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I VF
C- I VF で受精しなかった症例の翌日精液所 見の検討
- 精子生存試験( サバイバルテスト) の有用性について一
高橋レディースクリニック
内山素子、細固有紀、高橋具視
はじめに
体外受精で精液所見が正常で当然受精するであろ うと思われていたのに受精
しなかった事に遭遇する。すなわち、精液所見が正常値であり体外受精で当然
受精すると予測していたのにも関わらず受精が確認出来なく翌日顕微授精する
と受精しているという疑問である。
我々はこの様な症例の Swi m- up精子を翌 日観察したところ、精子運動率が
極端に悪くなっていることが多い事に気づいた 。 Swi m- up直後の媒精時点で
は良好な運動精子であっても i n vi troで、
は時間経過に伴い運動精子数の減少が
受精に関係しているのではないかと予想された。 そこで、今回、精子の生存率
が体外受精を行う際、受精の予測に有用な検査となるのか否かを検討したので
報告する。
対象と方法
1
対象
対象は、
2001年 10月から 2003年 11月までに当院にて体外受精 ( I VF) を行っ
た85症例 ( 85周期) と、体外受精と顕微授精( I C S I ) を併用して行った 42症
例 ( 42周期) であり、本テスト施行には全症例から i nf or med consent を得た。
2
方法
原精液を 99%の単層パーコール 2 m
Pの上層に重層して、
分離した後、
3000rpm30分間遠心
1 mP のハンクス液で洗浄( 1200rpm 10分間遠心) 後、上清を捨
て沈査を軽く撹祥してパスツールピペットで吸引 し、別に用 意 した 1mPHF F
0
( 血清 10%) の入った試験管の管底に静かに移動させた。その まま 37 C 、 5 %
C O2 環境下で 45分間 Swi m- up させた。 S wi m-up された上清の精子をマクラー
チャンパーで精子数をカウントし、通常体外受精の媒精に使用した。 その残り
を 5 %C 0 2 培養にて一晩培養後、再び精子をよく撹祥しカウ ン卜した。一晩培
養後の運動精子数の割合を精子生存率( サパイパル率) とした。
匪の評価は媒精後 2 日後の光顕による形態によった。基準は Veeck の分類に
従った。
結果
1 : I VF症例での受精率 と生存率との相関( 図 1)
- 37
y=0. 0061x+0.1434 r=0.469 p く0.0001
120
•
100
(渓)凶柑挺刷
80
60
40
20
•
•
0
0
図1
20
40
60
生存率( %)
80
100
120
I VF症例における受精率と生存率との相関
受精率と生存率との聞は相関係数 (r)0.469が認められた。 p は<0. 0001 である
ことから受精率とサバイパル率には相関があることが分かった。
I VF症例 85例の生存率を 5段階に区分したところ生存率が0- - - 20%群で 2 症例、
20- - - 40%群で 8 症例、 40- - - 60%群で 7 症例、 60- - - 80%群で 11症例、 80--- 100%
、 36歳
、 37. 3歳
、 34. 5歳
、 36. 8歳
群で 57症例認められた。年齢の平均は 33.5歳
であり差異はなかった。各 々の生存率による受精率の有意差の検討の結果、 60
- - - 80%群では生存率 と受精率との間で p<0. 05 の有意差が認められた。生存率が
80%以上群で妊娠率、受精率、良好匪獲得率が高かった。生存率40%以下群と
比較して 40%以上群はいずれも有意に高かった。生存率40%以上群において比
較すると生存率80%以上群では妊娠率、良好座獲得率とも有意に高かったが受
精率の差は認められなかった。
)
これらの結果を図にまとめた (表 1) (図 2。
表1
I VF症例の生存率における妊娠率、受精率、および良好郎率
D
E
F
