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熊本市フューチャービジョン

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熊本市フューチャービジョン
1
もくじ
はじめに
なぜ今、ローカルマニフェストなのか。
Ⅰ.ローカルマニフェストの背景
P4
P5
①地方分権の更なる進展
P5
②人口減少社会と少子高齢社会の到来
P6
③地方財政の健全化
P8
④道州制議論の進展と州都・県都のあり方
P9
⑤隣国(地域)
・アジアの発展
P11
Ⅱ.熊本市の現状と課題
P13
1、熊本市の地理的現状と課題
P13
2、熊本市の人口構成の現状と課題
P16
3、その他の分野の熊本市の現状と課題
P24
1)、経済・産業、就労環境の現状と課題
P24
2)、文化(歴史)・芸術振興の現状と課題
P25
3)、医療・福祉の現状と課題
P27
4)、教育の現状と課題
P28
5)、環境対策の現状と課題
P28
6)、都市整備と交通施策の現状と課題
P29
熊本市公明党
ローカルマニフェストの策定過程について
ローカルマニフェストとして提案する上での位置づけと留意点
P31
P34
≪位置づけ≫
P34
≪留意点
1≫政策実現に向けての行政レベルでのアプローチ区分
P35
≪留意点
2≫予算化という数値目標を超える政策目標とする
P36
Ⅲ.3つのビジョン
P37
1、「女性の躍動で未来を拓くまち・くまもと」の構築
P38
2、
「若者に守り・残し・拓く、歴史と文化の国際都市・くまもと」の構築
P39
3、「市民とともに未来を拓くまち・くまもと」の構築
P41
2
Ⅳ、5つのターゲット
P43
1、女性が躍動するまち・くまもとに!
P44
2、誰にもやさしい福祉と教育のまち・くまもとに!
P46
3、活力ある産業と若者が活きるまち・くまもとに!
P48
4、日本一の地下水、歴史と文化を発信する国際都市・くまもとに!
P50
5、交通インフラの充実と、市民とつくるまち・くまもとに!
P52
3
はじめに
なぜ今、ローカルマニフェストなのか。
わが国は、国立社会保障人口問題研究所の(中位)予測を、2年前倒しする形で人口減
少社会に突入しました。このことは、私達がかつて経験したことのない新たな課題に挑むこ
とを意味しています。
このかつて経験したことのない人口減少社会が意味するところは、人口増で支えられて
来たこれまでの諸制度の見直しが求められることでもあります。
また右肩上がり経済の失速、いわゆるバブル経済の崩壊を経験したわが国は、総力を
挙げて国の再生をめざし、再構築への道を歩み始めました。その一方で生じたのが、大都
市への一極集中と、地方と中央の格差といわれています。
これまでわが国は、中央と地方は対等にあると位置づけながらも、かつての機関委任事
務(政府の仕事を政府の出先機関のように、一律に地方自治体が事務執行すること)のよ
うに、実質的には画一的な行政運営が地方に求められ続けてきました。
こうした手法からの転換と、地方自治体と政府との役割を明確にするため地方分権が進
められ、本格的な道州制導入の議論もなされるにようになってきています。
こうした流れの中で、熊本市に暮らす私達は、自らのまちは自らがつくるとの自覚に立ち、
どのようなまちにしていくのかという明確な「ビジョン」を持って未来に進む必要があります。
このときに留意しなければならないのが、かつてのような総花的な「ビジョン」ではなく、
熊本市の将来を見据えた、「集中と選択による身の丈にあった県都の発展」を示すことで
す。
こうした要請に応えるため、私たち、熊本市公明党は、熊本市の現状分析と課題の検討
を行い、これまでの実績も加味した新たな熊本市の未来へのビジョン、熊本市 ローカル
マニフェストとして、「アジア・九州の未来を拓く 熊本市フューチャービジョン ライフアッ
プ・マップ」を作成し、「3つのビジョン」と、ロードマップ(道しるべ)となる「5つのターゲット」
を示しました。
熊本市公明党は、このローカルマニフェストの実現に向けた運動を通して、市民の皆さま
とともに手を携えて、私たちの未来の人とまちの姿を発信していきます。
なお、マニフェストの策定にあたっては、大変お忙しい中、静岡大学馬居政幸教授にご
協力頂きました。改めて紙面をお借りして御礼申し上げます。
4
Ⅰ、ローカルマニフェストの背景
1、ローカルマニフェストの作成、提案の背景とし5つの背景を掲げました。
① 地方分権の更なる進展
② 人口減少社会と少子高齢社会の到来
③ 地方財政の健全化
④ 道州制議論の進展と州都・県都のあり方
⑤ 隣国(地域)・アジアの発展
① 地方分権の更なる進展
地方分権に向けた主な動きは次の通りとなっています。
平成 5(1993)年 6 月 衆参両院で地方分権の推進に関する決議
平成7(1995)年5月 地方分権推進法成立
同年 7 月 地方分権推進委員会発足
平成11(1999)年 7 月 地方分権一括法成立
平成12(2000)年 4 月 地方分権一括法施行
平成13(2001)年 6 月 地方分権推進委員会最終報告
平成13(2001)年 7 月 地方分権改革推進会議発足
平成15(2003)年 11 月 第27次地方制度調査会答申(今後の地方自治制度のあり方に
関する答申)
平成16(2004)年 5 月 地方分権改革推進会議最終意見
同年 5 月 合併関連3法成立
平成17(2005)年12月 第28次地方制度調査会答申(地方の自主性・自立性の拡大及
び地方議会のあり方に関する答申)
平成18(2006)年2月 第28次地方制度調査会答申(道州制のあり方に関する答申)
同年12月 地方分権改革推進法成立
平成19(2007)年4月 地方分権改革推進法施行
同年7月 第29次地方制度調査会発足
5
平成5(1993)年6月の衆参両院での地方分権の推進に関する決議を受けて、地方分
権の推進に関し議論が重ねられ、平成11(1999)年7月に地方分権一括法が成立、翌1
2(2000)年4月から同法が施行されました。
この地方分権一括法の施行により、これまで中央集権型システムの中核をなしていた機
関委任事務制度が廃止され、地方公共団体が行う事務は自治事務と法定受託事務という
新たな事務となりました。
この結果、地方自治体は、法令に反しない限り独自の条例の制定が可能となり、自己決
定権が拡充、これまで以上に地域の実情や住民ニーズなどを反映させた、より自主的な
行政運営が可能となりました。このことは、地方議会における政策集団としての会派(政
党)の役割が増すことでもあり、住民に最も近い存在として、その主張と活動が求められる
ことでもあります。
一方財源問題では、財源を地方に移し、地方の自由度を高めることを目的としている三
位一体改革(国庫支出金を減らす。税源を地方に移譲する。地方交付税を見直す。)は、
まだまだ経過地点にあるのが現状で、国の税収の伸びも今後大きく変わることは期待でき
ず、地方財政の改善には多くの努力が必要な状況にあります。
しかし地方分権の流れが増していくことは明らかであり、地方の自立的な運営がますま
す求められていくことから、私たち熊本市公明党は財政状況も視野に入れながら、地方
分権時代にふさわしい「集中と選択による身の丈にあった県都の発展」を図るためのマニ
フェストの策定を行いました。
② 人口減少社会と少子高齢社会の到来
資料:厚生労働省・国立人口問題社会保障研究所
図1
6
図2
図3
図1が示すとおり最初の国勢調査が実施された大正9(1920)年でのわが国の人口は5,
596万人でした。その後、昭和20(1945)年には戦争による減少はあるものの爆発的に
人口は増加し続けて来ました。しかし図2が示すように1970年代後半から、人口維持の基
準となる合計特殊出生率2.07を割り込み、平成元(1989)年には1.57ショックといわれ
る事態を迎え、少子化問題がクローズアップされるようになりました。一方国民皆保険の定
着や医療技術の高度化により、わが国は世界一の長寿国を達成し長寿社会を迎えようと
しています。
この少子化は歯止めがかからず、国立社会保障人口問題研究所によると、日本の人口
は平成16(2004)年の12,779万人をピークに、減少し続けることが明らかになっていま
7
す。
この人口減少社会と少子高齢社会の到来は、これまでにない問題を私たちに提起して
います。いわゆる65歳以上の高齢者を支える現役世代(20~64歳)の割合が激変するこ
とです。図3が示すように、平成2年では5.1人の現役世代が1人の高齢者を支えていま
したが平成22年には2.6人に、平成32年には2.0人になると推測されています。これら
のことで明らかなように、少子化対策と就労人口対策が喫緊の課題になっており、公明党
が「未来に責任を持つ政治」を掲げ、少子化対策を最優先課題と位置付けている理由で
す。
もちろん出産は一人ひとりの自由意志に基づくものでなければならず、公明党の掲げる
少子化対策は出産を強制するものではありません。政治がなすべきことは、女性が安心し
て出産し育てることができる社会的環境を早急に整えることです。このために公明党は他
党に先んじて「少子社会トータルプラン-チャイルドファースト社会の構築をめざして」を2
006年4月に発表し、本年(2008)年4月には、女性のライフサイクルに注目した「まるご
と-女性サポート・プラン」を発表してきました。
私たち熊本市公明党は、これらプランと連動させながら、人口減少社会と少子高齢社
会の到来に対応したマニフェストの策定を行いました。
③ 地方財政の健全化
三位一体改革による国からの税源移譲は、国における財政事情が厳しいことからも、依
然として厳しい環境にあります。
国の19年度の財政状況を大まかに見ても、国債費に21兆円、一般歳出47兆円、地方
交付税等15兆円で、合計83兆円となっています。これを賄う税収及び税外収入は57兆
円で、不足分を公債金収入(いわゆる借金)25兆円で穴埋めしているのが現状です。また
公債残高は547兆円にのぼり国民一人当たり約428万円となっており、危機的な状況に
あり、将来世代に莫大な借金が残されることになります。
このために熊本市においても、税収以外の歳入の主要部分を占める国からの地方交付
税額は、平成11年以降年々減少し続け厳しい財政環境が続いてきました。このため公明
党は地方間の格差を是正する対策を推進。そのひとつが、平成20年度の地方財政計画
での「地方再生対策費」の創設です。これにより熊本市においても地方交付税額の増額
が9年ぶりに確保されました。
またふるさと納税制度の創設や、21年度からの道路特定財源の一般財源化など、地方
での自由度を高める財源確保策が今後も検討される要素はあるものの、依然として地方
8
の財政運営は厳しい状況に置かれています。
そうした中、一昨年には「夕張ショック」といわれる事態が生じました。これを教訓に、地
