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機械加工における高速ネットワーク利用技術
機械加工における高速ネットワーク利用技術 −NC マシンにおける遠隔地からの加工支援システムの実用化− ○上村誠、高橋孝誠、土村将範、河北隆生、岡嶌崇、城戸浩一 小笠原健一(熊本県工業技術センター)、渡辺健次(佐賀大学 理工学部)、 平澤純一、川村浩二(ネクサス(株))、山本英明(ナカヤマ精密(株)) 1 はじめに 従来、NC 工作機械(以下、 「NC マシン」 )を用い た加工分野では、加工機とコントローラなどを様々な 規格でローカルに接続して用いてきた。しかし、その 通信内容は制御や加工データに限られていた。 筆者らは、高速大容量ネットワークが普及しつつあ る今日において、そのネットワーク技術がより高度で 人に優しいものづくり技術の要素となり得るか否かの 検証を目的として、加工支援システムの構築をおこな った。 本システムでは、ものづくりの工程を構想、設計、 加工、検査の4工程として捉え、各工程に打合せ、指 示・確認、監視などが高頻度に必要であり、その内容 のほとんどに五感に依存する情報が存在することに着 目した。また、従来の NC マシンにおけるネットワー ク利用と異なり、遠隔地からの良質な通信が確保でき れば、ものづくりの方法論そのものが革新する可能性 顧 要求機能 についてもその知見を得たので報告する。 本研究は、熊本県工業技術センター(以下、 「当セン ター」)と佐賀大学間を通信・放送機構(TAO)が運用す る研究開発用ギガビットネットワーク(Japan Gigabit Network[1]、以下「JGN」)を利用して実証実験を行 った[2] 2 ものづくりの工程概念 企業活動におけるものづくりの基本的な流れを図 1 に示す。本研究におけるターゲットとなるものづくり は、金型などに代表されるいわゆる一品もので、しか も開発的な要素を含む高付加価値な製品であり、図 1 に示すような開発ステップを踏まなければならない場 合が多い。したがって、既存の図面を用いて委託加工 のみを行う場合と比較して、開発を伴う加工は図 1 に 示した項目が必要条件として付加されることになる。 客 要求コスト 要求性能 要求品質 委託加工製品 製品設計 製品構想 製品加工 製品検査 機能の具現化 品質保証 開発的加工製品 手段提供 モデル提供 加工メーカー 図 1 製品製造に伴う工程と共有情報 打合せシステム 3D-CAD/Server データ送付システム 3D-CAD/Client CAD/NC データ DNC 大容量・高速 CAD 段取りシステム ネットワーク 加工の専門家 加工監視システム センサリング 図 2 加工支援システム概念図 構想 設計 加工 検査 そのことは、企業の内外部を問わず製品製造に関わ 付加価値単品生産においては工程間において最適情報 る担当者間において綿密で速やかな情報の共有が行わ のフィードバックや個々のシステムパラメータの選択 れなければならないことを意味している。 や判断は、一人の担当者では不可能なほど複雑化して いる。 3 加工支援システム 支援システムは、それぞれの担当者の選択や判断を 図 2 に構築した加工支援システム(以下、 「支援シ 支援することを主な機能としていることから、各工程 ステム」 )の概要とその機能を示す。また、図中におい において担当者が遠隔地を認識し、目的に応じた判断 ては、その機能をサブシステム名とした。 の可否を評価項目とした。 支援システムは、ものづくりの各工程で必要な要素 マシニングセンターを用いたロボット部品の製作 機能からなっている。それは、様々な担当者間での“現 における各工程での実験結果を表 1 に例示する。それ 場”の共有と製品仕様を共有するためのツールから構 ぞれの目的に対して、支援システム使用が有効だった 成されていて、すべてが高速ネットワークで有機的に ものを◎、目的を達成できたものを○で示した。 連携している。なお、●の組み合わせが各工程に必要 なお、結果の詳細は交流会当日に詳細に報告する。 なサブシステムとなっている。 5 まとめ 4 加工支援システムの評価 高速ネットワーク技術の利用が、高付加価値単品物 CAD/CAM/CAE 技術などの周辺技術を含んだ意味 を想定したものづくりを、より高度で人に優しいもの での NC マシンを用いた加工技術の進歩は、加工ノウ へと革新する要素となり得るか検証した。その結果、 ハウを装置自体に取り込む形で、高品質で高速な加工 遠隔地間で五感に依存する情報(特に、音声や動画など を可能とする装置を生み出してきている。しかし、高 の高速大容量データ)を共有できることが分かった。 使用ツール 構想工程 目的 結果 このことは、単に短納期や不具合の極小化を実現す 音声、動画、 仕様 ◎ るのみならず、従来残せなかった領域の加工情報をデ WBD, IRC 機能 ◎ ータとして整理保存できることを意味する。 すなわち、 各種の技術や技能、経験などをデジタルデータとして 設計工程 加工工程 音声、CAD、 材料 ◎ 動画 モデル ○ WBD, IRC 加工方法、工具 ◎ 音声、動画、 段取り ◎ 詳細な音声・ テスト加工 ◎ 粗加工 ○ 仕上げ加工 ○ 動画 CAD、 WBD, IRC 音声、動画、 機上検査 ◎ 詳細な音声・ 測定器 ◎ CAD WBD,IRC 参考文献 [1] 通信・放送機構研究開発ギガビットネットワ ーク(JGN), http://www.jgn.tao.go.jp [2] 河北・岡嶌他,高速ネットワークを用いた遠隔 ンター研究報告第 40 号(平成 13 年度),p36-42 など 動画 なる。 打ち合わせ・指示システム,熊本県工業技術セ 振動、温度 検査工程 保存でき、製造ノウハウを伝承していくことが可能に , 2002.10 [問合せ先] 熊本県工業技術センター 生産技術部 上村誠 TEL:096-368-2101 E-mail:[email protected]