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Keysight Technologies B1500A 半導体デバイス・アナライザ

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Keysight Technologies B1500A 半導体デバイス・アナライザ
Keysight Technologies
B1500A 半導体デバイス・アナライザ
B1500AのWGFMUモジュールを使用した
1 μs超高速NBTIの評価
Application Note
はじめに
新しい半導体プロセスの信頼性評価を短時間で行うことが求められています。high-kゲート誘
電体などの新しい材料とデバイス形状の小型化により、数年前にはなかった信頼性の問題が新た
に生じているため、この目標を達成することがますます困難になっています。特に、負バイアス
温度不安定性(NBTI)と正バイアス温度不安定性(PBTI)により、高ゲートバイアスでMOSFETのし
きい値電圧(Vth)が低下し、最先端の半導体プロセスでは高温が非常に重要な領域の1つになって
います。NBTIに関する多くの研究により、測定されるVthの低下は、テストの実行方法(ゲート
に印加するストレスの種類、ストレスの除去とVth測定の間の経過時間など)に大きく依存する
ことがわかっています。このため、すべてのNBTI測定ハードウェアが、(DCストレス以外に)さ
まざまな種類のACストレスを発生させたり、ストレスの除去後1 μs以内に測定できることが重
要です(動的回復効果を回避するため)。
より正確で現実的なデータを得るためには、単一のゲートバイアス電圧でドレイン電流の(Id)サ
ンプリング測定を実行するのではなく、Id-Vg掃引を使用してVthを測定する必要があります。
ストレスの除去後にNBTIの動的回復効果を評価するには、IdスポットとId-Vg掃引の両方の測定
で、μs以下から1000 s以上までの連続したサンプリング測定をログ(対数)間隔で行える必要が
あります。さらに、短いストレス期間(約1000 s)の後に測定されたVthとIdの変動から正確な寿
命を予測するには、測定ノイズフロアが低くなければなりません。これらは難しい要件ですが、
キーサイトのB1500A半導体デバイス・アナライザの新しい波形発生器/高速測定ユニット
(WGFMU)モジュールは、こうしたニーズをすべて簡単に満たすことができます。このアプリケー
ションノートでは、B1500AのWGFMUにより超高速NBTI測定のニーズに適したソリューショ
ンが得られることを紹介しています。
03 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
基本的なNBTIテストの問題
NBTI劣化とは?
NBTIによるVthおよびIdの劣化は、1990年代初めにPMOS FETで初めて観測された現象ですが、
こうした特性の背後にある正確な物理的メカニズムについては、今日もなお議論を呼んでいま
す。図1に、NBTIの劣化の概要を示しています。一定の期間にわたって、ドレイン、ソース、サ
ブストレートに対して負バイアスでゲート電圧をかけると(図1aを参照)、FETの特性は変化しま
す(図1bを参照)。図1bのように、ゲートのしきい値電圧(Vth)は上昇し、ドレイン電流(Id)は減
少します(ストレス印加前と比較して)。実験データからは、温度が高く、ゲート酸化物が薄いほ
ど、NBTI劣化が進むこともわかります。これは、最先端の半導体プロセスがこのような現象の
影響を強く受けることを意味します。このため、信頼性の基準を満たしていることを保証するた
めには、デバイスの寿命に対するNBTIの影響を正確に予測することが重要になります。
負ゲート
バイアス
Id 初期Id-Vg曲線:
ストレス印加前
G
0V
xxxxxx
S
0V
D
n-Well
ドレイン電流
ゲートの応力場
Idの減少
ストレス印加後
Vthのシフト
0V
(a) ストレスバイアス条件
ゲート電圧
Vg
(b) Id-Vg曲線の変動
図1. PMOS FETのNBTI劣化。
NBTIテストの問題
前述のように、NBTI劣化の正確な物理的原因に関しては、研究者の間で確固たるコンセンサス
はありません。そのためICプロセスエンジニアは、ある程度の追加のNBTI信頼性マージンを考
慮して、デバイスのレイアウトモデルの不確かさに起因する早期のデバイス障害を回避するのが
賢明です。NBTI劣化が2つの要素(永久的な劣化要素(ただし、ある程度のゆっくりとした回復が
見られる)と、非常に高速な動的回復を見せる回復可能な劣化要素)から構成されていることは広