方財政健全化法が昨年制定され、08年度決算から適用されることになりました。破たんし
てから再建するのではなく、毎年、四つの財政指標を公表することを義務付け、ある程度
悪化した段階で「警告」を発して早期是正を求めていく仕組みとなっています。
公表される財政指標は、(1)実質赤字比率。(2)連結実質赤字比率。(3)実質公債費
比率。そして(4)将来負担比率です。
この夕張市の財政破綻と粉飾決算は、私達国民に大きな衝撃を与えました。自治体の
決算が信用できないという、前代未聞の事態に、地方債市場が暴落。市場関係者に、10
年前の金融危機を想起させました。
市民や市場への、それぞれの自治体に対する信用を確保するためには、正確で積極
的なディスクロージャー(情報提供)しかありません。そのための方法として、予算偏重主
義から決算重視への転換と、4指標をメルクマール(判断基準)とした財政運営がもとめら
れるようになります。
こうした状況にあって、私たち熊本市公明党は、将来世代に負担の公平性を超えた過
大な借金を残さないためにも、どのような事業に集中して対策を講じていくのか、国や県
との連携も明確にしながらマニフェストの策定を行いました。
④ 道州制議論の進展と州都・県都のあり方
資料:総務省地方制度審査会
9
平成16年3月に総理より諮問を受けた地方制度調査会は、21回にわたる道州制に関
する専門小委員会での検討を経て、平成18年2月に「道州制のあり方に関する答申」をま
とめました。答申では、現状の都道府県の課題から検討され、求められる「新しい国のかた
ち」として、「道州制の導入が適当と考えられる」とし、道州制の制度設計や導入の課題に
触れ、「答申を基礎として、国民的な議論が広く行われることを期待」と結んでいます。そこ
に示された3区域例は9、11、13道州となっており、このうち9及び11道州では九州はひと
つとされ、13道州で北九州(福岡、佐賀、大分、長崎)と南九州(熊本、宮崎、鹿児島)に
分けられています。
資料:内閣府道州制ビジョン懇談会
地方制度調査会の答申を受けた政府は、同年(平成18年)9月に、初めて道州制担当
大臣を置き、その下に道州制ビジョン懇談会を設置。平成20年3月には中間報告がなさ
れ、導入のプロセスとして、準備期間を設けた上で、全国一律に移行が望ましいこと、「道
州制基本法(仮称)」を制定し、内閣に検討期間を設置すること、導入はおおむね10年後
をめざすことが示され、平成21年度中の最終報告に向け検討がなされています。
こうした中央での議論と並行して、九州においても、九州知事会、九州各県そして経済
10
界等で構成する九州地域戦略会議(平成15年10月設立)において、道州制に関する研
究会が設置され検討が始められました。
こうした道州制の議論の推移の中にあって、熊本県の県都である熊本市は、将来にど
のような位置を占めようと考えているのか、その判断が今後の本市の発展の行方を大き
く左右することに間違いはありません。
したがって私たち熊本市公明党は、道州制議論の推移と州都・県都のあり方も視野に
入れ、九州の牽引役となれるようマニフェストの策定を行いました。
⑤ 隣国(地域)・アジアの発展
資料:経済産業省(平成19年版通商白書)
11
経済産業省の平成19年版通商白書は、「生産性向上と成長に向けた通商戦略」と題さ
れ、サブタイトルとして、「東アジア経済のダイナミズムとサービス産業のグローバル展開」と
しているように、東アジア経済に注目した内容となっています。本白書での東アジアとは、
日本、中国、韓国、ASEAN、インド、オーストラリア及びニュージーランドの16カ国をさし
ています。
第2-1-1図が示すように、1980年から2005年までの実質GDP対世界シェアは、東
アジア・香港・台湾が6.1%の伸びを示し、NAFTAは横ばい、EU25はマイナス4.1%
となっています。またそれぞれの域内貿易比率でも、東アジア・台湾・香港が20.1%増を
示し、EU25の13.7%増、NAFTAの9.8%増と比較して、圧倒的な域内貿易の向上が
見られることが明らかにされています。そして白書第2章「東アジア事業ネットワークの拡大
と深化」のコラムで、「このようなASEAN、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュ
ージーランド各国・地域間の貿易結合度の高さも考慮し、東アジアEPAの民間専門家研
究を加速させ、中長期的には、開かれた東アジア経済圏の構築を目指すべきである。」と
結んでいます。
このように隣国(地域)・アジアの発展は、熊本市の将来の発展にとって大変重要で、私
たち熊本市公明党は、東アジアとの交流強化をさらに図るようマニフェストの策定を行い
12
ました。
Ⅱ、熊本市の現状と課題
このような背景の下での熊本市の現状と課題を、できうる限り明らかにすることによってマ
ニフェストを策定する必要があります。
このため、「熊本市の地理的現状と課題」「熊本市の人口構成の現状と課題」の2分野
について特に集中的に現状と課題の分析を試み、その他の課題と合わせ示していくこと
とします。
1、熊本市の地理的現状と課題
日本の西端に位置する九州は、アジア(特に東アジア)との歴史的繋がりが深く、地理的
にも最も近い位置にあります。
財団法人日本国際交流センターは、2007年12月に「九州の対外交流とアジア戦略の
展望をさぐる」と題して、研究プロジェクト報告書を発表しました。この研究の中では、「九
州は歴史的にみると東アジアを介して世界と日本を結びつける結節点としての役割を果
たし、その文化、伝統はアジアときわめて深い関係にあるとし、(中略)日本の中で九州ほ
ど明確に近隣諸国との対外関係の重要性を認識している地域は他にない。」とした上で、
課題として中国、韓国以外のアジアのネットワークが比較的弱いことと、近い将来、一過性
の旅行者や留学生以外にもアジアから九州に在住外国人が増えてくることが予想されると
指摘しています。
熊本市は、国際交流を市政の重要政策の一つと位置づけ、1993年に財団法人熊本市
国際交流振興事業団を設立、1999年には「熊本市国際化指針」を策定し、国際交流や
国際貢献を推進してきました。しかしながら、友好姉妹都市締結でみると、アジア地域での
締結は中国・桂林市に留まり、経済で見ても他県特に福岡市や北九州市と比べ港湾の有
利性が乏しくアジアとの貿易額が少ないのが現状です。
こうしたことから、私たち熊本市公明党は、まず手始めとして隣国・韓国との友好交流協
定などの締結を提唱し推進してきました。
熊本市は、今後のアジアの発展とともに、どのように成長を図っていくのか、一県都だ
けでは限界があります。幸い福岡市の提唱で1994年から「アジア太平洋都市サミット」
が隔年に開催されるようになっています。
私たち熊本市公明党は、こうした取組みをベースとしながらも、「九州はひとつ」との視
13
点に立って、九州の各県都・政令市との連携をさらに強化し、アジア(特に東アジア)の各
都市との交流対象地域等の分担を図りながら、九州全体でアジア(特に東アジア)との文
化・経済など国際交流を推進していくことを提唱します。
次に、熊本県における熊本市を見てみることにします。
資料:熊本市交通計画課
14
資料:平成17年国勢調査からの試算
15
熊本市は、熊本県の中央・熊本平野に位置し、福岡市を除く他の県都と比べ人口集積
の高い地域となっています。また熊本市と近隣市町村との通勤・通学者の動き(熊本市交
通計画課からの図)によると周辺地域から多くの通勤・通学者が熊本市に流入し、近隣市
町には、通学・通勤依存率が30%を超えるところが8町あり、周辺との一体化が進んで
います。
また平成17年国勢調査からの試算による、熊本市の有権者(成人)流入人口グラフをみ
ると、夜間人口527,576人対して、周辺地域から熊本市に69,157人流入し、逆に41,
592人が流出していることがわかります。このため熊本市の昼間は27,565人(夜間人口
の1.05倍)の人口移動が周辺から生じていることがわかります。
このように昼間の多くを熊本市で過ごす周辺からの人々が13%を超えている実態に着
目しなければなりません。また熊本市からの流出人口も41,592人にのぼり、これらの
人々への情報やサービスの提供に対する満足度も考慮する必要があります。
以上のことから、私たち熊本市公明党は、熊本市にかかわるすべての人が熊本市民と
の視点に立って、周辺地域を視野に入れたマニフェストの策定を心がけました。
2、熊本市の人口構成の現状と課題
平成17年国勢調査に基づき、その特徴を分析することとしました。分析したグラフは次
のとおりとなります。
z
男女人口別グラフ(県都別比較)
z
女性就業構造
z
高齢化数・高齢者率グラフ
16
図1
17
(図1)の男女年齢別人口グラフで見ると、熊本市はその他の県都(福岡市を除く)と比
較して男女とも20代、30代の若い世代の人口が多いことがわかります。
また、第一次ベビーブーム世代(55歳~59歳)の女性と第2次ベビーブーム世代(30
歳~39歳)の女性は別にして、女性で見ると20代から50代まで満遍なく2万3千人前後
の人口区分となっており他都市にない傾向を示しています。このことは永年にわたり女性
について見れば、成人してから地元に残る女性が他の県都より多いことが分ります。
特に顕著なのが30代の女性で、福岡市を除く他の県都では第一次ベビーブーム世代
の女性より、第二次ベビーブーム世代の女性のほうが少なくなっていますが、熊本市では
約2万5千5百人とほぼ同数となっているのが特徴です。
さらに若者が多く、30代の女性の多くが地元に残っている県都は、福岡市と熊本市の
みであり、活気と活力溢れる都市形成が可能な人口構成となっています。
一方男性で見ると、20代後半から40代までなだらかに減少しており、地元に残れる環
境整備が求められていることが分かります。
このことから、私たち熊本市公明党は、女性対策の重要性を再認識するとともに、20代
後半からの男性が熊本市に残れるような対策が重要と考え、これらに配慮したマニフェス
ト策定に務めました。
18
図2
19
熊本市年代別女性労働力率
図3
90.00%
80.00%
労働力率
70.00%
60.00%
50.00%
40.00%
労働力率
30.00%
20.00%
10.00%
上
歳
以
79
85
~
75
65
~
69
59
~
49
55
~
45
~
39
29
35
~
25
15
~
19
0.00%
年代
(図2)によると熊本市は福岡市とともに30代の女性がどの年代よりも多いことから、30
代女性の就業職から見る福岡市との違いを見ると、女性の就業者は7割前後で、働く場へ
のアプローチが必要なことが分ります。
また熊本市の30代女性の職種は、高い方から卸売・小売業22.87%、医療福祉22.
