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機器利用 利用課題名(日本語) - 文部科学省「ナノテクノロジー
課題番号 :S-13-KU-0001 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :イオン液体中における亜鉛ポルフィリン-ビオローゲン連結化合物の電子移動反応 とダイナミクス解析 Program Title (English) :Analysis of Dynamics for Photoinduced Electron-Transfer Reactions of Zinc Porphyrin–Viologen Linked Compounds in Ionic Liquids 利用者名(日本語) :田原 Username (English) :Hironobu Tahara 所属名(日本語) :長崎大学大学院工学研究科物質科学部門 Affiliation (English) :Division of Chemistry and Materials Science,Graduate School of Engineering, 弘宣 Nagasaki University 1.概要(Summary ) 1,5-pentanediol(Fig. 1)中での D(ドナー):亜鉛ポル HO (CH 2) 5 OH 1,5-pentanediol フィリン(ZnP)-A(アクセプター): ビオローゲン (V)連結化合物 [ZnP(4)V](Fig. 1)の ZnP の励起 Fig.1 用いた化合物 1重項から V への光誘起電子移動反応を蛍光寿命に 松ホトニクス社製 シングルフォトンカウンティング よって検討した。蛍光寿命測定より、蛍光には参照化 蛍光寿命計測装置を用いて、宇翔製の窒素レーザーによ 合物の寿命と同じ長寿命寿命成分と V による電子移 る色素レーザー(スチルベン) (425nm)によって ZnP-V 動反応により寿命の減少した短寿命成分があること 連 結 化 合 物 [ZnP(4)V] ( Fig. 1) お よ び 参 照 化 合 物 がわかった。この結果より、ZnP(4)V には 2 種類の溶 [ZnP(8)AB] (Fig. 1)の ZnP 部位をレーザー光励起し、 存環境が存在することがわかった。昨年に行ったイオ 分子性溶媒(1,5-pentanediol)中での ZnP の蛍光寿命に ン液体([DEME][TFSI])(Fig. 1)と比較することで ついて、温度を変化させながら測定した。 イオン液体が分子性溶媒よりも電子移動を起こしや すい溶媒環境を提供している可能性が示唆された。 3.結果と考察(Results and Discussion): 温度で測定した寿命の値を表 1 に示した。AB、V は それぞれ参照化合物の ZnP(8)AB の寿命と ZnP(4)V に 2.実験(Experimental): おける 2 成分の内の短寿命成分の寿命を示している。ま た、ZnP(4)V では短寿命(τV )ともう一つ長寿命の成分 N N Zn O N (CH2)4 N N N 2Br - C3H7 (τ AB )が観測された。長寿命の成分は参照化合物の寿 命と同じ値が得られた。また、短寿命の成分の比率を表 1 に合わせて示した。 ZnP(4)V ZnP(4)V には 2 成分の寿命は観測された。この結果は ZnP(4)V には 2 種類の溶存環境が存在し、その一つは V CH3 N N Zn N O (CH2)8 N N CH3 Br CH3 ZnP(8)AB への光誘起電子移動が起こるが、もう一方は連結メチレ ン鎖が伸びて電子移動が起こらないことがわかった。ま た、短寿命の比率は、温度の上昇に伴って、大きくなっ た。これは、電子移動が起こる環境が温度の上昇に伴っ H3CH2C + CH3 N H3CH2C CH2CH2OCH3 [(CF3SO2)2N] - [DEME][TFSI] て多くなっていることを示している。 τ AB とτ V から求めた電子移動速度定数(k et )は温度の上 昇に伴い、大きくなった。 共同研究者等(Coauthor): 昨年度、同様の測定を行った[DEME][TFSI]の結果を表 森藤 亨 (九州大学工学部物質科学工学科) 2 に示した。 米村 弘明(九州大学大学院工学研究院応用化学部門) 298K において溶媒の粘度は[DEME][TFSI]は 71.2 cp、 山田 淳 (九州大学大学院工学研究院応用化学部門) 1,5-pentanediol は 100 cp である。 この程度の粘度の違 いで、電子移動の起こり易さは大きく違うことから、 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) イオン液体が分子性溶媒よりも電子移動を起こしや なし すい溶媒環境を提供している可能性が示唆された。 6.関連特許(Patent) 表 1. 1,5-pentanediol における寿命成分とτ V 成分の 比率と電子移動速度定数 表 2. [DEME][TFSI]における寿命成分とτV 成分の比 率と電子移動速度定数 ・今後の課題 [DEME][TFSI]以外のイオン液体や 1,5-pentanediol 以外 の分子性溶媒での蛍光寿命測定を行い、イオン液体で の光誘起電子移動反応の特性を評価する。 4.その他・特記事項(Others) ・参考文献 1) Tahara, H.; Yonemura, H.; Nakashima, A; Yamada, S. Chem. Phys. Lett. 2012, 524, 42. 2) Tahara, H.; Yonemura, H.; Harada, S; Yamada, S. Jpn. J. Appl. Phys. 2011,50, 081605. 3) Tahara, H.; Yonemura, H.; Harada, S; Yamada, S. Mol. Cryst. Liq. Cryst. 2011, 539, 121. なし 課題番号 :S-13-KU-0002 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :フラクタル表面の摩擦特性 Program Title (English) :Sliding friction on wax surface 利用者名(日本語) :浅野 比 Username (English) :H. Asano 所属名(日本語) :山口東京理科大学 工学部 応用化学科 Affiliation (English) :Department of Appplie Cemistry, Faculty of Engineering, Tokyo University of Science, Ymaguchi 1.概要(Summary ) 4.その他・特記事項(Others) ガラス基板に塗布した油脂表面の摩擦特性について調 なし べ予定であった。 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) なし 2.実験(Experimental) 6.関連特許(Patent) 環境制御型ユニット付き多機能走査型プローブ顕微鏡 なし (E-sweep) SPA300HV エスアイアイ・ナノテクノロジー社 製 3.結果と考察(Results and Discussion) なし 課題番号 :S-13-KU-0003 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :高分子界面ナノ構造・物性の解析 Program Title (English) :Analysis of nano-structre and properties of polymer interface 利用者名(日本語) :波部 太一 Username (English) :T. Habe 所属名(日本語) :花王(株)解析科学研究所 Affiliation (English) :Analytical Science Research Laboratory, Kao Corporation 1.概要(Summary ) 親疎水性の異なる 2 種類のポリマー(ポリマーA; 親水的、ポリマーB;疎水的)について、張り合わせ面 領域が大きいことが示唆された。これは、ポリマーA の 方が、より大気中の水分の影響を受けやすい状態にあるの ではないかと以下という事が考えられる。 の界面プロファイル、および、各々の表面が水と接触 した後の界面の構造変化を、動的二次イオン質量分析 法(DSIMS) 、表面プラズモン共鳴(SPR)分光法に て解析した。その結果、ポリマーA の方が、水による 可塑化を受けやすい状態にあることが分かった。 2.実験(Experimental) 界面厚みの測定は、DSIMS(ATOMIKA SIMS4000, Analysetechnik GmbH 社製)を用いた。水接触後の界 図1 ポリマーA およびポリマーB の張 り合わせ面における DSIMS プロファ イル 面状態解析は、SPR 分光法を用いて行った[1]。基板は Au を真空蒸着法により約 50 nm の膜厚になるように ガラス基板に蒸着したものを用いた。ポリマー膜はス ピンキャストにより成膜後、溶剤を除去する目的で真 空下で加熱した。 3.結果と考察(Results and Discussion) 初めにポリマーA および B の張り合わせ界面の界面 厚み、および、そのプロファイルを正確に評価する目 図 2 ポリマーA およびポリマーB の大 気中での SPR 反射率曲線およびそのフ ィッティング結果(赤線) 的で D-SIMS による深さ方向分析を行った。その結果 を図 1 に示す。D イオンの強度が 100min 程度で大き く変化し二層の界面が存在することが分かる。界面プ ロファイルからの部分相溶の可能性がないか考えた 4.その他・特記事項(Others) が、詳細のためには、ベースラインを安定させるなど 参考文献[1] K.Hori, et.al., Soft Matter 7,10319(2011) 詳細な実験が必要である。次に、界面形成に影響を与 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) えると考えられる張り合わせ前の状態をより詳細に なし 解析する目的で、SPR による検討を次に行った。 6.関連特許(Patent) 図 2 に大気中での各ポリマーの SPR 反射率曲線お よびフィッティング結果を示す。フィッティングの結 果から、大気中におけるポリマーの構造を推定した結 果、ポリマーA の方が表面から屈折率の低下している なし 課題番号 :S-13-KU-0004 利用形態 :共同研究 利用課題名(日本語) :CNT 複合体の膜形成技術の開発 Program Title (English) :Development of fabricating Carbon Nanotube Hybrid film 利用者名(日本語) :今津 Username (English) :Naoki Imazu 所属名(日本語) :東レ株式会社 Affiliation (English) :Toray Industiries, Inc. 直樹 1.概要(Summary ) さらに、ロールサンプルを用いて、抵抗膜式タッチパネ 東 レ 株 式 会 社 は 、 高 導 電 性 2 層 CNT( 体 積 抵 抗 ルのデモ機開発に成功した。(図2) 値:4.4x10-4Ω・cm、東レ独自の方法で測定)を開発し、 インク化、コーティング技術を確立、電子ペーパー用 CNT 透明導電フィルムとして上市した(図1) 。さら に CNT の特徴である光学特性、高耐久性を活かした タッチパネル用にも開発中である(図2) 。また今後 伸展すると予測される曲面、フレキシブルデバイスに 向けても、CNT 透明導電フィルムの適用を進めてい る。 図2 タッチパネル付き10インチモニター 2.実験(Experimental) 本研究では、顕微鏡・分光測定などの多角的な手法を 4.その他・特記事項(Others) 用いた詳細な分析による、CNT 複合体の膜形成技術 研究題目:CNT複合体に関する共同研究 の開発を実施した。主に用いた装置は以下である。 九州大学大学院工学研究院応用化学部門 ・ プローブ型顕微ラマン分光測定装置 中嶋 直敏 教授 ・ 分離用小型超遠心機 藤ヶ谷 剛彦 准教授 ・ ゼータ電位/粒径測定システム ・ 表面抵抗率計 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) (1) Naoki Imazu, Tsuyohiko Fujigaya and Naotoshi 3.結果と考察(Results and Discussion) Nakashima, Sci. Technol. Adv. Mater., in press 上記装置で分析、作成した CNT インクをフィルムに (2) Naoki Imazu, et. al.,The Fourteenth International 塗布し、CNT 透明導電フィルムロールサンプルを作 Conference on the Science and Application of 成した。 (図1) Nanotubes, 6/26/2013. 6.関連特許(Patent) (1) 今津直樹、渡邊修、中嶋直敏、藤ヶ谷剛彦, “透明導 電体およびその製造方法”, 特開 2012-216284, 平成 24 年 11 月 8 日 図1 CNT 透明導電フィルムロールサンプル 課題番号 :S-13-KU-0005 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :次世代機能性材料の創製 Program Title (English) :Structural Analysis of new functional materials 利用者名(日本語) :大背戸豊 1)、小野文靖 1)、平田 修 2)、松本圭吾 1),2) Username (English) :Yutaka Ohsedo1), Fumiyasu Ono1), Osamu Hirata2), Keigo Matsumoto1),2) 所属名(日本語) :1) 九州大学, 2) 日産化学工業(株) Affiliation (English) :1) Kyushu University, 2) Nissan Chemical Industries, Ltd. 性剤フリーの医薬品、化粧品分野への応用が期待される。 1.概要(Summary ) 低分子ゲル化剤は少量の添加でさまざまな溶剤をゲル 化することが可能であり、化粧品、医薬品、食品、電子デ バイス等、さまざまな分野においての利用が期待されてい る。我々は、低分子ゲル化剤として天然に豊富に存在す る単糖に着目した。以前の報告により、各種溶媒をゲル 化することが知られているマンノースおよびグルコース誘 導体(BnMan, BnGlc)を軸として、より低いゲル化剤添加 . e a on a ab e1 maannn noossee aan nd g lu ucco ess o of m osse e Ta 1. Ge blle T la tio n ab ilitie v v r n vva uss ssoollvveen nttss e a ess iin arriioou t i i d er iva tiv e veen ntt n n C1 ollv an c c Ma Maan 4M 122M 122Gllc sso C1 C44Gllc C4 . nee oluue en To G (2 ) G (1 ) G (1 ) G (0.5) nta ne opeen assil o oxxa an e . . . . Cyccl o G ( 0.5) G (0.25 ) PG (0 .1 ) G (0 .0 5) ( SH245) opyl Myrrissta atee . . Issooprro TG (1 ) PG (0.5 ) G (1 ) G (0.5) (IPM) . e Oil Olivve TG (1 ) TG (1 ) G (1 ) G (0.5) . . Ethyleennee Gl yccool OG (2 ) G (0 .0 5) OG ( 2) T G (0.25 ) 量、ゲルの透明性、ゲルの機能化を目的として官能基修 飾によるゲル化能を検討した(Figure 1)。 O O HO H OH O O O R2 HO H O OH OMee R1 e Me OM = = nMaan n) nG lcc) R1 = H ( Bn R2 = H ( Bn = = n) an c) = C H 3( CH 2) 3O - (C4Ma = C H 3( CH 2) 3O - (C4Glc = = n a c) = C H 3( CH 2) 11 O- ( C1 2Man ) = C H 3( CH 2) 11 O- ( C1 2Glc . ruc ures o e nves a e mannose an r u e u r c o s e e attiivveess he iin ve sttiiga tte d man no se a nd g lluc os e de riivva Figur e 1. Sttru c ttu re s of tth EtOH S H 2O . O G (0 .1 ) S S G (2 ) I . TG ( 0.1) I wt%) .. n paarre nthe nc ncce ntrraatioonn ( CG C,, w en essiss aarre e ccrriticca al ge el a atio on on co en Vaaluueess i n , ance aren e , ance ucen e , ue e geel ; PG ,, paarrtiaal geel; G, trra nceparent gel; TG. , trra ncelucent gel; OG, oopaaqu , uti o n; I,, innsso uble on olu e. S, ssool u 2.実験(Experimental) 種々の化合物の合成を行い、同定は 500MHz NMR スペクトルにて行った。 3.結果と考察(Results and Discussion) ゲル化能試験の結果より各種溶媒に対するゲル化 . Figure 2 Optical micrograph of the emulsion gel (SH245/H2O (30/70, v/v)) f ormed f rom . . C4Glc at 0 25 wt% without surf actant 能は、芳香環上をアルコキシ化することで非極性溶媒 であるオイルから極性溶媒である水まで 1%以下の添 加量で透明性の高いゲルを形成することがわかった 4.