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備前から世界へ先端高温複合材料発信を目指す
セラミックスのさらなる可能性を 高長所長は九州耐火煉瓦一筋に社 岡山備前地域は日本の耐火物の 三分の一を生産している耐火物関 岡山から発信し、高温複合材料の 長になり合併を経て今年4月1日 連企業の集積地である。この地に、 ﹁ 世 界 の 研 究 セ ン タ ー ﹂ を 目 指 し 付で研究所長に就任した。 耐火物産業支援を目的に岡山県に ているところにある。事業概要は よって1990 年設立されたのが、 ①研究開発〝耐火物の合成原料の 岡山セラミックスセンター︵略称 開発などをキーワードとして独自 OCC 、住所・備前市西片上14 の研究テーマに展開、②依頼測 06 ︲ ︶である。2013 年度 定・分析や受託研究・試験、普及 に一般財団法人に移行、岡山セラ 啓発・人材育成の大きく二つの柱 ミックス技術振興財団が運営して からなる。そこで、高長茂幸研究 いる。日本で唯一の耐火物・高温 所長に同センターの取り組みにつ セラミックスの研究を中心として、 いて訊いてみることにした。 産官学連携共同研究、依頼分析、 同センターは片上湾に面し、風 施設・機器開放、技術交流、人材 光明媚な地に立地する。近くには 育成、情報提供などに取り組んで 品川リフラクトリーズ、興亜耐火、 いる。 旧九州耐火煉瓦など耐火物メー カーの工場が多くある。ちなみに、 注目されるのは、耐火物関連産 業の飛躍を支援するだけでなく、 九州耐火煉瓦は2012年7 月黒 崎播磨と 吸収合併 した。1 916 年 7 月に電 力の鬼と 呼ばれた 松永安左 エ 門 に よって設 立された 名門耐火 物 煉 瓦 メーカー であった。 2 (’ 12 年度) (’ 12 年度) マグネシア技術最前線特集 192 600 300 0 8 マグネシア・ミュー 2013年Fall 耐火物販売金額 (単位:億円) 耐火物生産量 (単位:万 t) ) 合計 1,486 億円 ( ) ( 東北・関東 11 3 近畿 れんが:30.8 万 t 合計 不定形:64.9 万 t 95.7 万 t 196 不定形 近畿 れんが 9 6 東海 218 九州 東北・関東 14 239 東海 2 16 九州 584 岡山 15 17 岡山 40 20 0 特 集 「備前から世界へ先端高温複合材料発信を目指す」 一般財団法人岡山セラミックス技術振興財団 岡山セラミックスセンター 高長 茂幸研究所長 18 高長茂幸氏プロフィール 1947年生まれ 1972年3月 東北大学工学部応用化学科卒 同年 九州耐火煉瓦入社 1997年6月 取締役研究・技術統括部長 2001年6月 常務取締役研究・技術統括 2003年4月 代表取締役専務製造・技術・研究統括 2007年4月 代表取締役社長 2013年4月 岡山セラミックスセンター研究所長 世界の耐火物生産量と販売金額 備えている。 種類を超える測定・分析 ﹁耐火物関連の測定・分析及び 装置が揃う 周辺装置など一通りそろっていま 岡山セラミックスセンターには、 す。耐火物関連メーカー、商社や 走 査 電 子 顕 微鏡など各種の組織観 大学など幅広い分野で活用されて 察装置、蛍光X 線分析装置など成 います。昨年度の利用実績からみ 分 分 析 装 置 、材料試験機など常温 ると依頼測定・分析、受託研究、 特 性 測 定 装 置、熱間曲げ・熱伝導 機 器 / 施 設 利 用 を 合 わ せ て1 4 , 率 な ど 熱 間 特性測定装置、高温大 5 39 件になります。景気や季節 型 電 気 炉 ・ 通電加圧焼結装置など 変動に関係なく依頼はあり、測 各 種 電 気 炉 、手動式静水圧プレス 定・分析に携る技師はタイトな状 な ど 成 形 機 、粉砕加工機など 種 況が続いています。 ﹂ 類 を 超 え る 機器が設置され、あら 耐火物関連であれば全てを測 ゆ る 耐 火 物 研究開発や測定・分析 定・分析できるそうだが、﹁特定の に 対 応 し て いる。