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情報教育におけるインターネット利用の配慮点について
情報教育におけるインターネット利用の配慮点について 小野龍智 (情報教育研究部) Ⅰ 校のそれぞれの教育課程に準じて目標が定められて おり、小学部の段階からコンピュータやインターネ ットに慣れ親しむことが求められている。現在のWe bの状況を見ると、単に有害情報があるにとどまら ず、特に問題のない掲示板に対しても不適切な内容 を書き込まれたり、更新されずに古い情報がそのま まになっているWebページがあったりする。自分が 今見ているWebページの内容の真贋を見極めること は難しいが、そのまま受け入れるのではなく他のペ ージと比較したり検証しようとする態度は養うこと ができる。また検索の結果有害なWebページが表示 されても、積極的には見ないという態度が望まれる。 また筆者がいた学校では、検索した結果のページに 教育上好ましくない画像がありパソコン上に表示さ れてしまったことがあったが、生徒には指導すると 同時に保護者にも状況を詳しく説明し、理解が得ら れたことがあった。今後は児童生徒に対する指導と 同時に、保護者にも積極的に説明を行い、理解を得 ていくことが必要ではないだろうか。 モラルの問題 特殊教育における情報教育の実践においては、We bを使った調べ学習や高等部を中心に就労に向けた 取り組みなどが行われている。文部科学省が出して いる「情報教育の実践と学校の情報化~新「情報教 育に関する手引」~」の中でも、第7章において、 「特別な支援を必要とする子どもたちへの情報化と 支援」という章を設けて実践事例を踏まえながら情 報教育の推進について述べている1)。 その一方で、インターネットを活用する上での課 題も多く残されている。その一つとして、モラルの 問題など、インターネットの持つ影の部分への対応 が挙げられる。インターネット上のモラル観は、一 般の生活におけるモラルと同様のものであるが、急 速にインターネットが普及してきたことや匿名性が 高いこともあり、まだネット上でのモラルが確立さ れているとは言えない状況にある。匿名性の高いイ ンターネットの社会では、違法・有害情報が多く存 在していたり、不正なアクセスやコンピュータ・ウ イルス、個人情報の流出や迷惑メールの問題があっ たりする 2)。今後は、教育上ふさわしくないWebペ ージは見ないようにするというだけではなく、これ らの問題について積極的に学習し、必要な知識を身 に付けたり態度を養うことが必要となる。 モラルの問題については、一般の生活の中で扱う モラル観と同様のものでもあり、インターネットだ から特別なものがあるわけではない。そのため学校 教育の最初の段階から学習を積み重ねていく必要が あるが、インターネットの世界は一般の学習場面と 比べて実感が得られにくく、実体験に基づいた指導 が難しいという点に注意する必要がある。特に知的 面や認知面に障害を持っている場合には般化が難し い側面もあり、実際の生活場面と結びつけたり、早 期からの段階を追った指導が必要となることが考え られる。 Ⅱ Ⅲ 技術で工夫できること 掲示板やメーリングリストを利用する場合には、 自分自身や友人の個人情報を書かないという約束事 の確認が徹底していないと、うっかり住所や電話番 号などを訊かれるままに書き込むことも考えられる。 そのため、単にWebページを閲覧するだけでなくコ ミュニケーション手段として活用する場合には、直 接インターネットを使う以外にも校内LAN上に設 置した掲示板を利用したり、イントラネット用のサ ーバソフトを利用したりすることも考える必要があ る。インターネットを利用する前段階として、校内 でネットワークを使ったコミュニケーションの練習 の場が必要であり、相手とのやりとりを練習したり 失敗を重ねながら学習したりすることが大切である。 失敗から学ぶという姿勢は大切であり効果も高いも のがあるが、インターネットでの失敗は大きな代償 を伴うことが多く、学校教育を行う上では許されな い状況にある。そのため、校内LANなど安全なネ ットワーク上でやりとりを続ける中でマナーやモラ Web上にある情報の選択 特殊教育諸学校の教育課程は小学校・中学校・高 79 文 ルに関する内容を取り上げ、理解を深めることが必 要であろう。 また、総合的な学習の時間が行われるようになっ たことで、特殊教育諸学校と一般の小学校・中学校 ・高校との交流教育がより盛んに行われるようにな ってきたが、その際にもインターネットが使われる ケースがでてきている。交流の事前の打ち合わせに メールやWebページを利用する等である。特にWeb の利用については、アクセス制限をかけていても侵 入される可能性がないとは言えない状況となってき ている。そのため、個人情報の掲載には注意を払う とともに、仮想プライベートネットワーク(Virtual Private Network;VPN)などの技術を取り入れ た事例がでてきている。ただVPN関係の機材はまだ 高価であり、設定もわかりやすいとは言えない。機 材を購入し使いこなせる環境があれば最もよいが、 アクセス制限もパスワードによっては強固にするこ とも可能であり、今後は教育活動の妨げや過重・負 担にならない程度に、教育効果との兼ね合いで考え ていく必要がある。またセキュリティに配慮すると 同時に、例え交流の相手校に知らせるにしてもデー タをインターネット上に置く必要性について、更に 深く検討する必要もあろう。 Ⅳ 献 1)文部科学省:初等中等教育における情報化につ いて http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/z youhou/020706.htm ,2002 2)文部科学省:新「情報教育に関する手引 p20-2 3,2002 今後の課題 以上、インターネットを利用する際のモラルを中 心に述べたが、今後益々インターネットを利用する 社会へと加速していくことが予想される。その中に は、ショッピングやサービス(飛行機やホテルの予 約など)にインターネットを利用する機会が増えて くる。これれらのサービスを利用する際には、すで にインターネットを使える者と使えない者では格差 が生じてきており(デジタルデバイド)、障害がある ことによって、より格差が広がることが懸念されて いる。しかしインターネット上のサービスを利用す る際には、詐称に気を付けたりクレジットカードの 利用状況を把握する必要があったりする。今後また 新しい問題が出てきたときに障害のある生徒が適切 に対処していくのは難しく、教師にとっても将来の 問題を予測して学習内容を決めることは難しいこと ではあるが、障害のある児童生徒がインターネット を使って自分で調べたり学習していく態度を身に付 けることは可能である。単に知識を教えるにとどま らず、新しい問題にも対処するための技能や態度を 育成することが、いま最も重要なことではないだろ うか。 80