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私的整理における 擬似DES - フロンティア・マネジメント株式会社

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私的整理における 擬似DES - フロンティア・マネジメント株式会社
再生事例解説
私的整理における擬似DES
私的整理における
擬似DES
インバンクからの資金を元手に、❷P 社が、
S社の第三者割当増資を引き受ける。❸S社
事業再生の局面において、財務リストラ手法として用いられる
代表的なスキームに係る留意点を、実際の事例を用いて解説する。
本稿では、製造・販売業を営む企業の例を用いて、
スキームの概要及び留意点を述べていく。
債権者の取扱い(増資引受法人P社)
済し、❹S社から返済を受けた資金を元手に
債権者においては、税務上も金銭による
P社がメインバンクへ借入金の返済を行う、
増資払い込みを行い有価証券の取得をし、
なお、上記以外の税務上の論点として、
というものである。
その後別途金銭により既存貸付債権の返済
増資に伴うイニシャルコスト登録免許税軽
を受けたものとして取り扱う。この場合、増
減のために産活法の適用を申請し、増資
後のランニングコスト軽減(外形標準課税
額が払込み金銭の額(付随費用を含む)と
回避・中小企業税制適用)のために、増
なり、債権の時価に依らず、また、既存債
資直後に欠損填補の減資を併せて行って
いる。
するS 社への貸付債権をS 社(子会社)株
擬似 DESを行った場合、債務者S 社にお
権の返済については、帳簿価額で金銭によ
なぎ資金を拠出することには、得意先からの
式に転換する行為を言う。
いては、増資とその払い込まれた現金によ
る弁済を受けるのみであるため、原則として
つなぎ融資とP社からのグループ間貸付を同
P 社は S 社の100% 親会社ではないため
る債務の弁済をというそれぞれ別個の法形
債権者において、課税所得計算上の損益
順位で取り扱うことになり、つなぎ融資を拠
税法上の適格現物出資の適格要件を満た
式として会計処理を行う。税務上の取り扱
は認識されない。
の販売子会社 S 社は、事業環境の変化に
出する経済合理性が認められない。そこで、
さず、また、S 社が繰越欠損金を有しない
いも会計上の取扱いと同様に、増資と返済
一方で、債務超過会社であるS 社に対す
対する対応の遅れにより販売不振を招き、
得意先による支援の前提として、S 社の債務
ことから、通常のDES(真正 DES、現物出
とをそれぞれ別個の取引と判断するものと考
る増資引受けについては、その一連の取引
過剰債務に陥ると同時に、足許の資金繰り
超過を解消し、かつP 社からS 社に対する
資型)によったのでは、債務者 S 社におい
えられる。以下、債権者/債務者それぞれ
行為に経済的合理性がない場合注 2には、有
にも窮していた。財務状況の悪化により取引
既存融資を新規(つなぎ)融資に対して劣
て20 億円もの債務免除益を税務上認識す
について税務上の取扱いを整理する。なお、
価証券の時価と取得価額との差額につき、
銀行から通常の追加融資を受けることが困
後させることを同時に満たすストラクチャーと
ることとなり、多額のキャッシュアウトが生じ
文中の意見に係る部分は筆者の私見である
増資時に寄附金認定される可能性がある点
難である中で、S 社が古来の得意先からつ
して、P社からS 社への債権をデット・エクイ
てしまう。そこで、20 億円の増資払込金の
ことをお断りしておく。
に留意が必要である。
なぎ資金の融資を受けることになった。しか
ティ・スワップ(DES)することを検討した。
ための一時的な資金の拠出をメインバンクに
依頼の上、金銭出資による増資と増資払込
行は当核得意先の善管注意義務違反の問
2. スキームの概略
題が惹起される。また、S 社はP社からのグ
ループ間貸付により20 億円の負債を有してお
図
DESとは債権の株式化をいい、P 社の有
擬似 DESを行った場合、債務者 S 社に