施設としてセミ 分野、例えば煩雑で効率の悪かっ ナー室、会議室、レンタルラボも た不定形耐火物の通気率測定は、 50 50 岡山セラミックスセンター 岡山セラミックスセンター概要 運営管理:一般財団法人岡山セラミックス技術財団 所在地:岡山県備前市西片上 1406-18 敷地面積:5,599㎡、鉄筋コンクリート2階建て 電 話:0869-64-0505(代表) FAX:0869-63-0227 URL http://occ.optic.or.jp 設立年月:平成2年3月 【設立目的】日本で唯一の耐火物に関する公的機関 であり、耐火物・高温セラミックスの研究を中心と して、産学官連携共同研究、依頼分析、施設・機器 開放、技術交流、人材育成、情報提供を行っている。 項 目 140,000 H24 施設 利用 (来訪850 メール974件 電話1,762件) 3,586件 利用者数 (来訪者850) 4,090人 利用金額(千円) 120,000 技術 相談 機器利用 受託試験研究 依頼測定分析 100,000 80,000 60,000 セミナー室利用件数(70人) 15件 会議室利用件数 (15人) 10件 20,000 レンタルラボ件数 (2人×20日) 51件 0 40,000 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 年度 依頼測定・分析 16,000 100 施設利用 2,000 50 12,000 10,000 1,000 8,000 6,000 機器利用/件 1,500 受託試験・研究/件 14,000 依頼測定・分析/件 受託試験・研究 60 機器利用 80 40 60 30 40 20 500 4,000 20 10 2,000 0 0 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 0 0 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H24年度 金額 (千円) H24年度 件数 (件) 測定分析 12,489 受託研究 42 機器/施設 2,008 施設利用/件 18,000 合 計 14,539 測定分析 52,983 受託研究 21,781 機器/施設 39,668 合 計 114,432 岡山セラミックスセンターの利用実績 (同センター資料より) 9 2013年Fall マグネシア・ミュー マグネシア技術最前線特集 見掛比重、かさ比重、吸水率、見掛気孔率、寸法 かさ比重、真密度(ガス法) 、ふるいわけ、粉化率 比表面積、粒度分布、細孔分布(ポロシメーター)、 通気率 電気炉焼成 高温大型電気炉、マッフル炉、高温カーボン炉、 乾燥試験 強度試験(曲げ強さ、圧縮強さ)、熱間曲げ強さ、 熱間圧縮試験、弾性率、ビッカース硬度 耐摩耗試験、スポーリング試験 10 マグネシア・ミュー 2013年Fall Al4 Si C4 10 耐 火 物 技 術 協会及び企業と共同で 取 り 組 み 、 装置を開発して評価技 術に貢献しています。﹂ です。アルミニウム、シリ 確かに金属酸化物耐火物は耐熱性 マグカーボン耐火物 コン、炭素の複合炭化物ですが興 もあり原料が得られやすいなど長 正 式 に は、 マ グ ネ シ ア・ カ ー 味深い特性がありまして耐火物を 所があります。しかし、国産と中 ボ ン 耐 火 物︵ Magnesia-Carbon 主に研究していますが耐火物以外 国産の海外品で価格だけで比較す ︶ 。焼結や電融マグネ refractories の用途も考えられます。 ﹂ ると競争力は残念ながらありませ シアと数∼数十mass % の黒鉛 を主原料とした耐火物。主に、鉄 ん。それだけに多量合成原料によ では、どのような特性があるの 鋼の転炉、電気炉、二次精錬炉な か。 る高品質耐火物によって日本独自 どに用いられる。 の新しい耐火物を開発することが ﹁マグカーボンなどのカーボン 含有耐火物はアルミニウムを酸化 国際的な競争に打ち勝つことに繋 マイクロ波︵ Microwave ︶ 防止剤として使っていますが、使 がります。 ﹂ 一般的には、波長1m 以下の電 はアルミニウム、 用中に炭化アルミニウムが生成し しかも、 波を指す。