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電子情報通信学会ワードテンプレート (タイトル)

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電子情報通信学会ワードテンプレート (タイトル)
情報基礎教育
入口紀男† 右田雅裕† 中野裕司§ 喜多敏博§ 杉谷賢一※ 武蔵泰雄※ 松葉龍一※
熊本大学総合情報基盤センター
†メディア情報処理研究部門 §計算機援用教育研究部門 ※ネットコミュニケーション研究部門
要約
本学では、「学習と社会に扉を開く全学共通情報基礎教育」として、どの学部、どの学科を卒業しても一定のレベルの情報技術
の習得を保証する情報教育を実施している。1800 名に上る学生のために最新の e-Learning 技術を交えて実施する同一内容の授業演
習は、全国でも例を見ない規模である。このプログラムは、昨年度の学務情報システム(SOSEKI)に引き続き、文部科学省の事業である
「特色ある大学教育支援プログラム(特色 GP)」として 2 年連続で採択された。その内容を紹介する。
Basic Course of Information Technologies A & B
N. Iriguchi, M. Migita, H. Nakano, T. Kita, K. Sugitani, Y. Musashi, R. Matsuba
Kumamoto University the Center for Multimedia and Information Technologies
Abstract In Kumamoto University, all 1,800 freshmen are provided throughout a year with basic courses of information
technologies as required subjects of all faculties. All materials are accessed online with the most advanced e-Learning systems.
The educational program is so marvelous and the extensive scale is very rare in the country. The program has been accredited
for GP (Good Practice) in 2004 by the Japan University Accreditation Association (JUAA) of the Ministry of Education,
Culture, Sports, science & Technology following the GP accreditation for the educational course management system
(SOSEKI) of 2003.
1. 背 景
熊本大学では、どの学部を卒業しても一定レベルの
情報技術の習得を保証する情報基礎教育を実施してい
る 。そ の 目 的 を 実 現 す る た め 、2002 年 度 か ら 同 一 内 容
の 情 報 基 礎 講 義「 情 報 基 礎 A」お よ び「 情 報 基 礎 B」を
全 学 部 必 修 と し 、 1 年 生 全 員 約 1,800 人 に 対 し て 行 っ
て い る [1]。2003 年 度 よ り Learning Management System
(LMS) を 導 入 し て Blended Learning 形 式 の 講 義 を 行 っ
て い る [2, 3]。 こ の 取 組 に つ い て も 、 2004 年 度 文 部 科
学 省 の 事 業 で あ る「 特 色 あ る 大 学 教 育 支 援 プ ロ グ ラ ム 」
(特 色 GP) に お い て「 学 習 と 社 会 に 扉 を 開 く 全 学 共 通 情
報 基 礎 教 育 」と し て 採 択 さ れ た [4]。こ の GPへ の 採 択 は 、
