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page333-532 - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
(3)論文発表リスト a. 査読のある原著論文 なし b. 査読のない原著論文 1) 「燃料電池自動車用水素供給設備および水素ガスディスペンサーとその安全対策」、小原隆夫(原案提 供)、セイフティエンジニアリング,No125,p1-p6, 2003、平成 15 年 8 月 c. 総説、解説、著書 なし d. 国際学会プロシィーディングス なし e. その他(報告書、社内報等) なし (4)口頭発表リスト なし (5)特許出願リスト(名称、出願番号、発明者名) 1) 柘植 和夫「継手構造及び継手構造を備えたガス充填カップリング支持アーム」、特願2002-244170 出 願日2002年8月23日 2) 柘植 和夫「ガス充填カップリング」、特願2002-247515 出願日2002年8月27日 3) 柘植 和夫「ガス充填カップリング支持アーム及びガス充填カップリング支持アームを有するガス供給 装置」、特願2002-249686 出願日2002年8月28日 4) 柘植 和夫「ガス充填カップリング支持アーム」、特願2002-260384 出願日2002年9月5日 5) 柘植 和夫「ガス充填カップリング接続構造及びガス充填カップリング」、特願2002-381122 出願日 2002年12月27日 6) 柘植 和夫「ガス充填カップリング」、特願2002-381123 出願日2002年12月27日 7) 加藤 卓「緊急離脱カプラ」、特願2003-065399 出願日2003年3月11日 8) 杉本 小弥太「振動式測定装置」 、特願2003-082998 出願日2003年3月25日 、特願2003-155011 出願日2003年5月30日 9) 柘植 和夫「ガス充填装置及び離脱カプラ」 10) 柘植 和夫「ガス充填カップリング」、特願2003-299890 出願日2003年8月25日 11) 柘植 和夫「ガス充填カップリング」、特願2003-299891 出願日2003年8月25日 12) 加藤 卓「緊急離脱カプラ」、特願2003-314519 出願日2003年9月5日 、特願2003-337898 出願日2003年9月29日 13) 小笠原 恒治「燃料供給口装置及び燃料供給システム」 、特願2003-337899 出願日2003年9月29日 14) 柘植 和夫「ガス充填カップリング」 15) 徳永 洋「振動式測定装置」 、特願2003-339293 出願日2003年9月30日 16) 杉本 小弥太「振動式測定装置」 、特願2003-339294 出願日2003年9月30日 17) 杉本 小弥太「振動式測定装置」 、特願2003-339295 出願日2003年9月30日 18) 杉本 小弥太「振動式測定装置」 、特願2003-339296 出願日2003年9月30日 19) 加藤 卓「緊急離脱カプラ」 、特願2003-340922 出願日2003年9月30日 20) 柘植 和夫「ガス充填ノズル」 、特願2003-031881 出願日2003年10月29日 228 21) 柘植 和夫「ガス充填ノズル」 、特願2003-031882 出願日2003年10月29日 22) 岩田 照史「振動式測定装置」 、特願2003-399849 出願日2003年11月28日 (6)「ノウハウ(知的所有権等)」リスト なし (7)その他報道等の概要 a.新聞発表 なし b.カタログ(製品)発表 なし 229 8−1. 事業全体の成果(タスク8) (1) 1000 cm2x10 セル積層、2500cm2x10 セル積層の電解層性能評価では電流密度1A/cm2以上、 エネルギー変換効率(電解効率)90%以上を達成し目標を達成した。 (2) 水素供給ステーション用のセルスタック(電極面積 1000 cm2x25 セルスタック 2 スタック)を開発・納入しシステムとして定格水素量 20Nm3/h時(電流密度 1A/ cm2)にエネルギー効率 90%以上および最大 30Nm3/h(電流密度 1.5A/ cm2) を確認した。 (3) 小型セルによる要素技術開発については耐久性の検討を行った。 (4) 中型水素製造プラントの概念設計については現状のアルカリ水電解プラントに比べて電解層 がコンパクトであること、エネルギー効率が高いという優位性が見出された。実用化に必要 な開発要素などの提言を行った。 耐高温電解質膜の開発では芳香環にスルホン酸を修飾した化合物で、初期値ながら150℃に耐えう るプロトン伝導膜の製造に成功した。 8−2.研究開発項目毎の成果(三菱重工業) 当社では、従来のアルカリ水電解法による水素製造法に代わり、高効率・低コスト化が期待でき る固体高分子型水電解法の開発に取り組んできた。当社の水電解技術の特徴としては、無電解メッ キ法によるセル製法、本製法による大型セル製造の容易性、セルの高効率・高耐久性があげられる。 これまでにセル電極面積として 2,500cm2、1,000cm2 の大型セル製造実績、電解性能として 90%(電流 密度 1A/cm2)の電解効率を持つ高性能セルの製造、納入実績を持つ。また、H13 年度には世界で始め て水素供給ステーション向け水素製造装置として、30Nm3/h 級の固体高分子水電解装置をエンジニ アリング振興協会に納入(設置箇所は(株)四国総合研究所)した実績を持つ。 8-2.1 無電解メッキ法 電解質膜 スラリ原料 膜洗浄 スラリ調合 スラリ製膜 ・・・・スリーン印刷条件の適正化 テフロン添加量 :0.20mg/cm2 膜接合 スクリーン形状 :T70S-50μm 酸処理 ナフィオン液塗布量:0.2∼1.0mg/cm2 無電解メッキ 膜接合 撹拌子 ・・・・・ヒータ直接加熱方式 ・・・・・接合条件・方法の適正化 ナフィオン膜 メッキ液 メッキセル 洗浄 ヒータ 膜電極接合体 メッキセル 230 格子 8-2.2 耐久性試験結果 水素供給ステーション用セルスタック(電極面積1,000cm2×10セルスタック)の400回DSS(2年間 運用想定)運転試験結果、エネルギー効率(85∼90%)の低下がほとんどないことを確認した。 100% <試験条件> ・電極構成:Ir-Pt/N-115/Pt-Ir 2 ・セル面積:1,000cm (10 セル) ・運転パターン:電解 2Hr/停止 30min ・作動条件:温度 80℃/圧力 0.7MPa ・電流密度:1A/cm2 エネルギ効率 [%] 90% Av.87.3% @80℃ 80% 70% 60% 2時 間 電 解 、30分 停 止 2 ~ 3回 /日 の 起 動 発 停 10セ ル 試 験 50% 0 50 100 150 200 250 300 350 400 サ イクル 8-2.3 水素供給ステーション用セルスタック、システムの開発 水素供給ステーション向けに高性能セル開発に取り組み、運転圧 0.7MPa、運転温度 80∼100℃で エネルギー効率(電解効率)90%(1A/cm2 時)以上の高性能セルを開発し納入した。 また、水素供給ステーション用水電解装置実機においても、1,000cm2 セル×25 セルスタック×2ス タックの開発、製作を行い、システムとして定格水素量 20Nm3/h 時(1A/cm2)にエネルギー効率 90% 以上、及び最大 30Nm3/h(1.5A/cm2)の性能を確認した。 100 エネルギー効率 0.4MPa 95 94.3% H12年度( N - 115) 0.7MPa 92.4% 90 0.4MPa H11年度( N - 117) 0.1MPa ( %) 85 0.4MPa 80 60 70 80 90 100 110 120 130 電解温度 ( ℃ ) 1,000cm2単セル電解試験結果(H11∼H12年度の推移) 231 水電解装置現地性能試験結果 計画値 定格時 最大時 水素量 定格 20Nm3/h 最大 30Nm3/h 20.6Nm3/h 30.3Nm3/h 供給圧 0.5MPa 以上 酸素濃度 10ppm 以下 露点 -60℃以下 初期エネルギー効率 90%以上(定格時) 0.507MPa 0.522MPa 1ppm 1ppm -60℃ -60℃ 90.3% (参考値 85.0%) 漏洩 検知 器 AX 換気 装置 直 流電 源 大気 へ フレア スタック ベント配管 冷 却装置 AX ΔP CX 排 水ポンプ 水素 PX ピットへ ドレン 圧力 容器 エ ンク ロー ジャ ー 8-2.4 LX バッファタンク LX ガス精製器 Q AX ドレンタンク 昇圧 ポンプ 水素気液分離器 循環 ポンプ スタック スタック T 酸素気液分離器 LX ヒータ 純水タンク 純水器 市水 AX ガス分析 器 Q 流 量計 PX 圧 力発信器 CX 導 電率計 LX レベル発信器 T 温 度計 ΔP 差 圧発信器 低コスト化研究取組み状況 1)薄板型セパレータスタックの開発 セパレータを従来のチタン厚板機械加工製から、チタン薄板製に代え、機械加工を不要とし製作 コストを下げる。セパレータ中央部に流路兼給電体のチタンメッシュを配し、その周囲にシール材 を取付けた簡易構造としている。 2)自然循環型システムの開発 従来の水電解システムに代わり、省動力化を目指して自然循環型システムを採用した簡素なシス テム化開発に取組み中である。 検証試験の結果、本システムを水電解システムに適用できうる技術的見通しを得た状況にある。 温度 ℃ 80 80 80 80 80 80 圧力 ata 1.0 7.0 7.0 1.0 7.0 7.0 電流密度 A/cm 2 1.0 1.0 2.0 1.0 1.0 2.0 セル平均電圧 V 1 .686 1 .691 1 .905 1.6 88 1.6 91 1.8 76 自然循環電解予備試験結果 232 電流効率 % 98.9 97.0 94.4 9 8.1 9 5.9 9 4.8 エネルギ効率 % 86.8 84.9 73.3 8 6.0 8 4.0 7 4.8 以下に、特許・論文、実用新案等について、年度毎の件数及びリストを記載する。 (1)研究項目別論文、講演、特許、報道の件数一覧 新聞発表 特許 論文発表 出願済 登録 実施 国内 海外 0 1 0 0 2 0 (2)年度別研究項目別成果総括表 特許出願 年度 新聞発表 出願済 登録 H11 0 0 0 H12 0 0 0 H13 0 1 0 H14 0 0 0 0 1 0 計 実施 0 0 0 0 0 論文発表 国内 海外 0 0 0 0 0 0 2 0 2 0 口頭発表 4 口頭発表 0 0 2 2 4 (3)論文発表リスト a. 査読のある原著論文 1) 橋崎克雄、「水素供給ステーション用固体高分子水電解装置の開発」、電気化学及び工業物理 化学、Vol.71 No.4 P282、2003年4月 2) 橋崎克雄、「世界初の本格的な水素供給ステーション用固体高分子水電解装置を開発」、地球 環境、2003年5月号 b. Vol.34 P102 査読のない原著論文 なし c. 総説、解説、著書 なし d. 国際学会プロシィーディングス なし e. その他(報告書、社内報等) なし (4)口頭発表リスト 1) 橋崎克雄、「水素製造技術の開発」、平成12年度水素エネルギー等関連技術開発委員会、 2001年3月 2) 橋崎克雄、「水電解による水素製造技術」、日本化学会中国四国支部 第35回 化学懇談 会、2001年12月 3) K. Hashizaki, 「Development of PEM water electrolysis type hydrogen production system for WE-NET 」, 14th World Hydrogen Energy Conference, (2002) 233 4) 橋崎克雄、「水素供給ステーション用固体高分子水電解装置の開発」、電気化学学会 70 回大会、2003 年 4 月 (5)特許出願リスト(名称、出願番号、発明者名) 1) 清水克俊、「水電解装置」、特願2001-170215、2001年6月5日出願 (6)「ノウハウ(知的所有権等)」リスト なし (7)その他報道等の概要 a.新聞発表 なし b.カタログ(製品)発表 なし 234 第 8−2. 研究開発項目毎の成果(富士電機総合研究所) 本研究の成果概要を下記表8−1に示す。 表8−1 研 究 内 容 1. 特性向上開発 1-1膜接合体(MEA) 1-2 給電体 2. 積層技術 及び大型セル寿命評価 3. 高温・高圧運転技術 4. 5. 耐久性の研究 低コスト化技術開発 研 究 成 果 成 果 触媒の粒径分布調整及び大面積セルでは分散液塗布治具の開 発で、MEA 膜の皺はホットプレスでの面当たり調整で特性向 上とバラツキが目標を達成した。 電圧効率>96%、面内バラツキ<1%、セル間バラツキ<1% 金属焼結体表面の平滑化開発としてその素材・製法から可能 性のある方法を探索した。結果、素材はチタン細繊維焼結体(充 填材無し)を高圧プレスした平板を採用 大型セル用給電体の製造技術開発では 3000 トンプレスの導 入で満足できる平滑化を達成した。 大面積 2,500cm2 セルの多数積層の基本となる10セル積層 による電解運転が可能となった。大型電解層の電解特性評価 手法についても検討し、大型電解の長期連続運転の目標であ る 10,000 時間を達成した。 またセルの分解調査及び特性低下原因調査から、連続運転 後のセルは酸洗浄にてほぼ運転開始直後の特性を回復したこ とからMEA自体の劣化は小さく、本研究で開発したセル技 術の信頼性は高いものと考える。一方、電解水中の不純物イ オンの発生源対策及び運転システム上での改良が必要である ことが分かった。 目標特性;電解効率 90%以上、電流密度 1A/cm2 を越える電 流密度を 2A/cm2 で効率 90%を確保できる運転条件を調査し、 下記結果が得られ、目標課題を達成した。 運転温度 120℃、圧力 0.7MPa.また 0.2MPa 以上の運転圧力 で電解時の熱バランスが得られることが分かった。 上記 2 項参照 チタン製セパレータのコストダウンに注力して、2 方式について検討を実施 したが、まだ多くの課題のあることが分かった。 ホットプレス法固体高分子形水素製造技術開発では以下の通り研究成果を得た。 以下に、特許・論文、実用新案等について、年度毎の件数及びリストを記載 (1)研究項目別論文、講演、特許、報道の件数一覧 新聞発表 特許 論文発表 出願済 登録 実施 国内 海外 0 17 0 0 3 3 235 口頭発表 3 (2)年度別研究項目別成果総括表 年度 新聞発表 H11 H12 H13 H14 計 0 0 0 0 0 出願済 0 3 4 10 17 特許出願 登録 0 0 0 0 0 実施 0 0 0 0 0 論文発表 国内 海外 1 2 2 1 0 0 0 0 3 3 口頭発表 0 1 0 2 3 (3)論文発表リスト a. 査読のある原著論文 1) T. Nakanori “Development of 2,500cm2 five-cell stack water electrolyzer in WE-NET” Vol.99-2 (1999) 2) M. Yamaguchi “Development of technology for large scale water electrolyzer in WE-NET” The Korean Hydrogen Energy Society (1999) 3) 山口 幹昌 “固体高分子電解質水電解技術の開発” エネルギー・資源 Vol.21 No.1 4) 山口 幹昌 “固体高分子電解質水電解槽の大型化技術の開発” 水素エネルギ−システム(水 素エネルギ−協会)第 25 巻 第 1 号 (2000) 5) M. Yamaguchi “Development of large scale water electrolyzer using solid polymer electrolyte in WE-NET” International Association for Hydrogen Energy Vol.1 ,(2000) 6) 山口 幹昌 「水電解槽技術の進歩(第 24 回定例研究会)」 電気科学会電解科学技術委員会 (2000) b. 査読のない原著論文 なし c. 総説、解説、著書 1) 山口 幹昌「17.2.4 章 水電解法」 最新エネルギー便覧-資源編 (社)日本エネルギー学 会(2001) d. 国際学会プロシィーディングス なし e. その他(報告書、社内報等) なし (4)口頭発表リスト 1) 山口幹昌 「固体高分子電解質水電解技術の開発状況」 水素エネルギーシステム 究会 第98回定例研 2000年 9月29日 2) T. Nakanori “Development of Large Scale Water Electrolyzer using Solid Polymer Electrolyte” World hydrogen Energy Conference in Canada (2002) 236 3) 山本 修「150℃級高温プロトン伝導膜を用いた水電解セル評価」NEDO/PEFC水素エネルギー利用 技術開発成果発表会 2003年3月12日 (5)特許出願リスト(名称、出願番号、発明者名) 名 称 水電解セル用給電体 電気化学セル用給電体 電気化学セル用給電体 固体高分子電解質膜を用いた水電解装置 とその運転方法 膜電極接合体とその製造方法 水電解装置とその運転方法 水電解装置の運転方法 水電解装置 水電解装置とその運転方法 電気化学装置及びその製造装置 水電解装置 水電解装置とその運転方法 電気化学装置の給電体 水電解装置とその運転方法 水電解装置とその運転方法 水電解装置の運転方法 水電解装置用セパレータ 水電解装置 出願番号 410-114476 2000-266485 2000-266486 2001-281127 篠原 山口 山口 山口 発明者名 泰三 幹昌 幹昌 幹昌 2001-273186 2001-324685 2001-075371 2002-249871 2002-082926 2002-305217 2002-280122 2002-106571 2002-309195 2002-275330 2003-027922 2003-074945 2003-276665 2003-040572 堀口道子, 山口幹昌 中野利孝博, 山口幹昌 堀口道子 中野利孝博 原田 孝 山本 修、 堀口道子 山本 修、 中野利孝博 原田 孝、堀口道子 堀口道子、山本 修 原田 孝 堀口道子 中野利孝博 堀口道子、原田 孝 堀口道子 (6)「ノウハウ(知的所有権等)」リスト なし (7)その他報道等の概要 a.新聞発表 なし b.カタログ(製品)発表 なし 8−1.事業全体の成果(三井造船) 第Ⅱ期計画で実施した中型水素製造プラント(水素生産量:3,000 および 10,000Nm3/h)の概念設計 およびコストの試算を行なった。これにより、第Ⅰ期で実施した大型(32,000Nm3/h)およびパッケ ージ型(300Nm3/h)プラントを含む固体高分子電解質水電解法による水素製造プラントの特徴とし て、プラントの大型化により、水素製造コストが低減可能また、WE-NET 固体高分子型水電解プラン トは現状のアルカリ水電解プラントに比べて、電解槽がコンパクトであること、エネルギー効率が 高いという優位性が見出された。また、実用化に必要な開発要素等の提言を行なった。 237 8−2.研究開発項目毎の成果(三井造船) 8-2.1 水素生産量:3000Nm3/h プラントの概念設計(平成 11 年度実施) 8-2.1.1 概念設計及びコスト試算 概念設計に用いた諸数値は以下の通りである。 表1 概念設計の条件一覧 セル電圧 1.705V セル総数 運転温度 120℃ スタック構成 運転圧力(ゲージ圧) 0.44Pa 2 電極面積 2500cm 電流密度 2.5A/cm2 1200 100 セル/スタック スタック数 12 変圧器+整流器 3 セット 水素・酸素ガス温度 40℃ コストを求めるのに必要な項目(電解槽単価、電解質膜寿命、電力料金、電解質膜・触媒単価比) については水素製造量 32,000Nm3/h と同じ条件を設定した。なお、電解槽以外のプラント機器につい ては規模乗数 0.7 乗則を用いた。その結果プラント建設費は 104.9 億円と計算され、水素製造単価 は 31.8 円/Nm3 水素(32,000Nm3/h プラントに比べ約 8%アップ)となった。図1に設計した 3,000Nm3/h プラントの配置図を示す。 制 7000 純 受 クーリングタワー 製 水素ガス 酸素ガス 冷却器 純水 冷却器 冷却器 純水 制御盤 造 スタック:1000w x 3000L x 2400H 整流器 No.1 No.2 整流器 整流器 No.3 No.5 2500 5000 15000 5000 水 27600 30000 図2 8-2.1.2 3000Nm3/h 水素製造プラント配置図 アルカリ水電解法との比較 アルカリ水電解装置を都内に設置するという前提で、3,000Nm3/h 水素製造プラントの機材の供給 に関して見積仕様書を作成、海外(ノルウェー、カナダ)の電解槽メーカー2社に発送し、回答を 求め、得られた情報を基に水電解法の横並びの比較を行なった。 表2に水電解法諸元の比較一覧を示す。このうち、両者で大きく異なる点は以下の通りである。 ・ 運転圧力がアルカリ水電解では常圧なのに対し、固体高分子電解質水電解では 0.44MPa と高く、 238 後段で水素ガスを昇圧する時には後者が有利である。 ・ アルカリ水電解では有効セル面積がバイポーラセル;1.655 m2 およびユニポーラセル;40m2 と大きい。 ・ 固体高分子電解質水電解では電流密度がアルカリ水電解の 10 倍取れるので、電解槽室の所要 面積は約 20%で済む(バイポーラタイプの比較)。 ・プラント寿命、特に電解槽寿命に関しては情報がないため(質問に対する回答なし) 、どの程度 の耐久性を有しているかが不明である。唯一、隔膜についての情報があり、N 社では通常の使 い方で 10 年以上の寿命が期待できるようである。 表2 各種水電解法の比較 1.プラント仕様 3 水素発生量(Nm /h) 2 水素ガス圧力(kg/cm G) 3 酸素発生量(Nm /h) 水素純度(%) 酸素純度(%) 2 電解槽設置床面積(m ) 2 3 設置床面積(m /(Nm /hH2)) 2.電解槽仕様 E社 10000 E社(計算) N社 3000 4.5 5000 4.5 617 0.206 1500 99.9 99.5 725 0.242 E社(計算) N社 99.9 99.7 1,750 0.175 E社 セル仕様 Type 2 公称電流密度(A/cm ) 電解電流(kA) 100 セル電圧(V) 1.85 セル数 240 セル数/1スタック ー トレイン数 2 スタック数/1トレイン ー 2 セル面積(m /1セル) エネルギー効率(%) 3 エネルギー消費率(kWh/Nm H2) 使用隔膜 電解槽サイズ(スタック) 2.1mX1.1mX1.8m 3.電解槽運転条件 E社 o 電解温度( C) 70 運転圧力(kg/cm2G) 3 供給水消費量(L/(Nm -H2) 電解質 電解質濃度(%) - - 138 0.046 WE-NET Bipolar Unipolar EL-250 0.25 100 1.85 72 ー 1 ー 40 81 4.4 - 2.1mX1.1mX1.8m E社(計算) 70 常圧 5040-8 0.31 5.15 1.80 1432 179 4 2 1.655 82 4.3 PPSベースダイアフラム(寿 φ1.8m X 9.0m 固体高分子 2.5 6.25 1.71 1200 100 6 2 0.25 87 4.1 イオン交換膜 1.0mX3.0mX2.4m N社 80 WE-NET 120 4.5 0.8 純水 - 0.9 1 KOH 25 8-2.2 水素生産量:10,000 Nm3/h プラントの概念設計(平成 12 年度実施) 8-2.2.1 WE-NET 概念設計及びコスト試算 239 概念設計に用いた諸数値は以下の通りである。 表3 概念設計の条件一覧 セル電圧 1.705V セル総数 運転温度 120℃ スタック構成 運転圧力(ゲージ圧) 0.44Pa スタック数 2 電極面積 1m 電流密度 2.5A/cm2 変圧器+整流器 水素・酸素ガス温度 976 122 セル/スタック 8 2 セット 40℃ 図3に設計した 10,000Nm3/h プラントの配置図を示す。コストを求めるのに必要な項目(電解槽単 価、電解質膜寿命、電力料金、電解質膜・触媒単価比)については水素製造量 32,000、3,000Nm3/h と同じ条件を設定した。なお、電解槽以外のプラント機器については規模乗数 0.7 乗則を用いた。 その結果プラント建設費は 21.8 億円と計算され、水素製造単価は 28.4 円/Nm3-水素となった。 32,000Nm3/h プラントに比べ約 8%アップ、3,000Nm3/h プラントより約 9%ダウンである。図4にプラ ント規模における建設費の比較を示す。 図3 10,000Nm3/h 水素製造プラント配置図 240 プラント建設費 (百万円) 5000 4500 2.5 A/cm2, 120oC 4000 120万円/セル 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 300 3000 10000 32000 3 /h) ) 水素生産量 (Nm /h 図4 8-2.2.2 規模別プラント建設費比較 アルカリ水電解法調査 固体高分子電解質水電解法と比較検討するために、実際に稼働しているアルカリ水電解法を調査 した。例題として示すプラントは 1986 年に C 社によって Indonesia Plaju Aromatics Centre に建 設された水素製造量 100Nm3/h プラントで、電解槽仕様は表2に示すとおりである。また参考として フロ−を図5に示す。 アルカリ水電解の最大の利点は長寿命で、10 年以上が保証され、オーバホールを行うことによっ て 30 年の稼働が可能と言われている。従って、経済性の観点からアルカリ電解法は優れた方式とい える。また、最近のアルカリ水電解プラントでは改良、改善が進み、N 社の例では Bipolar type の セル構造で操作温度 80℃、電流密度 0.31A/cm2 で端子電圧 1.8V/cell を得ており、プラントエネル ギ−効率を推定すると約 75%である。 241 表4 アルカリ水電解プラントの仕様 Type. No.of electrolysis cell Size: Weight(operation)(kg): No. of anode per electrolyzer: No. of cathode per electrolyzer Effective area per electrolyzer (m2) Operating temperature (℃) Operating pressure (KPaG) Cell performance (per electrolyzer) Current Load (KA) Current Density (KA/m2) Cell Voltage (V) Hydrogen Output (kg/h) Oxygen Output (kg/h) 図5 8-2.2.3 Mono pole tank type 18 H 1307xW 606xL1118(mm) 1616 7 8 10.4 65 4.4 14.3 1.4 2.1 0.53 4.26 アルカリ水電解法による水素製造フロー 水素製造プラントのトータルエネルギー効率 水素製造プラントのエネルギー効率を試算する場合、次式で計算出来る。 プラント全体の エネルギー効率 % = ( 製造される水素保有エネルギー) (電解に要する電気量+整流器での損失+ポンプ等の補機動力) 242 上式を用いて操作温度 120℃、電流密度 2.5A/cm2 での水素製造プラントのエネルギ−効率を計算 すると 80.7%が得られた(交直変換効率 95%と仮定)。この結果より ・電解槽のエネルギ−効率(セル性能)の改善は、プラントエネルギー効率向上に大きく影響す る。 ・直交変換効率も大きく影響する。 ・ ガス冷却放出熱を純水予熱への有効利用は効率改善に有効 等が明らかとなった。なお、アルカリ水電解プラントのエネルギー効率は上述のとおり、操作条件 が異なるため、比較が難しいが、固体高分子電解質型プラントの方がプラント全体のエネルギー効 率が高い。 8−1. 事業全体の成果(SRI インターナショナル) 本事業では、下記の重要な成果を得ることができた。 ・ 芳香環にスルホン酸を修飾した化合物で、初期値ながら、150℃の温度に耐えうるプロトン伝 導膜を製造することができた。 ・ 芳香族系化合物の製膜の劣悪さを、別の化合物を混合することで克服する技術を開発した。 ・ 開発した化合物の耐久性を調べるには、水を混合した状態で加熱し、分解物の有無を調べる 方法が有効。 8−2. 研究開発項目毎の成果(SRI インターナショナル) 8-2.1 高温高分子膜の合成 SRI では、下記(1)のような芳香族フルオロスルホン酸高分子とポリベンズイミ ダゾールのような高分子を混合した耐高温高分子膜を開発した。ポリベンズイミダ ゾール等を混ぜることにより、スルホン酸高分子を擬似的に架橋することによって 機械的強度を増すことが可能となった。 SO3H O CF3 SO3H C CO O n CF3 (1) 8-2.2 高分子電解質の製膜化 コーターを用い、各種条件を組み合わせて、高分子膜のより大きな製膜化を図り、20cm x 20cm サイズの膜を作ることが可能となった。この膜の製膜目標である 400cm2 をクリアすることができた。 243 8-2.3 高分子電解質のテスト SRI にて、AC インピーダンス法を用い、上記膜の伝導度を測定し、150℃、相対湿度 100%で、約 0.4 S/cm を得た。本値は、目標の 0.5 S/cm より低かったが、かなり目標に近づくこと ができた。 株式会社富士電機総合研究所殿に 20cm x 20cm サイズの膜、三菱重工株式会社に 15cm x 15 cm サイズの膜を送り、水電解槽中でテストを実施した。株式会社富士電機総合研究所殿の実験成果で は、80 – 150℃で水電解していることが確認されたが、150℃では、あまり長く持たなかった。今 回試験された膜は、高分子のスルホン化度のみを変えたものである。本年度、ポリベンズイミダゾ ールを用いない方法も試され、かなり良い結果が得られているので、今後、このシリーズの水電解 テストを含めた開発が期待される。 以下に、特許・論文、実用新案等について、年度毎の件数及びリストを記載する。 (1)研究項目別論文、講演、特許、報道の件数一覧 新聞発表 2 出願済 0 特許 登録 0 論文発表 国内 海外 0 0 実施 0 (2)年度別研究項目別成果総括表 特許出願 年度 新聞発表 出願済 登録 H11 0 0 0 H12 2 0 0 H13 0 0 0 H14 0 0 0 2 0 0 計 実施 0 0 0 0 0 (3)論文発表リスト a. 査読のある原著論文 なし b. 査読のない原著論文 なし c. 総説、解説、著書 なし d. 国際学会プロシィーディングス なし e. その他(報告書、社内報等) なし 244 論文発表 国内 海外 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 口頭発表 1 口頭発表 0 0 1 0 1 (4)口頭発表リスト 1) スザンナ・ベンチュラ、千葉正毅、西村靖雄:“新規芳香族系固体高分子電解質膜を用い た水電解による水素製造”、電気化学学会、第68回大会、2001年4月 (5)特許出願リスト(名称、出願番号、発明者名) なし (6)「ノウハウ(知的所有権等)」リスト なし 8−1.事業全体の成果(豊橋技術科学大学) 固体高分子水電解セルの性能解析プログラムを作成することができた。これプログラムは、小形 セル実験による電流密度分布の測定結果を良く説明することができ、燃料電池と同様に水電解セル の性能を解析する手段を準備することができた。また、高圧水電解に必要な熱物性値を調査し、 40MPa 程度の高圧水電解装置では、大気圧程度の水電解と比較し、水ポンプ動力が水素ガス圧縮 機動力より遥かに低いため、5%程度高圧水素製造動力が低くなることを推定した。 8−2.研究開発項目毎の成果(豊橋技術科学大学) 固体高分子燃料電池の性能解析法はこれまで多数報告されているが、水電解セルの特性 解 析 法は こ れ ま で 公 表 さ れ てい な い 。 そ こ で 固 体 高分 子 水 電 解 セ ル の 性 能を 検 討 し 、 設計 す る のに 資 す る た め 、 水 電 解セ ル の 特 性 解 析 プ ロ グラ ム を 開 発 し た 。 ま た、 そ の 信 頼 性を 確 認 する た め 、 小 型 単 セ ル で水 電 解 実 験 を 行 い 、 電流 密 度 分 布 な ど を 測 定し 、 解 析 結 果と 良く一 致する ことを 確 信した 。 一 方、 現 状 で は 固 体 高 分 子水 電 解 セ ル で 作 っ た 低圧 の 水 素 を 圧 縮 し 、 高圧 水 素 と し て貯 蔵 し てい る 。 圧 縮 動 力 は 気 体よ り 液 体 の 方 が 遥 か に少 な い の で 、 高 圧 水 を水 電 解 し 直 接高 圧 水 素を 作 る 製 造 動 力 を 推 定し た 。 高 圧 水 を 電 解 する エ ン タ ル ピ ー 差 や ギブ ズ 自 由 エ ネル ギ ー 差な ど の 熱 力 学 デ ー タ を調 査 し 、 液 体 や 気 体 の圧 縮 機 効 率 を 変 え て 推定 し た と こ ろ、 高圧水 を直接 電解す る 方が気 体を圧 縮する 場 合より、約 5%製造動 力 が少な くなる ことを 明 らかに した。 以下に、特許・論文、実用新案等について、年度毎の件数及びリストを記載する。 (1)研究項目別論文、講演、特許、報道の件数一覧 新聞発表 0 出願済 0 特許 登録 0 論文発表 国内 海外 1 1 実施 0 245 口頭発表 0 (2)年度別研究項目別成果総括表 年度 H14 計 新聞発表 0 0 出願済 0 0 特許出願 登録 0 0 実施 0 0 論文発表 国内 海外 1 1 1 1 口頭発表 0 0 (3)論文発表リスト a. 