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ウェブ上のリソースを活用した英語授業

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ウェブ上のリソースを活用した英語授業
ウェブ上のリソースを活用した英語授業
熊本大学
大学教育機能開発総合研究センター
安浪誠祐
[email protected]
1.はじめに
スを検索した結果、本文と音声と動画がパブリッ
著者は勤務校において Self-Access 型教材を用い
ク・ドメインであるサイトを見出した。それが VOA
た CALL 授業を担当している。(1)1コマ90分間の
ニュースのサイトである。このサイトではトピック
CALL 授業で、オンライン教材学習と副教材を用い
別の話題に整理されていて、学生のニーズに合った
た学習を2対1の時間配分で行っている。昨年まで
教材選択が容易にできる。しかも、教材としてのト
は副教材として教科書とテープを使用していた。熊
ピックの分量も適当である。
本大学の平成14年度重点配分経費を獲得した結果、
医学部学生対象の CALL 授業の副教材ということ
昨年度末に導入することができた WebCT のテスト
で、学生が興味を持って学習に取り組めるようなト
機能を副教材として使用している。ウェブ上のリソ
ピックをノーマル英語の Health&Medicine の中か
ースとして存在している素材並びに教材加工ツール
ら最新のものを選び学習素材とすることとした。授
を活用して WebCT 上の副教材を作成している。本
業期間中に SARS が蔓延中であったため、取り上げ
稿では医学部学生対象の CALL 授業のための副教材
た話題は SARS 関連のものがほとんどであった。
について述べることとする。
2.2.Hot Potatoes http://web.uvic.ca/hrd/halfbaked/
2.ウェブ上のリソース
Hot Potatoes は教育目的であれば無料で使用で
ウェブ上には英語学習に利用できそうなリソース
きるツールである。このソフトは JavaScript を用い
が溢れているように考えられるが、実際にウェブ上
たもので、自作の練習問題をコンピュータ上で実行
の素材を教材に加工する場合には著作権という大き
させることができる。Hot Potatoes で作成できる問
な壁の存在に直面することとなる。
題は、JBC*(選択問題)
、JQuiz*(短文入力問題)
、
2.1.VOA ニュースサイト http//www.voanews.com/
JMix(整序問題)、JCross(クロスワード問題)、
副教材のオンライン化のためにウェブ上のリソー
JMatch*(語彙マッチング問題)
、JCloze*(穴埋め
問題)である。問題作成に必要な素材さえあれば、
単な操作で行うことができるようになっている。
Hot Potatoes の機能を用いて容易に作成できる。
今回の授業では、WebCT が持つ数多くの機能の
うちでテスト・アンケート機能とメール機能のみを
3.教材作成
3.1.Hot Potatoes
使用した。
3.1.の Hot Potatoes で作成した教材テキストファ
2.に示したウェブ上のリソースを用いて教材を作
イルを WebCT へインポートするだけで簡単にテス
成する過程で Hot Potatoes にもできないことがあ
トが生成されることになる。テストに関してはデザ
った。(2)PC のことが少しでも分かっている学生には
イナー(授業担当教官)モードで、配点、合計点、
ソース表示によって正解が見えてしまうため、これ
テスト制限時間、受験可能回数、受験間隔、受験有
を用いた厳密なテストを行うことはできない。自学
効期限、選択的公開、テスト時のセキュリティ対策、
のための練習問題程度でしか使用できないのである。
提出時メッセージ表示、得点通知、結果表示等の詳
学習成績をメールの形で送信する機能もあるが提出
細な設定や変更が簡単なキー操作だけで出来る。
されたデータの処理が面倒である。
そこで参考文献(2)に記載されている WebCT を使
用することにした。2.2.に示した Hot Potatoes で作
成できる問題で(*)を付したものには Export for
WebCT という機能があり、これを使用することに
よって WebCT のためのテキストファイルが生成さ
れるようになっている。勿論、WebCT のテスト作
成機能を用いても同様の作業はできることにはなっ
ているが、Hot Potatoes を使用することによって作
業時間が短縮できた。今回は JCloze を用いて、ウ
ェブ上から音声データを取り込み、リスニングによ
る穴埋め問題を作成した。更に、JMatch を使用し
て、語彙力確認のための問題作成を行った。
3.2.WebCT
WebCT とは e-learning プラットフォームの一つ
であり、ネットワーク上でコースの管理及び運営を
行うための WWW アプリケーションである。授業資
料を提示したり、テストを実施したり、カレンダー
や掲示板を作成したり、Web メールの設定などを簡
4.授業展開
