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庁舎整備検討委員会最終報告

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庁舎整備検討委員会最終報告
庁舎整備検討委員会最終報告
平成25年(2013年)1月
庁舎整備検討委員会
目
Ⅰ
はじめに
Ⅱ
庁舎整備の現状と課題について
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1
過去の庁舎整備検討の経緯
2
庁 舎の 現 状 と課題
Ⅲ
次
・・・・・・・・・・・・・・・・3
・ ・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・ 3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
庁舎整備の手法の検討について
1
庁舎 整備手 法の選択肢
2
庁舎整備手法の検討と評価
3
庁舎建設ケーススタディ
4
財源確保等
Ⅳ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
・ ・・ ・・ ・・・ ・・ ・・ ・・ ・・・・・・ ・・・・1 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・14
1
専門 家等 か ら のヒ アリング
2
庁舎建設の必要性
3
庁舎 建設 の 基 本 的考 え方
4
今後のスケジュール
行 政情報
1
電子情報
・・ ・・・ ・・ ・・ ・・・ ・・・・・ 7
・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ 1 0
庁 舎 整 備の 方 向 性 につ いて
Ⅴ
・・・・・・・・・・・・・・5
・・・・・・・・・・・・・・・・14
・ ・・・ ・・ ・・ ・・・ ・・ ・・ ・・ ・・・ ・1 4
・・・・・・・・・・・・・・・・・16
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・・ ・1 9
・ ・・ ・ ・・ ・ ・・・ ・・ ・・ ・・・ ・・ ・・ ・・ ・・・ ・1 9
(1) 電算室の 現状
・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ 1 9
(2) 電子データ(バックアップデータ)の保全について
(3) 検討の 観点
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
(4) マシン室 の設置場所について
・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ 2 0
(5) バックアップデータの保全について
2
文書情報
・・・19
・・・・・・・・・・・21
・・ ・・・ ・・ ・・ ・・・ ・・ ・・ ・・・ ・・・ ・・・・2 2
(1) 現状と 課題
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
(2) 検討の 観点
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
(3) 文 書の保 全 対策の 選択肢
・・・・・・・・・・・・・・・・23
Ⅰ
はじめに
(1)
旭川市総合庁舎は,昭和33年10月,
当時の建築技術の粋を集めた近代建築
として建設され,以来,赤れんが庁舎として永らく市民に親しまれてきたが,築後
50有余年を経た現在では老朽化,狭隘化が著しい状況にある。また,平成9年に
実施した耐震診断では耐震性に問題があることが判明し,万一の大地震の際どのよ
うにして人命の安全を確保し,行政機能を維持するかなどの対策も喫緊の課題とな
っていたが,平成23年3月11日の東日本大震災により,こうしたことが現実の
問題として改めて認識された。
このことから,同年7月に庁舎整備検討委員会を設け,これまで8回にわたり,
①庁舎整備の在り方をどうするか,②行政情報(電子情報,文書情報)の管理をど
うするかについて様々な選択肢を調査検討し,平成24年3月には中間報告として
検討内容を公表した。
特に庁舎整備の在り方については,中間報告で検討したものから,平成24年度
に行った専門家等からのヒアリングも踏まえ,今回,最終報告として,一定の方向
性を示すものである。
(2)
検討経過
第1回
平成23年8月29日(金)
・庁舎整備検討委員会設置要綱について
・過去の検討経緯について
・耐震改修について
・今後の検討の進め方,プロセスについて
第2回
平成23年10月27日(木)
・他都市の庁舎建替事例について
・他都市の免震改修事例について
・電子データの保全について
第3回
平成23年12月26日(月)
・各整備手法の比較について(1回目)
・民間建物,市有遊休建物の現状について
・建替えする場合の庁舎規模,建設単価について
第4回
平成24年2月20日(月)
・各整備手法の比較について(2回目)
・国の制度等について
・庁舎建設ケーススタディ
-1-
中間報告
平成24年3月
・第1回から第4回までの検討内容を中間報告として公表
第5回
平成24年5月22日(火)
・庁舎整備に関する今後の工程について
第6回
平成24年10月12日(金)
・専門家等からのヒアリング結果について
・先進地視察の結果報告について
第7回
平成24年12月4日(火)
・最終報告案について(1回目)
第8回
平成25年1月15日(火)
・最終報告案について(2回目)
-2-
Ⅱ
庁舎整備の現状と課題について
1
過去の庁舎整備検討の経緯
(1) 総合庁舎は,昭和33年に建築され,築後54年を経て老朽化,狭隘化も著しく,
現在では,民間借上げビルも含め,6箇所の建物に分散した庁舎になっている。
(2) このため,平成8年から他都市における庁舎建替えの事例を調査するなど,新し
い庁舎の在り方について庁内の検討グループにより検討した。
(3) 平 成 9 年 に 総 合 庁 舎 の 耐 震 診 断 を 実 施 し た 結 果 , 建 物 の 耐 震 性 能 を 表 す 指 標 で
ある構造耐震指標(Is値)が高層棟3階の0.004から塔屋最上階の
0.288と,耐震性に問題がないとされるIs値0.6を大きく下回り,万一の
大地震の際,建物に甚大な損傷が発生し,人命の安全も確保できないおそれがある
ことが判明した。
(4) 庁舎建設整備事業の財源に充てるため,平成10年に旭川市庁舎建設整備基金を
設置し,民間借上げビルを含め市内各所に分散している庁舎を集約した新庁舎の建
設費を約200億円と想定し,うち半分の約100億円の基金造成を目指した。
基金造成は,地方財政の厳しさの中で建設に向けた取組が遅れる状況にあったた
め , 平 成 2 3 年 度 末 で 約 3 ,9 0 0 万 円 に と ど ま っ て い た が , 平 成 2 4 年 度 予 算 で
3億円の積立金を計上した。
(5) 平成23年3月11日,東日本大震災により,その被災地では多くの人命が奪わ
れ,多くの建物が損壊するとともに,行政機能にも甚大な被害が生じた。このこと
により,本市の総合庁舎の地震に対する脆弱性への対策を図ることが必要であると,
改めて認識する状況となった。
-3-
2
庁舎の現状と課題
庁
舎
面
積
(㎡)
総合庁舎
第二庁舎
第三庁舎
5条庁舎
ジブラルタ生命ビル
12,276.19
10,760.58
6,043.80
1,489.66
824.33
在籍者数 庁 舎 管 理 費
(人)
724
571
347
耐震性
課
題
(千円)
109,833
135,122
41,135
2
6,226
101
28,784
否
適
・建物本体及び設備の老朽化
・執務室・共用スペース,特に市民課
ロビー等の狭隘化
・資産税課等市民窓口の分散
・非断熱による消費エネルギーのロス
・不十分なバリアフリー
・受付窓口等の待合スペースが不十分
・狭隘な執務室
・倉庫・書庫等の不足
・設備機器更新の時期
・建物本体の老朽化
不明
・夏冬期の室温調整困難(執務環境の
(耐震診断未実施)
悪化)
・狭隘な執務室等
・建物本体及び設備の著しい老朽化
不明
・構造上小部屋が多く庁舎として不向き
(耐震診断未実施) (現在,関係団体等が入居)