18%、製造業6.63%、教育6.18%で、福岡市と比較して医療福祉、製造業の割合が
高くなっています。(ちなみに福岡市は情報通信業の割合が高くなっています。)
また(図3)の熊本市年代別女性労働力率をみると、女性の30代の労働力率が著しく低
くなっています。この傾向は全国的な傾向であり、女性の結婚や出産により離職する(また
はせざるを得ない)ことなどがその要因と考えられています。
このため私たち熊本市公明党は、マニフェストの策定にあたっては、30代女性が多い
熊本市においては、働く場へのアプローチと、就職、結婚、出産、子育てなどライフサイク
ルでのイベントごとの支援策の充実に努めました。
20
図4
21
図5
22
(図4)を見ると熊本市の男性の未婚率は、熊本県主要都市及び県都周辺地域と比較
しても平均的である一方、女性の30代は前半が33.73%、後半が20.76%と熊本県主
要都市及び県都周辺地域と比較して5%近く高い数値となっており対応がもとめられます。
また(図5)を見ると熊本市の男女とも50代での離婚率が高くなっています。これを男性に
ついて見れば、熊本県主要都市及び県都周辺地域とも同じ傾向を示しています。一方女
性について見ると、熊本県主要都市や県都周辺地域では30代後半から40代にかけて離
婚率が高くなっているのに比べて、熊本市は40代後半から50代にかけて12%前後の高
い数値を示しているのが特徴的です。
図6
23
(図6)で見ると熊本市の高齢化率は、人口流入者が多いため、他の県都比べ多少低く
なっていますが、高齢者数は増加傾向にあり、年代別人口区分グラフで明らかなように、
将来高齢者が増える傾向にあることを示しています。このため安定的な人口構成が維持
できるように、今から少子化対策はもちろんのこと、若い世代の定住や、女性が暮らしやす
い環境の整備を行い、熊本市の将来を支えるシステムが必要です。
このように熊本市の人口構成等に着目した場合、他の県都(福岡市を除く)にはない熊
本市の特徴が明らかになりました。
それは、男女とも20代・30代の若い世代が多く、女性で見ると成人してから地元に残
る人が多く、20代から50代まで満遍なく存在していることです。また30代女性の就業率
が7割前後であり、働く場へのアプローチが求められていることや、将来の高齢社会の到
来に備えるために、少子化対策の充実はもちろんのこと、若い世代や、女性の、それもラ
イフイベントに着目した総合的な対策が求められています。
このことから、私たち熊本市公明党は、マニフェストの策定にあたり、若い世代への支
援と、女性の視点に立った総合的な女性対策の策定に務めました。
3、その他の分野の熊本市の現状と課題
1)、経済・産業、就労環境の現状と課題
平成17年の国勢調査による就業別労働状態を見ると、卸売・小売業が21.7%、サービ
ス業14.9%、医療・福祉11.7%、製造業8.5%の順になっています。熊本市はこの卸
業・小売業、サービス業、医療・福祉だけで48.3%が就業しているのが特徴的です。
こうした中、平成23年春には九州新幹線鹿児島ルートの全線開業が予定されており、全
線開業すると熊本・博多間が約35分、さらに山陽新幹線との相互乗り入れにより、関西圏
との商圏の拡大が期待されています。
また最近では、雇用創出効果が高いといわれるコールセンター等の進出がなされるなど
豊富な人的資源が注目されるようになってきました。この他にも、NECをはじめとしてサン
トリー九州熊本工場、三菱電機熊本工場、ソニー熊本テクノロジーセンター、本田技研工
業など、熊本市及び周辺地域には様々な企業が進出しています。熊本市では毎年1万5
千人あまりの若い人材が輩出され、大学等の卒業者の約半数が理工系の人材であり、豊
富な人材資源が注目されるようになっています。このため県下で唯一、有効求人倍率が1
を超える都市となっています。
にもかかわらず、年代別人口構成で明らかなように、男性で見ると20代後半から県外に
24
出ており、その要因としては低い所得水準(2005年の1人あたり県民所得は下から11位、
福岡県の約90%)があり、最低賃金でも全国で下位(2007年、自給620円で下から9位)
になっていることや、希望職種とのミスマッチ、就労意欲の低下などが考えられます。
こうしたことから、私たち熊本市公明党は、マニフェストの策定にあたり、急激な所得水
準や最低賃金の上昇は望めない中、若い世代の定住を図るために、まずは生活の基盤
となる安価な住宅の提供や、地域の大学などとの連携による就労意欲の向上対策、希望
職種とのミスマッチの解消などの就労支援の策定に務めました。
また農漁業分野で熊本市は、人口50万人以上の都市の中では農業産出額、生産農
業所得とも全国トップクラスの地位にあります。産出額で見た場合、なすは約40億円で全
国第2位、九州第 1 位の地位を占め、みかん約 37 億円(全国第 6 位、九州第 2 位)、すい
か約 17 億円(全国第 7 位、九州第 3 位)となっています。この他認定農業者数も全国で有
数の地位にあります。
漁業では有明海に面していることから、日本で一番大きいといわれる干満の差を活かし、
海苔の養殖や採貝業が営まれており、海苔の生産量(平成 18 年度)は県内の57.6%を
占め、あさりの生産量(平成 17 年次)も35.6%を占めています。
こうしたことから、私たち熊本市公明党は、マニフェストの策定にあたり、農漁業を主要
産業のひとつと位置づけ、その振興を図るために、団塊世代や若い世代の新規就農や
安全で安心な農漁業産物の地元供給策(地産地消)、今後交流拡大が期待される東アジ
アへの流通支援などバックアップし、さらには優良農地の確保で地下水の質の保全を図
り、都市と自然の調和したまちをアピールした他県からの「熊本定住」策などに務めまし
た。
2)、文化(歴史)・芸術振興の現状と課題
慶長12年(1607年)に加藤清正によって7年の歳月をかけて築城された熊本城。西南
戦争で天守閣一体を焼失。昭和8(1933)年(昭和 8 年)に国宝に指定されましたが、昭和
25年の文化財保護法が改正により国宝建造物が重要文化財にされ今日至っています。
熊本城天守閣が復元落成したのは昭和35年、以来、熊本城域の整備は時代に合わせ
てなされ、新たに「一口城主」という寄付金制度を設け約13億円の浄財を集め、総工費約
54億円をかけて「本丸御殿大広間」が復元整備されました。
25
この他の物的資源をいくつ挙げると、まず16代細 川 護 立 公 によって収 集 された永青
文庫を挙げることができます。その所 蔵 品 点 数 は4,500とも言 われ、国 宝 8件 、重 要
文 化 財 31件 という威 容 を誇 っています。
次 に、肥 後 六 花 があります。藩 政 時 代 に武 士 のたしなみとして奨 励 され、独 自
の美 意 識 が生 んだ栽 培 法 や鑑 賞 法 が今 に伝 えられています。歴 史 と伝 統 に支 え
られた折 々の独 特 の花 鑑 賞 法 と栽 培 法 があるのは実 は大 変 珍 しい文 化 となって
います。
この他 に特 徴 的 なのが石 の文 化 財 です。熊 本 城 の武 者 返 しをはじめとする石
垣 は見 る人 を圧 倒 します。築 城 に当 たり、加 藤 清 正 が近 江 の国 (滋 賀 県 )から呼
び寄 せた穴 太 衆 の特 殊 技 術 で建 設 されました。この他 に熊 本 市 周 辺 地 域 には、1
市 9町 の中 に通 潤 橋 や霊 台 橋 に代 表 されるその数 300を超 える石 橋 が建 設 され
ました。この石 工 集 団 は全 国 に名 をとどろかせ、皇 居 の旧 二 重 橋 や日 本 橋 、万 世
橋 を建 設 しました。
熊 本 の石 橋 は他 県 の石 橋 のように豪 商 や藩 主 によってつくられ たものでなく、
惣 庄 屋 や商 人 が金 策 に走 り資 金 を集 め、地 元 民 の労 働 奉 仕 で建 設 され、庶 民 に
よる庶 民 のための石 橋 建 設 であったいわれています。
私 たち熊 本 市 公 明 党 は、これまで熊 本 城 、永 青 文 庫 、肥 後 六 花 、熊 本 の石 橋
などに注 目 し、その活 用 や保 存 、さらには世 界 への発 信 を提 案 してきました。こう
した実 績 を踏 まえ、マニフェストの策 定 にあたっては、これら歴 史 と伝 統 に支 えら
れた文 化 財 をさらに世 界 に発 信 していく対 策 の強 化 に努 めました。
熊 本 市 は、人 的 資 源 の宝 庫 でもあります。熊 本 が著 書 「阿 部 一 族 」の舞 台 とな
った森 鴎 外 。熊 本 で教 鞭 を取 った夏 目 漱 石 。幕 末 の思 想 家 ・横 井 小 楠 。熊 本 で
最 も有 名 な加 藤 清 正 公 。永 青 文 庫 を収 集 した細 川 護 立 公 を初 めとする細 川 家 、
宮 本 武 蔵 、その人 的 資 源 には事 欠 きません。
こうした歴 史 的 な物 的 ・人 的 資 源 はもちろんのこと、歴 史 を背 景 とした新 たな文
化 活 動 が根 付 きつつあります。14回 を数 える永 谷 検 校 記 念 ・くまもと全 国 邦 楽 コ
ンクールと、12回 を数 える夏 目 漱 石 顕 彰 ・「草 枕 」国 際 俳 句 大 会 が代 表 格 です。
邦 楽 コンクールでは、最 優 秀 賞 の受 賞 を機 に世 界 で演 奏 するようになるなど、
邦 楽 界 から去 ることなく大 きく活 躍 されている方 が多 く生 まれています。また、国 際
26
俳 句 大 会 の応 募 総 数 も年 々増 加 し、2万 5千 ほどの応 募 があり、特 に海 外 からの
応 募 が増 加 傾 向 にあります。
私 たち熊 本 市 公 明 党 は、これら人 的 資 源 の活 用 や、関 係 地 域 との連 携 、さら
には新 たな文 化 としての邦 楽 コンクールの充 実 や俳 句 大 会 の国 際 化 を推 進 し世
界 への発 信 を訴 えてきました。こうした実 績 を踏 まえ、マニフェストの策 定 にあたっ
