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2014/06/17 1
2014/06/17
医局勉強会 2014.6.9
ぶどう膜炎診断の進め方
ぶどう膜炎 どんな病気?
・眼内に炎症または感染性病原体による組織破壊を生じる疾患
・それによる種々の続発症により視機能が脅かされる
∼ 初級編 ∼
角膜混濁(角膜内皮細胞障害)
続発緑内障
併発白内障
硝子体混濁
黄斑浮腫
網膜剥離
視神経萎縮
高瀬 博
ぶどう膜炎の原因疾患
非感染性ぶどう膜炎
感染性ぶどう膜炎
仮面症候群
2009年ぶどう膜炎調査(日本眼炎症学会)
疾患名
頻度(%)
サルコイドーシス
10.6 Vogt-小柳-原田病
7.0 急性前部ぶどう膜炎
6.5 強膜炎
6.1 ヘルペス性虹彩炎
4.2 ベーチェット病
3.9 細菌性眼内炎
2.5 仮面症候群
2.5 ポスナーシュロスマン症候群
1.8
網膜血管炎
1.6 糖尿病性虹彩炎
1.4 結核性ぶどう膜炎
1.4
急性網膜壊死
1.4 眼トキソプラズマ症
1.3 MEWDS
1.0 真菌性眼内炎
1.0 サイトメガロウイルス網膜炎
1.0 HTLV-I関連ぶどう膜炎
0.8
リウマチ関連ぶどう膜炎
0.8 炎症性腸疾患
0.7 MPPE
0.7 その他
8.4 分類不能
33.5 計 100 ぶどう膜炎をみたらどうするか?
まずは、よくある疾患を確実に鑑別する!
(Ohguro N, et al. Jpn J Ophthalmol, 2012;56:432-435)
ぶどう膜炎をどのように鑑別するか?
ぶどう膜炎の分類による鑑別診断
とりあえず見た目で分類してみる!
ぶどう膜炎の性状:
肉芽腫性
非肉芽腫性
肉芽腫性ぶどう膜炎
両眼性
片眼性
サルコイドーシス
ヘルペス性虹彩炎
原田病
急性網膜壊死
結核
炎症の主座:
前部
後部
汎
(先天性)眼トキソプラズマ症(後天性)
非肉芽腫性ぶどう膜炎
ベーチェット病
急性前部ぶどう膜炎
(内因性)細菌性眼内炎(外因性)
罹患眼:
両眼性
片眼性
その他
強膜炎
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ぶどう膜炎初期診療の基本戦略
両眼性肉芽腫性ぶどう膜炎、まず鑑別すべきは…
分かり易い所見、患者背景を把握する
(胞状剥離、網膜変性、内眼手術後、免疫不全など)
サルコイドーシス
↓
肉芽腫またはその瘢痕を探す
(両眼とも、隅角・眼底・なるべくFAまで行う)
↓
本邦で最も頻度が高いぶどう膜炎である
→「当たり」の確率が最も高い!
明確な診断基準が存在する
分類に沿って鑑別診断を行う
→ 所見の有無を積極的に探す事が重要
全身精査
他科コンサルト
でも、何でもかんでもサルコイドーシスと言ってしまうのも…
眼内液検査
サルコイドーシスの眼所見
ちょっと見ただけでは分かりづらい肉芽腫病変
豚脂様角膜後面沈着物
1)
Koeppe 結節
虹彩結節
Busacca 結節
2)隅角結節または
テント状周辺虹彩前癒着
3)雪玉状または数珠状硝子体混濁
4)周辺部多発性網脈絡膜病巣
5)網膜静脈周囲炎、周囲結節
または網膜細動脈瘤
6)視神経乳頭肉芽腫、脈絡膜肉芽腫
ちょっと見ただけでは分かりづらい肉芽腫病変
ちょっと見ただけでは分かりづらい肉芽腫病変
FAをしないと分からない!
隅角結節は 気合いを入れて 探す!