適
・会議室,書庫等が不足している。
・賃貸ビルのため行政需要に応じたフレ
キシブルな使用が難しい。
・総合庁舎から距離があり,部局間の連
朝日生命ビル 1,117.62
76
36,152
適
絡調整が不便,来庁者用の駐車場が
ない。
※在籍者数= H24 年 4 月 1 日現在の正職員・再任用職員・臨時職員・嘱託職員数
※庁舎管理費=H23年決算(燃料費・光熱水費・清掃等委託費・修繕費)
※第二庁舎,ジブラルタ生命ビル,朝日生命ビルの庁舎管理費は賃借料を含む。
-4-
Ⅲ
庁舎整備の手法の検討について
1
庁舎整備手法の選択肢
(1) 庁舎に対する基本的見方
ア 「まちの重心・シンボル的施設」か「単なる執務オフィス・市民サービス施設」
か。
地 方 自 治 法 第 4 条 で は , 地方 公 共 団 体 の 事 務 所 の 位置 に つ い て ,「 住 民 の 利 用
に最も便利であるように,交通の事情,他の官公署との関係等について適当な考
慮 を 払 わ な け れ ば な ら な い。」 と あり , 事 務 所 の 位 置 は 条 例で 定 め る こ と と し て
おり,その制定には議会の出席議員の3分の2以上の者の同意がなければならな
いとされている。
市役所は市民生活に直結する行政を担っており,民間に代わり得ないものであ
るばかりでなく,その庁舎は,その街を象徴するランドマークとしても存在して
いる。
総合庁舎のある6条通9丁目付近は官庁街の中心部に位置していたが,既に旭
川開発建設部や旭川財務事務所,旭川中税務署,上川支庁(現上川総合振興局)な
どは他地域に移転しており,現在では市の庁舎があるのみとなっている。しかし,
周りには市民文化会館や大きなホテルが立地しているなど,今なお,旭川の中心
部における公共空間としての機能を維持している。
このような中で庁舎をどこに置くかということは,単にオフィスビルの場所を
選定するものではなく,市民生活や街づくりをも左右する重要なものであるとの
基本的認識が必要である。
従って,仮に庁舎の位置を移動する場合には,十分な市民論議が必要である。
イ
「集約型」か「分散型」か。
本市の現在の庁舎は,総合庁舎を中心として,水道局庁舎も含め7箇所に分散
している。これら庁舎については市民サービスや行政能率の面から集約されるこ
とが望ましいと言えるが,一方で建設費等資金面での財政負担が大きくなり,限
られた財源の中で振り分けの優先度を考えた場合,庁舎集約のメリットとデメリ
ットを比較検討することが必要である。
さらに,今後の行政需要の予測による庁舎の執務に要する面積や,支所など地
域施設の今後の機能展開と本庁機能との役割分担についても考慮し,検討するこ
とが必要である。
(2) 検討の観点
ア
耐震性・改修技術面の検討
庁舎整備の目的として,耐震性を有する庁舎の確保がある。
建物の耐震性能を表す構造耐震指標(Is値)では,0.6以上を「地震の震
動 及 び 衝 撃 に 対 し て 倒 壊 し , 又 は 崩 壊 す る 危 険 性 が 低 い 。」, 0 . 6 ~ 0 . 3 ま
で を 「 地 震 の 振 動 及 び 衝 撃 に対 し て 倒 壊 し , 又 は 崩 壊す る 危 険 性 が あ る。」 と し
ており,0.3未満は「地震の振動及び衝撃に対して倒壊し,又は崩壊する危険
-5-
性が高い。」としている。
現建物に耐震性を付加するためには,柱等の補強や筋交い等を入れる耐震改修
と建物の基礎部分に地震の揺れを低減することのできる装置を施す免震改修,及
びこれらの工法の組み合わせによる改修もあるが,いずれにしてもこれらの工法
でIs値が0.6(用途指標等を考慮した場合0.72)以上確保できるか,ま
た,免震改修の場合,建物を使用しながら工事できるとされているが,本市総合
庁舎において実施可能かどうかの検討を要する。
イ
整備費用と資金調達面の検討
新築・改修ともに多額の費用を要することから,財政負担をどの程度とするか
の検討が必要である。
特に単独事業として市直営で整備する場合,財源をどう確保するか。起債充当
率や一般財源の額,また,国庫補助金,交付税措置などの有無を十分に見定める
必要がある。
民間が資金調達をして,庁舎を建設し,維持管理運営を行うPFIも考えられ
る。PFI事業は,長期にわたる財政負担が平準化され,しかも総額が減る可能
性もあるが,金利など将来の経済環境の変化次第では,当初の想定よりも総費用
が増大するリスクもある。
また,民間が建設した建物を,所有者である民間会社と市が一定期間(30年
以上)の賃貸借契約を締結し,市はリース料,維持管理費を支払い,一定期間終
了後に建物を無償で譲り受けるリース方式も考えられる。
そのほか,庁舎と民間施設や他の公共機関とを合築することにより,費用負担
の軽減を図ることも考えられる。
なお,建設工事費などのイニシャルコストの多寡は庁舎整備の手法を判断する
最も重要な要素の一つであるが,整備した庁舎の耐用年数及びその間の維持管理
費,修繕費,解体費など建設整備から使用終了後の解体に至るまでの経費や,賃
借した場合の家賃総額と建設する場合の工事費との比較など,トータルコストの
多寡も整備手法を決める重要な要素である。
ウ
市民サービス・行政能率など機能面の検討
庁舎を集約した場合,市民サービスや行政能率などの機能面で優れている一方
で,財政的負担も大きくなる。
新庁舎に求める機能によって庁舎整備のハード面に大きく影響し,例えば市民
総合窓口など市民に関わりの深い部局をどう配置するかによっても庁舎規模が増
減する。
庁舎規模の検討に当たっては,どの程度まで市民サービスや行政能率を確保す
るのか,また,行政の中枢施設として新庁舎に求める機能はどうあるべきかとい
う観点での検討が必要である。
エ
防災機能の検討
-6-
大規模災害時においても日常の行政機能を維持し, 更に防災センターと連携し
た防災機能を新庁舎の中でどう位置づけるのか,また,行政の中枢施設であり,
災害復旧,復興の拠点施設にもなる総合庁舎については,新庁舎が整備されるま
での間の防災対策も考えていかなければならない。
(3) 整備手法の選択肢
ア
現庁舎を改修する手法
(ア) 耐震改修
(イ) 免震改修
(ウ) 制震改修
イ
他の建物を活用する手法
(ア) 民間施設へ移転
(イ) 市有遊休施設へ移転
ウ
建替する手法
(ア) 集約型・大規模庁舎を建てる。
(イ) 分散型中規模庁舎を建てる。
(ウ) 他の既存建物を活用するとともに,小規模庁舎を建てる。
(エ) 民間施設や他の行政機関,公共施設等の複合施設として庁舎を建てる。
2
庁舎整備手法の検討と評価(別表)
(1) 現庁舎を改修する手法
ア
耐震改修
総合庁舎については全柱補強の上,鉄骨ブレースを設置する耐震改修を行って
も,3階部分のIs値が0.25,7階部分で0.43にとどまり,所要の耐震
性能を確保することができない。
イ
免震改修
総合庁舎は高層部分と低層部分で構成されており,地震時にそれぞれの基礎部
分にかかる力が大きく異なることから,庁舎全体を一律に免震改修する事は耐震
構造上不適当である。この場合,高層棟と低層棟を構造的に切り離し,高層棟を
免震改修,低層棟を耐震改修することによって,建物全体の耐震性を確保するこ
とは可能であるが,高層棟と低層棟の分離や現執務スペースでの耐震壁設置が想
定され,庁舎の現行機能を維持することができないおそれがある。
また,免震改修で改善されるのは,建物の構造体のみで,老朽化した設備や内
外装等については別途改善工事が必要である。免震改修に併せ設備や内外装の改
修を実施した場合の改修費用は,新築費用と大差がなくなる。
ウ
制震改修
高層棟を免震改修するのではなく,各階に必要最小限の制震装置(ダンパー)
を外付け又は内付けし,低層棟を耐震改修することで,地震時における構造体の
揺れを低減して損傷を抑えることも可能と思われる。
-7-
制震装置の設置は,執務しながら工事できるメリットはあるが,建物に外付け
で設 置 す れ ば 現 庁 舎 の 意匠 が 損な わ れ, ま た, 執 務室 内 の設 置 では , 免震 改 修
同様に,執務スペースの狭隘化が一層進行し,庁舎の現行機能を維持することは
困難となることが想定される。
また,改善されるのは建物の構造体の耐震性の向上のみで,老朽化した設備や
内外装等については別途改善工事が必要である。
制震改修では,装置の設置費用は安価であるが,低層棟の耐震改修や設備・内