の売却処分等による損失計上を行う意図は
なく、また、本件 擬似 DESが 得意先 A社
より既存債権を消滅させることとした。具体
となり、また別途既存債務の返済は借入金
によるS 社への支援条件となっており、P 社
的には、
《スキーム概略図》のとおり、❶メ
を金銭弁済した行為に過ぎず、真正DESと
が増資引受けにより、S 社の債務超過解消
Shunsuke SAEKI
は異なり損益(具体的には債務免除益)が
を行うことは不可避であるため、本件擬似
同志社大学経済学部、ノースウェスタ
生じず、課税関係は発生しないものと考えら
DESは、税務上も租税回避目的以外の経
れる。
済合理性を有する取引に該当するものという
なお、本件では該当しないが、真正 DES
ことができ、寄附金認定課税リスクは低いも
の場合には、貸付債権の現物出資を受けた
のと考えられる。
ものとして取り扱うため、100%完全支配関
本件では、真性DESではなく、擬似DES
3
S 社への貸付
20 億円の返済
1
出資払込資金
相当額融資
20 億円
FRONTIER±EYES MAY 2013
S社
P社
繰越欠損金
なし
2
×
株式出資
20 億円
務者 S 社への増資後においても、当該株式
おいては、第三者割当増資は資本等取引注1
×
S 社への貸付 20 億円
P 社からの借入金 20 億円
普通株式 20 億円
純資産+20 億円
得意先 社
金融機関
債務者の取扱い(新株発行法人S 社)
金による既存貸付金の返済を組み合わせた
つなぎ資金融資
4
本件においては、債権者であるP 社は債
いわゆる擬似 DES(金銭出資型)の手法に
スキーム概略図
払込資金融資
20 億円の返済
本件成立の重要なポイントであった。
資払い込みについては、有価証券の取得価
首都圏において製造業を営むP社及びそ
過であり、債務超過会社への支援融資の実
10
つなぎ資金の融資を受けられたという点が
り、当該 P 社に対する負債を処理せずにつ
しながら、S 社の財務状況は大幅な債務超
必要となることから、当該払込金相当額の
は増資払込金を元手にP社へ既存債務を返
3. 再生手法個別解説
1. 再生事例の概要
免除益となるため留意が必要である。
A
プロフェッショナル・サービス部
マネージング・ディレクター
佐伯 俊介
ン大学ロースクール(LLM)卒業。弁
護士。都内法律事務所を経て、2003
年よりカークランド・エリス(シカゴ)
、
2005 年よりジョーンズ・デイ( 東京)
、
2007 年よりアレン・アンド・オーヴェ
リー(東 京)にて勤務。2010 年にフ
ロンティア・マネジメント㈱に入社。
係がある場合等一定の場合を除き、当該債
の形式をとることで債務者に生じうる債務
権を時価評価する必要が生ずる。
この場合、
免除益課税の論点をクリアし、支援協議会
債権の時価とはその回収可能性等を勘案し
や事業再生 ADRのように税務上の優遇措
て評価されることとなるが、再生フェーズに
置が制度上認められている手続きを利用す
おける債権については、通常その時価評価
ることなく、柔軟性に富む純粋な私的整理
額が低くなることから、債務者においては借
の形での支 援を実現した。もちろん擬似
プロフェッショナル・サービス部
アソシエイト・ディレクター
入金帳簿価額と当該時価との差額が債務
DESについては一時的に増資払込資金が
小倉 貴之
Takayuki OGURA
注1:資本等取引とは、法人の資本金等の額を増加又は減少させる取引、剰余金の分配等をいい、課税所得計算上において、益金又
は損金に算入しないこととされている。
注2:例えば増資払い込みにより取得した有価証券を即座に譲渡することにより、債権者において損失計上を目的とする場合等がこ
れに該当すると思料する。
青山学院大学経営学部卒業。税理士。
都内会計事務所、税理士法人トーマツ
を経て、2012 年にフロンティア・マネ
ジメント㈱に入社。
MAY 2013 FRONTIER±EYES
11
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