ては、さらなる世 界 への発 信 に務 めました。
3)、医 療 ・福 祉 の現 状 と課 題
医 療 の分 野 で見 ると日 赤 発 祥 の地 である熊 本 市 には、平 成 18年 現 在 で1,02
8の医 療 施 設 (うち356は歯 科 診 療 所 )があります。病 院 としては熊 本 大 学 附 属 病
院 、国 立 病 院 、日 赤 、熊 本 市 民 病 院 の公 的 病 院 をはじめとして89施 設 もの病 院
があります。従 業 者 数 も平 成 16年 度 末 で、医 師 2,318人 、看 護 士 11,146人 、
薬 剤 師 958人 など15,421人 が医 療 に従 事 しています。このため県 内 の総 合 医
療 を熊 本 市 が担 う形 になっています。救 急 車 出 場 件 数 も平 成 18年 度 は26,464
件 となっていますが、今 のところ他 県 で報 道 されるような受 け入 れ先 不 足 によるたら
い回 しでの不 幸 な事 件 は発 生 していません。
特 に小 児 救 急 に関 しては、医 師 会 の協 力 で熊 本 方 式 といわれる地 域 医 療 セン
ター(本 荘 町 )での夜 間 診 療 がなされており多 くの生 命 が守 られています。
現 状 では他 県 に見 られるような極 端 な医 師 不 足 による医 療 施 設 の閉 鎖 といった
事 態 は起 きていませんが、周 辺 市 町 村 からは医 師 不 足 による患 者 搬 送 が熊 本 市
になされています。また熊 本 大 学 附 属 病 院 の医 局 所 属 医 師 数 は、診 療 科 目 次 第
では年 々減 少 しており、将 来 の大 学 からの派 遣 医 師 不 足 が懸 念 されています。こ
のため特 にリスクが高 く敬 遠 されがちな部 門 の医 師 の確 保 が求 められています。
福 祉 分 野 で見 ると、70歳 以 上 の高 齢 者 や、障 害 者 、被 爆 者 などを対 象 とした
「さくらカード」(JRを除 く市 内 の公 共 交 通 機 関 の乗 車 補 助 、高 齢 者 の場 合 は本 人
2割 負 担 )の発 行 など独 自 施 策 が展 開 されています。また新 たな課 題 として日 本
で初 めての「こうのとりのゆりかご」問 題 が提 起 され検 証 がなされています。
私 たち熊 本 市 公 明 党 は、これまで小 児 医 療 、産 科 医 療 の充 実 を求 めてきました。
また、「さくらカード」を推 進 し、高 齢 者 が元 気 な社 会 の実 現 に努 めてきました。こう
27
した実 績 を踏 まえ、マニフェストの策 定 にあたっては、市 民 ニーズの高 い医 療 の充
実 や高 齢 者 を支 える政 策 の策 定 に務 めました。
4)、教 育 の現 状 と課 題
平 成 19年 度 での市 内 の学 校 数 は264で、幼 稚 園 56、小 学 校 82、中 学 校 45、
高 校 28、短 大 1、大 学 8、専 修 学 校 37、各 種 学 校 6、特 別 支 援 学 校 1となってい
ます。また県 下 では比 較 的 急 激 な少 子 化 はない唯 一 の都 市 となっています。
現 在 少 人 数 学 級 が段 階 的 に拡 充 されています。また全 国 でもめずらしい熊 本 大
学 教 育 学 部 との連 携 による不 登 校 対 策 「ユアフレンド」事 業 などが実 施 されていま
すが、特 別 支 援 教 員 の導 入 など教 育 ニーズの多 様 化 により教 職 員 の資 質 が追 い
つかないのが現 状 で、人 的 配 置 の強 化 とともに研 修 の充 実 など資 質 向 上 のため
の対 策 が求 められています。
私 たち熊 本 市 公 明 党 は、全 国 で初 めての不 登 校 対 策 「ユアフレンド」事 業 、発
達 障 害 児 への実 態 調 査 や支 援 の強 化 、本 市 独 自 の奨 学 金 制 度 の創 設 などを推
進 してきました。マニフェストの策 定 にあたっては、こうした実 績 を踏 まえ、これまで
の「社 会 のための教 育 」から「教 育 のための社 会 」への転 換 など新 たな施 策 展 開
に務 めました。
5)、環境対策の現状と課題
人口50万人以上の都市としては全国で唯一、水道水のすべてを地下水で賄っているの
が熊本市です。この地下水は約30万年前の阿蘇山の噴火活動によって形成された水を
通しやすい地層にあり、第2耐水層を通るミネラル分が適度に溶け込んだ地下水となって
います。
これまで熊本市は、地下水保全条例の制定、行政区域を越えた水田かん養や森林整備
などの地下水かん養事業、地方都市としては初めての「国際環境都市会議くまもと2002」
の開催、熊本水遺産の登録など地下水保全対策に取組んできました。
また本年は平成の名水百選に熊本市から江津湖湧水群と金峰山湧水群の2か所が選ば
れています。これにより熊本県は昭和60年の昭和の名水百選と合わせ8箇所が選定され
全国一となりました。この他、第10回日本水大賞グランプリも今年受賞しました。この日本
水大賞は、秋篠宮殿下を名誉総裁に、各界の有識者などで組織される日本水大賞委員
会が、水循環系の健全化に取り組む団体や個人に贈られる賞です。
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平成 17 年からは生活用水使用量の 10%削減を目標に、「節水社会実験」に取り組んで
おり、節水市民運動の輪を更に広げる活動がなされています。
こうした努力の一方、平成7年の県との共同調査とその後の追加調査で地下水の減少
が指摘され、熊本市の一部地域での将来の地下水塩水化が指摘されています。また将来
的には地下水中の硝酸性窒素濃度の上昇が懸念されており、地下水保全に向けた更な
る推進が求められています。
また7月7日から開催された洞爺湖サミットで地球温暖化対策が打ち出されました。地球
環境からみてCO2削減は人類共通の環境対策となりつつあります。この温暖化対策を地
球市民としてどのように取組んでいくのか、具体的な対策が求められています。
私たち熊本市公明党は、環境の党・公明党として地下水保全を図るため、これまで条例
の制定や、保全対策の強化を推進してきました。こうした実績を踏まえ、マニフェストの策
定にあたっては、地球環境と連動した地下水保全対策の強化や、地下水を身近に実感で
きる施設の整備などを通して、市民とともに地下水を守るための政策の策定に務めまし
た。
6)、都市整備と交通施策の現状と課題
九州新幹線鹿児島ルートの全線開通を間近に控え、熊本県・熊本市の玄関口である熊
本駅周辺の整備が喫緊の課題となっています。またこれと合わせ、中心市街地の活性化
も重要課題となっています。
熊本城の東側に展開する繁華街は、上通りから下通り、そして新市街まで全天候型のア
ーケードとなっており、西日本最大級の規模を誇ります。またファッションの通り「シャワー
通り」、この他「上乃裏通り」が昔ながらの蔵や建物を活かした個性豊なまちとして中小企
業庁から「がんばる商店街77選」に選ばれています。
さらに現在、国の「中心市街地の活性化に関する法律」(平成18年8月施行)に基づき、
内閣総理大臣の認定を受け熊本駅周辺から中心市街地までの一帯を全体的に活性化さ
せるためのプロジェクトが進められており、官民挙げての協力が求められています。
全国で路面電車が撤退する中、熊本市民の声を受け市電の一部が存続しました。その
後全国で初めて路面電車に冷房設備を導入、さらに超低床電車も全国で初めて導入す
るなど市電の活性化に務めてきました。この他JR豊肥線の駅の増設や駅での駐輪場の整
備などが進められてきました。
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現在検討されている事業としては、市電の延伸、JR豊肥線と市電との結節強化、熊本電
鉄と市電との結節や市電の熊本駅への乗り入れなどがあります。これら鉄軌道の整備と合
わせ検討が進められているのが、バス交通網の整備です。
熊本市のバス交通は全国でもめずらしく、公営交通以外に民間3社が競合して市内を走
ってきました。このため真の意味の市民のための交通網とはなっておらず、民間も含め大
幅な赤字を抱えているのが現状です。こうしたことから、ようやく総合的なバス交通網を整
備するため「バスのあり方検討会」が組織され検討が始められようとしています。
私たち熊本市公明党は、こうした検討の場の設置を早くから求めて来ました。また将来
の熊本市の交通体系の整備をめざし、鉄軌道の位置付け、バスと鉄軌道との分担、ICカ
ードの導入など本格的な利便性の向上対策が求めてきました。こうした実績を踏まえ、マ
ニフェストの策定にあたっては、全市的な地域の足の確保も視野に入れた総合交通体系
の整備に努めました。
30
熊本市フューチャービジョン
ライフアップ・マップ
熊本市公明党 ローカルマニフェストの策定過程について
ここまでローカルマニフェストの作成、提案の5つの背景、熊本市の現状と課題について
分析、検討してきました。こうした作業を通してローカルマニフェスト策定にあたっての視点
となる熊本市の特徴が明らかになってきました。それらの視点を整理すると次のようになり
ます。
「1、熊本市の地理的現状と課題」及び「2、熊本市の人口構成の現状と課題」より
z
九州はひとつとの視点に立ったアジアとの連携強化と、福岡一極集中へのカウンタ
ーバランスとしての熊本市のビジョンの策定。
z
昼間人口が周辺地域から13%を超える実態に着目した周辺地域を視野に入れたビ
ジョンの策定。
z
他の県都(福岡市を除く)にない人口構成に着目したビジョンの策定。
¾ 男女とも20代、30代の若い世代が多い。
¾ 女性で見ると20代から50代まで満遍なく在住している。
¾ 成人してから地元に残る女性が多い。
¾ 30代女性の就業率が7割前後で、働く場へのアプローチが求められる。
¾ 女性のライフサイクルにあわせた支援策の充実。