外装の改修が別途必要となるので,やはり相当規模の費用が発生する。
(2)
ア
他の建物を活用する手法
民間施設へ移転
市内中心部には,空き部屋のあるオフィスビルが多数存在しているが,現在の
ところ中小規模のビルが多く,庁舎を移転する場合,その一部をいくつかのビル
に分散して借りることになり,庁舎の分散化が著しく,市民サービス,行政機能
の面から問題が多い。
しかし,ある程度まとまった空間を活用できる場合,新しく庁舎を建てるより
賃借の方がコスト面で優る場合もある。
※
庁舎新築費と賃借料比較試算
下記条件で庁舎建築した場合の工事費をジブラルタ生命ビルの賃料相当額で支
払った場合の償還年数
条件設定
…
約33年
ジブラルタ生命ビル賃料…1,650円/㎡・月
庁舎新築工事想定単価 … 360,000円/㎡
金利 … 2%
イ
建物レンタブル比 … 80%
市有遊休施設へ移転
市有施設の中には,主なもので廃校など8箇所,延べ面積約10,426㎡の
遊休(又は,低利用)施設があり,公有財産の有効活用,地域振興の面から,こ
れら遊休施設の利活用を求められている。しかし,これら遊休施設の多くは,①
老朽化が著しい,②市街地から遠隔である,③耐震性がない,④狭小である等に
より,倉庫,書庫等としての使用はともかく,一定規模の部局が入居する庁舎と
して利用可能と思われるところは,事実上1施設(旧雨紛中学校)にとどまって
いる。
(3)
ア
建替する手法
集約型・大規模庁舎を建てる
総合庁舎,第二,第三庁舎,朝日生命ビル,ジブラルタ生命ビルに入居してい
る部局が全て入ることのできる約40,000㎡程度の大規模庁舎を建設する。
この場合,市民の利便性,行政能率,防災機能,維持管理費等について優れて
いるが,建設費が最も多額になる。
-8-
イ
分散型中規模庁舎を建てる
現在,借上げ入居している第二庁舎及び朝日生命ビル,ジブラルタ生命ビルに
ついては,一応の耐震性が確保されていることなどから,このまま活用すること
にし,総合庁舎,第三庁舎に相当する程度の庁舎(延床面積
約20,000㎡)
を建設する。この場合の建設費は,集約型の庁舎建設費より大幅に縮減すること
ができるが,庁舎が分散されるため,全体の維持管理費は集約型庁舎より多額に
なる。
ウ
他の既存建物を活用するとともに,小規模庁舎を建てる
コストを縮減させるため,各部局の行政機能を市有遊休施設や市内中心部の民
間空きビル等に分散移転し,これら空き建物の収容能力を超える部分の小規模な
庁舎を建てることも考えられる。この場合,庁舎が分散し,市民の利便性や行政
能率の低下をきたすおそれも大きいが,例えば,市民窓口部門は市内中心部のビ
ルへ,郊外の施設には,日常,市民と接しない部局を配置するなど,活用する遊
休施設の立地場所,規模に応じて適切な部局を配置することにより,市民サービ
スの低下を最小限にすることも考えられる。
なお,総合庁舎の低層階部分(1・2階,議会棟含む。)は耐震改修して残し,
高層棟部分と第三庁舎に相当する面積の建物を建設することも選択肢としてはあ
り得る。
建設する庁舎の規模は,これら既存遊休施設の活用の度合いにより増減する。
エ
民間施設や他の行政機関,公共施設等の複合施設として庁舎を建てる
従来,市庁舎は行政事務の執行と住民に対する行政サービス提供の場としての
建物とされてきたが,近年,行政事務以外の機能を持つ施設の併設や他の行政機
関との合築等の複合型庁舎もみられるようになってきた。複合施設の例として,
市民会館など市民交流施設,市民の健康を管理する保健センター,社会教育事業
や 子 育 て 支 援 事 業 の 施 設 も 設け て い る 例 が あ り , 新 潟県 長 岡 市 で は ,「 市 民 協 働
・ 交 流 の 拠 点 」 と し て 屋 根 付き 広 場 , 公 会 堂 ( ア リ ーナ ),市 役 所 が 一 体 と な っ
た市民協働型シティホールを中心市街地である駅前に平成24年4月にオープン
させ,中心市街地における賑わい創出という観点から国の補助制度(まちづくり
交付金)を最大限活用した全国初の取組として注目を集めている。
総合庁舎に隣接する市民文化会館は築39年を経て,ホール等の大規模な改修
も必要になっているなど,老朽化が進行している。
市民文化会館と庁舎を合築して建設することも考えられるが,莫大な事業費や
両施設を建設できるだけの敷地の確保など,解決しなければならない課題は極め
て大きい。
現在のところ,そのほかの市有施設について具体的に合築を想定するまでには
至っていないが,他の行政機関や民間施設との合築の可能性も検討していく必要
がある。
-9-
3
庁舎建設ケーススタディ
(仮に第三庁舎敷地に新庁舎を建設するとした場合)
※第三庁舎敷地概要
敷地面積
…
7,721.40㎡(動物愛護センター敷地792.63㎡を除く。)
用途地域
…
商業地域
容積率
…
400%
建ぺい率
…
80%
(1) 大規 模 庁 舎 (総 合 庁舎 , 第 二 庁 舎 , 第 三 庁 舎, 朝 日 生 命 ビ ル, ジ ブラ ル タ生 命 ビ
ルを想定)
建設場所:
第二庁舎及び第三庁舎敷地
(13,583.43㎡)
延床面積:
40,000㎡
建 設 費:
150億円(単価約37.5万円/㎡)
評 価 等
ア
分散している庁舎や窓口を集約することができ,市民サービスの向上と行政事
務の効率化を図ることができる。
イ
民間借上げビルに対する賃借料が不要になるほか,保守管理業務も合理化され
維持費を節減することができる。
ウ
現総合庁舎に代わる旭川市のランドマークになり得る庁舎とすることも考えら
れる。
エ
大 規 模 庁 舎 の た め , 現 第 三 庁 舎 敷 地 内 (又 は 第 二 庁 舎 敷 地 内 )の み に 建 設 す る
ことが難しく両敷地を併せた場合,変形敷地となるが,2棟の建物を渡り廊下で
結んだ庁舎とすることも考えられる。
(2) 中規模庁舎
(総合庁舎,第三庁舎相当)
建設場所: 第三庁舎敷地
延床面積: 20,000㎡
建 設 費: 78億円(単価約39万円/㎡)
評 価 等
ア
耐震性があり,比較的老朽化していない第二庁舎をそのまま活用することによ
り,整備費の縮減を図ることができる。
イ
一定の窓口を集約することができ,市民サービスの向上を図ることができる。
ウ
事務の効率化及び維持管理の縮減幅は大規模庁舎に次いで優れている。
エ
余裕はないが,現第三庁舎敷地に建設可能で,第二庁舎と渡り廊下で結ぶこと
も考えられる。
(3) 小規模庁舎(総合庁舎高層部,第三庁舎)
建設場所:第三庁舎敷地
延床面積:15,000㎡
建 設 費:58.5億円(単価約39万円/㎡)
- 10 -
評 価 等
ア
一定規模の窓口を集約し,下層階に配置することが考えられる。その場合,1
階の建築面積は中規模庁舎の場合と同程度となり,敷地にあまり余裕がなくなる
ことも考えられる。
4
イ
渡り廊下で第二庁舎と結び,庁舎間のアクセスを容易にすることも考えられる。
ウ
庁舎が分散されるため,維持管理のトータルコストは割高になる。
財源確保等
(1) 国の財政措置等について
現在のところ,地方公共団体の庁舎建替えを対象とする国の財政措置の制度はな
いが,公共施設の耐震化を目的とする事業を支援するものとして次のア~ウが,ま
た,一般単独事業に係るものとしてエがある。
ア
緊急防災・減災事業債(単独)
地方税の臨時的な税制上の措置により実施される財源の範囲内で,緊急に実施
する必要性が高く,即効性のある防災,減災等のための地方単独事業を対象とす
る事業債で庁舎の耐震化に資する事業も適用される。
起債内容 … 起債充当率
100%(うち,交付税措置率70%)
ただし,本事業債は平成23年度から平成25年度までの時限的措
置で,平成26年度以降も本制度が維持されるかは不明。
イ
防災対策事業債
地域防災計画上,耐震改修を進める必要のある公用又は公共用施設(庁舎を含
む。)の耐震化事業を対象とする事業債である。
起債内容 … 起債充当率
90%(うち,交付税措置率は50%。ただし,Is
値が0.3未満で,かつ,地震防災緊急事業5カ年計画に定められ
た施設については2/3)
ただし,本事業債は,施設の耐震改修に係わるものであり,原則と
して全面改築(建替え)は認められていない。
ウ
社会資本整備総合交付金
社会資本整備総合交付金のメニューの中に「住宅・建築物耐震改修事業」があ