全 学 的 に は 2003年 度 の 学 務 情 報 シ ス テ ム (SOSEKI)の
採 択 に 続 い て 2年 連 続 で あ る 。
授 業 風 景 (総 合 情 報 基 盤 セ ン タ ー 実 習 室 I)
2. 特 色 あ る 大 学 教 育 支 援 プ ロ グ ラ ム (特 色 GP)
な ど に 取 組 ん で お り 、全 体 と し て 整 合 性 が 取 れ て い る 。
への採択
情報教育に限定されない普遍的な教育内容として、他
特 色 GPの 申 請 要 約 は 以 下 の も の で あ る 。
の大学、短大の参考になり得る優れた取組であるとい
大学における教育研究活動のためのみならず、大学
える。更に、今後、倫理的判断力やセキュリティ意識
卒業後のネットワーク社会において自由闊達に活躍す
といった人間形成面に係わる教育内容への充実を図り、
るためには、情報基礎分野における基礎的な知識と技
また中等教育との連携を強めることにより、更なる発
能が不可欠であり、これらは現代社会における「基本
展 が 期 待 で き る と し て い る 。 (以 上 採 択 理 由 )
ライセンス」とも言える。このライセンスを取得する
ためには、基本的な利用技術に加え、ネットワークを
利用する上で不可欠な法的規制に関する知識、ウィル
3. シ ラ バ ス
情 報 基 礎 A及 び 情 報 基 礎 Bの シ ラ バ ス は 以 下 の も の
スなどセキュリティに関連する各種事態への対応方法
である。
を総合的に学習する必要がある。本取組では、全学的
(1)情 報 基 礎 A
な支援のもと、全学必修科目として情報リテラシー教
科 目 分 類 共 通 基 礎 科 目 開 講 年 次 1年
育に取り組んでいる。さらに教育内容に関して高等教
時 間 割 コ ー ド (別 表 省 略 ) 学 期 前 期
育機関として十分に高い教育水準を設定した上で、こ
授 業 科 目 情 報 基 礎 A 曜 日 ・ 時 限 (別 表 省 略 )
の水準に受講者が到達できるよう教育するための組織
講義題目情報リテラシー
的教育実践を行っている。特に、一般的な教科とは異
担 当 教 官 (別 表 省 略 ) 単 位 1
なり、大学の設定した水準に、単位習得者全てを到達
授業形態: インターネット環境下のコンピュータを利
させるための工夫は非常に特徴的であり、本取組の目
用した実習
必修
標である「基本ライセンスの取得」という位置付けと
授 業 目 標 こ の 授 業 が 関 わ る 21世 紀 目 標 : H
の対応からも重要である。
授業の到達目標: ネットワーク社会で生きて行くため
(GP発 表 風 景 ・ 京 都 会 場 H16.11.24)
の情報の収集・作成の基礎を修得する。
授業内容
1. ロ グ イ ン と Windowsの 基 本 操 作
2. SOSEKIに よ る 履 修 登 録
3. 情 報 倫 理 (1)(コ ン ピ ュ ー タ ウ イ ル ス 等 )
4. 電 子 メ ー ル (1)(Seemit で 学 ぶ 電 子 メ ー ル の 基 礎 )
5. エ ラ ー へ の 対 処 , 文 字 コ ー ド と 文 字 化 け
6. ワ ー ド プ ロ セ ッ サ (1) (フ ォ ン ト と レ イ ア ウ ト )
7. ペ イ ン ト (イ メ ー ジ 画 像 の 作 成 と 編 集 )
8. 情 報 倫 理 (2)(知 的 所 有 権 , ル ー ル 等 )
9. ス プ レ ッ ド シ ー ト (1)(数 値 ・ 式 の 入 力 )
10. ス プ レ ッ ド シ ー ト (2)(作 表 と 関 数 )
11. ド ロ ー (作 図 , ギ ャ ラ リ 利 用 ・ グ ル ー プ 化 )
12. 情 報 検 索 (検 索 エ ン ジ ン ・ 文 献 検 索 )
13. ワ ー ド プ ロ セ ッ サ (2)
これに対して採択理由は以下のものである。
(ア プ リ ケ ー シ ョ ン 間 の デ ー タ 相 互 利 用 )
この取組は熊本大学総合情報基盤センターにより、
14. プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン (要 点 を 得 た ス ラ イ ド )