マイクロ波と物質の相 ケイ素、カーボンと資源的にも豊 てしまい、空気中の湿気にあうと 互作用により加熱する方法をマイ 富な元素であり、レアメタル、レ 膨潤し、その結果、レンガが崩壊 クロ波加熱と呼び、誘電加熱の一 アアースのような資源ナショナリ してしまいます。非常にリサイク 種。 ズム問題が生じないことも重要で ルしにくい材料です。ところが、 ある。 この複合炭化物を用いた耐火物は 合 の谷を埋め、あるいは橋を架ける ちなみに、複合炭化物 崩壊しません。このためリサイク 成 に は 無 酸 素 雰 囲 気 中 で 17 0 試みのひとつとして企業にも積極 ル、そして 0 ℃の高温で長時間加熱する必要 的に味利きをしてもらおう。関心 リユースで があり、これがコストアップの要 を持った企業にはサンプルを出し きる可能性 因であった。そこで同センターは ていく。そしてその企業が持って が高い。 ﹂ 企業と共同で 分間以下の短時間 いる生産技術や製造プロセスで実 複合炭化 で合成できる効率的な技術を開発 用化を目指してもらう。私共は生 物により、 したのである。 産設備を持っていません。実用化 耐火物の可 に繋げるにはサンプル作成が必要 能性も広が サンプル作成が必要不可欠 不可欠です。今後論文発表する場 るのである。 しかし、これまでは情報発信の 合はサンプル出荷できる段階まで ﹁これま 段階から進めていない傾向があっ 私共が取り組んでいく。いわば、 での耐火物 た。 センター側がユーザーに対して情 はマグカー 報発信を呼びかけていきます。実 ボンをはじ ﹁ こ れ ま で は 次 世 代 研 究 開 発 を 目的にしてきましたので実用化と 際、サンプルが欲しいという問い め金属元素 は乖離している面、言い換えれば 合わせがあります。 ﹂ 酸化物が主 g 程度のサンプル出荷 体でした。 〝 谷 〟 が あ り ま し た 。 そ こ で 、 そ 既に数百 物理特性 注目の新原料 機械的特性 最も力 独 自 の 研 究開発テーマで を 入 れ て い るのが新規合成原料の 研 究 開 発 で ある。 ﹁山口明良前所長︵現顧問、名 古屋工業大学名誉教授︶が5 年∼ 年 先 の 次 世代耐火物研究開発を 進 め て い か なければ存在意義がな く な る と し て添加物を含めた合成 原 料 研 究 に 取り組まれてこられま し た 。 こ れ からもメインテーマに し て 継 続 し ていきます。その中で も 最 も 力 を 入れているのが新原料 組織観察 走査電子顕微鏡 SEM-EDS(二次電子像、反射電 子像、定性分析、定量分析、元素マッピング) 光学顕微鏡、デジタルマイクロスコープ、蛍光顕 微鏡、レーザー顕微鏡 Al4 Si C4 熱的特性 熱重量示差熱分析 TG-DTA、示差走査熱量 DSC、 熱膨張 TMA、比熱、耐火度 熱伝導率(熱流法、熱線法、レーザーフラッシュ 法) 、荷重軟化点、荷重下膨張、クリープ Al4 Si C4 X 線回折 結晶相同定 蛍光 X 線分析(定量、半定量、フリー定量、オー ダー分析、LOI) 各種定量分析:固定炭素、F.C(フリーカーボン)、 T.C( ト ー タ ル カ ー ボ ン )、SiC+F.C、SiC、S、 Fe、Si(遊離けい素)、F(フッ素) 化学分析 10 依頼測定・分析 Al4 Si C4 出 来 る 体 制 になっている。 合的に安く量産するかが重要視さ る成分がどの程度発熱するかデー れます。製品提供の仕組みづくり タがありませんでした。漸く無機 ﹁これからの技術開発は、高機 能 だ け で な く原料、使い方からリ は上手いと思いますが、性能の高 物もデータが揃ってきたので新し サ イ ク ル 、 リユースなど環境性な さや品揃えの多さなどユーザーの い熱処理技術として実用化されま ど ト ー タ ル で先進性を持つことが 痒いところに手が届くような製品 した。例えばマグネシアでは60 求 め ら れ て います。そうした製品 作りは日本に一日の長あるのは間 0 ℃以上になると急に温度が上昇 で あ れ ば コ ストに対する捉え方が 違いありません。