る 。 同 事 業 は , 住 宅 又 は 災 害時 に 重 要 な 機 能 を 果 た す施 設 ( 庁 舎 も 該 当 す る。)
等の耐震改修又は建替えに関する事業に対しての交付金である。交付金の額は,
1㎡あたり,数千円~15千円程度と少額である。
エ
一般単独事業債
庁舎建替えにも活用できる自由度の高い事業債であるが,起債充当率が75%
で交付税措置はない。
- 11 -
オ
住民参加型市場公募地方債(通称:ミニ公募債)
アからエの国庫補助金や地方債を活用しても,なお不足する財源に対して,ミ
ニ公募債を発行して資金を調達することが可能である。
ミニ公募債は,旭川市民や法人を対象に販売する地方債で,購入により投資家
として市政に参加してもらうとともに,市の事業や財政状況に対する関心を高め
てもらうことを狙いとしており,本市でも,過去3回(平成18年度~20年度)
にわたり,動物園の施設整備などに「ななかまど債」を発行しており,当時発行
に携わった金融機関からは,庁舎整備に当たり有力な財源調達手法の一つである
との意見が出されているところである。
(2) PFI事業
従来,市が建設運営していた公共施設等について,民間の資金とノウハウ(経営
能力・技術的能力)を活用し,設計から建設,管理運営までを民間が行うことによ
り,低廉で効率的,効果的な社会資本の整備と良好な公共サービスの提供を図る仕
組みである。本市では平成22年に高台小学校をPFI事業により整備した。
PFI事業のメリットとして次のようなものがある。
・
整備資金は民間(特別目的会社=SPC)が調達するので,市は多額の資金
を準備する必要がない。最近では,釧路市の学校耐震化事業で,資金調達の事
務手続きが煩雑で設立・維持の負担が大きいとされるSPCの設立はせず,共
同体方式により1者が代表して共同企業体の資金を調達する新たな手法も出て
きている。
・
整備費及び維持管理経費の総額(LCC)が公共直営の場合より縮減される
ことが期待できる。
・
毎年の財政負担が平準化され,計画的な財政運営ができる。
一方で次のようなデメリットも考えられる。
・
PFI事業は基本的に民間事業であるため,収益が期待できない事業には参
入 が 期 待 で き な い 。( 庁 舎 整 備 で, 従 来 型 の 公 共 直 営 の 場合 よ り 経 費 を 縮 減 さ
せ,かつ,収益を見込むことができるか。)
・
金利など,将来の経済環境の変化次第では,公共による従来型事業の方が有
利になることもあり得る。
・
金融など高度なノウハウとリスク分担を含む複雑な契約を要するなど,準備
に時間と煩雑な手続きを要する。
・
事業の履行能力上,現状では大手ゼネコンが受注することが多く,地元中小
企業の参入が困難な場合がある。
しかし,地元企業の参入については,入札参加要件や落札者決定基準において,
地元企業の積極的な参加を促したり,地域経済の活性化が図られるような提案を高
く評価するなど,地元企業の積極的な参画を促す多様な事例について市内建設業者
から情報提供を受けているところである。
- 12 -
※
なお,PFI事業の発案に当たっては,専門のコンサルタント等にVFM
( す べ て 公 共 で 事 業 を 実 施 し た 場 合 の 財 政 総 支 出 額 と P F Iに よ り 事 業 を 実 施 し
た 場 合 の 財 政 総 支 出 額 の 比 較 ) の 算 定 が 必 要 で あ る 。 P F I事 業 に よ る 支 出 額 の
方 が 従 来 型 公 共 事 業 の そ れ よ り 高 い 場 合 は , 当 然 な が ら P FI 事 業 に 適 さ な い 。
(3) 賃借方式(30年以上)
民間のリース会社が資金を調達して建物を建設し,市と建設費を償還できるまで
の長期間に渡って維持管理業務と併せ,賃貸借契約を締結する。賃貸借契約の満了
によって当該建物の所有権は市に移管するものである。
この手法も,PFI同様,①多額な整備資金を要しない,②毎年の財政支出が平
準化される一方で,総支出額は市が直営で建設,管理運営するより多額になる可能
性がある。
- 13 -
Ⅳ
庁舎整備の方向性について
1
専門家等からのヒアリング
整備手法の選択肢としては,現庁舎を改修する手法が考えられるところであり,検
討委員会では耐震改修,免震改修及び制震改修の3工法を検討した。
耐震改修は建物そのものを強固にして地震エネルギーに耐えるものであり,免震改
修は建物の下層部に地震エネルギーを吸収する装置を取り付け,直接建物に伝わる地
震エネルギーを軽減させるものである。また,制震改修は,建物に伝わってきた地震
エネルギーを建物に取り付けられた制震装置によって吸収し制御するものであり,東
日本大震災の際には,耐震改修していた建物では損傷が大きいものがあったが,制震
工法により改修していた仙台市役所では,構造部材は健全で,非構造部材においても
修復可能なひび割れ程度の被害で済み,制震装置にも損傷はなかったという。
検討委員会では,庁舎整備の方向性を検討するにあたり,現庁舎改修の適否等につ
いて,適切な評価が必要なことから,免震工法や制震工法の技術を提供する各企業や
北海道の関係機関である北方建築総合研究所,更には大学教授等から,現総合庁舎を
改修によって耐震基準を満たす耐震性が確保できるかどうか等について,次のとおり
情報を収集した。
近年,既存建物の改修技術は著しい進歩を遂げており,優れた改修事例も多数見ら
れるようになり,多種多様な工法で耐震性を高めることは可能であるが,工法による
経費の多寡はあり,一般的に制震工法が安く,免震工法が高くなっている。
耐震性を向上させ,各種設備等のリニューアルを行っても,構造体の耐用年数が延
びるわけではないので,結果的には一時的な対応でしかなく,庁舎の保存改修では,
庁舎の狭隘化や分散化など,現時点で抱えている課題を根本的に解決することはでき
ない。
一方で,総合庁舎は,日本を代表する建築家である佐藤武夫の設計によるもので,
1960年(昭和35年)に日本建築学会賞作品賞を受賞しており,こうした歴史的
価値・文化的価値を有した建築物であることから,今後の庁舎整備の在り方を検討し
ていく上では,現庁舎の活用についても重要な検討要素と考えられる。
仮に建て替えることになった場合,単に経済効率を追い求めるだけではなく,現庁
舎に匹敵するような文化的・建築学的な評価を受けるような未来につながる新たな庁
舎を創るといった視点が重要であり,例えば道庁赤れんがの様なシンボル的建物とし
て活用していくことも想定されるが,現庁舎を残し利活用する場合の膨大な財政負担
の問題と取り壊して跡地を利活用する場合との比較など総合的に検討していくことが
必要である。
2
庁舎建設の必要性
財務省令による減価償却資産の耐用年数によれば鉄筋コンクリート建物の耐用年数
が50年とされている中,総合庁舎はすでに54年経過しており,第三庁舎も52年
経過している状況である。特に総合庁舎は,市民サービスを提供する拠点庁舎である
とともに,市民の安全・安心を確保するための拠点としての役割も担っている。
建物の基礎,外壁,床のひび割れや歪み,天井からの雨漏り,暖房や給排水設備の
- 14 -
経年劣化など,建物,設備とも老朽化が著しく,今後,老朽化に対応するための維持
補修に多くの経費がかかることが想定される。このため,部分的に修繕して延命化を
図っていっても,限界は近いと考えられる。
また,庁舎内のスペースは,市民へのサービス提供空間や職員の執務空間としても
狭く,総務省の地方債同意等における基準に基づき,総合庁舎の在籍職員数等から算
定した標準的な庁舎の必要面積17,190㎡と比較しても,約4,900㎡不足し
ており,非常に狭い状況となっている。
こうしたスペースの狭さは,書類や備品類の適切な保管スペースの確保を困難にさ
せており,本年度,全庁的に執務室の環境整備に取り組んだものの,執務室のキャビ
ネット等の上に書類を積むことは完全には改善されなかったところである。地震の際
には,これらの落下などにより,人やパソコン等に危害を及ぼしかねず,また書類を
散逸させてしまうおそれもあるため,こうしたことからも必要なスペースの確保が求
められる。
このように,建物と設備の経年劣化が相当に進んでおり,加えて,スペースの狭隘
化,更には防災拠点としての耐震性能の不足などの問題を抱え,安全で安心できる庁
舎整備が必要となっている。