既に7年間にわたって組織的に展開されており、着実
15. 情 報 倫 理 (3)(SPAM・ 不 正 ア ク セ ス 等 )
な成果を上げている。情報分野における基礎的な知識
キーワード:
と技能は、現代社会における「基本ライセンス」であ
Web, オ フ ィ ス ス イ ー ト , 情 報 倫 理 , セ キ ュ リ テ ィ ,
る と の 認 識 に 立 ち 、 1 年 次 の 全 学 生 1,800 名 に 対 し て
情報検索
十分な実習環境を提供するとともに、周到に計画され
テキスト: 独自に作成したオンラインのテキストや資
た情報リテラシー教育を実践している。センターが開
料を用いる。必要な時は別途指示する。
発したオンライン学習システムを利用して、学生たち
情 報 教 育 ペ ー ジ : http://www.el.kumamoto-u.ac.jp/
は学習達成度を自己確認し、かつ満足のいくレベルま
評価方法: 出席状況・随時の小試験・随時の小レポー
で高めている。専門教科集団は、講義テキストと電子
ト類の3つをもとに,総合的に評価する。
教材の作成と更新、教育内容の検討、評価基準の統一
(2)情 報 基 礎 B
SOSEKI, コ ン ピ ュ ー タ , 電 子 メ ー ル ,
科目分類共通基礎科目開講年次1 年
時 間 割 コ ー ド (別 表 省 略 ) 学 期 後 期
授 業 科 目 情 報 基 礎 B 曜 日 ・ 時 限 (別 表 省 略 )
講義題目情報リテラシー 必修
担 当 教 官 (別 表 省 略 ) 単 位 1
授業形態: インターネット環境下のコンピュータを利
用した実習
授 業 目 標 こ の 授 業 が 関 わ る 21 世 紀 目 標 : H
この授業の到達目標: ネットワーク社会で生きて行く
ための情報の加工・発信の基礎を修得する。
授業内容
1. エ デ ィ タ の 使 用 法 と フ ォ ル ダ
2. HTML(1)(HTML フ ァ イ ル の 作 成 と 閲 覧 )
3. HTML(2)(基 本 構 造 , 文 字 飾 り , 箇 条 書 )
4. HTML(3)(リ ン ク , 画 像 , ア ニ メ ー シ ョ ン GIF)
5. HTML(4)(表 , フ レ ー ム , メ タ 情 報 )
6. HTML(5)(構 文 チ ェ ッ ク , ス タ イ ル シ ー ト )
7. FTP に よ る ア ッ プ ロ ー ド
StarSuite7の表 計 算 ソフトを用 いて作 成 した学 生 のグラフ例
8. 電 子 メ ー ル の し く み (SMTP の 内 容 , ヘ ッ ダ 改 竄 )
9. ネ ッ ト ワ ー ク 社 会 で の 法 的 責 任 (裁 判 事 例 と 考 察 )
10. イ ン タ ラ ク テ ィ ブ な ペ ー ジ (1)
11. イ ン タ ラ ク テ ィ ブ な ペ ー ジ (2)
12. ツ ー ル に よ る HTML フ ァ イ ル 編 集
13. Web サ ー バ の 仕 組 み (1)(サ ー バ と ク ラ イ ア ン ト )
14. Web サ ー バ の 仕 組 み (2)(ロ グ )
15. Web サ ー バ の 仕 組 み (3)(応 用 事 例 )
キ ー ワ ー ド : コ ン ピ ュ ー タ ,OS,電 子 メ ー ル ,Web サ
ー バ , HTML, ネ ッ ト ワ ー ク , セ キ ュ リ テ ィ , 法 的 責
任
テキスト: 独自に作成したオンラインのテキストや資
料を用いる。必要な時は別途指示する。
情 報 教 育 ペ ー ジ : http://www.el.kumamoto-u.ac.jp/
評価方法: 出席状況・随時の小試験・随時の小レポー
StarSuite7のワープロソフトを用 いて作 成 した学 生 の文 書 例
ト類の3つをもとに,総合的に評価する。
(動 画 付 き)
履 修 上 の 指 導 等 :「 情 報 基 礎 A 」「 情 報 基 礎 B 」は ,熊
「 情 報 基 礎 B」に よ っ て 、全 学 生 は 全 学 生 は Webペ ー
本大学の学生生活を送る上で必要不可欠なネットワー
ジの作成とアップロードが出来るようになる。アニメ
ク及びコンピュータ利用の基礎を修得するものである