その他・特記事項(Others) (Table 1)。 なし ここで、油および水に対してゲルを形成することが 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) 可能な C4Glc を用いてシリコーンオイル(SH245) (1) 小野文靖、平田修、一丸恵子、新海征治、渡邊久幸、 と水とのエマルションゲルの調製に適用した(Figure 日本化学会第 94 春季年会、平成26年3月29日. 2)。エマルションゲルの調製は、一般的に界面活性剤 を添加して二相を安定化させる必要があるが、C4Glc 6.関連特許(Patent) を用いることで界面活性剤を添加することなく安定 なし なエマルションゲルの調製が可能であった。 連続相と分散相の両相をゲル化することで、界面活 課題番号 :S-13-KU-0006 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :オリゴマー成分を含む粘着剤におけるオリゴマー成分の表面からの深さプロファイル分析 Program Title (English) :Evaluation of the depth profile of the oligomer for the pressure sensitive adhesives with oligomer 利用者名(日本語) :森 穂高, 中村 賢一 Username (English) :Hodaka Mori, Kenichi Nakamura 所属名(日本語) :東亞合成株式会社 Affiliation (English) :TOAGOSEI Co.Ltd. 1.概要(Summary ) 世の中で広く利用されている粘着剤にはベースポリマー (BP)と呼ばれるガラス転移温度(Tg)の低いポリマーの他に、 速度は約 4.2 nm/min であった。なお、厚みはエリプソメータ によって評価した。このエッチング速度から、エッチング時間 を深さに変換した。 粘着特性を向上させるためにタッキファイヤー(TF)と呼ば れる Tg の高いオリゴマーが添加されることがある。 3.結果と考察(Results and Discussion) 弊社では、特定の TF を添加した際に粘着シートの作成 右図に、様々な dTF 添加 過程で TF が表面に偏析し、それにより粘着特性が飛躍 量に対する[D-]の深さプロ 的に向上することを見出してきた 1)。また、種々の実験によ ファイルを示した。[D-] は り、粘着特性の向上には単純な表面近傍の TF 濃度だけ 表面から数十 nm オーダー でなく、その深さ方向の分布の重要性が示唆されていた。 の深さまで検出され、TF 添 本検討では動的二次イオン質量分析計(DSIMS)により、 加量が多くなるにつれ、より TF 濃度の深さプロファイルの分析を行うことで、TF の偏 深部まで [D-] が検出され 析による粘着特性向上メカニズムの解明を試みた。その た。この結果は、TF が偏析した領域は表面から数十 nm であ 結果、TF が偏析した領域の厚みは数十 nm スケールであ り、TF 添加量に応じて偏析領域が厚くなっていることを示唆 り、TF 添加量が大きくなるにつれ厚くなっていくことがわ している。一方、粘着特性は dTF 9wt%で最も良好であったこ かった。しかし、TF 添加量が多すぎて粘着特性が低下し とから、粘着特性の改質においては、適切な偏析領域の厚 た粘着剤でも、偏析領域が極端に厚くならなかった。この みに加え、適切なモルフォロジーが存在すると考えられる。 [D-] countrate / a.u. dTF 2wt% dTF 4wt% dTF 9wt% dTF 17wt% -40 0 40 Depth / nm 80 結果から、TF の表面偏析を利用した粘着特性の改質で は、TF 濃度の深さプロファイルだけではなく、その相分離 4.その他・特記事項(Others) 構造も重要な因子であると考えられる。 1) 日本接着学会年次大会予稿集, p47 (2013) 2.実験(Experimental) 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) 重水素化ラベルされたタッキファイヤー(dTF)と BP を所 なし。 定の割合で溶液ブレンドした。混合液を剥離フィルム上に 塗工し、乾燥させることで両面粘着シートを作製した。この 6.関連特許(Patent) 粘着シートをシリコンウェハに転写し、その後 Au を約 なし。 20nm スパッタリングしたものを測定サンプルとした。 [D-] のプロファイルに対し、[D-] のカウントが一定になった領 域が TF 添加量に比例するように規格化を行った。エッチ ング速度はシリコンウェハ上にスピンコートで形成された 厚み 80nm の TF 未添加の粘着剤薄膜をエッチングしきる のに必要な時間から算出し、今回の条件でのエッチング 120 課題番号 :S-13-KU-0008 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :ラミネートフィルムの表面軟化温度の測定 Program Title (English) :Measurement of a surface softening point of the laminated film. 利用者名(日本語) :内田 公典 Username (English) :Kiminori Uchida 所属名(日本語) :三井化学㈱ 先端解析研究所 Affiliation (English) :Mitsui Chemicals,inc. Advincing Analysis Laboratory 1.概要(Summary ): ラミネートフィルムの開発のために、走査型プロー ブ顕微鏡を用いてフィルムの表面軟化点温度につい て調べた。 2.実験(Experimental): ベースポリマーおよびベースポリマーに低融点の ポリマーをブレンドした延伸フィルムを作製した。そ れぞれのフィルムの表面軟化点温度は環境制御型ユ ニット付き多機能走査型プローブ顕微鏡を用い測定 した。カンチレバー探針を一定荷重で試料表面に押し 当てて探針の温度を上昇させ、カンチレバーのひずみ が変化する点を表面軟化温度とした。 3.結果と考察(Results and Discussion) : Figure は 2 種類のフィルムについて表面の軟化温 度について調べた結果である。ベースポリマー単体で 作製したフィルムの表面軟化温度は 95 ℃でほぼ一定 であった。一方、低融点のポリマーをブレンドしたフ ィルムについては、より低温側に軟化点が存在し、測 定箇所によって大きく異なることが分かった。今回検 討した系については低融点のポリマーをブレンドす ることにより均一に軟化温度を低下させるのではな く軟化温度低下の効果に分布があることが明らかと なった。 4.その他・特記事項(Others) :該当なし 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) :該当なし 6.関連特許(Patent):該当なし Figure.ラミネートフィルムの表面軟化温 度;上) ベースポリマー, 下) ブレンド品 課題番号 :S-13-KU-0009 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :電解合成法による超微粒子導電性酸化亜鉛の作製および評価 Program Title (English) :Fabrication and Evaluation of Al-doped ZnO Nano-powders with Low Electrical Resistivity 利用者名(日本語) Username (English) :高木 健) :T.takeshi) 所属名(日本語) :株式会社 平昭 Affiliation (English) :HIRAAKI, Co. Ltd. 1.概要(Summary ) 自由電子密度は,約 4at%Al で最大値を示した.また,4at% 超微粒子導電性 ZnO は塗膜にすることにより,可視 以上の Al を含有すると自由電子密度が減少した.これは, 光に対し透明で,紫外線および赤外線を遮蔽する材料 過剰の Al 原子が粒界に分離し,ドーパントとして不活性に (ガラス,フィルム,化粧品等)に応用可能である. なるため自由電子密度が低下したと考えられる.この結果 紫外線の遮蔽は,ZnO のバンドギャップが 3.3eV で より,赤外線の遮蔽に最も効果な Al 含有量は,4at%であ あり,これと同様の光のエネルギーは 380nm 付近に り,自由電子密度が,最大値のところで赤外線の吸収率は, あり,これ以下の光(紫外線)を吸収するためである. 最大になることが分かった. 一方,赤外線の遮蔽は,自由電子のプラズマ振動によ り赤外線が反射・吸収されることは知られているが, 自由電子密度と赤外線の反射率・吸収率の関係につい ては研究されていない.すなわち,自由電子密度が赤 外線の反射率・吸収率に影響しているのか明確にされ ていない.また,ZnO に対し Al のドープ量と赤外線 の反射率・吸収率の関係についても研究されている例 は見あたらない. そこで,本研究はアルミ水合成法で得られた超微粒 子導電性 AZO の紫外線・赤外線遮蔽材料の基礎研究 図 Al ドープ量による近赤外領域の反射率及び 自由電子密度変化 として,特に赤外線遮蔽の効率を高めるために,ZnO に対する Al ドープ量の影響を明確にするとともに Al ドープ量と自由電子密度および電子移動度の関係に ついて検討を行うことを目的とした. 4.その他・特記事項(Others) 特になし 2.実験(Experimental) 利用装置:日本分光、V-670 紫外可視近赤外分光光度 計. 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) 実験方法:AZO のサンプルを成形し,紫外可視近赤 なし 外分光光度計により光反射率の測定を行う. 6.関連特許(Patent) 3.結果と考察(Results and Discussion) 図に Al ドープ量による近赤外領域の反射率及び自由電 子密度変化を示す.光反射率はおよそ 4at%Al で極小値 を示しす。すなわち AZO は赤外線を吸収している.また なし 課題番号 :S-13-KU-0010 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :磁気によるA重油の分子変化 Program Title (English) :Molrcular change of the fuel oil A by the magnetism 利用者名(日本語) :久枝良雄、藤ヶ谷剛彦 1), 桑野秀幸、米倉芳雄 2) Username (English) :Yoshio.Hisaeda Tsuyohiko.Fujigaya1), Hideyuki.Kuwano 所属名(日本語) :1) 九州大学 大学院工学研究院 応用科学部門 Affiliation (English) :1) Graduate School of Engineering、KyushuUniversity, 2) Kuwano-shoji, Co., Ltd. Yshio.Yonekura2) 2)株式会社 桑野商事 1.概要(Summary ) 4.その他・特記事項(Others) ボイラー等の燃焼効率を改善し、燃費削減・CO2 等の有 「なし」 害な排出ガスを低減させる目的。 ボイラー燃焼での実証で燃料消費を 10%前後の削減を 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) 確認している。 「なし」 燃料となるA重油の分子結合を単分子化させ、燃焼時の 酸素結合を改善し不完全燃焼部を完全燃焼状態にする。 6.関連特許(Patent) 特殊合金チップを設置した配管内をA重油を通過させ結 「なし」 合分子を単分子化させる。 A重油の単分子化した結果を確認するため、超伝導磁気 共鳴装置や質量分析器等で測定した。 2.実験(Experimental) ・超伝導磁気共鳴吸収装置 ・質量分析装置 A重油単分子化装置にて 30 分稼働後、分析装置で単 分子化前の重油と単分子化後の重油を測定比較 3.結果と考察(Results and Discussion) 一部のスペクトルに微量の変化が見受けられたが、 全体的な変化はなかった。 A重油のイオン化を測定したが結果が見られず、他の要 因での変化があると思われる。 課題番号 :S-13-KU-0011 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :鎖状、環状多糖のもつ包接能を利用した新素材の創製 Program Title (English) :Creation of novel functional materials using cyclic and open chain polysaccharide 利用者名(日本語) :土屋陽一 , 吉原大輔, 山本竜広, 新海征治 Username (English) :Y. Tsuchiya, D. Yoshihara, T. Yamamoto, S. Shinkai 所属名(日本語) :公益財団法人九州先端科学技術研究所 Affiliation (English) :Institute of Systems, Information Technologies and Nanotechnologies (ISIT) 1.概要(Summary ) 天然で三重らせん構造を有する多糖や環状多糖が 持つ分子包接能を利用し、色素や金属イオン、金属ナ 設計し、SPG と複合化すると SPG 鎖 2 本、共役高分子 1 本の共らせん複合体が得られ、従来より一桁大きい高 効率円偏光発光材料であることが明らかとなった。 ノ粒子と複合化することで新規な機能性材料の創製 について検討を行った。 4.その他・特記事項(Others) 謝辞: 本研究の一部は科学研究費補助金若手研究(B) 2.実験(Experimental) (24750144)および萌芽研究(22655046)の助成を受 単結晶 X 線構造解析装置を用いて、シクロデキスト けたものである。また、単結晶 X 線構造解析において九 リン-金属ポルフィリンの包接錯体単結晶の X 線結 州大学大学院工学研究院の久枝良雄教授、小野利和助教 晶構造解析を行った。また、透過型電子顕微鏡システ に有益なご助言を賜りました。ここに深甚なる謝意を表 ムおよび走査型プローブ顕微鏡を用い、色素増感光還 します。 元反応を用いた多糖-金属ナノ粒子のナノ構造や、多 糖-色素-ランタノイド複合体の構造、多糖-共役ポ 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) リマー複合体の構造について検討した。 (1) Y Tsuchiya, T. Noguchi, D. Yoshihara, T. Yamamoto, T. Shiraki, S. Tamaru and S. Shinkai, 3.結果と考察(Results and Discussion) Supramol. Chem., Vol. 25 (2013) p.p.748-755. 1)メチル化 β シクロデキストリンと種々の金属ポ (2) D. Yoshihara, Y Tsuchiya, T. Noguchi, T. ルフィリンの包接錯体の単結晶の X 線結晶構造解析 Yamamoto and S. Shinkai, Chem. Eur. J., Vol. 19, によって構造を明らかにし、結晶中のアキシャル配位 (2013) p.p.15485-15488. 子や結晶中の構造と蛍光偏光などの機能の相関を明 (3)土屋陽一, Colloid & Interface Commun., Vol. 38 らかにした。2)ニトリロ三酢酸を修飾した三重らせ (2013) No. 4, p.p.12-15. ん形性能を持つ鎖状多糖、SPG 上で疎水場に取り込 (4) T. Shiraki, Y. Tsuchiya, T. Noguchi, S. Tamaru N. んだ色素による色素増感光還元によってキラルプラ Suzuki, M Taguchi, M. Fujiki and S. Shinkai, Chem. ズモンを有する銀ナノ粒子複合体を得た。この種々の Asia J., Vol. 9 (2014) 218-222. スペクトル測定と透過型電子顕微鏡の観察の結果、多 (5) Y Tsuchiya,第 30 回シクロデキストリンシンポジウ 糖と色素の相互作用の強さがキラルプラズモンを有 ム,平成 25 年 9 月 12 日. するナノ粒子の生成に重要であることが明らかとな (6) Y Tsuchiya,第 11 回積水化学自然に学ぶものづくり った。3)4,4-ビスカルボキシフェニル-ランタノイ フォーラム,平成 25 年 10 月 17 日. ドイオンの複合体形成時に α シクロデキストリンを共 (7) Y Tsuchiya,分子・物質合成プラットフォーム平成 存させることで包接による配位子場規制によって超 25 年度シンポジウム,平成 26 年 3 月 11 日. 分子ナノワイヤを形成し、そのナノワイヤはキラル認 識能をもつことを明らかにした。4)メソフェニレン 6.関連特許(Patent) でフルオレン誘導体を連結した蛍光性共役高分子を なし。 課題番号 :S-13-KU-0012 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :階層構造を持つナノ分子積層界面の作製と精密制御 Program Title (English) :Preparation and Precise Control of Bottom-up Nanostructured Interface 利用者名(日本語) :川本 鉄平 1), 上田 博幸 1) , 吉本 惣一郎 2) Username (English) :Teppei Kawamoto1), Hiroyuki Ueda1), Soichiro Yoshimoto2) 所属名(日本語) :1) 熊本大学大学院自然科学研究科, 2) 熊本大学大学院先導機構 Affiliation (English) :1) Graduate school of Science and Technology, Kumamoto University 2) Priority Organization for Innovation and Excellence, Kumamoto University 白金ナノクラスターの存在を元素分析的にも証明する結果 1.