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フィリピンにおける森林保全の仕組と 地域住民の関与について
環境省主催:フォレストパートナーシップセミナー2016 フィリピンにおける森林保全の仕組と 地域住民の関与について 日時:2016.2.4(木) 場所:日比谷図書文化館 (株)テクノ中部 松葉清貴 所属会社と環境調査業務 所属会社の概要 社名:株式会社テクノ中部 本社:愛知県名古屋市 社員数:約800名 うち 環境事業本部 約140名 森林生態調査 業務:各種環境調査・測定分析 業務エリア:中部地方を中心に全国 CSR活動 魚類調査 本社・屋上ビオトープ 本社・屋上ビオトープによる環境教育 愛知県が主導する環境教育ネットワー クと連携して、本社屋上のビオトープによ り親子連れなどへの環境学習を実施 (平成11年環境庁長官表彰受賞) 本日の報告の要点 1 参加の目的 2 森林資源と日本及び世界の関わり 3 森林(植樹)を考える上での基礎情報 気候(気温・降雨)、土壌、生物多様性などを例として 4 森林(植樹)に関する法令・各種計画、国・地方政府の 行政機構、NGO・住民組織 5 住民組織による森林管理の取組と植樹体験 6 まとめ 研修参加の目的 * 森林の現状を山に分け入って見てみたい * NGOと地元住民の連携による森林保全活動の実態観 察と植林体験をしてみたい *森林に関わっている人々の暮らし、文化などに触れてみ たい *政治・経済・歴史・文化などの理解促進に役立てたい * 企業が海外でCSRとして植林などを行う際の幅広い基 礎情報を収集し、今後の活動の参考としたい 森林資源と日本の関わり 図1 木材の供給量の推移 (1955年~2014年) *1950年代の我が国の 木材自給率は90%前後 *1960年代以降、急激 に安価な外国産材に依存 *輸出国は次第に原木で の輸出を禁止 資料:林野庁 1955年 *2014年の木材自給率 は31% 森林の地球温暖化対策における重要性 図2 人為起源の炭素収支の模式図 (2000年代) * 森林は、CO2の重要な吸 収源 * 森林の管理が悪いと、逆 に大きなCO2の排出源に 資料:日本国気象庁HP *COP21パリ合意(5条) は森林等吸収源について、 各国に温室効果ガスの吸 収源及び貯蔵庫の保全等 を要請 フィリピンの概要(1) 図3 フィリピン位置図 独立:1946年 図4 フィリピン全国図 面積:日本の約8割 約7,100の島 生物多様性が高く、 固有種が多い 人口:約1億人 平均年齢23歳 国の活力の源、 資料 帝国書院 新詳高等地図 一方で、人口圧力 災害:台風、火山活動など自然災害が多い 社会:公用語はフィリピノ語・英語、キリスト教国 日本とは500年以上の交流の歴史 資料 地球の歩き方 フィリピンの概要(2) 図5 気候区分図 沿道に続く水田 <参考>農産物作付図 資料 地球の歩き方 * 大きく4つの気候に区分できる 資料 石井・綾部編 弘文堂 「もっと知りたいフィリピン」 フィリピンの概要(3) 図6 マニラの降水量・パターン 図7 フィリピンの土壌 植栽地への途上で見かけ たラテライト土壌 *マニラでは、明確な雨季と 乾季あり *気候に対応した多様な生物 * 土壌成分が雨で洗 い流され、残った鉄や アルミ成分に富む 資料 国立科学博物館 フィリピンの森林と生物多様性 生物多様性の豊かさと危機 森林の推移と現状 <森林の対国土の面積比率> <高い生物多様性> 森林に生息する植物 13,500種 (世界の5%) 1980年代・・・・・・・・・・・・約20% 陸生ほ乳類 185種 2010年・・・・・・・・・・・・・・・・26% (うち62%は固有種) *1986年から木材輸入国に! 