ー シ ョ ン GIFや 音 源 、 ビ デ オ の 埋 め 込 み 、 ス タ イ ル シ
ことを十分に理解して受講されたい。
ー ト JavaScriptを 用 い た イ ン タ ラ ク テ ィ ブ な ペ ー ジ 等 、
シラバスは以上である。
個性的な見栄えの良い作品を全学生が作成する。
「 情 報 基 礎 A」 に よ っ て 、 ワ ー ド プ ロ セ ッ サ 、 表 計
算、プレゼンテーション、ペイント、ドロー系ソフト
4. 学 習 内 容 の 予 告 と 明 示
の使用方法を修得し、インターネットに関しては電子
シ ラ バ ス に よ っ て 、 学 生 は 学 習 す る 内 容 (What)を 理
メ ー ル と Webブ ラ ウ ザ が 、 情 報 倫 理 の 学 習 を ふ ま え て
解できるが、熊本大学の情報基礎では、これに加えて
使用できるようになる。
情 報 基 礎 で は 何 月 何 日 に (When)ど の よ う に (How)学 習
するかが期間の最初に予告される。
これによって学生およびティーチングアシスタント
(TA)お よ び 各 イ ン ス ト ラ ク タ は 、 学 期 間 の 計 画 を 立 て
て学習と指導に望むことが出来る。
メールソフトで、初心者にやさしい機能や、メール送
受信の仕組みを学習する機能などをもっており情報教
育用に非常に優れている。他の大学等でも使用が始め
れている。
5. 完 全 に 透 明 な 成 績 評 価 基 準 の 予 告
熊本大学の情報基礎では、成績評価の完全な透明性
を提供するため、成績基準を学期の最初に完全に公表
している。
• 合 計 点 (100 %)= 出 席 (28%)+ 確 認 テ ス ト (36%)+
作 品 課 題 (28%)+ WebClass 修 了 テ ス ト (8%)
• 60 点 以 上 で 合 格 。 た だ し 、 3 分 の 2 以 上 出 席 し 、
作 品 課 題 を 提 出 し 、 か つ WebClass 情 報 倫 理 修 了 テ ス
ト を 各 90 点 以 上 取 得 す る こ と が 必 須 。
Seemit情 報 教 育 用 Emailソ フ ト
最終評価は、この公表された基準の通りに行われる。
最終評価者による調整評価の入り込む余地は 1 点もな
8. オ ン ラ イ ン 繰 り 返 し テ ス ト
い。すべてコンピュータによって学生が取得した点数
全 て の 回 の 講 義 は 、 PC 教 室 で 実 習 を 伴 う 形 式 で 実
がそのまま表計算される。このことは、学生が自らの
施されている。各々の回に修得すべき内容の達成レベ
学 期 末 に 取 得 す べ き 成 績 を 学 期 初 に デ ザ イ ン し 、(教 育
ルを確認し、未修得な部分を補うために、一定期間に
で は な く )学 習 と し て 自 ら 設 計 で き る こ と を 意 味 し て
何度でも受験可能なオンラインテストが用意されてい
おり、教育評価の透明性を完全なかつ公平な形で確保
る 。 教 材 コ ン テ ン ツ に は 、 大 学 構 内 で は 900 台 を 超 え
している。
る ネ ッ ト ワ ー ク 端 末 を 用 い て 、 ま た は 全 学 無 線 LAN
を用いて、または自宅からでも常時アクセス可能であ
6. Englishによるテスト問 題 等 の提 供
熊本大学には相当数の留学生が存在する。留学生に
る。
一定期間に何度でも受験可能なオンラインテスト
は一定期間の日本語教育が行われるが、情報基礎教育
は 、情 報 基 礎 教 育 に お い て 、講 義 お よ び 実 習 を 補 間 し 、
では更に留学生等への公平を図るため学習の指針と確
学習者の一定の到達レベルを担保することに効果を発
認 テ ス ト を English で も 提 供 し て い る 。
揮する。
テストの問題は、設問と選択肢の順番が毎回ランダ
ムで、毎回同じ問題が提供される形式のものである。
テ ス ト 期 間 (1∼ 2週 間 )等 か ら 考 え て 、 友 達 に 正 解 を 聞
く こ と も 可 能 で あ る が 、ラ ン ダ ム 順 を 用 い て い る た め 、