また,市民に便利で快適なサービスを提供するため,わかりやすく使いやすい庁舎
とすることも必要である。
専門家等からのヒアリング等も踏まえ,3つの庁舎整備手法の選択肢について,次
のとおり評価する。
(1) 「現庁舎を改修する手法」
耐震改修,免震改修及び制震改修により構造体の耐震性の向上が図られれば,歴
史的価値・文化的価値を有した現庁舎の保存活用が可能となる。
制震改修については,仙台市役所のように巨大地震においても大きな効果を発揮
している事例もあり,他の工法に比べ費用の面でも安く,地震対策として評価でき
るものもある。
一方,改修する場合は構造物の外部・内部に耐震壁,鉄骨ブレース,ダンパー装
置等を設置することになり,執務スペースの一層の狭隘化が進行し,現状の庁舎機
能の維持は極めて困難になることが想定される。
また,老朽化が著しい各種設備の更新や内外装の改修が別途必要であり,その間
の仮庁舎への移転経費も必要となる。
総合庁舎を改修した場合の費用を大まかに積算すると,改修費用は工法により変
動するが8億円から15億円程度,冷暖房設備や給排水設備などの設備更新費用は
27億円程度,仮庁舎移転費用は18か月の期間で6億円程度が見込まれ,これら
を合計すると40億円から50億円程度となる。
加えて,総合庁舎と同様に老朽化や狭隘化に問題がある第三庁舎についても改修
するとなれば,少なくともケーススタディで想定した中規模庁舎の建設費用と大差
がないものとなる。
また,耐震性を向上させ,更に各種設備等のリニューアルを行っても,構造体の
- 15 -
耐用年数が延びるわけではないので,結果的には一時的な対応でしかなく,既に法
定耐用年数を4年超過している総合庁舎,2年超過している第三庁舎の状況からす
ると,近い将来には建替えの必要に迫られ,そうなれば改修費用と建替費用の莫大
な財源を二重に投入することになってしまう。
さらに,耐震構造物の設置により,狭隘化が一層進み,新たなビル賃借が必要と
なり,庁舎の分散化の拡大を招くことも想定され,保存改修では,現庁舎の狭隘化
や分散化など,現時点で抱えている課題を根本的に解決することはできない。
なお,改修技術は高度なものが要求されるため,全国的に実績のある事業者の受
注となることが多く,地元経済への波及効果は小さいと思われる。
(2) 「他の建物を活用する手法」
現時点で,市有施設や他の行政機関の施設,民間ビルに適当な物件がなく,複数
の物件に細分化しても,庁舎の分散化が進行してしまい,市民サービスの低下を招
いてしまう。
しかし,近年では市内中心部へ主に市民サービス機能を移転させ,中心市街地の
活性化を図る他都市の取組事例なども出てきていることから,今後の本市の行政機
能の配置の在り方について必要に応じて検討すべきであり,その議論の中で他の建
物を活用する方策も併せて検討する必要がある。
(3) 「建替えする手法」
効率的な行政,市民の利便性を考慮し,必要な機能を備えた建物にすることがで
き,現庁舎が抱える問題の解決が図られるが,費用が多額になる。
また,建築学会作品賞を受賞し,長く親しまれてきたランドマーク的な現庁舎の
価値をどうみるか,現庁舎の取扱いについて慎重な検討が必要となってくる。
さらに,同じ場所での建替えなら,工事期間中,全部の移転が必要となり,仮移
転に要する経費も発生する。
なお,庁舎建替における地元企業参入の機会を確保できれば,地元経済への波及
効果は大きいと思われる。
以 上 , そ れ ぞ れ の 手 法 に お け る メ リッ ト , デ メ リ ッ ト を 整 理し た が , 現 庁 舎 の い
ず れ の 問 題 の 解 決 に 向 け て は ,「 現 庁 舎 を 改 修 す る 手 法 」 と 「 他 の 建 物 を 活 用 す る
手 法 」 に よ る 対 応 で は 十 分 で は な く ,現 庁 舎 を 建 て 替 え る こ とに よ っ て 解 決 す る こ
とが適当であると考える。
3
庁舎建設の基本的考え方
(1) 新しい庁舎の規模・機能
新しい庁舎は,どの程度の規模が必要で,どのような機能が必要かは,今後,各
方面の意見も集約しながら,検討すべきであるが,現在の総合庁舎,第三庁舎,朝
日生命ビル,ジブラルタ生命ビルを集約し,2万㎡から2万5千㎡の庁舎を想定す
る。また,市役所の本庁機能の在り方を考える中で,他の庁舎等との適切な機能分
- 16 -
担,連携等を検討していくことも必要である。
《想定される機能》
○事務機能(入居部局の選択,集約か分散かなど)
○窓口機能(ワンストップサービス,待合空間,総合案内など)
○市民機能(ロビー,交流広場,情報公開コーナーなど)
○防災機能(災害発生時に防災拠点となる機能など)
○シンボル・ランドマーク機能
(2) 新しい庁舎の場所
新しい庁舎は,市役所のまちづくりにおける役割,中心市街地における役割を考
慮し,現総合庁舎敷地及びその周辺において整備されることが適当である。
(3) 建替えにおける手法
新しい庁舎の建替えは,庁舎を単独で建てる方法と民間施設や他の行政機関・公
共施設等の複合施設として建てる方法とが考えられる。
複合施設にすることにより,コスト面のメリットが考えられるが,他の適当な施
設があるかどうか不確実であり,また市民文化会館との合築も考えられるが,大き
な事業費になる。こうしたことを今後慎重に検討する必要がある。
(4) 建替えにおける財源
庁舎に必要な規模や機能を具体的に検討していく中で,事業費についても積算す
ることになるが,新しい庁舎は,華美な要素を排除し,必要最低限度の庁舎を目指
し,建設に必要となる費用の抑制に努めていくことが必要である。
庁舎の建設に係る事業手法としては,従来からの直接建設方式や近年導入事例が
増えているPFI方式,更には賃借方式などが想定されるが,できるだけ財政に負
担をかけない手法について,金融機関や建設業者等から提供される先進事例や情報
等も踏まえ,今後更に検討していくことが必要である。
直接建設方式は,事業化が容易である半面,民間事業に比べ公共単価が高いデメ
リットがある。通常の庁舎建設では特段の国等からの補助もなく,事業費の75%
を起債措置し,残り25%は一般財源で措置しなければならず,今後,ある程度の
規模で基金の積み増しが必要である。この25%部分については,過去,動物園の
整備などに要する資金を調達するために発行した住民参加型市場公募地方債「なな
かまど債」の活用も考えられるところである。
また,中心市街地活性化の取組と庁舎整備をうまく連動させていくことによる国
庫補助金の活用についても十分検討していくことが必要である。
一方,PFI方式は,毎年の財政負担の平準化が図られるが,コンサルタントに
よる支援など,事業化に当たっては多大な業務が必要である。また,庁舎建設後の
維持管理は,特定の事業者が請け負うことになるため,維持管理業務への参入機会
が制約されることがある。このことについては,これまで本市がPFI事業として
取 り 組 ん だ 高台 小 学 校 整 備 事 業 の 総 括報 告 書 の 中 で ,「 P F I 整 備事 業 は , 建 設 ・
- 17 -
設計・解体・維持管理等多岐の業種にわたっており,それらの業務委託はグループ
会社・構成企業・協力企業などの関連会社に限定されるおそれがあり,市が行う契
約 等 に お け る公 平 性 や 透 明 性 , 受 注 機会 均 等 な ど の 理 念 が 反映 で き な い 。」 と の デ
メリットが指摘されているところである。
なお,PFI方式の場合,事業の履行能力上,大手ゼネコンが受注することが多
いが,地元の事業者が参入することは十分可能であると考えられる。
事業手法に関わらず,庁舎整備は,多額の費用を要する公共事業である。公共事
業は,その事業を通じて,市民サービス向上や安全・安心などに寄与することを目
的とするが,他方で,その事業を行うことが地元経済において,需要を喚起する,
経済効果が期待できるものである。庁舎整備に当たっては,こうした地元経済の波
及効果に十分配慮したものでなければならない。
庁舎建替の具体的な資金計画は,庁舎規模の算定や庁舎機能,事業手法の検討と
ともに今後詳細な検討を行うことが必要である。
(5) 市民意見の反映
現在の庁舎の実態を広く市民に認識してもらい,市民が利用しやすく,安全・安
心な庁舎整備の必要性をはじめ,規模,機能,場所,事業手法等について,多くの