概要(Summary ) 金属クラスターの精密制御や錯体分子のナノ構造の形 であり,同様の現象が PdBr 4 2– の系でも生じることが明らかと 成法の確立やその理解は,分子細線や触媒機能を発現 なった。STM 観察の結果から自発的な還元に要する電子の する新規ナノ材料創製にとって重要である。 供給が Au(111)表面に形成された再配列構造に起因する可 本研究では,金基板表面で熱縮合によるポルフィリン2 次元シート形成,および多環系芳香族炭化水素単分子 能性が高まった。電析メカニズムの提唱と合わせ現在,論文 作成中である。 膜上への白金錯体あるいはパラジウム錯体の電析に関し 一方,ポルフィリン分子の熱縮合に関しては,表面に吸着 て,元素分析の観点からキャラクタリゼーションを行うこと している分子の量が少なく,明瞭なスペクトルの変化を得る によって走査型トンネル顕微鏡(STM)によって得られて に至っていないが,縮合によってブロモ基,あるいはヨード いる構造と機能の相関を単原子レベル,ナノレベルで対 基の減少を示唆する結果を得た。引き続き,表面吸着量の 応づけ,新規ナノ構造作製指針の提供を目指した。また, より精密な制御等,最適条件の探索に努めていく。 イオン液体の Au 表面へのイオンの特異吸着に関する表 また,イオン液体中において,特にヨウ化物イオンの特異 面分析にも取り組んだ。 吸着が生じているかどうか,Au(111)電極を用いて検討した。 2.実験(Experimental) その結果,イオン液体中での電極電位に応じて,吸着して 高性能 X 線光電子分光分析装置(XPS)を利用して, いるヨウ素が脱離することが示され,電気化学測定を支持す Au(111)基板上に吸着あるいは析出した原子や分子の元 る結果となった。現在 STM 測定を進めており,原子レベル 素分析を行った。まず,多環系報告属炭化水素単分子膜 解像の結果と合わせて論文作成に取り組む予定である。 上に自発的に電析したと考えられる白金やパラジウムの 4.その他・特記事項(Others) 元素分析を行った。Circobiphenyl 単分子膜は Au(111)基 本実験は,文部科学省・新学術領域研究「配位プログラ 板をそのベンゼン溶液に所定時間浸漬する方法で単分 ム」(No.21108005)の支援により行われました。ここに感謝申 子膜を形成した。さらに,0.1 mM K 2 PtBr 4 , K 2 PdBr 4 水溶 し上げます。 液中へ所定時間浸漬して金属クラスター電析膜を作製し 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) た。一方,ポルフィリン分子の2次元のシート化は,ブロモ (1) 川本 鉄平, 吉本 惣一郎, 2013 年電気化学秋季大会, 基あるいはヨード基を有するポルフィリン分子のサブモノ 平成 25 年 9 月 27 日. レイヤーレベルの単分子膜を作製後,昇温することにより (2) 吉本 惣一郎, 川本 鉄平,日本化学会第94春季年 Au(111)上で熱縮合反応を誘起し, XPS により同定した。 会,平成 26 年 3 月 27 日. イオン液体に関しては,ヨウ化ブチルメチルイミダゾリウム (3) 川本 鉄平, 吉本 惣一郎, 2014 年 電気化学会第 81 中での電位の影響を調査した。 回大会,平成 26 年 3 月 29 日. 3.結果と考察(Results and Discussion) 2– Circobiphenyl 単分子膜上では,PtBr 4 の自発的な還 (4) 上田博幸、西山勝彦、吉本惣一郎, 2014 年 電気化学 会第 81 回大会,平成 26 年 3 月 29 日. 元が生じ,XPS 測定から Pt(0)への還元的析出が示され 6.関連特許(Patent) た。この結果は,電気化学 STM 測定によって示唆された 該当なし 課題番号 :S-13-KU-0013 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :塗膜の界面状態評価手法の検討 Program Title (English) :Characterization of the surface and interface of coating films 利用者名(日本語) :里川 雄一 Username (English) :Yuichi Satokawa 所属名(日本語) :DIC株式会社 Affiliation (English) :DIC Corporation 1.概要(Summary ) 3.結果と考察(Results and Discussion) 樹脂塗膜が設計通りの機能を発現するためには、そ 図 1 は、 二次イオン強度のエッチング時間依存性を示 の表界面および内部の構造が適切に制御されなければ す。T = 50 min 付近から Cr 由来のシグナルの立ち上が ならない。そのためには、構造を評価する手法の確立も りがみられたことから、この時間でエッチングは基板界 不可欠である。本検討では昨年度に引き続き、動的二次 面に達したと考えられる。この時、塗膜中の樹脂由来元 イオン質量分析測定装置を用いて、塗膜の構成成分が 素 A 及び B 由来のシグナルに大きな変化はみられなか 塗膜中にどのように分布するかを評価することを目的とし った。酸素効果が生じた際には、基板由来のシグナルの た。 立ち上がりに伴って他の全てのシグナルも同様に立ち 従来、試料は市販の自然酸化膜付シリコンウェハ (以下 Si ウェハ)の上にスピンコート法により作製 上がる。従って、基板表面に Cr 及び Pt 膜を設けたこと は、酸素効果の低減に一定の効果があったと考えられる。 していた。しかし、特に基板界面近傍において、自然 酸化膜中に含まれる酸素によって周囲の物質の二次 イオン収率が増大してしまう、いわゆる酸素効果の影 響で、界面近傍における二次イオン強度を正しく評価 できていない可能性があった。そこで今年度は特に、 Si ウェハに金属膜を設ける表面処理による界面近傍の酸 素濃度の低下が、酸素効果低減にどの程度寄与するか 検討した。 2.実験(Experimental) 基板には、市販の Si ウェハを用いた。塗膜作成前 に、真空蒸着によりクロム(Cr)膜を、その上にスパ 図 1. 樹脂由来元素 A、B 及び基板由来の Cr、Si の二次イ オン強度のエッチング時間依存性 ッタにより白金(Pt)膜を設けた。この表面処理済み の基板上に、樹脂塗膜をスピンコート法により作製し た。測定に際しては、帯電防止のため表面に金をスパ ッタリングした。 動的二次イオン質量分析測定には、SIMS4000 (Atomika Analysetechnik GmbH, Germany)を用 いた。4 keV, 20 nA の酸素イオンを 400 µm×400 µm の範囲で、入射角 45°で照射し、発生した二次イオン 図 2. 測定中の Cr イオンの検出画面。白い部分が Cr イオ の強度をエッチング時間 T の関数として検出した。 ンの存在を示す 一方、図 2 は、基板界面付近において Cr イオンの シグナルを検出している画面を示す。図中の白く見え る領域が、Cr イオンを検出している部分である。検 出部がまばらであるのは、基板上への Cr の蒸着が不 均一である点を反映したものと考えられる。このこと は、図 1 において Cr イオンのシグナルの立ち上がり をブロード化させる原因と推定される。そのため、例 えば物質の界面への偏析厚みが実際よりも厚く見積 もられてしまう可能性がある。従って、基板の表面処 理をいかに均一に行い、界面の評価を適切に行ってい くかが今後の課題である。 4.その他・特記事項(Others) なし。 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) なし。 6.関連特許(Patent) なし。 課題番号 :S-13-KU-0014 利用形態 :共同研究 支援課題名(日本語) :Solid-in-oil(S/O)化技術を利用した医薬品・化粧品に関する研究 Program Title(in English) :Development of medicines and cosmetics by utilizing solid-in-oil(S/O®) techniques 利用者名(日本語) :山中 桜子 Username(in English) :Sakurako Yamanaka 所属名(日本語) :株式会社ココカラファインネクスト Affliation(in English) :Cocokara Fine Next Co.,Ltd. 研究概要(Summary of Research): 系の検討を行う予定である。 ビタミン C やヒアルロン酸等親水性の高い化合物は、 ・参考文献 通常肌の表面に留まり、肌の奥深くには浸透しない。 後藤雅宏、「大学発ベンチャーSO ファーマ(株)の創 これは、私たちの体の外表面が、角質層と呼ばれる疎 薬技術―皮膚吸収技術から生まれた化粧品」、Colloid & 水性の薄い膜で覆われているためである。この問題を Interface Communication 誌, Vol.37,41-43 (2012) 克服する目的で、有効成分を界面活性剤のコアで包み、 油相にナノ分散化させる SO 技術を用い、新たな機能 共同研究者等(Coauthors): 性化粧品「VIVCO」を開発する。 後藤雅宏、水野恒政 実験(Experimental): 論文・学会発表 水相に親水性薬物または親水性の美容成分を溶解し、 (Publication/Presentation): 油相に親油性の高い界面活性剤を分散し、ホモジナイ 論文 ザーにて高速攪拌し、一昼夜凍結乾燥した。得られた 後藤雅宏、山中桜子、水野恒政、「薬物のナノコーティ 親水性成分‐新油性界面活性剤複合体を油中分散し、 ング(S/O)技術を利用した化粧品 VIVCO シリーズ」、膜 ゼータサイザーゼータ電位・粒子径・分子量測定装置 (MEMBRANE)誌, Vol.37第3号, 159-161(2012). を使用し、調製した S/O(Solid-in-oil)製剤の粒子径 学会発表 を測定した。 「創薬工学から生まれた化粧品 VIVCO」山中桜子、水野恒 政、後藤雅宏「九州大学学術研究都市」セミナーin 東京 結果と考察(Results and Discussion): 2012 年 10 月 調製した S/O 製剤中の親水性成分‐新油性界面活性 剤複合体の粒子径は 100 nm~200 nm 程度であり、 経皮吸収に適した粒子径にコントロール可能である ことが示唆された。 調製した S/O 製剤については、今後、モデル皮膚を用 いて経皮吸収挙動を検討する予定である。 その他・特記事項(Others): ・今後の課題 S/O の毛髪や爪への応用に向けて、組成の検討や評価 関連特許(Patent): 課題番号 :S-13-KU-0015(NSP13058-1) 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :ゾルゲル法により調製したチタン酸バリウムナノ粒子の結晶構造の観察 Program Title (English) :Observation of crystal structure in barium titanate nano particles prepared by sol-gel method 利用者名(日本語) :有村 雅司 1),牧野 晃久 1),下岡 弘和 2) Username (English) :M. Arimura1), T. Makino1), H. Shimooka2) 所属名(日本語) :1) 福岡県工業技術センター,2) 九州工業大学 Affiliation (English) :1) Fukuoka Industrial Technology Center, 2) Kyushu Institute of Technology 1.概要(Summary ) XRD 測定の結果(図 2),立方晶であった。図 3 のラマ チタン酸バリウム(BaTiO 3 )は,高い誘電率および屈折 ンスペクトルからも,室温エージングのみの場合,正方 率を有する材料である。従来は誘電体材料としての利用 晶 BaTiO 3 に特徴的な 300cm-1付近の鋭いピーク 2)は確 が主であったが,近年,BaTiO 3 のナノ粒子の合成が可能 認できず立方晶であると判断された。XPS の分析から, となったことで,光学材料への展開も期待されている。 比較的多くの C を含有するが(重量換算で約 9%),Ba, Ti, 我々もまた,ゾルゲル法を利用して BaTiO 3 ナノ粒子の合 O の比率は概ね両論比であった。以上のことから本研究 成を行っており,優れた分散性を有する BaTiO 3 ナノ粒子 で得られた非加熱の BaTiO 3 は立方晶構造の 10 nm のナ を実現し,誘電体あるいは光学材料への応用を目指して ノ粒子であるといえる。 1) いる 。BaTiO 3 の高い性能を発現させるためには BaTiO3 ナノ粒子の結晶状態の評価ならびにその制御が重要で ある。そこで,本研究では,ゾルゲル法により調製した BaTiO 3 ナノ粒子の結晶状態および熱処理による結晶状 態の変化について評価を行った。 2.実験(Experimental) 等モルのジエトキシバリウムとテトラ-i-プロポキ シチタンを 2-メトキシエタノールとメタノールの混 合溶媒に溶解させて全金属モル濃度が 1.0 mol/L の前 駆体溶液を調製した。-30℃で前駆体溶液中に水を添 加し,次いで室温でのエージング処理を行うことで重 図1 BaTiO3 ナノ粒子の TEM 像 縮合反応を進行させ,結晶化した BaTiO 3 ナノ粒子を 熱処理を大気中にて1時間行った。 調製した BaTiO3 ナノ粒子の結晶相を X 線回折装置 (XRD, EMPYREAN, PANalytical)およびレーザー ラマン分光光度計(NRS-2000, JASCO),ナノ粒子の 組成および状態分析を X 線光電子分光分析装置 (XPS, ESCA 5800, アルバック・ファイ)によって評価した。 BaTiO 3 ナノ粒子の形状等について透過型電子顕微鏡 (TEM, TECNAIG2-20)で観察を行った。 3.結果と考察(Results and Discussion) 室温エージングで得られた BaTiO3ナノ粒子は,図 1に示す TEM 像から分かる様に,10 nm 程度の比較 的粒径の整ったナノ粒子であり,その結晶構造は Intensity (a.u.) 得た。得られた BaTiO 3 ナノ粒子に対して所定温度の 6000 :Cubic BaTiO3 5000 4000 3000 2000 1000 20 25 30 35 40 45 50 60 55 2Theta (° ) 図 2 室温エージングで得られた BaTiO3 ナノ粒子の XRD パターン 700℃ ▼ 14000 12000 (002) (200) (111) 1000℃ Intensity (a.u.) ▼ 10000 8000 1000℃ 700℃ 500℃ 300℃ 6000 4000 500℃ 2000 0 36 300℃ 38 40 42 44 46 50 48 2Theta (° ) 図 4 BaTiO3 ナノ粒子の熱処理による XRD パターンの変化 室温エージング 800 700 600 500 400 Raman shift 300 200 100 (cm-1) 図 3 BaTiO3 ナノ粒子の熱処理によるラマン スペクトルの変化 4.その他・特記事項(Others) 高い誘電率および屈折率の BaTiO3とするためには, 参考文献 結晶構造は正方晶としなければならない。そこで,熱 1) 桑原誠ら,セラミックス,36[6], 412-416 (2001). 処理による正方晶化を試みた。図 4 に熱処理を施した 2) T. Teranishi et. al, Journal of the Ceramic Society BaTiO 3 ナノ粒子の XRD パターンを示す。BaTiO 3 は, of Japan 118 [8] 679-682 (2010). 正方晶化することで(002)と(200)のピークが分裂する 謝辞 が 700℃程度の熱処理ではピーク分裂の兆候は確認で きなかった。1000℃の熱処理で(200)に(002)のショル ダーが表れ,正方晶化が確認できた。一方,図 3 のラ マンスペクトルでは,700℃の熱処理で正方晶特有の 本研究は,「平成 25 年度 研究設備の試行的利用」事業の 援助を受けて実施した成果です。 各装置による測定および観察は,下記の方々の指導を受 けて実施しました。 300cm-1 付近の鋭いピークが現れ,正方晶化している レーザーラマン分光光度計: 藤ヶ谷 准教授 ことが示唆された。XRD では結晶が微細になるにつ X 線光電子分光分析装置: 山田 准教授 れてピークがブロード化するため,正方晶化による僅 透過型電子顕微鏡 : 嶋田 学術研究員 かなピークの分裂が確認できなかったと考えられる。 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) 700℃熱処理の XRD パターンについて Scherrer の式 (1) M. Arimura, 工業技術センタークラブナノテク・材 から求めた結晶子径は約 30nm であった。 料技術部会 第1回ナノ表面解析技術研究会, 平成 25 年 以上のまとめとして,本研究でゾルゲル法により調 12 月 12 日. 製した BaTiO 3 は,非加熱では立方晶の 10 nm のナノ 6.関連特許(Patent) 粒子であるが,700℃程度の熱処理を施すことで正方 なし 晶構造を有した 30 nm 程度のナノ粒子が得られた。 課題番号 :S-13-KU-0016(NPS13005) 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :電極チップ上の 2 元系 SAM 膜の形成促進 Program Title (English) :Formation promotion of binary SAM on Au electrode chip 利用者名(日本語) :片山裕美 1), 江頭直義 2) Username (English) :Y.Katayama1), N.Egashira2) 所属名(日本語) :1) 県立広島大学大学院総合学術研究科,2) 県立広島大学 Affiliation (English) :1) Graduate School of Comprehensive Scientific Research、Hiroshima Prefecture University, 2) Hiroshima Prefecture University 1.