く認められています。これら2つのNBTI劣化要素は、図2に点線で示されています。これら2つ
の効果の合計が実線で示されていて、最終的なNBTIの測定結果を表します。デバイスの寿命を
正確に予測する最良の方法は、必要なストレス時間まで永久的な劣化要素を外挿することです。
ただし、これには多くのストレス時間が必要です。また、図2からわかるように、測定された
NBTI劣化曲線と永久的なNBTI劣化線が一致するのは、かなりのストレス時間まで外挿した場合
です。
ダイナミックリカバリー(動的回復)
長時間にわたってデバイスにストレスを印加することは望ましくも、現実的でもありませんが、
NBTIの動的回復効果のために、比較的短いストレス期間後に測定したNBTI劣化からデバイスの
寿命を外挿して予測することは困難です。図2の「動的回復要素」と示された太い点線と細い点
線からは、ゲートストレスの除去とVthまたはIdの測定の間の時間によって、動的要素について
異なるプロットが得られることがわかります。太い点線がストレス除去と測定の間の遅延が短い
場合の捕捉データを示しているのに対して、細い点線はストレス除去と測定の間の遅延が長い場
合の捕捉データを示しています。
04 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
ダイナミックリカバリー(動的回復)
(続き)
図3はNBTI動的回復データの例を示したもので、ストレス期間、動的回復量、ストレス回復の時
定数がすべて相互に作用していることがわかります。
任意
スケール
100
Vthの変化/Idの変化(%)
測定されたNBTI劣化
寿命限界目標
外挿されたNBTI
劣化曲線
動的回復要素*
D
10
* 動的回復要素の振幅は、
ストレス除去と測定の間の
時間遅延によって決まります。
永久的なNBTI劣化
1
ノーマライズした
時間
(s)
1
10
100
1k
10k
100k
ストレス時間
(ログスケール)
抽出された
寿命
図2. NBTI劣化の構成要素と、ダイナミックリカバリー効果と測定遅延の関係。
電圧
ストレス
測定
ゲートバイアス
ゲートストレス
ドレイン=0 V
ドレインバイアス
時間
ストレスから測定への
切り替えタイミング。
電流
ドレイン電流(Id)
ストレス期間が短い
場合は急速に回復。
動的回復による、
一貫性のない
サンプルデータ。
より長い
ストレス
印加
動的回復(指数関数)
初期Id
より短い
ストレス
印加
サンプリング遅延
0
図3. 動的回復効果が見られるNBTIデータ。
測定に切り替えた後の
遅延時間
時間
05 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
ダイナミックリカバリー(動的回復)
(続き)
これは1つの例に過ぎませんが、操作するユーザー、テストシステム、使用するテストパラメー
タが異なれば、再現性のあるNBTI測定データを得ることは困難であることがわかります。この
ため、ストレスの除去からパラメータの測定までの時間の遅延をできるだけ短くして、動的回復
効果を最小限に抑えることが重要です。
AC動作条件における寿命の抽出
前述の問題に加えて、デバイスの寿命予測に深刻な影響を与える可能性のある重要な要素がもう
1つあります。純粋なDCストレスを印加してNBTIテストを実行すれば、ACストレスを印加して
実行した場合よりはるかに短いデバイスの寿命を予測します。しかし、ACストレスのほうが、
デバイスが実環境下で受ける可能性のあるストレスをより正確に表しています。つまり、DCス
トレスだけを印加してNBTIテストを実行した場合のデバイスの寿命予測は非常に悲観的なもの
になります。また、こうした基準に基づいて設計すれば、プロセスの過剰設計に陥り、それに付
随して収益性にマイナスの影響が及ぶ可能性があります。
06 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
NBTIテスト要件とB1500AのWGFMUソリューション
NBTIテストには、以下のような一般的な要件があります。
– 高速測定
– 1 μs以内でのIdサンプリング
– Vthを求める場合は、1ポイント当たり1 μsでId-Vg掃引
– 低雑音のId測定*
– 0.1 mV rmsと等価な雑音レベル(Vth分解能)
– 1 μAの電流測定レンジで1 nA未満の実効分解能
– 動的回復解析のための広いタイム・サンプリング・レンジ
– μs以下から1000 sまでのサンプリング(ログサンプリング間隔)
– ACパルスストレス印加と高速サンプリングテスト
*注記:これらの雑音レベルは適切な積分時間を仮定しています。