¾ 少子化対策と合わせ、若い世代、女性対策の充実。
31
「その他の分野の熊本市の現状と課題」より
z
若い世代を中心とする豊富な人的資源の存在と経済振興及び就労環境の改善。
z
全国トップクラスの農漁業の振興と担い手の育成。
z
物的資源の宝庫(熊本城、永青文庫、肥後六花、石の文化財など)の活用。
z
人的資源の宝庫(加藤清正、細川家、宮本武蔵、横井小楠、森鴎外、夏目漱石など)
の歴史的人材資源の活用。
z
永谷検校記念・くまもと全国邦楽コンクール、夏目漱石顕彰・「草枕」国際俳句大会に
代表される、歴史に根ざした新しい文化・芸術の振興と昇華。
z
将来に向けた医師の確保と予防医学の普及。
z
新たな教育ニーズに対応した質量にわたる教育環境の充実。
z
地下水保全の更なる推進と地球温暖化対策への取り組み。
z
熊本駅周辺整備と中心市街地の官民挙げての活性化。
z
鉄軌道の位置付けと、総合的なバス交通網の整備などによる地域の足の確保。
以上を踏まえ、マニフェストの構成は次の通りとしました。
① マニフェストの骨格となる、進むべき方向性を示す「3つのビジョン」
② 「3つのビジョン」の実現をめざす個別具体的なロードマップ(道しるべ)として「5つのタ
ーゲット」
作業にあたっては、公明党熊本市議会議員が中心となり、これに熊本県議会議員も加
わってたたき台としての素案を作成しました。その上で、市民の意見を反映させるため、
特に、現状と課題の分析で明らかになった女性の活躍を支援する施策の重要性に鑑み、
女性リーダーの皆さんに参加いただき、ワークショップを行いました。
ワークショップは2日間行い、女性のライフサイクルに着目し、ライフイベントごとの課題
を検証しグループ毎の発表を行いました。その上で、全体会議で課題に対する対処法を
検討し合意が得られた内容については素案の修正、加筆を行いました。
ワークショップに参加いただいた女性市民の代表の年齢構成等は次の通りです。大変
お忙しい中ご協力いただいたことに改めて御礼申し上げます。
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(年齢構成)
(未婚・既婚の別)
(ワークの別)
20代
1人
未婚
3人
ワーク
5人
30代
3人
既婚
7人
主婦
4人
40代
2人
学生
1人
50代
3人
60代
1人
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ローカルマニフェストとして提案する上での位置づけと留意点
地方議会の、それも一会派が「ローカルマニフェスト」」を提案するにあたって、その検討
過程で、全国的にもほとんど事例がないことから、その位置づけと二つの留意点を明確に
する必要があると判断しています。このため、その位置づけと留意点を示します。
≪位置づけ≫
これまでマニフェストという場合、その多くは国政における選挙での政党の「政策綱領」と
して位置付けられてきました。これが拡大され、熊本県では今年執行された県知事選で、
公職選挙法の改正を受けて初めてマニフェストが示されました。
これらマニフェストでは、一つに具体的政策が提案されその財源が示されていること。こ
れに加え、その政策目標の達成年次明記も求められています。
これら財源と達成年次をマニフェストに明示できる背景には、国政においては議院内閣
制であること、そして県知事など首長については、予算編成権を持ち行政の長としての執
行者であることに由来します。
今回、ローカルマニフェストを提案する熊本市公明党は、地方自治における二元代表制
のうちの議会に所属する一会派でしかすぎず、市民のための責務の遂行には余りにも権
限がないのが実態です。例えば二元代表制の一翼を担う地方議会においてさえ、予算編
成権と執行権を持ちません。議会の活性化を進めるために一部改善がなされつつあるも
のの、道半ばであり更なる改善が待たれるところです。
こうしたことからこれまで、熊本市公明党は毎年熊本市の予算編成時期に合わせ、市民
からの要望や意見をもとに、ほぼ200項目にわたる予算要望を市長に行い、会派政務調
査会の中で執行部との意見交換を行い政策の実現に努めてきました。しかしながらこうし
た活動には限界があり、市民との意識の共有や行動の共有にまで発展させることの困難さ
に直面してきたのも事実です。
このため、昨年春の熊本市議会議員選挙後の会派構成にあって、こうした問題を打破
する方法を会派議員で検討、模索してきました。
その結論として、政策実現のための近道としての予算編成権を有する市長に対する予
算要望だけではワンウエーであり、市民との意識の共有からスタートし、その昇華として
の行動の共有を目指すべきであるとの判断に至り、その方法としてローカルマニフェスト
(地方版会派マニフェスト)を広く市民に発表することとしました。
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今回発表するローカルマニフェストは、選挙公約のように任期4年間を目標とするもの
ではなく、中長期的な視点も入れてのものとしています。地方自治体では総合計画が策
定され、行政の目指す方向性が明らかにされているように、発表するマニフェストは、政
策集団としての熊本市公明党が目指す政策の骨格であり、会派としての一貫した姿勢を
市民の皆様に約束するものです。
このため、ローカルマニフェストの作成・提案の背景、熊本市の現状と課題の分析に基
づき作成しました。作成・提案にあたって特に留意した点は、総合計画のように「総花的」
にならないように、熊本市の現状や課題で明らかになった項目に絞り込んだことです。
このことから、今回発表するローカルマニフェストは、市民意識や社会の変化、さらに
は市民の皆さんとともに活動することで得られた成果によって、現状が改善されていくこと
などが想定されます。こうした状況変化に合わるため、必要な時期に改定していくこととし
ます。
≪留意点1≫
政策実現に向けての行政レベルでのアプローチ区分
その位置づけで示したように、人事権、予算編成権及び執行権、あるいは法規の制定や
条例の制定において非常に権限が限定されている地方議会のそれも一会派にとって、政
党や首長と同等のマニフェスト提案は本来困難であり、実効性のない意味のないものにな
りかねません。
しかしその一方で、現場を共有し、市民の要望や意見を直接聞き、課題を明確に出来
得るのは地方議員です。そしてなにより市民の生活に直結する対策を行うのはそれぞれ
の市町村です。こうしたことから、権限にかかわりなく、市民や市の将来のために必要とさ
れる政策を提案することの意義は大変大きいと考えます。
そのため、熊本市、熊本県、国、そして熊本市民を結ぶネットワーク政党・公明党の力を
駆使して、課題解決に全力で挑戦することを示すためでもあります。
このために、政策実現に向けての行政レベルでのアプローチ区分を次の2つとして臨み
ます。なお「国に訴えて実現に向け展開する政策課題」については、ターゲットとせ
ず、必要に応じて展開することとしました。
z
熊本市のみで実現に向け展開する政策課題
z
熊本市と熊本県及び国の協力で実現に向け展開する政策課題
35
………………………
…
【
A
】
【
B
】
≪留意点2≫
予算化という数値目標を超える政策目標とする。
国や熊本県と異なり、市民との直接対話が行える熊本市では、市民との対話、連携で
実現可能な政策もあります。さらには背景でも明らかになったように、人口減少社会の到
来など、予算化との連動を待っていては間に合わない課題も山積しています。単年度で
の予算化が可能かどうかではなく、自治体と議会が、さらには市民とが協力して解決しな
ければならない問題点も明らかにしていくことが重要です。
したがって、私たちのローカルマニフェスト「熊本市フューチャービジョン ライフアップ・
マップ」では、予算の確保とはかかわりなく実現に向けて展開すべき政策を提起しまし
た。
36
熊本市フューチャービジョン
ライフアップ・マップ
Ⅲ、3つのビジョン
3つのビジョン
1、「女性の躍動で未来を拓くまち・くまもと」の構築
2、「若者に守り・残し・拓く、歴史と文化の国際都市・くまもと」の構築
3、「市民とともに未来を拓くまち・くまもと」の構築
37
1、「女性の躍動で未来を拓くまち・くまもと」の構築
熊本市の未来は女性政策にかかっているといっても過言ではありません。
女性があらゆる分野で活躍し、熊本に暮らしてよかったと思える熊本づくりが求めら
れます。このため、女性のライフイベントに着目した女性のための総合政策などを策定
し、女性が元気で活躍し暮らせるくまもとの構築をめざします。
熊本市の未来は女性政策にかかっているといっても過言ではありません。
熊本市には地域に残り、地域を支え、地域とともに活きる女性が多くいます。そうした女性
たちが熊本で暮らしてよかったと思える熊本をつくることが求められています。
そのためには何をしたらよいのでしょう。これまではどうしても男性中心の社会構造となっ
ていました。熊本市を元気にするためには、女性の視点に立ってこれまでの政策を見直し、
女性のための施策展開が必要です。
例えば、これまでの少子化対策は、生まれてきた子どもに対する支援を中心に展開され
てきました。乳幼児医療費の無料化や保育園の待機児童の解消などがその代表例になり
ます。私たち公明党はこうした問題に「チャイルド・ファースト社会」の構築を提唱、先駆的
に取り組み推進してきたと自負しています。
しかしながら、少子化対策を、女性の視点に立ってもう一度点検し直す必要があると考
えています。そうすることで、結婚や妊娠・出産さらには職場環境など、あらゆる場面での
女性の不安や問題の解決策が見つかる可能性があります。そして結婚や出産も選択でき
るような経済的な裏づけも必要です。もちろん結婚や出産をしないことは個人の権利・自
主性であり、問題視するものではありません。
これだけではありません。今後の経済の発展にとって女性の存在がますます重要になり
ます。そのために働く喜びも享受できるようにしなければなりません。ようやくこうした取り組