査読のある原著論文 1) 客野貴広、服部紀公士、伊藤衡平、恩田和夫、「高圧水電解による高圧水素の製造動力の推定」、 平成 15 年電気学会電力・エネルギー部門大会講演論文集、#47、p.B-1、平成 15 年 8 月 2) K. Onda, T. Kakyuno, K. Ito, “Prediction power for high-pressure hydrogen by high-pressure water electrolysis”, J. Power Sources to be accepted in a revised version. b. 査読のない原著論文 なし c. 総説、解説、著書 なし d. 国際学会プロシィーディングス なし e. その他(報告書、社内報等) なし (4)口頭発表リスト 1) 客野貴広、服部紀公士、池田孝伸、恩田和夫、「高圧水電解による高圧水素の理想的製造動力」、 第 44 回電池討論会で発表予定、平成 15 年 11 月 (5)特許出願リスト(名称、出願番号、発明者名) なし <産業技術総合研究所> 「可逆燃料電池の開発研究」 (平成 14 年度実施) 8−1.事業全体の成果(産業技術総合研究所) 固体高分子形燃料電池・水電解可逆セルでは、酸素還元および酸素発生反応の電極過電圧ロスが 大きく、可逆セルの高性能化・高効率化のためには酸素の酸化還元反応の両者に高い活性を示す「バ イファンクショナル酸素触媒」の開発が不可欠である。本研究では、過塩素酸などの酸性溶液中に おける触媒材料の酸素還元・酸素発生特性を検討することで、より迅速・効率的に有望な触媒系も しくは触媒調製法を評価することを目的とした。微量の触媒粉末を Nafion 溶液中に分散後、グラッ シーカーボン電極表面に固定し、0.1M HClO4 水溶液または 0.5 M HClO4 水溶液中で回転電極によっ て酸素還元反応の対流ボルタンメトリーを測定することで触媒の酸素還元活性を、酸素発生活性は 246 上記触媒分散液を金板上に固定しリニアスイープボルタンメトリーにより評価した。図1に白金ブ ラック触媒(Pt black)の酸素還元対流ボルタンメトリーの結果を示す。酸素還元電流は 1 V 付近か ら立ち上がり初めて電極回転数に比例して増加し、0.6∼0.7 V 付近からしだいに飽和してくる。図 1の結果より作成した Koutecky-Levich プロットにおいて直線関係が得られたので、回帰直線を x=0(回転数無限大)に外挿して電解質溶液内の酸素拡散の影響を除いた酸素還元の反応電流 Ik (mA) を各電位において求めた。この反応電流 Ik を、アルゴン飽和溶液中のサイクリックボルタモグラム (CV)の水素吸脱着波から求められる固定化した触媒の活性表面積 Ar (cm2)で除した反応電流密度 (Ik/Ar , mA cm-2)を各電極電位についてプロットした結果を図2に示す。図2には同様な手順に よって測定した平滑白金バルク電極(Pt bulk)、イリジウムブラック触媒(Ir Black)、白金ブラック -イリジウムブラック混合触媒(Pt+Ir black)の結果についても示した。Ir black 触媒は白金に比べ て酸素還元電流が約2桁程度小さく、酸素還元活性は非常に低い。Pt black 触媒に Ir black 触媒 を 30 atomic%混合した Pt+Ir black 触媒では、活性の低い Ir black を混合したことで酸素還元特 性がやや低下していることがわかる。このような結果はこれまでに得られている可逆セル燃料電池 動作時の酸素極触媒層のイリジウム触媒含量依存性に一致しており、妥当な結果であると考えられ る。一方、各触媒の酸素発生時の電極電位と酸素発生電流の関係を検討した結果、Pt black 触媒は Ir black 触媒に比べて酸素発生電圧が非常に高いが、15 atomic%の Ir black を混合することによ って酸素発生電圧は大幅に低下しほぼ Ir black 近い特性を示すことがわかった。このような特性も 可逆セル水電解運転時の酸素極触媒層の挙動と類似していることから、今回適用した手法によって 実セルを作成することなく、可逆セルの酸素極触媒特性を迅速に評価できると考えられる。 1 0 -60mV/dec. 0.9 Potential / V vs RHE Current / A -0.0004 -0.0008 400 rpm 900 rpm 1600 rpm 2500 rpm 3600 rpm -0.0012 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 0.7 0.6 0.5 0.4 0.01 -0.0016 0.4 -120mV/dec. 0.8 1 Potential / V vs RHE 図1 Pt bulk Pt black Ir black Pt+Ir black 0.1 1 10 Current density / mA cm 白金ブラック触媒の酸素還元対流ボルタモグラム (純酸素飽和 0.1M HClO4, 25oC, 電位走査速度:10 mV s-1, 電極回転数:400– 3600 rpm ) 図2 各触媒の酸素還元における反応電流密度の ターフェルプロット (純酸素飽和 0.1M HClO4, 25℃) 247 100 -2 <産業技術総合研究所−1> (1)研究項目別論文、講演、特許、報道の件数一覧 新聞発表 0 特許 登録 0 出願済 0 論文発表 国内 海外 0 0 実施 0 口頭発表 1 (2)年度別研究項目別成果総括表 年度 H11 H12 H13 H14 計 新聞発表 0 0 0 0 0 出願済 0 0 0 0 0 特許出願 登録 0 0 0 0 0 実施 0 0 0 0 0 論文発表 国内 海外 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 口頭発表 0 0 1 0 1 (3)論文発表リスト a. 査読のある原著論文 なし c. 査読のない原著論文 なし c. 総説、解説、著書 1) 西村靖雄「水素製造技術の開発動向」電気評論 pp.17-.21, 2001. d. 国際学会プロシィーディングス なし e. その他(報告書、社内報等) なし (4)口頭発表リスト 1) 西村、ベンチュラ 、千葉 、五百蔵、城間、安田: "新規芳香族系固体高分子電解質を用いた 水電解による水素製造"、電気化学会第68回大会、2001 年4 月 (5)特許出願リスト(名称、出願番号、発明者名) なし 248 <産業技術総合研究所−2> 可逆燃料電池の研究開発(H14 特枠) (1)研究項目別論文、講演、特許、報道の件数一覧 特許 登録 0 新聞発表 0 出願済 2 論文発表 国内 海外 0 1 実施 0 口頭発表 3 (2)年度別研究項目別成果総括表 年度 新聞発表 H14 計 0 0 出願済 2 2 特許出願 登録 0 0 実施 0 0 論文発表 国内 海外 0 1 0 1 口頭発表 3 3 (3)論文発表リスト a. 査読のある原著論文 1) T. Ioroi, T. Oku, K. Yasuda, N. Kumagai, and Y. Miyazaki, “Influence of PTFE coating on gas diffusion backing for unitized regenerative polymer electrolyte fuel cells”, J. Power Sources, in press. b. 査読のない原著論文 なし c. 総説、解説、著書 なし d. 国際学会プロシィーディングス なし e. その他(報告書、社内報等) なし (4)口頭発表リスト 1) 五百蔵勉、安田和明、宮崎義憲、屋隆了、熊谷直和、丸山忠司、小澤由行、“PEM型可逆セ ルにおける集(給)電体の高性能化と大型セルの試作”、第43回電池討論会、2002年10月 2) 五百蔵勉、安田和明、宮崎義憲、西村靖雄、栗山信宏、“可逆燃料電池 −電極材料および 電極構造の検討−”、新規水素貯蔵材料開発のための支援技術開発連絡会議、2002年11月 3) 五百蔵勉、“金属酸化物を含有した PEFC 電極触媒材料の開発”、滋賀ファインセラミック スフォーラム第51回技術講演会、2003 年 1 月 (5)特許出願リスト(名称、出願番号、発明者名) 1) 安田和明、五百蔵勉、熊谷直和、屋隆了(共同)、「多孔質ガス拡散体とそれを用いた可逆セル」、 特願2002-295294 249 2) 安田和明、五百蔵勉、熊谷直和、屋隆了(共同)、「ガス拡散体と電極−電解質膜接合体との積 層体」、特願2002-295311 (6)「ノウハウ(知的所有権等)」リスト なし (7)その他報道等の概要 a.新聞発表 なし b.カタログ(製品)発表 なし 250 9−1.事業全体の成果(タスク9) 世界中で大きな社会問題となっている化石燃料から排出される二酸化炭素を原因とする温室効果 による地球温暖化問題の解決の切り札として、水素エネルギーシステムの利用が考えられている。 WE-NET は、20∼30 年後の水素社会の実現を模索するワールドワイドな取り組みを基本コンセプトと して始められている。この長期的展望は、今後も何らかの形で続くべきもので、その意味でこの基 本コンセプトが間違えであったとはいえない。それどころか水素社会の実現と言うようなエネルギ ー政策の基本にも関わる大展開については、この位の長期的スコープで考えるべきであるといえる。 本タスクにおいては、当初は比較的大規模な輸送及び貯蔵用の装置やシステムを主な研究対象と したが、水素自動車や燃料電池自動車の研究開発との整合を図るため、平成13年度からは比較的 小規模の液体水素ステーションを対象とした検討及び研究開発を行ってきた。また、平成12年度 まで、課題に標榜されていた「液体水素」から液体がとれて単に「水素」となり、 「水素輸送・貯蔵 技術の開発」と呼称されるようになった。この変更は、対象を液体水素に限定することが無くなり、 いくつかあり得る水素の貯蔵時状態の中の一つであるとして扱われることになったことを意味して いる。 このような情勢の中で、本タスクにおいては液体水素を主体とした「水素輸送・貯蔵技術の開発」 を行ってきた。成果を全体的観点から言えば、液体水素による試験も含めて低温試験の中で得られ たデータは貴重であり、今後データベース化されて蓄積されるべきものである。特にそれが基礎研 究と言うよりは実際スケールでの試験を指向してなされたことは、データの有用性という点でその 成果は強調されるべきであるといえる。 断熱構造体の断熱性能及び低温強度に係る要素試験で得られた測定データは、今後の貴重なデー タベースを構成していく内容となるであろうし、実験ノウハウとして継承されていくべきものとな る。 各種水素輸送・貯蔵システムの検討に関するテーマとしては、ケミカルハイドライドと水素ガス 圧送システムについての検討がなされた。前者の場合の水素供給コストは液体水素の場合に比べて 少し高めであること、また後者についても高くなることが結論された。 小容量液体水素輸送・貯蔵システムに関する検討では、液体水素輸送兼貯蔵コンテナ(容量 15m 3 )の開発、試作がなされた。テンションロッド方式による内槽タンク支持機構を採用し、従来型 の約半分となる蒸発率を達成できた。また、この規模の大きさの容器における液体水素のスロッシ ング解析もなされた。 長期にわたって継続して行ってきた液体水素輸送・貯蔵技術の共通機器としての液体水素ポンプ の研究開発、すなわち、大容量高揚程液体水素ポンプ及びその後の小型汎用液体水素ポンプに係る 開発の成果は、最近の水素エネルギー技術の進歩を支える重要な技術基盤となるものである。液体 水素ステーションを対象とした汎用の小型液体水素ポンプ(回転数:20,000rpm、流量:3.6m3/h、 揚程:160m)においては詳細設計を行い、試験を実施するとともにこの研究開発のキーテクノロジ ーである液体水素静圧軸受(フォイル軸受)と駆動装置である電動モータのモデルコイルの設計な らびに材料の電磁気的特性を調べ、ほぼ予定どおりの成果を得ることができた。 第Ⅰ期の WE-NET 研究開発がスタートした平成5年当時、我が国にはロケットポンプの技術を除い て全く液体水素ポンプに関する基盤技術は存在しなかった。ロケットポンプと違い耐久性が最も重 251 要視される WE-NET で必要な液体水素ポンプを開発するに際して、相当の困難を予想した。丁度 10 年後の本年度に、いくつかの課題を残してはいるものの、液体水素ステーションや小流量供給用ポ ンプの設計や試験を短期間に行えるまでに進歩したといえる。 液体水素の広汎な実用化の実現には価格の低減が必須であると考えられる。この実現には液化シ ステムの主要構成機器である圧縮機、膨張タービン等回転機械類の効率の向上が最重要である。こ のため、液化システムの主要構成機器である膨張タービンの効率の向上を目指した膨張タービン翼 内のガスの流れ損失を低減する3次元翼形状の高効率化タービンを試作し、性能試験を実施し、設 計どおりの特性と高い効率を得られることが確認できた。また、水素の原料として利用される液化 天然ガス LNG の冷熱を積極的に利用した小規模(3 t/d)水素液化サイクルの実用機を検討し大幅な 液化水素の価格の低減が可能であることが示された。 9−2.研究開発項目毎の成果(タスク9) 9-2.1 タスク9−1:液体水素輸送・貯蔵設備の開発 (1) 短期研究テーマ (1.1) 小容量液体水素輸送貯蔵システムの検討 容量 10m3 と 15m3 の液体水素コンテナの概念設計を実施して比較検討した。液体水素コンテ ① ナタンクの熱流動解析により液体水素の特異性を確認した。 高圧ガス保安法及び他規格等に基づいて容量 15m3 液体水素コンテナを開発製作した。本コ ② ンテナは内槽タンクの支持方法にテンションロッド方式を採用して、目標蒸発率を従来コン テナの蒸発率を半分に低減した 0.5%/day である。 なお、本液体水素コンテナは次期プロジェクトに引き継がれ、H15年度に液体水素試験で性能 が確認された後、H16年度から液体水素製造基地から水素ステーションまで液体水素輸送機器と して使用される予定である。 (1.2) 各種水素配送システムの検討 ケミカルハイドライド(デカリン/ナフタリン等)及びパイプライン等の水素供給コストは、輸 送距離の条件にもよるが液体水素システムより少し高めとなり液体水素システムの優位性を確認 した。 252 (2) 長期研究テーマ (2.1) 断熱構造体の要素試験 各断熱構造体の断熱性能試験結果と各圧縮試験体の低温圧縮試験結果を下表に示す。これで各種 断熱構造体の断熱特性データベースがほぼ完成した。 真空度 (torr) 有効熱伝導率 (mW/mK) mW/mK) 備考 7.92 試験体低温面と 20K 貯蔵面の間隙 10mm <1.0x10-6 4.93 20K 貯蔵面よりサポート支持 メンブレン積層真空断熱構造 <1.0x10-6 (GFRP 多重管+積層断熱材) 6.15 積層断熱材の継目からの輻射入熱影響大 GFRP 多重管の熱接触抵抗の効果大 4.5 含有する金属酸化物が輻射を低減 目地の影響は小 5.09 コア材 PUF を SUS 薄材で覆い内部真空引 10.8 ガラス中空粉体, ガラス中空粉体,粒径 50um 断熱構造試験体 固体真空断熱構造 (低温目地付き PUF) PUF) 固体真空断熱構造 (サポート支持付き PUF) PUF) <1.0x10-6 <1.0x10-6 固体真空断熱構造 R) (マイクロサーム サーム○ (マイクロ <7.5x10-4 真空パネル型断熱構造 粉末真空断熱構造(マイクロスフェア) <7.5x10-4 <1.0x10-3 粉末常圧断熱構造 (パーライト+ヘリウムガス) 常圧 圧縮試験体 7.7 他の粉末真空断熱材と同程度 断熱層にガス対流が発生し高い熱伝導率 110 以上 常温 LN2 温度 LH2 温度 (MPa) (MPa) (MPa) 備考 密度 90kg/m3 ,硬質 PUF、発泡ガス:炭酸ガス PUF、発泡ガス:炭酸ガス PUF 泡ガラス 1 2 2 1.12 1.48 1.61 密度:135kg/m 密度:135kg/m3、ガラス発泡焼成 軽骨コンクリート 28.3 96.8 113 密度:1650kg/m 密度:1650kg/m3、含水量:17% 、含水量:17% マイクロスフェア .496 1.03 1.04 GFRP 341 592 757 密度:250kg/m 密度:250kg/m3、ガラス中空粉体, 、ガラス中空粉体,粒径 50μ 50μm ガラス繊維強化樹脂(G11 ガラス繊維強化樹脂(G11 相当) 各種断熱構造を採用した液体水素タンカー(容量 20 万 m3、目標蒸発率 0.2∼0.4%/day)及び陸上 液体水素貯蔵タンク(容量 5 万 m3、目標蒸発率 0.1%/day)の概念設計を行った結果、陸上用粉末常 圧断熱構造を除いて構造的に成立することが確認された。 (2.2) 中規模液体水素供給チェーンの概念検討 東京湾の沿岸の沿岸地域をモデル対象として輸送バージのタンク容量をパラメータ(容量 90m3,250m3,480m3)とした海上輸送システムを検討した結果、実現の可能性を示した。 9-2.2 タスク9−2:共通機器類の開発 (1) 大容量高揚程液体水素ポンプにおける磁気軸受けシステム技術確立と規定回転数でのテストに よる液体水素ポンプ性能評価 平成10年度(WE-NET 第Ⅰ期)に製作した液体水素ポンプを改修して平成11∼12年度にかけ て液体水素温度環境下での回転試験を実施した。なお、各種要素試験を実施していく中で、より具 253 体的なポンプの可能性を追求するため、回転数:36,000rpm、流体温度:20K、吸込圧力:0.2MPa、 吐出圧力:60.0MPa、流量:90m3/h を設計仕様と設定して検討した。成果として次が得られた。 ① 電磁石の磁性材料の変更及びロータヨーク材板圧薄肉化によりヒステリシス損の低下、渦 電流損失を抑えることにより、電磁石の周波数特性の劣化がないことが確認できた。 ② 平成9年度に製作を開始した磁気軸受供試体及びコントローラに改良を加え、目標回転数 36,000rpm 迄の回転性能を確認することができた。 ③ 目標回転数 36,000rpm に対して、33,000rpm 回転までの回転試験を行い必要なデータを取 得することができた。33,000rpm 以上では、軸振動レベルが急激に増大したが、インデュー サの形状変更によりポンプ吸込み性能を向上させることで解決できた。 ④ ロータ軸の中空化により回転部固有振動数を向上させ曲げモードによる軸振動不安定領域 を遠ざけることにより軸振動の安定化が図られた。 ⑤ 軸危険速度においても軸振動レベルを 20μmp-p 以下に抑えることができた。 ⑥ 静圧軸受による軸振動の安定化に関しては、ポンプ回転数が 17,000rpm で急停止したため に、静圧軸受供給圧力が低く基本性能を確認するまでに至らなかった。 ⑦ 絶縁型フィードスルーを新規に製作し、液体水素環境下での組合せ試験を実施し、良好な 制御性能が得られることを確認した。 ⑧ ポンプ性能に関しては軸シール部等に最適なクリアランス設計が行われず、吐出口以外へ の漏れが多く設計仕様の吐出圧力は得られなかったが、定格回転数まで安定動作することを 確認した。 (2) 小型汎用液体水素ポンプに適用可能な静圧軸受け技術の確立 既存の液体水素ポンプ及び自動車用 LNG 供給ステーションに使用されているポンプ仕様の調査結 果に基づき液体水素ステーションに必要なポンプ仕様として、流量:3.6m3/h、揚程:160m、回転 数:20,000rpm に設定した。これに基づき、ポンプ羽根車、電動機及び軸受けの設計仕様を設定し た。実施項目とその内容及び成果を下表に示す。 254 実施項目 実施内容 成 ① 果 電動モータモデルコイル製 電動モータのモデルコイルを設計製作し、液体水素浸積試験によ 作/評価試験 り電気的特性を確認する。 ・モデルコイル及び磁気特性計測用 O 型リングを製作した。 ・磁性材料及び絶縁材料の電気的特性は所定の性能を満足することを確認した。 ・磁気特性については、磁束飽和密度が常温時の約半分まで低下することが判明し、電動モー タの設計を見直した。 ② フォイル軸受製作/評価試験 平成13年度に製作した水素ガス静圧軸受試験装置を改修して 試験条件を変更した静圧軸受を追加で設計/製作し、水素ガス静 圧軸受の性能確認試験を行い、小型汎用液体水素ポンプの軸受設 計に反映させる。 ・ジャーナル軸受は、約 7,000rpm で浮上することを確認した。 ・定格回転数 20,000rpm で 10 分間の静定保持を行い、軸振動が 6μmp−p に収まることを確認し た。約 10 回の発停試験では軸芯の移動量は 50μmp−p 以内であった。 ・スラスト軸受は、ポンプ発生推力(40N)を定格荷重として性能評価を行い、約 5,000rpm で浮 上することを確認した。最大負荷能力試験では、180N 迄の負荷能力を確認した。 ③ 小型汎用液体水素ポンプ製 液体水素ステーションに適用可能な小型液水ポンプの詳細設計 作/評価試験 を行う。特に電動モータ部の設計についてはモデルコイルによる 要素試験結果を反映して設計を進めて、製作したポンプ部を組み 合わせて小型汎用液体水素ポンプを製作する。なお、本ポンプの 液体水素による運転評価試験を実施し、要求特性を明確にする。 ・誘導モータとのマッチングを考慮して始動トルクの軽減及び初期沈み込み量を極力抑えた軸 受を製作した。また、駆動は液体水素中の電気抵抗及び磁気特性を考慮した誘導モータを設 計/製作した。 ・インバータ制御盤から誘導モータへの電圧/周波数入力を徐々に増加させ回転を上昇させた が、約 6,000rpm 付近で誘導モータの発生トルク不足による回転停止が発生した。 ・フォイル軸受は浮上回転数まで到達できなかったため軸振動特性を評価することができなか った。また、ポンプ部も吐出流量、吐出圧力、回転数のデータに整合性が無いために性能評 価することができなかった。 ・回転試験終了後の分解点検で、フォイル軸受及びロータ支持部に有害な接触痕等無く健全で あることが確認できた。その他のクリアランスの厳しい回転部にも有害な接触痕は発見され なかった。 (3) 液体水素ステーションのボイルオフ水素ガス回収技術の検討 ボイルオフ水素ガスの回収技術の検討として再液化について検討した結果、再液化装置に必要 な動力がステーション設備全体の約3倍程度となり非常に非効率であることが分かった。一方、 255 ボイルオフ水素ガスを燃料電池の燃料として使用することによりステーション全体の消費電力を 賄うに充分であることが明らかとなった。 また、液体水素を自動車に供給するときに発生するボイルオフガスを回収し、水素圧縮機によ り高圧ボンベに昇圧貯蔵しておき、高圧ガス水素自動車あるいは水素吸蔵合金自動車への供給を 行う利用方法も有効であることが分かった。 9-2.3 タスク9−3:水素液化設備の概念設計(高効率設計) タスク9−3においては、自動車用水素供給ステーションを想定し、30t/d 以下の比較的小容量 の水素液化機計画を実施した。平成11年度及び12年度では、小容量水素液化機の実現性につい て確認し、また各種形式の水素圧縮機を調査し圧縮動力について比較検討を実施した。平成13年 度は、水素圧縮機の圧縮動力低減を目的として、動力回収用水素膨張タービンの概略検討及び LNG 冷熱利用による水素液化機動力低減について検討した。平成14年度は、動力回収用水素膨張ター ビンの実現性を検証するための膨張タービンの空力性能試験及び LNG 冷熱利用水素液化サイクルに おける低温圧縮機導入の検討を実施した。研究開発の達成状況等を第Ⅱ期における技術開発まとめ として下表に示す。 ①目的 ・小容量水素液化設備検討及び水素液化コスト低減。 ②目標 ・小容量水素液化設備の液化サイクル成立性検討。水素液化設備の高効率化及び動力 低減による水素液化コスト低減。 ③実施項目 ③-1 大型液化設備のコスト低減 ・大型水素液化設備における圧縮機の遠心型採用による効率向上検討 ③-2 小中型液化設備のコスト低減 ・小容量水素液化設備の機器仕様と性能検討 ・小型水素液化設備用圧縮機効率改善策検討 ・動力回収用水素膨張タービンによる動力回収技術検討 ・LNG 外部冷熱利用による液化動力低減 ④達成状況 ・大型水素液化設備用水素圧縮機として、高圧力比、高効率な遠心圧縮機実現の可能 性が分かった。 ・小型水素液化設備用圧縮機として、遠心型と従来のスクリュー型圧縮機の組み合わ せが、所要動力、コスト、寸法の面から有効であることが示された。 ・30t/d 以下の小型水素液化設備は、現有技術で対応可能であり、さらに LNG 冷熱利 用により動力低減可能であることが示された。また当該設備に、不可欠な低温圧縮 機の実現性が示された。 ・小型水素液化設備用動力回収用水素膨張タービンの高効率化を達成した。なお、ス ラスト力低減機構についても実現性の検証を実施した。 256 以下に、特許・論文、実用新案等について、年度毎の件数及びリストを記載する。 (1)研究項目別論文、講演、特許、報道の件数一覧 新聞発表 特許 口頭発表 論文発表 出願済 登録 実施 国内 海外 0 0 0 1 5 0 26 (2)年度別研究項目別成果総括表 年度 新聞発表 特許出願 口頭発表 論文発表 出願済 登録 実施 国内 海外 H11 0 0 0 0 0 0 6 H12 0 0 0 0 1 4 3 H13 0 0 0 0 0 0 6 H14 0 0 0 0 0 1 11 計 0 0 0 0 1 5 26 (3)論文発表リスト a. 査読のある原著論文 1) S. kamiya, K.Onishi,E.Kawagoe, K.Nishigaki “A large Experimental Apparatus for Measuring Thermal Conductance of LH2 Storage Tank Insulations”, Cryogenics 40(2000), P35-P44 2) 神谷祥二、大西勝、川越英司、西垣和: “液体水素貯槽用断熱構造性能試験装置の開発”、低温工 学、Vol.35 No.9(2000), P448-P449 3) S.Kamiya、K.Onishi,K.Nishigaki“Thermal test of the insulation structure for LH2 tank by using the large experimental apparatus”, Cryogenics40(2000),P737-748 b. 査読のない原著論文 なし c. 総説、解説、著書 1) 神谷祥二:“液体水素の大量輸送・貯蔵技術の開発” 、圧力技術協会第 38 巻第5号 P46-P53 、 2000 年 9 月 2) 神谷祥二:“液体水素を用いる水素輸送・貯蔵技術” 、電気評論 P23-P28、2001 年 10 月 3) 神谷祥二: “液体水素システム” 、新エネルギー大辞典、茅 陽一監修(工業調査会)P803-P809、 2002 年 2 月 4) 山下直彦:“水素液化プロセスの検討”、低温工学 P204∼211Vol.38No.5、2003 年 257 5) 浅沼憲幸、神谷祥二: “WE-NET プロジェクト研究開発概要”、低温工学 P187∼192 Vol.38No.5、 2003 年 6) 神谷祥二:“液体水素輸送・貯蔵技術の開発” 、低温工学 P193∼203 Vol.38No.5、2003 年 d. 国際学会プロシィーディングス 1) S. Kamiya et al “A large Experimental Apparatus for Measuring Thermal Conductance of LH2 Storage Tank Insulations –Thermal characteristics–”, The 13Th World Hydrogen Energy Conference, Proceeding vol.1 P481-P486,2000 2) S Kamiya et al “Developing various thermal insulation structures for large liquid hydrogen storage tanks” The 14Th World Hydrogen Energy Conference,2000 3) S. Kamiya “Developing the system for transporting and storing the small mass liquid hydrogen ” The 14Th World Hydrogen Energy Conference, Proceeding vol.1 (2002), P481-P486 e. その他(報告書、社内報等) なし (4)口頭発表リスト 1) 神谷祥二: “液体水素貯槽用断熱構造性能試験装置の開発(その 1)”、第60 回春季低温工学・超 電導学会講演予稿集 P177、1999 年 9 月 2) 神谷祥二:“液体水素貯槽用断熱構造性能試験装置の開発” 、第60回応用物理学会学術講演会、 P389,1999 年 10 月 3) 神谷祥二: “液体水素貯槽用断熱構造性能試験装置の温度特性”、日本冷凍空調学会学術講演会予 稿集 P57-P60、1999 年 10 月 4) 神谷祥二:“液体水素貯槽用断熱構造性能試験装置の開発(その2)” 、第61回秋季低温工学・ 超電導学会講演予稿集 P224、1999 年 11 月 5) 神谷祥二: “WE-NET 利用における液体水素の利用について” 、低温工学関西支部講演会、2000 年2月 6) 関紀明、堀口誠志、中島雅祐:“クリーンエネルギー・水素の利用を目指して−液体水素輸送・貯 蔵技術の開発”、 (社)日本高圧力技術協会 HPI セミナー第 23 回、2000 年 2 月 7) 神谷祥二:“液体水素貯槽用断熱構造体の開発” 、WE-NET 研究成果発表会(2000) 、2000 年 7 月 8) 水野孝彦:“液体水素ポンプの開発”、 (財)エンジニアリング振興協会 研究成果発表会 2000、 2000 年 7 月 9) 神谷祥二:“液体水素輸送・貯蔵技術の開発”、NEDO 燃料電池・WE-NET 成果報告会、2001 年3月 10) 神谷祥二:“液体水素の輸送・貯蔵技術について”、日本マリーンエンジニアリング学会 258 海洋 機器研究委員会、2001 年 6 月 11) 神谷祥二:“液体水素輸送・貯蔵技術の開発” 、低温工学 冷凍部会、2001 年 6 月 12) 水野孝彦:“液体水素ポンプの開発 2001”、エン振協研究成果発表会、2001 年 7 月 13)神谷祥二: “WE−NETにおける液体水素輸送・貯蔵技術の開発” 、熱流体先端技術講演会熱 流体フォーラム、2001 年 10 月 14) Shoji kamiya :“Development of the liquid hydrogen system” 、水素エネルギー協会第6回日 韓水素シンポジウム、2001 年 10 月 15) 神谷祥二:“液体水素の大量輸送・貯蔵技術の開発”、日本高圧力技術協会EST−1委員会、 2001 年 11 月 16) 神谷祥二:“小容量液体水素輸送・貯蔵設備の開発” 、エンジニアリング振興協会 WE-NET 研 究成果発表会(2001) 、2002 年 7 月 17) 櫻井剛、神谷祥二、堀口忠、藤井秀樹:“大型液体水素貯蔵タンク用断熱材の低温強度特性” 、 第67回秋季低温工学・超電導学会、2002 年 11 月 18) 浅沼憲幸:“水素輸送・貯蔵システム”、日本機械学会 No.02-57 講習会、2002 年 11 月 19) 神谷祥二:“液体水素コンテナの開発”、第22回水素エネルギー協会大会、2002 年 12 月 20) 神谷祥二:“液体水素コンテナの開発”、固体分子形燃料電池/水素エネルギー利用成果報告会、 2003 年 3 月 21) 合澤清志他: “液体水素用断熱材の開発” 、固体分子形燃料電池/水素エネルギー利用成果報告会、 2003 年 3 月 22) 深堀修、水野孝彦: “液体水素ポンプの開発” 、固体分子形燃料電池/水素エネルギー利用成果報 告会、2003 年 3 月 23) 大迫雄志、中道憲治:“水素液化設備動力回収膨張タービン高効率設計の実現可能性検討”、固 体分子形燃料電池/水素エネルギー利用成果報告会、2003 年 3 月 24) 山下直彦: “水素液化の外部冷熱利用検討”、固体分子形燃料電池/水素エネルギー利用成果報告 会、2003 年 3 月 25) 神谷祥二: “水素輸送方式(インフラ等)の現状と課題−オフサイト方式による水素供給システ ム−”石油学会エネルギー部会並びに日本エネルギー学会新エネルギー部会共催講演会、2003 年 3 月 26) 神谷祥二:“液体水素コンテナの開発製作”、エン振協研究成果発表会、2003 年 7 月 (5)特許出願リスト(名称、出願番号、発明者名) なし (6) 「ノウハウ(知的所有権等)」リスト なし 259 (7)その他報道等の概要 a.新聞発表 なし b.カタログ(製品)発表 なし 10−1.事業全体の成果(タスク10) 第Ⅱ期研究開発では、選定した候補材(オーステナイト系ステンレス鋼: SUS304L,SUS316L,SUS316LN,アルミニウム合金:A5083,A5454)の液体水素雰囲気温度を含む低温域 での母材および溶接部の材料特性評価を進めてきた。その結果、選定した母材については、液体水 素雰囲気下でも充分な特性を有するものの、溶接部の低温靭性の改善が課題であることが明らかと なった。そのため、低温靭性向上の観点から、近年開発されつつある新規溶接・接合法や溶接材料 の適用評価を行い、その効果を確認してきた。 これらの新規溶接・接合法を、分散利用下での中・小規模液体水素容器用薄肉材料にも拡大して 評価するとともに、低温靭性に及ぼす要因解析や脆化機構の解明を行った。また、将来必要とされ る高圧水素ガス環境下での材料特性や、従来からの疲労特性等の材料特性試験も継続実施し、デー タの拡充・蓄積を図った。以下に得られた主要な成果を示す。 10−2.研究開発項目毎の成果(タスク10) ・大型液体水素貯蔵容器用材料開発 SUS304L 鋼および SUS316L 鋼の MIG 溶接継ぎ手を作成し、 水素チャージ材の特性評価を行った。 さらに高 Mn 系完全オーステナイト系ステンレス鋼である JJ1 鋼を溶接材料に用い、SUS316L 鋼の TIG 溶接の溶接割れ感受性を調査した。また、疲労特性データの充実を図ると共に、オーステナ イト系ステンレス鋼の液体水素中引張試験と切り欠き引張特性試験を実施した。 