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英語が自然に口から出てくるためには? -言語習得の過程から考える

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英語が自然に口から出てくるためには? -言語習得の過程から考える
英語が自然に口から出てくるためには?
-言語習得の過程から考える-
How Can We Speak English Fluently?
Naoki
「どれだけ勉強してもなかなか英語が話せない」、
「英語の読み書きはできるのに、話すこ
とには自信がない」などということをよく耳にする。かといって、留学をしなければ英語を
話せるようにならないのか。今回は、英語を話すためにはどのようなことをするべきかとい
うことを考え、簡単に説明したい。そのためにまず、言語はどのように習得されるのかを考
え、それを踏まえた上で効果的な言語学習の仕方を探る。
理解可能なインプット
(comprehensible input)
インテイク (intake)
アウトプット (output)
図1 言語習得過程の簡略図
図1を参考にしながら、言語習得の過程を見ていきたい。まず、言語習得にはインプット
が必須である。インプットは言語学習で学習者が接する学習言語すべてである。例えば、英
語の授業の最初のオーラルイントロダクションなどで教師が分かりやすい英語を話し、そ
の英語を生徒が理解する。それが生徒にとってインプットとなる。このインプットは理解可
能である必要がある。また、学習者のレベル (i とする) より少し上のレベル (i+1) のインプ
ットを与えてやることで言語習得が促進される。そして学習者がインプットを自分の言語
体系の中に取り込み (=インテイク)、実際に話したり書いたりする (=アウトプット) こと
で言語が習得される。
これを効果的に行う方法として、音読やシャドーイングが挙げられる。シャドーイングと
は、英語を聞き、ポーズを置かないで英語を正確に繰り返していく方法である。英語を聞く
ことがインプットとなり、それを繰り返す、つまり、声に出して話すことでアウトプットに
繋がる。これを繰り返し行うことで、単語認知や統語解析などの下位技能の自動化が促進さ
れる。簡単に言えば、いちいち単語の意味や文法の構造ばかりに気を取られることが少なく
なり、自然に英語を理解し話すことが容易になる。よって繰り返し練習することが、英語を
自動的に話せるようになることに繋がる。英語を話すためにはとにかく繰り返し練習する
ことが不可欠であるということである。
音読も繰り返し行うことで単語認知や統語解析などの自動化が促進され、シャドーイン
グと同様に言語能力が向上し、英語を自然に理解しアウトプットできることが期待できる。
安河内 (2007) は、自身の著書で、
「英語の練習とは、ズバリ「音読」です。正しい英文を声にだ
して何百回も読み、さらには暗記し、くり返し唱えて読むスピードを上げていくのです。」
(p.22) と述べている。これは下位技能の自動化に理がかなっているといえる。さらに、少しの
練習では簡単に英語を習得することはできないということも示唆している。また、鈴木
(2009; 門田,2009 ) は、以下のように述べている。
音読には、①単語認知の自動化、音韻符号化を高速化し、②学習事項(語彙や文法など)を内在化する2つの機能があ
るとしています。単語認知が自動化されると、音韻符号化が高速化され、学習事項が内在化されると、初見の文章を黙読
する際に、頭の中でも音読がスムーズに行われ、語彙や文法に過大な注意を向けることなく、文章の内容により多くの
注意を向けることが可能になります。その結果、理解を伴ったリーディング・スピード、文章の内容理解度、そして総合
的な英語力も向上する (p.36)
この引用文が示すように、音読を繰り返し行うことで、下位技能が自動化され、体に英語が
刷り込まれていき、語彙や文法が内在化すると言える。これが英語の総合力向上に貢献し、
スピーキング力にも繋がる。
このように、英語を話せるようになるためには留学すればいいということではない。決し
て容易に習得することはできないが、留学しなくとも、繰り返し練習することが下位技能の
自動化となり、英語の習得に繋がる。特に、シャドーイングや音読など、耳で聞く、目で見る、
声に出すなど徹底的に練習することが英語を話せるようになることに繋がる。理解可能な
ものであるよう、自分のレベルにあった教材を選択し、それをシャドーイングや音読を繰り
返していくことを勧める。それが英語力の向上になり、スピーキング力の向上も期待できる。
参考文献
鈴木寿一 (2009)「音読指導で英語力を伸ばすための留意点 -現場での実践から得られた
実証データをもとに-」『英語教育』第57巻12号 pp.34-36.
安河内哲也 (2007)「できる人の英語勉強法」 東京:中経出版.
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