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サルコイドーシスの眼病変(2007年の診断基準)
もう一つの両眼性肉芽腫性ぶどう膜炎
結核性ぶどう膜炎
① 肉芽腫性前部ぶどう膜炎(豚脂様KP、虹彩結節)
② 隅角結節またはテント状PAS
←隅角検査が必須!
③ 塊状硝子体混濁(雪玉状、数珠状)
④ 網膜血管周囲炎(主に静脈)および血管周囲結節
←FAが重要!
⑤ 多発するろう様網脈絡膜滲出斑または光凝固様の網脈絡膜萎縮病巣
⑥ 視神経乳頭肉芽腫または脈絡膜結節
上記のうち2項目以上を満たした場合、サルコイドーシスを疑う
さらに「両眼性」を見極めるために…
一見正常に見える反対眼も、必ず同じように調べる事が必要!
二つの両眼性肉芽腫性ぶどう膜炎
結核性ぶどう膜炎とサルコイドーシスの鑑別点
結核
サルコイドーシス
ツ反
陽性、強陽性
陰転化
胸部画像
なし、または結核病変
BHL
ステロイド治療
部分的に反応→遷延
良好に反応
全身的には結核病変再燃の事も
両眼性肉芽腫性ぶどう膜炎の鑑別診断には
ツ反、胸部画像が必須である
原田病の眼病変(国際ワークショップの診断基準)
Read RW et al. Am J Ophthalmol 2001;131:647-652
両眼性病変
a.  初期病変
1)  びまん性脈絡膜炎(虹彩炎、硝子体細胞、または視神経乳頭炎を伴う)
a)  限局性網膜下液、b) 胞状滲出性網膜剥離
2)  以下の眼底病変を認める
a)  FAにて:限局性脈絡膜還流遅延、多発点状漏出、平坦な過傾向斑、網膜下
蛍光貯留、視神経乳頭の染色
b)  超音波検査にて:びまん性の脈絡膜肥厚(後部強膜炎を除外)
b.  後期病変
2)  脱色素兆候
a)  夕焼け状眼底, b) 杉浦兆候
3)  その他
a)  円形の網脈絡膜脱色素瘢痕
b)  網膜色素上皮の凝集、遊走
c)  慢性再発性の前部ぶどう膜炎
特徴のない胞状網膜剥離の鑑別は意外に難しい
原田病にみられる胞状網膜剥離の特徴
原田病
貪角化
後部強膜炎
脈絡膜皺襞
フィブリン様物質の充満
隔壁形成
特徴がない事も…
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特徴のない胞状網膜剥離の鑑別は意外に難しい
原田病
後部強膜炎
罹患眼
両眼
両眼
炎症の性状
肉芽腫性
さまざま
疼痛
△
◎
脈絡膜肥厚
◎
○
感冒様症状の先行
◎
内耳症状
◎
無菌性髄膜炎
◎
ステロイド治療
パルス療法
片眼性肉芽腫性前部ぶどう膜炎、鑑別すべきは…
ヘルペス性ぶどう膜炎
…といっても、色々ある
水痘帯状疱疹ウイルス (VZV) 虹彩炎
単純ヘルペスウイルス (HSV) 虹彩炎
サイトメガロウイルス (CMV) 虹彩炎
どこが肉芽腫?
大量、パルス療法
それは…べったりしたKP
耳鼻科(聴力検査)、神経内科(髄液検査)が必要
VZV虹彩炎の臨床像
CMV虹彩炎の臨床像
KP(白色小型、Coin lesion)
色素の混じった、べったりしたKP
VZVの眼内感染
CMVの眼内感染
虹彩の色素脱失、萎縮
角膜内皮炎
角膜内皮細胞密度減少
虹彩炎(?)
前房炎症は軽い事が多い
隅角の色素沈着
線維柱帯炎(?)
虹彩色素細胞の眼内への散布
激しい眼圧上昇
豚脂様KP
白色小型のKP
虹彩色素脱失を
起こす事も
虹彩色素脱失
健眼
隅角色素の左右差が大事!