みが企業の間で始まりました。いわゆる「ポジティブ・アクション」です。これは女性を大切な
労働資源と捉え、女性の能力発揮を図るために、個々の企業が男女の機会均等や処遇
の改善を図ることを目的として自主的・主体的に取組むことをさします。こうした取り組みは
企業の活力を生み生産性の向上を図れたとの報告もなされています。このように女性の能
力を活かした対策の官民を挙げた取り組みが求められます。
また女性の健康不安や、ライフイベントでの変化に対する精神的負担からの開放も必
要です。健康面ではようやく私たち公明党の推進により「女性専門外来」が設置されるよう
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になりましたが、予約が一杯の状況で対策としては緒についたばかりです。
私たち熊本市公明党は、これまで子育て支援の強化や、女性専門外来の設置などを
推進してきました。また熊本市の保健、福祉事業を見る女性のための統一された事業分
野がありませんでした。
こうした中、公明党は平成20年4月に、こうした女性のライフサイクルに注目した「まる
ごと-女性サポートプラン」を発表しました。熊本市公明党はこれと連動させながら、さらに
熊本市独自の施策展開をめざし、「女性総合計画」の策定、ハンドブック作成や「総合相
談窓口」の開設など、女性の視点に立った総合的な女性政策の確立をめざします。
2、「若者に守り・残し・拓く、歴史と文化の国際都市・くまもと」の構築
世界に誇る清冽な地下水、「地下水日本一のくまもと」を守り未来に残すことが大変重
要です。CO2削減を含む地球環境保全に向けた施策に連動するものとの認識に立っ
て、その成功例と過程を世界に発信していくことをめざします。
また21世紀の国際化の中心舞台となるアジア、とりわけ東アジアとの交流・連携は歴
史的にも九州がひとつになって牽引しなければなりません。そして熊本市は「九州はひ
とつ」との理念を実現する国際都市のひとつになることをめざします。
さらに独自の歴史と伝統に裏付けられた文化を持つ熊本市は、九州・アジアに発信し
相互理解を深化させていきます。
そしてその次の担い手となる若い世代が福岡市に次いで多い都市として、若者対策
の充実を図り、定住を促進し、活き活きと社会に参加できる環境整備を進めます。
地球全体の水はおよそ14億km3といわれ、このうち海水等が97.5%で淡水は2.5%
しかありません。しかもこの淡水のうち氷河等が1.76%で、地下水は0.76%しかなくほと
んどが水資源としては使えないのが現状です。さらに水資源として使いやすいといわれる
河川・湖沼などの淡水は、わずか0.01%しかないのです。
このため、世界では11億人が安全な水を飲むことができず、24億人が衛生設備を利用
できない劣悪な水環境におかれているといわれます。また国連水発展報告書によると、水
に関連する病気で年間340万人が死亡しており、そのほとんどが子どもであると報告され
ています。
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漆黒の宇宙の中で命のオアシスとして青く光り輝く地球。この地球のあらゆる生命の源
が水です。そして有史以来、人間の活動を支え発展させてきたのも水資源でした。しかし
18世紀以降の産業の振興と人口爆発によって、水不足だけでなく水質汚染などが顕在
化、深刻化してきました。このため水は基本的人権の根幹をなすものとの認識が世界中
に広がっています。
こうした中、2003年に世界の水問題の解決に向けた具体的な行動を検討するため、18
3カ国・地域が参加して、第3回世界水フォーラムが琵琶湖・淀川流域で開催され注目を
集めました。
このようにみるとき、50万人以上では世界で唯一といえる飲用水のすべてを地下水で
賄えている熊本市は、地下水の保全(水量の確保と、水質汚染防止)に全力で取り組み、
水と人の関わり方のあるべき姿を世界に発信していく責任があります。
一例として、熊本市における農政と地下水保全の関係を見ることができます。水量で見る
とき、白川中流域での減反は涵養地域の減少を招き、地下水位の低下や湧水量の減少と
いう地下水量の減少として現われました。また水質で見るとき、水田から畑地への転換は
脱窒作用を喪失させ、その結果、硝酸性窒素の地下浸透量を増加させ、水中の硝酸性窒
素濃度の上昇を招いています。
このように熊本市の地下水量の減少と、硝酸性窒素濃度上昇への懸念は、米あまりか
ら減反政策、水田面積の減少、宅地や畑地への転用といった我が国固有の水稲を中心
とした農業形態の崩壊が招いていることを指摘せざるを得ません。
世界に誇る清冽な地下水、「地下水日本一のくまもと」を守り未来に残すという熊本市
の地下水保全対策の強化は、農業政策の転換、自然環境や生態系の保全と密接にか
かわる問題であり、CO2削減を含む地球環境保全に向けた施策に連動するものとの認
識に立って、その成功例と過程を世界に発信していきます。
21世紀のわが国の発展にとって、経済産業省の平成19年版通商白書や、財団法人
日本国際交流センターの研究プロジェクト報告書でも指摘されているように、アジア、とり
わけ東アジアとの連携強化は欠かすことができません。
もちろん外交など国際政策は国によるところが多く、一県都だけではなし得る問題では
ありません。しかし「九州はひとつ」との観点に立つことによって展望は大きく開きます。
九州地方の人口は約1323万人(2006 年)で人口密度は 370.34 人/km²。面積は3万9
906.73km²、日本で3番目に大きい島で、世界の島の中では第36位の大きさとなってい
ます。また第一次産業は、南九州を中心に野菜、果実類、畜産が特に盛んで出荷額も多
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く、第二次産業では、北九州を中心に電子、鉄鋼、化学工業、造船などが盛んで、特に、I
T産業は世界シェアの1割を占める「シリコンアイランド」と呼ばれています。この他、自動
車メーカーの工場の立地が進み、濃尾地方に次ぐ製造拠点となり、「カーアイランド」とも
呼ばれるようになっています。また九州の名目域内総生産は78兆6915億円(2000年)
で、これは台湾やオーストラリアを上回っており、日本の「一割経済地域」とも言われていま
す。
幸いにして九州は都市ごとの特徴を持ちながらも、「九州はひとつ」との意識が非常に
高い地域でもあります。また歴史的に見ても九州は東アジアを介して日本と世界を結び
つける結節点としての役割を果たしてきました。こうした利点を活かしてこそ九州全体の
浮揚があると確信します。
そのために熊本市は、21世紀の国際化の中心舞台となるアジア、とりわけ東アジアと
の交流・連携を、九州の中央にある県都として、各都市の調整を図り牽引しなければなり
ません。そして熊本市こそ「九州はひとつ」との理念を実現する国際都市のひとつになる
ことをめざします。
さらに相互理解を深めてこそ、連携強化が果たされるとの認識に立てば、普遍性を持
つ文化交流を機軸に据えていく必要があります。この意味でも熊本市は歴史と伝統に裏
付けられた文化を九州・アジアに発信し相互理解を深化させていくことをめざします。
こうした相互交流に担い手になり得るのが若い世代です。若い世代が参加してこそ相
互交流の深化がなされると確信します。幸いにして熊本市は福岡市に次いで若い世代が
多い地域です。このため次の担い手である若者が活き活きと社会に参加できるように、若
者対策の充実を図り、定住を促進するなどの環境整備を図っていきます。
3、「市民とともに未来を拓くまち・くまもと」の構築
地方分権、隣国アジアの急成長、少子高齢社会、人口減少社会の到来など、私たちは
これまでに経験したことのない大きな変革期を迎えるなか、未来を拓くため、市民相互支
援システムの構築など、市民とともに手を携えて未来の熊本市づくりに臨みます。
地方分権はますます進められることになります。そして道州制の議論も本格化してきまし
た。こうした国の骨格のあり方が議論されるのは、明治維新時と終戦時だけであり、大変大
きな変革期を迎えようとしています。
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こうした変革は、政治のあり方にとどまらず、経済の世界でもグローバル化や隣国アジア
の急成長などに象徴される新興国の台頭などめまぐるしく変化を遂げています。今や日本
全体にとっても東アジアとの連携は不可欠な関係となっており、歴史的にアジアとの結び
付きの最も多い九州がひとつとなって臨むことが求められています。
こればかりではありません。少子高齢社会、人口減少社会の到来や地球環境の問題と
いう、有史以来、私たちがこれまでに経験したことのない事態が始まりまたは始まろうとして
います。
こうしたなかで「くまもと」の未来を拓いていくためには、今までのような行政主導による
画一的な対策だけでは解決しない問題ばかりです。
こうしたことから、私たち熊本市公明党は、「くまもと」の未来を拓くため、市民とともに
総力で諸問題に望まなければならないと考えています。このため、私たちは世代間、地域、
社会全体が、それぞれの特徴を活かしながら支え合うシステムの構築と、まちづくりや相
互扶助などについて市民とともに考え、手を携えて臨みます。
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熊本市フューチャービジョン
ライフアップ・マップ
Ⅳ、5つのターゲット
ロードマップ
ターゲット 1
女性が躍動するまち・くまもとに!
ターゲット 2
誰にもやさしい福祉と教育のまち・くまもとに!
ターゲット 3
活力ある産業と若者が活きるまち・くまもとに!
ターゲット 4
日本一の地下水、歴史と文化を発信する国際都市・くまもとに!
ターゲット 5
交通インフラの充実と、市民とつくるまち・くまもとに!
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ターゲット 1
女性が躍動するまち・くまもとに!