概要(Summary ) 0,0.5,1,2,5,10,50mol%混合した 10mM ジチオジプロピ 近年、新型インフルエンザウィルスが出現し、猛威 オン酸/EtOH 溶液に 50℃2 時間浸漬させ、SAM 膜を形 をふるっている。そのため、重篤な被害を抑え、拡大 成させた。EtOH と蒸留水で洗浄後、26mM WSC/NHS を防止するためにも早期に検出することが重要であ に暗所で 1 時間浸漬させ SAM 膜の活性を行った。PBS る。現在、幅広く使用されている簡易判定法は、短時 で洗浄後、1mg/ml BSA を作用電極上に滴下し、4℃1 間で判定可能であるが、感度が不十分(数万 PFU のウ 晩静置させ BSA の固定化を行った。PBS で洗浄後、0.1M ィルスが必要)であり誤った結果を与える場合がある。 2-アミノエタノールに暗所で 1 時間浸漬させブロッキン よって、迅速で高感度な検出法の開発が望まれている。 グを行った。 そこで我々は、電解発光とイムノリポソームを組み 合わせたタンパクの検出法の開発を行った。発光種と してルテニウム錯体をリポソーム内に多量に内包す ることでシグナル増強に成功し、インフルエンザウィ 図 1 タンパク検出用金電極 ルスの高感度検出に成功している 1)。しかし、本検出 法はバックグラウンドの不安定性が問題として残さ れており、これを克服できれば新規検出法としての実 3.結果と考察(Results and Discussion) 用化が期待できる。不安定性の原因として、金電極上 ①bare の自己組織化単分子(SAM 膜)の欠陥によるものと推 定した。これまで、我々はジチオジプロピオン酸 1 成 分による SAM を使用していたが、ジチオジプロピオ ン酸に 1-ヘキサンチオールを加えた 2 成分系にするこ とにより高い被覆率の SAM を再現性よく形成するこ とを示唆する結果を電気化学的手法により得た。 本課題では、タンパクの検出に用いる金電極上の SAM 膜に BSA を結合した様子を、原子間力顕微鏡で 観察することを目的とした。 2.実験(Experimental) 装置 SIMADZU 走査型プローブ顕微鏡 SPM-9600 方法 金電極(図 1)をピラニア液(H 2 SO 4 :H 2 O 2 =1:3)で洗 浄 し 、 10mM 1- ヘ キ サ ン チ オ ー ル が ②SAM 膜のみ ジチオジプロピオン酸 SAM 1.5mol% SAM 0.5mol% SAM 1mol% SAM 1mol% SAM 5mol% SAM ③SAM 膜形成時間変化 10mol% SAM 50mol% SAM 1-ヘキサンチオール SAM 1 時間 2 時間 4 時間 ④BSA 固定 8 時間 0.5mol% SAM 24 時間 1mol% SAM 1.5mol% SAM 2mol% SAM 50mol% SAM 5mol% SAM 1-ヘキサンチオール SAM 10mol% SAM bare や SAM 膜の画像ではグレインの形がはっきりし ているのに対して、BSA が結合しているとグレインの形 がいびつになっているのが分かる。しかし、SAM 膜の 2 成分系組成間の違いは見出すことが出来なかった。今後 は、電気化学的手法等でタンパク結合量の測定し、組成 間の違いを見出す必要がある。 4.その他・特記事項(Others) 参考文献 1)N.Egashira,et al.,Anal.Chem.,80,4020(2008) 謝辞 本実験を進めていくにあたって、実施機関担当となって くださった中嶋直敏教授、技術指導をしてくださった藤 ヶ谷准教授に御礼申し上げます。 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) (1) Y.Katayama,Y.mitoma,N.Egashira,日本化学会中 国四国支部大会,2013 年 11 月 16 日. 6.関連特許(Patent) なし 課題番号 :S-13-KU-0018 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :塗布型有機 EL デバイス材料の物性評価 Program Title (English) :Evaluation of Dispersion of Printed Organic Electronic Device Material 利用者名(日本語) :牧 知治、 Username (English) :Tomoharu Maki 所属名(日本語) :九州大学 最先端有機光エレクトロニクス研究センター Affiliation (English) :Center for Organic Photonics and Electronics Research Kyushu University 1.概要(Summary ) 4.その他・特記事項(Others) 塗布型有機 EL デバイスに使用する材料の種々の有機溶 なし 媒に対する溶解性の評価を粒径測定システムで行った。 測定の結果、材料溶液の理解および材料物性との相関 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) 理解に重要な測定法となりうることが明らかとなった。 なし 6.関連特許(Patent) なし 2.実験(Experimental) 10種類の材料をアセトン、メタノール、エタノールなどの 各種有機溶剤に加え、軽く振とうの後、1 センチセルに入 れ、電位/粒径測定システムによって室温で散乱強度や 粒径分布を測定した。また、これらのパラメーターの時間 依存性を調査するために 1 分ごとに 60 分間、その後 1 時 間ごとに 4 時間測定を行った。 3.結果と考察(Results and Discussion) 測定の結果、目視によって透明な溶液に対しても散乱が 確認され、粒径分布測定の結果、10nm~100nm 程度の 粒子が確認されることが明らかとなった。これらの知見は デバイス作成時の材料塗布後の塗布均一性を理解する 上で重要な知見をもたらす可能性がある。今後塗布後の 材料凝集状態を電子顕微鏡観察等により明らかにし、ま た実際のデバイス特性とも合わせて今回得られた粒径測 定結果と相関を取ることにより、より系統的なデバイス特性 理解が進むと期待できる。 課題番号 :S-13-KU-0019 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :溶液中の分子間相互作用解析 Program Title (English) :Analysis of molecular interaction in liquid state 利用者名(日本語) :高橋 塁 Username (English) :Rui Takahashi 所属名(日本語) :花王(株)解析科学研究所 Affiliation (English) :Analytical Science Research Laboratory, Kao Corporation 1.概要(Summary ) 溶解度の異なる有機化合物 A、B の混合物(分子量 A:168 B:90)について、水溶液中での相互作用解析とし てコールドスプレーイオン化(CSI)質量分析(MS)装置を用 いて解析を試みた。種々の条件検討を試みたが、目的の 分子量は観測されなかったため、溶解状態の情報を得る ことは出来なかった。 2.実験(Experimental) 図 1. CSI-MS スペクトル 測定は、コールドスプレーイオン化装置(JEOL 社製)を 用いて行った。A、B を任意の割合で混合したものを水に 溶解し、測定試料とした。イオン化条件は、Coldspray+、 検出はポジティブ、ネガティブ共に検討した。 3.結果と考察(Results and Discussion) m/z 100~1500 までの結果を図 1 に、50~300 まで の領域を図 2 に示す。種々検討を行った結果、目的の 分子量は異なる m/z=153 のみ観測され、A、B は観測 されなかった。水溶液中でイオン化効率が低いために 図 2.CSI-MS スペクトル m/z=50~300 領域 目的物の観測ができないことが原因と考えられる。 4.その他・特記事項(Others) なし 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) なし 6.関連特許(Patent) なし 課題番号 :S-13-KU-0020 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :キラル柔粘性結晶の構築と、動的挙動の解明 Program Title (English) :Preparation of Chiral Plastic Crystals and Investigation of Its Dynamics 利用者名(日本語) :山田 鉄兵 Username (English) :T. Yamada 所属名(日本語) :九州大学分子システム科学センター Affiliation (English) :Center for Molecular Systems, Kyush University 1.概要(Summary ) 表 1 種々の反応検討条件と結果 キラリティを有する物質中を流れるイオンは、キラ リティにより運動方向が制御されることで、キラリテ ィの認識や回転-並進運動のエネルギー変換などが 可能になると考えられるので期待される。 我々はキラリティを有する柔粘性結晶などのイオ ン材料の構築を行い、これら動的挙動を解明すること で新しい研究分野を創成することを目指した。 本申請においてはキラリティを有し、かつ数 10~数 100 nm 程度のスケールで構造を有する材料の作成を 目指し、キラルな脂質分子と金属イオンからなるナノ 構造体の構築を目指した。 具 体 的 に は N-(2-Hydroxy-n-dodecyl)-L-alanine (L-AlaC 12 OH) とコバルトもしくは銅イオンとを水酸 化ナトリウム水溶液もしくは水―メタノール混合溶 媒中で反応させることで得られる構造体の観察を行 った。1 2.実験(Experimental) 50 ml スクリュー管に L-Alanine【M.W.:89.09、 ナカライテスク】501.72 mg (5.63 mmol) を入れ、そ こへ 60%エタノール水溶液 20 ml、Triethylamine 【M.W.:101.19、キシダ】0.57 g (5.63 mmol、1 equiv.) を加えた後、この懸濁液を室温で 30 分撹拌した。そ の後、1,2-Epoxydodecane【M.W.:184.32、TCI】1.05 g (5.70 mmol、1equiv.) を加え、50 ℃で 9 時間撹拌 した。この反応液を一度減圧留去した後、出てきた固 体をエタノールにて再結晶を行い、無色固体 (2-Hydroxydodecyl)-N-L-alanine (3L) を得た。同様 に 3D も得た。 得られた配位子を種々の条件で溶解し、金属イオンと の反応を行った。 3.結果と考察(Results and Discussion) 立体異性体間の比較のために (3D) 及び (3L) を用いた 錯体形成も試みた。水・NaOH 系での錯形成では、SEM や XRD からは、(3D) or (3L) のみとラセミ体である (3DL) での場合で似た構造体ではあるが、ラセミ体の方 が若干パッキングが良くなった構造を取っていること が示唆された。これはラセミ体において、R 体と S 体が 相補的に充填されることでより高密度で安定な結晶と なるという「ヴァラッハ則」によく一致している。また IR の結果から、ヒドロキシル基部分の吸収が変化してい たため、錯形成や水素結合の状況は変わっていることが 示唆された。TG による熱安定性の比較も行ったが、こ の測定ではラセミ体と光学活性体間の有意な差は見ら れなかった。 水/MeOH 系では、(3D) or (3L) のみに硝酸銅水溶液を 混合させた場合は溶液状態だが、両方を等量混ぜたラセ ミ溶液に硝酸銅水溶液を混合させると速やかに固体が 析出し、沈殿が生じた。SEM 及び XRD 測定から、この 固体は水・NaOH 系で作製した錯体とは構造が異なり、 むしろ周期構造は (3D) or (3L) のみでの結果に近いこ とが分かった。SEM 観察からは結晶性の高い安定な構 造体を形成していることが示唆され、ラセミ体となり光 学異性体同士が互いにパッキングよく自己集合するこ とができるようになり、より密な構造体を形成できるよ うになったということが示唆された。しかし、TG によ る熱安定性評価では、大きな違いは見られなかった。 4.その他・特記事項(Others) なし 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) (1) T. Yamada, Y. Minami and N. Kimizuka, Chem. Lett. Accepted. 6.関連特許(Patent) なし 課題番号 :S-13-KU-0021 利用形態 :機器利用 支援課題名(日本語) :疾患診断・治療を目指した分子プローブの開発 Program Title(in English) :The development of molecular probes for disease assessment and therapy 利用者名(日本語) :土谷 享 、星加 里奈 Username(in English) :Akira Tsuchiya, Rina Hoshika 所属名(日本語) :九州大学稲盛フロンティア研究センター Affliation(in English) :INAMORI Frontier Research Center, Kyushu University 研究概要(Summary of Research): 論文・学会発表 がん診断や治療を行う上でドラックデリバリーシス (Publication/Presentation): テムは効果の向上や副作用の低減といった可能性を ・○星加里奈、土谷享、山東信介、第7回バイオ関連化 秘めている。本研究ではドラッグデリバリーシステム 学シンポジウム、平成 25 年 9 月 27 日 を利用して疾患診断、治療を可能とする分子プローブ ・○土谷享、星加里奈、山東信介、第 39 回反応と合成 の設計を行った。 の進歩シンポジウム、平成 25 年 11 月 6 日 ・ ○ R. Hoshika, A.Tsuchiya, S. Sando, The 40th 実験(Experimental): international Symposium on Nucleic Acids Chemistry, 記入内容 平成 25 年 11 月 14 日 今年度は疾患部位をターゲットとした核酸リガンド を高分子材料に結合し、Zetresizer Nano を用いてそ の粒子径を測定した。 関連特許(Patent): なし。 結果と考察(Results and Discussion): 高分子材料に対し、鎖長を変えた核酸リガンドを結合 し、鎖長、修飾率を変えて分子プローブの粒子径がど のように変化するかを評価した。 その結果、鎖長が長くなるに連れて分子プローブの粒 子径が大きくなり、また、一定の修飾率までは鎖長が 大きくなった。これらの結果と核酸リガンドが機能す る条件を踏まえ、ドラッグデリバリーに用いる核酸の 鎖長、修飾率を決定した。 その他・特記事項(Others): なし。 共同研究者等(Coauthor): なし。 課題番号 :S-13-KU-0022 利用形態 :機器利用 支援課題名(日本語) :機能性核酸を用いた疾患診断・治療 Program Title(in English) :Functional oligonucleotides for disease diagnosis and therapy 利用者名(日本語) :土谷 享 、桑畑 耕平 Username(in English) :Akira Tsuchiya, Kohei Kuwahata 所属名(日本語) :九州大学稲盛フロンティア研究センター Affliation(in English) :INAMORI Frontier Research Center, Kyushu University 研究概要(Summary of Research): 機能性核酸であるアプタマーは標的分子と特異的に 共同研究者等(Coauthor): 結合するというその特性から、医薬品、薬物送達のた なし。 めのリガンド分子として期待されている。本課題では 機能性核酸を用いた分子材料を開発し、この分子素材 論文・学会発表 を用いた疾患の診断・治療を目指す。 (Publication/Presentation): ・○桑畑耕平、徳永武士、土谷享、山東信介、第7回バ イオ関連化学シンポジウム、平成 25 年年 9 月 27 日 実験(Experimental): ・○K. Kuwahata, T. Tokunaga, A. Tsuchiya, S. Sando, The 40th International Symposium on Nucleic Acids 昨年度の利用に引き続き、分子素材を合成するにあた Chemistry, 平成 25 年 11 月 14 日 り、その分子素材が目的通り合成できているかを同定 するのが重要となる。機能性核酸を用いた分子素材を 合成後、目的物かどうかを確認するために MALDI-TOF 質量分析装置を用いて同定した。 また、今年度は核酸に修飾するための有機小分子の同 関連特許(Patent): 定にも MALDI-TOF 質量分析装置を用いた。 なし。 結果と考察(Results and Discussion): アプタマーに脂質分子を修飾したサンプル、合成した 小分子を MALDI-TOF 質量分析装置によりその分子 量を測定したところ、目的物の分子量だった。このこ とから、目的物が得られたことが示された。 その他・特記事項(Others): なし。 課題番号 :S-13-KU-0023 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :フラビン誘導体を用いた金属性単層カーボンナノチューブの濃縮 Program Title (English) :Exclusive condensation of metallic single-walled carbon nanotubes using flavin derivertives 利用者名(日本語) :加藤 雄一 1), Yabing QI 1)) Username (English) :Yuuichi Katou1), Yabing QI 1)) 所属名(日本語) :1) 沖縄科学技術大学院大学 Affiliation (English) :1) Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University 1. 