SUS316L 鋼の MIG 溶接金属については水素チャージの影響はほとんど認められず、水素による 特性低下は無視できるものと判断されるが、SUS304L 鋼の MIG 溶接金属については、引張特性や 破壊靭性の一部試験結果に水素チャージ材の特性低下が見られることから、使用時に注意が必要 と考えられた。 JJ1 鋼は汎用的な SUS316L(δ-フェライト量 10%)よりも溶接割れ感受性が高いと思われ、そ の使用に際しては溶接時の高温割れに留意する必要性が示された。 SUS316L MAG 溶接金属の疲労特性は、室温では TIG(δ=5%)溶接金属と同程度であったが、低温 では TIG(δ=5%)溶接金属より高かった。JJ1 鋼溶接ワイヤーを用いて作製した SUS316L TIG 溶接 継手の疲労特性は、室温では TIG(δ=5%)溶接金属よりやや高い程度であったが、 低温では TIG(δ =5%)溶接金属より著しく高くなった。これは、極低温における高強度特性が反映された結果と考 えられた。JJ1 鋼+TIG、MAG 溶接金属とも、106 回疲労強度と 0.2%耐力の比はほぼ 1 であり、室 温から極低温環境下において高い疲労特性を有していることを確認した。 260 SUS304L は、20K 液体水素中および 4L 液体ヘリウム中において、切り欠き引張強さが引張強さ より低くなる。SUS316L は、すべての温度域・環境において、切り欠き引張強さの方が引張強さよ り高い。両鋼の切り欠き引張強さは、 すべての温度域・環境において 0.2%の 3 倍以上の値であり、 切り欠き感受性は著しく低い。破面はいずれも延性破面で、液体水素中試験において水素との相 互作用を示唆する痕跡は認められなかった。 新規溶製した 316 型オーステナイト系ステンレス鋼の液体水素環境中材料評価では、水素環境 脆化の温度依存性を見いだし、水素環境脆化が歪誘起マルテンサイト変態に起因することを突き 止め、その化学成分依存性を検討して、水素環境脆化指標を提案した。 また、SUS304L、316L および 316LN 鋼の RPEB 溶接継手および完全γ型の JJ1 溶接材を用いた TIG 溶接継手は、極めて優れた極低温靱性を有し、かつ水素チャージ処理による劣化もほとんどない ことから、耐水素脆化感受性も高く、大型液体水素貯蔵容器用の溶接方法として信頼性が高いと 判断された。 ・液体水素分散利用材料開発 ステンレス鋼(SUS304、304L、316、316L)の 5mm 厚薄板の極低温環境下における引張、シャルピ ー衝撃特性を評価した。また、TIG、MIG、FSW 溶接・接合継手を作製し、これらの極低温環境下に おける引張、シャルピー衝撃特性を評価した。 引張特性について、応力-歪み曲線におけるセレーションの発生挙動など、丸棒試験片とは異な る変形挙動が液体水素中で観察されたが、いずれの鋼も良好な強度、延性を有しており、液体水 素用途に適した材料であることが確認された。また、TIG、MIG 溶接金属の継手引張試験では、母 材よりも低延性であったが、なお高い延性値を有しており、両溶接方法が薄板においても有効で あることが示された。SUS316、316L に対しては、FSW 継手の引張特性も評価し、母材と同等の強 度と、MIG、TIG を上回る延性が液体水素中で得られた。以上、いずれの鋼種、溶接金属、母材に おいても、液体水素中で破断した試験片は延性破面を呈しており、水素との相互作用を示唆する ような痕跡は認められなかった。 シャルピー衝撃特性について、母材の吸収エネルギーは、試験温度によらず、SUS304、SUS304L では 60J 程度、SUS316、SUS316L では、80J 程度と安定していた。吸収エネルギーの温度依存性に 及ぼす溶接方法の影響は、鋼種ごとに異なり、特定の傾向は認められなかった。SUS316、SUS316L についてのみ実施した FSW 溶接部の吸収エネルギーは、母材と同程度であり、低温靭性に優れた 接合方法と考えられる。比較のために作製した厚板 TIG 溶接部では、 薄板 TIG 溶接部に比較して、 吸収エネルギーが低くなっている。これは、溶接パス数の影響と考えられた。 ・アルミニウム合金減圧電子ビーム溶接材の評価 高効率でかつ大板厚の溶接が可能な前述 RPEB 法による溶接継ぎ手の評価を行った。 本方法では 溶融・凝固領域が小さいため、従来の大電流 MIG 溶接法に比べて急冷効果による組織微細化およ び靭性改善効果が期待できる。 X 線透過検査では、わずかにポロシティが観察され、組織観察からも一部の継ぎ手で母材と溶 接部界面で酸化膜の巻き込みと考えられる欠陥が認められた。溶接条件に関して最適化が必要と 思われる。また、硬さ試験,EPMA(エレクトロンプローグ マイクロアナライザー)分析から溶 接部の Mg 蒸発は少なく、その影響は小さいものと考えられた。 261 引張試験では継ぎ手方向での引張であったため溶接部のみの評価が行えず、溶接部に変形が集 中し伸びは全体的に低めとなった。また溶接部あるいは界面の欠陥の影響を受けたため、耐力は 母材と同等であったが引張強度,伸び,絞りが低い値となった。ただしこれらは溶接条件の最適 化により改善可能と思われた。 シャルピー吸収エネルギーは 5454RPEB および 5083RPEB 材とも従来 5083MIG と比較していずれ の温度においても著しく改善されており、4K においては 5454RPEB 材は 5 倍以上,5083RPEB 材は 約 3 倍の吸収エネルギーを示すことがわかった。また破壊靭性値も同様にいずれの温度において も従来 5083MIG 材にくらべ著しく向上することが確認され、4K の破壊靭性値は 5454RPEB 材にお いては約 3 倍の 100MPa・√m の値を有し、5083RPEB 材においても約 2 倍の 55MPa・√m の値を持 つことがわかった。 以上の結果からアルミニウム合金の極低温靭性を改善する方法として、摩擦撹拌接合(FSW)法 に加え、RPEB 法の適用も有効であることが確認された。また合金組成としてはこれまでの結果と 同様に、5083 合金より Mg 含有量を低減した 5454 合金の使用が低温靭性改善効果が大きいことが わかった。 ・高圧水素ガス環境下でのステンレス鋼への水素侵入 低合金鋼(SS400、SCM435、SNCM439) 、オーステナイト(γ)系ステンレス鋼(SUS304、304L、 316、316L、SUS321) 、アルミニウム材(A1100, A5083)およびチタン(ASTM Grade2)に対し、低温高 圧水素ガス雰囲気下(27.9MPa(275 気圧) 298K(25℃)、327K(54℃)および 353K(80℃))にて長時間 (1000h)暴露処理を行った試料の水素分析試験、引張およびシャルピー衝撃特性を調査した。更に 水素拡散等を用いて、高圧水素ガス暴露におけるγ系ステンレス鋼への水素吸収量の予測計算を 試みた。 275 気圧、25℃∼80℃、約 1000 時間の高圧水素ガス暴露によって、低合金鋼、γ系ステンレス 鋼およびチタンにおいて水素の吸収が見られた。20%冷間加工により、γ系ステンレス鋼中への水 素吸収が促進された。但し、10ppm 以下の水素吸収では、低合金鋼(SCM435)、γ系ステンレス鋼 (SUS304、316)とも引張特性(強度、伸び、絞り)やシャルピー衝撃吸収特性への顕著な影響は 認められなかった。 一方、アルミニウム材では水素の吸収は小さく、ステンレス鋼にアルミニウムめっきを行うこ とによって、水素侵入を抑制できることが確認された。 高圧水素ガスとの平衡水素量や水素拡散式等を用いて、高圧水素ガス暴露中のγ系ステンレス 鋼中への水素吸収量を計算した。その結果、本予測計算により今年度までに実施した長時間水素 ガス暴露試験における吸収挙動がほぼ説明できることがわかった。高圧水素ガスの環境下では、 100℃において、γ系ステンレス鋼への水素吸収が約1年間で飽和するのに対し、50℃以下では水 素吸収量が 10 年以上も続く可能性があることが本計算結果から示された。 ・海外研究機関との共同研究 英国溶接研究所(TWI)保有の Nd:YAG レーザを用いた溶接施工を検討した。窒素ガスを用いた 場合に、溶け込み深さおよびポロシティの両方の観点から、最も良好な結果が得られた。この場 合の、最良のプルーム制御系配置を決定した。プルーム制御の効果は、制御ガスジェットが材料 表面に当たる位置に強く依存する。平底付きの開先形状は、プルーム制御に有効であった。 262 同じく TWI の FSW 装置を使用し、汎用ステンレス鋼薄板(5mm 厚)に対し、両側 2 パス溶接の適用 も検討した。FSW は、Al 合金では広く実用化が進んでいるが、軟化温度が高く変形抵抗の高い鉄 鋼材料に対しては、未だ広く使用されていない。検討の結果、SUS304、304L、316、316L の 5mm 板を両側2パス FSW により接合することができた。工具の摩耗に起因すると思われる極微小ボイ ドの発生が認められたが、工具材料の改善によりこれら問題も改善されるものと考えられた。 ドイツ材料研究所(MPA Stuttgart)との共同研究では、液体水素および同温度の He ガス雰囲 気下での材料特性を比較し、20K における水素の影響を調べた。SUS304L、316L、316LN の主要 3 鋼種に対し、試験片寸法を変化させた引張試験を行なった。その結果、SUS304L、316L、316LN の 液体水素中および 20K の He ガス中引張特性は、試験片寸法によって著しく異なり、液体水素中で は、試験片寸法が小さいほど高強度・低延性であり、20K の He ガス中では、試験片寸法が小さい ほどセレーションの発生が早くかつ高頻度になった。これは、液体とガス環境の差および試験片 寸法の差に起因した試験片冷却能の差を考慮することで説明できると考えられた。SUS316L、 316LN の切り欠き引張強度は、いずれも引張強さを上回っており、両鋼とも、液体水素中および 20K の He ガス中で高い切り欠き引張特性を有していた。 さらに、MPA Stuttgart との共同研究で、液体水素と 20K の不活性 He ガス雰囲気下でアルミニ ウム合金 5083 大電流 MIG と 5454 大電流 MIG の2種類の引張試験も実施した。その結果、5083、 5454 ともに液体水素中のデータと 20K の He ガス雰囲気中の応力-歪曲線は一致しており水素の影 響が無いことがわかった。試験片採取場所の機械的特性の影響については、5083、5454 ともに 2nd パスから試験片を採取した方が、降伏応力、引張強度、伸び、絞りともに良い特性が得られた。 以上、20K において水素は 5083 溶接部、5454 溶接部のいずれに対しても機械的特性に影響を与え ないことがわかった。 以下に、特許・論文、実用新案等について、年度毎の件数及びリストを記載する。 (1)研究項目別論文、講演、特許、報道の件数一覧 特許 新聞発表 0 論文発表 口頭発表 出願済 登録 実施 国内 海外 4 0 0 6 7 52 (2)年度別研究項目別成果総括表 年度 新聞発表 特許出願 口頭発表 論文発表 出願済 登録 実施 国内 海外 H11 0 0 0 0 0 2 9 H12 0 2 0 0 2 1 15 H13 0 0 0 0 0 4 10 H14 0 2 0 0 4 0 18 計 0 4 0 0 6 7 52 263 (3)論文発表リスト a. 査読のある原著論文 1)J.He, G.Han, S.Fukuyama, and K.Yokogawa "Tensile behavior of duplex stainless steel at low temperatures" Materials Science and Technology, Vol.15,(1999), pp.909-920 2) J.Hu, S.Fukuyama, K.Yokogawa and S.Okamoto "Hydrogen embrittlement of a single crystal of iron in nanometer scale at a crack tip by molecular dynamics" Modeling and Simulation in Materials Science and Engineering, Vol.7, (1999), pp.541-551 3) D.Sun, G.Han, S.Vaodee, S.Fukuyama and K.Yokogawa "Tensile Behavior of Type 304 Austenitic Stainless Steels in Hydrogen Atmosphere at Low Temperatures." Materials Science and Technology, Vol.17, (2000), pp.302-308 4) X.Xu, M.Wen, J.Hu, S.Fukuyama and K.Yokogawa "Atomistic Process on Hydrogen Embrittlement of a Single Crystal of Nickel by the Embedded Atom method." Computational Materials Science, (2001) 5) M.Wen, X.Xu, S.Fukuyama and K.Yokogawa " Embedded-Atom Potential for bcc Iron-Hydrogen System and Its Application to Hydrogen Embrittlement." Physical Review B, (2001) 6) 籔本政男, 横川清志, 緒形俊夫, 中川英樹, 江口晴樹, 藤井秀樹, 岡口秀治, 石尾光太郎, 林 稔, 斉藤正洋、"液体水素輸送・貯蔵用極低温材料の開発" 圧力技術 38 巻 5 号, (2002), pp59-67 7)X.Xu, M.Wen, S.Fukuyama, K.Yokogawa "Simulation of hydrogen embrittlement at crack tip in nickel single crystal by embedded atom method" Materials Transactions Japan Institute of Metals, vol.42, (2001), No.11, pp.2283-2289 8)X.Xu, M.Wen, S.Fukuyama, K.Yokogawa "Embedded-Atom-Method functions for bcc Iron and Hydrogen" J. Materials Research, vol.16, (2001), No.12, pp.3496-3502、 9) 福山誠司, 張 林, 文 矛, 横川清志 "室温高圧水素雰囲気下における SUS304 の引張挙動" 日本金属学会誌, 2003 年 10) 福山誠司, 張 林, 文 矛, 横川清志 "Fe-Cr 合金の水素環境脆化に及ぼすクロムの影響"日 本金属学会誌, 2003 年 b. 査読のない原著論文 1) 籔本政男, 横川清志, 緒形俊夫, 中川英樹, 江口晴樹, 藤井秀樹, 岡口秀治, 石尾光太郎, 林 稔, 斉藤正洋 "液体水素輸送・貯蔵用極低温材料の開発" 圧力技術,Vol.38, No.5, (2000), pp.59-67. 2) 籔本政男 3)田中純 "WE-NET(水素エネルギー)" 特殊鋼,Vol.49, No.7, (2000), pp.47-49. "液体水素輸送・貯蔵用低温材料の開発" pp.199-203. c. 総説、解説、著書 なし 264 ペトロテック,Vol.25, No.3, (2003), d. 国際学会プロシィーディングス なし e. その他(報告書、社内報等) 1) 中川英樹, 横田博史 "オーステナイト系ステンレス鋼の極低温特性" 愛知製鋼技報, (2003) (4)口頭発表リスト 1) 林 稔、土公武宜、石毛健吾、緒形俊夫 : "5083溶接部の低温特性におよぼす水素チャージの 影響"、軽金属学会第96回春期大会、1999 年5 月15 日 2) 大山耕史、林稔、飯田雅、江口晴樹 : "5083溶接部の低温特性におよぼす溶接ワイヤ組成の影 響"、軽金属学会第96回春期大会、1999 年5 月15 日 3) 孫東昇、福山誠司、横川清志 : "ニオブの低温水素環境脆化"、日本金属学会1999年秋期大会、 1999 年11 月20 日 4) 斉藤正洋、中川英樹、藤井秀樹、岡口秀治、和田洋流、緒形俊夫 : " オーステナイト系ステン レス鋼溶接部の低温特性に及ぼす溶接法の影響(WE-NET 低温材料に関する研究-6)"、日本鉄鋼 協会第138回秋季講演大会、1999 年11 月20 日 5) 岡口秀治、緒形俊夫、中川英樹、藤井秀樹、斉藤正洋、籔本政男 : " オーステナイト系ステン レス鋼TIG,SAW溶接部特性に及ぼす水素チャージの影響(WE-NET 低温材料に関する研究-7)"、 日本鉄鋼協会第138回秋季講演大会、1999 年11 月20 日 6) 藤井秀樹、中川英樹、緒形俊夫、籔本政男、斉藤正洋、岡口秀治 : " オーステナイト系ステン レス鋼の液体水素中における疲労特性(WE-NET 低温材料に関する研究-8)"、日本鉄鋼協会第138 回秋季講演大会、1999 年11 月20 日 7) 石尾光太郎、斉藤正洋、中川英樹、緒形俊夫、江口晴樹、籔本政男 : "オーステナイト系ステ ンレス鋼の相変態に及ぼす水素チャージの影響(WE-NET 低温材料に関する研究-9)"、日本鉄鋼 協会第138回秋季講演大会、1999 年11 月20 日 8) 孫東昇、福山誠司、横川清志 : "オーステナイト系ステンレス鋼の低温水素環境脆化特性(WE-NET 低温材料に関する研究-10)"、日本鉄鋼協会 第138回秋季講演大会、1999 年11 月20 日 9) 緒形俊夫、由利哲美、斉藤正洋、平山義明、江口晴樹 : "オーステナイト系ステンレス鋼溶接 部の小型破壊靭性試験片による極低温における破壊靭性と水素チャージの影響(WE-NET 低温材料 に関する研究-11)"、日本鉄鋼協会第138回秋季講演大会、1999 年11 月20 日 10) 林 稔、大山耕史、江口晴樹、石毛健吾 : "5083溶接部の低温特性におよぼすFe,Si量の影響 "、軽金属学会第98回春期大会、2000年5 月13 日 11) X.Xu, M.Wen, J.Hu, S.Fukuyama and K.Yokogawa : "Molecular Dynamics simulations on Hydrogen Embrittlement of Nickel by the Embedded Atom" , IUMRS-6th International Conference in Asia, International Union of Materials Research Societies, 香港市城大学,香港大学, 2000 年7 月23 日 12) M.Wen, X.Xu, S.Fukuyama and K.Yokogawa : "An EAM Potential for α Fe-H and its Application to Hydrogen Embrittlement"、日本金属学会2000年秋期大会、2000年10 月1 日 265 13) Y.Hirayama, M. Saito, H.nakagawa, H.Fujii, S.Okaguchi, Y.Wada, T.Ogata, and M.Yabumoto: "Effect of Welding Method on the Mechanical Properties at Low Temperature of Welded Joints of Austenitic Stainless Steels. (Study on Low Temperature Materials Used in WE-NET 8 ) ", 13th World Hydrogen Energy Conference, 北京,2000年6 月12 日 14) S.Okaguchi, T.Ogata, H.Nakagawa, H.Eguchi, H.Fujii, Y.Wada, M.Saito and M.Yabumoto : "Effect of Hydrogen Charging on Mechanical Properties of Weld Metal of Austenitic Stainless Steels. (Study on Low Temperature Materials Used in WE-NET9) "、13th World Hydrogen Energy Conference, 北京,2000年6 月12 日 15) K.Ishio, Y.Wada, Y.Tanaka, H.Fujii, T.Ogata, H.Eguchi, M.Saito, S.Okaguchi, H.Nakagawa and M.Yabumoto : "Effect of Hydrogen Charging on Martenstic Transformation of Austenitic Stainless Steels. (Study on Low Temperature Materials Used in WE-NET10) ",13th World Hydrogen Energy Conference, 北京,2000年6 月12 日 16) M.Hayashi, K.Ooyama, M.Yabumoto, T.Iida and H.Eguchi : "Effect of Impurities on Fracture Toughness at Low Temperature in 5083 Aluminum Alloy and Its Weld Metals. Temperature Materials Used in WE-NET11) ",13 th (Study on Low World Hydrogen Energy Conference, 北京, 2000年6 月12 日 17) H.Eguchi, K.Ishige, M.Yabumoto, T.Doko, M.Hayashi, T.Iida and K.Tsuchiya : "Hydrogen Charged Effects on Mechanical Properties of 5083 Aluminum Alloy and Its Weld Metals. (Study on Low Temperature Materials Used in WE-NET12) ",13th World Hydrogen Energy Conference, 北京,2000年6 月12 日 18) D.Sun, G.Han, D.Fukuyama and K.Yokogawa : "Hydrogen Environment Embrittlement of Austenitic Stainless Steels at Low Temperatures. (Study on Low Temperature Materials Used in WE-NET13)", 13th World Hydrogen Energy Conference, 北京,2000年6 月12 日 19) D.Sun, D.Fukuyama and K.Yokogawa Low Temperatures", 13 th : “Hydrogen Environment Embrittlement of Niobium at World Hydrogen Energy Conference, 北京、2000年6 月12 日 20) X.Xu, M.Wen, Z.Hu, D.Sun, S.Fukuyama and K.Yokogawa : "Molecular Dynamics Simulations on Hydrogen Embrittlement of Nickel", 13th World Hydrogen Energy Conference, 北京,2000 年6 月12 日 21) 中川英樹、藤井秀樹、岡口秀治、平山義明、石尾光太郎、緒形俊夫、薮本政男 : "オーステ ナイト系ステンレス鋼のMIG溶接部の極定温特性(WE-NET 低温材料に関する研究-12)"、日本鉄 鋼協会第140回秋季講演大会、2000年10 月2 日 22) 藤井秀樹、斉藤正洋、緒形俊夫、石尾光太郎、岡口秀治、中川秀樹、薮本政男 : "オーステナ イト系ステンレス鋼厚板の CO2 レーザー溶接継手作製と極低温引張特性 (WE-NET 低温材料に関 する研究-13)"、日本鉄鋼協会 140 回秋季講演大会、2000 年 10 月 2 日 23) 高橋達也、石尾幸太郎、平山義明、藤井秀樹、中川英樹、岡口秀治、横川清志、緒形俊夫、薮 本政男 : "オーステナイト系ステンレス鋼 CO2 レーザー溶接部の極低温靭性(WE-NET 低温材料に 関する研究-14)"、日本鉄鋼協会第 140 回秋季講演大会、2000 年 10 月 2 日 266 24) 緒形俊夫、由利哲美、斉藤正洋、平山義明、江口晴樹 : "SUS304L 鋼溶接部の極低温における 小型試験片による破壊靭性と水素チャージの影響(WE-NET 低温材料に関する研究-15)"、日本鉄 鋼協会第 140 回秋季講演大会、2000 年 10 月 2 日 25)M.Wen, X.Xu, D.Fukuyama and K.Yokogawa :" Molecular dynamics simulations on hydrogen embrittlement of iron and nickel by embedded atom method " ICMAT 2001, International Conference on Materials for Advanced Technologies, Materials Research Society (Singapore), 2001 年 7 月 1 日 26)M.Wen, X.Xu, D.Fukuyama and K.Yokogawa :" A new embedded-atom potentials for hydrogen and iron ",ICMAT 2001, International Conference on Materials for Advanced Technologies, Materials Research Society(Singapore),2001 年 7 月 1 日 27) H.Fujii and H. Nakagawa :" Evaluation of Mechanical Properties of Structural Materials in Liquid Hydrogen",Hydrogen Power Theoretical and Engineering Solutions International Symposium,2001 年 9 月 11 日 28)奥野寛人、高橋達也、石尾光太郎、平山義昭、藤井秀樹、中川英樹、岡口秀治、横川清志、緒 形俊夫、田中純 :"完全オーステナイト系溶接金属の極低温特性(WE-NET 低温材料に関する研 究-16)"、日本鉄鋼協会第 142 回秋季講演大会、2001 年 9 月 23 日 29)中川英樹、藤井秀樹、岡口秀治、平山義明、高橋達也、江口晴樹、緒形俊夫、田中純 :"オー ステナイト系ステンレス鋼の減圧電子ビーム溶接部の極低温靭性(WE-NET 低温材料に関する研究 -17)"、日本鉄鋼協会第 142 回秋季講演大会、2001 年 9 月 23 日 30)藤井秀樹、中川英樹、平山義明、緒形俊夫、岡口秀治、田中純、奥野寛人 :"オーステナイト 系ステンレス鋼TIG溶接金属の液体水素中における疲労特性(WE-NET 低温材料に関する研究 -18)"、日本鉄鋼協会第 142 回秋季講演大会、2001 年 9 月 23 日 31)孫東昇、福山誠司、横川清志 :"SUS316 型オーステナイト系ステンレス鋼の低温水素環境脆化 (WE-NET 低温材料に関する研究- 19)"、日本鉄鋼協会第 142 回秋季講演大会、2001 年 9 月 23 日 32)緒形俊夫、由利哲美、小野嘉則、斉藤正洋、平山義明、江口晴樹 :"SUS304L 鋼溶接部の極低 温における破壊靭性と水素チャージの影響(WE-NET 低温材料に関する研究-20)"、日本鉄鋼協会 第 142 回秋季講演大会、2001 年 9 月 23 日 33)文 矛、許学軍、福山誠司、横川清志:"EAMポテンシャルによる鉄中の転位と水素の相互作 用のMDシミュレーション"、日本金属学会第 129 回秋期大会、2001 年 9 月 23 日 34)M.Hayashi, K.Ooyama, H.Eguchi and H.Fujii :" Mechanical properties of Friction Stir Welded 5083 Aluminum Alloy at Cryogenic Temperatures"、3rd International Friction Stir Welding Symposium, 2001 年 9 月 27 日 35)林 稔、大山耕史、江口晴樹、石毛健吾 :"5454 アルミニウム合金溶接部の極低温における 機械的特性"、軽金属学会第 102 回春期大会、2002 年 5 月 19 日 36)S.Okaguchi, J.Tanaka, H.Fujii, H.Nakagawa, H.Okuno, Y.Hirayama, H.Eguchi, M.Hayashi, T.Ogata and K.Yokogawa (cryogenic materials working group in WE-NET program) :" Development of cryogenic materials for liquid hydrogen transportaion and storage "14th World Hydrogen Energy Conference, 2002 年 6 月 10 日 267 37 )M. Hayashi and K.Oyama (cryogenic materials working group in WE-NET program) :" Mechanical propertied of friction stir welded 5083 aluminum alloy at cryogenic temperatures " 14th World Hydrogen Energy Conference, 2002 年 6 月 10 日 38)H.Okuno, H.Koeda, T. Takahashi, Y. Hirayama, H.Fujii, H. Nakagawa, S.Okaguchi, T. Ogata and J. Tanaka (cryogenic materials working group in WE-NET program) : " Mechanical properties of fully austenitic weld metal at low temperature "14th World Hydrogen Energy Conference, 2002 年 6 月 10 日 39)H. Nakagawa, H.Fujii, S.Okaguchi, Y. Hirayama, H.Okuno, H.Eguchi, T. Ogata and J. Tanaka (cryogenic materials working group in WE-NET program)" :Mechanical properties of reduced pressure electron beam weld metals of austenitic stainless steels at cryogenic temperature "14th World Hydrogen Energy Conference, 2002 年 6 月 10 日 40)H.Fujii, H. Nakagawa, Y.Hirayama, T.Ogata, S.Okaguchi, J. Tanaka and H.Okuno (cryogenic materials working group in WE-NET program) :" Fatigue properties of austenitic stainless steel plates and their welds in liquid hydrogen "14th World Hydrogen Energy Conference, 2002 年 6 月 10 日 41 ) S. Fukuyama, D. Sun and K. Yokogawa (cryogenic materials working group in WE-NET program) :" Hydrogen environment embrittlement of thpe 316 series austenitic stainless steels at low temperature "14th World Hydrogen Energy Conference,2002 年 6 月 10 日 42)T.Ogata, T.Yuri, M.Saito, Y.Hirayama and H.Eguchi (cryogenic materials working group in WE-NET program) :" Effect of hydrogen charging on fracture toughness obtained by small specimen of SUS304L "14th World Hydrogen Energy Conference,2002 年 6 月 10 日 43)H.Eguchi, M. Hayashi, K.Oyama, K.Ishige, H.Fujii and J. Tanaka (cryogenic materials working group in WE-NET program) :" Mechanical properties of friction stir welded 5083 aluminum alloy at cryogenic temperatures "14th World Hydrogen Energy Conference,2002 年 6 月 10 日 44)藤井秀樹ほか :" WE-NET における液体水素貯蔵・輸送容器用極低温材料開発"、2002 年度低 温工学・超電導学会秋季講演大会、2002 年 11 月1日 45)奥野寛人ほか :"完全オーステナイト系溶接金属の極低温強度と靱性"、2002 年度低温工学・ 超電導学会秋季講演大会、2002 年 11 月1日 46)中川英樹ほか :"ステンレス鋼の減圧電子ビーム溶接部の極低温特性"、2002 年度低温工学・ 超電導学会秋季講演大会、2002 年 11 月1日 47)福山誠司ほか :"オーステナイト系ステンレス鋼の低温水素脆化"、2002 年度低温工学・超電 導学会秋季講演大会、2002 年 11 月1日 48)緒形俊夫ほか :"水素チャージしたステンレス鋼溶接部の小型試験片による極低温破壊靱性評 価"、2002 年度低温工学・超電導学会秋季講演大会、2002 年 11 月1日 49)櫻井剛、神谷祥二、堀口誠志、藤井秀樹 :"大型液体水素貯蔵タンク用断熱材の低温強度特性 "、2002 年度低温工学・超電導学会秋季講演大会、2002 年 11 月 1 日 268 50)藤井秀樹ほか :"工業用純チタンおよび Ti-6Al-4V ELI の液体水素中における機械的性質"、 日本鉄鋼協会第 145 回講演大会、2003 年 3 月 29 日 51)岡口秀治ほか :" WE-NET における液体水素貯蔵・輸送容器用極低温材料開発"、第 22 回水素 エネルギー協会大会、2002 年 12 月 11 日 52)田村元紀:"水素貯蔵・輸送容器用材料開発"、固体高分子形燃料電池/水素エネルギー利用成 果報告会、2003 年 3 月 12 日 (5)特許出願リスト(名称、出願番号、発明者名) 1) 江口晴樹、石毛健吾、飯田雅、土屋和之、林稔、戸次洋一郎、藤井秀樹(共同)「低温液化ガス 用容器」、特願平12-86572 、2000 年3 月27 日出願 2) 石尾光太郎、藤井秀樹、斉藤正洋、岡口秀治(共同)「極低温靭性に優れたステンレス鋼溶接継 手およびその製造方法」、特願平12-104424 、2000 年4 月6 日出願 3)文 矛、横川清志、福山誠司 「計算機援用材料科学における結晶解析方法」、特願平2002-163200、 2002 年6 月4 日出願 4)横川清志、福山誠司 「材料試験用高圧雰囲気容器」、特願平2002-243563、2002 年8 月23 日 出願 (6)「ノウハウ(知的所有権等)」リスト なし (7)その他報道等の概要 a.