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第6回世界水フォーラム BOPビジネスサイドイベント
第6回世界水フォーラム BOPビジネスサイドイベント 開催報告 BOPビジネス実行委員会事務局 作成 第6回世界水フォーラム 概要 開催期間 場所 主催者 2012年3月12日~17日(6日間) 参加者数 約2万人(日本関係者:約100名) 参加国数 テーマ 173カ国 Time for Solutions(水問題解決の時) プロセス フランス・マルセイユ フランス政府、世界水会議 政治プロセス テーマプロセス 地域プロセス 草の根・市民プロセス BOPビジネスサイドイベント 概要 会期 会場 形式 2012年3月14日(水)19:15 ‐ 20:45 フランス・マルセイユ、パルク・シャノ(Parc Chanot) 国際会議場、Europa3、Palais de L‘Europe 第6回世界水フォーラム公式イベント「サイドイベント」 言語 英語 (同時通訳あり:日本語) テーマ BOPビジネスによる水と衛生の持続可能性向上のた めのアプローチ BOPビジネス実行委員会※ 、独立行政法人 国際協力 機構(JICA) 主催 BOPビジネスサイドイベント プログラム 19:15‐19:25 主催者挨拶:山田雅雄 / BOPビジネス実行委員会委員長、中部大学 客員教授 共催者挨拶:村田修 / 国際協力機構(JICA)民間連携室 室長 19:25‐19:40 基調講演:「Businessによるpro‐poor人口への水・衛生対策の取り組みの政策的 意義」 サバ・ソバーニ(Mr. Sahba Sobhani) / UNDPプログラムマネージャー 19:40‐20:35 ケーススタディの発表及びパネルディスカッション モデレーター: K.E.シータラム / シンガポール国立大学 客員教授 ケーススタディ1:スリランカの未給水地域での水供給事業検討 (山村尊房 / (社)水と環境の未来研究所 総括主任研究員) (渡部健一 / 名古屋市上下水道局 企画部 経営企画課 技術調整係長) ケーススタディ2:インドでの安全な飲料水供給と現地サプライチェーンの確立に よる貧困削減ビジネス (樋渡類 / (有)アイエムジー 国際開発コンサルタント) ケーススタディ3:バングラデシュでの雨水タンク整備ビジネス可能性調査 (村瀬誠 / (株)天水研究所 代表取締役) ケーススタディ4:各国のBOPビジネス事例 (村田修 / 国際協力機構(JICA)民間連携室 室長) 20:38‐20:43 ラポラトゥール(総括報告者):キャロライン・キング(Dr. Caroline King) / オックス フォード大学 20:43‐20:45 閉会:K.E.シータラム(Dr. K.E. Seetharam) / シンガポール国立大学 客員教授 主催者挨拶:山田雅雄 / BOPビジネス実行委員会委員長、中部大学 客員教授 z サイドイベントの目的は、これまで世界各地で行われて いるBOP水ビジネスまたJICA支援によるBOPビジネ ス調査の経験に基づき、将来のBOP水ビジネスの方向 性を見極め、民間企業によるBOPビジネスを促進させ ることにある。 z BOPビジネスには3つの重要な点がある。 z 第1はファイナンスと市場である。約9億人が安全な水を 得られていない困難な状況にあり、この問題を解決する にはODAまたは公共の融資だけでは不可能で、民間 資金調達が必要不可欠である。 z 第2はエネルギーと資源である。エネルギーと資源の不 足は経済発展に伴い更に深刻になる。BOPビジネスに より省エネ、省資源のライフスタイルを構築し、それを先 進国に逆輸入する必要がある。 z 第3は能力開発である。BOPビジネスに携わることによ り、経験を積み、能力を開発することで、将来、社会や企 業を革新していく機動力になる。 z 最後に、今回のJICAの支援を受けて実施している事例 の紹介及びデイスカッションが、BOPビジネスの理解を 深めるのに役立つことを望む。 共催者挨拶:村田修 / 国際協力機構(JICA)民間連携室 室長 z JICAは水と衛生の持続可能性向上のためのBOPビ ジネスに力を入れている。JICAは世界第1位のODA 提供者であり、水分野でこの10年間に217億ドルの円 借款、22億ドルの無償資金協力、12億ドルの技術協 力をしてきた。 z 2007年のGlobal Water Intelligenceによると、水ビジネ ス市場は2007年の3500億ドルから2016年には5200 億ドルに成長すると見込まれている。 z このような状況に鑑み、JICAは、公共のプロジェクト のみならず民間プロジェクトまで活動領域を広げ、力 を入れて行きたいと考えている。 