概要(Summary ) 3. 結果と考察(Results and Discussion) 金属性カーボンナノチューブを用いた次世代型透明 得られたフラビン誘導体を用いて金属性 CNT を濃縮し 電極の作製における、高純度金属性カーボンナノチ た。これは申請者所属機関で行った。フラビン誘導体と ューブの精製について検討する。カーボンナノチュー 混合物 CNT をトルエン中に混合し、超音波で分散させ、 ブは製造時に金属性と半導体性が同時に含まれるた その後遠心を行った。遠心後、上澄みに分散する CNT め、半導体性カーボンナノチューブを除去しなければ の 90%以上が半導体性カーボンナノチューブであること ならない。本研究ではフラビン誘導体によって半導体 を図 2 に示す吸収スペクトルにおいて確認した。ここで、 性カーボンナノチューブが抽出されることに着目した。 金属性 CNT が濃縮された沈殿を回収する。この操作を フラビン誘導体によって半導体性カーボンナノチュー 1~10回と繰り返した。 ブの抽出を繰り返すことで、金属性の割合を高めたカ 沈殿の半導体性/金属性の比率、半導体性 CNT の構 ーボンナノチューブが得られると期待できる。得られ 造解析に関しては継続中である。 た金属性カーボンナノチューブの長さを評価し、透明 電極材料として優れているかを明らかにする。 2. 実験(Experimental) 半導体性のカーボンナノチューブ(CNT)を選択的に 抽出させるフラビン誘導体10-Dodecyl-7,8-dimethyl10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione (図1)は市販され ていないため2段階の既知の物質合成を行う必要が あった。所属機関において有機合成を行うことが極め て困難であり、九州大学において有機分子の物質合 成を行った。化合物の同定に装置利用を行った。 ・紫外可視近赤外分光測定装置 ・MALDI-TOF 質量分析装置(フラビン誘導体合成) ・核磁気共鳴測定装置(フラビン誘導体合成) 図 2. フラビン誘導体により抽出された半導体性カ ーボンナノチューブの吸収スペクトル 4.その他・特記事項(Others) なし 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) なし 図 1. フラビン誘導体 10-Dodecyl-7,8-dimethyl10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione の化学構造式 6.関連特許(Patent) なし 課題番号 :S-13-KU-0024 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :新規高温型燃料電池の開発 Program Title (English) :Development of Fuel Cell for High Temperature Operation 利用者名(日本語) :バーバー モハメド レダ アリ アボダラ Username (English) :BERBER MOHAMED REDA ALI ABDALLA 所属名(日本語) :九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 Affiliation (English) :International Institute for Carbon-Neutral Energy Research Kyushu University 1.概要(Summary ) は極めて興味深い。このような性能を持つ MEA に対し、 次世代燃料電池電極触媒には高耐久な高温無加湿動作 耐久性試験サイクル前後の X 線回折測定を全自動水平 が求められている。本目的に対して劣化挙動を解析すべ 型多目的X線回折装置(リガク社製 SmartLab)を用い く、開発している新たな触媒の燃料電池長時間動作前後 て分析を行ったところ、結晶性炭素に由来するピークが のナノ構造を解析する。 耐久性試験後にはブロード化していることが明らかと なった。ここから、耐久性試験によって炭素が酸化溶解 2.実験(Experimental) していることが突き止められた。 CNT (60 mg) と PBI (12 mg) をジメチルアセトア ミド中で反応させ、3 時間超音波処理後、 濾過洗浄し、 4.その他・特記事項(Others) 乾燥後黒色の固体を得た(PBI 被覆 CNT) 。このうち なし 20 mg に 30%PVPA 水溶液 4 ml と水 4 ml を加え水 中で 2 時間攪拌後、濾過洗浄し、黒色の固体を得た 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) (PVPA 複合体)。このうち 10 mg を 60%エチレング (1)Mohamed R. Berber、藤ヶ谷剛彦、中嶋直敏、第 リコール中でヘキサクロロ白金酸 6 水和物 (8wt%水 46 回 フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シン 溶液) (40 ml) と 140 ˚C で 30 分及び 80 ˚C で 20 時間 ポジウム平成 26年3月3日 反応させることにより黒色の固体を得た。作製した触 (2)Mohamed R. Berber、藤ヶ谷剛彦、中嶋直敏、第 媒とリン酸含浸 PBI 膜を用いて単セル評価を行った。 54 回電池討論会、平成 25年10月9日 単セル評価前後の電極触媒複合体に対して全自動水 (3)揚 澤恵、Mohamed R. Berber、藤ヶ谷剛彦、中嶋 平型多目的X線回折装置(リガク社製 SmartLab)を 直敏、第 14 回リング・チューブ超分子研究会シンポジ 用いて分析を行った。 ウム、平成26年3月19日 (4)揚 澤恵、Mohamed R. Berber、藤ヶ谷剛彦、中嶋 3.結果と考察(Results and Discussion) 直敏、第 46 回 フラーレン・ナノチューブ・グラフェン 燃料電池評価装置を使用した実験から触媒層に 総合シンポジウム、平成 26年3月3日 PVPA がドープされている場合、高い出力密度を示し たのに対し、触媒層に PVPA を含まない MEA ではほ 6.関連特許(Patent) とんど出力が得られないことが明らかとなっていた。 なし これは PBI/PVPA 膜からは酸の漏出がなく、電極触媒 中のプロトン伝達が不十分であることを示している。 この比較から、PVPA-MEA における出力は電極触媒 中の PVPA がプロトン伝導を担うことで生じている ことが分かる。液体リン酸のような流動性がない高分 子酸においてもプロトン伝達が実現できていること 課題番号 :S-13-KU-0025 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :新規燃料電池電極触媒の開発 Program Title (English) :Development of Fuel Cell for High Temperature Operation 利用者名(日本語) :ハフズ イナス ハザー ハメド Username (English) :HAFEZ INAS HAZZAA HAMED 所属名(日本語) :九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 Affiliation (English) :International Institute for Carbon-Neutral Energy Research Kyushu University 1.概要(Summary ) 3.結果と考察(Results and Discussion) 次世代燃料電池電極触媒には低白金化が求められてい 実験の結果、PBI 被覆 CNT の量に対して 45wt%の白金を担持 る。本目的に対して開発している新たな触媒のナノ構造を させた複合体では Pt-NP の粒径が 3.7 nm で会ったのに対し、 解析する。エネルギー問題に対する解決策の一つとし 4 wt%になるよう担持した場合において粒径は 1.2 nm であ て固体高分子形燃料電池(PEFC)が注目されている。 った。それぞれの複合体を用いて燃料電池セルを組み、無 普及には低コスト化が必須で、そのためには触媒白金 加湿 120℃(燃料;水素、空気)条件下で動作させた。白 量の大幅な低減が避けられない。これまでに異種金属 金粒径の低減により質量活性が 8 倍向上したことが明らか とのコアシェル化、アロイ化などで白金量を低減し、 となった。 白金比表面積を増やす工夫がなされてきた。しかし、 PEFC 中の強い酸性条件下に置いては白金以外の金 4.その他・特記事項(Others) 属は溶解するため、長期間の安定性(つまり電池耐久 なし 性)に問題が生じると予想される。そこで、白金の粒 子径を低減し、質量活性を高めることで低白金化を実 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) 現することを目指した。 (1)藤ヶ谷 剛彦・Hafez. Inas. H・中嶋 直敏、日 本化学会第 94 春季年会、平成26年3月27日 2.実験(Experimental) 当研究室で開発してきたカーボンナノチューブ 6.関連特許(Patent) (CNT)へ白金を担持する技術を用いて白金担持を行 なし っ た 。 ま ず CNT に 白 金 担 持 足 場 と な る polybenzimidazole(PBI)を被覆し(PBI 被覆 CNT)、 白金塩を添加したエチレングリコール(EG) 水溶液 中で還元を行うことで、PBI 被覆 CNT 上に白金ナノ粒子 (Pt-NP)を成長させた。この際、白金塩の量を調整するこ とで成長する白金ナノ粒子の粒径および密度を制御する ことを試みた。白金ナノ粒子の粒径測定法の一つとして 全自動水平型多目的X線回折装置(リガク社製 SmartLab)を用いて分析を行った。 課題番号 :S-13-KU-0026 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :Corannulene 修飾電極の電気化学的挙動 Program Title (English) :Electrochemical behavior of Corannulene modified electrode. 利用者名(日本語) :出口米和 Username (English) :Y. Deguchi. 所属名(日本語) :群馬工業高等専門学校 物質工学科 Affiliation (English) :Gunma National College of Technology 3.結果と考察(Results and Discussion) 1.概要(Summary ) 電極表面を機能性薄膜で修飾した電極は”修飾電極” CV 測定の結果,-1.66V に還元応答,-1.53V に酸化応 と呼ばれ,裸の電極にはない新しい機能を発現するこ 答がそれぞれ得られた。これらの応答は TOAB のみで修飾 とができる。これまでの研究で,四級アンモニウム塩化合物 した BPG 電極では観測されないことから,得られた応答は が電極表面に有機薄膜層を形成し,薄膜中に固定化さ TOAB 中に固定化されたコランニュレン由来の電気化学応 れた C 60 に対する安定な電気化学反応場を与えること 答であると考えた。 がわかっている 1)3)。本研究では,薄膜形成分子にテトラ 今後の課題として,コランニュレンと TOAB を組み合 オクチルアンモニウムブロミド(TOAB)を用い,有機溶媒中で多電 わせた混合フィルムおよび,溶液中のコランニュレンに 子移動反応が報告されたコランニュレン分子(1)に注 ついて,各種の分光光度計を用いて吸収スペクトル測定 目し 2),1 と TOAB 混合フィルム修飾電極の電気化学 を行い,両者の比較検討よりフルム中でのコランニュレ 挙動について検討を行った。 ンの分散状態についての知見を得る。 Br H3C(H2C)7 N H3C(H2C)7 4.その他・特記事項(Others) (CH2)7CH3 + (CH2)7CH3 TOAB ・共同研究者 九州大学大学院 工学研究院 中嶋直敏 教授 ・参考文献 (1) N. Nakashima et al. J. Phys. Chem. B 2004, 108, 7754-7762 (2) L. T. Scott et al. J. Phys. Chem. B 2009, 113, 1954-1962 (3) N. Nakashima et al. J. Phys. Chem. B 1998, 102, 7328-7330 コランニュレン(1) 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) 2.実験(Experimental) コランニュレン(1)と TOAB を 1:19 で混合したトルエン溶 (1) Y. Deguchi, 平成 25 年度 日本化学会関東支部群馬 地区地域懇談会, 平成 25 年 12 月 4 日. 液を調整し,前処理した BPG 電極表面に 15μL キャスト することで,1:TOAB=(1:19) 混合フィルム修飾 BPG 電極 6.関連特許(Patent) を作製した。作製した電極を作用電極に用い,S.C.E.を なし 参照電極とし,0.5 mol/L TEAC 水溶液中,Ar 雰囲気下 でサイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。 課題番号 :S-13-KU-0027 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :高分子薄膜表面のキャラクタリゼーション Program Title (English) :Characterization of polymer thin film surfaces 利用者名(日本語) :山本 ありさ 、星野 雄紀、上野 帝志、田中敬二 Username (English) :Arisa Yamamoto, Yuki Hoshino, Taishi Ueno 所属名(日本語) :九州大学大学院統合新領域学府オートモーティブサイエンス専攻・先端材料科学分野 Affiliation (English) :Department of Automotive Science, Kyusyu University 1.概要(Summary ) (c) (a) ポリ乳酸(PLA)は植物由来の化合物を原料とするカー ボンニュートラルなマテリアルであり、また、生体安全性に 1 µm Height / nm 優れていることからバイオマテリアルとしての応用が期待 されている。しかしながら、ほとんどの細胞種において、 PLA 表面に対する細胞親和性が低いことから、細胞用ス キャホールドとしての利用は限定されている。本研究では、 30 Height / nm 1 µm (b) 20 10 0 0 1 2 3 30 (d) 20 10 0 0 1 2 PLA の表面改質法として、有機高分子と無機材料をナノ Distance / µm Distance / µm レベルで混合する有機/無機ナノコンポジットに着目した。 (e) (g) 3 細胞接着性の高いチタンを PLA 膜に導入した PLA/チタ ンナノコンポジット膜を作製し、その表面特性を「環境制 1 µm 1 µm 2.実験(Experimental) 高分子として、数平均分子量 92k、分子量分布指標が 1.93 の PLA、およびチタン源としてテトラエトキシチタン 90 120 Height / nm Height / nm 御型多機能走査プローブ顕微鏡」を利用し評価した。 (f) 60 30 0 0 1 2 3 Distance / µm (h) 80 40 0 0 1 2 3 Distance / µm (TEOT)を用いた。TEOT を加水分解した後、PLA/テトラ 図 1 PLA/Ti コンポジット膜の形状像および断面プロファイル。 ヒドロフラン溶液と混合した。混合比は、PLA と TEOT の PLA/TEOT (wt/wt); (a,b) 97/3, (c,d) 95/5, (e,f) 90/10, (g,h) 80/20。 重量比で、97/3~80/20 (wt/wt)とした。各混合溶液から スピンコート法に基づきシリコン基板上にコンポジットを製 4.その他・特記事項(Others) 膜した。また、リファレンスとして、PLA 単体膜を作製した。 本検討により、非常に平滑な PLA/Ti コンポジット薄 各膜は、353 K で 24 h 熱処理を施した。膜表面の形態は、 膜の作製条件を明らかにした。今後は、スキャホールド 「環境制御型多機能走査プローブ顕微鏡」観察に基づき 特性について明らかにすることが重要である。 評価した。 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) 3.結果と考察(Results and Discussion) 図 1 は PLA/Ti コンポジット膜の表面形状像および 断面プロファイルである。PLA/TEOT 比が 97/3 およ 1) 高分子/無機グリーンコンポジット薄膜の表面特性 と細胞接着性、高分子学会九州支部 冬の講演会、ポス ター発表、鹿児島、2013 年 12 月 12 日 び 95/5 (wt/wt)の場合、膜表面は、細胞サイズと比較 して十分に平滑であることが明らかとなった。一方、 6.関連特許(Patent) PLA/TEOT 比が、90/10 および 80/20 (wt/wt)の場合、 なし 膜表面は、極めて粗くなることがわかった。 課題番号 :S-13-KU-0028 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :CO 2 レーザーを用いた ZnO 薄膜の高品質化 Program Title (English) :High quality ZnO film formation by CO 2 laser annealing 利用者名(日本語) :山崎恒太 1), 池上浩 1) Username (English) :K. Yamasaki1), H. Ikenoue1) 所属名(日本語) :1) 九州大学大学院システム情報科学研究科 Affiliation (English) :1) Faculty of Information Science and Electrical Enginnering, Kyushu University 1.