新聞発表 なし b.カタログ(製品)発表 なし 11−1. 事業全体の成果(タスク11) 11-1.1.1 3mass%級の水素吸蔵合金の開発 (1)V系水素吸蔵合金 V-10at%Ti-12.5at%Cr-3at%Mn 合金が開発された。この合金は 273K、3.3MPa の水素雰囲気で 2.9mass%の水素を吸収し、373K、0.1MPa で 2.58mass%の水素を放出する。この合金の 1,000 サイク ル繰り返し水素吸蔵放出後の有効水素吸蔵量の低下は初期性能の 10%以下で、良好な耐久性を示し た。また、1000 サイクル後の微粉化も従来合金が 1μm 以下になるのに対して 100μm のままで微粉 化が進まない。爆発性・発火性・引火性もなく(消防法 危険物の規制に関する制令 判定試験) 、安 全で使い易い材料であることが確かめられた。 (2)Ti-Cr系水素吸蔵合金 つづいて、高価な V 量の少ないTi30Cr50V20∼Ti24Cr36V40 合金が開発された。これら の合金は製造プロセスの改善(帯溶融炉(FZ)での溶製と高温短時間熱処理)によって 20℃、4.0MPa 269 の水素吸収、100℃、大気圧での水素放出で 2.77mass%の有効水素吸蔵量をもつまでに特性改良され た。また、TiCrV合金とほぼ同等の有効水素吸蔵量をもつVを含有しないTiCrMo合金も 開発され、低コスト合金への歩みが進められた。 Hydrogen Content 0.00 373 K, 0.01 MPa 293 K, 3.3 MPa / MPa 2.64mass% 2.64 mass% 2.58mass% 2.5 mass% Hydrogen Pressure 373 K, 0.1 MPa 3.3 P / MPa 1 373 K 293 K 0.1 273 K 0.01 0 1 2 0.75 1.00 / H/M 1.25 1.50 1.75 測定温度:50℃ 熱処理⇒WQ FZ材(引き下げ速度12mm/h) 10 0 10-1 10-2 10-3 0 1 3 2 Hydrogen Content C H (mass% ) 図1 0.50 10 1 273 K, 3.3 MPa 2.9 2.9mass% mass% 373 K, R.P. 0.25 図2 V系開発合金の水素吸蔵放出特性 3 / 4 mass% TiCr系開発合金の水素吸蔵放出特性 11-1.2 5.5mass%級水素貯蔵材料の探索研究 (1) 積層薄膜合金と重ね冷間圧延法 V/Pd 積層薄膜 in-situ 水素吸蔵ナノ複合化多層薄膜作製評価装置を用い Pd(50nm) /Mg(200nm)/Pd(50nm)薄膜、 Pd(10nm)/Mg(200nm) /Pd(10nm) 薄膜を合成した。水素化は 100℃、0.1MPa、脱水素化は 100℃、真 空で行った。水素吸蔵量は Mg 層において 4.5-4.6mass%(Pd 層を含めると 1.3-2.8mass%)で、すべ ての水素が 150℃以下で放出した。薄膜積層化により Mg の水素放出温度を著しく低下できることが 判明した。 また、Pdと V の箔の重ね冷間圧延法(超積層法)でナノオーダー厚さの積層薄膜 V-15at% Pd 合金を製造する技術を開発した。この方法で作製した試料は 140℃で 0.1MPa 付近で水素が解離して おり、実用性の高い重ね冷間圧延法での積層薄膜水素吸蔵合金開発の可能性が出てきた。 (2)Mg系新規構造水素吸蔵合金 水素吸蔵可能な構造を持つ合金について、 表1 理論水素吸蔵量を計算し、どのような合金が 目標である 5.5mass%以上の水素吸蔵量を達 2 元合金系の理論水素吸蔵量 合金作製法 成可能かを検討した(表 1)。 これらの合金系 の中から、メカニカルアロイング法によって Mg-Ti 系の新 しい合金の創生に成功し、BCC構造を持つこ 溶解法で作製可能な 合金系 とが確認された。組成・構造的にみて4∼5% 級の高容量が期待されるので、引き続き水素の 吸放出特性を調査中である。 メカニカルアロイング法によ り作製可能な合金系 270 水素吸蔵量(H/M=1∼2) Mg2Al3 (3.9∼7.8mass%) CaMg2 (3.4∼6.8mass%) CaAl2 (3.2∼6.4mass%) etc Mg-V(2.7~5.3mass%) Mg-Ti(2.8~5.5mass%) Mg-Ni(2.4∼4.8mass%) etc (3) Ca-Mg系新合金 Mg-Ca-Ni 三元系のラーベス相のひとつで水素吸蔵量が5mass%以上ある CaMg2 相を含んだ合金に ついて種々の元素添加による特性改善を試みた。その結果、Ca と Mg を多元素で置換した (Ca1-xAx)Mg2CZ 合金に室温で約4∼5mass%の水素を吸蔵するものを見出した。さらに本合金は、水 素を吸蔵しても分解(不均化)を起こさず C14 構造を維持(約 13%の体積膨張)していることがわか り、5.5mass%合金探索の手がかりを得た。 (4) 超高圧合成高容量金属水素化物 これまでの材料探索において用いられてきた作成温度、構成元素および組成等のパラメータに加 えて、高圧法を用いた材料探索は圧力という状態変数が加わることにより探索の自由度が増し、大 気圧下では合成できない化合物を得られる可能性が高い。GPa の圧力領域ではアルカリ金属および アルカリ土類金属の体積変化率が 10%以上にもおよび、原子間および分子間の距離を大きく変化さ せることができる。また水素の化学ポテンシャルが急激に上昇することから、これまで存在しなか った高水素含有化合物が合成される可能性がある。たとえば次のような化合物が合成されたと仮定 して電気的中性条件で理論的に水素含有量を算出すると非常に大きな水素量になる(Mg-Sc 系: Mg2ScH7(7.01mass%)、MgSc2H8(6.59mass%)、Mg-Ti 系:MgTi2H6(4.79mass%)、Mg-V 系:MgV2H6(4.57mass%)、 MgVH7(8.57mass%)、Mg3V2H16(8.45mass%)、等)。 高圧発生装置はオートクレーブ式とアンビル式に大別される。前者が水素ガスを圧縮することに より 0.3GPa 程度の圧力を得られるのに対して、後者は固体圧力媒体を用いることにより、封入した セル内において数 GPa 以上の高圧水素雰囲気を得ることができる。現在のところアンビル式による 水素化物合成の報告は数例にとどまっており、今後の研究進展が期待できる。 (5) 水素錯体化合物 Naアラネート(NaAlH4)は 5.5mass%の水素貯蔵能力をもっており、33℃-100℃ 1 気圧の 水素平衡圧と温度の関係をもつことが判明して実用的条件で水素吸放出の実現する可能性がでてき た。反応機構の基礎的解明が進展してきたので、さらに触媒添加技術の改良が進んで、課題となっ ている反応速度が改善されれば実用性が高まる。もうひとつの課題である再水素化反応速度は 100℃-100 気圧-2 時間まで改良され、実用化領域までもう一息のところまで開発されてきた。不明 であった繰り返し特性も 50 回まで劣化のない吸放出が確認された。 Naよりも軽量なLiアラネート(LiAlH4)は組成からは8mass%の水素貯蔵量が期待でき るが、可逆的な水素吸放出の可能性は疑問視されていた。しかしながら、Ti塩触媒添加で試料作 成方法の最適化や反応機構の解明により可逆的な水素吸放出の現象が見出され、高容量水素吸蔵材 料に発展する可能性が出てきて、大きな期待がもてるようになった。 また、10gレベルの少量実験でNaAlH4 系材料での水素貯蔵システム化技術の基礎検討がす すみ、安全性・取り扱い技術・廃棄処理技術が確立されて危険事象と安全対策の予測とチェックお よび安全マニュアルの作成ができた。さらに、100g容器によるスケールアップの影響・効果の 検討が進み、kg 規模の容器設計に必要なデータの集積と実機タンクの可能性に道が開けた。 (6) 有機系水素貯蔵材料 ナフテン系(シクロヘキサンやメチルシクロヘキサンなど)は理論水素含有量が 7mass%以上あり、 水素化・脱水素反応は可逆的に進行できるので水素輸送貯蔵システムへの適用が有望視されている。 271 しかしながら、反応温度の低温化・脱平衡化による反応進行の促進・高純度水素を得るための水素 分離精製、等が技術課題とされている。これらの課題を同時に解決する技術手段としてメンブレン リアクター方式の開発に取り組んできた。高純度アルミナ製多孔質チューブにパラジウム薄膜を蒸 着した低コスト高性能の反応管を開発し、1 気圧で 60%、減圧回収で 90%を超える水素回収率 (6.5mass%相当)が得られた。さらに、低コスト非パラジウム系水素透過膜材料を開発するために コンピュータシミュレーションによる水素透過シミュレーション手法を開発し、新規な水素分離用 膜材料の探索・設計への手法に見通しを得た。 (7) ナノ構造化黒鉛 80 時間の水素雰囲気中で黒鉛をメカニカル・ミリング処理することによりナノオーダーの間隙サ イトを人工的に導入し、水素吸蔵量が 7.4 mass%におよぶナノ構造化黒鉛を開発した。水素の吸着 位置にはナノ構造化した黒鉛のグラフェン・エッジに強く C-H 共有結合したサイトと黒鉛グラフェ ンシート間の欠陥に弱く化学結合したサイトの 2 つが存在していることが判明し、黒鉛の構造に欠 陥が導入されることによる吸放出の比較的容易な新しい水素吸着機構の存在がはじめて示された。 WE-NET での構造改善による新しい水素吸着機構導入の考え方は世界での水素吸蔵用ナノ炭素材料 のひとつの指導指針となってきている。この材料は 300℃から水素放出を開始するが、高圧水素ガ ス圧下でミリングすると物理吸着した水素(室温で速やかに吸放出する水素)の量が圧力とともに 増加し、6 MPa の水素圧力下でミリングすると約 0.5∼1.0 mass%に達した。さらに、Ni および Si を添加することによって水素放出温度が低温化することが見出された。Ni や Si 添加による水素放 出温度の改善も材料設計への新たな指針になりうる可能性がある。 (8) アモルファスカーボンナノチューブ ナノチューブの壁が 1 枚の黒鉛結晶面からなる通常のカーボンナノチューブとは異なってアモル ファス状の炭素壁の中に積層数が 2∼3 の小さな炭素網面が分散し炭素網面自体の構造の乱れ(五員 環やカルボニル等の官能基が炭素網面内あるいは網面のエッジに結合している状態)が少ないもの が水素吸蔵能をもつことが判明した。この構造のナノチューブは開発者側での測定結果では常温1 0MPa での水素吸着後、常温常圧下で 3.1mass%の水素放出を繰り返し示した。ナノチューブの壁の 中に多くのナノ構造欠陥とナノサイズの黒鉛構造が混在していることが水素吸着能の向上をもたら していると考えられる新しい炭素材料である。まだ再現性の検証が進んでいないが、もし複数のチ ャンスで製造されたサンプルについて複数機関で再現性のある有望な水素吸蔵特性が示されれば世 界ではじめて実用性をもつカーボンナノチューブになる。 (9) 炭素材料の水素量測定技術と高性能な炭素材料の構造への指針 同一試料の複数機関での測定・評価法を比較検討することにより、 (イ)精確な温度制御と充分な 平衡待ち時間、(ロ)精確な圧力と容積の測定、(ハ)信頼できる気体の状態方程式の使用、(ハ)試 料管容積の決定、が重要であることが判明した。ひきつづきこれらの諸点に留意して相互検証を進 めて信頼性の高い性能評価法を確立し、それによって有望な材料の探索評価を推進するとともにさ らに高性能な炭素材料の構造に対する指針を得ることによって新材料の開発を支援してゆくことが 大切である。WE-NET でのわずか2年の研究からでも、高性能な炭素材料の構造について「比表面 積やマイクロポア容積の極めて高い、あるいは欠陥密度の高いナノ構造」という非常に重要な指針 が得られており、今後の展開が期待されよう。 272 11−2. 研究開発項目毎の成果(タスク11) 11-2.1 3mass%級水素吸蔵合金の開発 ① V基BCC合金の開発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ㈱イムラ材料開発研究所 有効水素吸蔵量が3 mass%に近い値を持つ合金(V-10at.% Ti-12.5at.% Cr-3at.% Mn 合金で2.5mass%、 V-10at.% Ti-11at.% Cr-2at.% Mn-1.5at.% Ni 合金で2.3mass%。有効水素吸蔵量は、20 ℃、3.0MPa で 吸蔵した状態から、100 ℃、0.1MPaで放出した状態の差と定義)を開発した。この合金の特徴を列 挙すると、以下の通りである。 (A)質量あたりの水素吸蔵量が非常に高い。(有効水素吸蔵量2.5 mass%) (B)1000サイクルの水素吸蔵放出の後、 初期値の90%以上の残存容量があり、 耐久性が優れている。 (C)合金内水素の有効体積密度が標準状態の水素の1/1300程度で、従来合金よりも体積効率が高 い。 (D)水素の吸蔵状態、および水素を放出した状態で、引火性や発火性がなく、極めて安全性が高 い。 (E)水素吸蔵と放出による微粉化は、従来合金と比べて進行しない。このため、熱伝導の劣化が 良好に保たれ、フィルターの目詰まりや、合金粉末の飛散防止が容易である。 (F)炭素繊維と混合することで、反応速度を向上させることが可能である。 このように、この開発合金は、質量的にも体積的にも非常に高い有効水素吸蔵量を持ち、従来合 金より軽量・コンパクトに水素を貯蔵することができる。安全性が優れ、反応速度や水素吸蔵量の 劣化が少なく、微粉化がある程度以上進行しないなどの優れた実用特性をもっており、水素貯蔵用 の合金として優れている。 BCC構造の合金は、現在では学会の水素吸蔵合金の大きな一分野となっている。バナジウム系合金のほ かに、例えば、Ti-Cr系、Mg系において、結晶構造をBCC化することにより高い水素吸蔵量を目指す方法が 取られるケースも多い。このように、学会や研究開発手法に与えた影響も無形の成果である。また、大阪科 学技術センターが経済産業省の委託を受けて行った「非鉄系新素材の知的整備事業」において、次世代 の高容量合金として、タンクに充填しこの特性が評価された。次世代の高容量合金として強く期待されてい る。 ② Ti-Cr基BCC合金の開発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ㈱日本製鋼所 室温近傍で高容量の水素吸蔵を示す BCC 構造を有する Ti-Cr 系合金の開発を行った。平成 11∼ 12 年度には、Ti-Cr-V 系合金の開発を中心に行い、種々添加元素の効果や合金中の酸素の影響、最 適な熱処理条件を明らかにした。Nb の添加において耐久性の改善が認められることや、高温・短 時間の熱処理により吸蔵量が増大することを見出した。また水素吸放出サイクルに伴い、反応熱Δ H が変化することや、その変化の度合いが熱処理後の冷却速度の違いにより変化することなどを見 出し、水素吸蔵量増加のみならず耐久性等の実用化技術についても開発を行った。 平成 13 年度には、高価な V の代わりに安価な Mo を構成元素として用いた Ti-Cr-Mo 合金の開発 を行い、Ti-Cr-V 系と同等な特性を持つことや、水素の吸放出メカニズムの違いについて明らかに し、その特性を世界に先駆けて発表し、2002 年にモントリオールで開催された第 14 回世界水素エ 273 ネルギー会議において poster award を受賞した。Ti-Cr-Mo 合金はプラトー領域が Ti-Cr-V 系と同 等であるが、固溶領域が少ないという特徴があることや、水素吸放出サイクルによる劣化傾向が Ti-Cr-V 系合金と異なることが明らかとなった。Ti-Cr-Mo 合金は、Ti-Cr-V 系合金などの一般的な 合金で経験則とされている平衡解離圧と格子定数との関係が成り立たないことから、水素占有サイ ト半径と平衡解離圧との関係を調査した結果、水素占有サイト半径と平衡解離圧が相対的な関係を 示すことがわかった。これは Ti-Cr-V 系合金などでも成立する考え方であり、水素吸蔵合金の新た な経験則を見出した。 平成 14 年度には、Ti-Cr-V 合金に対して FZ 溶解法という新たなプロセスを提案し、その開発を 行った。FZ 溶解により、合金成分の均質化や結晶の完全性などを向上させることにより、プラト ー部の平坦化や固溶水素量の減少による有効水素移動量の著しい増加が認められることが確認され た。また FZ 溶解条件(特に引き下げ速度)を最適化することにより、水素化特性が改善されるこ とがわかり、Ti33Cr33V33 合金において約 30%ものプラトー部の増加が認められた。V 量を 20at% ∼ 40at% ま で 変 化 さ せ た 合 金 に つ い て 調 査 し た 結 果 、 こ の 範 囲 で は V 含 有 量 の 多 い 合 金 (Ti24Cr36V40)の方が FZ 溶解による効果が大きいことが確認され、WE-NET 吸放出条件(20℃、 4MPa 吸収⇔100℃、大気圧放出)において、2.77mass%の水素移動量を達成した。 ③ Ca-Mg-Ni三元系合金の開発 ・・・・・・・・・・・・・・ 日本重化学工業㈱、住友金属工業㈱ (A)3mass%級の開発成果 平成11年度からの WE-NET 第Ⅱ期研究において Mg-Ca-Ni3元系合金に着目した。この合金 系は通常の溶解鋳造法あるいは反応焼結法で製造できることから、多種・多量の試料が作製可能に なり、結果として系統的な調査を行うことができた.その結果,室温で可逆的に水素を吸蔵・放出 する C15 型ラーベス構造を持った新規 Mg 系水素吸蔵合金(Mg1-xCax)Ni2 を開発した.本合金の 特徴は以下のとおりである. ・溶解鋳造に熱処理を組み合わせた方法で(Mg1-xCax)Ni2 を作製できた. ・Ca 量xが 0.33≦x≦1 の範囲では(Mg1-xCax)Ni2 は C15 相の単相であった. ・本合金の水素吸蔵量は x=0.33 の時に約 1.4mass%(40℃,3.5MPa)であった. ・水素吸蔵による不均化の有無が A,B サイトの原子半径比で整理できた. ・詳細な構造解析の結果より,A サイトでは Mg と Ca がランダムに存在していた. ・A サイトに Y を加えた(Mg0.6Ca0.3Y0.1)Ni2 組成合金では,上記(Mg1-xCax)Ni2 合金に比べ, プラトー圧の平坦性が改善できた.(吸蔵量は 40℃,3.5MPa で 1.3mass%) 11-2.2 3mass%を超える水素吸蔵合金の探索 (平成13年度から暫定目標を5mass%として予備検討開始、平成14年度に 5.5mass%と目標変更) ① V基のプラトー単一化拡大合金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ㈱イムラ材料開発研究所 バナジウム系合金をメカニカルミリングすることによって、1水素化物を不安定化させることが できた。さらにこれを熱処理することで、通常のバナジウム固溶体的な水素吸蔵特性を示すことが 確認できた。このことは,試料を酸化させることなくミリング及び熱処理が可能であることを示し 274 ており、ナノオーダーでの複合化した合金作製の基礎的な技術が確立したと言える。 V-Ti-Ni 合金や V-Ti-Ni-Mn 合金をメカニカルミリングにより一水素化物の不安定化させた試料を 熱処理して結晶性を回復させると、ミリング後の試料より水素吸蔵量を増大化できた。しかし、低 水素濃度域の水素の安定性が増し、通常のバナジウム固溶体的な水素吸蔵・放出特性を示すように なった。この場合より熱処理条件を緩くしても、充分結晶性を回復させた試料より大きなプラトー を得ることはできなかった。 これらのことから、ミリングによって短距離秩序、長距離秩序ともに 失った試料は1水素化物が不安定化するが、熱処理によって短距離秩序を回復させると1水素化物 の安定性が増し通常のバナジウム合金の挙動に戻ると解釈できる。鋳造合金(V-10%Ti-20%Cr, V-10%Ti-11%Cr-2%Mn-1.5%Ni)を水素中ミリングした結果、上記の合金同様、1水素化物を不安定化 させることに成功した。 結果的に、1水素化物を不安定化させて水素放出を容易にすることには成功したが、通常のバナ ジウム固溶体合金以上の水素貯蔵能力をだすことはできなかった。 ② ナノ複合化CaMg2 合金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 住友金属工業㈱ 従来より高容量ながら水素放出温度の高い合金の放出温度低下を目的として低温放出合金との複合 化が数多く試みられている。MgとLaNi5の複合が典型的であるが、新たな第三相が生成するため元の高 容量相と低温放出相の相互関係は明確とはなっていない。本研究において焼結法による予備実験の結 果、Ca2Mg3Ni4(CaMg2+CaMgNi4)の組成ではCaMg2とCaMgNi4の複合組織となることが判明した。CaMg2 の水素吸蔵量は5.4mass%ながら100℃以下では水素を放出しないが、CaMgNi4相は水素吸蔵量は約1mas s%であるが100℃以下で水素を放出する。この二相合金であれば不要な第三相の影響を受けることなく 両相界面での相互作用を観察できる可能性がある。目標値5.5mass%への手がかりとなる知見を得るこ とを目的として、CaMg2とCaMgNi4をボールミリングによって微細複合化且つ粒界面積を増加させ、CaM gNi4相水素放出に伴う体積減少でCaMg2相の水素放出温度低下させる検討を行った。 CaMg2、CaMgNi4の混合粉末をボールミリングした場合、水素雰囲気下のDSC測定においてそれぞれ の単体では観察されない水素放出が確認されたが、この現象は水素放出温度の低下ではなく、脱水素 反応速度の向上である可能性が高いことが判明した。将来のCa-Mg系合金の実用化に際して反応速度向 上の手法の一つとして利用できる可能は高いが、本研究の目標であった水素放出温度の低下は難しい と思われることから、この系の合金開発を中止した。 ③ Ca-Mg系新合金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 日本重化学工業㈱ C15 型ラーベス構造の(Mg1-xCax)Ni2 より軽量な合金系に着目し、5.5mass%級の水素吸蔵量を持 った合金の開発に取り組んだ結果、期待のもてそうなものと持てないものとの識別ができた。 (a) C14 型ラーベス構造の CaMg2 相を含んだ CaMg1.8Ni0.2 が室温で約 6mass%(H/M=1.9)の水素を吸 蔵することを見出した。しかし本合金は水素吸蔵後には不均化し,室温∼200℃での R.P.による排 気では水素を放出しなかった。Ca の一部を La で置換した(Ca0.8La0.2)Mg2.14Ni0.11 では水素吸蔵による 不均化を改善でき、室温で約 5mass%(H/M=1.8)の水素を吸蔵し、C14 型の水素化物を生成すること を見出した。しかし本合金は室温∼200℃での R.P.による排気では水素を放出せず、250℃以上では Mg 水素化物に分解した後、水素を放出した。 275 (b) C14 型ラーベス構造の CaLi2 相を含んだ CaLi1.65 は室温で約 6.7mass%(H/M=1.3)の水素を吸 蔵することを見出した。しかし本合金は水素吸蔵後には不均化し、室温∼80℃での R.P.による排気 では水素を放出しなかった。 (c) Mg-Li 系 BCC 固溶体相を含んだ合金(Mg60Li40,Mg53Ni39Li8,Mg47Li41Al12)が溶解法で作製 できた。しかし本合金は、0∼200℃,4MPa の条件で水素吸蔵は起こらなかった。 ④ 平均占有空間制御Ti−V合金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 松下電器㈱ 新規の高容量水素吸蔵合金の探索に当たり、結晶格子の大きさに着目した取組を実施した。結晶 格子の大きさを反映するものとして、結晶格子における構成元素一個当たりが占める空間の大きさ の平均値と定義する空間因子と呼ぶ値を用いた。WE-NET 第Ⅱ期が始まった平成11年度にまず、従 来の水素吸蔵金属をこの空間因子と水素平衡圧、すなわち動作温度との関係で整理した結果、相関 関係があることを明らかにした。それを踏まえそれ以降の高容量な水素吸蔵合金の開発では、この 空間因子を指針にしながら探索を始めた。平成13年度まで Ti-V 系合金に対する取組を行った結果、 空間因子の適正化が水素平衡圧の上昇、すなわち動作温度の改善に有効であることが具体的に確か められた。 平成 14 年度から 5.5%mass 級の水素吸蔵合金の開発を目指して Mg を主成分とする合金探索にシ フトし、開発する上での第一ステップとして 5.5%以上の最大吸蔵量を有する一段プラトーの Mg 系 合金を得ることを目標とした取組を実施した。種々の Mg 系合金を溶解法もしくはメカニカルアロイ ング法で作製し、PCT測定、組織分析、X線回折を行った。 単体の Mg 金属の粉末試料は250℃の PCT 測定において7.5%の水素吸蔵が可能であったが、放出時 に脱水素化反応速度が極めて遅く水素放出が殆どできなかった。従来から知られているように触媒 機能元素である Ni を添加すると Mg0.9Ni0.1合金は250℃のPCT測定で5.0%の水素吸蔵となるが、 放出時は放出曲線のプラトーは傾くものの5.0%全量の水素放出が可能となった。一方、今回取り組 んだ V あるいは C を添加した Mg 系合金はPCT測定において放出時のプラトーがNi添加合金以上 に大きく改善されることが新たにわかった。Mg-V 合金では250℃において最大吸蔵量が5.0%で、放 出時は放出曲線のプラトーが平坦となり、5.0%全量の水素放出が可能となった。また、V と C を複 合添加した Mg 系合金は250℃の PCT 測定で、水素吸蔵量が6.0%に増加し、また放出時も6.0%全量の 水素を放出することができた。V と C の両元素とも仮に Mg に固溶すれば空間因子を小さくする方向 に進める働きがある。従来から V は Mg に対して殆ど固溶しないと見られているが、金属組織の分析 から一部の V であるが Mg に大きく固溶する現象が見られた。現在までのところ多量の V あるいは C を Mg に固溶させるところまでには至っていないが、作製プロセスの改善で空間因子を小さくするこ れらの元素を Mg に固溶させられれば水素放出温度が大きく下がるものと期待できるが、いまのとこ ろこの手法だけで5.5mass%に到達できる結果は得られていない。 ⑤ Y系、Sr系、Al系、Mg-Ti系およびMg-V系の新規合金・・・・・・・・・ マツダ㈱ 新規高性能水素貯蔵材料(5.5mass%級)の開発を試みた。そのために、既存の合金系の改良では 達成困難と考え、新規な合金系の創出をめざした。そこで、水素吸蔵可能な構造を持つ合金につい て、理論水素吸蔵量を計算し、目標である 5.5mass%以上の水素吸蔵量を達成可能な合金系について 276 検討した。予備検討の結果、それら候補合金系の中から、Mg-Ti 系合金に期待がもたれた。 Mg-Ti 系合金は、Mg と Ti の融点の違い等から、二元系状態図では、金属間化合物等の存在は示 唆されていない。そこで、合金作製法として、メカニカルアロイング法を用いた。その結果、BCC 構造を持つ Mg-Ti 系合金と、Mg が固溶した Ti 相が形成される事を、初めて見出した。BCC 相を持つ 水素吸蔵合金は、V 系合金等で、H/M=2 の水素を吸蔵する事が知られている。Mg-Ti において同量水 素が吸蔵すると仮定すると、5.5mass%以上の水素吸蔵が可能になるが、室温、水素圧 5.0MPa の条件 では、水素化しなかった。水素化しない理由として、形成された BCC 相の格子定数が大きいためと 想定した。 そこで、Ti より原子半径の小さな Co を用い、Mg-Co 系での BCC 構造化等の検討を行った。 その結果、Mg-Co 系でも、メカニカルアロイング処理で BCC 構造が形成される事、特に、Mg0.6Co0.4 は、373K で、2.7mass%(H/M=約 1)の水素を吸蔵する事を、初めて明らかにした。本合金の水素吸蔵 量は、上述したように、理論的には H/M=2(5.5mass%)が可能であり、今後、第三元素添加等によ り、水素吸蔵量の向上を検討する。 このように、WE-NET 第Ⅱ期では 5.5mass%の高容量を期待できる新規合金系が存在することを示 すことができ、今後の開発への道筋をたてることができた。 ⑥ Pd(V)-Mg薄膜 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 広島県立西部工業技術センタ Pd(50nm)/Mg(200nm)/Pd(50nm)の試料を in-situ 水素吸蔵薄膜作製評価装置にて作製したのち,水 素化(0.1MPa,100℃,12h)−脱水素化(真空中,100℃,12h)を 10 回繰り返した試料について水 素放出特性(熱的昇温脱離分析)を測定した。その結果,初期の脱水素化過程と同様なプロファイ ルを示し,すべての水素は 150℃以下で脱水素化し,水素吸蔵量(H/Mg)も初期水素吸蔵量とほぼ 同等の 4mass%弱であった。このことから,少なくとも 10 回までの水素吸蔵放出においては,その 水素放出特性は持続するものと考えられた。 また,Pd量を減少させた Pd(10nm)/Mg(200nm)/Pd(10nm)の試料を作製したのち,水素化(0.1MPa,1 00℃,24h)して水素放出特性を評価した。その結果,Pd(50nm)/ Mg(200nm)/Pd(50nm)の試料と同様に, 150℃以下で脱水素化し,水素吸蔵量も4.5mass%とほぼ同等の脱水素化特性を示すことがわかった。 in-situ水素吸蔵ナノ複合化多層薄膜作製評価装置を用いて、Pd代替物質としてVを用いたV-Mg系薄 膜の水素化特性について検討した。水素化したV(25 nm)/Mg(200 nm)薄膜の初期脱水素化は270∼420 ℃でおこり、水素吸蔵量は0.7 mass%であり、水素化したPd(10 nm)/V(25 nm)/Mg(200 nm)薄膜は、1 00 ℃以下で水素を放出し、その水素吸蔵量は1.6 mass%であった。すなわち、Pd、VとMgをナノメータ ーサイズで複合化することで、PdとMgをナノメーターサイズで複合化した場合に比べ、水素吸蔵量は 少ないものの脱水素化温度は100 ℃以下まで低下することがわかった。 ⑦ Mg系薄膜積層合金(冷間圧延法)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ㈱イムラ材料開発研究所 さらに高容量(目標:有効水素吸蔵量 5.5 mass%以上(解離温度 150℃以下) )を目指して、バナ ジウム系およびマグネシウム系の合金にナノ構造を導入する研究を実施した。この成果として、マ グネシウム基の超積層水素吸蔵金属材料において、従来の Mg2Ni における 3.6 mass% を大きく上 回る約 6 mass% という高い吸蔵量(0.1 MPa での放出温度 300 ℃)を得た。また、(Mg-8 mass% Li-1 mass% Y)-Ni 系において Mg に比べて高い平衡圧を示すことを見出した。 277 超積層法による水素吸蔵合金の開発は、これまでに全く例がない独創的な研究である。この手法 は、表面酸化物の影響を低く抑えられる、合金組成やナノオーダーの組織制御が容易、連続的な高 い効率での生産性可能、などの特徴がある。そのため、高品質なナノオーダーの組織を持つ合金が 低コストにできる技術として、注目されている。 ⑧ Be系合金の試作・評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(外注)日本原子力研究所 (A) TiBe2 を水素吸蔵合金として使用した場合に想定されるリスク 生産工程においては製造・加工時に発生するヒューム・ダスト等の吸入曝露のリスクがあるが、 これについては、既存のベリリウムを含む材料と基本的に工程が変らない事から、法的、技術的に も現行方法で対応は可能と考えられる(安衛法、特化則)。 