z マッキンゼー/IFCによれば、2030年には人口急増する 開発途上国では水需要の40%が満たされないという 予測が出され、世界全体の水供給力を増やすには民 間資金の調達が不可欠である。 z JICAでは3つのツール(BOPビジネス連携促進、PPPイ ンフラ事業、海外投融資)により、アジアから中東、ア フリカ、ラテンアメリカにまで対象を広げていきたいと 考えている。 基調講演:「Businessによるpro‐poor人口への水・衛生対策の取り組みの政策的意義」 サバ・ソバーニ(Mr. Sahba Sobhani) / UNDPプログラムマネージャー 1. インクルーシブビジネスモデル(Inclusive Business Models)とは、 z 貧困者を顧客や消費者として需要サイドに、バリューチェーンの様々な場所 で従業員、生産者、ビジネスオーナーとして供給サイドに含めるものである。 z インクルシブビジネスからの恩恵には、利益やより高い所得を超えて、イノベ ーション、市場構築、サプライチェーンの強化がある。貧困者に対しても、より 高い生産性、持続可能な利得、より大きな雇用を提供するものである。 2. 水分野のインクルーシブ市場 z 水や衛生分野のインクルーシブビジネスの事例としては、モロッコ、ウガンダ 、インド、フィリピンなどで12の事例がある。それらは辺境に居住する貧困層、 都市スラムやあばら屋に対して水供給サービスを提供したり、低所得な消費 者に新技術の提供により水質浄化セクターを機能するものである。 z 供給サイドの理解もまた重要である。ハイチでは、小規模なインフォーマルな 水供給者は、大規模なフォーマルな私企業が高コストのため進出しないエリ アに、しばしば供給活動を行うことがある。 3. 結論 z 低所得なコミュニティでは、水関連製品のための市場研究を行う時、単一製 品アプローチよりも、複数の製品を試験するセクターアプローチの方が有効な ことがある。 z 低所得なコミュニティでは、水に関連した製品の便益の理解、気づきやコミュ ニティの動員が必要となる。 z 適用される製品は、各地の水へのアクセス特性、文化的特性、利用の容易さ に依拠する。大規模の展開する前に、市場研究やパイロット試験が行われる べきである。 z 低所得なコミュニティを対象とした戦略は成功してきたが、複製と測定を可能 なものの発見が1つの挑戦である。 ケーススタディ1:スリランカの未給水地域での水供給事業検討 (山村尊房 / (社)水と環境の未来研究所 総括主任研究員) (渡部健一 / 名古屋市上下水道局 企画部 経営企画課 技術調整係長) z公民が連携し、スリランカの3か所の未給水地域( 都市周辺部、農村、山間)において、水道施設による 水供給をBOPビジネスとして事業化することを検討し ている。 z高低差や既存の送水エネルギーを有効に活用し、 省エネ型の水道施設とするとともに、構造がシンプル で維持管理が容易な緩速ろ過方式を提案することで 持続可能な水道システムを計画している。 z事業実施にあたっては現地法人SPCを設置し、民 間から資金を調達し、JICAの低利融資を活用する。 また、設計・施工・維持管理までの一括受託により事 業を効率化できる等の特徴がある。 zこれらにより、未給水地域に安全な水を継続して供 給することができるとともに、現地における雇用の創 出、特に水汲み作業の時間が労働時間に振り替えら れる効果が期待出来る。 ケーススタディ2:インドでの安全な飲料水供給と現地サプライチェーンの確立による 貧困削減ビジネス (樋渡類 / (有)アイエムジー 国際開発コンサルタント) z四国化成工業は、貧困層向け飲料水供給事業の主 要な失敗例とその原因を分析し、Point-of-use(水を飲 用する時点で使用する)タイプの浄水剤を開発した。 zこれは凝集剤と殺菌剤の2剤構成であり、濁った原 水に対しては両剤の組み合わせにより容易に浄化でき る一方、透明な原水の場合には微生物やウィルスを除 去すべく殺菌剤を使用するだけで良い。また一包の分 量も、現地で使われている容器サイズ等にあわせて柔 軟に調整できる。 zインドでは現地の社会企業を中心に農村部各地の NGOと協力し、貧困層人材による販売員ネットワークを 構築することで、顧客密着型のコンサルティングセール スを展開する。 z当事業単体で収益が確保できるような価格・流通モ デルとするが、同時に中間層・富裕層向け市場でも関 連製品群を販売する。これにより、インド市場における 製造コスト削減や企業ブランド向上等の相乗効果が期 待できる。 ケーススタディ3:バングラデシュでの雨水タンク整備ビジネス可能性調査 (村瀬誠 / (株)天水研究所 代表取締役) zバングラでの天水利用研究を12年前から初 め、ヒ素や塩分を含んでいない天水を利用をし た、安価で出来るコンクリートタンクを開発した。 