概要(Summary ) 4.その他・特記事項(Others) SiO2/ZnO/Quartz sub. 及び ZnO/Quartz sub. の構造 なし を持つ 2 つのサンプルの XPS スペクトルを観測した。SiO2 薄膜堆積前後での表面状態の変化が観測された。 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) (1) 山崎恒太,池上浩,下垣哲也,渡邊陽介,中村大輔, 岡田龍雄,レーザー学会学術講演会第 34 回年次大会, 2.実験(Experimental) 平成 26 年 1 月 20 日. 利用装置:X 線光電子分光分析装置 (2) K. Yamasaki, H. Ikenoue, T. Shimogaki, Y. 実 験 方法 : SiO2/ZnO/Quartz sub. 及び ZnO/Quartz Watanabe, D. Nakamura, T. Okada, SPIE Photonics sub. の構造を持つ 2 つのサンプルの XPS スペクトルを観 West 2014, Feb.4, 2014. 測した。 6.関連特許(Patent) 3.結果と考察(Results and Discussion) Figure1 に示すような XPS スペクトルが得られた。SiO2 薄膜堆積後に Zn 由来のピークが高エネルギー側にシフ トした。このシフトの要因は、ZnO のダングリングボン ドが補償されたことと考えられる。 Figure 1 なし 課題番号 :S-13-KU-0029 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :カーボンナノチューブ分散状態の解析 Program Title (English) :Analysis of solution dispersing carbon nanotubes by AFM 利用者名(日本語) :中澤 浩二 Username (English) :Kohji NAKAZAWA 所属名(日本語) :北九州市立大学 Affiliation (English) :The University of Kitakyushu 1.概要(Summary) 細胞培養は、再生医療、創薬開発、生命現象の解明な した状態が存在するものの、全体的には良好な分散をして おり、さらに CNT の構造そのものも良好に維持された。また、 どを支える重要な技術である。様々な細胞培養方法の中 分散剤が異なっても、その分散状態はほぼ同様であった。さ で、マイクロパターニング培養は、細胞を取り巻く微小培 らに、これらの CNT 分散溶液を利用して、CNT 複合化アガ 養環境を制御できることから、有望な培養技術の一つとし ロースゲルを作製し、NIR の応答性評価した結果、ほぼ同 て注目されている。 様な応答性が確認された。 我々は、これまでに光熱交換能を有するカーボンナノチ これらの結果より、CMC、DNA ともに CNT の分散剤として ューブ(CNT)を複合化したアガロースゲルを開発し、近 有効であり、分散された CNT は NIR 応答性材料へと利用 赤外光(NIR)の照射による局所的なゲル-ゾル転移を することが期待できる。 誘導することによって、細胞接着面を露出させ、細胞をパ ターニング培養する技術の開発に成功してきた。この技 A B 術において、NIR に対するゲルの応答性は非常に重要 であり、それはゲル内 CNT の分散性に左右される。そこ で、本研究では、異なる分散剤を用いて溶液中の CNT 分散状態について評価を行った。 2.実験(Experimental) CNT 濃度が 1mg/mL の水溶液を作製した。この際、 CNT の溶解・分散剤として、0.1%カルボキシメチルセル 図1.CNT 溶液の AFM 像 (A) 分散剤:CMC、(B)分散剤:DNA ロース(CMC)あるいは 10mg/mL の DNA を利用し、こ 4.その他・特記事項(Others) れら分散剤を添加した溶液を超音波処理することによっ (文献)H. Koga, T. Sada, T. Fujigaya, N. Nakashima, て CNT 分散溶液を得た。作製した CNT 分散溶液は K. Nakazawa, Tailor-made cell patterning using a AFM によって解析し、溶液中の CNT の分散状態を評価 near-infrared-responsive composite gel composed of した。 agarose and carbon nanotubes, Biofabrication Vol.5, 015010, 2013. 3.結果と考察(Results and Discussion) CNT は、その高い疎水的特徴から容易にバンドル化す 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) る。このため、溶液中に可溶化するためには酸処理や分 (1) 古賀晴香,佐田貴生,藤ヶ谷剛彦,中嶋直敏,中澤浩 散剤の添加などの処理を行うことが必要である。 二,NIR 応答性ハイドロゲルを用いた肝組織様構造の構築, 本研究では、糖質の CMC および核酸の DNA を分散 剤として利用し、CNT の分散状態を評価した。図 1 にそ れぞれの分散剤で溶解させた CNT の AFM 像を示す。 溶液中の CNT は、一部に大きな塊の残存やバンドル化 第 35 回日本バイオマテリアル学会大会(2013 年 11 月 25 日) 課題番号 :S-13-KU-0030 利用形態 :共同研究 利用課題名(日本語) :アニオン型燃料電池電解質膜の構造、特性解明 Program Title (English) :Analysis of the structure and properties of anion conductive 利用者名(日本語) :柳 Username (English) :Hiroyuki Yanagi 所属名(日本語) :株式会社 トクヤマ Affiliation (English) :Tokuyama Corporation 裕之 3.結果と考察(Results and Discussion) 1.概要(Summary ) 高分子電解質形燃料電池(PEFC)は燃料電池の中 測定の結果、バラつきが多いデータが得られ、数値決定 でも低温動作可能であるため、一般家庭への普及や自 には至らなかった。原因としては平板セルユニットの最 動車への搭載が期待されている。中でもアニオン型 小寸法である最小寸法 33×14 mm にギリギリ満たなか PEFC は触媒として非白金金属を用いることが出来る ったことが考えられる。さらに大きなフィルムの作製に ので低コスト化が期待でき、近年注目されてきている。 トライし、再度測定する予定である。 アニオン型 PEFC の実用化にはアニオン電解質の熱 的・化学的安定性のさらなる向上が必要である。そこ で本研究では、主鎖に高い熱的・化学的安定性を有す る高分子を選択し、アニオン伝導を担うカチオン側鎖 として化学的安定性の高い官能基を化学修飾した新 4.その他・特記事項(Others) 規電解質を設計し(図1) 、解析を行った。膜の電荷 なし を測定することで、目的とする化学修飾がなされてい るかについて確認を行った。 主鎖 OH 側鎖 カチオン OH 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) なし OH 図1.設計したアニオン電解質の模式図 2.実験(Experimental) 合成した高分子を良溶媒に溶解し、フィルムを製膜し 6.関連特許(Patent) た。得られたフィルムに対してゼータ電位/粒径測定 なし システム 大塚電子株式会社製 ELSZ-2 を用いて表面 のゼータ電位を測定した。平板試料用セルを用いると 電気浸透流がセルの表面電位により生じる。セルの内 壁の片面を、平板状の固体試料に置き換えて電気泳動 を行うと取り付けられた平板試料の表面電位が電気 浸透流に反映され、これを森・岡本の式で解析するこ とにより平板試料のゼータ電位を求めることができ る。 課題番号 :S-13-KU-0031 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :カイコ由来 sHSP の構造に関する研究 Program Title (English) :Analysis of the dynamic conversion in the sHSP of the silkworm, Bombyx mori. 利用者名(日本語) :手柴 智史 1) Username (English) :S.Teshiba1) 所属名(日本語) :1 九州大学大学院 生物資源環境科学府 Affiliation (English) :1) Bioresource and Bioenvironmental Sciences, Kyush University 1.概要(Summary ) 4.その他・特記事項(Others) カイコのスモールヒートショックプロテイン(sHSP) なし は多数の同一ポリペプチドが会合した状態のオリゴ マーとして存在しており、このオリゴマーの解離やサ ブユニットの状態を調べる目的で使用した。 2.実験(Experimental) 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) ゼータ電位/粒径測定システム利用 なし 3.結果と考察(Results and Discussion) 6.関連特許(Patent) サブユニットの解離、凝集状態をの詳細を明らかにす なし る事が出来た。 課題番号 :S-13-KU-0032 利用形態 :技術代行 利用課題名(日本語) :新規高分子材料のキャラクタリゼーション Program Title (English) :Characterization of novel polymer materials 利用者名(日本語) :上野 良之 Username (English) :Yoshiyuki Ueno 所属名(日本語) :東レ株式会社 Affiliation (English) :Toray Industries, Inc. 1.概要(Summary ) フォメーションを評価した。分子量の非常に小さい s-および ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ステレオコンプレックス i-PMMA は、空気・水界面ともに分子鎖末端基に由来す は、引力的相互作用(水素結合、静電的相互作用、ファン るシグナルが強く観測された。一方、その PMMA を用 デルワールス力)を駆動力として形成される二重螺旋構造 いて調製した(s-PMMA/i-PMMA)混合膜の SFG スペク であり、水処理膜や人工臓器等への応用が期待されてい トルは、分子鎖末端に由来するシグナルを強くは含んで る新規材料である。本検討(トライアルユース)では、「表 おらず、スペクトルの形状は s-PMMA および i-PMMA 面・界面分子振動解析装置」を用い、水界面における と全く異なっていた。このことから、最表面において PMMA ステレオコンプレックスの凝集状態、ならびに水の PMMA がステレオコンプレックスを形成していること 凝集構造評価について試みた。 が確認された。PMMA ステレオコンプレックスのペク トルは、水と接触しても殆ど変化しなかった。したがっ 2.実験(Experimental) て、最表面における PMMA ステレオコンプレックスは、 試料として、市販の s-PMMA および i-PMMA を用い、 水との接触によってその構造を大きくは変えないと考 所定濃度の トルエン溶液を調製した。また、各溶液の えられる。これは、ステレオコンプレックス内における s-PMMA : i-PMMA = 2 : 1 混合溶液を調製した。スピン PMMA が、水分子と相互作用するよりも分子鎖間で相 コート法に基づき基板上に s-PMMA 膜、i-PMMA 膜、お 互作用した方がエネルギー的に安定であることに起因 よび混合膜を調製し、真空下で 24 h 乾燥した。膜の表面 すると考察した。さらに、PMMA ステレオコンプレッ 形態を光学顕微鏡観察に基づき評価し、また、界面コン クス膜上の水分子は、単体膜上と比較して配向しにくい フォメーションを表面・界面分子振動解析装置を用いて評 ことが確認された。 価した。 4.その他・特記事項(Others) 3.結果と考察(Results and Discussion) 光学顕微鏡観察に基づき評価した各膜の表面形態 本検討により、PMMA ステレオコンプレックスの界 面コンフォメーションの情報を抽出することができ、本 は、s-PMMA 膜ならびに i-PMMA 膜表面は平滑であ 装置の利用が非常に有用であることが確認できた。今後、 るのに対し、混合膜表面は粗かった。溶液中において、 得られる界面情報と機能の相関について詳細な検討を PMMA がステレオコンプレックスを形成した場合、 進めることが可能と考えている。 コンプレックス同士で物理架橋し、最終的にはゲル化 することが知られている。このような状態にある溶液 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) をスピンコートすると、溶液は基板上に濡れ広がりに なし くくなり、膜表面は粗くなる。したがって、この観察 結果は、混合膜中において PMMA がステレオコンプ 6.関連特許(Patent) レックスを形成していることを示唆していると考え なし られる。 次いで、表面・界面分子振動解析装置により、界面コン 課題番号 :S-13-KU-0033 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :高分子結晶の結晶厚化過程のその場解析 Program Title (English) :In-situ analysis during thickening process of polymer crystals 利用者名(日本語) :小椎尾 謙 1), 高原 淳 2) Username (English) :Ken Kojio1), Atsushi Takahara2) 所属名(日本語) :1) 長崎大学大学院工学研究科, 2) 九州大学先導物質化学研究所 Affiliation (English) :1) Graduate School of Engineering, Nagasaki University, 2) Institute for Materials Chemistry and Enginnering, Kyushu University 1.概要(Summary ) 15.6 および 21.7 nm であった。上述のように、MDI およ 本研究では、高分子結晶の結晶厚化過程の構造変化 び BD からなるハードセグメントの本来の結晶融解の融 をその場解析を行うことを目的とする。今回は、準備 点は、200 ºC 以上であるため、本研究で硬化した温度範 実験として、種々の温度で調製したセグメント化ポリ 囲で硬化温度が上昇すると、より平衡状態に近いハード ウレタン(SPU)において形成されるハードセグメント セグメントドメインを形成すると考えられる。 結晶のサイズへ及ぼす硬化温度の影響を評価した。 したがって、結晶化した MDI-BD 連鎖の長さすなわちラ メラの厚みが増加することで、より平衡状態に近い結晶 2.実験(Experimental) を形成したと考えられる。 評価試料として、プレポリマー法により 2 種類の硬 化温度で SPU を調製した。まず、ポリ(オキシテト ラ メ チ レ ン ) グ リ コ ー ル (PTMG, 数 平 均 分 子 量 (M n )=1997)および 4,4’-ジフェニルメタンジイソシア ネート(MDI)を配合比 K = [NCO] / [OH] = 3.3 の条件で 撹拌することでプレポリマーを合成した。得られたプ レポリマーに、硬化剤として、1,4-ブタンジオール(BD) を NCO INDEX = [NCO] pre / [OH] = 1.03 の条件で加え、 撹拌後、硬化反応を 80 および 140 ºC で行い、HSC が 32 wt%の SPU を調製した。ここで、[NCO] pre は、プレ ポリマー中に存在する NCO 基の濃度である。試料名 図 1 HSC32-80 お よ び HSC32-140 の SAXS プロファイル は、ハードセグメント含有量(HSC)および硬化温度を 用いて、HSC32-80 のように表記した。 以上のように、SPU においても硬化温度の上昇に伴い、 3.結果と考察(Results and Discussion) 図 1 は、HSC32-80 および HSC32-140 の SAXS プロ 結晶化したハードセグメントドメインのサイズが増大す ることが明らかとなった。 ファイルである。硬化温度が高い HSC32-140 の散乱ピ ークは、HSC32-80 のそれと比較して、散乱強度が高く、 低角側にシフトし、ピーク幅は減少した。HSC32-140 の invariant の値は HSC32-80 と比較して高かったこと より、HSC32-140 の方がミクロ相分離傾向がより強い ことが明らかとなった。ピーク位置より算出された HSC32-80 および-140 のドメイン間距離は、それぞれ 4.その他・特記事項(Others) 特になし。 課題番号 :S-13-KU-0034 利用形態 :技術代行 利用課題名(日本語) :新規熱硬化性樹脂のキャラクタリゼーション Program Title (English) :Characterization of New Thermosetting Resins 利用者名(日本語) :雁部竜也 1), 関根伸行 1), 岡本健次 1) Username (English) :T. Ganbe1), N. Sekine1), K. Okamoto1) 所属名(日本語) :1) 富士電機株式会社 Affiliation (English) :1) Fuji Electric, Co., Ltd. 1.概要(Summary ) る。 代表的な熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂は耐熱 「表面・界面分子振動解析装置」を用いた時分割蛍光 性、電気絶縁性、耐薬品性、機械的特性に優れている スペクトル測定より、バルクおよび SiOx 界面における蛍光寿 ため、プリント配線用基板の接着、パワーデバイスの 命を評価した。