自動車などでの製品の使用時は、自動車または水素吸蔵タンクの火災や爆発のアクシデントによるT iBe2の大気への飛散や流出が考えられる。この場合、ベリリウムがTiBe2から遊離するか否かが重要で ある。500℃以下においては極めて安定であることを示すデータが得られているが、例えば爆発時に想 定される1,000℃以上の温度ではデータが十分揃っていないので、データ整備が必要である。また、ベ リリウムは一般的に蒸気圧が高いことが知られている。TiBe2はベリリウムに比べて蒸気圧は低いと考 えられるが、データがないのでデータの取得が必要である。いずれにおいても、使用時におけるリス クは自動車またはその構成装置のトラブル時であり、トラブルがない場合は何の問題もない。法的に は、現行法(大気汚染防止法、消防法、毒物・劇物取締法)の下では規制は全く無いが、今後の法令の 動向を見守る必要がある。 (B) TiBe2の水素吸蔵特性 小型真空アーク炉溶解・インゴット造塊(15-20g)でTiBe2合金を製造試作。種々の熱処理と活 性化処理を試みて水素吸蔵特性の向上をはかったが、最大水素吸収量は10MPa、200℃で1.4mass%に とどまり、A.J.Maelandらの文献値の15MPa×200℃で4.4mass%の水素吸蔵量は再現できなかった。 ⑨ 新三元系合金の探索 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 北見工業大学 水素吸蔵合金は一般に、水素化物形成元素を含有する、特定の結晶構造の 2 元金属間化合物を出 発材料とし、これに合金元素を添加して特性の改善を図っている。しかし、2 元化合物をベースと する水素吸蔵合金の従来の研究・開発手法は限界に達した感がある。異なる発想に基づく、水素吸 蔵合金の探索法の指針の提案が切望されている。WE-NET では新しい結晶構造や組成の水素吸蔵合金 を開発する目的で、2 元系では存在せず 3 元系以上で出現する水素吸蔵用の金属間化合物を探索す る方法の研究を進め、Ti 基の金属間化合物、すなわち NiTiZr (C14 ラーベス相) や TiAlNi (C14 ラ ーベス相)等の水素吸蔵・放出特性を調べてきた。ところで、Mg は軽量で、水素吸蔵量も多く、Ti より遙かに優れている。しかし、ほとんどの金属と金属間化合物を作らないので、合金設計がきわ めて制約される。Mg が金属間化合物を作る例外的な合金系のうち、Mg-Ni 系では、Mg2Ni と MgNi2 の 2 種類の金属間化合物が存在する。前者は多量の水素を吸蔵することが知られており、水素放出 温度を下げようとして数多くの研究が行われている。他方、後者は C36 ラーベス構造を取るが、通 常の条件下では水素を吸蔵しない。ところで最近、擬 2 元系の MgNi2-CaNi2(C15 ラーベス相)や MgNi2-YNi2(C15 ラーベス相)が水素を吸蔵することが WE-NET の研究で見出され、注目を集めてい 278 る。本研究では 2 元の A2B ラーベス相は原子半径比 RA/RB が 1.37 以上の場合は水素吸蔵によりアモ ルファス化するが、1.37 以下の場合は結晶状態で水素を吸蔵する事を確認した。 そこで、擬 2 元 MgNi2-RNi2 合金の水素吸蔵による構造変化と水素吸蔵量との関係を原子半径比の 観点から調べた。MgRNi4 合金の水素吸蔵前の結晶構造は C15 ラーベス相が規則化した C15b であるこ とが分かった。R =Ce の場合、水素をほとんど吸蔵しないが、これ以外の合金では、R の種類によっ て水素吸蔵量が変化する。ここで格子定数が大きいほど水素吸蔵量が多くなる傾向が認められる。R = La, Pr および Nd の合金は、水素吸蔵によってアモルファス化するが、これら以外の合金は結晶 状態で水素を吸蔵した。R = La, Pr および Nd の合金の平均原子半径比はいずれも 1.37 以上である が、他の合金のそれは 1.37 以下であった。C15 ラーベス相は寸法因子化合物であり、理想的な原子 半径比は 1.225 である。しかし、実際にはそのような化合物は存在せず、A および B 原子は、膨張 あるいは収縮して、つまり自己調整してこの結晶構造を取っている。膨張、収縮の尺度として原子 半径比が有用である。2 元系の場合、原子半径比が 1.225 より大きいほど、この構造を取ろうとし て無理をしており、1.37 以上の化合物は水素吸蔵により容易にアモルファス化する。本研究で、3 元系でも原子半径比が、結晶で水素を吸蔵するか、水素誘起アモルファス化するかの判定の基準と なることが明らかになったので、多元系の C15 ラーベス相の水素吸蔵合金を開発する指針が導かれ、 合金設計における非常に有効な手法が確立できた。 ⑩ Ti系、Mg系合金の水素放出改善 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 名古屋工業大学 Mg‐10at%Ni‐5at%Nd を代表組成とする 3 元系合金は,以下のように極めて優れた水素吸蔵放 出特性を有することが分かった。この合金は液体超急冷法でアモルファス化し,それを 280‐300℃ で結晶化することによって作製できる。合金の最大水素吸蔵量は 5.0wt%(H/M=1.6)に達する。吸 蔵速度は温度に依存するが,100℃以上では十分速い速度で吸蔵する。また,水素の放出速度も温度 に依存するが,真空排気することにより,150℃以上では十分速い速度でその全量を放出する。さら に,この合金は優れた活性化挙動を示し,1 回の活性化処理(30 気圧,300℃)により完全に活性化 する。また,吸蔵放出温度を 300℃以下に限定すれば,数十回(20 回以上)のサイクル寿命をもち, 繰り返し吸放出に対して十分安定である。PCT 曲線は,吸蔵量に対して最初は曲率を呈するが,後 半は十分平坦である。このような優れた特性は従来開発されてきた Mg ベースの合金には見られなか ったもので,今後種々の応用が見込まれるものである。この合金はナノ構造の組織をもち,活性化 処理後,Mg マトリクス中にナノサイズの Mg2Ni と Nd 水素化物(NdH2.5)粒子が均質に析出した組織 になっている。このようなナノ組織が合金の水素吸蔵放出速度を促進していると考えられる。 また, Nd 水素化物は水素の解離再結合触媒,並びに Mg マトリクス中への水素の供給や回収の機能を果た していると考えられる。 Mg‐10at%Ni‐5at%La 合金について Mg‐Ni‐Nd 系と同様の手法で研究を行なった。期待し ていたように,Nd を La に置き換えることによっても,Mg‐Ni‐Nd 系と遜色ない優れた水素吸蔵放 出特性を示した。Mg‐Ni‐La 合金は 5.5mass%の水素吸蔵能をもち,100℃以上で全量を吸蔵,180℃ 以上で全量を放出した。但し,放出特性は Mg‐Ni‐Nd 系と比較するとやや劣っている。電顕観察の 結果,Mg‐Ni‐La 合金では,ナノサイズの Mg マトリクス中に Mg2Ni と LaH2 粒子が均質微細に析出 していた。この場合にも,LaH2 粒子が LaH2⇌LaH3 反応を通して,合金の水素吸蔵放出プロセスで化学 279 触媒の機能を果たしていると考えられる。 本研究で開発された Mg‐Ni‐Nd 及び Mg‐Ni‐La 合金は 5.0‐5.5mass%の水素吸蔵能をもち, 100℃の温度でその全量を吸蔵でき,また 150℃で全量を放出可能である。但し,150℃では PCT の プラトー圧は非常に低下するため,機械的排気を必要とする。これらの特性は WE‐NET の 3 条件を すべてクリアしているわけではないが,システムによっては実用化が可能であると思われる。 ⑪ Mg2GeおよびMg2Sn系合金の探索・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 鳥取大学 一般に水素吸蔵合金は、イオン結合性の水素化物を形成するような金属と、水素と強い親和性を もたないタイプの金属とが合金化されたものである。本研究では、後者のタイプの金属に代えて共 有結合性水素化物を形成する 14 族元素を用いて、Mg2Ge および Mg2Sn を合成しそれらの水素吸蔵能 を調べた。得られた合金に対して、水素ガスを用いた容量法(ジーベルツ法)、電気化学的手法およ び中性子ラジオグラフィーを用いて水素吸蔵−放出特性の評価を行った。その結果、これらの合金 に水素吸蔵−放出能があることが明らかになった。また、Ni を添加することで、吸蔵水素量と放出 量がともに増大することがわかった。これらの合金の性能を既存の合金である Mg2Ni と比較すると、 低温における水素放出能に優れていることが示された。本研究で得られた合金の可逆的吸蔵−放出 水素量は、最も優れた特性を示した Mg2Ge0.8Ni0.2 においても 0.86 wt%(303 K)であり決して大きい ものとはいえないが、これらの成果は、これまでにあまり使用されることのなかった元素、例えば ここで検討した共有結合性の水素化物を形成するような元素でも水素吸蔵合金の構成元素となりう ることを示した点で意味があると考える。 ⑫ 電解チャージ法による高圧水素化物相の探索・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 滋賀県立大学 新規高性能水素貯蔵材料の開発に当たっては、水素吸蔵能には上限があるのか、またあるとすれ ばどの程度かを把握することが不可欠である。そのためには、水素圧力の高い部分での吸蔵特性に 関する情報が必要となるが、現段階では高圧水素印加試験には大規模な高圧専用装置を用いなくて は測定できない。しかしながら、電気化学的手法によれば比較的容易に高圧雰囲気を作ることがで きる。すなわち、大電流でチャージすることと高圧を印可することはほぼ同じであり、合金を高圧 水素に晒したのと同様の状況が実現できる。 本研究では、通常では水素化できない鉄系合金をアルカリ液中で電解チャージすることにより、 水素が強制固溶して鉄の結晶格子を歪ませることが確認できた。電解チャージは高圧水素印可試験 より簡便に高圧水素化試験を行なうことができるため、材料の開発段階で高圧試験を高速に行なう ための手法として有効な評価方法として使用できると期待される。 ⑬ 超高圧下における金属水素化物の調査研究(超高圧平衡の新規合金探索)・・・・東北大学 数 GPa 以上の高圧水素雰囲気を得ることができるアンビル式高圧合成法に着目した。水素の化学 ポテンシャルは約 1GPa から急激に上昇することから、新たな水素化物を得ることが期待され、また Mg は 4GPa の圧力下で約 1000℃まで融点が上昇することから、マグネシウムと融点が大きく異なる 遷移金属との固相反応が 1000℃においてもアンビル式では可能となることは興味深い。そこで本研 究では、WE-NET 目標値 5.5mass%をターゲットに、マグネシウム基水素化物の探索を行い、高圧合成 法による新規水素化物合成の可能性について検討することを目的とした。 280 本研究で新規に合成された水素化物について、表1に示す。着手して3年程度ながら、6つの新 規水素化物の合成に成功した。このことから本高圧合成法は、新規水素化物を探索する為に有力な 手法であることが判明した。今回の新規相の中で最も大きな水素吸蔵量を示したのは MgY2H8 の約 4.5mass%であった。マグネシウム系水素化物は、イオン結合性を有していることから、今後は電気 的中性条件等を考慮に入れながら、新規相や既知相に対して同族元素との置換を行うことにより、 更なる高容量化が十分に期待できる。 水素化物、水素吸蔵合金における GPa(ギガパスカル)オーダーの高圧合成法は、世界的に見て もここ数年の間に開始された手法であり、開発グループも現時点では世界中で3グループだけであ る。黎明期にありながら、この高圧合成法はかなりの高ペースで新規化合物を合成している。3グ ループのうち、我々を含む2グループは日本の研究グループであることから、日本発信の新規水素 化物を数多く探索される可能性は大きい。 表1 高圧合成法により得られた新規水素化物 新規水素化物 合成条件 構造 水素放出温度 Mg2Ni3H3.4 5 GPa, 1073 K, 2 h monoclinic 460 K Ca2NiHy 5 GPa, 1073 K, 2 h perovskite 646 K (Ca0.6Mg0.4)2NiHy 5 GPa, 1073 K, 2 h perovskite 646 K MgCaHy 5 GPa, 1073 K, 2 h anti-cuprite 650 K - 673 K Mg3MnH5-6 >3 GPa, 1073 K, 2 h monoclinic 620 K MgY2H8 >3 GPa, 1073 K, 2 h FCC-type 600 K ⑭ 高機能水素吸蔵合金の探索(ナノ構造化による水素吸放出協力現象)・・・・・・・・・・ 広島大学 ミリングプロセスによるナノ∼サブナノ級の微細構造の設計と水素化特性との相関に関する研究 では、独自の微細構造を設計して、熱分析・中性子散乱/回折測定・高分解能電顕観察・核磁気共 鳴測定・超常磁性磁化測定などの多面的な解析技術を高度に融合することにより、その微細構造と 水素化特性との相関を材料科学の観点から解明した。これにより、マグネシウム合金などの軽量金 属系材料において優れた水素貯蔵機能を発現させることに成功した。 また、金属系材料の粒界と粒内それぞれに存在する水素原子同士の相互作用と、その相互作用に 起因する新たな水素化特性の発現メカニズムに関する研究も進めた。各種の核磁気共鳴法を駆使す ることにより、世界ではじめて、粒界と粒内それぞれに存在する水素原子の動的挙動を分離して評 価解析することが可能となった。これによって、それぞれの水素原子の拡散に関する活性化エンタ ルピーが精密に決定できたうえに、例えばスピン−格子緩和時間のタイムスケールでは粒界と粒内 それぞれに「局在化」した水素原子が存在していること、などの興味ある物性も明らかとなった。 さらに、ミリングプロセスにより発達するグラファイト内部のナノ∼サブナノ級の微細構造と、 281 その構造によってはじめて誘起される特筆すべき水素化特性との相関についての研究に取り組んだ。 ナノ構造化グラファイトへの高密度の刃状転位の導入により、水素貯蔵量は従来材料の2∼5倍に 相当する7.4mass%にも達しており、機能性の観点からもきわめて興味深い材料であることを世界 に先駆けて報告した。また、これまで知られていた「水素分子の物理吸着」と「共有結合をともな う水素原子の化学吸着」との中間の第3状態として、ナノ構造化グラファイトでの「水素原子の弱 い化学吸着」の可能性も指摘しており、水素貯蔵を目的とした新炭素系材料の設計指針として、国 際エネルギー機関(IEA)での研究テーマなどとして国際的にも大いに関心が寄せられている。 このように、多面的に、新規高性能水素貯蔵材料(5.5%級)開発に対して有効となる技術指針を 得ることができた。 11.2.3 化学系水素貯蔵材料の研究開発 ① NaAlH4の触媒技術による反応性の改善 ・・・・・・・ ハワイ大学と産総研(関西センタ) NaAlH4は水素含有量が 5.6mass%あり WE-NET 目標をクリアできる可能性の高い材料である。 しかしながら、200℃程度まで温度を上げない限り反応速度が遅くて実用化はほぼ諦められていた。 WE-NET では反応速度の向上と反応温度の低下を求める手がかりを得ることを目指して、反応速度測 定に関する研究を開始し、NaAlH4,Na3AlH6 は平衡論的に常温常圧で水素を放出できること、Ti(OBu)4 及び Zr(OBu)4 を触媒として添加した NaAlH4,Na3AlH6 は反応速度が著しく改善され水素化・脱水素 化反応が 1 時間前後にまで短縮されること、また水素化・脱水素化反応が100回の繰り返しに耐 えること、反応熱が小さくてほぼ合金なみであることなどが判明し、にわかに実用性が期待される ようになってきた。また、これらの触媒を添加した NaAlH4,Na3AlH6 の分解反応、すなわち水素放出 の速度定数 k を様々に温度 T を変えながら決定した結果、分解反応には何らかの形で原子の拡散が 反応を律していると考えられることが明らかになってきた。また NaAlH4,Na3AlH6 の如何に関わらず 律速過程はよく似た反応機構に支配されている可能性がある、と結論づけられた。また、触媒のT i塩添加による反応加速が結晶空孔と関係した拡散現象や原子レベルでの触媒添加剤の分布に関係 していることもわかってきた。こうした結果は、従来からの NaAlH4 の反応速度と触媒に関する理解 を塗り替えるものであり、NaAlH4 等水素吸蔵量が 5.5mass%を超えうる錯体系水素貯蔵材料の反応速 度向上技術への新しい手がかりとなると期待される。 ② Li系錯体型水素貯蔵材料の開発 ・・・・・・・・・・・・・・・・ ハワイ大学と産総研(関西センタ) NaAlH4よりもさらにおおきな水素含有量を持つLi系錯体化合物(LiBNHx, LiAlH4)の開発に着手した。 Li系錯体化合物の繰り返し水素化・脱水素化は従来は困難視されていたが、Ti系触媒の添加によって 可能性のあることが見出されるようになった。まだ反応は不安定で確たる状況は把握されていないが、 今後さまざまな種類のLi系錯体化合物が登場してくるものと思われる。 ③ 取り扱い安全性に関する調査・検証・・・・ ㈱日本製鋼所、ハワイ大学、産総研(関西センター) TiドープNaAlH4、試薬NaAlH4、NaHと水、各種アルコール、シリコーンオイルとの反応性試験を実施 し、入手したMSDSの内容を参考に、取扱いおよび廃棄処理方法の安全基準を作成した。PRTR法には非 該当であるが、危険物第三類第二種自然発火性物質に相当し、指定数量が50kgであるため、無届けで 282 取り扱える量は10kgとなる。 NaAlH4は非常に活性な物質であり、大気中での取扱いができないこと、試験後の材料の廃棄方法が 困難なことが改めて判明したが、作成した安全基準とマニュアルにしたがってきちんとした処理をす ることにより安全な取扱いが可能なこと、また法的には危険物に該当するが10kg以下の量であれば届 け出の必要がないことなどが判明した。 ④ アラネート系材料の貯蔵システム化技術の開発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ㈱日本製鋼所 10g∼100g規模の容器で水素化・脱水素化の反応性と脱水素化・水素化の繰返し試験を実施した。2 5サイクル目までは繰返しに伴う水素移動量の変化はほとんど無かったが、その後次第に水素移動量が 減少した。51サイクル目で長時間脱水素化を行わせたところ、非常にゆっくりとではあるが脱水素化 が継続されることがわかった。この繰返しサイクルに伴う反応速度の低下は、水素化物の分解・合成 反応が繰り返されることにより結晶粒の粗大が生じ、結果として反応に伴う物質移動に時間がかかる ようになったため、と推測される。なお、今回の試験容器は一般的なオーステナイト系ステンレス鋼 のSUS304を用いたが、繰返しサイクル後にその内表面を観察したところ、腐食や損傷の兆候は認めら れなかった。 これらのことから、Ti-ZrドープしたNaAlH4は120℃-1気圧での水素放出、120℃-120気圧での水素化 がラボシステムレベルで実証され、水素吸放出繰り返しによる結晶の凝固粗大化が防止できれば60回 以上の繰り返し耐久性を持つことが判明し、この材料の実用性への期待が大きくなった。 ⑤ シクロヘキサンヘキサン-ベンゼン系の水素貯蔵システムの基礎検討 本課題では、5.5mass%級の新規高性能水素貯蔵材料として化学系貯蔵材料の開発に取り組んだ。 水素輸送貯蔵媒体としてのナフテン類(シクロヘキサンやメチルシクロヘキサンなどの脂環式化合 物)は理論水素貯蔵量が7wt%を超えるという大きな特長を有している。また脱水素化物も容易に水 素化して循環利用でき、液状であることから取り扱いも容易で、しかも現状の設備(ガソリンスタ ンド)も利用できる。現在進められている国内の燃料電池車用の水素供給ネットワーク構想を考え ると、都市ガスパイプライン網地域以外(全国の95%を占める)へは水素を陸上輸送する必要が ある。それには、液体水素や水素ガスの直接輸送よりもハンドリング性、安全性、漏出逸散性、長 期貯蔵性の点において優位である化学媒体を輸送して、水素供給ステーションで水素を取り出す方 法も有望である。そこで、シクロヘキサンを対象に効率的な水素取出しのために必要な以下の3つ の主要な問題について検討を行った。 (A) メンブレンリアクター方式による水素回収技術 (B) パラジウム膜中の水素透過現象の量子分子動力学的解析 (C) ナフテンー芳香族系の相平衡物性等の調査 その結果、高純度α−アルミナ(純度 99.99%)製多孔質チューブ上に気相化学蒸着法により、厚 さ約3∼5μmのパラジウム複合膜の作製と、それを用いたメンブレンリアクターの開発に成功し、 90%を超える水素回収率を得ることに成功した。これは水素貯蔵材料に対して 6.5wt%相当の水素を 取り出すことができたことを意味しており、5.5 wt%級の新規高性能水素貯蔵材料の有力な1候補と 成り得るものと期待される。 283 メンブレンリアクターの心臓部であるパラジウム膜は、脱平衡化による反応促進と水素精製を同時 に実現するために必要なものであるが、パラジウム水素分離膜の材料コストが、作製技術上の問題か ら高く(推定20∼30万円/m2)、実用化は難しいとされていた。そこで、まずパラジウム薄膜の支持 体として、高純度α−アルミナ(純度99.99%)製多孔質チューブの作製技術に取り組み、外径3.0mm、 内径2.3mm、気孔率43%、平均細孔径0.15μmの支持管を作製した。パラジウム薄膜は、酢酸パラジウ ムを原料とする気相化学蒸着法により、支持管外表面へ形成させた。その結果、パラジウム層の厚さ 約3∼5μmで反応下でも長時間安定な複合パラジウム膜の開発に成功し、しかも薄膜化により一挙 に材料コストを3∼5万円/m2(推定)下げることに成功している。 11-2.4 炭素系水素貯蔵材料の研究開発 ① 単層ナノチューブとそのプロセシング改善・・・・・・ 産総研(つくば)、(外注)中国科学院 カーボンナノチューブ(CNT)の生成と前処理: 合成したばかりの CNT にはその物性の精密な測定に悪い影響を及ぼす金属触媒やアモルファスカ ーボンなどの不純物が含まれていることが知られている。SWNT の精製にはいろいろな方法が開発さ れた。水素貯蔵を目的として水素アーク放電で合成した SWNT のために我々は、超音波処理、熱水処 理、酸洗浄、空気酸化、高温真空処理からなる多段階の精製、前処理法を開発した。この方法によ り金属粉末、アモルファスカーボン、カーボン微粒子などの不純物を効果的に除去できる。 手順は以下の通り。 1. 合成直後の SWNT 試料(60mg)をアルコール中で超音波処理を 30 分行って SWNT を分散させ、 室温で乾燥する。 2. 続いて、密閉した空気中で 550℃で 40 分間酸化させる。 (a) 3. 酸化の後、室温で塩酸中に漬けて金属粒子を除く。 4. 最後に、脱イオン水で試料を洗浄し、乾燥させる。 5. 150℃、12 時間、乾燥炉で乾燥した後、約 25mg の精製された SWNT が得られる。 精製した資料は純度が高く、チューブの切断や開口が見られ、水素の進入に好都合であると思われる。 精製後の低温窒素吸着による比表面積の測定結果は55m2/gから170m2/gに増加している。銅製の試料セ ルと水素容器を高圧バルブで接続した装置で水素吸蔵測定を行った。室温、12.5MPaにおける水素吸蔵 量を約200mgのSWNTを用いて測ったところ、前処理前と前処理後のSWNTの水素吸蔵量はそれぞれ、2.5 mass%と1.5mass%であった。 炭化水素の浮遊触媒法による触媒分解で合成した、外径 13∼53nm の異なった平均外径の MWNT に 前述の精製、前処理を施した。興味深いことに、外径 13 - 53nm では水素吸蔵量はそれぞれ、2.5mass% ∼4.6mass%で、MWNT の水素吸蔵量は径に比例し、比表面積に反比例している。電顕観察により、MWNT の外面は完全なグラフェンではなく、不連続なグラフェンが重なっていると結論された。更に径が 大きくなると不連続構造が内部に深く出来ていることが判った。すなわち、径が大きいと表面に多 くのエッジや波状のグラフェン層を持っている。この不連続なグラフェンの重なりは、空隙や欠陥 に取り囲まれ、きれいではないが比較的規則性があり、 「carbon island」と定義する。carbon island の波状のグラフェン層の隙間は窒素が侵入するには小さく、水素には重要な吸蔵場所となる可能性 がある。carbon island の周りの欠陥や空隙はグラフェン層の中に水素が入る通り道になるとも考 284 えられる。このように carbon island とその周囲の欠陥は MWNT における水素吸蔵の有効な場所かも しれない。このことは、日本におけるナノ構造化黒鉛やアモルファス単層カーボンナノチューブの 技術思想と一致しており、水素の貯蔵サイトと貯蔵機構を考える上で重要な示唆を与えているとい えよう。 ② カーボンナノホーン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(外注)(財)産業創造研究所 レーザー蒸発法を用いて金属触媒を使わずに室温で高純度のカーボンナノホーンを合成した。合 成されたカーボンナノホーンは単層構造を持ち、tubule-like 構造の集合体からなる直径約 80nm の 粒子であり、構造的には 95%の純度を有する。各粒子は、円錐状のキャップ(ホーン)をもつ筒状 の構造を有し、ホーンが粒子の表面から約 20nm 出ており、durian のような形をとっている。カー ボンナノホーンの平均長さは 30∼50nm となり、チューブ状部分の平均直径は 2∼3nm である。 30℃において水素吸蔵性能を調査した結果、合成されたカーボンナノホーンの水素吸蔵量は吸蔵 圧力 10MPa で 0.23mass%と低いことがわかった。未処理カーボンナノホーンは両端が閉じた構造と なっており、水素ガスが内部空間に侵入できないためである。そこで、各温度における酸素による 酸化、硝酸やアルカリによる処理などの前処理を行ない、水素吸蔵性能への影響を調べた。酸素雰 囲気中で加熱処理によって両端のキャップが除去でき、水素ガスがナノホーンの内部に侵入できる ようになることがわかった。酸化処理温度は 693K が最適であり、693K 処理によってほとんどすべ てのカーボンナノホーン内細孔は開孔となっている。この場合の水素吸蔵量は吸蔵圧力 10MPa で未 処理のものの 2 倍強の 0.52mass%に増えた。また、水素吸着性能を有する貴金属の担持による効果 を調べてみたが、カーボンナノホーンの水素吸蔵量を増やすことができなかった。 以上のように、カーボンナノホーンの水素吸蔵量は実用の目安である 5.5mass%よりはるかに低く なっており、カーボンナノホーン内細孔の開孔により水素吸蔵量を増やすことには限界があること が示された。 炭素系材料の水素吸蔵性能は材料の比表面積やマイクロポア容積に比例して増加することが本調 査でわかった。従って、水素吸蔵性能を高めるためには、今後、直径が制御されたカーボンナノホ ーンやカーボンナノチューブの合成とともに、比表面積やマイクロポア容積の高い炭素系材料(例 えば、グラファイトナノファイバーなど)の開発が重要な課題になると思われる。 ③ 特殊形状カーボンナノファイバー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 九州大学 多様なナノカーボンの系統的調製・表面修飾とそれらの微細構造-水素吸蔵能の相関解明に関する研 究の一環として、表面がクリーンな高表面積をもつ極細カーボンナノファイバー合成法の開発を行っ た。Fe-Ni系合金触媒を利用した水素吸蔵用極細カーボンナノファイバーの合成法を開発した。極細カ ーボンナノファイバーの合成では、低表面積のカーボンブラックが高い活性を示すことがわかった。 生成したカーボンナノファイバーは、80∼100nm に近い直径を持つ太い繊維は 5%以下で、 全体 的に平均 30nm の細いカーボンナノファイバーが主である。繊維の形は直線性が少し欠けて多くの node を示している。組織は通常 herring bone であることが確認できた。 生成した極細カーボンナノファイバーの物性は、480℃で得られたカーボンナノファイバーの面間 隙(d-spacing )は 0.341 ∼0.346 nm であった。比表面積は、580 度で合成した繊維が 200 m2/g 285 を示すのに対して 400℃で合成した繊維は 300 m2/g 以上を示し、合成温度が低いほど大きくなるこ とがわかった。特に、本研究で合成したカーボンナノファイバーはいずれも 200 m2/g 以上の高い比 表面積を示した。また、新規なアコーディオン組織のカーボンナノファイバーの高収率合成に成功 した。この合成したカーボンナノファイバーは最も大きい 330m2/g の比表面積を示した。 これらの新規な組織構造のカーボンナノファイバーの水素吸着特性については今後の研究にゆだね られる予定。 ④ ナノ構造化黒鉛 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 広島大学 ミリングプロセスにより発達するグラファイト内部のナノ∼サブナノ級の微細構造と、その構造 によってはじめて誘起される特筆すべき水素化特性との相関についての研究に取り組んだ。ナノ構 造化グラファイトへの高密度の刃状転位の導入により、水素貯蔵量は従来材料の2∼5倍に相当す る7.4mass%にも達しており、機能性の観点からもきわめて興味深い材料であることを世界に先駆 けて報告した。また、これまで知られていた「水素分子の物理吸着」と「共有結合をともなう水素 原子の化学吸着」との中間の第3状態として、ナノ構造化グラファイトでの「水素原子の弱い化学 吸着」の可能性も指摘しており、水素貯蔵を目的とした新炭素系材料の設計指針として、国際エネ ルギー機関(IEA)での研究テーマなどとして国際的にも大いに関心が寄せられている。 このように、多面的に、新規高性能水素貯蔵材料(5.5%級)開発に対して有効となる技術指針を 得ることができた。 (A)ナノ構造化グラファイト系水素貯蔵機能の開発 平成 11∼12 年には、グラファイトを1MPa の水素雰囲気中で 80 時間の機械的ミリング処理する と、7.4 mass%に及ぶ多量の水素を吸蔵することを世界に先駆けて発見した。その際、(a)グラファ イトは1ミクロン程度まで微粉砕され、その後凝縮するが、(b)結晶子は、∼3nm 程度のナノ構造 化する。(c)水素は原子状となって、一部は各結晶子のエッジに強くトラップされ、ダングリング結 合するが、 残りは、ミリング処理により生成したグラファイト層間の欠陥サイトに弱く結合し、300℃ 程度の温度から放出を始めることが明らかになった。 (B) ナノ構造化グラファイトの水素化特性に及ぼす触媒効果 平成 13∼14 年には、これらの炭素原子と弱く結合した水素を放出する温度を低温化させるために、 触媒添加効果および高圧ミリング処理効果の検討を行った。 これまでのミリング効果には、ミリング容器およびボールからの鉄の混入が無視できない効果を もたらしている可能性がある。本実験では、ミリング時間を 32 時間に短縮し、ミリング容器・ボー ルからの鉄の混入を抑えて、添加元素として、Si, Ti, Fe, Ni, Cu, Pd を∼1 at% 添加し、それら の触媒効果の実験を行った。その結果、Fe を添加すると、32 時間のミリングによって、約 700K と 約 1000K に放出ピークが出現した。これは、触媒のない雰囲気中で 80 時間のミリングによって出現 する2ピーク構造がミリング容器およびボールからの Fe の触媒効果によって生成していることが 判明した。さらに、Ni を添加すると低温側のピークが発達して、水素放出温度の低温化に導くこと を見出した。Pd 添加では、鉄がない場合に出現する 900K当たりにブロードなピークを持つ構造を 保ちつつ、水素放出温度の低温化に導いた。また、Si 系は触媒作用というよりも電荷移動を伴った 効果をもたらし、全体のスペクトル分布を低温側にシフトする働きをした。 286 今後、さらに、より水素放出温度の低温化に結び付く触媒金属を探索し、ナノ構造化黒鉛の水素 貯蔵材料として設計指針を確立したい。 (C) ナノ構造化グラファイトの水素化特性に及ぼす高圧ミリング処理効果 6 MPa までの水素圧力でミリング出来、かつ、ミリング容器にリザーバと圧力計を備えた新しい ミリングシステムを開発した。その結果、高圧下で作製されたグラファイトの中には、酸素燃焼法 により同定した安定な水素量と、容量法により同定した 6MPa での水素量(安定な水素+不安定な水 素)との間にかなりの違いが認められた。つまり、高圧下で作製されたグラファイトほど、不安定 な水素吸蔵量(物理吸着)は増大する。これは、高圧ほど不安定水素の生成サイトの導入には有利 であるという結果であり興味深い。詳細な構造解析から高圧下ではグラファイトのナノ構造化の進 行が抑えられ、これに起因して安定吸蔵水素量の減少、そして放出温度の高温化が生じたと考えら れる。しかしながら、不安定な(物理吸着)水素は、高圧下で作製されたサンプルほど増加する傾 向を示し、活性炭等で確認される水素量に匹敵する結果となった。しかし、活性炭は数 m2/g もの比 表面積を有する物質であるが、このグラファイトはわずか m2/g の値しか持たない。この点は非常に 興味深いが、その不安定な水素の生成起源はいまだ明らかになってはいない。そのメカニズムの解 明は今後の炭素材料を用いた水素貯蔵物質の材料設計に指針を与えると考えられる。 ⑤ アモルファス単層カーボンナノチューブ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 大阪ガス㈱ アモルファスカーボンナノチューブ(α-CNTs)の水素吸蔵特性を測定し、サンプルによるバラツ キはあるものの、室温、10MPaにおいて1.5∼3mass%の水素吸蔵を観測した。