眼圧最高値 (mmHg)
ヘルペス性虹彩炎は眼圧が上がる!
隅角色素脱失を起こす事も
Coin lesion
健眼
左右差が大事!
CMV虹彩炎は角膜内皮細胞密度が減少する!
角膜内皮細胞密度 (cells/mm2)
隅角色素沈着
健眼
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意外に見逃される
でも決して見逃してほしくないヘルペス性ぶどう膜炎
ヘルペス性前部ぶどう膜炎の特徴
HSV 急性網膜壊死:前眼部炎症像はVZV虹彩炎と共通している
(片眼性、べったりKP、高眼圧)
急性発症
眼痛、充血
大∼中型のKP
片眼性
べったりしたKP
高眼圧
VZV 慢性の経過
高いウイルス量
自覚症状に乏しい
高いフレア値
小型のKP
分節状虹彩萎縮
びまん性虹彩萎縮
CMV
角膜内皮細胞の減少
急性網膜壊死の初期像
乳頭発赤、網膜動脈炎
分節状動脈炎は急性網膜壊死を疑う!
「虹彩炎ですね」と思っても、必ず眼底を見るべき!
片眼性肉芽腫性ぶどう膜炎を見たら…
硝子体混濁が強い場合はIAが有用
FA
• 
ヘルペス性ぶどう膜炎を疑う
• 
確定診断には眼内液を用いたPCRが有用
• 
血清学的診断は役に立たない
• 
眼底も必ず見る習慣をつけましょう
IA
眼トキソプラズマ症の臨床像
先天性眼トキソプラズマ:両眼性、主に黄斑部
後天性眼トキソプラズマ症:片眼性、病変部位はさまざま
時に肉芽腫性前部ぶどう膜炎像
ベーチェット病の臨床像:
両眼性再発性の非肉芽腫性ぶどう膜炎
発作時 毛様充血
前房蓄膿 、隅角蓄膿 ←隅角検査が必須!
びまん性硝子体混濁、BRVO様網膜出血、網膜虚血
羊歯の葉状の蛍光漏出 ←FAが重要!
寛解期 虹彩後癒着
抗トキソプラズマIgG抗体
活動期で上昇する
不顕性感染もあり、診断根拠には弱い
抗トキソプラズマIgM抗体
初感染で上昇する
発症と一致すれば、診断的価値は高い
眼内液PCR
特に硝子体液で検出される事があり、診断に有用
網膜虚血、新生血管
本人も分かってない事が多い
網膜萎縮
しつこく聞く、他科に聞く
↓
全身所見:口腔内アフタ性潰瘍、陰部潰瘍、結節性紅斑
関節炎、副睾丸炎症、回盲部潰瘍、血管病変、中枢神経病変
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一見似ている三つの非肉芽腫性ぶどう膜炎
細菌性眼内炎は患者背景から疑う
細菌性眼内炎
細菌性眼内炎
患者背景
外因性:術後、外傷後
内因性:不明熱、全身倦怠感、免疫力低下要因
ベーチェット病
↓
積極的な検査
眼内液採取:培養、スメア、PCR
急性前部ぶどう膜炎
血液培養
↓
(予防的)抗生剤投与
バンコマイシン、セフタジジム 硝子体注射
広域抗生物質極量点滴投与
内因性細菌性眼内炎は反対眼も重要!
ベーチェット病と急性前部ぶどう膜炎
細菌性眼内炎
ベーチェット病
急性前部ぶどう膜炎
罹患眼
両眼が多い
通常は片眼、反対眼に再発も
前房蓄膿
きれい、さらさら
フィブリンでべったり
眼底
BRVO様出血、虚血
時に乳頭発赤、黄斑浮腫
急性期治療
ステロイド局所注射
ステロイド局所注射
HLA
A26, B51
B27
全身所見
口内炎、陰部潰瘍、結節性紅斑
強直性脊椎炎、乾癬
予後
不良
良好
やっぱり反対眼の所見が重要!
