してもらうとともに、それ よる団体であるClimate Youth Japanと協力 に対する感謝の気持ちを表現しました。 し、3つの活動を行いました。 新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻 修士1年 高橋智輝 経済学部 経営学科 4年 小林圭介 工学部 マテリアル工学科 4年 ③ 報告会 ① 政府関係者への声明文の提出及び 佐藤慎一 帰国後に、国立オリンピック記念青少年 THE Alliance for Global Sustainability 5 荒木貴裕 AGSクラブ工場見学会 ―ブライトピック千葉・溝原工場― 東京大学AGS推進室は、AGSクラブ会員 同社はその食品残渣等を液状飼料化し、ブ などがあるとの説明を受けた。見学終了後、 数社からの要望を受け、平成22年12月より ライトピックグループで飼育している豚に 同社オリジナル豚肉の試食会があり、市販 「AGS企業間ミーティング」を不定期で開催 えさとして供給している。この豚肉の一部 の豚肉との違いを実感することができた。 している。 はファミリーマートを通じて消費者に販売 今回は訪問しなかったが、グループ会社 今回「資源・廃棄物のリサイクル関連」を されており、安心、安全な豚肉の供給を推 で経営する養豚農場は千葉県に六ヶ所、神 テーマにした企業間ミーティンググループ 進する両社による食品リサイクルのループ 奈川県に一ヶ所計七ヶ所でこの養豚農場に から循環型リサイクルを行っている工場の が構築されている。この取り組みが評価さ おける飼育豚は37,000頭におよぶ。これら 見学をしたいという声が上がり、AGSクラ れ、ブライトピックは平成21年に「食品リ 全頭に供給する液状飼料(約240トン/日) ブ会員である伊藤忠商事株式会社のグルー サイクル推進環境大臣賞」を受賞した。 はこの溝原工場で製造している。工場で プ企業、株式会社ファミリーマート(以下、 工場では、ブライトピックの鹿股参与及 は、石井工場長が「豚も人間と全く同じであ ファミリーマート)殿のご協力により、AGS び溝原工場長の石井取締役より会社の概 る。菓子屑、パン屑、乳製品等豚の好きな クラブの活動の一環として平成23年12月1 要、養豚農場そして溝原工場が保有する液 食べ物を新鮮で安全な形で供給することに 日(木)、有限会社ブライトピック千葉(以 状飼料化技術の特徴等について概要説明を よって、初めて安全、安心でおいしい豚肉 下、ブライトピック千葉)溝原工場(千葉県 受けた。11時過ぎに工場施設を見学するた が生産できる」と語った言葉には大いに感 旭市溝原)を見学した。AGSクラブ会員企 め、工場指定の靴、作業着、ヘルメット、マ 心させられた。食の安全、リサイクルにつ 業、東大教職員合わせて10名の参加があっ スクを着用し12時ごろまで見学した。この いて考えさせられる見学会であった。 た。 液状飼料化技術の特徴として ブライトピック千葉は、有限会社ブライ ①原料を加熱処理しない。従って、生肉・生 トピック(神奈川県綾瀬市。以下、ブライ 魚・食べ残しは原料として使用しない。(加 トピック)の関連会社で溝原工場は平成19 熱作業が不要ゆえ、大幅にCO2 を削減でき 年に完成した日本最大の養豚用液状飼料工 る。) 場(リキッドフィーディングシステム)であ ②豚の成長と、良い肉を確保するため栄養 る。ファミリーマートは、各店舗から排出 バラン スを考えた配合設計をしている。 される「売れ残り食品」をブライトピック千 ③鮮度の高い飼料を供給するため、原料搬 葉に食品残渣として処理を委託しており、 入から24時間以内に飼料を製造する。 (清水寿郎) 平成23年度東京大学AGS研究助成課題決まる 平成23年度AGS研究助成課題が、2011年9月28日に行われたAGS運営委員会で決定された。研究公募に関しては、従来の学際性・社会性・ 国際性を強調したサステイナビリティ学に関連した研究課題を公募するという性格から、次の段階として、より実践性のあるプロジェクト、 および、若手の奨励研究を軸に公募することとなった。本年度のプロジェクトのテーマとしては、3.11東日本大震災に鑑み、震災復興に関 連したプロジェクトを公募した。応募件数は、9件であり、そのうち、7件が採択された(表1)。また、若手の奨励研究には、17件の応募があ り、プロジェクト研究の応募からの1件を含めて、18件の提案が採択された。(表2) (住明正) 表1 採択されたプロジェクト研究 研究プロジェクトテーマ 研究者代表 専門分野 農学生命科学研究科附属 東日本大震災の被災地における農林業の再生とバイオマスエネルギーの利用に関する提言 森田 茂紀 地上資源の蓄積分析に基づく地域再生の提案 森口 祐一 工学系研究科・教授 これからのコミュニティとまちづくりのあり方に関する研究—復興まちづくりの国際比較研究 城所 哲夫 工学系研究科・准教授 東日本の沿海集住体における分節的インフラストラクチャーにかんする歴史的研究:沼地と干潟の防災技術と居住史 伊藤 毅 生態調和農学機構・教授 工学系研究科・教授 サステイナビリティ学連携研究機構・ 災害時・災害後の総合的水管理システムと評価指標開発 福士 謙介 高齢者災害時医療における老年医学の役割:震災関連死や生活不活発病の予防を目指して 飯島 勝矢 医学系研究科・講師 アジアでのスーパーグリッド構築によるエネルギー安全保障と一般安全保障の強化 中山 幹康 新領域創成科学研究科・教授 THE Alliance for Global Sustainability 6 准教授 AGS news Vol.20 表2 採択された奨励研究 研究プロジェクトテーマ 研究者代表 日欧のライフスタイルを考慮した欧州型リサイクルの導入可能性とライフサイクル評価 専門分野 中谷 隼 工学系研究科・助教 広域的環境影響と局所的化学物質リスクに基づく総合評価手法の構築 菊池 康紀 工学系研究科・助教 南米コロンビアの交通に関わる都市問題及び環境問題 星子 智美 工学系研究科・特任助教 ケニア・ナイロビにおけるインフォーマル市街地の形成とコミュニティ開発 志摩 憲寿 工学系研究科・助教 ガンジス流域における水資源利用の持続可能性 富田 晋介 農学生命科学研究科・助教 下水処理水を用いた濃縮藻類培養プロセスにおける二酸化炭素固定・栄養塩除去の高効率化 本多 了 環境安全研究センター・特任助教 里山ナラ林を対象とした森林病害防除のための木質バイオマス利用の評価 寺田 徹 新領域創成科学研究科・助教 放射線問題によって農産物に対する消費者のリスク認知構造はどうかわったか? 