超高速NBTI Idサンプリングテスト
図4からは、WGFMUモジュールでは、超高速NBTIテストに欠かせないmA以下のレベルのIdサ
ンプリング測定を実行できることがわかります。オシロスコープのトレースの上側の部分は、ス
トレス/ Id測定/ストレスサイクルの全体を示しています。オシロスコープのトレースの下側
の部分は、Id測定を拡大表示したものです。パルスの立ち上がり/立ち下がり時間、ゲートパル
スに対するドレインパルス遅延、ゲートパルスに対するIdサンプリングのタイミングなど、すべ
ての波形タイミングを10 nsの分解能で表示できます。動的回復効果の解析をサポートするため
に、リニアまたはログ間隔でIdをサンプリングすることができます。ゲートバイアス電圧は、Id
測定の完了直後にストレス値まで戻る可能性があります。
ストレス#1
ストレス#2
次のストレス
Vg
Vd
NBTI Idサンプ
リングの拡大表示
Vg
Id測定パルス
Vd
Id測定タイミング
(10 nsの分解能)
図4. 超高速NBTI Idサンプリングテストの波形。
超高速NBTI Id-Vg掃引テスト
動的回復効果によるNBTIデータの歪みを最小限に抑えるための最良の方法は、単一のゲートバ
イアスでIdをサンプリングすることです。しかし、この測定からVthを直接抽出することはでき
ません。Vgを掃引すれば、Id-VgプロットからVthを直接抽出することができます。図5は、
WGFMUを使用して捕捉したId-Vg掃引データの例を示したものです。
07 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
超高速NBTI Id-Vg掃引テスト(続き)
ここでは、2つの異なる条件(1 μsと100 μsのステップ時間)で、Vgが一定のステップ値ずつ増
加されています。2つの測定は完全に重なり合っているので、超高速NBTI特性評価を使用すれば、
1 μsのVg-Id掃引測定で正しい結果が得られることがわかります。適切な積分時間を設定して
いれば、この方法はWGFMUのすべての電流測定レンジ(1 μA ∼ 10 mA)で有効です。
超高速NBTI Id-Vg掃引(1 μsのVgステップ)
-1.E-03
-9.E-04
-8.E-04
Id(A)
-7.E-04
-6.E-04
-5.E-04
-4.E-04
-3.E-04
100 μsのステップ(基準)
-2.E-04
200 ns/ステップのランプ
-1.E-04
データは参考値。
0.E+04
0
-0.5
-1
-1.5
-2
-2.5
-3
Vg(V)
図5. Vth抽出用の超高速NBTI Id-Vg掃引データ。
Id-Vg掃引測定には、いくつかの選択肢があります。最も一般的な方法は、基本的な階段状のVg
掃引測定です(図6aを参照)。ただし、WGFMUは、ゲート電圧(Vg)を増加させながら掃引測定
することもできます。図6bは、ランプド・ゲート・ダブル掃引測定の例で、段階状のVg掃引の
場合とまったく同じタイミングでVgとIdが測定され、同じIV曲線の測定結果が得られています。
このことから、WGFMUの柔軟性が非常に高いこと、最も要求の厳しい超高速NBTI特性評価の
ニーズにも対応できることがわかります。
図7は、WGFMUの超高速NBTI Id-Vg掃引機能を使用したNBTI特性評価の例を示したものです。
図7aは、WGFMUの10 μAの測定レンジで実行されたId-Vg掃引測定を示しています。このプロッ
トの凡例では、"T"に続く数字は、測定前に印加されたストレスの秒数を表します。例えば、
"T100"は、100秒間のストレス印加後にこのId-Vg掃引測定が実行されたことを意味します。図7b
は、Id=1 μAとなる領域の周辺のId-Vgプロットを拡大表示したもので、このポイントのVthを
測定できます。掃引の各Vgポイントの測定時間は2 μsに設定されています。これは、約1 nA
rmsの 雑 音 レ ベ ル に は 十 分 な 時 間 で、71ポ イ ン ト の 曲 線 が140 μsで 得 ら れ ま す。 図7cは、
Id-Vg掃引データに対して補間を用いることにより、Id=1 μAで抽出されたVthのNBTI寿命解
析プロットを示したものです。このデータは妥当で、トレンドラインのR2の値は、このデータ
の相関が高いこと、測定データが正確であることを示しています。
08 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
超高速NBTI Id-Vg掃引テスト(続き)
Vg
Vd
NBTI Idサンプ
リングの拡大表示
Vg
Vd
(a) 階段状のVg掃引IV測定
Vg
