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進学校としてのキャリア教育の取組
平成25年度キャリア教育研修会実践発表資料 進学校としてのキャリア教育の取組 県立湯沢高等学校 進路指導主事 教諭 佐藤広幸 1 本校の教育方針と重点目標 教育方針 重点目標 ↓ 中期ビジョン(5カ年計画)での取組 1)社会性の育成と郷土愛の醸成 2)県や市町村、諸団体との連携強化 3)中学校と連携することでの全国レベルで活躍できる部活動の育成 4)国公立大学合格と医師の養成 2 キャリア教育の目標 ↓ 【本校のキャリア教育の目標】 ・勤労観、職業観を育成し、確実に進路実現ができるキャリア教育を推進する。 ・自己の能力や適性を見つめ、進路実現に向けて計画的に努力する態度を養う。 ・将来、湯沢雄勝地区を政治的経済的に活性化していくリーダーを育成する。 3 キャリア教育実践モデル校事業計画(年目)の取組 (1) 進路講演会 9月11日(水)13:30~14:30 会場:本校体育館 対象:全校生徒 講師:小説家 川上 健一 氏 (財団法人 一ツ橋文芸教育振興会講演) 【目的】 一つの道を極めることで世の中から高い評価を得ている方の講演を通じ、生徒 に10年後、20年後の長期的な進路や見通しを考えさせる機会を与える 生徒アンケートから: ・現在活躍している方でも私と同じ悩みを抱えていたと知り、勇気をもらった。 ・嫌いなことを嫌いと決めつけ、可能性のあるものを潰すより、もう少し頑張ってみよう と思った。(配付資料参照) (2) 東北大オープンキャンパスへの参加 7月30日(火)1、2年生の希望184名(1年129名 2年55名)が参加。引率7名。 【目的】 自分が希望する二つの学部、学科を見学させ、両者を比較検討させる。 なぜなら、自分が「これだ!」と思うものでも、実際に別のものに触れること で見直されることが多い。このようにして参加生徒の視野を広げさせ、進路選択 に役立たせるため。 (3) 看護医療技術系志望生徒へのインターンシップ ( )内は複数希望の生徒数 ・6月17、18日(学校祭の代休日) 平鹿総合病院 8名参加 看護科1名(+2名) 放射線科4名 臨床検査科3名(+2名) ・7月25、26、29日(夏季休業中) 雄勝中央病院 24名参加 看護科9名(+5名) 薬剤科5名 放射線科2名 臨床検査科3名(+1名) リハビリテーション科4名(+1名) 栄養科1名(+3名) 【目的】 医療系を志望する生徒へ実習体験をさせることで、目標達成への学習活動に 不可欠な高いモチベーションをもたせる。希望者には、例えば看護と理学療法 の複数コースを就業体験させ、広い視野を確保させる。 生徒の報告書(礼状)から: ・将来、患者とコミュニケーションをしっかりとるため、高校時代から様々な世代の方々 とコミュニケーションをとっておくとよいことを知った。実践していきたい。 ・この仕事に就きたいという意欲が倍増。今後の学校生活に一層励みたい。(多数回答) 4.校種間連携の取組として「高大連携アドバンスト講義(大学教員の出張講義)」 (1) 内容:今年で13回目となる本校の目玉行事。毎年9月中旬(今年は11日)に実施。 主に、国公立大学の先生方を20名程度お願いし、2、3年生には希望する先生方2人の 講義を聴講させることで進路学習に結び付ける学校全体の行事。 従来は、1年生には講義を選ばせることはせず、文系分野と理系分野の先生方から一人 ずつ計2回の講義を1年全員が体育館で聞くのがスタイル。それを、今年は1年生からも 希望をとり2、3年生と同様の講義を聞かせた。 (2) 従来通りからの見直し ①1年生からも聴講希望を ・2、3年生は自分が希望した大学の先生方の講義を聴講できたが、1年生からは希望 をとらず、文系分野、理系分野の話と大雑把なくくりで全員に同じ話を聞かせていた。 これは2、3年生と同じ話を聞かせても難しくて理解できないだろうという配慮から である。 ・昨年から希望者ではあるが、1年生も東北大学のオープンキャンパスに参加し、興味 関心がある学部を見学している事実がある。 ・1年生に、より専門分野の話を聞かせるのは不安であったが、逆に自ら学ぼうとする 機会を与えることにもなる。 上記内容が進路指導部会で検討され、今年は1年生から聴講希望をとり2、3年生と 同じ扱いをすることを職員会議に提案し実現に至った。 ・この効果は講義内容に関する講義後の質問数増加に現れた。1年生だけが積極的に質 問したとは思えないが、例年以上に上級生に刺激を与えたと考えられる。 ②事前に講義ノートを生徒へ配付:(スライド参照) ③本校のホームページや新聞等での地域への情報発信(スライド参照) (3) 今後の課題 ①本校OB教授のさらなる活用 生徒はOBだと格別な印象をもつ。したがって、来校いただく大学の先生方にはできれ ば本校OBが多く含まれるよう配慮しているが、今年は18人中2名にとどまった。創立70 周年行事に合わせ、同窓会名簿が更新されたことから、こうした情報を講師依頼の面に 積極的に活用していきたい。 ②希望講義の割り振りについて 第5、6希望での聴講となった生徒もいる。生徒アンケート結果をしっかり分析し、 生徒の興味関心がある講義分野や内容を早く知り、聴講希望者の人数把握に努め、より 多くの生徒にとって希望する講義が聴講できるよう配慮したい。 ③他行事との関連性のさらなる意識化 今回は、1年生に2、3年生と同じように希望する講義を受けさせた。ほんの少しの ことでも伝統行事では、「例年と変える」ことは大きなエネルギーを必要とする。今回 の決定は、アドバンスト講義を単なる一つの行事としてではなく、事前の東北大学オー プンキャンパスや事後の大学見学と関連付けて実施するいう長期的な視野に立っての選 択であった。 各行事の関連性を考え、従来までの中身を見直したことは、本校のキャリア教育の目 標に即したもので、実践例に一貫性をもたせることにつながった。今後、キャリア教育 を実践していく上で考慮していかなければならない、ぶれない軸を教職員間で共有する ことができた。 5.地域間連携の取組として「看護医療技術系志望生徒へのインターンシップ」 (1) 希望者への複数コース制2年目の見直し 2年目の今年は希望生徒に複数コースを選択させ、2種類の医療分野を体験させた。 延べ参加生徒数は46名であった。(スライド参照) この後、1年生の聴講希望者に向けての報告会を予定している。その際に複数コースを 選択した生徒がどんな感想を述べるかに期待したい。 なお、インターンシップ実施1年目の昨年は、3年生の体験者3名すべてが進学し、看 護の道へと進んでいる。昨年経験した今年の3年生もほとんど医療技術・看護系を志望し ており、今後の結果が楽しみである。 (2) 今後の課題 ①受け入れ体制の調整作業 今年はキャリアアドバイザーが本校2年目であり、結果として4月からの受け入れ先 との交渉が順調であった。こうした状況下でなければ前述①の希望者への複数コース制 を実現するのは難しかったと感じている。 ②本校OB、OGの期待: 両病院とも本校のOB、OGが勤務しており、忙しい中でも丁寧なインターンシップへの 協力を得ることができている。地域医療を支える人材が母校の生徒から現れて、少しで も現場の人手不足解消につながって欲しいとする熱意を感じる。こうした熱い思いがあ るからこそ、前述①の複数コース制の受け入れを可能としているのではないか。 6 終わりに これまでは進路指導関係の行事一つ一つが、どの分野と関連し組まれているかを考えるの は進路指導部の全体計画を立案する人だけであった。しかし、キャリア教育実践モデル校に 指定され、本校のキャリア教育の目標を意識したり、行事のつながりや結び付きを意識した りするようになってきたことで、少しずつではあるが「これまでどおり」を見直す姿勢が、 学校全体に浸透し始めてきている。新しいことを始めることは確かに素晴しい。ただ、既存 行事の捉え直しでも、生徒を導いていきたい方向性が明確であれば、十分なキャリア教育の 実践になるという手応えを感じている。