G
生存率( %)
妊娠率
受精率
G2)
良好匹率 ( G1、
2
0- 20
3
20- 40
4
40- 60
5
6
。
。
。
。
35
2.1
18.8
59
10.3
60- 80
12.5
48
8.2
80- 100
68. 8
69
79 .4
- 3 8 -
セ@
位H
90
80
70
60
50
- 妊娠率
・受精率
白良好旺率 ( G1 、G2)
要 40
30
20
10
0
0......20
60......80
40......60
20......40
80......100
生存率( 九)
それぞれの生存率と妊娠率、受精率、良好庖獲得率の関係
図2
表2
I VF とICSI を併用した症例の生存率における妊娠率、受精率および良好郎率
G2)
I VF受精率 良好匹率 ( G1、
生存率( %)
妊娠率
0- 20
6.3
25
20- 40
6.3
36
40- 60
6.3
39
G2)
I CSI 受精率 良好匪率 ( G1、
69
9.1
92
7.1
13.6
92
19.2
13.6
。
60- 80
25
37
15.3
74
28.3
80- 100
56. 3
63
57.6
78
36.4
(ぎ)制限蝋
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
O
- 妊娠率
・I VF受精率
・良好旺率 ( G1 ,G2)
・I CSI 受精率
ロ良好匪率 ( G1 、G2)
セ@
セ@
。
〆
セ@
セ@
。 。。
。。
、
,
〆
〆
o
も
"rl
rS〆 ヘ
o
'o'V
生存率( %)
図3
それぞれの生存率と妊娠率、受精率、良好膝獲得率の関係
2 : I VF とI CSI を併用した症例のサパイパル率 における妊娠率、受精率および
)
良好匪率42症例における検討を表に示した( 表 2。
- 39 -
42症例中、生存率が 0- - - 20%群で 3 症例、 20- - - 40%群で 2 症例、 40- - - 60%群
で 2 症例、 60- - - 80%群で 13症例、 80- - - 100%群で 22症例であった。
年齢の平均は、それぞれ 33.7歳
、 34.5歳
、 30.5歳
、 33.6歳
、 33.5歳となってお
り差異は見られなかった。
これらの結果を図にまとめた( 図 3。
)
80%未満の生存率で比較した I VF とICSI の受精率の聞には有意差がなかった占
同様に良好膝獲得率においても、それぞれの生存率群との間で有意差は見られ
なかった。
しかし、妊娠率で 80%以上の生存率群で有意に高い結果となった。
3 : Swi m- up前、すなわち外来時点での一般精液検査より受精率や精子の生
存率のよしあしが判定できるか否か検討した。
原精液の精子数または運動率と生存率との関係を検討してみた (図 4 、 5。
)
モ250
";= 200
×
議 150
•
r
=-
0. 22446
•
長100
慎
挺
医
50
。
。
20
40
60
80
100
120
生存率( 九)
図4
I VF症例の原精液の精子数と生存率との関係
100
r
(ポ)時荷捌・胤問挺医
80
60
=-
• • •
•
•
• •
0. 01261
•
•
40
20
。
。
20
40
•
•
•
60
80
生存率( %)
図5
I VF症例の原精液の運動率と生存率との関係
- 4 0-
100
精子数と運動率の値から受精率の予測ができるか否か相関をみたが、受精率と
の間で相関係数は精子数で -0. 22446、運動率では -0. 01216であり相関は認めら
れなかった。
)
原精液の精子数または運動率と受精率との関係を検討してみた( 図 6 、 7。
精子数と運動率の値から受精率の予測ができるか否か相関を見たが、同様に相
関係数は精子数で -0. 2202、運動率では -0. 06965であり相関は認められなかった。
250
•
r = - 0. 2202
ε
さ 200
•
会150
長100
..