Vd
(b) ダブルランプVg掃引IV測定の例
図6. 超高速Vg掃引波形のための測定オプション。
NBTI劣化のべき乗則フィッティング
超高速NBTI Id-Vg測定(100 μsの掃引)
100.0
T0
T100
T200
T300
Id (A)
-4.00E-06
-6.00E-06
-9.00E-07
Id-8.00E-06
(A)
-9.50E-07
-1.05E-06
Id (A)
-1.10E-06
-1.20E-05
-1.40E-05
-0.6
0.1896
10.0
100
T500
T700
T1000
-1.00E-06
-1.00E-05
デルタVth
(mV)
0.00E+00
-2.00E-06
-0.5
-0.4
-0.3
Vg ( V)
-0.2
-0.1
-0.350
0.0
-0.345
-0.340
-0.335
ストレス時間(s)
1000
(c) Id=1 μAでのVthを使用したNBTI解析
-1.15E-06
-1.20E-06
y = 9.3707x
R2 = 0.9971
-0.330
Vg ( V)
(b) Id=1 μA近傍の拡大表示。
(a) 100∼1,000 sのストレス時間後におけるId-Vg 100 μs掃引データ。
図7. 2 μs/ポイントのサンプリング速度でId-Vg掃引を使用して、1,000秒間ストレスを印加した後のNBTIの特性評価。
09 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
高速サンプリングでのWGFMUの低雑音性能
NBTI寿命データを抽出するには、Id測定の場合は雑音レベルが0.1 %(rms)以下(Idの実測値を基
準にして)、Vth測定の場合は雑音レベルが0.1 mV(rms)でなければなりません。しかし、これら
の雑音リミット値は絶対的なものではありませんが、デバイス自体の特性やNBTI劣化の測定前
に印加されたNBTIストレスの長さなど、いくつかの要因によって決まります。図8は、Vth測定
の変動がNBTIの寿命予測に与える影響の例を示したものです。このプロットでは、中心線はVth測
定の雑音のない理想的なケースを示しています。また、上側と下側の線は、100 s ∼ 1,000 sのス
トレス時間のある時点で0.1 mV(rms)の雑音(±0.3 mVのp-p雑音に相当)が付加されたケースを
示しています。NBTI劣化は、これら3つのポイントから外挿されます。もちろんこれは極端な例
ですが、このグラフからは、雑音がNBTI寿命の予測に大きな影響を与える可能性があることが
わかります。経験則として、Vth測定における0.1 mV(rms)の雑音は許容できます。
NBTI寿命の抽出におけるVth雑音の影響
デルタVth(mV)
100.0
1 yr.
10.0
1.E+02
1.E+03
1.E+04
1.E+05
1.E+06
1.E+07
1.E+08
1.E+09
ストレス時間(s)
図8. Vth雑音のNBTI寿命予測への影響。
高Gm FETの積分時間に対する、
2 mA Id(10 mAレンジ)でのNBTIの雑音
Id雑音(mA rms)
10
1
0.1 % / 2 mA Id
FGFMU
データは参考値。
0.1
1.0E-07
1.0E-06
1.0E-05
積分時間(s)
図9. 高Gm FETのWGFMU NBTI Id測定の雑音。
1.0E-04
1.0E-03
10 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
高速サンプリングでのWGFMUの低雑音性能(続き)
図9は、さまざまな積分時間でWGFMUを使用して高Gm FETでNBTI測定を行った場合のId雑音
のプロットです。参考のために、0.1 %(rms)の雑音リミットが赤で示されています。測定デー
タは0.1 %(rms)の雑音リミットをはるかに下回っているので、WGFMUが非常に短い積分時間
で確度の高いNBTI測定を実行できることがわかります。つまり、サンプリング間隔を短くする
ことができます。このため、超高速のサンプリング間隔でも、WGFMUは確度の高いNBTI特性
評価が行えます。
図10からは、1 μAの電流測定レンジでも、WGFMUは超低雑音を実現できることがわかります。
しきい値以下の領域でのVthの抽出には1 μAのレンジが必要なことが多く、このプロットから
は、このレンジの1/10のレベル(0.1 μA)で電流を測定する場合でも、良好なNBTI評価を実現で
きることがわかります。このような低電流における低雑音レベルが、NBTIの評価にWGFMUを
使用するもう1つの利点です。
1 μAレンジの雑音レベル/フルスケール
