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カボチャ・サツマイモ等を用いた 新しい屋上緑化の取り組み

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カボチャ・サツマイモ等を用いた 新しい屋上緑化の取り組み
屋上緑化
ソリュ ー ション
サ ービスを極め る
遮 熱
ヒートアイランド対策
カボチャ・サツマイモ等を用いた
新しい屋上緑化の取り組み
食用植物の優れた蒸散作用によって都市のヒートアイランド現象を緩和
するサツマイモ水気耕栽培システム「グリーンポテト」は,大きな反響を
呼び,新しい屋上緑化の取り組みへと進展しています.
う え だ
り
え
上田 里絵
NTTファシリティーズ
ツマイモが屋上緑化に適した植物であ
植物は葉面が蒸散することにより気
ることに着目し,2006年からアーバン
化熱(水が水蒸気に変わる際に必要な
ネット三田ビル(東京都港区)の屋上
熱)が発生し,大量の熱を吸収するこ
近年,地球規模の温暖化現象に加
において,NTT都市開発と共同でサツ
とから周辺の空気の温度上昇を抑制で
え,都市部におけるヒートアイランド現
マイモの水気耕栽培システムグリーンポ
きます.水気耕栽培のサツマイモにお
象 が大きな環境問題として取り上げ
テトによる屋上緑化を行い,ヒートア
いては,従来採用されてきた芝生によ
られており,対策の1つとして,都市
イランド対策の効果を検証する実証実
る屋上緑化と比べ蒸散量が多く,蒸散
部に緑を増やす屋上緑化への取り組み
験を実施しています.
作用により太陽から降り注ぐエネルギー
大反響を呼んだ「グリーンポテト」
*1
が進められています.ところが,既存ビ
グリーンポテトは,肥料を水に溶か
の約80%を吸収するなど,高い効果
ルの場合,屋根面の耐荷重の問題や導
した“液肥”を栽培ユニットに循環させ
(熱収支による効果*2 )があることが共
入後の栽培・手入れにコストがかかる
ることで,優れた蒸散作用・高い遮熱
ことなどから,あまり導入が進んでいま
性を持つサツマイモを育てる栽培システ
2006年の実験開始から今年度で4年
せん.
ムであり,既存ビルにも容易に導入で
目となりますが,大きな反響を呼び,
き,大きな効果が期待できます(図1)
.
2007年11月には,第4回エコプロダク
そこでN T Tファシリティーズでは,サ
同実証実験で確認できています.
ツ大賞エコサービス部門で農林水産大
臣賞を受賞しました.
屋上表面温度の1日の変化
(℃)
60
手軽に設置できる新たな
屋上緑化システム
夜間に温度が急激に下がる
→夜間熱放出
→熱帯夜の原因
55
屋上表面温度の
差は27℃
50
2 0 0 9 年はこれに加え,カボチャ・
45
温
40
度
緑化していない区域の
温度変化は,
27℃
緑化していない区域
外気温度
*1
35
30
25
外気温より低い サツマイモ緑化区域
サツマイモ緑化区域の
温度変化は,
わずか3℃
20
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22 (時)
時 間
図1 水気耕栽培システム「グリーンポテト」の優れた遮熱効果
46
NTT技術ジャーナル 2010.1
*2
ヒートアイランド現象:都市部の気温が郊
外に比べて島状に高くなる現象.都市の熱
大気汚染ともいわれ,温熱環境の悪化や局
地的集中豪雨との関連性が指摘されていま
す.原因としては,地表面被覆の人工化,
人工排熱の増加,都市形態の変化などが挙
げられています.
熱収支による効果:晴天時,日照時間(6:
00∼18:00)の熱収支を集計した結果,正
味放射量(太陽からの熱量)が,
「緑化してい
ない区域」では約90%が温度上昇を促進す
る顕熱となり,一方「サツマイモ緑化区域」
では約80%がサツマイモの蒸散作用により
顕熱とならないことが確認されました.
ソ
リ
ュ
ー
シ
ョ
ン
サ
ー
ビ
ス
を
極
め
る
(℃)
45.0
42.5
40.0
37.5
35.0
32.5
30.0
27.5
25.0
(a) カボチャ(甘ほく)画像
(℃)
45.0
写真1 土耕方式によるサツマイモ
42.5
栽培
40.0
37.5
35.0
32.5
30.0
27.5
25.0
(b) カボチャ(全体)画像
図2 土耕方式によるカボチャの栽培実験と緑化区域のサーモカメラ画像
ゴーヤ・サツマイモの新しい緑化システ
ムの栽培実験を実施しています.
写真1).
2 0 0 9 年の夏は,サツマイモ以外に
*3
新たな緑化システムは,土壌・肥料
もカボチャ,ゴーヤでの栽培実験 を
などをパック化した袋に苗を入れて栽培
行いましたが,夏以外の季節でも,カ
する土耕方式です.本方式の特徴は,
リフラワー・ダイコン・ブロッコリーな
大がかりな工事を必要とせず,屋上の
どさまざまな野菜栽培が可能で,1年
狭いスペースにも設置できる安価で手軽
を通して楽しめます.
なシステムであることです.
袋は透水防根シートを加工したもの
従来のグリーンポテトと今回の新し
い土耕栽培システムの共同実験では,
であり,降雨により土壌が流れ出して
食用植物栽培によるヒートアイランド
屋上ドレイン(排水口)や配管に土壌
対策効果の検証,ならびに栽培管理の
が詰まることも,屋上に根が張ること
ための温度・熱量や土壌中の水分,肥
もありません.袋で覆われていることで,
料濃度などを計測し,オンラインで遠
屋上の強風による激しい土壌の乾燥・
隔管理を実施しています.それに加え,
飛散を防ぎ,潅水回数を減らすことが
NTT都市開発は,手入れ・収穫作業
できます.栽培する植物により,必要
を通じた社員間コミュニケーションの醸
に応じて自動潅水装置を取り付けるこ
成,環境問題に対する意識向上を目指
とが可能です.また,袋は遮光性があ
した環境教育などの場として活用して
るため雑草が繁茂せず,プランターや花
います(写真2)
.
壇と異なり雑草取りが不要です(図2,
一 方 , N T T ファシリティーズは,
ヒートアイランド対策のソリューション
*3
栽培実験:栽培内容は,屋上緑化として,
サツマイモ96苗分(品種:パープルスイー
ト)24袋,カボチャ39苗分(品種:日向,
鹿ケ谷,甘ほく,坊ちゃん)28袋.壁面緑
化(屋上にある塔屋の壁面)として,ゴー
ヤ8苗分(品種:あばし,白ゴーヤ)4袋.
写真2 社員参加の苗植え
開発を目的とする取り組みを進めると
ともに,屋上緑化システム導入の促進
と環境教育への貢献も積極的に行って
いきます.
上田 里絵
食用植物を利用することにより,未利用
だった屋上は栽培管理や収穫祭を通してコ
ミュニケーションを育む場として活用する
ことができます.「環境」や「農」を考える
きっかけをつくり,皆が植物をもっと身近
に感じることのできる緑化システムを目指
しています.
◆問い合わせ先
NTTファシリティーズ
事業開発部 環境ビジネス部門
環境ソリューション担当
TEL 03-5444-2488
FAX 03-5444-5628
E-mail nagata37 ntt-f.co.jp
NTT技術ジャーナル 2010.1
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