市民の理解が得られるよう,今後の庁舎整備の検討に当たっては,幅広く市民の意
見を把握する取組が何よりも必要である。
4
今後のスケジュール
基本構想策定までに取り組む内容とスケジュールを次のとおり想定する。
なお,基本構想策定から庁舎建設までには,通常,段階的に,基本計画策定,基本
設計,実施設計を経た上で建設工事に着手となり,他都市の事例では事業完了までに
は概ね5年前後の期間を要することが見込まれるところである。
平成25年度
庁舎整備における市民意見の集約(懇話会,市民アンケートなど)
・具体的な庁舎の規模,機能,場所,整備手法等について
・現庁舎の取扱い(取壊しと跡利用の在り方又は保存活用の在り方など)など
について
平成26年度
市民意見を踏まえ,基本構想策定
- 18 -
Ⅴ
行政情報
1
電子情報
(1) 電算室の現状
電 算 室 ( 以 下 「 マシ ン 室 」 と い う。) は, 昭 和4 4 年に 総 合庁 舎 2階 に 設置 。 現
マシン室の面積は約130㎡である。マシン室の床部分は,フリーアクセスフロア
構造で全面空隙となっており,機器のコード類が収納されている。マシン室内には,
汎用機本体,大型プリンタのほか,平成12年から整備を開始した全庁ネットワー
ク,財務会計及び戸籍の各システムサーバ等があり,これら機器の設置による狭隘
化は否めない。
また,マシン室とは別に,関連設備として各種納付書などの連続帳票の裁断・封
入を行うための処理機械室,停電対応設備格納室も総合庁舎内に設置している。
(2) 電子データ(バックアップデータ)の保全について
ア
住 民 記 録 ( 住 基異 動 ・ 印 鑑 登 録 ) 及び 税 (市 民 税・ 資 産税 等)・国 保 等オ ン ラ
イン処理に係る基幹業務データ
市民課及び支所で入力されたデータについては,毎日の業務終了後にバックア
ップを行っており,前日,前々日,前々々日の3日分(3世代)を管理している。
バックアップデータ(テープ)は,総合庁舎内の耐火金庫に保管しているが,早
急かつ優先して安全な保管場所を確保することが必要である。また,当日の入力
分については逐次汎用機のハードディスク内に更新記録ファイル(ジャーナルフ
ァイル)としてバックアップを行っており,万一の場合,直近入力時の状況へ回
復も可能である。
なお,住民の基本データ(住所,氏名,生年月日,性別)については,国(総
務省)が住基ネットを通じて最新異動分をオンラインでバックアップデータを保
管している。
イ
戸籍データ
毎日の業務終了後,全件データのバックアップを行っており,月~金までの5
世代を管理している。バックアップデータ(テープ)は,総合庁舎内の耐火金庫
に保管している。
なお,戸籍データについては,その副本データを年2回旭川地方法務局に送付
しており,市保管データが消滅しても副本データによる回復は可能である(現在
戸籍,改正戸籍,除籍含む。)。
さらに,国により,戸籍の副本データを電気通信回線を通じて,毎日の業務終
了後に管理センターへ送信する「戸籍副本管理システム」が平成25年10月か
ら稼働予定である。
ウ
財務会計データ
毎日深夜にバックアップソフトにより,自動的に全件データのバックアップを
行っており,サーバ搭載のカセット式テープに7世代(1週間分)を管理してい
る。バックアップデータは,総合庁舎内の耐火金庫に保管している。
エ
その他
- 19 -
介護保険・後期高齢者に係るデータについては,毎日バックアップを行ってお
り,バックアップデータ(テープ)は総合庁舎内の耐火金庫に保管している。
(3) 検討の観点
東日本大震災のような大規模災害から電子情報を守るためにはどうしたらよい
か,以下,想定しうる選択肢を検討した。
ア
マシン室の場所についての検討
電子情報を大規模災害から回避するためには,汎用機等の全ての機器やバック
アップデータを,平時におけるセキュリティも確保された耐震性のある安全な施
設にあることが必要である。安全な施設として「総合庁舎の建替え」又は「総合
庁舎以外の施設」とする方法が考えられる。総合庁舎以外の施設では既存庁舎,
民間ビル,データセンターなどが考えられるが,マシン室には空調設備や電気設
備等が必要なほか,入退室管理システム,無停電電源装置等も必要であり,デー
タセンターを除く施設については多額の施設整備費用がかかる。
イ
バックアップデータの保全の検討
大規模災害が発生して総合庁舎の物理的被害により,汎用機等の機器に被害が
及んだ場合においても,基幹業務等のバックアップデータはその後の機器の復旧
に備えて保全する必要がある。例えば,総合庁舎内に保管しているバックアップ
データを,総合庁舎以外の施設に保管する方法が考えられる。耐震性が確保され
ている第二庁舎等の市有施設に保管するのも一つの方法であるが,一定のセキュ
リティの確保は必要である。
また,データセンターのバックアップ機能(専用ストレージ=ディスクファイ
ル)の活用も考えられる。毎日バックアップを行う基幹業務データを,業務終了
後に専用回線を通じて自動的にデータセンターへ送信する方法であり,セキュリ
ティの確保といった観点では非常に優れている。このほかに,データセンターの
媒体(バックアップテープ)保管サービスの利用も考えられる。
(4) マシン室の設置場所について
ア
マシン室の場所
マ シ ン 室 に つ いて は ,「 平 時 に お け るセ キ ュリ テ ィも 確 保さ れ た耐 震 性の あ る
安全な施設」に設置されていることが必要との観点から,市民サービスの維持や
経費等を含め,また,庁舎整備の手法にも併せて「庁舎を建て替える場合」とそ
れ以外の場合として「既存市有施設又は民間ビルの活用」及び「データセンター
の活用」についてそれぞれ検討し,一定の課題を整理した。
(ア) 庁舎を建て替える場合
汎用機等による機器の運用に係り,マシン室の面積は関連設備の格納室も含
めると約200㎡を確保する必要がある。
(イ) (ア)以外の場合
a
市有施設又は民間ビルの活用
- 20 -
汎用機等による機器の運用に係り,いずれもマシン室の機能として大型空
調設備や大容量電源設備の確保,更にはフリーアクセス床構造であること等
が必要である。
既存市有施設活用の場合,これら設備に要する経費には約6,300万円
と見込まれ,加えて,汎用機等の機器移設費として約3,800万円,合計
で約1億円を要するものと見込まれる。
b
データセンターの活用
汎用機等による機器の運用の場合,設備関係や施設改修等の工事は要しな
い。機器の移設費と賃借料がかかる。
また,住民記録等のデータのオープン化(サーバ・クライアント)やクラ
ウドコンピュータの活用も考えられるが,この場合は住民記録,税,国保等
の事務処理等を根本的に見直す必要があるとともに,費用対効果などについ
ても十分に分析・検討する必要がある。
(ウ) (イ)により想定される共通課題
基幹業務のオンライン処理については,セキュリティ上,専用回線(データ
は暗号化)の敷設が必要である。また,回線の通信速度により遠距離になるほ
どデータ送信に時間がかかることから,諸証明の交付などの市民サービスや事
務処理効率低下のおそれがある。
イ
マシン室設置場所の方向性
現マシン室については,庁舎の耐震性に問題があることを除けば一定のセキュ
リ テ ィ が 確 保 さ れ て お り , 機器 も 安 定 し て 稼 働 し て いる こ と や ,「 耐 震 性 の あ る
安全な 施設 とし て現 在 地 周 辺 で 建 替 え る こ と が 適 当 」 と の 庁 舎 整 備 に 係 る 方
向性を踏まえれば,耐震性が確保され,かつ,市民サービスや事務処理効
率も低下しないことから,マシン室についても新たな庁舎内に設置するこ
とが適当と考える。
(5) バックアップデータの保全について
バックアップデータの保全については,庁舎整備と切り離して優先して検討する
ことが可能である。
ア
バックアップデータの保全方法について
(ア) 既存市有施設を活用する場合
耐震性が確保されている施設として第二庁舎に専用室を確保する方法があ
る。しかし,耐震性が確保されている施設であっても,入退室管理などに一定
のセキュリティ対策(例えば指紋認証機の設置など)を施した専用室の整備は
必要である。
(イ) データセンター等の民間施設を活用する場合
a
データ送信による方法
- 21 -
バックアップデータを専用回線又は公共回線(データは暗号化)を利用し,