雑音/1 μA(mA rms %)
0.100%
1/10フルスケール測定値(0.1 μA)の
代表的なワースト・ケース雑音リミット
0.010%
データは参考値。
0.001%
1.00E-08 1.00E-07 1.00E-06 1.00E-05 1.00E-04 1.00E-03 1.00E-02 1.00E-01
積分時間(s)
図10. 1 μAレンジにおけるWGFMUの残留雑音。
動的回復の評価のための広いサンプリングレンジ
高度なNBTI評価においては、動的回復に関する知識が最も重要なことの1つであり、広範囲にわ
たるIdサンプリングまたはVth抽出が必要です。リニア間隔、ログ間隔、または任意指定のタイ
ミングでの測定サンプリングが可能なWGFMUは、このようなニーズにも対応できます。図11は、
PMOS FETを125 ℃で0.5 μs ∼ 600 sのログ時間でIdを測定することにより、(10サンプル/
ディケードで)捕捉されたNBTIデータの例を示したものです。このデータは、MOSFETの動的回
復動作を明確に示しています。WGFMUの超高速Id-Vg掃引機能を使用することにより、Vthの
抽出にもこれと同じ方法を用いることができます。さらに、標準的なNBTIテストが完了した後
にこの動的回復測定を実行することができます。このため、NBTI劣化と動的回復を1回のストレ
ステストで評価できます。長期にわたるストレステストを2度も実行する必要がなく、両方のタ
イプのデータを入手できるので、コストと効率の面で明らかに利点があります。
11 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
動的回復の評価のための広いサンプリングレンジ(続き)
NBTIの動的回復
-6.00E-04
-6.50E-04
Id (A)
-7.00E-04
-7.50E-04
-8.00E-04
-8.50E-04
-9.00E-04
-9.50E-04
-1.00E-03
1.00E-07
1.00E-05
1.00E-03
1.00E-01
1.00E+01
1.00E+03
緩和時間(s)
図11. 0.5 μs ∼ 600 sのIdサンプリングによる動的回復。
ACストレスの印加による新しいプロセスの評価
ストレス印加段階で印加されるストレスのタイプはNBTI劣化の大きさを大きく左右し、デバイ
スの寿命予測に大きな影響を与えます。図12は、NBTIテスト中に印加されるDC/ACストレスの
例を示したものです。ACストレスは、代表的なICの動作中に受けるストレスをシミュレートす
ることが目的です。WGFMUではACストレスをドレインに印加することもできますが、この例
では、DCドレイン電圧ストレスが両方のケースに対して印加されています。
ゲートバイアス
DCストレス
測定
DCストレス
ACストレス
測定
ACストレス
DC
AC
時間
ドレインバイアス
(DCとACの両方の
ストレスの場合)
時間
図12. NBTI測定におけるDC/ACストレス印加。
12 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
ACストレスの印加による新しいプロセスの評価(続き)
図13は、DCとACの両方のケースのIdの劣化(%)を示しています(ACストレス値のピークは一定
のDC値と同じです)。このデータからわかるように、DCストレスだけを印加した場合はデバイ
ス寿命が非常的に悲観なものになり、実環境条件を正確に反映したものにならないので、NBTI
測定には、ACストレスとDCストレスの両方の測定が不可欠です。これまでは、ゲートでのAC
パルス信号源と外部測定器を使用したNBTI Id測定に必要なDCバイアス源の切り替えに伴う複雑
さから、正確なACストレスデータを得ることは非常に困難でした。もちろん、WGFMUを使用
すれば、プログラミング手順が簡単なので、こうした作業にも容易に対応できます。
100
デルタId
(%)
DC
デューティー
サイクル50 %
10
デューティー
サイクル25 %
1
1.E-04
1.E-02
1E+00
1.E+02
累積絶対ストレス時間(s)
図13. DC/ACストレス印加に起因するNBTI劣化の変動。
1.E+04
13 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
ACストレスの印加による新しいプロセスの評価(続き)
図14は、WGFMUを使用して作成された
(100 kHz、50 %のデューティーサイクルの)
AC NBTI
波形をオシロスコープで捕捉したものです。波形にはグリッチが発生しておらず、
オーバーシュー