その結果、界面の蛍光寿命がバルクのそれ 封止材、自動車や航空機の構造材料、道路舗装、コン よりも長いことが明らかとなった。これは、バルクと SiOx 界面 クリート構造物の補修など幅広く利用されている。こ ではエポキシ樹脂の分子鎖熱運動性が異なることを示唆し れは、種々の分子量を有するエポキシオリゴマーと ている。 様々な硬化剤を組み合わせることで様々な特性を持 つ熱硬化樹脂が得られるためである。エポキシ樹脂と 4.その他・特記事項(Others) 異種固体界面における凝集状態および分子運動特性 本検討により、SiOx 界面におけるエポキシ樹脂の分子鎖 を理解することは、エポキシ樹脂を展開する上で、極 凝集状態ならびに分子運動特性に関する情報を、当該装置 めて重要な点となっている。本検討(トライアルユー を利用することで抽出できることが示された。今後は、当該 ス)では、 「表面・界面分子振動解析装置」を用い、 装置を用いたより詳細な検討を加えることで、材料展開のた SiOx 界面におけるエポキシ樹脂の凝集状態の評価を めの情報が得られることが期待される。 試みた。 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) 2.実験(Experimental) なし 試料として、市販のエポキシ樹脂および硬化剤を用い た。エポキシ樹脂および硬化剤をモル比 1:2 で混合し、混 6.関連特許(Patent) 合液を SiOx を蒸着したサファイアプリズム上に滴下した。 なし その後、プリズム上の混合液を石英基板で挟み込んだ。 エポキシ樹脂の硬化は真空下、393 K で 2 時間熱処理を 行った後、473 K で 24 時間熱処理を施すことで行った。 表面・界面分子振動解析装置を用いて、エポキシ樹脂か ら発せられる蛍光スペクトルを室温で測定した。 3.結果と考察(Results and Discussion) 「表面・界面分子振動解析装置」を用い、レーザー の入射角を変化させることで、バルクと SiOx 界面におけ る蛍光スペクトルを測定した。バルクでは、蛍光スペクトル の最大波長が 518 nm であったのに対し、SiOx 界面では 455 nm であった。この結果は、SiOx 界面近傍での分子鎖 凝集状態がバルクのそれと異なる可能性を示唆してい 課題番号 :S-14-KU-0035 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :新規環拡張ポルフィリノイドの合成と光物性 Program Title (English) :Synthesis and photophysical properties of novel expanded porphyrins 利用者名(日本語) :井川 Username (English) :Yoshiya Ikawa 所属名(日本語) :富山大学理学部化学科 Affiliation (English) :Departmento of Chemistry, Faculty of Science, Toyama University. 善也 1.概要(Summary ) ピロール環が5つ以上からなる環拡張ポルフィリン 誘導体は、その大きなπ共役骨格による近赤外光吸収 と発光などの特有の光物性を有している。我々は、新 規メソアリール置換ヘキサフィリン誘導体を合成し、 その近赤外発光特性について、本蛍光分光装置で測定 解析を行った。 2.実験(Experimental) HORIBA 社製蛍光分光測定装置 FluorologNIR を用 いて、合成した化合物のジクロロメタン溶液の蛍光発 光特性について評価した。 3.結果と考察(Results and Discussion) 4.その他・特記事項(Others) なし 課題番号 :S-13-KU-0036 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :薄膜センサ表面のキャラクタリゼーション Program Title (English) :Characterization of thin-film sensor surface 利用者名(日本語) :岩倉 宗弘 Username (English) :Munehiro Iwakura 所属名(日本語) :九州計測器株式会社 Affiliation (English) :Kyushukeisokki Co., Ltd. 1.概要(Summary ) 本検討では、種々の表面処理を施した薄膜センサの表 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) なし 面特性を評価することを目的とする。スパッタリングにより 作製した薄膜センサの表面形態等を、「環境制御型多機 6.関連特許(Patent) 能走査プローブ顕微鏡」を用いた形状像や位相像の観 なし 察に基づき評価する。成膜条件と薄膜の表面形態に及ぼ す影響を調査する。 2.実験(Experimental) 試料として、薄膜センサ開発のためにスパッタリン法に 基づき作製した合金薄膜を用いた。膜の表面形態を「環 境制御型多機能走査プローブ顕微鏡」を用いて評価した。 観察は、市販のカンチレバーを使用し、標準的な条件下 で行った。 3.結果と考察(Results and Discussion) 原子間力顕微鏡に基づき観察した合金薄膜の表面 形状像は、膜の作製条件に依存し、ある所定条件下に おいて所望通りの薄膜が作製可能であることが確認 できた。 4.その他・特記事項(Others) 本検討は、株式会社アツミテック(浜松)との共同 研究であり、当該装置による評価が、合金薄膜試料の 評価法として有用であることが示唆された。 今後は、表面形態と、装置の性能、操作の確認との 相関についての評価を進めるために、同薄膜センサ開 発の評価に利用したい。 課題番号 :S-13-KU-0037(NPS13103) 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :新規ビピロール誘導体の結晶構造解析と発光特性の評価 Program Title (English) :Crystal structure and emission properties of novel bipyrrole derivatives 利用者名(日本語) :大川原 徹 Username (English) :Toru Okawara 所属名(日本語) :北九州工業高等専門学校 Affiliation (English) :Kitakyushu National College of Technology 1.概要(Summary ) ピロール 1-3 はすべて NH…O 型の分子内水素結合が存在し、 近年、固体状態で発光性を示す化合物が注目を集めて 2 つのピロール環が共平面構造であった。過去の文献より、 いる。これらは有機 EL や凝集状態での発光を利用する ビアリールは一般的に共平面構造を取る時に高い発光性を 化学センサーなどに利用でき、広く研究されてきている。 示すことから、我々の系でも高い発光性を示すことが期待 中でも、2,2’-ビピロールは二つのピロール環が共平面構 される。次にビピロールの分子間相互作用に注目すると、 造を取った時に発光が非常に強くなり、固体状態でも高 ビピロール 1 および 2 ではπ−πスタッキング型の相互作用で い量子収率を示すことが明らかにされている。本研究で あるのに対して、比較的嵩高い置換基を有するビピロール は側鎖に複数のエステル結合を有する 2,2’-ビピロール 3 では CO-π型の相互作用であった(図 2)。これは、ビピロ を既知の合成法によって合成する。このビピロールは、 ール側鎖の置換基の影響で分子間相互作用の様式を制御で 塩基触媒存在下、様々なアルコールを作用させることで き、電子状態を制御できることを示している。今後は、分 エステル交換反応を行うことができ、側鎖の種類を変え 子間相互作用が電子状態にどのような影響を及ぼすかを、 ることができる。本研究ではこのエステル交換反応によ 吸収、発光スペクトルによって評価する。 って種々の置換基を側鎖に導入し、固体中での分子間相 互作用をコントロールすることを試みる。 2.実験(Experimental) ビピロールは既知の方法によって合成した。合成し たビピロールに対してエステル交換反応を行い、対応す るビピロール 1-3 を合成した。ビピロール 1 は昇華によ って、ビピロール 2 および 3 は塩化メチレン、ヘキサン の混合溶媒から再結晶を行った。得られた単結晶につい 図 2. ビピロール 1-3 の結晶構造解析結果 て単結晶高速 X 線構造解析装置を用いて、固体中での 3 4.その他・特記事項(Others) 次元構造を明らかにした。 RO C O 該当なし H CO2R N RO2C N H O 1: R = Me 2: R = Et 3: R = iPr C OR 図 1. 本研究で用いたビピロール 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) (1) T. Okawara, A. Doi, S. Matsushima, Y. Hisaeda K. Takehara, 第 94 回日本化学会春季年会, 平成 26 年 3 月 28 日 2H1-01. (2) A. Doi, T. Okawara, Y. Hisaeda, S. Matsushima, 日本化学会春季年, 平成 26 年 3 月 28 日 2H1-02. 3.結果と考察(Results and Discussion) ビピロールの結晶構造解析結果より、側鎖置換基が 固体中での分子配列に及ぼす影響が明らかになった。ビ 6.関連特許(Patent) 該当なし 第 94 回 課題番号 :S-13-KU-0038 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :ナノカーボン分子ヒーターによる骨再生促進効果の検討 Program Title (English) :Bone regeneration of nano carbon-based molecular heating device 利用者名(日本語) :川口 稔 Username (English) :Minoru Kawaguchi 所属名(日本語) :福岡歯科大学口腔医学部材料工学分野 Affiliation (English) :Biomaterials Section, Fukuoka Dental College 1.概要(Summary ) カーボンナノチューブの光熱転換作用を応用したハイドロ ゲルを試作し、実験動物の骨欠損部の形態に適応した形 状に加工して貼付し、近赤外線を照射して温熱を付加で きるデバイスを開発した。この温熱デバイスを用いて温熱 付加することによってラットの骨欠損部の新生骨形成が促 進されることが明らかとなり、温熱効果の有効性が示唆さ れた。 2.実験(Experimental) 強酸で可溶化した単層カーボンナノチューブ(ラマ ン分光装置で参加切断状態を検討した)をアルギン酸 図1 新生骨形成率の比較(温熱付加を行ったグループ と行わなかったグループの 3 ヶ月後の新生骨形成量から 求めたもの) ナトリウム溶液(2wt%)に溶解し、Ca 塩で架橋して ゲル化したハイドロゲルを用いた。ゲルを滅菌後にデ 本研究の結果から、温熱デバイスを用いて温熱付加するこ ィスク状に加工し、温熱デバイスを調製した。 とによってラットの骨欠損部の新生骨形成が促進されること ラットの頭蓋骨に形成した直径 8mm の円形欠損部 が明らかとなり、温熱効果の有効性が示唆された。これらの に吸収性のゼラチンスポンジを填入し、骨膜と表皮を 結果に対して以下のように考察している。温熱付加による 縫合した後に表皮上に温熱ディスクを貼付して近赤 骨形成の促進効果については、MAPKinase のリン酸化を 外線を照射した。 照射は術後 1 週間経過後より開始し、 介した熱ショックタンパク質の発現促進が関与してい 欠損部への温熱付加が 42℃/10 分/日となるように設 るものと考えているが、マクロ的には温熱による血流量 定して 3 ヶ月間継続した。 の亢進や血中溶存酸素量の増加などが関与しているも 骨欠損部における新生骨形成の評価はマイクロ CT のと考えられる。 で得られた画像を用いて専用ソフトウェアで形成率 を解析することによって行った。 4.その他・特記事項(Others) なし 3.結果と考察(Results and Discussion) 調製したカーボンナノチューブ配合ハイドロゲルディスク は近赤外線の照射強度に依存した温熱発現を示し、温 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) 度制御も容易であった。 (1) 川口 稔(2013)ガン抗体を結合した SWNT スマ 図1に示すように、温熱付加を行った欠損部での新生骨 ート分子ヒーターによる抗ガン免疫療法の開発. 形成は非温熱付加のグループに比べて有意に高い形成 CREST 第三回公開シンポジウム 東京:6 月 率を示した。またマイクロ CT 画像からも良好な新生骨形 (2)川口 稔、中澤浩二(2013)溶解カーボンナノチュ 成がうかがわれた。 ーブの医療・細胞培養応用.CREST3 領域合同公開シンポ ジウム 東京:10 月 (3)山口雄一郎、佐藤絢子、大野 純、川口 稔、城 戸寛史、福島忠男(2013) 間葉系幹細胞スフェロイド を用いた骨再生効果の促進.第 40 回福岡歯科大学学 会総会 福岡:12 月 (4) 篠﨑陽介、戸田雅子、柳 束、川口 稔、大野 純、城戸寛史、早川 徹、福島忠男(2013)DNA/プロ タミン複合体の幼齢、加齢ラット頭蓋骨における新生 骨形成能の比較.第 40 回福岡歯科大学学会総会 福 岡:12 月 (5)川口 稔、田村翔悟、尾崎正雄、福島忠男(2013) DNA/プロタミン複合体骨補填材の操作性と骨形成能 におよぼす DNA 分子量の影響.第 40 回福岡歯科大学 学会総会 福岡:12 月 (6)川口 稔、鍛冶屋 浩、大野 純、福島忠男(2014) DNA/プロタミン複合体を用いた骨再生における温 熱促進効果.第 13 回日本再生医療学会総会 京都: 3月 (7)田村翔悟、戸田雅子、大野 純、川口 稔、尾崎 正雄、早川 徹、福島忠男(2014)DNA/プロタミン 複合体の DNA 分子量と骨形成能の関連.第 13 回日 本再生医療学会総会 京都:3 月 6.関連特許(Patent) なし 課題番号 :S-13-KU-0039 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :酸化チタネートナノチューブおよび金属添加チタネートナノチューブの合成と物性 評価 Program Title (English) :Synthesis and characterization of titanate nanotube and metal doping titanate nanotubes 利用者名(日本語) :鈴木 Username (English) :Takuya Suzuki 所属名(日本語) :北九州市立大学国際環境工学部エネルギー循環化学科 Affiliation (English) :Dept. of Chemical and Environmental Engineering, Faculty of Environmental 拓 Engineering, The University of Kitakyushu 1.概要(Summary ) 薄膜試料(2)も用意した。真空容器にて九州大学ナノテク 当研究グループでは、酸化チタネートナノチューブや センターまで運搬し、X 線光電子分析装置にて計測を行 SrTiO 3 系光触媒に金属ドーピングを行い、 そのバンド った。 ギャップや電子軌道準位を調べ、新規材料開発の指針 としてきた。チタネートナノチューブは紫外光照射下 3.結果と考察(Results and Discussion) でメチレンブルーの吸着分解にはきわめて高い光活 合成したチタネートナノチューブの Ti-2p 軌道および 性を示す一方、酢酸の光分解や滅菌などでの活性は低 O1s 軌道ピークは分裂していたが、Li の吸着により高エ い。バンドギャップは 3.4ev とアナタース型酸化チタ ネルギー側のサブピークが消滅しシングルピークとな ンの 3.2ev より大きいが、伝導体準位が高いことが問 った。これは Li の吸着により、ナノチューブ上の電荷 題とされている。また、光触媒による有機物分解能に が中和され、TiO 3 構造の有する構造的ひずみが解消され は、有機物の吸着性能が重要との指摘が以前からなさ た結果であると推定される。薄膜試料(1)ではナノチ れており、吸着能力のみの調査も行い、総合的な光触 ューブ構造由来の Ti-2p/IO1s 軌道のピーク(強)と、ペ 媒機能の知見を得ることを研究の目的としている。 ルオキソチタン酸を出発物質としてできたと思われる 今回の測定では、Li 吸着をチタネートナノチューブに アナタース型由来のピーク(弱)が観察された。薄膜試料 対して行い、Ti、O の電子軌道に対する影響を調べた。 (2)では上部の CuAlO 2 のため Ti が測定できなかった。 また、チタネートナノチューブ薄膜を酸化チタン材料 のみで作成し、その電子軌道準位の変化と物性との相 4.その他・特記事項(Others) 関を調べることを目的とした。 測定では九大・山田鉄兵准教授に多大なるご支援をいた だいた。記して謝意を表します。 2.実験(Experimental) 関東化学製アナタース型酸化チタン粉末 0.1g に 10M 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) NaOH を 10ml 加え、130℃24 時間の水熱合成後、 2014 年秋期触媒学会年会にて、測定結果を含む研究成 HCl で 中 和 し チ タ ネ ー ト ナ ノ チ ュ ー ブ を 得 た 。 果を発表する予定。 FE-SEM、XRD で同定/外形観察を行った後、Li を飽 和吸着させ、濾過後 80℃で 12 時間加熱乾燥ののち、 ターボ真空ポンプにて一晩脱水乾燥させ、ESCA 測定 6.関連特許(Patent) 試料とした。また、合成したチタネートナノチューブ なし にペルオキソチタン酸水溶液を加えスプレー法にて ITO 基板上に噴霧・焼結し薄膜試料(1)を得た。