女性が輝き活き活きと暮らせる“まち”をめざします。
熊本市では、九州の他の県都と異なり、成人した女性の多くが熊本に残り、社会と地域
を支えてくれています。また他の県都と比べて20代、30代の女性が多いのが特徴です。
このことは生涯を郷土・くまもとで暮らす女性が多いことを意味しています。こうした女性に
光をあてた政策の確立こそ、熊本市を支え未来を拓く鍵となると確信します。
熊本市は、これまで多種多様な保健福祉事業を展開してきました。子育て支援の充実、
高齢者への生活支援の充実、障がい者への生活支援の充実などがこれにあたります。し
かしながら、女性のための総合的な政策はまだないのが現状です。
そこで、これまでの子育て支援を中心とした施策展開から、教育、仕事と生活、健康、
子育て、生きがいといった、女性のライフイベント着目した「総合女性計画(仮称:レディー
スプラン)」の策定などを提案します。そしてこのことの成否が少子化や高齢社会に耐えう
る将来の熊本市構築に繋がると確信します。
●女性のライフイベントに着目した「総合女性計画(仮称:レディースプラン)」を策定・推
進します。【A】
●くまもとで輝き活きるための総合案内冊子「仮称:女性ハンドブック」作成を目指し、ま
ずは「仮称:働く女性のハンドブック」を作成します。【A】
●「女性総合相談窓口」を女性センターや母子福祉センターなどの施設を活用し開設しま
す。【B】
●資格取得、キャリアアップのための研修機会の充実を図るとともに、企業での「ポジティ
ブ・アクション」の推進で女性の就労環境の向上をめざします。【B】
●子育て支援や男女の育児休業取得率の向上を図り、安心の就労環境をめざします。
【B】
●女性専門外来の更なる充実やインターネットなどの活用、「女性の健康パスポート」の
発行、性差医療の推進などで、女性のための医療環境を構築します。【B】
●骨粗しょう症など女性がかかりやすい病気に対する検診体制の強化や予防医療の向
上をめざします。【B】
●安心して出産できる環境の整備と、出会いの場の創出を支援します。【B】
●妊婦健診の無料化、母体の産褥期などのケア、乳幼児ケアの充実を図ります。【B】
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●保育料・幼稚園費の軽減と、認可外保育園の助成の拡大をめざした助成制度計画策
定を図り、保育サービスの充実を図ります。【A】
●児童育成クラブの更なる充実を図ります。【A】
●児童相談所の設置を実現します。【B】
●「こども未来局」の拡充で子ども政策の一本化を図るとともに、総合女性政策との連携
を図ります。【A】
用語解説
「総合女性計画(仮称:レディースプラン)」
女性の生涯に着目し、教育、医療(健康)、仕事と生活、子育て、家庭、生きがい、社会貢献など、社会的、
生理的、精神的側面などあらゆる角度からの女性のための女性が輝き活き活きと生活するための総合計
画です。
「仮称:女性ハンドブック」
女性のための政策を網羅した総合便利手帳です。
「仮称:働く女性のハンドブック」
法律、諸制度、相談窓口、研修、スキルアップなど女性が働く上での諸問題を網羅した便利手帳です。
「女性総合相談窓口」
悩み解決の具体的なアドバイスや専門家の紹介など、女性のあらゆる相談に答える一次窓口です。
「ポジティブ・アクション」
女性の能力発揮を図るために、個々の企業が進める自主的かつ積極的な取り組みのことで、男女の均等
な機会及び処遇を確保するために望ましいとされる取り組みです。
「女性の健康パスポート」
一生を通じて健康を守るためのツールです。予防接種、病歴、妊娠・出産、アレルギーの有無など、健康
に関する記録と、ライフステージに即した情報提供も網羅したものです。
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ターゲット 2
誰にもやさしい福祉と教育のまち・くまもとに!
誰にもやさしい“まち”をめざして、福祉と教育の充実を図ります。「誰にも」とは、子どもた
ちや高齢者などが元気な“まち”をめざすことでもあります。
次代を担う子どもたちへの対策が重要です。これまで熊本市公明党は、全国初の熊本
大学教育学部との連携による「ユア・フレンド事業」(不登校ぎみのこどもへの大学生の派
遣)の実施、小中学校での洋式トイレの導入、熊本市単独奨学金制度の創設などを推進
してきました。
一方、子ども達のいじめ、不登校や問題行動、学びからの逃避行動といった病理の背
景には、学校に限らず地域や家庭など、社会全体の教育力の衰弱という根本原因があり、
人を育むというシステムが機能不全に陥っているとの指摘があります。
これまでの政治主導型の近代日本の教育制度のあり方は限界に来ており、21世紀の
教育はこれまでの「社会のための教育」から「教育のための社会」への転換が急務です。
人間は“個”であると同時に“人倫”(人と人との秩序関係)であることを考えると、「子ども
の幸福」の実現には、学校はもちろんのこと地域や家庭といった社会全体のコミュニケー
ションの回復が重要と考えます。
このために「開かれた教室」運動を提案します。これは教員が定期的に自らの授業を公
開して行う校内研修や、他の学校との交流による教育研修などが考えられます。また保護
者や地域関係者への公開や意見交換も重要で、教員同士、保護者、地域関係者が立場
の違いを超えて刺激し、触発する場の提供が目的です。
熊本市公明党は、こうした具体的取組みを通して、「教育のための社会」の構築を目指
します。
また熊本市公明党は、高齢者などの社会参加の機会向上をめざした「さくらカード」の推
進や、市電への全国で初めての超低床電車(LRV)の導入推進、低床路線バスなどの導
入を進めてきました。
この他にも、福祉政策の一環として住宅政策では市営住宅に「ハーフメード住宅」(障が
いの状況に合わせた内装)の推進、福祉複合型住宅政策への転換、シルバーハウジング
(公営住宅に生活援助員を置く制度)の推進、高齢者住宅改修費助成制度の創設、単身
高齢者などへのコールセンターによる緊急通報システムの導入推進、災害時での「要援
護者支援計画」策定などを推進してきました。
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こうした実績を踏まえた上で高齢社会への準備として、“声かけ”“見守り”をキーワード
とした地域・社会で高齢者を支えるシステムの構築を提案します。
●「社会のための教育」から「教育のための社会」への転換を目指します。【B】
●「開かれた教室」運動で、就労など生活様式の多様化にも配慮した学校・教員・保護
者・地域間の連携強化の場を創出します。【B】
●奨学金の更なる充実を図り、教育を受ける機会の拡大を図ります。【B】
●いじめ・不登校対策の更なる充実を図るとともに、臨床心理士の育成を図ります。【B】
●発達障害児等のための特別支援教育(支援員の確保と質の向上)を充実します。【B】
●食育運動を積極的にすすめ、心と体がバランスよく形成される環境を整えます。【A】
●学校図書室へのエアコン設置を行います。【A】
●「在宅高齢者緊急通報システム」を拡充します。【A】
●「一人暮らし高齢者訪問事業」を拡充します。【A】
●「ふれあいアンドヘルプ事業」を拡充します。【A】
用語解説
「開かれた教室」運動
教科や学校の枠を超えて、教員が定期的に自らの授業を公開し校内研修を行う制度や、近隣校との交流
を兼ねた教育研修の実施、さらには保護者や地域関係者への学校公開日の設定や意見交換会、地域内の
高校・中学・小学校の教員間の意見交換の場の設定など。教員間、保護者、地域から見える教育環境をめ
ざす運動です。
「在宅高齢者緊急通報システム」
一人暮らし等の高齢者に、緊急通報装置を給付又は貸与し、在宅高齢者の生活を支援する制度です。
「一人暮らし高齢者訪問事業」
状況の確認を必要とする、一人暮らしの高齢者安否を週1~2 階訪問員が家庭訪問する事業です。
「ふれあいアンドヘルプ事業」
一人暮らしの高齢者や病弱な高齢者のために、家事援助や話し相手になるなど生活支援するもので、登録
されたシルバーヘルパーを派遣する事業です。
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ターゲット 3
活力ある産業と若者が活きるまち・くまもとに!
今年4、5月に経済産業省が実施した「企業立地満足度調査」で、熊本県が3位に入りま
した。ちなみに1位は大分県で、6位タイに佐賀、長崎、宮崎、鹿児島が入り、九州が上位
を占めています。こうした利点を活かした産業政策が求められています。
一方、人口50万人以上の都市の中では農業産出額、生産農業所得とも全国トップクラ
スの地位にある熊本市。この農業の振興は市民への食の安全を担保するだけでなく、地
下水質の保全という環境対策でもあります。
こうしたことから“農”への市民意識を高めるとともに、担い手の育成支援で安心の農
業経営を支え、良質で安全な農作物の提供など農業政策の充実を提案します。
また熊本市の男女別人口構成を見ると、22歳まではすべての年齢で男性の方が多い
のですが、23歳から逆転し男性が少なくなっています。これは男性の方が女性より大学
等の卒業後に県外に出て行っていることを示しています。一方の女性は地元に多く残っ
ており、このため男女比のアンバランスが発生しています。熊本市の将来を考えるとき、
若い世代が活き活きと暮らせるための政策が重要です。また若い世代が参加できる社会
の構築も重要です。ターゲット1の女性政策と相まって、若者対策の強化で将来を支える
人口構造の転換を図ることを提案します。
●活き活き暮らせる基本は住宅の確保です。市営住宅への入居など住宅の確保で、「若
者定住作戦」を展開します。【B】
●若者の活動や健全な集いを支援する拠点や場「ヤングスペース」を創出します。【A】
●仕事に対する意欲や希望が持てるよう大学などと連携した就労意欲向上対策を展開し
ます。【B】
●若者の起業・創業の場の提供や支援策を創出します。【B】
●ジョブカフェなど若者の就労支援をバックアップします。【B】
●地域魅力度を活かした産業の誘致と創出を支援します。【B】
●熊本城域(本丸御殿落成)を中核とする、歴史・観光施設の連携を図り、魅力溢れる歴
史都市としての利点を活かした滞在型観光への転換を図ります。【B】
●九州新幹線鹿児島ルートの全線開通による北部九州(福岡市など)他県からの「熊本
定住作戦」を展開します。【B】
●中心市街地や商店街でのアンテナショップの増設など「地産地消」を促進します。【B】
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●団塊世代や若者などの新規就農の促進などによって、遊休農地等の活用を図り耕作
地を守ります。【B】
●海外(特に東アジア)をターゲットとした安心・良質な農魚作物の流通を支援します。
【B】
●農漁業の担い手の育成支援策の強化を図ります。【B】
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ターゲット 4
日本一の地下水、歴史と文化を発信する国際都市・くまもとに!