同一サンプルを産業総 合技術研究所関西センターおよび千葉大学において、水素吸蔵量を測定したが測定値に不一致が見 られた。活性炭では三者の測定値は一致しており、カーボンナノチューブ(CNTs)特有のかさ密度 の低さ等に起因する測定の難しさが明らかになった。測定値の不一致はあっても、α-CNTsが炭素系 水素貯蔵材料の中でトップの水素吸蔵を示している点では、各機関の見解が一致しており、評価方 法の標準化および貯蔵機構の解明と並行して、合成条件の改善等を実施することで、WE-NET開発目 標をクリアしうる材料開発が可能であることが示された。 α-CNTsの構造解析を行うことにより、水素吸蔵能を持つアモルファス炭素構造に関して、以下の 知見が得られた。 (A) TPD(昇温脱離測定)により、α-CNTsには通常の高比表面積活性炭にない、-160℃領域のピ ークがあり、水素との相互作用の強い吸着サイトが存在する。 (B) 77Kにおける窒素の超広圧力域測定により、α-CNTsには細孔径が0.55nmのウルトラミクロ細 孔が存在する。 (C) X線回折パターンの精密な解析により、α-CNTsは網面サイズが21Åの微小なグラフェンが1 層∼2層積層した構造よりなっており、水素吸蔵能が悪いものは積層数が3層以上で相対的に 結晶性が上がっている。 今後、さらに知見を得るためには水素吸蔵状態での種々の観測が必要であるが、上記知見より、 微小な細孔を持ち結晶性の低いα-CNTsをはじめとする炭素材料を開発すれば、5.5mass%級の水素貯 蔵材料を実現可能であるという指針が得られた。 287 ⑥ 流動床反応炉によるアモルファスカーボンナノチューブの実炉生産検証 ・・・・・・・(外注)三菱重工業㈱ アモルファスカーボンナノチューブ(以下α-CNT)は原料として PTFE(4-フッ化ポリエチレン) を用いる極めてユニークな製造方法で合成される。これまでの研究においては、横型管状炉を用い た石英ボート上で減圧環境下において合成基礎試験がなされてきたが、石英ボート上の固定層内の ガス濃度、温度分布などを考慮すると合成条件の不均一が懸念されること、および将来の連続製造 を視野にいれて、流動層反応器による均一反応場でのα-CNT の試作を行った。 実際にバッチ式の流動層反応炉においてα-CNT の試作を行ったところ、500℃の低温合成では中 に芯の詰まった繊維状物質の生成が確認され、さらに高温化し 900℃合成では、芯が抜け中空とな ったα-CNT が合成できていることが確認できた。側壁構造の詳細な調査は今後の課題であるが、今 回α-CNT の試作に流動層反応器において成功し、連続合成技術開発に目処を得ることができた。得 られたサンプルの一次評価として、水素圧力 3.0MPa にて吸蔵させ、0.1MPa にて放出させる評価を 実施し、900℃合成α-CNT にて、室温で 0.1⇔3.0MPa にて可逆的に吸蔵、放出する水素量が 0.4mass% 程度であることが確認された。また、室温、0.1MPa では放出されない不可逆分 0.5 を加えると 0.9mass%であった。 ⑦ 磁気共鳴吸収による水素の結合状態の測定解析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 北海道大学 炭素材料や他の材料への水素の吸着は通常、重量法や容積法により評価されている。しかし,こ れらの方法では吸着量に関する情報は得られるが、吸着した水素がどの様な状態で存在しているの か、言い換えればどの程度安定な状態で存在するのかに関する情報は得ることが出来ない。これに 対し,1H-NMR緩和時間測定法では測定対象核(プロトン)を有する分子であれば、得られるシグナ ルの強度からその存在量が、また緩和の時定数により表される吸着水素の分子運動性からその存在 形態が評価出来る。そこで、本研究では加圧下でも使用可能な温度可変型プローブを独自に開発し、 このプローブを用い種々の炭素材料を試料とし温度ならびに圧力を変えて水素吸着挙動をその場測 定した。その結果、吸着水素の量および存在形態は炭素材料の基質ならびに細孔の構造に強く依存す ることを明らかにした。この結果は1H-NMR緩和時間測定法により得られる吸着水素分子の量および運 動性に関する情報が水素吸蔵材料としての炭素材料の評価に有効であり、吸着水素の量と質(存在形 態)を同時にその場測定することにより、炭素材料の基質や細孔構造の改良が水素吸着・吸蔵挙動に 及ぼす影響を直接評価することが可能であることを示している。従って、本手法により吸蔵密度の向 上や耐久性の向上、吸蔵・脱離温度の適正化に必要な情報等の新規高性能水素貯蔵材料(5.5mass%級) 開発に対して有効となる技術指針を得ることが出来るものと期待される。 ⑧ 炭素材料における水素吸着の評価解析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 千葉大学 WE-NET で開発中の特殊構造を有するアモルファスカーボンナノチューブを中心として、活性炭素 繊維、分子篩カーボン、シングルウオールカーボンナノチューブなどを試料として、極微細細孔(ウ ルトラミクロ孔 0.7nm 以下)の細孔構造を77Kでの高分解能窒素吸着法で検討し、同時に303K における高圧水素吸着等温線を測定した。超高分解能の窒素吸着測定によると、相対圧 10-10 から吸 着が始まっており、0.5nm 程度のミクロ孔が存在している。一方、グランドカノニカルモンテカル ロ(GCMC)シミュレーション法によると、10-8 相対圧からの吸着は 0.55nm, 10-9 相対圧からの吸着は 288 0.5nm の細孔があることが分かった。アモルファスカーボンナノチューブには 0.55nm 以下の細孔が 0.06ml/g 以上はある。また、正確な粒子密度決定のために、He 高圧浮力カーブ測定も行った。 ア モルファスカーボンナノチューブの粒子密度は 1.26g/ml であり、グラファイトよりはるかに小さく、 ヘリウム気体も入れない潜在孔が多量にある可能性がある。水素吸着については、アモルファスカ ーボンナノチューブは重量当たりと吸着密度ともに検討した試料のなかでは、大きいほうであった。 ただし、絶対量は WE-NET 目標に対してはどれもまだ十分ではなく、アモルファスカーボンナノチュ ーブについては、100 気圧、303K において 0.45mass%の吸着量である。 以下に、特許・論文、実用新案等について、年度毎の件数及びリストを記載する。 (1)研究項目別論文、講演、特許、報道の件数一覧 新聞発表 特許 口頭発表 論文発表 出願済 登録 実施 国内 海外 10 0 0 9 64 11 65 (2)年度別研究項目別成果総括表 年度 新聞発表 特許出願 口頭発表 論文発表 出願済 登録 実施 国内 海外 H11 2 0 0 0 2 9 5 H12 4 4 0 0 0 16 9 H13 1 5 0 0 2 17 18 H14 4 1 0 0 5 22 33 計 11 10 0 0 9 64 65 (3)論文発表リスト a. 査読のある原著論文 1) MgNi0.86M10.03(M1=Cr,Fe,Co,Mn) alloys desorbing hydrogen at low temperature”, Journal of Alloys and Compounds, Vol.285, P.298 (1999) 2) S. 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Fukunaga, G. Mayer, A. Zuttel and L. Schlapbach,”Nanostructured Graphite-Hydrogen Systems prepared by Mechanical Milling Method”,Mol. Cryst. Liq. Cryst 386 (2002)) 173-178 59) K.Ishikawa, K.Hashi, K.Suzuki and K.Aoki ,”Hydrogen absorption properties of Ti3Al-based ternary alloys”,J.Alloys and Compounds,330-332(2002)543-546. 60) K.Hashi, K.Ishikawa, K.Suzuki and K.Aoki ,”Hydrogen Absorption in the binary Ti-Al system”,J.Alloys and Compounds,330-332(2002)547-550. 61) S.Mano, K.Hashi, K.Ishikawa and K.Aoki ,”Hydrogen absorption and desorption properties of Ti3Al-Ni alloys”,Materials Transactions,43(2002)421-423. Y.Miyajima, K.Ishikawa and K.Aoki ,”Hydrogen-induced amorphization in Ti-A1-Zr compounds with D019, bcc and fcc structures”, Materials Transactions,43(2002)1085-1088. 62) K.Hashi, K.Ishikawa, K.Suzuki and K.Aoki ,”Emergency of Hydrogen Absorption and Desorption Ability in Metastable HCP”, FCC and Amorphous TiAl Alloys Prepared by Mechanical Grinding,MaterialsTmnsactions,43(2002)2734-2740. 293 63) 伊藤秀明、荒島裕信、久保和也、兜森俊樹,” The influence of microstructure on hydrogen absorption properties of Ti-Cr-V alloys”, Journal of Alloys and Compounds, 330-332 (2002) 287-291, 2002年1月17日受理 64) 坂口裕樹,畠山恵介,小林真輔,江坂享男,”Hydrogenation Characteristics of the Proton Conducting Oxide - Hydrogen Storage alloy Composite, Materials Research Bulletin”, 37巻・1547−1556頁, (2002). 65) X.J. Wang, X.H. Wan, H. Zhou, S. Takami, M. Kubo, and A. Miyamoto,“Electronic Structures and Spectroscopic Properties of Dimers Cu2, Ag2, and Au2 Calculated by Density Functional Theory”, J. Mol. Struct. (Theochem), Vol.579, pp.221-227, (2002). 66) Y. Kobayashi, S. Takami, M. Kubo, and A. Miyamoto,“Non-Equilibrium Molecular Simulation Studies on Gas Separation by Microporous Membranes Using Dual Ensemble Molecular Simulation Techniques”, Fluid Phase Equilibria, Vol.194-197, pp.319-326, (2002). 67) R.V. Belosludov, S. Sakahara, K. Yajima, S. Takami, M. Kubo, and A. Miyamoto, “Combinatorial Computational Chemistry Approach as a Promising Method for Design of Fischer-Tropsch Catalysts based on Fe and Co”, Appl. Surf. Sci., Vol.189, pp.245-252, (2002). 68) S. Sakahara, K. Yajima, R. Belosludov, S. Takami, M. Kubo, and A. Miyamoto, “Combinatorial Computational Chemistry Approach to the Design of Methanol Synthesis Catalyst”, Appl. Surf. Sci., Vol.189, pp.253-259, (2002). 69) M. Elanany, K. Sasata, T. Yokosuka, S. Takami, M. Kubo, and A. Miyamoto,“Computational Methods for the Design of Zeolitic Materials, Stud. Surf. Sci. Catal.”, Vol.142, pp.1867-1876, (2002). 70) Y. Kobayashi, S. Takami, M. Kubo, and A. Miyamoto,“Computational Chemical Study on Separation of Benzene and Cyclohexane by NaY Zeolite Membrane”, Desalination, Vol.147, pp.339-344, (2002). 71) Y. Luo, X. Wan, Y. Ito, S. Takami, M. Kubo, and A. Miyamoto,“A Density Functional Theory Calculation on Lanthanide Monosulfides, Chem. Phys.”, Vol.282, pp.197-206, (2002). 72) X. Wang, S. Takami, M. Kubo, and A. Miyamoto,“A Theoretical Study on Electronic Structures and Spectroscopic Properties of Cyclopropane in Ground and Excited State”,Chem. Phys., Vol.279, pp.7-14, (2002). 73) M. Elanany, P. Selvam, T. Yokosuka, S. Takami, M. Kubo, A. Imamura, and A. Miyamoto, “ A Quantum Molecular Dynamics Simulation Study of the Initial Hydrolysis Step in Sol-Gel Process”, J. Phys. Chem. B, Vol.107, pp.1518-1524, (2002). c. 総説、解説、著書 1) 相原賢治, 「水素貯蔵材料を用いる水素輸送・貯蔵技術」, 電気評論, 第437号, 第86巻, 第 10号, P.29−36 (2001) 2) 相原賢治, 「水素貯蔵技術」, 新エネルギー大事典, (株)工業調査会 (2002) 294 3) 相原賢治, 「水素貯蔵技術, 1.水素吸蔵合金, 2.炭素系水素貯蔵材料」, エネルギー便覧, (株)工業調査会 (2002) 4) 中村裕司, カーボンナノチューブによる高度水素貯蔵, 日本経済新聞社 日本経済産業消費 研究所, 平成14年11月 5) 横道泰典, アモルファス・カーボンナノチューブとその水素吸蔵, 社団法人日本ファインセラ ミックス協会, 「FINE CERAMICS REPORT」第21巻3号62-63頁, 平成15年4月 6) 横道泰典, アモルファスカーボンナノチューブの水素吸蔵, 株式会社シーエムシー出版, 「ナノカーボン材料開発の新局面」206-214頁, 平成15年8月 7) A. Züttel and S. Orimo MRS Bulletin, -Special Issue on Hydrogen Storage for Mobility-, “Hydrogen in Nanostructured, Carbon-relate,d and Metallic Materials”, edited by L. Schlapbach, Material Research Society, 705-711, September (2002). 8) 折茂慎一,談話室, ドイツに滞在して感じたこと,「まてりあ」, 第 39 巻第 1 号, 95 (2000). 9) 折茂慎一, 藤井博信,新たなマグネシウム系水素化物の探索,「まてりあ」, 第 39 巻第 10 号, 817-823 (2000). 10) 藤井博信, 折茂慎一,燃料電池自動車などへの利用が期待される炭素系水素貯蔵材料,「高圧 ガス」, 第 38 巻第 7 号, 30-33 (2001). 11) 折茂慎一, 松島智善、藤井博信,水素貯蔵機能の観点からの炭素系材料の物性研究 「炭素(TANSO) 」, 第 200 号(記念号), 261-268 (2001). 12) 藤井博信, 折茂慎一,黒鉛による大容量水素貯蔵技術の開発「燃料電池」, 第 1 巻第 3 号, 39-40 (2002). 13) 藤井博信, 折茂慎一,ナノ炭素系水素貯蔵「燃料電池」, 第 1 巻第 4 号, 16-18 (2002). 14) 藤井博信, 折茂慎一,特集 水素貯蔵合金の最前線 −Mg 系合金の水素貯蔵−「金属」第 72 号, 第 6 号, 39-46 (2002). 15) 折茂慎一, 藤井博信,特集 水素貯蔵合金の最前線 −グラファイト系−「金属」第 72 号, 第 6 号, 63-72 (2002). 16) 折茂慎一, 藤井博信, 燃料電池, ナノ構造化グラファイト−水素系の物性研究「電池材料」 第 14 巻号, 136-145 (2002). 17) 折茂慎一, 藤井博信,グラファイトによる水素貯蔵技術「機械の研究」第 54 巻号, 15-24 (2002). d. 国際学会プロシィーディングス 1) 折茂慎一,物理学基礎実験 第2版, 光子計測と統計性,宇田川真行, 永井克彦, 星野公三編 (共立出版), 203-208 (1999). 2) 藤井博信, 折茂慎一,マグネシウム技術便覧, マグネシウムとその合金の物性, 水素吸蔵特 性,日本マグネシウム協会編 (カロス出版), 66-70 (2000). 3) 折茂慎一, 藤井博信,図解ナノテクノジーのすべて, ナノ組織水素吸蔵材料が未来のエネル ギーを拓く,川合知二監修 (工業調査会), 244-247 (2001). 295 4) 折茂慎一,カーボンナノチューブの合成・評価・実用化とナノ分散・配合制御技術,(技術情報 協会), 280-296 (2003). e. その他(報告書、社内報等) 1) 神谷良久, 高橋國男, 塚原誠, 「高容量バナジウム系水素吸蔵合金の開発」, アイシン技報, 第6 号 (2002) (4)口頭発表リスト 1) 荒島 裕信, 伊藤 秀明, 兜森 俊樹, 「BCC合金の水素吸放出の繰り返しにともなうP-T特性の 変化」, 第125回金属学会, 平成11年11月21日 2) Cho Sung-Wook, 秋葉 悦男, 中村 優美子, 榎 浩利, 「Hydrogen isotope effects in Ti1.0Mn0.9V1.1 and Ti1.0Cr1.5V1.7 alloys」, The 5th Korea-Japan Joint Symposium '99 on Hydrogen Energy, 平成11年11月26日 3) 塚原 誠, 「バナジウム系水素貯蔵材料の水素貯蔵への応用」, MH利用開発研究会 平成11 年度第4回研究会, 平成12年2月25日 4) Craig M. Jensen, “Disassociation/Reassociation Kinetics of Catalytically Enhanced NaAlH4”, International Symposium on Metal Hydrogen Systems (MH2000), 平成12年10月 1-6日 5) 黒川仁、周慧、山田有場、田村宏之、高見誠一、久保百司、宮本明、今村詮, 高速化量子分子 動力学プログラムの触媒・表面研究への応用, 第84回触媒討論会, 1999年10月2日 6) 伊藤 秀明, “The influence of microstructure on hydrogen absorption properties of Ti-Cr-V alloys”, International Symposium on Metal Hydrogen Systems (MH2000), 平成12 年10月1-6日 7) 清林 哲, “Hydrogen adsorption in carbonaceous materials”, International Symposium on Metal Hydrogen Systems (MH2000), 平成12年10月1-6日 8) 寺下 尚克, “Hydrogen absorption properties of ternary Mg-Ca-Ni alloys”, International Symposium on Metal Hydrogen Systems (MH2000), 平成12年10月1-6日 9) 荒島 裕信, 伊藤 秀明, 兜森 俊樹, 「固溶体型水素吸蔵合金の耐久性に与える因子の解析」, 第127回金属学会, 平成12年10月2日 10) 寺下 尚克, 「Mg-Ca-Ni系合金による水素吸蔵」, MH利用開発研究会 材料分科会, 平 成12年12月7日 11) 荒島裕信、兜森俊樹、伊藤秀明, 固溶体型水素吸蔵合金の耐久性へ与える因子の解析, 日本 金属学会2000年秋季大会, 2000年10月2日∼5日 12) 塚原 誠, バナジウム系水素吸蔵合金とその水素貯蔵への応用, 第2回名古屋シンポジウム(財 団法人 科学技術交流財団), 2000. 3. 17 13) 黒川仁、中山拓、鈴木研、高見誠一、久保百司、宮本明、今村詮, 高速化量子分子動力学法に よるPd水素吸蔵過程の検討, 第86回触媒討論会, 2000年9月22日 296 14) 黒川仁、鈴木研、高見誠一、久保百司、今村詮、宮本明, 高速化量子分子動力学法によるPd 水素吸蔵過程の検討, 第41回電池討論会, 2000年11月21日 15) 相原 賢治, 「WE-NETにおける水素貯蔵材料の研究開発動向」, MH利用開発研究会 平成1 2年度第4回研究会, 平成13年2月16日 16) 久保 和也, 「Ti-Cr-X(X=Nb,Mo,V)系水素吸蔵合金の水素化特性」, 日本金属学会 2001年 春季大会, 平成13年3月28-30日 17) 中畑 拓治, 「焼結法で作製したCaMgNiの水素化特性」, 日本金属学会 2001年春季大会, 平成13年3月28日 18) 寺下 尚克, 笹井 興士, 秋葉 悦男, 「Mg-Ca-Ni系合金の水素吸蔵」, 日本金属学会2001 年春季大会, 平成13年3月28日 19) 塚原 誠, 「水素吸蔵合金の開発状況と課題」, 第34回若手材料研究会(日本金属学会・日本 鉄鋼協会), 平成13年6月21日 20) 荒島 裕信, 「BCC合金の水素化特性に及ぼす内部組織変化の影響」, 日本金属学会2001年 秋季大会, 平成13年9月23日 21) 寺下 尚克, 大澤 雅人, 富岡 秀徳, 笹井 興士, 秋葉 悦男, 「CaMg2ラーベス相の水素吸蔵」, 日本金属学会2001年秋期大会 , 平成13年9月23日 22) 崔 乗準, 對尾 良則, 秋葉 悦男, “The Development of Ti-Al-Cu Hydrogen Storage Alloys”, 6th Japan-Korea Joint symposium on Hydrogen Energy, 平成13年10月17日 23) 相原 賢治, 「水素貯蔵材料を用いる水素輸送貯蔵技術」, 燃料電池と水素利用の基盤技術実 用化推進懇談会(FCH技術懇談会)・平成13年度特別懇談会, 平成13年10月5日 24) 崔 乘準、對尾良則、秋葉悦男(産総研), Hydrogenation properties of Ti-Al-Cu alloys, 6th Japan-Korea joint Symposium on hydrogen Energy, 2001年10月17∼19日 25) 高田雅之、宮村 弘、広瀬香絵、菊池潮美, Fe-Ti-X系合金を用いた水素化物電極の充放電特 性, 日本金属学会秋季大会, 平成13年9月23日 26) 宮村弘、高田雅之、広瀬香絵、菊池潮美, 急冷したTi-Cu系合金のプロチウム化挙動, 日本金 属学会秋季大会, 平成13年9月23日 27) 佐竹祐一,坂口裕樹,藤根成勲,米田憲司,江坂享男, 中性子ラジオグラフィーによるマグ ネシウム系合金中の水素拡散挙動の解明, 電気化学会第68回大会, 平成13年4月1日∼3日 28) 黒川仁、高見誠一、久保百司、宮本明、今村詮, 高速化量子分子動力学法によるPd(100),(111) 面への水素分子吸蔵過程の検討, 第87回触媒討論会, 2001年3月28日 29) 黒川仁、中山拓、鈴木研、高見誠一、久保百司、宮本明、今村詮, 計算化学的手法によるPd への水素吸蔵過程の検討, 第88回触媒討論会, 2001年10月11日 30) 黒川仁、中山拓、鈴木研、高橋睦、高見誠一、久保百司、宮本明, モンテカルロ法を用いた 金属中の水素に関する計算化学的検討, 第42回電池討論会, 2001年11月23日 31) 黒川仁、中山拓、鈴木研、高見誠一、久保百司、宮本明、今村詮, 高速化量子分子動力学法 を用いたPd金属の水素吸蔵に関する計算化学的検討, 第42回電池討論会, 2001年11月23日 32) 黒川仁、中山拓、鈴木研、高見誠一、久保百司、宮本明, キネティックモンテカルロプログ ラムの開発と水素分離膜への応用, 第21回表面科学会講演大会, 2001年11月29日 297 33) 北海道大学・熊谷治夫 1H-NMR緩和時間測定法を用いた炭素材料への水素吸着挙動の評価 炭素材料学会年会, 2002年12月4日〜6日 34) 塚原 誠, 「新しい高容量バナジウム基水素吸蔵合金」, 第22回水素エネルギー協会大会(水 素エネルギー協会), 平成14年3月29日 35) 對尾 良則, 「新規水素吸蔵合金」, 日本金属学会2002年春季大会, 平成14年3月29日 36) 相原 賢治, “Research And Development of Hydrogen Storage Materials in WE-NET Project”, 14th World Hydrogen Energy Conference (WHEC 2002), 平成14年6月9∼13日 37) 久保 和也, “Hydrogen absorbing properties and structure of Ti-Cr-Mo alloys”, International Symposium on Metal Hydrogen Systems (MH2000), 平成14年9月2-6日 38) 荒島 裕信 他4名, “Correlation between absorbing properties and homogeneity of Ti-Cr-Mo alloys”, International Symposium on Metal Hydrogen Systems (MH2000), 平成 14年9月2-6日 39) 横道 泰典, 「アモルファス・カーボンナノチューブの合成と水素吸蔵」, MH利用開発研究会 H14年度特別講演会, 平成14年10月28日 40) 荒島 裕信, 「Ti-Cr-V合金の水素化特性の及ぼす合金組織の均一性」, 日本金属学会秋期大会, 平成14年11月3日 41) 神谷 良久, 「V-Cu-Ni合金の水素吸蔵特性」, 日本金属学会秋期大会, 平成14年11月3日 42) 横道 泰典, 「カーボンナノチューブを使った水素吸蔵への取り組みと、その測定方法」, ナ ノテクセミナー, 平成14年11月7日 43) 北海道大学・熊谷治夫 磁気共鳴法による炭素材料へのガス吸着挙動の評価 炭素材料学会年会, 2002年12月4日〜6日 44) 對尾良則、崔 乘準(マツダ)、榎浩利、秋葉悦男(産総研), Mg-Ti 2元系合金のBCC, 2002年 日本金属学会春期大会 45) 横道泰典, 大阪ガスのナノテクノロジー, 北陸技術交流 テクノフェア2002(中小企業 総合事業団 技術交流テクノフェア実行委員会), 平成14年10月24日∼25日. 46) 伊藤秀明、久保和也、高橋俊男、兜森俊樹, Ti-Cr-Mo合金の水素吸蔵特性と構造, 第22回水 素エネルギー協会大会, 2002年12月11日∼12日 47) 久保和也、高橋俊男、伊藤秀明、兜森俊樹、中村優美子、秋葉悦男, Hydrogen absorbing properties and structures of Ti-Cr-Mo alloys,International Symposium on Metal-Hydrogen Systems (MH2002), 2002年9月2日∼6日 48) 宮村弘、長谷川武男、高田雅之、広瀬香絵、菊池潮美, Ti-Cu-Ni系合金のプロチウム化特性, 日本金属学会春季大会, 平成14年3月30日. 49) 宮村弘、高田雅之、広瀬香絵、菊池潮美, Metal Hydride Eletcrodes using Iron-Titanium Based Alloys, MH2002, 平成14年9月5日 50) 坂口裕樹, 中西直人, 大橋 昭, 江坂享男, Hydrogenation Characteristics of New Magnesium Intermetallic Compounds Including Group 14 Elements, 14th World Hydrogen Energy Conference, 平成14年6月9日∼13日平成14年6月9日∼13日 298 51) 中西直人, 坂口裕樹, 小林真輔, 大橋 昭, 山口 拓, 江坂享男, マグネシウムと14族元素 からなる合金の水素吸蔵特性, 2002年電気化学会秋季大会, 平成14年9月12日∼13日 52) 中西直人, 坂口裕樹, 小林真輔, 山口 拓, 江坂享男, マグネシウムと14族元素からなる合 金の水素吸蔵−放出特性, 第22回水素エネルギー協会大会, 平成14年12月11日∼12日 53) M. Tsukahara 1 , Y. Kamiya 1 , and K. Takahashi, Novel Vanadium-based Alloys with Large Hydrogen Capacity, The 14th World Hydrogen Energy Conference, 2002. 6.9-13 54) 神谷良久、高橋国男、塚原 誠 Stochholm Univ. Toyoto Sato、Dag Noreus, V-Cu-Ni合金の 水素吸蔵特性, 日本金属学会秋期大会, 2002. 11.2 –11.4 55) 黒川仁、中山拓、鈴木研、高見誠一、久保百司、伊藤直次、宮本明, Pd金属、Pd-Ag合金中の 吸蔵水素の構造と電子状態に関する計算化学的検討, 第89回触媒討論会, 2002年3月24日 56) 黒川仁、中山拓、鈴木研、高橋睦、高見誠一、久保百司、伊藤直次、今村詮、宮本明, 金属 中の水素に関する計算化学的検討, 日本化学会第81回春季年会, 2002年3月27日 57) 黒川仁、中山拓、鈴木研、高見誠一、久保百司、伊藤直次、宮本明,モンテカルロ法を用い た金属、合金中の吸蔵水素に関する検討, 第49回応用物理学会学術講演会, 2002年3月29日 58) H. Kurokawa, T. Nakayama, M. Takahashi, K. Suzuki, S. Takami, M. Kubo, N.Itoh, and A. Miyamoto, Monte Carlo Simulations of the Hydrogen in Metals and Alloys, 5th International Conference on Catalysis in Membrane Reactors, 2002年6月28日 59) H. Kurokawa, T. Nakayama, M. Takahashi, K. Suzuki, S. Takami, M. Kubo, N. Itoh, A. Imamura, and A. Miyamoto, Theoretical Study on the Hydrogen Storage Process in Palladium Metal and Palladium-Silver Alloy, The Fourth International Tokyo Conference on Advanced Catalytic Science and Technology, 2002年7月19日 60) 黒川仁、牧野裕介、高見誠一、久保百司、伊藤直次、宮本明, 金属、合金中の吸蔵水素に関 するモンテカルロ計算, 第90回触媒討論会, 2002年9月20日 61) 黒川仁、高橋睦、高見誠一、久保百司、伊藤直次、宮本明, モンテカルロ法による合金中の 吸蔵水素に関する計算化学的検討, 第32回石油・石油化学討論会, 2002年10月11日 62) 黒川仁、牧野裕介、高橋睦、高見誠一、久保百司、伊藤直次、宮本明, モンテカルロ法によ る金属、合金中の吸蔵水素に関する計算化学的検討, 第43回電池討論会, 2002年10月14日 63) 伊藤直次、原重樹、榊啓二、○田村英佑、辻智也、日秋俊彦, 直管微細孔内へのPdの析出充 填法と気体透過性能, 化学工学会第67年会, 平成14年3月 64) 伊藤直次、原重樹、田村英佑、辻智也, 化学系水素貯蔵媒体としてのシクロヘキサンの加圧 下での脱水素反応, 平成14年3月 65) Eisuke Tamura, Keisuke Aoyagi, Tomoya, Tsuji, Toshihiko Hiaki, Naotsugu Itoh, Shigeki Haraya, Keiji Sakaki, Membrane Reactor the Hydrogen Production from Cyclohexane as a Chemical Hydrogen Carrie, 9th Asian Pacific Confederation of Chemical Engineering Congress, Christchurch, New Zealand, 2002.10 299 (5)特許出願リスト(名称、出願人、出願番号、出願日) 1) 「水素吸蔵合金」, 住友金属工業(株), 特願2000-127543, 平成12年4月27日出願 2) 「水素吸蔵合金」, 住友金属工業(株)・日本重化学工業(株), 特願2000-282131, 平成12年9 月18日出願 3) 「水素吸蔵合金」, 日本重化学工業(株), 特願2000-297007, 平成12年9月28日出願 4) 「高容量水素吸蔵合金とその製造方法」, (株)日本製鋼所, 特願2001-8788, 平成13年1月17 日出願 5) 「水素吸蔵合金」, 日本重化学工業(株), 特願2001-288997, 平成13年9月21日出願 6) 「水素吸蔵合金」, 住友金属工業(株), 特願2001-313079, 平成13年10月10日出願 7) 「水素吸蔵合金」, マツダ(株), 特願2002-44524, 平成14年2月21日出願 8) 「Mg−Ti系合金及びその製造方法」, マツダ(株), 特願2002-60075, 平成14年3月6日出願 9) 「水素吸蔵合金の製造方法」, (株)日本製鋼所, 特願2002-080199, 平成14年3月22日出願 10) 水素貯蔵装置の製造方法、株式会社イムラ材料開発研究所、特願2002-324127、2002.11.7出願 (6)「ノウハウ(知的所有権等)」リスト なし (7)その他報道等の概要 a.