正解を言葉で判っている友達から聞く必要があり、こ
のことが、ある程度の抑止力になっていると同時に相
互競争と相互教育の機会を作り出している。
下 図 は 確 認 テ ス ト に お け る 成 績 推 移 を 表 し 、 平 成 16年 度
GP申 請 時 に 報 告 さ れ た 例 で あ る 。
7. 熊 本 大 学 Emailソ フ ト Seemitの 活 用
Seemit は 、本 学 の 総 合 情 報 基 盤 セ ン タ ー で 開 発 し た
メールソフトである。情報教育用に特化した初めての
「サロン・ドゥ・ホテル・ジャンキーズ」を設営。
・ 松 野 衣 代 ほ か 10 名 は 、 同 BBS を 閲 覧 し 、「 に
ゃ ご 」、「 ど き ん 」、「 kuma」、 等 の 筆 名 で 、海 外 等 で 知
り 得 た ホ テ ル に 関 す る 情 報 を 計 52 回 書 き 込 ん だ 。
・(株 )光 文 社 と (株 )森 拓 之 事 務 所 は 、同 書 き 込 み 内 容
を 松 野 志 保 ほ か 書 き 込 み 者 に 無 断 で 光 文 社 (知 恵 の 森
文 庫 )「 世 界 極 上 ホ テ ル 術 」 に 掲 載 し た 。 著 者 村 瀬 千
文 (森 拓 之 事 務 所 取 締 役 )。
(原 告 )松 野 衣 代 ほ か 10 名 の 申 し 立 て
・被 告 (株 )光 文 社 と (株 )森 拓 之 事 務 所 等 は 、松 野 衣 代
ほ か 10 名 の 著 作 権 を 侵 害 し た 。
・被告は、知恵の森文庫「世界極上ホテル術」の出
版を停止し、 印刷用原板等を破棄せよ。
・「 故 意 ま た は 過 失 に よ り て 他 人 の 権 利 を 侵 害 し た
9. 著 作 権 侵 害 訴 訟 等 の 臨 場 感 を 体 験 さ せ る
情 報 基 礎 教 育 で は 、 新 入 生 1,800 名 全 員 に 情 報 倫 理 を
る者はこれによりて生じたる損害を賠償する責めに任
ず 。」(民 法 709 条 )よ っ て 、 被 告 は 損 害 賠 償 金 (著 作 権
訴訟社会における生存の技術として教えている。具体
使 用 料 等 )と 裁 判 費 用 を 支 払 え 。
的には、著作権侵害訴訟や損害賠償請求事件等の臨場
(被 告 )光 文 社 と 森 拓 之 事 務 所 等 の 申 し 立 て
感を教えている。その目的は、違法の境界がどこにあ
・著 作 と は「 思 想 又 は 感 情 を 創 作 的 に 表 現 し た も の 」
るかを知った上で将来適法な著作活動が自由にできる
(著 作 権 法 第 2 条 )で あ る 。 と こ ろ で 、 掲 示 板 に 書 き 込
ようにすることにある。
まれた内容は単なる事実の記載であって「思想又は感
地裁や高裁における著作権侵害訴訟判例等を教材
と し て 教 え て い る 。(「 判 決 文 全 文 」に つ い て は , 情 報
基礎が専門科目でないので特に興味がない限り読む必
情を創作的に表現したもの」ではないから著作ではな
い。したがって著作権の侵害などしていない。
・ ウ ェ ブ ペ ー ジ の 掲 示 板 上 で 「 に ゃ ご 」、「 ど き ん 」
等の筆名は匿名と同じであるから、著作者としての主
要はないとしている。)
転載禁止であっても引用によって適法となる場合
体が無いので権利は発生していない。
や、出所出典を明示しても違法となる場合等を具体的
・民 法 1 条 に「 権 利 の 濫 用 は 之 を 許 さ ず 。」と あ る 。
に 教 え て い る 。テ ス ト 問 題 に も 、例 え ば 平 成 14 年 度 東
ところで、掲示板を無料で閲覧して情報を得ておきな
京地裁等における訴訟結果等が出題される。
がら一方で自分の記述については著作権があるという
教 材 例 「 世 界 極 上 ホ テ ル 術 事 件 」 2001 年 6 月 [5][6]
のは権利の濫用である。
・出版停止も損害賠償もしない。裁判費用は原告が
支払え。
【 演 習 1】 下 記 (図 2)の
事 件 (世 界 極 上 ホ テ ル 術
以上を検討して, あなたの結論はいかがでしたか?
