Comments
Description
Transcript
報告書(PDF80KB)
「参加型開発とは? 講師:中田豊一 氏 基本を学び考えてみよう!」 2003年12月22日(月)、12月23日(火) 場所:沖縄国際センターにらいホール3F 参加者:26 一日目 ワークショップ 時間:17:00∼21:00PM 内容: ① 自己紹介:(人々が知り合うためのきっかけ作り) 講師:中田豊一氏 A 沖縄の地図を書く: ポストイットを配り、沖縄出身、県外出身者に分ける。ポスト イットには名前、出身地、現住所を書く。 沖縄人−地図の出身地の個所にポストイットを貼る。 県外人−沖縄の現住所の個所に貼る。 B 自己紹介:北から南へ順番で 1、お国自慢(郷土自慢) 2、活動・関心事(仕事・趣味等) 3、ワークショップに関して期待すること 4、その他何でも 例 、私は名護市出身。名護はビールがおいしくて、きれいな海と山があります、職業は… (話しながらポストイットを現住所のところに移す。) 自己紹介は新情報、新しい考え方、問題提起が生まれるため、楽しくて聞き飽きない。参加型 開発とはそういうことである。 今回の自己紹介はなぜ聞き飽きないか? 1地図を置いたから 2円卓の効果 地図を中心としてポストイットを貼りながら自己紹介したため目をそらしやすく、話す人が プレッシャーを感じない。→講義のはじめにこれをやると良い(アイスブレーキング的効果) ② 「人は皆、豊かな経験をもっている。」 参加型開発は有史以来のものである A ワークショップにとって大切な事 人は単に経験そのものから学べるわけではない。むしろ、経験を○○することによって学ぶ。 ○○に入るものは何か? (参加者の予想:活用、共有、繰り返す、発信、表現、見聞き、話す、再確認) 正解は:経験 ただ単に学びそれを繰り返すだけではだめである。経験を分析するという行為を通して学 ぶのであるというパウロ・フィレイレの言葉を引用。 ↓ しかし、 自分で自分の経験を分析するのは難しいので、他人に見てもらう(分析の助け合い) 。 ワークショップはそれの繰り返しである。 途上国で問題点を先に挙げてもらうと、問題ではなく単に欲しい物を言う場合が多い。そ こで、問題分析の最初に自慢話をしてもらうと、話がスムーズにすすむ。Appreciative Inquiry (良いことを聞くこと)によって、問題点が出やすくなる。 B ワークショップの進め方 参加者の間で、自分たちで話をしてもらい、講師は話さない。自己紹介で参加者の興味を集 めた人間に語ってもらう。さて、今日であった参加者が少し見えてきた中でもっとそれぞれを 知りながら、明日は皆さんの経験と興味でもって進めていきましょう。 一日目ワークショップ終了 12月23日(火) 10:00AM∼ ③ 二つ目のワークショップ ネパール、カマルフィアールのワークショップ 「村の会合。NGO調査団が来た!」ネパールの村における実際の様子をロールプレ イする。 A、ネパールの村の再現: 登場人物は 村長(小作農家から来た召使二人、警察が脇に立っている。) お坊さん 、大地主 、警察 、学校の先生 、役人(2人) 自作農(数名。低いテーブルに座っている。) 小作人(数名。地べたに座る。大地主の土地を耕してい る。ポーターや商人も含む。) ポーター:運び屋、ヒマラヤ登山等の荷物の運び屋と しても有名。 NGO職員(数名) ネ パ ー ル の 村 の 様 子 を ロ ー ル プレイ 村の様子の設定 小作人は下をうつむいたまま。農民は貧しい生活を送っている。都市からNGOが、何か援 助できることがあるか、調査に来た。ここから村人役の人たちは村民になり、話し合いをして いく。 村長はNGO職員に聞かれた事全てを村長に相談している。 (村長はあまり実情を知らない。 どんな質問に関しても村長は坊さんに意見を仰ぐ。) ロールプレイにおける会話 NGO「ナマステ…」 大地主「あなたたちは誰ですか」 NGO「この村の友人から頼まれて、日本から来ました。」 