新聞発表 1) 宮本 明、 初のVR機能を実現−研究、教育現場で活用期待、日本工業新聞、1999/9/6 2) 宮本 明、原子の熱振動を眼前に−環境にも優しいVR計算化学、日本工業新聞、1999/9/9 3) 藤井博信、電池自動車実用化へ一歩 −燃料の水素黒鉛に多量吸蔵−、中国新聞、2000/6/29 4) 藤井博信、芽を育む研究室 −次世代エネルギー源水素を黒鉛に吸蔵−、日刊工業新聞、 2000/8/10 5) 藤井博信、広島大の水素燃料技術 −GMも食指−、日刊工業新聞、2000/12/8 6) 藤井博信、中国文化賞−水素貯蔵材料を研究開発−、中国新聞、2000/11/3 7) 藤井博信、水素貯蔵量 −黒鉛使い3倍増−、日本経済新聞、2001/7/27 8) 宮本 明、東北大で開発のCCS 菱化システムが販売、化学工業日報、2002/8/16 9) 伊藤直次、「吸蔵液から水素回収」∼低コスト・高効率化を実現∼、日刊工業新聞、2002/11/18 10) 對尾 良則, 秋葉 悦男, 「BCC構造をもつMg-Ti系合金」, 日刊工業新聞, 平成14年3月21日 11) 伊藤直次、「燃料電池用水素を効率回収」∼産総研、パラジウム膜使う∼、日経産業新聞、 2003/1/8 11−2.研究開発項目毎の成果(産業総合技術研究所) 金属水素化物による水素貯蔵技術の研究(産業技術総合研究所生活環境系特別研究体) (1)軽量水素吸蔵合金の研究 Ca 系合金は、水素含有率の高い水素化物(CaH2, 4.8mass%)を生成し、また、原材料費が安いた 300 め、高容量かつ安価な水素吸蔵合金として魅力的である。 可逆性が低いが水素吸蔵能力を示す CaNi3 の水素吸蔵特性の改善を目指して、Ca サイトを軽量な Mg によって置換した。通常の熔解法では 冷却過程で分相して期待する組成の合金が得られないため、原料もしくは構成元素の一部を含む金 属間化合物を混合整形し、 数百度以上で反応焼結を行って目的の合金を得た。 この反応焼結法では、 合金(金属間化合物)の分解が起こる温度以下で合成が可能なため、熔解法では得られない合金を 合成することができる。この方法によって探索を進めた結果、CaMg2Ni9, (Y0.5Ca0.5)(MgCa)Ni9, (La0.65Ca0.35)(Mg1.32Ca0.68)Ni9 といった新規な Ca 系 PuNi3 構造 AB2C9 型合金を見出すことができ た。水素吸蔵量は 2mass%級であり、それぞれ 1.48mass% (273K-3MPa), 1.98mass%(263K-3MPa), 1.87mass%(283K-3MPa)である。これらの合金は、水素吸蔵相として知られる CaCu5 構造の層と MgCu2 型(C15 型) ラーベス構造の層が c 軸方向に積み重なった構造を有していることがわかった。 これらの合金は、水素吸蔵量が 3mass%には届かないものの、水素吸蔵合金としてこれまでに知ら れていなかった構造であり、高容量水素吸蔵合金開発に向けて新たな可能性を拓くものと期待され る。 一方、CaNi3 そのものの水素中での熱分析結果等から、新規な水素化物 CaNiH3(水素吸蔵量: 3mass%)が生成していることを確認した。773K まで水素中で昇温した CaNi3 試料のX線回折実 験より、473K までで CaNi3Hx への水素化が起こり、523K までで CsCl 型構造の CaNiH3 への分 解、773K では CaH2 の生成が起こっていることがわかった。このように、X線回折からも明確に CsCl 型構造の新規水素化物相 CaNiH3 の生成が確認された。”CaNi”相は Ca-Ni 系状態図上には存 在しないため、”CaNi”相の安定化の可能性を水素化物の安定性に関する経験則に基づいて熱力学的 に計算し、第3元素として Pd 及び Pt が適する事を導き出した。これに基づき、Ca-Ni-Pd3元系 の作製を高周波誘導熔解で試みているが、Ca-Ni-Pd3元系合金は得られていない。これは、構成元 素間の原子半径の大きな違いによるものと考えられる。メカニカルアロイング等準安定相が得られ る方法の検討が必要と考えられる。現状では、安価な元素での置換による”CaNi”相の安定化には至 っていないが、新規な高容量水素化物の存在を明らかにした意義は大きいと考えられる。 (2)高圧用水素吸蔵合金に関する研究 35MPa 程度で使用される軽量高圧容器と水素吸蔵合金を組み合わせて高圧容器の体積水素密度 を向上させる場合、体積水素密度の高い水素吸蔵合金が必要となる。その候補として、合金密度の 高い希土類系 AB5 型が挙げられる。この合金系の最大水素吸蔵量は数 MPa の水素圧下ではほぼ H/M=1 程度かそれ以下であるが、実際に使用される数十 MPa の領域における水素吸蔵特性は道の 部分が多い。そのため、AB5 型合金(A=Y, Nd, Sm, Gd; B=Ni)について 35MPa までの水素吸蔵 特性を評価した。 希土類系 ANi5 型合金の水素吸蔵特性を測定したところ、5MPa 以下ではほとんど水素を吸蔵し ない YNi5 と GdNi5 が 35MPa、25℃でそれぞれ H/M=0.59 及び H/M=0.78 まで水素を吸蔵するこ とが明らかになった。また、プラトーの平衡圧(25℃)は、それぞれ 2.5MPa 及び 12MPa であっ た。-78℃ではそれぞれ H/M=0.89 及び H/M=1.02 まで水素を吸蔵し、組成調整による平衡圧制御 によって水素吸蔵量向上の可能性が示された。SmNi5 及び NdNi5 では、それぞれ H/M=0.84(25℃) 及び H/M=1.12 (-78℃) 、H/M=1.09(25℃)及び H/M=1.21(-78℃)という水素吸蔵量を示した。 301 25℃における平衡水素圧は、それぞれ 12MPa 及び 1.8MPa であった。特に NdNi5 は合金基準で 120kg-H2/m3 という比較的高い体積水素密度を示すことがわかった。これは、現状の軽量高圧容器 に体積分率の 15%程度を充填することによって、同じ体積で高圧容器のみの場合の約 1.5 倍の水素 貯蔵能力(走行距離にして約 450km)が実現可能であることを示している。 (3)無機系水素貯蔵材料の研究 アルミニウム原子の周りに水素原子が4個配位した錯イオン[AlH4]−を含む一連の化合物である アラネート(Alanate)のうち、例えば Na 塩(NaAlH4)は加熱によって以下のように二段階で水 素を放出して分解する。 Na AlH4 → 1/3 Na 3AlH6 + 2/3 Al + H2 (1) 1/3 Na 3AlH6 → 1/2 Na H + 1/3 Al + 1/2 H2 (2) これを水素吸蔵材料としてみた場合、その水素含有量は 5.6%であり一般の水素吸蔵合金をかなり凌 駕する。しかしながら、反応に必要な活性化エネルギーが水素吸蔵合金よりかなり高く、200℃程 度まで温度を上げない限り反応速度が遅くて実用化はほぼ諦められていた。このような状況の中、 Bogdanović らは NaAlH4 に Ti を添加することにより反応速度が上がり水素吸蔵材料として利用で きることを見出し、それ以後この物質を水素吸蔵材料として利用しようという試みが再び世界中で 活溌になってきた。その中で更なる反応速度の向上と反応温度の低下が求められることとなった。 上記の問題の解決への手がかりを得ることを目指して、平成 13 年度よりハワイ大と共同で反応 速度測定に関する研究を開始し、Ti(OBu)4 及び Zr(OBu)4 を添加した NaAlH4,Na3AlH6 の分解反 応、すなわち水素放出の速度定数 k を様々に温度 T を変えながら決定した。その結果、次のような 興味深い点が観察された。 (イ)触媒を添加した NaAlH4 の分解は 150℃などの高温においては(1)式と(2)式が連続する一次の 連続反応速度式で良く表されるものの、100℃などの低温になると一次連続反応速度式からは大き く乖離する。 (ロ)連続反応で見たとき、二段目、つまり Na3AlH6 の分解は一段目の NaAlH4 の分解に比べて圧 倒的に遅い。 (ハ)ところが、Na3AlH6 をまず精製し、これに Ti を添加した場合には分解反応速度は NaAlH4 のそれと同程度である。 (ニ)Zr の場合には新鮮な Na3AlH6 に添加しても分解速度は Zr を添加した NaAlH4 よりも遅い。 (ホ)ln(k/T)対 1/T プロット(Eyring plot)の勾配から得られる分解反応の活性化エンタルピーΔ‡ H は Δ ‡ H (Ti-NaAlH4) ≈ Δ ‡ H (Ti-Na3AlH6) ≈ 100 kJ ∙ mol-1 < Δ ‡ H (Zr-NaAlH4) ≈ Δ ‡ H (Zr-Na3AlH6)≈135 kJ∙mol-1 という関係になった。 以上の観察から、分解反応には何らかの形で原子の拡散が反応を律していると考えられる。また NaAlH4,Na3AlH6 の如何に関わらず律速過程はよく似た反応機構に支配されている可能性がある、 と結論づけられる。上記の結果は、従来からの NaAlH4 の反応速度に関する理解を塗り替えるもの であり、NaAlH4 等水素吸蔵量が 5.5mass%を超えうる錯体系水素貯蔵材料の反応速度向上への手 がかりとなると期待される。 302 (4)炭素系材料の評価 効率的且つ安全な水素輸送貯蔵技術に関して、1997 年に Dilon らが carbon nanotube に、続い て 1998 年に Rodriguez らが graphite nanofiber に数十重量百分率の水素を実用化可能な圧力・温 度にて貯蔵できると発表したことを発端として、 「炭素への水素貯蔵」に注目が集まった。しかし、 彼らの発表から数年を経てなお、実用に供し得るほどの吸蔵量が追試・確認されたとは言い難い状 況であった。この原因は勿論、 「水素吸蔵炭素材料」の適切な製造を追試者が行っていない可能性が あるものの、これとは別に看過されてならない重要な点は、果たして報告された吸蔵量に信頼がお けるのか否かと言うことである。炭素材料は、同じく水素吸蔵材料として研究が行われている金属 水素化物に比して嵩密度が低く、また水素雰囲気下での挙動が金属とは全く異なることが予想され、 吸蔵量評価に際しては、その実験条件などに再検討が必要であることが明らかである。 以上のような状況に鑑みて、まずは水素吸蔵量の測定法の全面的な見直しと、高信頼性測定のた めの装置開発を行ってきた。紙幅に詳述の余裕はないが、見直しの主な点は、装置の適切な温度制 御、装置漏洩率の明示的評価、平衡待ち条件の検討、計算に際して正しい気体状態方程式の使用、 等である。これらの点に配慮して測定装置を試作し、500mg 程度の試料を用いたときには 10MPa 付近の水素圧力において 0.1mass%オーダーでの吸蔵量の違いを区別することがほぼ可能となった。 その中で、関西熱化学製活性炭 Maxsorb(公称比表面積 3000m2/g)を標準試料としてタスク11 関係機関に配布し、10MPa-室温(300K)の条件において 0.5∼0.6mass%の水素を吸着することを 確立した。 12−1.事業全体の成果(タスク12) タスク12の研究開発は、①革新的・先導的技術の収集、②革新的・先導的技術の評価、③革新 的・先導的技術の概念検討研究、④革新的・先導的技術の基礎研究、⑤新規開発分野・項目の検討で ある。これらに対して、以下に記載するような成果が得られており、本タスクの目的に対して十分 な成果をあげることができた。 (1)革新的・先導的技術の収集 国内、国外を問わず、新規提案に対して常に窓口を開けて随時新規提案を受け付ける体制をと る一方、委員会委員による技術シーズの発掘(形式上は提案の形)、および平成14年度には新た にNEDOホームページによる新規アイデア募集という手法により、調査・収集を行った。その 結果、表1に示すように第Ⅱ期では42件、第Ⅰ期と合算すると76件の技術シーズ(提案)を収集す ることができた。 年 度 平成11年度 平成12年度 平成13年度 平成14年度 提案件数 8 5 3 26 表1 提案の累積件数 累積件数(第Ⅱ期分) 8 13 16 42 303 総累積件数(第Ⅰ期分含む) 42 47 50 76 (2)革新的・先導的技術の評価 本研究で調査・収集される技術は本格的に研究されていないものが大部分になるため、その技術 的実現可能性を見極めるための概念検討を実施する必要が生じる。そこで、調査・収集した技術シ ーズについては、委員会での評価に先立ち、WGで概念検討の必要性等の評価案を検討することを 原則とした。 提案技術を評価するには、WGによる「階層化意志決定法(AHP:Analytic Hierarchy Process) 」 を使った採点評価と委員会における調整評価の2段階の手順を経て評価する手法をとった(詳細は 平成8年度報告書“NEDO-WE-NET-969”参照)。 これらの評価手続きは、概念検討を必要とする順番を決定するために実施するものである。なお、 優れた提案技術であっても我々の調査対象としての価値が低いものは評価が低くなるため、本手法 で得られる順位は提案技術の一般的優劣を評価したものではない。 (3)第Ⅱ期の概念検討実施件名 (3)第Ⅱ期の概念検討実施件名 上記の評価を経て選抜された第Ⅱ期の概念検討実施件名を表2に示す。単年度での研究成果を WGおよび委員会にて評価し、評価が高いものは次年度に継続テーマとして概念検討(*1∼* 5)として実施した。 、また、研究規模の拡大が必要なものは基礎研究(*6)として実施した(研 究件名が変更される場合がある)。なお、当然ながら、評価が低い場合は単年度で終了とした。 304 表2 第Ⅱ期の概念検討実施件名 概念検討実施件名 年度 11 12 13 14 実施先 プロトン導電性固体電解質薄膜作製に対するレーザアブレーション法の 適用の可能性調査研究 静岡理工科大学 高温触媒燃焼を利用する等温膨張ガスタービンシステムの可能性調査研究 九州大学 水素エネルギー社会実現へ向けての技術開発ニーズの調査研究 (社)化学工学会 天然ガスを原料とした二酸化炭素を発生させない水素製造法の調査と 副産物の評価 *1 大阪ガス/千葉大学 水素選択性ヒドロゲナーゼセンサーの技術的可能性調査研究 新コスモス電機 ナフテン系水素貯蔵輸送媒体の新規脱水素反応の調査 *2 東京理科大学 非平衡メタン改質型ガスタービンシステムの調査研究*3 東芝 酸化鉄を媒体とした水素貯蔵と発生法の調査検討 東京工業大学 バイオマス・廃棄物を原料とした部分酸化による水素ガス製造システムの 調査研究 *4 荏原製作所 無機有機複合系新規水素貯蔵材料の探索 *5 山梨大学 非平衡メタン改質型ガスタービンシステムの調査研究 *3 東芝 過熱液膜方式によるデカリン/ナフタレン系の新規水素化・脱水素化を 用いた水素貯蔵システム技術研究 *2 *6 天然ガスを原料とした二酸化炭素を発生させない水素製造法、副産物の 評価 *1 白金族代替触媒開発の可能性に関する調査研究 千葉大学 ゼオライトの形状選択性を利用した高純度水素の製造の調査研究 岐阜大学 熱分解ガス化方式による高効率水素ガス製造システムの調査研究 *4 荏原製作所 無機有機複合系新規水素貯蔵材料の探索 *5 水素遮断性DLC薄膜の開発研究 大気圧マイクロ波純水蒸気プラズマを利用した炭化水素の改質調査研究 超高性能脱硫技術を基盤とする革新的な水素製造システムの開発 研究 水素透過機能を有する膜型反応器を用いるCH4からの高純度水素ガス 製造プロセスの開発研究 水素・酸素を同時利用するエネルギーアライアンス調査研究 小型軽量冷凍機による液体水素タンクの蒸発ロスゼロ化調査研究 山梨大学 高知工科大学 東京工業大学 日石テクノロジー 大阪ガス 早稲田大学 大分大学 名古屋大学 武蔵工業大学 (4)革新的・先導的技術の基礎研究 概念検討にて調査・評価された新技術において、有望でありさらに実現の可能性を研究する必要 があると判断されたものについては、研究の規模を拡大し基礎研究を実施した。表3に基礎研究実 施件名を示す。 なお、「磁気冷凍法による水素液化技術の基礎研究」は、第Ⅰ期の概念検討にて有望と評価され、 平成12年度より基礎研究として実施された。平成14年度も実施予定であったが、WE−NET第Ⅱ 期研究開発が1年短縮され、当初の目的達成が困難になるなど変更への対応が不可能となったため、 平成13年度で終了とした。本技術は専門家の間でも期待が大きく、 「水素エネルギー実用化の上で キーテクノロジーのひとつである。 」との評価を得ていたので、近い将来の再開が望まれる。 305 表3 第Ⅱ期の基礎研究実施件名 年度 基礎研究実施件名 実施先 新日石テクノロジー 14 過熱液膜方式によるデカリン/ナフタレン系の新規水素化・ 脱水素化を用いた水素貯蔵システム技術研究研究 *6 12-13 磁気冷凍法による水素液化技術の基礎研究 CRYOFUEL SYSTEMS(米国) 13-14 磁気冷凍装置用材料調査研究 川崎重工業 12−2.研究開発項目毎の成果(タスク12) プロジェクト最終年度である平成14年度の研究開発項目に関して、成果を以下に示した。 (1)革新的・先導的技術の調査評価 ①白金族代替触媒開発の可能性に関する調査研究 資源、エネルギー、環境、バイオの各分野において、多くの優れた触媒の開発が常に行われてき たことは周知の事実である。その触媒のなかで白金族元素が主要な成分元素として大量に使われて おり、しかも、その優れた性質故に、代替物質は現在皆無である。因みに2000年統計では、自動車 排気ガス処理触媒に使用されている白金族資源の年産量に対する割合はPt:55%, Pd:60%, Rh:89% に達しており、その資源的存在量の希少性、生産地の偏在性、高価格性が改めて認識されている。 さらに懸念すべき要因として、クリーンエネルギー水素の製造・利用、さらに高分子電解質形燃 料電池の開発が急務となり、白金族元素の需要の急増が見込まれ、その資源の枯渇もさることなが ら、価格の急騰が懸念されている。 本調査研究は白金族元素の機能を代替する触媒の開発の可能性がどこにあるか、また、次善の手 段としてその使用量の超削減技術の開発をどう進めるべきかについて、12 の分担課題を設定し、内 外の研究動向を的確に把握すると同時に、一部に独自の視点から、その可能性の実証的実験を行っ た。具体的には、 ⅰ 独創的な最新のナノ構造触媒の設計法に関する調査研究 ⅱ 白金族触媒の使用量の大幅削減の可能性 ⅲ 白金族触媒代替触媒(非白金族系貴金属、卑金属、非金属)の開発の可能性 を戦略目標とし、本格的な研究開発事業を推進すべき基盤を構築することを目標とした。 元素に制約されない新しいナノ化学の発展による白金族代替触媒の開発の可能性が複数の方法で 可能であることを指摘し、その調製法の新規開発が重要であると結論した。 本研究開発は長期的戦略で研究を実施すべきテーマである。 306 ②ゼオライトの形状選択性を利用した高純度水素の製造の調査研究 ②ゼオライトの形状選択性を利用した高純度水素の製造の調査研究 車載用燃料電池の燃料の供給法として、軽油などの水蒸気改質による高純度水素の製造が検討さ れている。しかし石油系炭化水素には必然的に含まれる微量の硫黄化合物が、水蒸気改質および燃 料電池に用いられる貴金属触媒の急速な活性劣化を招くことが危惧されている。軽油中に含まれる 硫黄化合物は事前に深度脱硫した際にも除去が困難とされており、ジベンゾチオフェン(DBT)がその 代表的な化合物であることが知られている。 本調査研究では、ゼオライトの形状選択性を利用 して嵩高いDBT等の硫黄化合物と貴金属触媒の接触 を防ぐこと(図2.2-1)で、触媒の活性劣化および製 品水素の硫黄汚染を抑制することを目的として、ゼ オライト担持貴金属触媒およびゼオライト/パラジ ウム複合膜の調製を検討した。 含浸法、イオン交換法およびDry-mixing法により 調製したゼオライト担持貴金属(Ru, Rh)触媒による ブ タンの水 蒸気改 質を検 討した。 これら のうち Dry-Mixing法で調製した触媒が最も高活性を示し、 その活性は市販の改質触媒に匹敵するものであった。 ゼオライト/パラジウム複合膜の調製に関しては、 図 2.2-1 形状選択性を利用した 高純度化水素の製造概念図 管状アルミナ支持体へのゼオライト薄膜の形成を試 みた。予め調製したモルデナイト種結晶を支持体上にデイップコーティングすることで緻密なゼオ ライト膜の調製に成功した(図2.2-2)。 最終目的とされる難除去性硫黄化合物を微量含む軽油からの高純度化水素製造に関する検討にま では到らなかった。今後、高活性・長寿命な触媒系の探索および配向性を有する緻密なゼオライト 薄膜の作製に関して検討を続けていきたい。ゼオライトの形状選択性を利用したアイデアは可能性 があると判断できる。サルファーブロックのデータが出ていないことは残念であるが、今後の研究 成果に期待したい。 (a) (b) MOR MOR Al2O3 Al2O3 ×2000 10 μm 図 2.2-2 ディップコート法で調製したモルデナイト(MOR)膜断面の SEM 像 コーティング条件、(a):種結晶の存在下、(b):種結晶の無い状態 307 ③水素遮断性DLC 水素遮断性DLC薄膜の開発研究 DLC薄膜の開発研究 水素の貯蔵・配管材料からの漏洩、高圧水素にさらされる各種部材の水素脆性が課題である。本 研究では水素遮断性に優れたダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜を開発する。DLC は酸素など に対して遮断性があり、飲料用容器へのコーティング技術が開発されつつある。DLC 薄膜の作製、 水素遮断性の評価として水素透過量の測定と固体中水素の挙動の非破壊測定、および DLC の水素中 での摩擦摩耗特性の評価を行った。 飲料用 PET ボトルの内面に DLC コーティングされた試料を開発中の企業より試供を受け、水素遮 断性を評価した。図 2.2-3 のように PET ボトルを真空中容器中に保持し、内部の水素が PET を透過 して外部へ漏洩する流量を測定した。試験に用いたボトルは PET の厚さが 200∼300 [μm]、DLC コ ーティングは内側に 100 [nm]程度以下の薄膜で、茶褐色に着色して見える。PET ボトルを超高真空 容器に入れて、内外ともに数 10 時間以上排気した後、内部に最大 0.2 [MPa]の水素ガスを充填した。 充填後 10 分程度で水素が漏洩し始め、約 1 時間で定常状態に達した。図 2.2-4 のように DLC 膜のな い PET ボトルに比べて、DLC コーティングのある PET ボトルでは漏洩量が最大で約 90%以上減少した。 漏洩過程の時間変化、時定数の違いなどは見られなかった。実験により DLC 薄膜には水素遮断性が あること、またアルミニウムの薄膜と比べて遜色ないことなども確かめられた。水素ガス遮断性は 薄膜の作製方法や作製条件に依存することから、さらに遮断性を向上するためには作製条件の最適 化が必要である。 電離真空計 圧力計 水素ガス PETボトル 超高真空容器 到達10-5Pa 内部排気ライン ターボ分子ポンプ 図 2.2-3 水素遮断性測定システム 図 2.2-4 水素リーク量の充填圧依存性 固体中の水素を非破壊測定する方法として、高速イオン散乱による反跳粒子検出法を立上げ、測 定条件の最適化と分解能評価を行った。深さ分解能約 10 [nm]以下、最大検出深さ 300 [nm]が得ら れた。さらに分解能を向上するため飛行時間型検出器の準備を行なった。 水素中で DLC 膜の摩擦係数を測定すると、約 0.02 という超低摩擦係数が得られ、この値が真空中 よりも長時間持続されることがわかった。水素中のオイルフリー潤滑剤としても応用が期待される。 水素遮断に対して、DLC薄膜の効果があることを初めて示したことは評価出来る。しかし、DLC薄 膜本来の性状が必ずしも明らかにされていないため、今後は膜性状と水素遮断性の相関などをきち んと把握する必要がある。 308 ④大気圧純水蒸気マイクロ波プラズマを利用した炭化水素の改質調査研究 本研究では、燃料電池用水素供給のために、大気圧純水蒸気マイクロ波プラズマを利用したコン パクトな改質器のFSを行った。このプラズマ法の利点としては、(ⅰ)触媒を必要としない、(ⅱ) 原料の不純物による被毒の心配が無い、(ⅲ)耐久性が高い、(ⅳ)装置の小型化・軽量化が可能、(ⅴ) 燃料の選択肢が広い、(ⅵ)応答性・始動性が良い、等の特徴が考えられる。その一方で、電気駆動 のためのエネルギー効率の問題を抱え、これらを実験的に検証することを目的とした。 平衡計算および理想状態を仮定したプロセス計算により、妥当な実験条件を探索した。そして、 この結果を用いて、実際に改質実験(図2.2-5)を行った。実験では、ヘキサンとイソオクタンを利 用し、その流量や水蒸気・燃料比(O/C)を変化させて、転化率・水素収率、エネルギー変換効率への 影響を検討した。実験の結果、両炭化水素とも触媒なしで改質が瞬時に行われ、上述したプラズマ 法の特徴を確認できた。ヘキサンの場合、O/C比を1と固定し、全体の流量を変化させたところ、低 い流量ではヘキサン・水蒸気の両者の転化率ともほぼ0.9となり、流量が増えるにつれて、転化率が 減少する結果が得られた。 次にヘキサン流量を固定し、水蒸気流量を変化させて実験を行ったところ、水蒸気流量が増える につれて、水の転化率は一様に下がるが、ヘキサン転化率は、はじめ下がるものの、その後はほぼ 一定となった。 図2.2-6にヘキサン実験結果から求めたエネルギー変換効率を示す。計算では、(ⅰ)COはシフト反 応によりH2に変換できる、(ⅱ)マグネトロンのエネルギー変換効率を0.5とする、の仮定をおいた。 これより、 プラズマ改質法の効率(50%弱)は低く、 現状の触媒改質に匹敵しているとは言い難いが、 理論的に80%近い効率が望めること、上述した流れの効果が期待できることから、プラズマトーチ 部を中心とした装置の改良が必要と考えられた。 改質率は悪い値ではない。また、触媒不要のメリットもあり、ある程度の効率で実際にヘキサン の改質が出来ている。この結果は評価できるが、エネルギー効率の問題は未解決であり、解決する 方策を検討する必要があると思われた。 1.0 efficiency 0.8 0.6 0.4 0.2 ideal meas. 0.0 0.7 0.9 1.1 1.3 hexane [mmol/s] 図 2.2-5 実験装置 図 2.2-6 エネルギー変換効率への影響 (O/C=1, シフト反応考慮有り) 309 1.5 ⑤超高性能脱硫技術を基盤とする革新的な水素製造システムの開発研究 本研究では、インフラが整備されているガソリンから「燃料電池自動車用の高品質水素を製造す るシステム」の開発を目指す。ガソリン市販品(総硫黄含有量:100 ppmwt以下、JIS規格)を対象 とし、低コストで硫黄化合物をほぼ完全に除去(10 ppb以下)する新規超高性能脱硫技術を開発す ること、さらに当該超高性能脱硫技術に基づき、ガス改質・CO変成プロセスの高効率化を図り、革 新的な水素製造システムを開発することを目的とする。 固体高分子形燃料電池(PEFC)等に適用可能な高品質水素ガスを ガソリンから製造するための 提案システムの概略を図2.2-7に示す。本システムの構成は、脱硫プロセス、ガス改質(水蒸気改質) プロセス、およびCO変成プロセスから成る。 ガソリンの気相脱硫評価試験装置は、液体流量制御・加熱気化装置、気相脱硫反応装置、硫黄分 精密計測装置(FPD検出器)等から成る。 本研究では、市販ガソリンを加熱気化させ、亜鉛フェライト・モリブデン系脱硫剤を用いて、気 相脱硫試験(表2.2-1)を実施した。脱硫反応条件は硫化ジメチルのモデル反応と類似条件である。 市販ガソリンの硫黄分(19.5 ppmwt)は、脱硫処理により9.2 ppmwtまで低減することが観測された。 当脱硫試験においても、硫化ジメチルの脱硫実験と同様に、ガソリン中の硫黄分は30 ppb程度にま で低減することが予測されたが、低レベルの脱硫試験結果となった。市販ガソリンは各種石油精製 物質のブレンド製品であり、水素化脱硫がかなり困難とされる立体障害の大きなアルキル基を有す るベンゾチオフェン類等が10 ppm程度混入している可能性があり、さらに検討を要する。 当初想定した程度までガソリンの脱硫率を上げる具体的な方策・触媒反応条件および実験結果を 示す必要がある。 図2.2-7 高品質水素製造システム(概略コンセプト) 310 表2.2-1 ZnFe2O4-SiO2-MoS2系によるガソリン脱硫試験結果 ⑥水素透過機能を有する膜型反応器を用いる CH4からの高純度水素ガス製造プロセスの開発 現在、種々の分野で、高純度のH2の需要が高まっており、少ないエネルギーで水素を精製できる プロセスの開発は重要な意義がある。本研究では連続的に水素を精製できるプロセスの開発を目的 とて、反応として CH4+0.35O2+1.3H2O=CO2+3.3H2 に着目して、この反応を進めることのできる触 媒と反応条件の最適化を行った。また、現在、実用化が期待されている高分子電解質形燃料電池へ 本プロセスを応用した場合の熱効率の計算を行った。本研究では低温でも水素を得ることを目的に Pd-Agからなる水素透過膜を用いた膜型反応器による平衡シフトを検討した。 種々の触媒について検討したところ、Ni/SiO2系触媒が優れた活性を有することがわかった。そ こで、本研究ではNi/SiO2系触媒について反応条件の最適化を行った結果、目的とした△H=0kJ/mol となる CH4+0.35O2+1.3H2O=CO2+3.3H2 に最も近いのはPO2=9.12kPa, PH2O=45.6kPaのときであ ることがわかった。この条件では炭素の生成量は無視できる程度であり、COの生成量も少ない。 そこで、図2.2-8には最適化された反応条件でのCH4の改質反応の温度依存性を示した。検討した 500∼600℃のすべての温度域で、H2/CO2=3 であり、COがほとんど生成しなかったので、ほぼ目的 とした反応が生じることがわかる。温度の増加は反応の促進に有効であり、図に示すように600℃で は水素生成速度は2 mmol/minと大きくなった。また、温度の増加はCOおよびC の生成を抑制し、ほ ぼ目的とした反応を進行でき、かつCH 4 の転化率も約90%と大きくなること がわかった。以上より、本年度の研究 により、Ni/SiO2系触媒を用いること で 、 水 素 製 造 に 最 も 理 想 的 な CH 4 +0.35O 2 +1.3H 2 O =CO+3.3H 2 を進行で きることがわかった。 また、1kW PEMFCへの応用を仮定し たプロセスフロー(図2.2-9)により、 熱効率を計算した。 従来のスチームリフォーミングに比 図 2.2-8 最適条件での CH4-O2-H2O 反応の温度依存性 311 較すると、反応温度が600℃と低く、かつ、S/Cが小さく、カーボン析出がないことは高く評価で きる。 600℃ ℃ H2O 2296l/h H2 752l/h 放熱ロス 3% H2 752l/h 加湿器 70℃ 貯 湯 槽 CH4 温度 70℃ O2 41.8l/h CH4 228l/h 23.9kJ/h H2O Air 628l/h Air 変換効率55% 廃熱効率30% 1287.4kJ/h 296.4l/h 2296l/h 380 l/h 1kW ac. 補機効率90% PEFC H2O 70℃ ℃ 296.2l/h 41kJ/h 25.1l/h INV 90% 1.23kW 26.3kJ/h 反応器 600℃ ℃ H2 752 l/h 総合熱効率:85.5% 総合熱効率: 発電効率:49% 発電効率: 廃熱温度 70℃ 図2.2-9 1kW PEMFCへの応用を仮定したプロセスフロー ⑦水素・酸素を同時利用するエネルギーアライアンス構想調査研究 水素・酸素を同時利用するエネルギーアライアンス構想調査研究 水素だけでなく酸素も積極的に同時利用するエネルギーアライアンス構想(図2.2-10)を提案し た。本構想では水電解による水素製造に伴い副生する高純度の酸素を未利用のまま廃棄するのでは なく、純酸素燃焼システム、病院等での直接利用などの酸素利用システムに供給して積極的に利用 し、酸素と水素利用の両立を図ることにより総合的なエネルギー利用効率の向上を目指している。 本アライアンス構想の構築に向けたポイントとしては、高純度酸素の効率的な利用を可能とする 要素技術の開発、ならびに酸素の需要変動を吸収する酸素の高密度貯蔵技術の成立、そしてそれら を含めた水素・酸素同時利用システムがエネルギー、コスト、あるいは環境面から従来システムに 比べて優位性を持つことが絶対条件である。 