判決 (クリック)
【裁判所による判断】
事件)
について, 原告と被告
1.事 実 を 素 材 に し て は い る が 、 筆 者 の 意 見 、 感 想 、
のそれぞれの申し立てを
知識を自由な口語体で書き込んでいるから著作物であ
吟味し, いずれが正しい
る。
と思われるか, 自ら検討
して結論を出しなさい。
2.著 作 権 の 発 生 は 無 方 式 で よ い( 著 作 権 法 第 1 7 条 )。
し た が っ て 、 匿 名 で も 「 に ゃ ご 」、「 ど き ん 」 で も 著 作
権は成立する。
3.(株 )光 文 社 と (株 )森 拓 之 事 務 所 は「 世 界 極 上 ホ テ ル
術」の出版を停止し、印刷用原板等を破棄せよ。
事件の概要
4.(株 )光 文 社 と (株 )森 拓 之 事 務 所 等 は 、松 野 衣 代 ほ か
・ (株 )光 文 社 は , 大 手 出 版 社 で あ る .
・(株 )森 拓 之 事 務 所 は , 旅 行 愛 好 者 会 員 ク ラ ブ を 運 営 。
http://www.hotel-junkies.co.jp/ 上 で 電 子 掲 示 板
BBS
10 名 に 損 害 賠 償 金 総 額 ¥1,139,100 と 裁 判 費 用 を 支 払
え.
平 成 14 年 4 月 15 日
東京地方裁判所(裁判長裁判官飯村敏明)
判 決 文 全 文( 最 高 裁 デ ー タ ベ ー ス へ )( ク リ ッ ク )[7]
確認テスト問題例
(熊本大学では、情報基礎の全テスト問題は留学生等
へ の 公 平 を は か る た め 同 一 問 題 が English で も 出 題 さ
れ る 。)
【 問 題 例 】 (10 点 )
私生活をみだりに公開されない権利および法的保
障を 「プライバシー」 という。次のうちプライバシ
ーの侵害に当たる行為は一つしかない。それを選びな
さ い 。(正 解 は 平 成 13 年 12 月 3 日 東 京 地 裁 判 決 、平 成
14 年 12 月 16 日 東 京 地 裁 判 決 、平 成 11 年 6 月 23 日 神
戸地裁判決による。)
a. 社 内 の ネ ッ ト ワ ー ク を 中 傷 メ ー ル が 流 れ た 。会 社
は、社員に無断でその日の私的なメールを含む全社員
のメールを点検した。
b. 市 が 公 開 し て い る ウ ェ ブ ペ ー ジ に 無 断 で リ ン ク
を張ってウェブページを公開した。
c. 職 業 別 電 話 帳 に 既 に 公 開 さ れ て い る 住 所 氏 名 電
話 番 号 を 無 断 で 電 子 掲 示 板 (BBS)に 書 き 込 ん だ 。
d. 社 内 ネ ッ ト ワ ー ク を 用 い て 送 受 信 し た 部 下 の 私
的なメールを上司が勝手に読んだ。
(以 上 確 認 テ ス ト 問 題 例 )
学生は, 著作権侵害訴訟等の臨場感を学ぶことによ
って、情報倫理を守らないことがどのように割に合わ
ないかを知り、その結果情報倫理をネットワーク社会
における直接の生存手段としてとらえるようになった。
これは, 倫理を守ることが、実は生存のための損得の
選択であることを認識することにほかならない。学生
は、自らのウェブページ作品課題等についても裁判に
おける臨場感の中でその違法性と適法性を判断できる
よ う に な っ た 。WebCT を 用 い た テ ス ト で 全 1,800 名 中
1,500 名 以 上 が 一 定 期 間 内 に 100 点 を 取 得 し た 。 全