•
•
慢 50
•
•
••
..• • .•・ • ••
•
•
• •
挺
医
-・
.• •• •
•
。
。
20
40
60
••
100
80
受精率( %)
図6
I VF症例の原精液の精子数と受精率との関係
100
(渓)時掘削・胤問挺医
80
60
g
40
•
20
。
。
20
•
40
•
60
•
80
100
120
受精率( %)
図7
I VF症例の原精液の運動率と受精率との関係
考察
精子が受精を達成するためには、運動能力、受精能力獲得、透明帯の認識、
acr osome reacti on、細胞膜融合などの多岐にわたる精子機能が全て正常に機
能しなければならない 1 ) 。
通常精液検査では、精子濃度、運動率、正常形態率を検査し、 A R T の場合
その結果により体外受精にするか顕微授精にするか否か決定しているのが一般
- 41 -
的と思われる。
しかし、結果で述べているように外来検査時点で調べる ( 8wi m- up前の原
精液) 精子運動率や総精子数から精子生存率及び体外受精での受精率を予測す
)
ることは不可能である( 図 4'"'" 図 7 。
現在までのところ、精子妊字能を十分に予知できる判定法は確立されていな
し
、
。
精子形態については、精子を固定・染色した後に強拡大で観察し評価する方
法が Kr uger et al . により考案されており ( Kruger' s stri ct cri teri a)
2)
、本法
を用いた場合には、正常形態精子の割合と体外受精時の受精率との聞に関連が
見られたという報告がある 3 ) 4 ) 5 ) 0
精子数から検討した報告によると Mac Leod et al . は、妊苧能が確認されてい
る男性のうち 10%は精子数2000万 / mP以下であったと報告している
6) O
また、
Burri s et al.は i sol ated hypogonadt ropi c hypogonadi sm 24症例について検
討し、妊娠成立時の精子数は 2000万/ mP 以下が 71%、 100万/ mP 以下が 16%で
あり、精子数のみでは妊字能は判定できないと述べている
7 ) O
一方、精子運動能に関して、 Hi nti ng et al . は精子妊手能は rapi d l i near
progressi ve moti l i ty を示す運動精子が関係し、 l i near vel oci ty が 22μk/ sec.
以上の際に妊苧能が高いと論じている 8 ) D これに反して、 Dunphy et al.は
sl ow or sl uggi sh l i near or non- l i near movement の運動精子が妊苧能に関
連していると記載している 9 ) O 同様に、 Ai t ken et al.も vel oci ty が速い、すな
わち rapi d l i near progressi ve moti l i ty を示す精子は代謝能が早く低下する
ため、妊苧能は低いと述べている 10)
0
すなわち、精子運動能と精子妊苧能に関
しては、まだ統一された見解はないといってさしっかえない。
また、布施らは 8per m 8urvi val Test ( 88T) によって陽性時間が長い例ほ
ど受精率も高いという結果より、個々の体外受精実施前に精子受精能をある程
度予知することが可能であると報告している Il ) O
精子妊苧能を判定するための検査として透明帯除去ハムスター卵精子貫通試
験 ( Z8PT) ゆが考案された。しかしこの検査法は、ハムスター卵とヒト精子
とを用いているため、ヒト精子の妊苧能の検定としては限界がある。また本法
は均一のハムスター卵を常時用意せねばならず、操作が繁雑で、日常臨床に普
及するには至っていない。
今回、我々の行ったサパイバルテストは、インキュベーターと顕微鏡があれ
ば実施することができ操作も簡便で判定も容易である。
精子生存率と受精率の聞には高い相関があるが、精子生存率が 40%以上あれ
ば良好匹率の獲得には差はないように思われる O
また 80%以上の精子生存率の精子を用いた良好膝移植で有意に妊娠率が高い
ことが判明した。
以上のことにより、サパイバルテストは簡便であり、体外受精の治療に先駆
- 42-
けて、治療方針を決める有用な補助診断になると考えられる o
文献
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連絡先
干 285-0858
千葉県佐倉市ユーカリが丘4-1-1
TEL 043-463-2129 F AX 043-461-0129
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