新日鐵住金さん しだすなど物質によって特性が違 変 わ っ て く るのではないでしょう やJ FE スチールさんが海外に進 います。カーボンも少量を分散す か。﹂ ると温度は上がりやすいのですが、 出する場合もまずは日本の耐火物 技術を使うと思います。トータル カーボン含有量が多くなると反射 マイクロ波利用の新熱処理 でとらえることで日本の鉄鋼メー して温度が上がりにくくなってし 技術 カーは品質の高い高級鉄鋼・鋼材 まいます。また、材料中の溶剤の 製品がつくれるのです。 ﹂ 影響などもわかってきました。そ こ の 他 、 同センターで実用化さ れ た 技 術 に は、マイクロ波を利用 れだけにデータが揃うことが重要 そして、耐火物開発の木目細か した耐火物組織の新熱処理技術 さが新たな鉄鋼工法を生み出す可 でした。﹂ ︵均一加熱や選択加熱が可能で省 能性を秘めているのである。 データを揃える測定・分析技術 エ ネ 対 策 効 果 も 高 い ︶、 耐 火 物 の ﹁転炉に使った耐火物を取鍋な が同センターにあるからこそでき 通 気 率 測 定 装置︵ガスの通り抜け どにカスケードリユースする利用 た技術である。 や す さ を 表 す通気率の評価技術の 法が出来れば耐火物に対する考え ﹁マグカーボン耐火物はグラ 高 度 化 ・ 効 率 化 ︶、 分 析 用 標 準 物 方も大きく変えることが出来ます。 ファイトを多量に使用して熱を逃 質 ︵ 蛍 光 物 質、炭素分析、硫黄分 そこにカーボンや窒素の金属化合 がすことでレンガが割れないなど 析の3 系統︶の世界に向けた情報 物を活用することによって総合的 性能を持たしています。これから 発 信 な ど が ある。 な性能をあげるという視点も生ま は低カーボンにしても性能を維持 れてくるといえます。﹂ させ、外に熱を逃がさないで省エ ﹁マイクロ波は電子レンジに使 わ れ て い る 技術ですが、レンガを 高長所長は耐火物と共に歩いて ネに繋げていくことが社会的ニー 乾燥させるのに1日かかったもの きたわけだが、立場はこの4月に ズに合ってくると思います。 ﹂ が3 ∼4時間で短縮化出来ます。 大きく変わった。これからの同セ 木目細かな日本の耐火物が ま た 、 こ れ までは外熱法ですから、 ンターの方向性については、 プロセスを変える 均 一 に 加 熱 できません。一方、マ ﹁山口前所長が常々言っておら 一方、世界の耐火物材料開発の イ ク ロ 波 は 中から熱するので可能 れたことを念頭に置き、5 年先、 状況は日本と違うのだろうか。 で す 。 こ の 技術は食品乾燥分野が 年先をにらみながら足元のこと ﹁欧米は鉄鋼企業の合理主義が 先 行 し ま し た。耐火物に使えるの をひとつずつ取り組んでいく。並 貫かれ、レンガの種類も少なく総 で は と い う 発想はありましたがあ 行してやらざるを得ません。私と 10 ︶ Graphite しては耐火物メーカーにいた経験 を活かし、トータルの耐火物とし ての評価を上げていくテーマを選 択していきたいと思っています。 そして一般財団法人になったとい うことは自立を目指していかなけ ればなりません。それだけに耐火 物業界の企業のみなさんにこのセ ンターをどんどん活用して頂ける 存在にしていきます。 ﹂ グラファイト︵ 石 墨、 あ る い は 黒 鉛。 特 徴 は 熱 に 強 く、 還 元 雰 囲 気 で あ れ ば 3 , 0 0 0 ℃ で も 使 用 可 能 で、 熱衝撃にも強く高温になるほど 強 度 が ま す。 ま た、 化 学 薬 品 に 対 す る 抵 抗 性 が 強 く、 酸・ ア ル カ リ 性 に 優 れ た 耐 食 性 を 示 す。 更 に、 電 気 お よ び 熱 の 良 電 体。 熱膨張率が小さいため高温での Cascade 寸 法 安 定 性 に 優 れ て い る。 軽 量 で潤滑の特性を持つ。 カ ス ケ ー ド リ ユ ー ス︵ ︶ reuse 資源やエネルギーを利用する と 品 質 が 下 が る が、 そ の 品 質 レ ベルに応じて何度も使うことを 示す。 2013年Fall マグネシア・ミュー 11