1,800 名 中 の 98%が 個 性 的 な ウ ェ ブ ペ ー ジ を ア ッ プ ロ
ードしたが, その中から軽微な著作権侵害等は一掃さ
れた。学生は, 違法の境界がどこにあるかを知った上
で適法な引用が出来るようになった。
10. オ ン ラ イ ン 教 材 の 博 物 館 化 ( 授 業 か ら 学 習 へ
の転換)
2004年 度 は 樋 口 一 葉 の 新 札 が 発 行 さ れ た 。 教 材 も こ
れに合わせて作成した。更に、ラフカディオ・ハーン
の 没 後 100周 年 等 を 考 慮 し て ス タ イ ル シ ー ト 教 材 と し
て下記を作成し、学生が興味をもてるようにした。
情報基礎教育を「授業」から「学習」へ転換させる
ため、更に著作権のない古典絵画や古典音楽ファイル
を自由にダウンロードできるようにして、オンライン
教材を博物館化した。
このことは、良い意味で学生間に自由競争を生み出す
結果となった。
11. プ ロ グ ラ ム 教 育 か ら マ ル チ メ デ ィ ア 表 現 教 育
へ転換
プログラム教育からマルチメディア表現教育への
転換を図った。従来行われたプログラミング演習は、
理系の(または中には文系の)一部の学生がよくはま
って努力できることは確認されたが、文系・理系共通
の近い将来の必要技術としての最大公約数を考慮した
ことと、情報基礎教育が全人格教養教育としての限ら
れた機会であることを考慮して、そのようにした。
(テキスト例)
・<img src="car.gif" alt="く る ま ">の car.gif は 、「 ア ニ メ ー シ
ョ ン GIF」 と い う フ ァ イ ル で あ る 。 ア ニ メ ー シ ョ ン GIF の
作り方は、次節で紹介します。
こ の 傾 向 は 作 品 課 題 ( Web ア ッ プ ロ ー ド ) に つ い て
・「 MIDI 」( Musical Instrument Digital Interface)と い う 音 楽
も同様で、友達の作品がリアルタイムに閲覧できるこ
フ ァ イ ル( .mid)や「 MPEG」( Motion Picture Experts Group)
とが非常に良い自由競争を生み出した。
と い う ビ デ オ フ ァ イ ル ( .mpg )、「 WMV 」( Windows Media
Video ) と い う ビ デ オ フ ァ イ ル ( .wmv ) を 埋 め 込 む に は
<embed src="○○"> と い う タ グ を 用 い る 。た だ し 、「 wmv」フ
ァ イ ル は Internet Explorer 用 で あ る 。
・autostart="true" と し て お け ば 、ブ ラ ウ ザ を 開 い た と き 演 奏
や 放 映 が 始 ま る 。逆 は "false"。ブ ラ ウ ザ に よ っ て は autoplay
が よ い の で 両 方 ( autostart と autoplay) 記 述 し て あ る 。
・ volume は %で 音 量 を 調 節 す る 。
・repeat="true" と し て お け ば 、演 奏 や 放 映 は 繰 り 返 す 。逆 は
"false"。ブ ラ ウ ザ に よ っ て は loop が よ い の で 両 方( repeat と
loop) 記 述 し て あ る 。
・ midi フ ァ イ ル ( .mid) の 演 奏 は hidden="true" と し て あ る
の で プ レ イ ヤ ー は 表 示 さ れ な い 。 た だ し 、 Netscape お よ び
