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都市建築計画学講座(PDF1.8MB)
問題1-a(計67点) 下図は日本のある仏堂の写真である。以下の問いに解答用紙1枚以上を用いて答えよ。 図1-1 図1-2 (1) 図1-1、図1-2それぞれの建造物名称と所在する都道府県名を答えよ。 (各3点、計6点) (2) それぞれの仏堂にみる空間拡張の技法について、双方の特徴や差異をふまえながら詳述せよ。 その際、「間面記法」という言葉および概略断面図を必ず用いながら、 かつ、他の事例を適宜参照しながら、具体的かつ詳細に記述せよ。 1 (61点) 問題 1-b(計 66 点) 次の文章は、ある有名な論文の日本語訳から一部を抜粋したものである。この文章を読 んで、解答用紙 1 枚以上を用いて各問に答えよ。 (1) この論文の題名と著者名を答えよ。 (各 3 点、計 6 点) (2) この論文が発表された当時の建築を取り巻く状況を勘案しながら、その後の近現 代の建築に装飾が施されることが少なくなっていった過程とその理由について 考察し論述せよ。必要な場合には図示してもよい。 (60 点) ところで実際にものを生産する国民が装飾によってこうむる損失というものは、それよ りはるかに大きいと言わねばならない。装飾というものが、もはや我々の文化の極く当然 の産物ではなくなった今日、つまり後進的であること、あるいは退廃的であることを意味 する今日、装飾職人には、成した仕事に対して相応の報酬が支払われることはなくなって しまった。 また木彫家やろくろ細工の職人達の惨めな職業事情や、刺繍をしたり、レース編みする 女工達に支払われる賃金は、法に抵触するような低賃金であることはよく知られている。 8 時間働いて得る近代の労働者と同じ賃金を装飾家が得るためには、20 時間も働かねばな らない。そして装飾を施すということによって、ものの価格は上がるのが普通なのだが、 にも拘らず、材質は同じで、作るのに三倍以上もの時間を費やしたものが、そんな装飾の ついていないものの半額で売られているような場合が時たまみられるのである。装飾がな いということは、それだけ労働時間の短縮と賃金の上昇とに直接つながるのだ。中国の木 彫職人は 16 時間も働くが、アメリカの労働者は 8 時間しか働かない。また装飾が施され ていないプレーンな仕上げのシガレット・ケースを買うにも装飾がついたものと同じお金 を支払ったとしたら、作りあげるに要した時間の差に因る差益は、職人がもろに被ること となるのだ。ところで、そうした装飾が全然なくなったとしたら――多分、数千年して、 やっとそうした状況になるのだろうが――8 時間ではなくて、たった 4 時間働きさえすれ ばよくなるだろう。というのは、今日、労働時間の半分は、装飾に費やされているからで ある。 このように、装飾は労働力の無駄使いであり、したがって健康も損なう。過去もまさに そのとおりであった。だが今日では資材の無駄使いということを意味するようにもなって いる。そしてこの両者を合わせれば、まさに資本の無駄使いということを意味する。 それにしても、装飾はもはや我々の文化と有機的なつながりがないのだから、それは、 もはや我々の文化を表現するものでもない。今日、生み出される装飾は我々とは関連がな いし、人間的なつながりはまったくない。まして世界の秩序とはなんの関連もない。また 装飾自体、それが発展していく能力もない。例えばオットー・エクマン註 1 の装飾はその後、 どうなったというのだろうか? それにヴァン・デ・ヴェルデの装飾もその後、どうなっ たというのだろうか? 過去においては、芸術家達は常に健康で活力に溢れ、人類の先頭 に立ってこれをリードしていたものだ。だが近代の装飾家達はどうだろう? 時代の落伍 者か、病的人間なのである。彼等がつくったものは、3 年も経たぬうちに、自身によって 否定されてしまう運命にあるのだ。文化的に洗練された人間にとっては、そうしたものは 初めから我慢がならない対象なのだが、それなのにもう一方では、それを所有することや 見ることに我慢がならないと意識するのに数年も要する人達もいるのだ。あのオットー・ 2 エクマンの作品は、今日、いったい何処にいってしまったのだろうか? それにあのオル ブリッヒの作品も、10 年後には、いったいどのような運命が待ちかまえているのだろう か? 近代において生み出された装飾は親もいなければ、子もいない。過去もなければ、 未来もないのである。そうした装飾は、我々の時代の偉大さというものが、単純な明快さ にあるのではなく、なにか秘密めいた不明快さにこそあると考え違いをしているような非 文化人達によって、当初は喝采をもって迎え入れられる。だが、それも数年も経つと、熱 が冷めてポイと見捨てられてしまうのだ。 今日、人類は、以前のどの時代にも増して健康になったといってよい。病気なのは、ほ んのひとにぎりの限られた人達でしかない。だが、これらのほんのひとにぎりの人達が、 新たな装飾をつくりだすことなど到底不可能な健康な職人達を支配しているのである。自 分でデザインした装飾を、いろいろな材料を用いて作るように職人達に強要しているのだ。 ところで、時代、時代によってつぎつぎと装飾を変えるということは、そうしたものが 有する価値の下落を早期に招くことともなる。職人達がそれに費やした時間や使われた材 料などは、まったく無駄使いとなるわけだ。私はかつて次のようなことを言ったことがあ る。ものの形というものは、それがものとして寿命がある限り長持ちする。すなわちそれ だけの間、人々に拒否されずに受け容れられるのである、と。