「清冽な地下水のまち・くまもと」を市民とともにどのように共有できるかが、地下水対策
のポイントになると考えています。「平成の名水」の指定や、日本水大賞グランプリの受賞
など、華々しい成果の一方、市民が地下水を身近に感じていないのも熊本市の特徴では
ないでしょうか。節水キャンペーンが展開されているにも関わらず目標を達成できないでい
る要因のひとつではないでしょうか。このため熊本市民の実体験に基づく「地下水」保全へ
の意識づくりから始めることを提案します。
また世界の「水」事情を考えるとき、50万人以上では世界で唯一といえる飲用水のすべ
てを地下水で賄えている熊本市は、地下水の保全(水量の確保と、水質汚染防止)に全
力で取り組み、水と人の関わり方のあるべき姿を世界に発信していく責任があります。こ
のため世界に誇る清冽な地下水都市くまもとを守り未来に残すという熊本市の地下水保
全対策の強化は、農業政策の転換、自然環境や生態系の保全と密接にかかわる問題で
あり、またCO2削減を含む地球環境保全に向けた施策に連動するものとの認識に立っ
て、その成功例と過程を世界に発信していくことを提案します。
熊 本 市 には歴 史 的 な物 的 ・人 的 資 源 が多 く存 在 します。さらに歴 史 を背 景 とし
た新 たな文 化 活 動 (14回 を数 える永 谷 検 校 記 念 ・くまもと全 国 邦 楽 コンクールと、
12回 を数 える夏 目 漱 石 顕 彰 ・「草 枕 」国 際 俳 句 大 会 など)が根 付 きつつあります。
こうしたコンクールや大 会 をひとつの契 機 として世 界 で邦 楽 演 奏 がなされたり、
俳 句 愛 好 者 が増 えています。この他 にも世 界 の愛 花 家 が肥 後 六 花 の栽 培 、鑑 賞
方 法 を学 ぶなどの動 きも現 れています。しかしながら、まだまだ閉 鎖 的 なのが現 状
で、これら歴 史 と伝 統 に支 えられた文 化 ・芸 術 を世 界 に発 信 していくことを提 案 し
ます。また私 達 の現 在 の文 化 としてどのように昇 華 していくのかその施 策 の展 開
を検 討 します。
さらに歴史的に見ても九州は東アジアを介して日本と世界を結びつける結節点としての
役割を果たしてきました。そして21世紀においては、アジア、とりわけ東アジアとの連携
強化は欠かすことができません。国際関係は国によるところが多いため、「九州はひと
つ」との観点に立つことによって展望は大きく開きます。また九州は都市ごとの特徴を持ち
ながらも、「九州はひとつ」との意識が非常に高い地域でもあります。
こうした利点を活かすために熊本市は、九州の中央にある県都として、各都市の調整
を図り牽引役をめざすことを提案します。
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さらに相互理解を深めてこそ、連携強化が果たされるとの認識に立てば、普遍性を持つ
文化交流を機軸に据えていく必要があります。この意味でも熊本市は歴史と伝統に裏付
けられた文化を九州・アジアに発信し相互理解を深化させていくことを提案します。また九
州からそしてアジアから人が訪れる魅力溢れるくまもとを発信することを提案します。
●九州の各県都(北九州市を含む)との連携と交流対象地域等の分担による、東アジア
との文化・経済など国際交流を強化促進します。【B】
●熊本城の石垣(武者返しなど)や、周辺地域の石橋などと連携を図り新たな手法で、世
界遺産暫定リスト登録へのアプローチを行います。【B】
●永青文庫、全国邦楽コンクール、国際俳句大会など歴史に根ざした新たな文化活動を
支援し、世界に発信していきます。【B】
●世界や日本を巻き込んだ「水」「地下水」に関連するイベントや検討会合(世界水フォー
ーラムなど)の開催を推進します。【B】
●街なかなど人が集う場所で清冽な地下水(水)を感じられる水空間や水の施設整備を
図ります。【A】
●「日本一の地下水都市」として、白川中流域での地下水の水田涵養など農業政策の支
援、自然環境や生態系の保全と連動させた地球環境保全対策の成功例と過程を世界
に発信していきます。【B】
●地下水の涵養と、汚染対策(硝酸性窒素対策など)の強化を図り未来へ引き継ぎます。
【B】
●湧水地域の保全を強化するとともに、他の湧水地域との連携を強化します。【B】
●地下水保全を中核に据えた環境教育を推進します。【A】
用語解説
「硝酸性窒素」
「NOx(ノックス)」とは「窒素酸化物」のことで、その窒素分を「硝酸性窒素」といい、現在、明らかにされている
硝酸性窒素の「人体への影響」は2つあり、1つは酸素欠乏を起こす、いわゆる「メトヘモグロビン血症」で、乳
幼児に多くみられ、「ブルーベビー症」とも呼ばれています。もう1つは、体内で亜硝酸と二級アミンが反応し
て、「ニトロソアミン」という最強の発癌物質ができることです。
「世界遺産暫定リスト」
世界遺産登録に先立ち、各国がユネスコ世界遺産センターに提出するリストで、各国が1年から10年以内を
めどに世界遺産委員会への登録申請を目指すもののこと。
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ターゲット 5
交通インフラの充実と、市民とつくるまち・くまもとに!
地方分権がますます進み、あらたな国の姿として“道州制”が議論されるなか、どのような
「まち」を、誰が、どのようにつくっていくのかが重要になります。これまでのような行政の施
策展開を待ち、画一的なまちづくりがなされる時代は終わりました。
将来の急激な少子・高齢社会を向かえる前に、まちづくりの担い手を明確にしなければ
なりません。自治体と議会の役割も大きく変る必要があります。まさに今回のローカルマ
ニフェスト策定の試みは、その典型といえます。
市民にとって必要な行政情報の提供を求めるとともに、自治体や議会のあり方、さらに
は市民間の相互支援システムの構築についても議論が必要です。こうした市民参加の視
点に着目した施策の展開を検討します。
また高齢社会への備えと、CO2削減など地球環境問題への対応といった将来のまちづ
くりを検討するとき、都市基盤のひとつ交通インフラの整備を欠かすことは出来ません。
熊本市の公共交通にはタクシーを除いて、鉄軌道としてはJR(九州旅客鉄道株式会社)、
私鉄・熊本電鉄、市電(熊本市交通局)が走り、その他の地域には乗合バスが熊本市交通
局以外にも九州産交、熊本電鉄、熊本バスの民間3社によって運行されていますが、競合
して運行されるなど不効率であるだけでなく、旧来の路線権意識が存在しており、真の意
味の市民のための交通網とはなっておらず、民間も含め大幅な赤字を抱えているのが現
状です。このことにより、近い将来にバスや電車が消える事態も想定されています。
さらに問題なのが、これまでの鉄軌道やバス路線網は主に経済活動に合わせて整備さ
れて来たために、交通弱者(高齢者)のための運行形態とはなっていないことです。このた
め現状のままの路線網では将来の高齢社会に対応しておらず、ニーズとのミスマッチが大
きな問題となることが懸念されています。
こうしたことから、鉄軌道の位置付けを明確にし、バスと鉄軌道との分担を明らかにして
いくことや、ICカードの導入など本格的な利便性の向上対策の強化、そして鉄軌道やバ
スでは対応できない地域での、地域の足の確保を図り、誰でも移動が可能な交通インフ
ラの充実したまちの構築を市民の皆さんとともに築いていくことを提案します。
●地方分権や道州制も視野に入れ、まちづくりについて市民とともに議論を進め、「市民
相互支援システム」についても検討していきます。【A】
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●市民に必要な行政情報(税、社会保障、子育て・高齢者支援事業など行政情報)の積
極的な提供を求めていきます。【A】
●「幹線路線バス」と「生活路線バス」のすみ分けなどでバス路線網を再編します、【B】
●コミュニティーバスや乗合タクシーなど、身近で乗れる交通インフラを創ります。【B】
●熊本駅から熊本空港までの中距離輸送機関の整備を促進します。【B】
●JR、私鉄、市電、バス(コミュニティーバスを含む)の結節強化を図ります。【B】
●定時制の確保やICカードの導入、分りやすい運賃の設定で、利便性の向上を図ります。
【B】
●化石燃料を極力使用しない交通機関の導入を支援します。【B】
用語解説
「市民相互支援システム」
少子・高齢社会の到来は、現役世代だけの税負担によるだけでは支えられません。各世代間の相互理解に
基づいた支え合いや、地域の特性を活かした地域内での相互支援のあり方を構築する必要があります。
「基幹路線バス」と「生活路線バス」
基幹路線とは市内の主要地域間と結ぶ路線のことで、生活路線とは日常生活を営む地域内路線です。
「交通インフラ」
インフラとは生活や生産の基盤を形成する施設や構造物のことで、この場合は従来の乗合バスではなく、コ
ミュニティーバス(地域バスともいわれる)や乗合タクシーなどをいう。
「中距離輸送機関」
主要地域間を結ぶ輸送機関のことで、駅間隔は概ね800m以上あり、高速で地域間を結ぶ交通機関。東京
のゆりかもめなどの新交通システムやモノレール、広島のLRT(マックスムーバ)などをさす。
「ICカード」
IC(集積回路)を組み込んで情報容量を大きくしたカード。クレジット-カードなどに利用される。JRの「スイカ」
などが有名で、いちいちプリペードカードのようにカードリーダー(読取機)に通さなくてもよい非接触式カー
ドのこと。
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