4.2.デザイナーモード
CALL 授業は 1 コマ90分間であるが、そのうち
デザイナーモードとは授業担当教官用のものであ
最初の30分間を WebCT 上でのリスニング教材学
り、
「ページ・ツールの追加」
「ファイル管理」
「コー
習に充てている。
ス管理」
「設定変更」等ができる。このモードでは学
4.1.学習者モード
習者の学習状況や学習結果が把握できるようになっ
学習者は作成されたテストの Chapter を選択後、
ている。
Click here で RealOne を立ち上げ、流れてくる音声
を聴きながら穴埋め問題に取り組むことになる。音
声は2分30秒程度の長さのものを使用しているが、
穴埋め作業は30分程度で終了するように指導して
いる。
上に示しているのは「コース管理」の画面である。
この管理機能の中の「学生管理」を使用することに
よって、以下のようなテストの成績結果を授業中に
即座に集計できる。
ディクテーション活動の後に、「回答を保存」「答案
の提出」更に「採点してもらう」をクリックすると、
学習者画面に採点結果と正誤状況が示される。学習
者は CALL 授業中や授業時間外に何度でも繰り返し
復習することができる。
Chapter 毎に成績データのグラフ化も可能であるた
め、デザイナーモードでしか見ることができないグ
ラフをプロジェクタ画面に投影することによって、
学習者に提示して、各学習者のクラス内のおける成
績状況を確認させることも可能である。
クセスしか許可していないという現状であれば、学
生が24時間いつでも利用できる端末室を増やして
いく必要がある。また、WebCT を学外からも利用
可能にするにはそれ相当のファイアウォール等の設
定が必要であるが、これには全学的な対応が求めら
れる。
また、CALL 授業で使用する教室3室の PC 端末
はインターネットへのアクセスができないような設
定になっている。ウェブ上のリソースに直接アクセ
スできるようなことになれば WebCT 上で提供可能
な教材の幅も広がるものと考えられる。CALL 教室
PC 端末のインターネット接続可能な環境の整備も
今後の課題としている。
4.3.メール機能
Self-Access 型教材を用いた CALL 授業において
6.おわりに
は、教官がヘッドホンを付けている学習者に話しか
今回の教材は特に医学部学生対象の授業のための
けることや学習者が教官に質問すること等がやり難
ものであり、ESP 的な発想に基づいたものであった。
い雰囲気がある。オンライン教材を用いた授業の場
学習者の WebCT 教材に対する反応は主教材を凌ぐ
合、教官と学習者、学習者同士のコミュニケーショ
ものであった。学習者の観点から見た WebCT 教材
ン活動が希薄になってしまう。このような事態を幾
に関する分析及び研究に関しては別の機会に譲るこ
分かでも解消するために、WebCT 上のメール機能
ととする。
を利用できるように設定した。教官から学生に対す
る連絡や指示を伝えたり、学習者から教官への質問
(本研究は熊本大学平成14年度重点配分経費によ
を受け付けるようにした。この機能を使用すること
る「外国語教育における総合的基盤整備及びシステ
によって、学習者一人ひとりの学習状況に対する個
ム構築に関する研究-WebCT を用いた外国語学習
別的な指導を行うことができた。また、授業時間外
システム構築及びその効果的運用に関する研究」の
にも学習者にはメールを読めるということから、授
一部として行っているものである。)
業時間中に連絡を怠ったことも後でメールによって
伝えることができた。
参考文献
(1) 安浪誠祐(2002).「Self-Access 型教材を用いた CALL
5.ネットワーク環境
今回の CALL 授業で使用した WebCT では、学内
LAN に接続された PC 端末を利用すれば、授業受講
授業」『IT を利用した外国語教育の改善-2002 年
JALT 京都支部年次大会論文集-』JALT 京都支部・
同志社大学情報処理共同研究チーム, 19-24.
登録者が所属するコースにアクセスできる。CALL
(2) C:¥Program Files¥HotPotatoes55¥email.htm の
教室3室のほかに、学内 LAN 内で学生が使える PC
Can my students cheat?の項目に次のような記載あ
端末室が10教室程あるが、その利用時間帯が限ら
り。Very easily. This is not secure testing. If you
れている。午後5時40分以降に学生の所属に関係
need a secure testing solution, you need to look at
なく利用できる教室は2教室しかない。しかも午後
server-side
9時30分までの利用に限られている。Self-Access
QuestionMark and BlackBoard. That's not what
型教材や WebCT 教材が学内 LAN 内からのみのア
HotPot is for.
products
such
as
WebCT,
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