鳥類 558種 *1989年原木の輸出禁止 (うち31%は固有種) など 資料:CBD Country profile 1998 1930年代・・・・・・・・・・・・約50% <森林の機能別面積の割合> 生産 76 土壌及び水資源保護 8 生物多様性 16 全森林 100 % 資料:FRA Country Report 2010 一方で < CI (Conservation International)> フィリピンを世界10重大危機森林 ホットスポットのワースト4位に位置付け 研修サイト概要と関係機関の構成 図8 研修サイト概略図 森林管理に関係している各種組織 <行政組織> 国 : 環境天然資源省 (DENR ) 州 ( 81) : パンガシナン州 市 (118) ・ 町 (Municipality 1,510 ) : マンガタレム市 村 (バランガイ(Barangay) 41,995 ) : カタラタラーン村 (マラボーボ村・・・以下、略) <住民組織及びNGO> 資料 研修レジメ 住民組織 :PO (People Organization) NGO:ハリボン協会 森林管理に関する法令及び各種計画(1) 憲法 森林及び森林資源は国が所有、天然資源は国の関与なくば取引不可 改正森林法 土地の分類、森林の利用・管理の許認可などに関するを規定 地方政府法 地方政府に環境保全に関する権限を付与 先住民族権利法 森のほとんどは先祖から受け継がれた土地にあたり、慣習的に利用して きた土地の利用権を認めるもの NIPAS National Integrated Protected Areas NIPAS法 System 国家総合保護区域に関する法律 生態系の維持、遺伝資源の多様性の保護、資源の持続的利用のための 保護地域制度 森林管理に関する法令及び各種計画(2) コミュニティ森林管理戦略 CBFM Community-Based Forest Management 国有林地の管理は、1970年代前後は主に伐採権を認可された木材会社 1990年代以降は管理主体を、植林活動に意欲があり国の認可を受けた地 域の住民組織POにシフト 国土緑化計画 NGP National Greening Program 計画では、貧困削減、食料確保、生物多様性の保全、気候変動に係る緩 和と適応に向けた持続的発展を目指す 計画期間:2011年~2016年 植樹本数:15億本 植樹面積:150万ヘクタール 土地利用区分図と生産ゾーンの様子 生産ゾーン カタラタラーン村 * 皆伐され背丈ほどのカヤが繁茂した 山は林産物も乏しく、村人達が活発に 入り込んでいる様子ではない (保護強化サブゾーン) 保護ゾーン (回復サブゾーン) *植林体験地点 住民組織“ PO ”と森林管理(1) 住民組織 PO (People Organization) POの名称:ナグマカパック * 村人は、通常、小作農で生計維持 POの代表者 * バランガイの長などを呼びかけ人に 60名の賛同者で PO を結成 政府の認定取得に必要な活動計画 等を整備 * 政府の国土緑化計画に参画し植樹を 苗 床 実施 作業従事分についてはやや高めの日 当を受領 住民組織“ PO ”と森林管理(2) * ミミズを使った土づくり * 看板には、4支援団体の「ロゴ」、 「熱帯雨林100万ha回復」などとある 土づくり * 活動成果に応じて得た資金でPOが購入した車両(児童の通 学送迎に活用)、カラオケ・水サーバー(貸し出して収益も) POの村人と一緒に植樹体験 POの村人と一緒に植樹体験 まとめ(研修考察・今後の取組方針) 研修の考察 * 皆伐された山は、商業伐採企業はもとより地元住民も入山する機会 が少なくなり、その再生は容易でない * 日本企業の海外でのCSR活動においては、NGOや地元住民等と の連携が必須 * 森林関係法令、森林・生物多様性関係の行政機構、地元自治体の姿 勢などの情報把握も重要 * 活動実施国の森林植生、土壌特性、気候などの特徴を踏まえた適切 な造林技術による取組が重要 * 今回の研修では、森林の現場視察、村人との交流・植林体験、NGO や政府職員との意見交換など、参加目的は十分に達成できた 今後の取組方針 * 今回得られた知見・体験をもとに、海外におけるCSR活動について社 内あるいは県内の関連企業の担当者などと議論を進めていきたい ご静聴ありがとうございました