大地主「何を頼まれたんですか?」 NGO「困っていると聞いたので、来たんです。」 村長「お坊さん、あんなこと言ってますよ。」 坊さん「テレビとか何か欲しいですね。」(村長とヒソヒソ話をし、村長が発言する) 村長「何を調査しようとしているんですか?」 NGO「村のことですよ。」 村長「私たちは裕福ですけどね。」(お坊さんに意見を仰いでから発言) NGO「何か助けたいと思って、人口、経済、情報…を知りたいのですが」 役人「1235名、昨日子どもが生まれました。男528名、女は残りの人数…(笑)。経済 情報は…年々悪化し、飢饉があって、ウイルス性の病気があって、人々が亡くなっています。 」 NGO「学校は?識字率は?」 先生「皆貧乏だから学校に行かない。みんなアホ。字を読める奴もいない。もし学校を造って くれたら表彰しますよ。」 NGO「食事はちゃんと食べていますか。」 etc 小作人「一日一回くらい…。」 NGO職員が村人全てに村の事を聞いて回る。 B 村に入る場合誰を頼りに話を進めていくのか そもそも、何の為に、誰の為に援助であったり、開発は行われるのか?当然村でも困っ ている貧困層の小作人である。しかし小作人だけを頼りに話を進めていくのか…等を解 説。 1 何を聞いたらよいか、誰に聞いたらよいか? 始めに村長らに質問する。→小作人はNGO職員を信用しない。 理由)村長との間で話が進められれば、村長の有利なように話が進められ、結局小 作人の生活には何の利益も変化ももたらされないという諦め。 始めに小作人に質問する。→村長らは騒ぎ出す。 理由)ネパールや、途上国においては、村長や、お坊さん、村の権力者を中心とし た生活がまだ続いている。その階層を飛び越え、貧困層の下へ行った場合 その村で何かを行っていくための村全体の協力を得るのは難しい。 このバランスは難しく、どちらにも偏ることなく、しかし小作人にも、村長にも体を向 けながら 挨拶から始まり、どの層とも交流を続けることは必要。 C 村での参加型の様子 例「農業ダムを造りましょう!」(ロールプレイの続き) 1 ダムの計画作りのために村の水源の地図を書く。 小作農は知識が無いので地図がかけない。 ↓ 村の権力者の都合で作られる。 2 もし500万を村長にあげると、3 分の1、2 分の 1 は村長のポケットに入る。 ↓ 150万のうち、50万は大地主、50万は坊さんや取り巻きに配られる。 ↓ ダムの規模は小さくなり、ダムは大地主や自作農の為に造られる。 ↓ 村全体は豊かになるが、小作農は苦しいままである。結果的に貧富の差は広がる。 権力者が補助金をポケットに入れるケースは中南米、南アジア、アフリカに多い。50%を ポケットに折れる人もいる。 3 小作人も参加できるようにするためには何をすればよいか。 ↓ 参加型開発:村の様子を知る。層の低い人が参加出来る。 ↓ 枝で地面に川を書いてもらう。レンガを学校に見立てて置いてもらう。紙に図面を書いて もらうのではなく、小作農が分かるのもで地図を作る。つまり、話し合いの方法を小作人が分 かるレベルで行う。誉め言葉や質問(appreciative inquiry)を使いながら徐々に問題点を掘 り下げていく。 D Q 参加者からの質問 村を回るのは難しいことだ。村を回るたびにたらいまわしにされ、貢物を準備しなければ ならず、最終的に村人に行き着くまで時間がかかった。 A 小さなNGOが金を渡すようなことがあれば失敗する。村長は直接お金をもらうのではな く、建設会社から受け取っている。JICA等の機関ではありえない。また、学の無い人だけ では進められない事業もある。 Q 先ほどのゲームでは挨拶無しでは始まらない。アフリカでは、挨拶は重要だ。 A 挨拶は大事だが、長引くと貧しい人は置いてきぼりにされたと思うだろう。 Q 通訳を通すと話が難しくなるか? A あまり関係は無い。