ここで、このことをもう少 し分かりやすく説明してみようと思う。日常、着る上着は、高価な毛皮のコートなどより も、頻繁にその形を変える。婦人が舞踏会に着ていく衣裳などは、たった一夜のためのも のでも、その形は仕事机などより頻繁に変わるものである。だが舞踏会用衣裳などよりも、 仕事机の方が、その古い形にもう我慢できなくなったとして、頻繁にその形を変えなくて はならないとしたら、いったいどういうことになるのだろう。仕事机に使われたお金はま ったく無駄使いに終わってしまう。 無論、こんなことは装飾家達は先刻承知だ。そこでオーストリアの装飾家達は、そうし た欠点がもつもうひとつの側面をあげつらうことで、自分が有利な立場に立とうとする。 装飾家達はこう主張する。 「ある消費者が家具を買ったとする。そして 10 年後には、もう その家具がイヤになってしまうとする。となると、10 年毎に家具を買い替えなければいけ ないわけで、こういう人の存在自体、古いものの寿命がつきてもう使えなくなった状態に なって、はじめて新しいものに買い替えるような人の存在より、ずっと好ましいことだ。 ものを作る産業界がそれを望んでいるのである。人がつぎつぎとものを買い替えることに よって、多勢の人達が仕事にありつくことになるのだ」。こうした言い分に、オーストリア の国民経済の秘密があるようにも思える。というのは、火災が起こる度に、 「やれやれ、有 り難い。これでまた人々に仕事ができた」といった言葉を幾度となく耳にしたことか。そ れなら私にもいい考えがある。都市に火を付けて燃やしてしまう、そして国中に火を付け て燃やしてしまえばいい。そうすれば沢山、金儲けができ、楽な生活ができて、国中、湧 きかえるだろう。そして買って 2、3 年もすればオークション会場にもっていっても労賃 と材料費の一割の金にもならないのだから、暖房用の焚き木にでもした方がいいような家 具を作ればいい。金具類にしても、4 年もしたらもとの金属に熔して地金にしてしまうよ うな金具を作ればいい。そうすれば我々はますます金持ちになるだろう。 註 1 Otto Eckmann, 1865-1902. ドイツの画家、グラフィック・アーティスト。 3 問題 2-a(計 67 点) (1) 以下の問いに答えなさい。 ① 図 2-1 に示されている住区内道路計画の特徴を 3 点述べなさい。 (15 点) ② このような計画が生まれてきた背景について、以下の語を用いつつ住区 内の街路計画の考え方の歴史的変遷についても触れながら、述べなさい。 (22 点) <自動車、ラドバーン、分離、通過> 図 2-1 (出典:「人と車[おりあい]の道づくり」) (2) 都市計画分野における今後の都道府県の有すべき機能について、市町村 との役割分担について触れつつ論じなさい。なお、その際には近年の市町村 合併の影響についても考慮すること。 (30 点) 4 問題2-b(計 66 点) 以下の問いに答えなさい。 (1) 次項の図 2-2 は、国土交通省が東日本大震災による津波被災市街地の復興と関連し て発表した「復興まちづくりのための事業制度一覧(イメージ図)である。同図の a から h の空欄にあてはまる最も適切な用語を、イからチの中から選びなさい (40 点) イ.地すべり ロ.備蓄倉庫 ハ.津波防護施設 ニ.港湾施設 ホ.堤防 ヘ.宅地の嵩上げ ト.都市公園 チ.津波避難タワー (2) 図 2-2 の赤字で示した I から IV の 4 つの地区の特徴と各地区相互の関係性を、地域 の津波被害軽減策の視点から 400 字程度で述べなさい。その際に図中の用語をなる べく用いること。 (26 点) 5 6 図 2-2 問題 3-a(計 52 点) 建築計画のはじまり 図3-1、図3-2は日本の著名な建築研究者による図です。これを見て以下の問いに答えなさい。 (1)その人の名前を答えなさい。 (5点) (2)図3-1は、その研究者が書き記した図ですが、これはどのような意図をもって書かれたものでしょうか、研究者の 意図をくみ取りながら、この図の意義について説明しなさい。 (15点) (3)図3-2 は、図3-1などを積み重ねながら、この研究者が解明したある論を図化したものです。 ①その論のことを何と言いますか。漢字四文字で答えてください。 (10点) ②その論の骨子を図に合わせながらわかりやすく論述しなさい。論述においては、この論が日 本における住宅整備に与えた影響についても触れなさい。 図3-1 (22 点) 図3-2 7 問題 3-b(計 82 点) 共に住まう場を計画する 下図は特徴を持った集合住宅の平面図をほぼ同縮尺で集めたものです。これを見て、以下の問いに答えなさい。 (1)図3-3は現在の日本でもっとも一般的に普及しているプランタイプのひとつです。 ①平面上の特徴を説明しなさい。 (8点) ②このタイプが普及した理由について思う所を述べなさい。 (12点) (2)図3-4は世界的に有名な建築家による集合住宅の住戸プランです。 ①その建築家の名前を上げなさい。 (8点) ②平面構成上、工夫している点を三点以上あげながら、計画的な意義について論述しなさい。 (18点) (3)図3-5は日本の建築家による集合住宅の住戸です。 ①その建築家の名前を上げなさい。 (4点) ②この建築の計画上の特徴をダイヤグラムで図示しながら、設計者の意図について述べなさい。(12点) (4)現代の日本において集合住宅を設計する際に重要なポイントを論述しなさい。 その際に以下の図 3-3、図 3-4、図 3-5 を必ず文中で参照すること。 図 3-5 図 3-3 図 3-4 8 (20 点)