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展示解説書 - 野々捨型紙コレクション
愛荘町立歴史文化博物館 第7回企画展 - 野々捨型紙コレクション - 展示解説書 会期:平成 24 年6月2日~7月8日 型紙「寺社」 1.はじめに 愛荘町立歴史文化博物館 蔵 3.緯糸を染める 近江上布に描かれた美しい線や精緻な柄は、 たていと よこいと 近江上布では、緯糸に柄を染めるため「羽 染色された経糸と緯糸で表現されています。 根」と呼ばれる金枠が使用される。金枠に緯 特に昭和初期以降には、緯糸の染色に「羽根」 糸を巻きつける工程は「羽根巻」といわれ、 と呼ばれる金枠と型紙が使用され、多種多彩 これにより緯糸は面を成し、型紙による捺染 な図柄が見られるようになりました。和紙を が可能となる。近江上布の場合は、1つの羽 柿渋で貼り合わせた型紙には、高い技術をも 根に4本の緯糸を巻きつけるため、1反を織 つ型彫師による洗練された意匠が彫り込まれ り上げるのに羽根9枚が必要といわれるが、 ており、それらは近江上布の伝統を語るうえ 1つの羽根に3本の緯糸を巻きつけ、羽根 13 で欠かせないものとなっています。 枚で1反分の分量とする店もあった。 なっせん 今回の展覧会では、愛荘町教育委員会と愛 荘町文化協会が平成 22 年から2か年度にわ の の す て たり整理した「野々捨商店型紙」 (当館蔵)約 6,000 枚のうち 37 枚を展示するほか、同商店 かすり が所有していた昭和 14 年度の「 絣 見本帳」 (当館蔵)や川口織物有限会社(元持)の型 彫師が使用していた道具類を展示します。 2.型紙を彫る 川口織物では、商社などから依頼があると 羽根「御所車と雲」 近江上布伝統産業会館蔵 伝統工芸士が型紙図案を作成する。型紙図案 は和紙と柿渋を原料とする型紙地に写され、 図柄は小刀で彫り抜かれる。特に近江上布の 図柄は精緻なものが多く、型彫には高い技術 と忍耐力が必要とされる。 図柄を彫り終えた後、型紙自体の補強や図 柄がばらけるのを防ぐため、絹を粗めに織っ しゃ た紗を漆で裏打する。昭和 50 年代になると、 型紙の素材として不織布、紗には化学繊維が 用いられるようになったが、近年では裏面に 化繊網を張ったビニールシートを型紙として 絣見本帳 用いる例が増加している。 昭和 14 年度 愛荘町立歴史文化博物館蔵 -1- きつけ、型紙で染色することをいう。捺染は 4.近江上布の型紙 「羽根」の両面に行い、多色の柄を染める場 今回展示した型紙は、野々捨商店が昭和初 合は柄がずれないよう細心の注意を払う。 期から昭和 50 年頃にかけて使用したもので ながじゅばん ある。縦長の型紙は、長襦袢用の緯糸を染め るのに使用した。 野々捨商店は明治 18 年(1885)、南野々目 村(愛荘町南野々目)で創業し、平成 14 年 (2002)に廃業するまで麻布の製造を行って いた。創業者である野々村捨次郎(1867~1930) しまがすり は、縞 絣 などの柄物の制作に定評があった。 明治 28 年(1895)の第4回、明治 36 年(1903) の第5回内国勧業博覧会には、捨次郎の近江 「羽根」の上に、水を含ませて伸ばした型紙を置き、 糊を混ぜた粘性の染料を駒ベラで引いて捺染する。 麻布が出品され、有功三等を受賞している。 捨次郎の後を継いだ捨造(喜一、1900~1950) は、 「羽根巻」の考案者として知られる川口宇 蔵(長治郎、1896~1987)らとともに、型紙 を用いた羽根巻捺染の研究に携わる。その後、 あ か そ がすり 野々捨商店が製造する多色柄の赤苧 絣 は、業 界でも高い評価を受け、長きに渡り同商店の 主力商品として販売された。 羽根の裏面を捺染するため、蛍光灯の光で表面の柄 を透かし、型紙の位置を合わせる。野々捨商店では、 同一の型紙を裏返して使用する場合が多かった。 野々村捨次郎 野々村捨造(喜一) (1867~1930) (1900~1950) 5.型紙で染める 近江上布の伝統的な絣染技法には、櫛押捺 染と型紙捺染がある。型紙捺染とは、絣模様 両面の捺染が終わると、ローラーで羽根の左右側面 に「耳印」 (製織時に緯糸を合わせる目印)をつける。 をつける緯糸を「羽根」とよばれる金枠に巻 -2- 6.主な展示資料(型紙) 波紋 (昭和初期の流行柄) 壺 (昭和初期の流行柄) 花巴 (昭和初期の流行柄) 竹 (昭和初期の流行柄) 唐獅子 (昭和初期の流行柄) 山茶花 (昭和 30 年代の流行柄) 風車 (昭和 30 年代の流行柄) 花模様 (昭和 40 年代の流行柄) 蛇籠と花 (昭和 40 年代の流行柄) 正方形の矢 (昭和 40 年代の流行柄) 蝶々 (昭和 40 年代の流行柄) -3- 花 (昭和 50 年代の流行柄) 7.展示資料一覧 番号 名 称 型紙を作る 1 図案「紅葉」 2 型紙「紅葉」 3 型紙図案 4 小刀 5 型地紙 6 紗 7 ホットカッター 8 ビニール製型紙 9 駒ベラ 10 捺染台 11 羽根 12 ツキメ 緯糸を染める 13 型紙「御所車と雲」 14 羽根巻「御所車と雲」 15 絣見本帳 近江上布の型紙 16 蝶々花 17 足長三ツ巴 18 寺社 19 水面 20 歯車 21 竹に鶴 22 市松絨毯 23 包紙 24 荒波 25 扇 26 大輪の牡丹 27 蜘蛛の巣 28 波紋 29 壺 30 花巴 31 竹 32 唐獅子 33 山茶花 34 風車 35 花模様 36 蛇籠と花 37 正方形の矢 38 蝶々 39 花 40 菊 41 雪の結晶 42 水仙 43 花小紋 44 つぼみ 45 菖蒲 46 野の花 47 花渦 48 笹 49 風 型紙で染める 工程写真パネル 員数 1 1 1 2 1 1 1 2 1 1 1 2 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 所 有 者 備 考 愛荘町立歴史文化博物館 川口織物有限会社 愛荘町立歴史文化博物館 近江上布伝統産業会館 愛荘町立歴史文化博物館 昭和 14 年度 昭和初期の流行柄 愛荘町立歴史文化博物館 昭和 30 年代の流行柄 昭和 40 年代の流行柄 昭和 50 年代の流行柄 8 -4- 編集・発行:愛荘町立歴史文化博物館 発 行 日:平成 24 年(2012)6月2日