むしろ通訳を介することにより、質問をしやすい場合もある。具体的 な質問であることが重要だ。くだらない質問はしないことが大事である。 Q 中田先生はどのくらいの機関滞在するのか?信頼関係はどう築くか? A 信頼関係は現地NGOが築く。外国人が信頼関係を築くことは難しい。 質問の仕方 1 何が好きですか? → 好み、気持ち(感情) 2 普段何を食べますか? 3 今朝何を食べましたか? → 考え → 事実 何に困っていますか? → 考えを聞いているが、事実を聞いているのではないので、考え は操作されやすい。 ↓ 具体的な、根掘り葉掘りの質問は相手の心を捉える。相手は興味を抱かれていると感じ、話し ながら詳細を思い出していく。 ↓ 相手が考えを述べた場合には必ず真実を確認する。 Q 式辞の必要性を訴えることはしないのか? A しないが、子どもたちについて質問はしてみる。とにかく考えは押し付けない。 → 社会的関心を持って現地に行く場合、思い込みや様々な考えに凝り固まり、現地の真実が 見えない場合が多い。 → できるだけ冷静に真実だけを調査できるような観察眼、質問を持つこと。 ④ 「村」ゲームの続き。 1 こうありたいけれど、できない私。 2 こうなりたいけれど、なれない私。 3 これをやりたいのに、出来ない私。 紙に書いてもらい、同じテーブルに座っている人同士見せ合う。 小作人なら何を書くだろう? ⇒ 国際協力が見えてくる。 インドのような階級社会においては、やる気はなかなか生まれない。 → 励まし、サポートが必要。 例えば… 鹿を20メートル四方のガラス箱に閉じ込めると、出口を求めて4方向の壁に激突した後、 壁にそってグルグルと回り始める→鹿が疲れて眠っているところで壁を一ヶ所取り払う。 →鹿の頭の中には見 え な い 壁 が出来上がっており、もう逃げださない。 →これは人間にも当てはまる。 ↓ ※見えない壁を乗り越えるにはどうすればよいか? →鹿をもう 1 頭入れる。(自分と同類が模範を示せば、見えない壁を越えられる。) →この同じ壁を越える人間をたった 1 人でも見つけることが大事。 ↓ ※他人の見えない壁は見えやすく、自分の壁は見え辛い。 援助がうまくいかないのは団体の責任。 ←この考え方は開発をする側にとっては 暮らしがよくならないのは本人の責任。 非常に大切である。自己の責任、相手の 責任関係を持つべきである。 援助する際に、援助が上手くいかない場合は現地スタッフの働きが悪い、モチベーション が無い等の不満が出ることがよくある。問題は現地スタッフではなく、援助する側にある のではないかと、こちら側の援助姿勢、能力を見つめる行為を行う必要がある。相手に対 するマイナスの先入観や固定観念、予備知識等が活動上の見えない壁になってしまう事が 多い。 Q 中田さんはなぜ援助活動をしなければならないか、を考えたことがありますか?考えてか ら現地に行くのですか? A あまりない。大方の場合(NGO 側も、政府機関も)、援助が必要かどうかは援助する側 で勝手に議論されるか、もしくはされずに現地に行く場合がおおい。そこには本音とタテ マエがあり、やらなくても良いのではないかという意見も時々ある。 長田さん(参加者)の話: 昨日の自己紹介について、泡瀬問題について。 先日の新聞に、 「潮干狩りにも行ったことのない県外の人が泡瀬問題を語るなんておかしい」 という内容の記事が載った。県外の人間が問題をかきむしるだけ、かきむしった後、結局沖縄 から出て行くなら、沖縄の人のためになっていない。 ↓ 援助する側、される側の構図の、典型のひとつが沖縄にも存在するのではないか。 ④ ウチナーンチュとヤマトンチュのグループに分かれ、意見交換をする。 (ウチナーンチュは二グループに分かれ、ヤマトンチュについて話しあう。