z6人家族の1年分の飲み水を供給可能な 4,400ℓのタンクは約2万タカ(約2万円)で開発可 能。4年前、100個のタンクを導入し、分割払い により、 100人全員が返済できた。 zただし、これは貧困層の人たちには高すぎて 買えない。また、調査により、水由来の病気等に より1500タカの医療費、飲料水を得るのに1500 タカ、合計3000タカかかることがわかった。その ため、3000タカのタンクを開発し、水問題に苦し む人々も購入可能となった。 z今後、2020年までに12万個のタンクを導入し、 また、インドとインドネシアにも普及させたいと考 えている。 ケーススタディ4:各国のBOPビジネス事例 (村田修 / 国際協力機構(JICA)民間連携室 室長) zJICAは3つの民間企業に対する支援ツールを始め た。民間への資金投融資(PSIF)事業と、PPP事業 、BOP事業である。後の2つは民間企業が実施する フイージビリテイ(FS)調査を支援するものであり、F S調査の後、SPC(特定目的会社)を立上げて事業 実施する所に資金投融資により支援するという構造 となっている。 zJICAが支援する水に関するBOPプロジェクト事業 の内、インドネシアでの小規模太陽光発電装置を使 った脱塩機能ユニットの普及事業、バングラでの自 転車による発電装置を使った浄化装置事業、安全な 飲料水供給事業、セネガルでの浄水供給事業を紹 介した。 zBOPビジネスは小規模でリスクが高いことから民 間資金は限られている。そのため、民間企業がFS 調査を行う時のコストをJICAが支援し、事業性が確 認されたものには他のドナーと協力し資金の投融資 支援をすることとしている。こうした民間企業に対し 協力支援される機関、NGOの参加を大いに歓迎す る。 質疑応答(一部抜粋) 質問者:大学教授 人々にもっと理解してもらうためにどのような教育方法を考えているか? →教育は重要と考えている。プロジェクトが他の国で再現性があるか検証が必要。他のプロ ジェクトで得られたことを教訓として伝えていくことが重要。 質問者:邦人コンサルタント BOPビジネスにおいて、強力な推進力となるのは、実ビジネスで儲かることである。同時に モラルハザードを避けるために、規制が必要である。JICAが途上国でBOPビジネスを支援 する際に、対象地域において、どのような公共規制を行うべきか? →JICAは途上国の水セクターを支援してきた長い歴史ある。そのため、地方の公共規制や政 策立案を支援することで、私的なプロジェクトをより効果的に支援可能である。 とはいえ、BOPビジネスは儲かる必要がある。通常、プロジェクトはハイリスク・ハイリタ ーン、ローリスク・ローリータンなものに分かれるが、水関連のプロジェクトはローリスク・ロ ーリタンかローリスク・安定的リターンになる必要があるというのが私たちの考えである。こ の目的のために、JICAは、 低利子率で25年長期ローンである民間セクター投融資(PSIF: Public Sector Investment Finance) を作り出した。こうした長期投融資の公的支援が必要 である。 (JICA 村田) 質問者:ペンシルバニヤ大学の学生 水質をどのように保証出来るか? →詳細に調査するつもりだが、スリランカの計画で緩速濾過装置を計画しているが、名古屋市 では何年もその装置を使っており問題を起こしていない。 ラポラトゥール(総括報告者): キャロライン・キング(Dr. Caroline King) / オックスフォード大学 z質疑では聴衆から、浄水には天然産物の使用、太陽光 発電システムの利用、提供される水の環境モニタリングの 必要性、また教育の重要性について問いかけがあり、パネ リストからは、製品の組み合わせの可能性を示唆するとと もに、水の衛生問題解決のための活動の組合せのオプシ ョンが提案された。こうした包括的BOP(手法)の適用が今 後一層追求されることになると思われる。 z今回の結論として、BOPビジネスモデルが手頃なコストで 改善された水供給により貧しい人々の必要を満たすことに 成功することができること、更にそれはビジネスのために顕 著な新市場を開き、利益を得ることが可能であることを裏 付けた。 閉会:K.E.シータラム(Dr. K.E. Seetharam) / シンガポール国立大学 客員教授 z水は飲料水や生活用水などに不可欠であり、これらは全 て水ビジネスに関係する。 zエネルギー資源の効率的な技術を多用し、未給水地域を 減らし、貧困を削減出来るよう、BOPビジネスモデルをさら に発展させ、2015年の韓国での第7回世界水フォーラムに 向けて、準備していく必要がある。