トもまったく見られません。ACパルスの周波数は1 MHzまで上げることができます
(50 %の
デューティーサイクル、顕著なオーバーシュートなし)。
ストレス
ストレス
ストレス
NBTI Idサンプ
リングの拡大表示
Vg
Vd
ストレス
パルス
測定
図14. ACストレス波形(100 kHz、50 %のデューティーサイクル)。
ストレスパルス
14 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
NBTIソフトウェア
B1500AのWGFMUモジュールを制御するためのソフトウェアオプションは2種類あります。1つ
は、EasyEXPERTアプリケーションテストです。もう1つのオプションは、Windowsベースの外
部PCで動作する付属のサンプルソフトウェアです。サンプルソフトウェアは、対話形式または
(ユーザーによるカスタマイズにより)大型システムの一部として使用することにより、複数の
WGFMUモジュールを用いてパラレルNBTIテストを実行したり、WGFMU制御機能を既存のテ
ストシステムに統合して自動テストを実行することができます。
EasyEXPERTアプリケーション・テスト・ソフトウェア
図15は、WGFMUの制御用として内蔵されている4つのNBTIアプリケーションテストを示した
ものです。これらのアプリケーションテストは、DC/ACストレス、高速Idサンプリング、高速
Id-Vg掃引の4つの基本的な組み合わせをカバーしています。
ストレス*
* ゲート波形を表す
DC
Id高速
AC
DCストレス
Id測定
ACストレス
Id測定
DCストレス
Vth掃引
ACストレス
Vth掃引
測定
サンプリング
Id-Vg
高速掃引
(Vth抽出)
図15. 内蔵のEasyEXPERT NBTIアプリケーションテストのストレス印加/測定の組み合わせ。
図16は、Idサンプリングの場合のEasyEXPERT NBTIアプリケーションテストの機能を示してい
ます。左側にユーザーインタフェース、右上にさまざまなストレス/測定タイミングでの中間Id
サンプリングデータ、下部に最終的なNBTI劣化対ストレス時間のプロットがそれぞれ表示され
ています。EasyEXPERTインタフェースの"Results"ウィンドウに、中間結果に加えて、最終的
な劣化データが保存されます。Id-Vg掃引モードの場合は、FETのVthを定義するために選択さ
れたId電流に対応するゲート電圧に加えて、Id-Vg掃引データが中間結果に表示されます。最終
的なNBTI劣化グラフには、印加されたストレス時間に対して抽出されたVthがプロットされてい
ます。
15 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
EasyEXPERTアプリケーション・テスト・ソフトウェア(続き)
ストレス時間
EasyEXPERT NBTIアプリケーション・テストのGUI
中間出力
サンプリング時間
または掃引
中間NBTI
劣化データ
最終出力:
NBTI劣化の結果
ストレス時間
図16. 超高速NBTI EasyEXPERTアプリケーションテストのGUIとディスプレイ。
Windowsベースの外部PC用の高性能サンプルソフトウェア
NBTI測定に関する最終的なコンセンサスはまだ得られておらず、さまざまな技術会議で研究者
たちは、NBTI劣化のメカニズムを評価するためのさまざまな方法を発表しています。このため、
NBTIテスト用のWGFMUを制御するためのソフトウェアは、高い柔軟性を備えていなければな
りません。さらに、信頼性の高い既存のテスト環境に簡単に統合できるソフトウェアを提供する
ことが重要です。
このようなニーズを満たすために、キーサイトは、さまざまなソフトウェア環境における
WGFMUのプログラミングをサポートするWindows対応のAPIを提供しています。図17は、
WGFMUのWindows APIライブラリを使用してVisual C#で書かれたNBTIサンプルソフトウェ
アのGUIです。このソフトウェアは、WindowsベースのPC上で動作し、B1500AをGPIBで制御
します。APIは、最先端のNBTI測定に重要なさまざまな機能に対応しています。これらの機能に
は、以下が含まれています。
– μs以下のタイミングから可能なリニア/ログ時間でのIdサンプリングとId-Vg掃引
– オンザフライ(OTF)NBTIテスト
– プリ/ポストストレスIdまたはId-Vg掃引測定
– 中間のNBTIテストセットアップに対して独立した、μs以下から1,000 s以上までのポスト
動的回復テスト。(図18を参照)
– DCストレスまたはACストレスの選択