データセンター等の専用ストレージ(ディスクファイル)に格納する方法で
ある。データセンター等が市内又は市外であることを問わない。しかし,基
幹業務データ(汎用機)のバックアップに限っても,そのデータ量が膨大で
あるため,データ転送には10数時間を要すると試算しており,翌日の業務
開始までにデータ転送を完了できないおそれが大きい。
b
媒体(テープ)保管による方法
総合庁舎内に保管しているバックアップデータ(磁気テープ)をデータセ
ンター等に搬送して保管する方法である。
運送事業者がデータ搬送専用トランク(GPS及び電子ロック付)を用い
て搬送するサービスもある。広い保管スペースやストレージといった機器を
要しないことから,保管料も月額約3,000円~5,000円,搬送料も
市内であれば,庁舎と保管施設間の1往復につき3,500円程度と見込ん
でいる。
イ
バックアップデータの保全
バックアップデータの保全については,庁舎整備と切り離し,優先して実施す
ることが可能であるとの本委員会の議論を踏まえ,実 施 可 能 な 方 法 に つ
いて検討した上で,優先的に行うべきものとして,住民情報の根
幹をなす基幹業務のバックアップデータの総合庁舎外への運搬・
保管を平成24年11月から開始した。
保全手法は,セキュリティ確保を第一に,また,現実的かつ低コストで速やか
に実施できることから,媒体保管による方法を選択した。
平成25年度からは基幹業務以外の各種バックアップデータも同様に保全する
よう検討する。
2
文書情報
(1) 現状と課題
執務室内の文書は,収受したものから処理中のものをはじめ,各種台帳や図面,
図書,参考資料など,内容,重要度は様々で,その量も膨大である。
保 存 文 書 は , 旭 川 市 事 務 取 扱 規 程 で 文 書 の 保 存 年 限 を 永 年 , 10 年 , 5 年 , 1 年
及び随時廃棄の5区分としているが,保存年限5年以上のものは,総合庁舎文書庫
(地下書庫)及び新旭川書庫などで保管している。また,執務室に保管しているも
のも多い。
また,平成17年度には公文書目録システムを導入し,公文書目録のデータベー
ス化を行っているが,更に文書自体を電子化し,起案・決裁・保存・廃棄等の一連
を処理する総合文書管理システムの導入が検討課題となっている。
なお,全庁ネットワークシステムの導入により,パソコンでの文書作成が一般的
と な っ た こ とな ど に 伴 い ,「 旭 川 市 に お け る電 磁 的 記 録 の 運 用 管 理ガ イ ド ラ イ ン 」
を 定 め , 公 文書 扱 い と す る も の は,「 組 織 共用 文 書 フ ォ ル ダ ー 」 に保 管 し , 保 存 年
- 22 -
限1年以上のものは紙に出力して保管する運用がなされている。
一方,これまでは保管場所の耐震性等の安全性よりも,増大する保存文書に対応
した保管スペースの確保に努めてきた側面がある。
紙文書は年数が経てば劣化するとともに,火災や水害などの被害を受けやすく,
地震により庁舎が倒壊し,火災が発生した場合などでは消失の危険性が高い。
保存文書は,その保管場所や管理方法によって安全性が大きく左右される。また,
執務室内の現用文書については,原本が消失してしまった場合の対策を検討する必
要がある。
現在の書庫
書
庫
場
所
面
積
備
考
地下書庫1
総合庁舎地下1階
69㎡
地下書庫2
総合庁舎地下1階
69㎡
新旭川書庫
東5条7丁目
324㎡
民間倉庫の借り上げ
5条通10丁目
524㎡
3~5階
東鷹栖4条3丁目
165㎡
5条庁舎
東鷹栖書庫
(2) 検討の観点
保管スペースの確保や,新たな総合文書管理システムの導入による事務の効率化
などは,地震等の災害対策とかかわりなく必要なものであるが,ここでは主に災害
対策としての文書情報の保全について検討した。
(3) 文書の保全対策の選択肢
ア
耐火ファイリングキャビネットの購入配置
耐火ファイリングキャビネットを購入配置し,執務室内の文書のうち重要なも
のについては,その中に保管する。
ただし,価格,重量が一般的なキャビネットに比べ7,8倍になることから,
計画的な導入や配置場所の検討が必要である。
イ
現全庁ネットワークシステムの活用
現時点でも起案等の作成した公文書は「組織共用文書フォルダー」に一時的に
保管されていることが一般的であることから,そのまま電磁的記録として保管す
ることが考えられるが,現サーバーの容量から,このまま長期間にわたり保管を
継続していくことは困難である。
- 23 -
ウ
新たな総合文書管理システムの導入
新庁舎を建設したとしても,そこに多大な文書の保管スペースを確保すること
は,庁舎全体のスペースの有効活用の観点からは適当でないことから,旭川市 ICT
推進プランに基づき,総合文書管理システムを導入し,文書の電子化を進める。
ただし,文書の電子化は,事務の効率化とともに保管スペースや劣化の問題,
災害時の保全等から有効な方法ではあるが,総合文書管理システムの導入経費が
膨大(金沢市のシステムで3億8,500万円)であることや,新たなシステム
への移行に伴う業務への影響が大きいことから,段階的な導入を含め慎重にシス
テム内容について検討を進める。
エ
新庁舎を建設する場合の書庫の整備
新庁舎を建設し,その建物内に文書庫を整備する場合は,文書の電子化の進行
状況や移動書架等の導入による省スペース化等を考慮したうえで,現在分散して
いる書庫を一箇所にまとめるために必要なスペースを確保する。また,保管する
永年保存文書等の中身の確認・整理作業についても併せて進める。
オ
一部の文書情報の電子化
災害復旧時に必要となる図面や重要文書の電子化によるバックアップ(複製)
を作成し,別の建物に保管する。また,永年保存文書についてのみ電子化を進め
る。
カ
空き施設の活用
保存文書の保管について,耐震基準を満たす空き市有施設や廃校舎の活用によ
り,安全性を確保する。
ただし,業務での利用に支障の出ることのないよう,設置場所や保存文書の内
容や現在の文書庫との調整を行う。
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庁 舎 整 備 手法 一 覧
耐震改修
現
庁
舎
改
修
免震改修
トータルコスト
市民の利便性
行政事務の効率化等
防災機能
整備手法・整備資金調達
入居部局
敷地・その他
・総合庁舎全体を免震改修
することは難しい。
・高層棟部分は免震改修と
し,低層棟部分を耐震改修
することにより建物全体の耐
○ 震性を確保することは可能
である。
・総合庁舎の場合,他の事例
・総合庁舎は既に建築後54
・低層階の耐震改修により1
から坪35万円前後と思われ
年経過しており,耐震性を向
~2階の市民窓口が分散化
る。 更に,建物内外装,設
上させ,各種設備を更新して
する恐れがある。
備関係等のリニューアル費
も,構造体の耐用年数が延
・狭隘化の解消のため,庁
びるわけではなく,近い将来
舎の分散化が拡大し市民
× 用も合わせると,新築工事と
~ 変わらない額になるおそれが × には建替の必要に迫られ, × サービスの低下を招くおそ
結果的に二重に莫大な財源
れがある。
△ ある。
を投入するおそれがある。
・免震と耐震の混合改修によ
り,1,2階については現在の
庁舎機能を維持できないお
それがある。
×
・多額の費用を要するが,改
修工事のためPFI事業にな
じまない。
△
・狭隘であるため,現庁舎の
中で防災機能を新たに付加
することは困難。
×
・基本的には現在に同じだ
が,一部部局の転出も考え
られる。
・建物内外装,各種設備のリ
ニューアルも行うことを考え
× ると,庁舎を使用しながらの
工事はできない。仮移転す
る必要がある。
△
・既存ストックの活用を図るこ
とができる。
○
制震改修
○
・民間施設については新耐
震以前の建物も多く,所要
の耐震性能を満たしている
か不明なものも多い。
民間施設に移
△
転
・制震ダンパーの設置費用
は,3億円程度と見込まれる
が,建物内外装,設備関係
等のリニューアル費用も合わ
× せると,免震改修ほどではな
~ いが相当規模の費用はかか
る。
・制震工事により狭隘化が進
・低層階の耐震改修により1
行するため,新たに民間ビル
~2階の市民窓口が分散化
の借上げが必要。
するおそれがある。
・総合庁舎は既に建築後54
・狭隘化の解消のため,庁