薄膜 試料上にさらに P 型半導体の CuAlO2薄膜を成膜し、 課題番号 :S-13-KU-0040 利用形態 :技術代行 利用課題名(日本語) :熱可塑性エラストマー表面での動的ポリマーブラシ形成 Program Title (English) :Dynamic Polymer Brush Formation on Themoplastic Elastomer Surfaces 利用者名(日本語) :横山 Username (English) :Hideaki Yokoyama1) 所属名(日本語) :1) 東京大学 大学大学院新領域創成科学研究科 Affiliation (English) :1) Graduate School of Frontier Sciences, The University of Tokyo 英明 1), 1.概要(Summary ) で加熱アニールの後、実験に使用した。大気下における 固体表面上に高分子鎖を高密度に生やしたブラシ状 コポリマーの表面偏析は X 線光電子分光法(XPS)、和周 の構造体をポリマーブラシと呼ぶ。ポリマーブラシは 波発生分光法(SFG)により確認した。 タンパク質の非吸着特性などを示すことが知られて 3.結果と考察(Results and Discussion) おり、表面修飾の一つとして応用が期待されている。 XPS により、PEG ブロックが表面付近に存在している 当研究室では、疎水性のホモポリマーA からなるエラ ことが示され、SFG により、PBD 末端の sec-butyl が最 ストマー中に A-B 型のジブロックコポリマー(B は親 表面に偏析していることが示された。これらの表面組成 水性)を混合した系において、混合した試料と水が接 分析結果より、コポリマーは PEG ブロックを有するに 触した際に親水的な B が試料—水界面に偏析する現象 も関わらず、PBD 末端の sec-butyl を表面に突き出して を利用して、ブラシを作成するという新しいブラシ作 低表面エネルギー化することで、大気下においても表面 成法の開発に成功した。だが、親水的な性質を持つコ 付近に存在していることが示唆された。 ポリマーが大気下ではバルク中に潜っているため、水 との接触からブラシ形成までに数秒から数十秒程度 4.その他・特記事項(Others) の時間がかかることがこれまでの研究において報告 なし されている。その場合、ブラシが形成されるまでの間 はポリマーブラシの特性を発揮できないという問題 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) がある。そこで本研究ではブラシが瞬時に形成される なし 系の構築を目的として実験を行った。具体的には、大 気下においても水中においてもコポリマーが表面付 6.関連特許(Patent) 近に存在すればブラシ形成は瞬時に起こると考えら なし れるため、コポリマー末端にエラストマーよりも疎水 的な基を導入するなどして表面への偏析を狙った。 2.実験(Experimental) エラストマーとしてポリスチレン−ポリブタジエン− ポ リ ス チ レ ン (PS-PBD-PS)(M_w:~140,000 、 PS:30wt.%)を、両親媒性ブロックコポリマーとして 様々な分子量・組成比を持つポリブタジエン(疎水性)− ポリエチレングリコール(親水性) (PBD-PEG) (M_n: 2k-2k、4.8k-5.8k、11.8k-13.5k、22k-2.8k、22k-9k、 22k-15.5k)を用いた。コポリマーの PBD 末端はエラ ストマーより疎水的な sec-butyl である。これらの試 薬をトルエンとクロロホルムの混合溶媒に溶解させ、 スピンキャスト法により薄膜を作成し、150℃ 減圧下 課題番号 : S-13-KU-0041 利用形態 : 共同研究 利用課題名(日本語) : 単層カーボンナノチューブの電気化学的酸化過程の2次元イメージング Program Title (English) : 2D-Imaging for Electrochemical Oxidative Corrosion of Single-Walled Carbon Nanotubes 利用者名(日本語) : 冨永昌人 Username (English) : M. Tominaga 所属名(日本語) : 熊本大学大学院自然科学研究科 Affiliation (English) : Graduate School of Science and Technology、Kumamoto University 1.概要(Summary ) カーボンナノチューブは、優れた導電性や大きな比表 面の酸化反応が進行し β-カロテンの内包が抑制されたもの と考えられた。以上のことから、定電位印加後の SWCNTs は、 面積などの特徴から、燃料電池や蓄電池のプラットフォー β-カロテンを用いて Fig. 1 に示す 3 つの酸化状態タイプに判 ム電極としての期待が大きい。カーボンナノチューブの耐 別 で き る こ と が 解 っ た 。 各 pH に お け る 電 位 印 加 後 の 試薬性や機械的強度の検討はなされているが、電気化学 SWCNTs の酸化状態タイプを判別して、電位 vs. pH のダイ 的な耐性、すなわち耐酸化性については、これまで定性 アグラムを作製した (Fig. 2)。SWCNTs の酸化反応は、pH 9 的な検討が多かった。耐酸化性を電気化学的な電位とし を境にした二相性を示した。 て評価することは、蓄電・創電デバイスのプラットフォーム 領域 A (pH 3~9)での、SWCNTs の酸化反応過程は、以下 電極として用いた場合の電極の劣化を評価する上で極め のように考えられた。すなわち、炭素が酸化されてヒドロキシ て重要である。 基を形成する過程、ヒドロキシ基からキノンライク状構造を形 成する過程、エポキシ構造を形成する過程、一酸化炭素の 2.実験(Experimental) CVD 法により金ワイヤー上に単層カーボンナノチューブ 脱離とカルボニル基の形成、の過程である。SWCNTs の開 端は、カルボニル基の形成過程[Cn-2 (C-O-C) → Cn-2 (C=O) (SWCNT)を合成した。SWCNT の電気化学的酸化反応 は、0.1 M の酸溶液と 0.1 M の水酸化ナトリウム溶液を混 合して pH を調製した電解質溶液中で、0〜1.4 V (vs. Ag/AgCl (Sat’d KCl))の定電位を 30 分印加することにより 行った。その後、飽和 β-カロテン (0.02 M)を含むヘキサ ン溶液中で 10 時間加熱還流することで β-カロテンの内包 処理を行い、内包挙動をラマン分光法(掘場 HR-800 な Fig. 1 Schematic illustration らびにナノフォトン株式会社 RAMANtouch)で解析し oxidation states of SWCNTs. for the た。 3.結果と考察(Results and Discussion) NaClO4 溶 液 (pH 7) 中 に お い て 、 0.9 〜 1.1 V (vs. Ag/AgCl (飽和 KCl))で定電位印加した SWCNTs に β-カ ロテン内包処理を施して、ラマンスペクトルを測定したとこ ろ、940 cm-1 付近に β-カロテンの内包に基づくピークが見 られ、SWCNTs は開端されたと判断された。一方、0.8 V 以下の定電位印加では、940 cm-1 付近のピークは観測さ れず開端していないと判断された。1.2 V 以上の電位では、 1350 cm-1 付近の構造欠陥由来のピークが増大し、また βカロテンの内包も観測されなかったことから、SWCNTs 側 Fig. 2 Diagram of oxidation reaction potential as a function of pH in a mixed solution of NaClO4 + NaOH. + CO] の 際 に 起 こ る と 考 え ら れ た 。 ま た 、 こ の 反 応 が SWCNTs 酸化反応の律速であり、その必要な電位は約 1.0 V であることが考えられた。 4.その他・特記事項(Others) なし。 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) (1) 冨永昌人, 九州大学ナノテクノロジー研究支援拠点 設立記念講演会, 平成 26 年 2 月 7 日. 6.関連特許(Patent) 該当なし。 課題番号 :S-13-KU-0042 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :水素トライボロジーにおける潤滑油ナノ添加剤の効果に関する研究 Program Title (English) :Effect of nano additives in lubricant oil for hydrogen tribology 利用者名(日本語) :Vlad Bogdan Niste 1), 田中宏昌 1) Username (English) :Vlad Bogdan Niste 1), H. Tanaka1) 所属名(日本語) :1) 九州大学大学院工学研究院 Affiliation (English) :1) Facluty of engineering, Kyushu University 1.概要(Summary ) 4.その他・特記事項(Others) 潤滑油中にカーボン系,その他のナノ粒子を分散させて,潤 本研究は,日本学術振興会外国人特別研究助成により実 滑特性へ与える効果を見る研究が盛んに行われている.本 施されたことを付記する. 研究では,主に WS 2 系のナノ粒子の潤滑特性を調査する. 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) なし 2.実験(Experimental) 油中に界面活性剤を用いて分散させた WS 2 系のナノ粒子 6.関連特許(Patent) の分散状態を確認するため,ナノテク PF 共通利用装置であ なし るゼータサイザーを用いて,粒径分布を測定した. 3.結果と考察(Results and Discussion) 図 1 に,ゼータサイザーによる油中に分散したナノ粒 子の粒径分布を示す.ここで明らかなように,よく調 整された粒子は 100~数百 nm 程度の粒径で分散して いるが,一部数ミクロン程度の粒径のものが混在して いる.これらをフィルタリングするなどして粒子径の そろったナノ粒子添加油が作製可能であることが確 認された. 30 25 Intensity / au 20 1 15 2 3 10 5 0 10 100 1000 Size / nm 図1 10000 課題番号 :S-13-KU-0044 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :新規材料を用いた有機 EL の高性能化 Program Title (English) :enhancement of the performance of organic EL devices using new material 利用者名(日本語) :吉崎 誠 Username (English) :M. Yoshizaki 所属名(日本語) :(財)福岡県産業・科学技術振興財団 Affiliation (English) :Fukuoka Industry, Science & Technology Foundation 1.概要(Summary ) のところ、シミュレーションでは光学的な設計のみを考 新規有機材料を用いた有機 EL の実現を目指し、膜 えており、実際の材料のキャリア移動度などの特性値を 厚や材料の組み合わせなどの様々な条件下で有機 EL うまく導入できていないため、TPBi の系では、シミュ を作製・評価を行い、新規材料の実用化橋渡し研究を レーションの結果と 10nm ほど異なったと考えている。 行った。 今後は、シミュレーションと実デバイスの設計と特性が 2.実験(Experimental) 一致するよう、材料の物性を取り込んだシミュレーショ 既設の有機 EL デバイスシミュレーターを用いて、 有機 EL の光取り出しに有効な膜厚を算出した。その ンを行い、高性能な有機 EL の設計へ応用できるよう検 討を進める。 結果得られたデバイス構造を実現するため、真空成膜 装置を用いて、有機 EL を作製し、評価を行った。シ ミュレーションの結果を反映した高性能有機 EL を実 現するためには、数十ナノメートルオーダーの有機薄 膜の制御が重要な要素で有り、本プログラムで申請し た表面形状測定装置を用いて厳密に膜厚を計測し、真 空成膜装置にフィードバックした。 3.結果と考察(Results and Discussion) 図 1.有機 EL の膜厚シミュレーションの結果 膜厚(以下、電子輸送層) 、y 軸は発光層と陽極までの 膜厚(以下、ホール輸送層)に相当する。この結果、 ホール輸送層を 35nm に固定した場合、電子輸送層は 55nm が最適であることがわかった。そこで、電子輸 送層(TPBi)を 45、55、65nm と変化させた有機 EL を作製し評価したところ、図 2 に示したように、電子 輸送層が 65nm の時、最大外部量子効率 20%を得るこ Current density (mA/cm2) 膜厚の関係を図1に示した。x 軸は発光層と陰極間の 103 102 101 100 10-1 10-2 10-3 10-4 10-5 10-6 0.1 TPBi 45nm 1.TPBi 45nm TPBi 55nm TPBi 65nm 2.TPBi 55nm -3.TPBi 65nm ----- 1 10 Voltage (V) External quantum efficiency (%) シミュレーションにより算出した有機 EL の効率と 25 20 15 10 5 0 10-1 TPBi 45nm TPBi 55nm TPBi 65nm ------ 100 101 Current density (mA/cm2) 図 2.電子輸送層に機知材料(TPBi)を用いたリン光有 機 EL の特性の膜厚依存性 とができた。外部量子効率は、理論的に 20%が限界で あると考えられており、有機 EL での最大効率を実現 4.その他・特記事項(Others) できたと考えている。そこで、本成果を活用し、高性 特にありません。 能な有機 EL を実現できることが明らかとなったこと 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) から、最新の有機 EL 材料へ応用した。最新の材料お 特にありません よびデバイス構造は、知財の関係からデーターを公開 6.関連特許(Patent) できないものの、理論効率に達する有機 EL を実現で 特にありません き、最新材料の実用化橋渡し研究に応用できた。現在 102 課題番号 :S-13-KU-0045 利用形態 :機器利用 利用課題名(日本語) :有機 EL の非破壊劣化解析 Program Title (English) :Non-destroying degradation analysis of organic EL 利用者名(日本語) :筒井 祐子 、 八尋 正幸 Username (English) :Y. Tsutsui, M. Yahiro 所属名(日本語) :公益財団法人 九州先端科学技術研究所 Affiliation (English) :Institute of Systems, Information Technologies and Nanotechnologies 1.概要(Summary ) 有機 EL の劣化解析を非破壊で行うために、熱刺激 ながら TSC を計測した。このような計測を繰り返し得 た TSC スペクトルを図 2 に示した。このパーシャル TSC 電流計測(TSC)による検討を進めている。TSC のシ 法により、キャリアトラップ深さを求めた。その結果、 グナルは、有機薄膜の膜厚に非常に敏感であるため、 240K 付近のピークは、0.38eV 程度の活性化エネルギー 精密に膜厚制御した有機 EL を用いて、劣化前後での (脱離エネルギー)を有し、駆動により減少することが TSC スペクトルの変化を追跡し、非破壊での劣化解析 明らかになった。また、120K 付近のピークには、0.13eV を行った。本 TSC 測定においては、ナノメートルオ と 0.20eV の二つのキャリアトラップが存在することが ーダーの膜厚を正確に把握する必要があるため、触針 わかった。今後、これらの TSC ピークの挙動と有機 EL 式膜厚計として高感度計測が可能な、表面形状測定装 の劣化の相関関係の検討を行う。 置を用いて膜厚を決定した。 真空成膜装置を用いて、有機 EL を構成する材料を ガラス基板に成膜し、表面形状測定装置を用いて膜厚 を決定した。測定した実際の膜厚を、水晶振動子式膜 厚計の Tooling factor にフィードバックし、所望の膜 厚が真空蒸着装置に付属した水晶振動子式膜厚計で Current density[pA/cm 2] 2.実験(Experimental) 200 150 100 劣化前 50 劣化後 直接膜厚をモニターできるようにした。 0 100 150 膜厚モニターを調整した真空蒸着装置を用いて、有 機半導体薄膜を 200 nm 成膜しデバイスを作製した。 連続電圧印加後(劣化後)とし、熱刺激電流(TSC) 250 プの生成/消滅を追跡し、電圧印加に伴うキャリアトラ ップの変化について検討を行った。 3.結果と考察(Results and Discussion) Current density [pA/cm2] 300 比較することによって、劣化前後でのキャリアトラッ 300 250 図 1.リン光有機 EL の劣化前後での TSC スペクトル 作製したデバイスは、電圧印加前(リファレンス)と、 計測を繰り返し行った。その TSC スペクトル形状を 200 Temp[K] 200 150 100 発光層にイリジウム錯体を用いた有機 EL を作製し、 50 0 TSC 計測を行った。図 1 に劣化前後での TSC スペク 240K 105K 220K 115K 200K 125K135K 145K160K180K 100 150 200 Temp [K] 300K 260K 275K 250 300 トルを示した。リン光有機 EL では、劣化左折ことに 図 2.パーシャル TSC 法によるキャリアトラップ深さの より、270K 付近のピークが減少し、120K 付近のピ 測定 ークには変化が無いことがわかった。そこで、TSC 測 定を、80K から 105K まで加熱しながら計測した後、 4.その他・特記事項(Others) 再び 80K まで冷却し、115K(ΔT=15K)まで加熱し なし 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) なし 6.関連特許(Patent) なし