– 2つのWGFMUモジュール(4チャネル)のサポート。注記:これにより、回路コモンではな
くWGFMUチャネルに、MOSFET信号源とサブストレートを接続できます。このため、測
定の柔軟性が大幅に高まるだけでなく、同じウエハー内のさまざまなパッドレイアウトを
持つデバイスにも対応できます。
16 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
Windowsベースの外部PC用の高性能サンプルソフトウェア(続き)
この高度なサンプルソフトウェアは、B1500AのWGFMUモジュールに付属しています。このソ
フトウェアをそのまま使用してNBTIデバイスの劣化を対話形式で評価したり、現在使用してい
る信頼性の高いテストシステム用にカスタマイズして既存のソフトウェアと組み合わせること
も容易に行えます。サンプルソフトウェアには、NBTIアプリケーションに加えて、DC/パルス
ドモード用の簡単な掃引測定、超高速サンプリング測定が含まれています。
図17. Windowsベースの外部PC用のNBTIサンプルソフトウェアのGUI。
V
ストレス電圧
基準測定
ストレスフェーズ
ポストストレス
測定
0V
ストレス印加中の
測定
最後のストレス 測定インターバル
印加時の測定 (ログまたはリニア)
時間
図18. アクティブストレス/ポストストレスNBTI測定シーケンス。
17 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
B1500AのWGFMU/RSUシステムのセットアップ
図19に、WGFMUを使用してオンウエハー NBTIテストを実行するための代表的な測定構成の概
要を示します。セットアップは、WGFMUモジュール1台とリモート・センス/スイッチ・ユニッ
ト(RSU)2台から構成されています。RSUは、1 μAの電流レンジで高速動作している場合でも、
優れた波形品質のパルスがDUTに印加されるように、20 cm未満の間隔で被試験デバイス(DUT)
に近接して配置するできるように設計されています。波形の歪みや反射を防ぐには、DUTグラ
ンドとRSUのBNCケーブルの同軸シールドの間に電流の戻り経路を確保することが重要です。
RSUとRFプローブを組み合わせて使用した場合は、グランド-信号(G-S)またはグランド-信号グランド(G-S-G)構造により、適切な電流戻り経路が確保されます。RSUとDCプローブを組み
合わせて使用した場合は、同様の結果を実現するには、特殊なケーブルが必要です。キーサイト
は、多くのウエハー・プローバー・メーカーと同様に、こうした必要な配線を提供できます。
B1530A
WGFMU
RSU
電圧印加、電流測定
同期
ゲート電流の
流れ
(a) WGFMU、RSU、デバイスの
接続の概要
ドレイン電流の
流れ
電圧印加、電圧測定
ゲー
ト戻
電流 り
ゲート
RSUから
戻り
イン
ドレ 流
電
ドレイン
RSUから
ゲートDCプローブ
ドレインDCプローブ
Well DCプローブ
電源DCプローブ
(c) DCプローブを使用した超高速NBTIのプローブ接続。
(b) ウエハープローバー上の
WGFMUとRFプローブ
図19. 超高速NBTIシステムの構成例。
電源とサブストレートが、高周波戻り経路を確保する
ためにWGFMUのコモンに接続されています。
18 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
B1500AのWGFMU/RSUシステムのセットアップ(続き)
図20に、WGFMUとRSUのブロック図を示します。線形任意波形発生器(ALWG)は、PGモード
と高速IVモードで同じように動作します。PGモードは、より高速のパルスをサポートし、50 Ω
の出力インピーダンスを備えていますが、PGモードでは電圧測定しかサポートされていません。
高速IVモードは、PGモードよりわずかに低速ですが、電圧と電流の両方の測定が可能です。高
速IVモードでは、10 mA ∼ 1 μAのフルスケール、4桁の実効分解能の5つの固定の電流測定レ
ンジがサポートされています。1台のB1500Aメインフレームに最大5台のWGFMUモジュール
(10チャネル)を搭載でき、パラレルNBTIテストが可能です。
SMU
SMUから
WGFMUおよびRSU
PGモード
50 Ω
任意リニア
波形
発生器
(ALWG)
WGFMU
SMU
出力の
オン/オフ
RSU
出力
WGFMU
高速IV
モード
5 nsのサンプリング
IM
V
ADC
50 Ω
A
x1/5
10 mA∼
1 μAの5つの
RSU
電圧モニター
レンジ
VM
図20. WGFMUと1 RSUチャネルのブロック図。