Mozilla の 表 示 で は 、 hidden="true" で も "false" で も "true"
となるので注意を要する。
・ ビ デ オ フ ァ イ ル ( .mpg) の 表 示 は 、 プ レ イ ヤ ー の 縦 横 の
寸法をピクセル数または % で表示する。
12. WebCTで リ ア ル タ イ ム に 反 映 さ れ る 学 生 間 の
自由競争
学生は、確認テスト等を受験しながら自分の成績が
全体のどこに位置するかをリアルタイムで確認できる。
学 生 の Web ペ ー ジ 例 1
学 生 の Web ペ ー ジ 例 2
13. ま と め
学 生 の ア ン ケ ー ト 結 果 ( 詳 細 省 略 ) で も 、 1.積 極 的
に 勉 強 で き た か 、2.新 し い 知 識 や 技 術 を 習 得 で き た か 、
3.上 級 生 に な っ て 役 に 立 つ と 感 じ た か 、 4.ル ー ル ・ ネ
ッ ト の 危 険 性 等 を 理 解 で き た か 、 5.法 律 や 裁 判 に 関 す
る 知 識 が 必 要 と 感 じ た か 等 に つ い て 90%を こ え る 学 生
が 肯 定 的 に 回 答 し た 。 [8]
文
献
[1] 杉 谷・宇 佐 川・喜 多・中 野・松 葉・右 田・武 藏 ・
入口・辻・島本・木田・秋山: 「全学部学生に
統一的に行う情報基礎教育体制」, 情報処理教
育 研 究 集 会 論 文 集 , pp.251-252, (2003)
[2] 中 野 ・ 喜 多 ・ 杉 谷 ・ 松 葉 ・ 右 田 ・ 武 藏 ・ 入 口 ・
辻・島本・木田・秋山: 「複数教官による大規
模 同 一 内 容 講 義 に お け る WebCT の 利 用 」 , 第
1 回 WebCT 研 究 会 予 稿 集 , pp.1-5, (2003)
[3] 中 野 ・ 喜 多 ・ 杉 谷 ・ 松 葉 ・ 右 田 ・ 武 藏 ・ 入 口 ・
喜 屋 武 ・ 太 田 ・ 辻 ・ 島 本 ・ 木 田 ・ 秋 山 : 「 CMS
の大規模講義への利用から得られたものと今
後 の 方 向 性 の 検 討 」 , 第 2 回 WebCT ユ ー ザ カ
ン フ ァ レ ン ス 予 稿 集 , pp.3-8, (2004)
学 生 の Web ペ ー ジ 例 3
[4] 大 学 基 準 協 会 の Web ペ ー ジ
http://www.juaa.or.jp/
[5] 熊 本 大 学 全 学 部 新 入 生 必 修 科 目 情 報 基 礎 WebCT
オンライン教材「ネットワーク社会における法的責
任 」( 入 口 紀 男 2003-2004)
[6] 光 文 社 ( 知 恵 の 森 文 庫 )「 世 界 極 上 ホ テ ル 術 」
著者 村瀬千文とホテルジャンキーズクラブ
2001 年 6 月 発 行 Yahoo! ブ ッ ク ス シ ョ ッ ピ ン グ
http://shopping.yahoo.co.jp/books/
[7] H14. 4.15 東 京 地 裁 平 成 13(ワ )22066 著 作 権 民 事 訴
訟 事 件 平 成 13 年 (ワ )第 22066 号 著 作 権 侵 害 差 止 等 請
求 事 件 平 成 14 年 4 月 15 日 東 京 地 方 裁 判 所 判 例
[8] 熊 本 大 学 全 学 部 新 入 生 必 修 科 目 情 報 基 礎 WebCT
ア ン ケ ー ト 結 果 ( 2005 年 1 月 )
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