年経過しており,耐震性を向
舎の分散化が拡大し市民
× 上させ,各種設備を更新して × サービスの低下を招くおそ ×
も,構造体の耐用年数が延
れがある。
△
びるわけではなく,近い将来
には建替えの必要に迫ら
れ,結果的に莫大な財源を
二重に投入するおそれがあ
る。
・オフィスビルの場合,整備
・家賃であるため後年度負担
・庁舎が分散されるので,市
費用は原則不要。
が平準化される。
民は,あちこち回らなければ
・商業ビルなどを改修する場
・市内オフィスビルの賃料は
ならなくなるおそれがある。
合は,改修内容によって新
約1,500~1800円程度で
・市民にとって庁舎の位置が
×
築工事費の10~50%以上の
あり,概ね30年前後で支払
わかりにくい。
い家賃総額が新築工事費
・駐車場の確保が難しい。
◎ 経費を要する。
×
~
△ (金利込み)を超える。
・改修工事費と使用年数に
○
拠って年間の償却コストが大
・商業ビルの場合,立地場
きく異なる。
所やビルの特性に応じた部
・退去時の現状復旧費を見
○ 局を配置することにより市民
込む必要がある。
サービスの向上を図れる場
合もある。
・耐震性能を有する主な遊
休施設
(雨紛中学校,旭川第1中学
校,神居古潭小中学校,神
楽市民交流センター付属2
市有遊休施設
○
○ 階建建物)
に移転
・耐震診断未実施…旧北都
商高
建替え
(集約型大規
模庁舎)
・免震装置も設置し,より耐
震性の高い庁舎とすることが
できる。(他都市の最近の庁
舎建替えに多くみられる。)
◎
建
建替え
(分散型 中小 ◎
規模庁舎)
替
他用途との複
合建築
~
○
・廃校を庁舎に改修する場
合, 内部改修,設備関係の
改修が必要と思われる(新築
工事費の30~70%程度)
40,000㎡…150億円
(建設単価375千円/㎡ )
起債充当率75%
一般財源25%
×
・免震装置も設置し,より耐
震性の高い庁舎とすることが
できる。
・活用する既存建物によって
は耐震改修や内部改修等
◎ の必要もある。
小規模建替+
既存建物活用
総合評価
・耐震改修した場合でも,3
階のIs値は0.25, 7階で
0.43にしかならないため,
× 建物の耐震性は確保できな
い。
(基準のIs値は0.6)
・高層棟部分は制震改修と
し,低層棟部分を耐震改修
することにより建物全体の耐
震性を確保することは可能
である。
他
の
建
物
の
活
用
整備費用
耐震性の確保
工 法
20,000㎡…78億円
(建設単価390千円/㎡)
起債充当率75%
一般財源25%
△
○
・機械室等を共用することに
より,それぞれを単独で建設
○ するより低廉にすることがで
きる。
・多額の費用を要するが,改
修工事のためPFI事業にな
じまない。
△
・狭隘であるため,現庁舎の
中で防災機能を新たに付加
することは困難。
×
・整備費は最も高いが,管理
費コストの低廉化及び,高断
熱,省エネ機器等の導入に
より省エネ化を図ることがで
きる。
○ ・計画的に修繕することによ
り長寿命な建物にすることが
でき,1㎡当たりの1年間の
償却コストが最も低額にな
る。
・管理経費を含めた1㎡当た
りの年間償却コストは,集約
型大規模庁舎に次ぐ。
・管理経費を含めた年間償
却コストは,活用する既存庁
舎の改修費及び,残耐用年
△ 数に左右される。
・管理コストが軽減できる。
○
(注)総合評価については,14ページ以降の専門家等からのヒアリング等を踏まえ,最終的に評価したものである。
・建物内外装,各種設備のリ
ニューアルも行うことを考え
× ると,庁舎を使用しながらの
工事はできない。仮移転す
る必要がある。
△
・全部局が入居できない場
合,分散庁舎となり,事務効
率が低下するおそれがある。
○
・商業ビル等の場合,民間と
の連携により,地域の活性化
に資する施設の併設も考え
られる。
・既存ストックの活用を図るこ
とができる。
・賃貸借ビルに防災機能付
加は困難と思われる。
・取得ビルの場合,当該ビル
の耐震性及び面積によって
機能付加の可否が左右され
る。
・商業ビルの場合,デッドス
ペースが生じやすく,割高な
賃料になるおそれがある。
×
×
・PFIになじまない。改修工
事は行政が直接発注するこ
△ とが考えられる。
△
・活用する建物の面積,立地
場所,付加する防災機能の
内容により,付加の可否が左
右される。
・市民窓口を集約でき1箇所
・部局間の連携を密にする事
・PFIが市の直営事業より有
・防災センターの役割と調整
の庁舎で用務を終わらすこ
ができ,事務の効率化を図る
利になるか検討が必要。
し,当初から計画に盛り込む
とができる。
ことができる。
・起債を財源に行政の直営
ことができる。
・バリアフリーの庁舎にするこ
で事業を実施した場合,イニ
とができる。
シャルコストが最も多額にな
◎ ・庁舎の場所が分かり易い。 ◎
△ ることから,起債の裏負担分 ◎
・ランドマークになり得る庁舎
の一般財源(基金)も多額に
とすることができる。
準備しなければならない。
・起債の裏負担分に,ミニ公
募債の活用も可能。
・市民窓口を集約した配置
・総合庁舎,第三庁舎を統合
・PFIが市の直営事業より有
・当初から計画に織り込むこ
計画にすることも考えられ
された庁舎の場合,現在より
利になるか検討が必要。
とができるが,建設面積に制
る。
事務効率は向上する。
・直営事業の場合,事業費が
約されるおそれもある。
集約型庁舎建て替えよりも低
額であることから,確保すべ
○
○
○ き起債の裏負担分の基金
○
も,集約型よりは低額で済
む。
・起債の裏負担分に,ミニ公
募債の活用も可能。
・建替庁舎には市民対応部
・現在も分散庁舎のため基本
・当初から計画に織り込むこ
局を,既存建物には非市民
的には現在と同じ。
とができるが,建て替え面積
対応部局を配置ことにより,
に制約されるおそれもある。
△ ほぼ現状と変わらず。
△
○
・合築する施設,及び庁舎
規模によるが,概ね,市民の
○ 利便性は現在と同等若しく
は向上する。
・基本的には現在に同じだ
が,一部部局の転出も考え
られる。
○
・老朽化が進行している施設
・庁舎分散によって市民の
・活用可能な遊休施設はい
・既設建物の改修のためPFI
は改修費が多額になる一方
来庁が不便となるおそれもあ
ずれも大規模なものでないた
事業にはなじまない。
で整備後の耐用年数が短い
るが,立地条件に応じた部
め一部部局が使用するにと
ため不利
局を配置する事により利便
どまり,また,遠隔地にある場
・集約型庁舎に比較し,管理
性低下を軽減することも考え
合は事務効率が低下するお
△ 経費が割高になる。
△ られる。
× それがある。
△
△
△
・総費用は同面積の庁舎を
建設するより低廉。
・庁舎の分散化が拡大し,現
在の庁舎機能を維持できな
いおそれがある。
△
・実施手法の選択肢が広が
る。特に民間と連携した複合
○ 施設の場合,PFI事業に向
いていると考えられる。
・合築する施設によって,防
災機能も規定される。
○
・事実上,庁舎として使用で
きる施設は雨紛中学しかな
く,一部部局の入居にとどま
る。
(参考)
△ 雨紛中 1,498㎡
旭川第1中 1,522㎡
神居古潭小中 986.15㎡
北都商高 4,199.97㎡
・既存ストックの活用が図れ
る。
○
・建て替え対象庁舎の全部
局入居可。
◎
×
・建替規模により,建替対象
庁舎の全部局入居が左右さ
れることもある。
・第三庁舎の敷地を利用す
ることができる。
・建替庁舎規模の見極めが
必要(入居できない部局の
○ 手当)
~
△
△
・建替規模により,建替対象
庁舎の全部局入居が左右さ
れることもある。
△
・大規模庁舎に見合う敷地
が確保できるか。
・第三庁舎の敷地を利用す
ることができる。
・建替庁舎規模の見極めが
○ 必要(入居できない部局の
手当)
・敷地の有効活用ができる。
・現時点では合築できる施
○ 設が見当たらない。
○
庁舎整備検討委員会
委員長
鈴
木
義
幸
(総務部長)
大
家
教
正
(行政改革部長)
長谷川
明
彦
田
清
澤
東
平
野
(前任
長谷川
明
彦)
(総合政策部長)
(前任
岡
田
政
勝)
一
(地域振興担当部長)
(前任
赤
岡
昌
弘)
光
男
(都市建築部長)
文
彦
(防災監)
(前任
松
崎
幸
一)
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