ヤマトンチュ も同様に二グループに分かれ、ウチナーンチュについて話し合う。) ウチナーンチュ: グループ1:ウチナーンチュの良いところ(ナイチャ‐グループ) 沖縄の人 グループ2:ウチナーンチュの悪いところ(ナイチャ‐グループ) ナイチャ‐: グループ3:ヤマトンチュの良いところ(ウチナーンチュグループ) グループ4:ヤマトンチュの悪いところ(ウチナーンチュグループ) 内地から来た人 ・ ウチナーンチュの良いところ ・ ウ チ ナ ー ン チ ュ の 悪 い ところ 1、深く追求しない 1、地域で人をくくってしまう 2、のんびりしている 2、物事の責任の所在をつきとめず、 3、おだやか 曖昧にして 4、郷土愛が強い しまう 5、クラクションを鳴らさない 3、外と比較せず、沖縄が一番いいと 6、アジアの国で生きていける 思っている 7、家族愛、人付き合い、血縁、人の 4、ゴミのポイ捨てが多い つながりが重要 5、歩けるところで車を使う 6、省エネの概念がない 7、ウチナーンチュとヤマトンチュの ・ 区別が強い 8、男尊女卑 9、考えずに結婚をする ・ ヤマトンチュの良いところ ・ ヤマトンチュの悪いところ 1、うてば響く 1、ウチナーンチュに優越感がある 2、努力家 2、沖縄を誉めすぎ 3、思想がハッキリしている 3、沖縄の悪口ばかり言う 4、きちんとしている、おべっかがう 4、冷たい まい 5、海の見えるところに家を造りたが 5、筋が通っている、時間を守る、計 る 画性がある 6、東京しか見ていない 6、沖縄好き、食事が健康的、礼儀正 7、沖縄を食い物にしている(働き口 として) ※ 国民国家の形成に成功した国は生き残る反面、画一化が進む。国民国家の形成に失敗した 国では、各民族が固有の生活を営む代わりに、弱い国家である。 同じグループで グループ1→さらにこうあって欲しい グループ2→自分たちはこうありたい (内地の人グループ) (内地の人グループ) グループ3→さらにこうあって欲しい グループ4→自分たちはこうありたい (沖縄の人グループ) (沖縄の人グループ) グループ1さらにこうあって欲しい グループ2 自分達はこうありたい 1、なんくるないさ 1、先入観を持たず、あるがままを受け入れたい 2、技術を磨いて欲しい 2、もう少し、沖縄の人を知ろうとする努力をし 3、 ユイマールのバージョンアップ たい 4、文化・方言を残して欲しい 3、言葉を覚えたい 5、外に出て、新たな国を持ってき 4、時間の流れをゆっくりとしたい て欲しい 5、もっと島酒を愛したい 6、飲み会を断らない 7、沖縄の歴史を知りたい ウ チ ナ ‐ンチュ組み 8、ナイチャーで群れない 9、もっとたくさんの沖縄の方々と出会いたい 10、ウタキ巡りをしたい。(沖縄の神聖な世界 を見たい) 11、近所の子供をかわいがりたい。おじー、お ばーに声を掛けたい 12、沖縄の歌を知りたい 13、三線を習いたい 14、1日1回「なんくるないさー」を唱える ナ イ チ ャー組み グループ4 1、内地に行ってないちゃーと友達に なれ グループ3 1、内地の人々の持っている知識、文 化を沖縄人と共有させて欲しい 2、リーダーシップを取って欲しい 3、沖縄のアイデンティティーに寛容 であって欲しい 4、沖縄の地域発展に貢献して欲しい 2、ナイチャーと呼ばない 3、県外からの修学旅行の生徒をホー ムステイさせる→文化の共有 4、沖縄の文化をもっと知る 5、ナイチャーの良いところを学べ 6、沖縄の男性は女性に優しくしよう 7、外の世界を知る努力をしよう。理 論的な考え方を身に付ける。日本 語を勉強する ナイ チャー、ウチ ナ‐ンチュ に分かれプレ ゼン を行う。 中田先生の感想: 先進国と途上国の間で、今回のワークショップのような本音のトークは 少ない。稀である。 沖縄社会はヨコ 、内地社会はタテ ウチナーンチュはむしろ東南アジアを知って、学ぶのが良いかもしれない。 援助は、その現地の社会に深く入りこむ活動である。ただの交流ではなく、援助は社会の良い 点、悪い点、醜い点を見なければならない。その葛藤から学ぶものは多い。 講座参加者の一部の方々