両眼性非肉芽腫性汎ぶどう膜炎
片眼性非肉芽腫性前部ぶどう膜炎
やっぱり病型分類が大切です!
どれにも当てはまらなかったら…
眼内リンパ腫を思い出す
PIOLはぶどう膜炎の約2%を占める!
原発性眼内リンパ腫
50.5%
原発性眼CNSリンパ腫
12.6%
全身悪性リンパ腫
14.7%
原発性眼内腫瘍
15.8%
転移性眼内腫瘍
6.3%
2009年ぶどう膜炎調査(日本眼炎症学会)
疾患名
頻度(%)
サルコイドーシス
10.6 Vogt-小柳-原田病
7.0 急性前部ぶどう膜炎
6.5 強膜炎
6.1 ヘルペス性虹彩炎
4.2 ベーチェット病
3.9 細菌性眼内炎
2.5 仮面症候群
2.5 ポスナーシュロスマン症候群
1.8
網膜血管炎
1.6 糖尿病性虹彩炎
1.4 結核性ぶどう膜炎
1.4
急性網膜壊死
1.4 眼トキソプラズマ症
1.3 MEWDS
1.0 真菌性眼内炎
1.0 サイトメガロウイルス網膜炎
1.0 HTLV-I関連ぶどう膜炎
0.8
リウマチ関連ぶどう膜炎
0.8 炎症性腸疾患
0.7 MPPE
0.7 その他
8.4 分類不能
33.5 計 100 当科における眼内リンパ腫の診断基準
① 典型的眼所見:硝子体混濁(大型な細胞、ステロイド抵抗性)
網膜病変(OCT、自発蛍光を参考にする)
② 病理細胞診断
③ フローサイトメトリー:免疫グロブリン軽鎖解析
④ PCR:免疫グロブリン重鎖遺伝子解析またはT細胞受容体遺伝子再構成
⑤ 眼内液のサイトカイン:IL-10/IL-6 > 1 または IL-10 ≥ 100pg/ml
⑥ 他臓器病変の存在、既往を参考にする(頭部MRI、髄液検査、骨髄検査、全身
PET-CT)
・①に加え、②∼④のいずれかを満たすものはIOL診断確定する
・②∼④は陰性または検査不能だが、①、⑤、⑥を満たすものはIOLが
極めて疑わしいと考え、IOLに準じて扱う
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感染性ぶどう膜炎・眼内リンパ腫の診断には
眼内液検査が有用
ぶどう膜炎診療には他科との連携が必須
多項目遺伝子の同時検査
皮膚科
呼吸器内科
整形外科
サルコイドーシス?
結核?
検査項目
細菌 保存領域
16S rRNA
ウイルスセット
ぶどう膜炎、角膜炎セット
HHV 1〜8
結核、梅毒、バルトネラ
HTLV-1プロウイルス トキソカラ、トキソプラズマ
アカントアメーバ
眼内リンパ腫
IgH、TCR
遺伝子再構成
Multiplex 定性 PCR
定性 PCR
先進医療に認定
強直性脊椎炎?
血液内科
真菌 保存領域
28S rRNA
眼科
悪性リンパ腫?
関節リウマチ?
ベーチェット病?
スクリーニング検査
Real-time 定量 PCR
原田病?
耳鼻科
神経内科
Real-time 定量 PCR
(カンジダ、アスペルギル
ス)
リウマチ内科
Real-time 定量 PCR
二次検査
遺伝子配列解析→菌種の特定
サイトカイン解析
(IL-10 / IL-6)
「ぶどう膜炎診断の進め方 ∼ 初級編 ∼」 まとめ
・「よくある疾患」を知っておく
・問診をきちんととる
・肉芽腫の有無、炎症の主座、左右差を調べる
・両眼の隅角検査、造影検査を怠らない
・片眼性肉芽腫性ぶどう膜炎には眼内液検査を行う
・眼内リンパ腫も常に念頭におく
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