細野 ひろみ 農学生命科学研究科・准教授 地域性を考慮した農産物の放射性物質の移行過程の解明 安永 円理子 農学生命科学研究科・准教授 田中(小田)あゆみ 中国半乾燥地に生育する沙柳 (Salix psammophylla Koidz.) の植林技術開発に関する研究 カラマツ-チョウセンゴヨウ二段林の成長モデリング: 中国東北部における持続可能な森林経営手法の確立に向けて ストック活用に向けた住宅改修の「一般解」と「特殊解」に関する研究 新領域創成科学研究科特任助教 尾張 敏章 農学生命科学研究科・講師 西野 亜希子 工学系研究科・特任研究員 モバイルホスピタル 岡本 和彦 工学系研究科・助教 インド農民の厚生に関する研究 和田 一哉 人文社会系研究科・研究員 気候変動適応策検討のための合意形成事例調査 松浦 正浩 公共政策学連携研究部・特任准教授 リンのグローバル・ガバナンスに関する研究 松尾 真紀子 Response to water issues: exploring field-oriented environmental education curricula for leadership development 安 京珍 バレンタイン・ スコット Wind Power in Denmark: Lessons for Japanese Policy Makers 公共政策大学院・特任研究員 工学系研究科・特任講師 公共政策大学院・特任講師 平成22年度東京大学AGS研究助成課題年次報告会の概要報告 東京大学AGS研究会では毎年学内の教員 の方々に加えて、東京大学AGSクラブ会員 究など、また都市と農村の共生については や研究者を対象にサステイナビリティに関 の方々にも案内し、AGS研究会の教員や研 アジア大都市圏の実態、中国の天津市の状 わる研究課題を募集している。2010年度 究者や、AGSで支援して、サステイナビリ 況の研究などについて発表がなされた。健 は、アジアにおけるサステイナビリティに ティについて取り組んでいる学生組織であ 康分野では高齢社会のQOL(クオリティ・オ 重点を置きながら、AGSの重点分野である る東京大学学生コミュニティ・サスプラス ブ・ライフ、生活の質)、中国農村地域の人 水、食糧、エネルギー、都市の未来、モビリ (SUS+/AGS-UTSC)の学生と共に参加いた 口移動に関連した健康と村落の持続性な ティ、リスクマネージメントなどの研究課 だき、研究成果の発表と質疑応答が行われ ど、また農業・食糧と水関係では、東南アジ 題と、さらに、高齢化社会・持続可能性を支 た。 アの水環境制御、カンボジアにおける水管 える文化の多様性や持続可能な社会、ジェ 理改革の分析の研究などの成果が発表され ンダーの役割などの研究課題を対象とす 研究発表は多岐の分野に広がるものだっ た。さらにサステイナビリティ教育などに る本格研究(Full Project)と、将来が期待さ た。例えば、アジア地域を中心とした気候 ついての研究成果の発表と、SUS+からも れる探索的な研究(Seed Project)の二種類 変動、エネルギー関係では、風力発電など 本年度の学生の活発な活動について紹介が について募集をし、Full Project34件、Seed 再生可能エネルギーに関する研究、資源関 あった。 Project16 件が採択された。 係では、中国の石炭開発の環境問題、東南 2日間にわたる報告会で、第1日目(12月 アジアにおける資源環境政策に関わる研 14日)の報告会の終了後には懇談会を催し これら2010年度に採択された研究課題 究などについて発表された。都市・衛生・防 て研究成果などについて意見交換を行うな の成果についての研究報告会が2011年12 災・建物に関わる研究では、アフリカの都市 ど、来年度に向けて実りある報告会だった。 月14日と15日の2日間、山上会館大会議室 のインフォーマル市街地の形成と政策対応 (浅尾修一郎) で開催された。今回はAGSの研究助成企業 や空調システムの微生物制御についての研 THE Alliance for Global Sustainability 7 AGSは、東 京 大 学、マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 工 科 大 学(ア メ リ カ)、ス イ ス 連 邦 工 科 大 学(ス イ ス)、チ ャ ル マ ー ズ 工 科 大 学 (ス ウ ェ ー デ ン)と い う、ア ジ ア、北 米、 欧州の3極を代表する4つの大学が地球 環境の保全という制約条件下で持続的な 発展を求めて現実的な方策などの提言 を行う共同研究を推進している国際的な パートナーシップです。 http://theags.org/ お問合せは下記までお願いいたします。 東京大学AGS推進室 〒113-8654 東京都文京区本郷 7 - 3 - 1 TEL : 03-5841-1548、FAX : 03-5841-1545 www.ags.dir.u-tokyo.ac.jp