RSUとSMUの切り替え
RSUの出力は、ソフトウェアコマンドにより、RSUのトライアキシャル入力に接続されている
電源/モニター・ユニット(SMU)に切り替えることができます。これにより、SMUを使って
RSUの出力を測定することができます。SMUは、WGFMUにはない電圧/電流出力機能や電圧
/電流測定レンジを備えています。図21には、RSUのトライアキシャル(SMU)入力と電圧モニ
ター出力が示されています。
RSU
電圧モニター
出力
SMU入力
図21. SMA出力、BNC電圧モニターー出力、トライアキシャルSMU入力を備えた
RSU。
19 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
WGFMUの出力波形のモニター
WGFMUの電圧出力をモニターする方法は2つあります。もちろん、1つの方法は、WGFMUに
内蔵されている電圧測定機能を使用する方法です。RSUにもバッファ付き電圧モニター出力が
あります。RSUの電圧モニター出力を使用してオシロスコープを接続することにより、WGFMU
の電圧出力をモニターできるので、WGFMUの電流測定機能を妨げることなく、出力電圧波形
をモニターできます。この機能は特に、WGFMUの電圧測定機能の帯域幅制限により検出不可
能な超高速の信号遷移を検出するために有効です。
まとめ
このアプリケーションノートでは、B1500Aの新しいWGFMUモジュールを使用することにより、
超高速NBTI測定の問題を解決できることを紹介しました。外部機器(独自に作成した回路、オシ
ロスコープ、パルスジェネレーターなど)は不要です。WGFMUソリューションの主な機能は、
低雑音のμs以下のサンプリング機能と、複雑なストレス印加/波形測定をサポートするALWG
機能です。
WGFMUの新しいACパルスドNBTIソリューションは、高度なNBTIテストのニーズに最適です。
また、パルスジェネレータ、オシロスコープ、外部スイッチング回路などの既製のコンポーネン
トを組み合わせるだけでは、その性能を再現することはほとんど不可能です。WGFMUは、IC
内部の素子に実際に印加されるACストレスを再現することによって現実的なNBTIの寿命を求め
ることができる、唯一のツールです。
付属のEasyEXPERT超高速NBTIアプリケーション・テスト・ライブラリは、単一のWGFMUモ
ジュール(2チャネル)を制御するための使いやすいインタフェースを備えています。また、
B1500Aベースの超高速NBTIテストシステムの構築に使用できます。
付属の超高速NBTIサンプルソフトウェアとAPIを使用すれば、B1500AのWGFMUモジュールを
外部PCからGPIBで簡単に制御できます。また、EasyEXPERT超高速NBTIアプリケーション・テ
スト・ライブラリよりも測定の柔軟性が優れています。サンプルソフトウェアは機能の拡張やカ
スタマイズが簡単で、信頼性の高い既存のテスト環境やパラメトリック解析環境に統合できま
す。このソフトウェアを使用すれば、10 ns分解能の任意波形と同期可能な超高速電流/電圧測
定機能など、WGFMUのすべての測定機能にアクセスできます。
20 | Keysight | B1500A 半導体デバイス・アナライザ – Application Note
myKeysight
www.keysight.co.jp/find/mykeysight
ご使用製品の管理に必要な情報を即座に手に入れることができます。
www.axiestandard.org
AXIe(AdvancedTCA® Extensions for Instrumentation and Test)は、
AdvancedTCA®を汎用テストおよび半導体テスト向けに拡張したオープン規格
です。Keysightは、AXIeコンソーシアムの設立メンバーです。
www.lxistandard.org
LXIは、ウェブへのアクセスを可能にするイーサネットベースのテストシステム
用インタフェースです。Keysightは、LXIコンソーシアムの設立メンバーです。
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PXI(PCI eXtensions for Instrumentation)モジュラー測定システムは、PCベー
スの堅牢な高性能測定/自動化システムを実現します。
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Published in Japan, July 22, 2015
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