本調査研究では,提案構想の成立要件を検討するために、水素・酸素同時利用システムのポテン シャルについて省エネ性、コストの面からFSを行うとともに、純酸素燃焼、酸素貯蔵などの要素技 術に関するFS、基礎調査を行った。 312 再生可能エネルギー 太陽光・ 水力・風力 深夜余剰電力 火力発電所 送電 H2 - + O2 Dispenser O2 Station 電気分解 酸素利用 システム H2 Station 水素利用 システム 送電 燃料電池 熱供給 GT MGT Boiler 純酸素燃焼 天然ガス 図2.2-10 水素・酸素同時利用エネルギーシステムの概念 酸素需給量の現状を把握するために文献調査を実施し、日本全国における酸素の需給量、業 種別酸素消費量、ならびに民生需要である病院における酸素需給量、コストを明らかにした。 酸素の主要消費施設である病院に副生酸素の利用を行う燃料電池コジェネレーションシステ ム(CGS)を導入した場合を想定し、その経済的な評価を行った。この結果、燃料電池CGS用水 素製造時の副生酸素の供給可能量は、病院の酸素需要量に対して圧倒的に供給過剰となった。 また、経済的には多くの病院で従来システムに比べ燃料電池CGSの可変費の方が高い結果となっ たが、水素製造コストが下がった場合、一部の病院においては燃料電池CGSの可変費が従来シス テムの可変費と酸素購入コストの合計値よりも小さくなり、経済的な優位性が生じる可能性が 示唆された(図2.2-11) 。 一方、各病院において必要な酸素をPEM水電解によって製造する場合を想定した結果、大部分 の病院において燃料電池CGSから供給可能な電力量は年間需要の10%以下となった。経済的には、 従来システムにおいて酸素購入コストまでを考慮すると、燃料電池CGSの方が低コストとなった。 以上の試算のとおり、病院での水素・酸素同時利用は現実では困難な面が多いが、水素製造コス トが低下する場合や酸素需要にあわせて燃料電池CGSを稼動する場合に、副生酸素の利用を行う 燃料電池CGSの経済的なメリットが生じる可能性が示された。 さらに水電解にエネルギー貯蔵機能を持たせることにより、水電解のメリットを自然エネル ギー発電出力変動の吸収に求め、その省エネルギー性について検討した。この結果、自然エネル ギーを直接利用できるシステムが最も優れているが、発電出力変動の調整を行う場合、電解効率 90%の水電解を導入した方が、充放電効率70%の蓄電池により自然エネルギー発電電力を蓄え るシステムより省エネルギー性が高くなる結果が得られた。 最後に、酸素の高密度貯蔵技術に関して、吸着現象を利用する技術と化学反応を利用する技 術の両面から検討した。この結果、現在の酸素ボンベの貯蔵密度と比較して、ゼオライト系吸 着材は1/5程度であったが、酸化リチウム/過酸化リチウム系材料では約3倍程度の高貯蔵密度 313 を得ることが原理的に可能であることが明らかとなった。 以上の検討結果より、水素・酸素を同時利用するエネルギー利用形態は、今後導入可能性を 有するものと判断された。 エネルギーシステムにおける電解水素利用に関しての調査、医療施設での酸素利用の分析は 新しい試みで、一定評価できる。 250 従来システムのに対する 燃料電池PEFCの可変費の割合(%) 従来システムが酸素購入コストを含まない場合 従来システムが酸素購入コストを含む場合 200 150 100 50 0 1000 10000 2 延床面積(m ) 100000 図 2.2-11 規模別の病院における燃料電池 CGS と従来システムの可変費の比較 (水素製造用電力単価:5 円/kWh、酸素購入コストは各病院の実績値) ⑧小型軽量冷凍機による液体水素タンクの蒸発ロスゼロ化調査研究 水素燃料を車に車載する方法で、単位重量当たり、単位体積当たりにエネルギーを最も多く積載 できる方法は、液体水素である。液体水素は−253℃と極低温で保存する必要から、断熱容器中に貯 蔵する必要がある。完全断熱は物理的に不可能であり、断熱容器内の液体水素が水素ガスになるた め、容器内の圧力が上昇する。容器内が許容圧力以上になると、安全弁から水素が外部に放出され るため、蒸発ロスになる。液体水素を搭載し、3日以上車を使わないで駐車している場合に必ず起 こる現象である。液体水素が最も高いエネルギー密度を実現できる優秀な水素搭載法であっても、 蒸発ロスの発生により、その利用が敬遠されている。 小型冷凍機を液体水素が貯蔵されている断熱容器内に設置し、容器内で蒸発した水素ガスを再液 化し、圧力の上昇を阻止できる小型冷凍システムの技術開発が可能であるか調査した。その基本的 考え方は、断熱容器でできる限り入熱を抑える。どうしても経済上、技術上抑え切れない入熱を小 型冷凍機システムで容器内からくみ上げて、容器内の液体水素蒸発ロスをゼロ化することを前提に して調査した。 調査の結果、軽量小型、長寿命、簡単な構造、高い利便性が期待できる車載用スターリング型パ ルス管冷凍機が開発できる可能性があるという結論に至った。図2.2-12に蒸発ロスゼロ化小型軽量 314 冷凍機付液体水素タンクの概要例を示す。加えて、小型軽量冷凍機の開発は、波及効果として、安 価さも加わり超伝導送電線、高性能高効率送受信アンテナの冷却、超スーパーコンピュータ素子の 冷却、小型高性能シーカ、MRIの利用等に積極的に使われるようになり、大きな波及効果が期待でき る。 輻射浸入熱:0.326W 伝導熱浸入:0.400W 内訳 ・サポートからの熱浸入: 0.100W ・配管からの伝導熱親友:0.100W ・冷凍機設置に伴う伝導熱浸入:0.200W スターリング型パルス管冷凍機 冷凍機の形状,設置方法は未検討 再凝縮器 内槽補強パイプ 真空断熱槽 液体水素槽 インナーベッセルサポート 素材 (低熱伝導複合材),断面積, 長さで入熱が決まる. 注)熱収縮,強度に考慮が必要 配管 LH2 固体伝導浸入熱 固体伝導浸入熱 熱 浸入 輻射 液体水素補給 水素消費へ 真空断熱内槽 高強度と軽量を両立が重要 真空断熱外槽 高強度と軽量を両立が重要 スパーインシュレーション 材質,層数, 巻き方が性能に影響 図2.2-12 蒸発ロスゼロ化小型軽量冷凍機付液体水素タンクの概要例 蒸発ロスゼロ化がパルス管冷凍機の採用により実現可能である見通しが得られたことは評価でき る。 ⑨ 熱分解ガス化方式による高効率 水素製造 水素製造システムの調査研究 製造システムの調査研究 バイオマス・廃棄物から部分酸化 にて製造した水素ガスを、燃料電池 原料 Feedstock 車の燃料として使用することを想定 し、日本国内におけるバイオマス・ 廃棄物の水素製造ポテンシャルを調 査する。国内における2010年度のバ イオマス水素供給ポテンシャルは、 約74億Nm3年、廃棄物由来の廃プラス チックとRDFの水素供給ポテンシャ 生成ガス Producer Gas 燃焼ガス Combustion Gas ガス化室 Gasification Chamber チャー燃焼室 Char-Combustion Chamber 流動媒体沈降室 Bed Material descending zone 熱回収室 Heat Recovery Chamber (Optional) 層内伝熱管 Heat Transfer Tubes 流動媒体& 熱分解残渣 (チャー、タール) Bed Material & Pyrolysis Residue (Char, Tar) 蒸気 Steam 空気 Air 図 2.2-13 内部循環流動床ガス化炉(ICFG)の概念図 ルは、94億Nm3/年、合計でバイオマス・廃棄物の合計で168億Nm3/年と推計された。これを今後実用 化される燃料電池車の導入量に換算すると、バイオマスで約990万台、バイオマス・廃棄物で約2,242 万台を導入できる試算となった。また、ケーススタディーとして、木くずを原料としたガス化によ 315 る水素製造システムの概念検討を行う。具体的には、内部循環流動床ガス化炉を適用した水素製造 システムの概念検討を行った。平成14年度は、さらなるエネルギー回収効率の向上を目的に、平成 13年度に立案した100t-原料/日規模の熱分解ガス化方式による水素製造システム(図2.2-13)の最 適化の検討と、本システムのコンセプトの具体化を図るために実証規模として最小の規模である 20t-原料/日規模の熱分解ガス化方式による水素製造システムの基本設計を行った。 100t-原料/日規模の水素製造システムの最適化に関する検討では、エネルギー回収効率の向上を 目的とした要素構成技術の検討を行なった。その結果、PSAオフガスのガス化炉熱源への利用と低温 シフト反応の導入などの要素構成技術の最適化により、エネルギー回収効率57.1%を達成できる見 通しを得た(製品水素を圧縮しない場合)(図2.2-14)。また、原料の水分を変えたときのエネルギ ー回収効率について検討を行った結果、原料水分が4.8%、20%、40%の場合のエネルギー回収効率 2段転化反応器+燃焼方式変更 エネルギー回収効率 57.1% 原料中水分(4.8%)+水素非圧縮+ 2段転化ケース 高温シフト反応器+燃焼方式変更 +1.4% エネルギー回収効率 55.7% 水素非圧縮ケース 燃焼方式変更ケース 原料中水分(4.8%)+水素非圧縮+ +高温シフト反応器+燃焼方式変更 +6.0% エネルギー回収効率 49.7% 原料中水分(4.8%)+水素圧縮(20MPa) +2.1% +高温シフト反応器 ベースケース 原料中水分(4.8%)+水素圧縮(20MPa) エネルギー回収効率 47.6% は、それぞれ57.1%、53.8%、47.1%となった(製品水素を圧縮しない場合) 。 図 2.2-14 エネルギー回収効率の比較 20t-原料/日規模水素製造システムの基本設計では、100t-原料/日規模の最適化結果をもとにプ ロセスフローの検討を行った。運転の容易性、経済性等の観点から、20t-原料/日規模では、低温シ フト反応器を省略するものとしたほか、圧縮機等の動力はモータ駆動とすることとした。上記条件 での製品水素量は530m3/h(NTP)、エネルギー回収効率は49.9%(=製品水素発熱量/(原料バイオマ ス発熱量+投入電力))となった。 また、20t-原料/日規模の基本設計結果をもとに、水素・電力・熱(スチーム)の併産システム の検討を行った。生成ガスの一部を水素製造に、残部をガスエンジン発電に、余剰熱をスチームと して利用するものとし、水素製造とガスエンジン発電の比率、余剰熱の利用量を変化させた場合の 総合効率と経済性(原料バイオマスの処理単価)の感度分析を行った。その結果、バイオマスを用 316 いて水素・電力・熱の併産を実施する場合の効率及び経済性の概略を把握できた。 本方式では低温、無酸素でのガス化を採用することにより、100t-原料/日規模で高いエネルギー 回収効率を得たこと、また、20t-原料/日規模においては、電気、水素およびスチームを併産する システムのシミュレーションを行ない、サイトに応じて経済的なエネルギー供給システムを構築で きる可能性を示したことは、評価できる。また、バイオマスを用いて水素及び電力のコプロダクシ ョンを実施する場合の成立条件等がかなりクリアーになり、本研究成果は十分評価できる。 ⑩無機有機複合系新規水素貯蔵材料の探索 水素エネルギーシステムのキーテクノロジーの一つである高性能水素貯蔵材料を探査する目的で、 各種無機有機複合系材料を合成し、それらの室温における水素吸着特性を評価した。 ⅰ)化学修飾した無機多孔体系についての結果 メソポーラスシリカの内部表面を各種のシラン化合物で化学修飾した結果、修飾する分子によっ て吸着量が変化すること、および通常の活性炭に匹敵する吸着量を示すものがあることがわかった。 化合物を種々変化させることによりさらに吸着量の多いものが得られる可能性がある。 ⅱ)炭素系材料の結果 炭素系の材料として(a)セルロースの部分炭化、および(b)無機-有機複合体から合成した無機 -炭素複合体多孔体について検討を行った。 ・セルロースの部分炭化 粒状セルロース素材を、種々の金属イオンを含む水溶液で前処理した後、600℃までの種々の温度 で真空加熱処理(部分炭化)を行い、得られた試料について吸着量を測定した。400℃で加熱した試 料は、1気圧下においては通常の活性炭の10倍以上の水素の吸着量が観測されたが、10Mpaまでの吸 着量は通常の活性炭程度であった。水素が材料に溶解している可能性が高いと考えている。 ・無機-炭素複合体多孔体 ⅰ)の実験と同様に合成した有機物を含むメソ構造複合体および架橋粘土化合物中に種々の高分 子を導入したものを窒素気流中で加熱することなどにより、メソ孔内部に炭素を導入し水素の吸着 量を測定した。大部分は活性炭よりよい吸着量を示し、中には図2.2-15に示すように10MPaにおいて 3.58mass%という大きな吸着量を示すものがあることがわかった。この材料は、水素貯蔵材料とし て有望と考えられる。 水素吸着量3.58mass%は、この分野でトップレベルの値となっている。この数字が正しければ画 期的なものであり、材料の作り方も新しいものであり評価できる。データの信頼性の追及をぜひ実 施する必要性があると考えられる。 317 図2.2-15 部分炭化セルロースの室温における水素の吸着等温線 (2)基礎研究結果の評価 ①過熱液膜方式によるデカリン/ナフタレン系の新規水素化・脱水素化を用いた 水素貯蔵輸送システム技術研究 炭化水素系の化学媒体は、水素含有量の大きさや液体状態であることから、運搬の利便性などの 利点がある。水素貯蔵・輸送媒体として、水素貯蔵量が多く、水素化・脱水素化が容易である炭化 水素化合物のうち、水素含有量が7mass%と比較的多いナフテン系シクロヘキサンおよびデカリン について調査検討を実施した。具体的には、ナフテン系水素輸送貯蔵媒体の脱水素反応の脱平衡法 として、沸騰還流条件下で、液膜型水素触媒反応方式をナフテン系脱水素反応に適用する場合の技 術的可能性調査を回分式反応を用いて検討したところ、210℃において平衡転嫁率(1.2%)を上回 る32.0%の転嫁率を達成することができた。回分式反応器による検討結果を踏まえて、平成14年度 より基礎研究にステップアップし、平成14年度は、 「過熱液膜方式脱水素連続反応ベンチ装置」を新 設/運転し、連続式反応器においても従来の回分式反応器の場合と同様に定常的な過熱液膜現象が 生じることを確認した。これと並行して、高強度の活性炭クロス(織布)担体や、複合触媒の開発等 を行ない、これらの知見をベースとした「車載型過熱液膜方式脱水素反応装置」及び「定置式過熱 液膜方式脱水素反応装置」それぞれの概念設計までを実施した。 ⅰ)過熱液膜方式脱水素連続反応ベンチ装置の設置/運転 ベンチ装置(0.8m(縦)×1.6m(横)×1.6m(高さ))(図2.2-16)を新設し、容量1.2L反応器と5.0L反 応器の両ケースに亘って脱水素実験を行なった。実験結果より、連続式反応器においても従来の回 分式反応器の場合と同様に定常的な過熱液膜現象が生じることが確認できた。 ⅱ)過熱液膜方式デカリン脱水素反応に関する研究成果 連続式脱水素反応装置(1.2L)を外部加熱温度280℃・冷却温度25℃の反応蒸留条件下に置き、一 318 定量(φ5.0 cm, 0.58 g)の活性炭クロス担持Pt触媒(5 mass%)に、種々の供給速度(1.5, 2.0, 2.5, 3.0, 5.0 ml / min)でデカリンを連続供給し、デカリン脱水素活性(水素生成速度、ワンパス反応 転化率)を評価した。デカリンの供給速度と水素生成速度の関係より、回分式では反応時間の経過 とともに生成物ナフタレンの蓄積に見合って反応速度が減少したのとは対照的に、連続式ではどの 供給速度でも水素生成速度は定常的に維持された。反応器上部に設置した可視窓からの観察から、 5.0ml/minで完全に液相懸濁状態、2.0∼2.5ml/minでは液膜状態、1.5ml/minでは完全に気相供 給状態であることが確認され、触媒表面が基質溶液でようやく湿潤した(過熱)液膜状態で高い水素 生成速度を与えた。 気液分離槽 内部クーラー付き 原料クーラー 二重管 冷却水出 ガスKO槽 内部デミスター付き TR 水素 背圧弁 冷却水入 大気 TR TR 水素ガスメーター ラインストレーナー TIC TR TIC 照明 TR 内部 確認穴 PG 内部 確認穴 TR 照明 TRC マントルヒーター E マントルヒーター マントルヒーター 未反応液受け槽 ( 10L ) 原料容器 (18L缶) 1.2L反応器 加熱ヒーター 付き マントルヒーター ヒーター 5L反応器 加熱ヒーター付き E ヒーター 真空系バツファードラム 10L 軽質トラップ ジュア瓶 真空計 未反応油受容器 (18L容器) 6φ PG PG PG M 電子天秤 0~60Kg 原料油張込ポンプ (0~20cc/m.×2) 未反応油移送ポンプ (0~20cc/m.×2) 電子天秤 (0~60Kg) 真空ポンプ (16.7L/min.) 図 2.2-16 過熱液膜脱水素連続反応装置概略フローシート また、よりスケールアップさせた連続式脱水素反応装置(5.0L)を用いてもデカリン供給速度に応 じて水素生成速度は変化した。このケースでは3.0∼3.5ml/min付近で液膜状態となり、高い水素 生成速度が得られた。このように、定常的水素生成速度・転化率は、供給デカリン流量に依存し変 化するが、これらの反応器は触媒層面積が既知なので、1.2Lの連続式反応器で得られた実験データ について単位触媒層面積あたりの供給デカリン流量をデカリン面積負荷と定義し、これとデカリン 転化率との関係を求めた。定常転化率はデカリン面積負荷がほぼ70L/m2h程度で最大値を示すこと がわかった。 ⅲ)車載型脱水素反応装置に関する概念の検討 燃料電池自動車の目標出力を50kW、発電効率を45%として、必要な水素を供給可能な「車載型過 熱液膜方式脱水素反応装置」の概略をデザインした。そして、当該反応装置の概略積算を実施した。 結果を図2.2-17に示す。 319 水素 原料張込 150mm 凝縮・冷却器 デカリン 200mm 放熱板 クールニクス (蓄電池駆動式) 原料槽 原料槽 噴霧ノズル フィン体 噴霧ノズル 反応器 MCH 冷媒循環ポンプ 触媒発熱体 50mm 700mm 触媒層 300mm 断熱材 燃焼室 燃焼後室 噴射ノズル 燃料流入パイプ 混合ミキサー 反応御液槽 燃料油 ナフタレン トルエン 空気 原料張込ポンプ 反応御液抜出ポンプ 正面図 原料槽 100mm 反応器 燃料油張込ポンプ 300mm 凝縮・冷却器 図中の寸法は組立予想イメージの概算寸法とする。 100mm 500mm 断熱材 150mm 900mm 150mm 1200mm 図 2.2-17 車載型脱水素反応装置積算用フローシート 水素の発生速度を増大させるための工夫(クロス担持触媒の採用による2次元的な液膜式反応器 を3次元化したこと)、連続系の水素発生としてベンチスケールでの試験を行ったことは成果であ る。 ②磁気冷凍法による水素液化技術の基礎研究 磁気冷凍法による水素液化技術の基礎研究 WE−NETプロジェクトでは、大型で高効率な液化設備を検討するに当たり、液化設備容量を 300トン/日、プロセス効率40%を設定した。平成9年度に実施された概念検討「磁気冷凍技術によ る大規模な水素液化の経済性調査」において、磁気冷凍技術を改良することにより、既存の液化技 術に比べて高いプロセス効率と経済性の向上が期待でき、300Kから20Kまで磁気冷凍法のみにより水 素を液化するアイデアが革新的であると評価され、平成12年度より基礎研究に着手した。 基礎研究では、水素液化システム(10kg/日)、システム効率50%、ベルトチェーン方式の水素液 化機の基本設計を行った。また、磁性材料に関しては、5テスラの磁場中における磁気熱量効果の調 査結果から、十数種類の適正磁性材料の選定を行った。平成14年度には世界初の10kg/日規模プロ トタイプ磁気冷凍水素液化機を試作する予定で研究を進めていたが、WE−NET第Ⅱ期研究開発 320 が1年短縮され、当初の目的達成が困難になるなど変更への対応が不可能となったため、平成13 年度で終了とした。次期プロジェクトでの研究再開が望まれる。 ③磁気冷凍装置用材料調査研究 本調査研究は、基礎研究「磁気冷凍法による水素液化技術の基礎研究」の一環として、平成13年 度に実施され、平成14年度も継続実施されたテーマである。 本調査研究は、CryoFuel Systemsによって提案された水素磁気冷凍用磁性材料の熱・磁気特性を 明らかにし、有効性を判断するための基盤データを提供することを目的としている。 測定試料はCryoFuel Systemsより供給された。表2.2-2に平成14年度実施項目を●で示す(○は 平成13年度実施、×は装置の限界による測定不能)。 表2.2-2 測定された資料と測定適用項目 試料 磁化測定 比熱 熱伝導率 エントロピー 熱膨張 評価 ErAl2 ○ ● ○ Dy0.25Er0.75Al2 ○ Dy0.5Er0.5Al2 ○ ● ● Dy0.7Er0.3Al2 ○ × ● DyAl2 ○ × ○ Gd5(Si0.0825Ge0.9175)4 ● × ● Gd5(Si0.15Ge0.85)4 ○ × ● Gd5(Si0.225Ge0.775)4 ● ● Gd5(Si0.2525Ge0.7475)4 ○ ● Dy ○ ● ● Gd0.18Dy0.82 ○ ● ● Gd0.36Dy0.64 ○ ○ ○ Gd0.73Dy0.27 ○ ● ● Gd ○ ● Gd5Si2Ge2 ○ ● GdNi2 ○ ● ● × ● ● ● ○ ● ● ● ●:14年度実施、○:13年度実施、×:装置の限界による測定不能 要求された所定の実験及び解析は全て終了した。以下に要約を示す。 ・磁気冷凍材料の熱・磁気特性を調べるために、比熱・磁化・熱伝導・熱膨張測定を実施した。 ・磁化からエントロピー変化量(=磁気熱量効果)を精密に計算する手法を確立した。 ・既知の断熱消磁実験結果と比較して、大きな相違は見られなかった。 321 ・一次転移材料Gd-Si-Ge系列は、予想された通り磁場印加によって冷凍温度領域が高温側に増加す る傾向を示した。 ・Gd-Dy系の熱伝導率は組成による相違が少なく、Gdの文献値と良く一致した。 ・磁気冷凍材料の磁場中熱膨張率を初めて明らかにした。 ・熱膨張率は磁気転移温度近傍で大きく変化する。特に、Gd-Si-Ge系列において顕著である。冷凍 サイクルの繰り返しによる磁性材料の疲労劣化が危惧される。実用化には磁性材料の加工方法の 開発と疲労試験の実施が不可欠である。 本研究成果は磁性材料のデータベースとして高く評価できる。CryoFuel Systemsの磁気冷凍法に よる水素液化装置の概念、材料選定について、合理性があることが確認できた。 2.3 新規開発分野・項目の検討 本検討の目的は、WE-NET Ⅱプロジェクトに反映すべき有望技術を検討して、 「新規開発分野・項 目の提言」に至るためのものである。 検討の対象を、CryoFuel Systemsにて実施してきた「磁気冷凍法による水素液化技術の基礎研 究」に設定し、磁気冷凍の専門家にこれまでの研究成果をレビューして頂いたところ、有望である とのコメントを得た。なお、今後は、水素液化磁気冷凍の研究を日本国内にて実施すべきことも提 言された。 以下に、特許・論文、実用新案等について、年度毎の件数及びリストを記載する。 (1)研究項目別論文、講演、特許、報道の件数一覧 特許 新聞発表 0 論文発表 口頭発表 出願済 登録 実施 国内 海外 1 0 0 10 7 51 (2)年度別研究項目別成果総括表 年度 新聞発表 特許出願 口頭発表 論文発表 出願済 登録 実施 国内 海外 H11 0 0 0 0 0 0 0 H12 0 0 0 0 0 0 2 H13 0 0 0 0 3 1 6 H14 0 1 0 0 7 6 43 計 0 1 0 0 10 7 51 322 (3)論文発表リスト a.査読のある原著論文 1) 高岩 茂樹、程島 真哉、新井 宏、斉藤 泰和 「デカリンを純水素/空気燃料電池に利用するための液相脱水素芳香族化触媒の開発」 水素 エネルギーシステム誌 26(2), 44-49 (2001) 2) 丸山 裕子、程島 真哉、斉藤 泰和 「メチルシクロヘキサン/トルエン/水素系 化学蓄熱・昇温システムの特質」 水素エネルギーシステム誌 26(2), 38-43 (2001) 3) 大塚 潔、Aiko Mito、竹中 壮、山中 一郎 “Production of hydrogen from methane without CO2-emission mediated by indium oxide and iron oxide” 2001 International Association for Hydrogen Energy 26(2001)191-194 4) (2001) 丸山 裕子・斉藤 泰和 「メチルシクロヘキサン/トルエン/水素系化学蓄熱・昇温システム のエクセルギー解析」 水素エネルギーシステム誌 5) 27 ( 1 )、35-40 (2002) 神谷宏治、沼澤健則、岡野敬裕、松本宏一 「水素用磁気冷凍材料の熱特性」 低温工学 投 稿中 (2003) 6) 程島真哉、新井宏、斉藤泰和 “Liquid-film-type catalytic decalin dehydrogeno-aromatization for long-term storage and long-distance transportation of hydrogen”International Journal of Hydrogen Energy 28(2) 197-204 (2003) 7) 程島真哉、新井宏、斉藤泰和 “Catalytic decalin dehydrogenation / naphthalene hydrogenation pair as a hydrogen source for fuel cell vehicle” International Journal of Hydrogen Energy 28(11) 1255-1262 (2003) 8) T.Ishihara, A.Kawahara, A.Fukunaga, H.Nishiguchi, H.Shinkai, M.Miyaki, Y.Takita “CH4 Decomposition with Pd-Ag Hydrogen Permeating Membrane Reactor for Hydrogen Production at Decreased Temperature Industrial Engineering Science and Technology 41, 3365−3369 (2002.7.15) 9) D. Wang, R. Yu, T. Takei, H. Koizumi, N. Kumada, N. Kinomura, K. Yanagisawa, Y. Matsumura, T. Yashima “A Novel LayereddZirconium Phosphate: [NH4] Synthesized through Non-aqueous Route” Chem. Lett., 10) 2002(8), 2 [Zr(OH)3(PO4) ] 804-805 (2002.8) Koichi Matsumoto, Takahiro Okano, AyumiMatsuzaki, Koji Kamiya, Takenori Numazawa “Magnetic entropy change of a rare earth garnet (Gd0.5Dy0.5)3(Ga0.875Fe0.125)5O12” Physica B, vol. 329-323, issue 2, p.1261-1262 (2003) 11) Numazawa, K. Kamiya, T. Okano, K. Matsumoto “Magneto Caloric Effect in (DyxGd1-x)3Ga5O12 for Adiabatic Demagentization refrigeration” Physica B, vol. 329-323, issue 2, p.1656-1657 (2003) b.査読のない原著論文 1) 斉藤泰和「デカリンによる水素の貯蔵・輸送と触媒」触媒学会 43巻4号 323 (2001.6.10) 2) 斉藤 泰和 「燃料電池用水素の貯蔵・輸送法の開発」月刊 エコインダストリー 7巻、8号、 29-35 (2002) 3) 斉藤泰和 「液体による水素貯蔵技術の可能性-炭化水素デカリンによる水素貯蔵」月刊 Material Stage 2巻、7号、1-5、29-35 (2002) 4) 斉藤泰和 「燃料電池と触媒」 金属 72巻、6号、1-6 (2002) 5) 斉藤泰和 「エネルギーと環境」 月刊 理大科学フォーラム 印刷中 6) 斉藤泰和 「燃料電池用水素貯蔵輸送媒体としてのデカリン」 月刊 機能材料 (2003) 22巻、3号、 5-10 (2003) c.総説、解説、著書 なし d.国際学会プロシィーディングス なし e.その他(報告書、社内報等) なし (4)口頭発表リスト 1) John.A.Barclay: “Component Advance for More Efficient Hydrogen Liqifiers”、 The 12th U.S.Hydrogen Meeting of the National Hydrogen Association、 2001/3/7 2) 銭 東金、中村 史、WENK Stephan、ZORIN Nikolay、石川 博、三宅 淳: “ヒドロゲナーゼーポリビオロゲン複合薄膜による水素ガスセンサの開発”、 日本化学会第79春季年会、2001年3月28日 3) 程島 真哉、新井 宏、高岩 茂樹、斉藤 泰和:“Catalyic hydrogen evolution from decalin for operating fuel cell vehicles”、The 6th Japan-Korea Joint Symposium’01、2001 年 10 月 18 日 4) Yuka yatabe、Hiroko Tajima、斉藤 泰和:“Catalytic Methanol Decomposition as the Endothermic Part of Chemical Heat Pipe”、 The 6th Japan-Korea Joint Symposium’01、 2001 年 10 月 18 日 5) 山田 知佐、竹中 壮、山中 一郎、大塚 潔:“酸化鉄の酸化還元を応用した水素貯蔵と再 生法”、第 88 回触媒討論会、2001 年 10 月 11 日 6) 蕉木 智裕、山田 知佐、竹中 壮、山中 一郎、大塚 潔:“修飾酸化鉄の酸化還元を応用 した水素貯蔵と水蒸気分解”、第 31 回石油・石油化学討論会、2001 年 11 月 2 日 7) 松崎 亜由美、岡野 敬裕、松本 宏一、沼澤 健則:“ADR用Gdガーネットの熱磁気特 性”、2001 年度秋季低温工学・超電導学会、2001 年 11 月 23 日 8) 中山 章弘、神谷 祥二、合澤 清志、沼澤 健則、松本 宏一、松崎 亜由美:“水素液化 磁気冷凍材料の検討”、2001 年度秋季低温工学・超電導学会、2001 年 11 月 23 日 324 9) 永田 寛明・高岩 茂樹・程島 真哉・斉藤 泰和 「過熱液膜状態での脱水素芳香族化触媒反応 と水素貯蔵」 第 90 回触媒討論会 A ( 1P19 ) 10) 平成 14 年 9 月 18 日 武内 洋人・新井 宏・程島 真哉・斉藤 泰和 「炭素担持白金-タングステン複合金属触媒の 脱水素活性と過熱液膜状態」 第 90 回触媒討論会 A ( 3E07) 平成 14 年 9 月 20 日 11) 八木 宏幸・鈴木 健・矢田部 有香・程島 真哉・斉藤 泰和 「過熱液膜状態にある炭素担持 ニッケル系複合金属触媒の脱水素機能」 第 90 回触媒討論会 A ( 3E08 ) 平成 14 年 9 月 20 日 12) 高岩 茂樹・程島 真哉・斉藤 泰和 「炭素担持白金-レニウム複合金属触媒によるデカリン液 相脱水素芳香族化反応」第 90 回触媒討論会 A ( 3E09 ) 平成 14 年 9 月 20 日 13) 程島 真哉・斉藤 泰和・安藤 祐司・田中 忠良 「水素貯蔵・輸送システムに利用する過熱液 膜型テトラリン脱水素芳香族化触媒反応」 第 90 回触媒討論会 A ( 3E10 ) 平成 14 年 9 月 20 日 14) 高岩 茂樹・程島 真哉・斉藤 泰和 「デカリン脱水素・ナフタレン水素化反応対による車載 型パワートレイン用水素供給」第 22 回水素エネルギー協会大会 ( A1 ) 平成 14 年 12 月 11 日 15) 永田 寛明・高岩 茂樹・程島 真哉・斉藤 泰和 「デカリンとテトラリンを用いる水素貯蔵・ 輸送システムの特質」 第 22 回水素エネルギー協会大会 ( P10 ) 16) 平成 14 年 12 月 11 日 程島 真哉・斉藤 泰和・安藤 祐司・田中 忠良 「過熱液膜型脱水素触媒を用いた水素貯蔵・ 輸送におけるデカリンとテトラリンの使い分け」 第 22 回水素エネルギー協会大会 ( P14 ) 平成 14 年 12 月 11 日 17) 八木 宏幸・鈴木 健・矢田部 有香・程島 真哉・斉藤 泰和 「炭素担持ニッケル系複合触媒 を用いたデカリンからの水素生成」 第 22 回水素エネルギー協会大会 ( P15 ) 平成 14 年 12 月 11 日 18) 武内 洋人・高岩 茂樹・程島 真哉・斉藤 泰和 「非定常・流通式デカリン脱水素触媒反応 器を用いた水素の供給」 第 22 回水素エネルギー協会大会 ( P16 ) 19) 平成 14 年 12 月 11 日 斉藤 泰和・武内 洋人・高岩 茂樹・程島 真哉 「非定常・流通式デカリン脱水素触媒反応 器を用いた水素連続供給」 エネルギー・資源学会第 19 回エネルギーシステム・経済・環境コ ンファレンス ( 18-2 ) 20) 平成 15 年 1 月 31 日 程島 真哉・斉藤 泰和・安藤 祐司・田中 忠良「デカリン・テトラリンを用いた水素貯蔵と 過熱液膜型触媒反応方式による水素供給」第 83 回日本化学会春季年会 平成 15 年 3 月 18 日 21) 高岩 茂樹・斉藤 泰和 「炭素担持白金-レニウム複合金属触媒によるデカリン液相脱水素芳 香族化反応」 第 83 回日本化学会春季年会 平成 15 年 3 月 18 日 22) 武内 洋人・高岩 茂樹・程島 真哉・斉藤 泰和 「非定常・流通式デカリン脱水素触媒反応 器を用いた水素の供給」 第 83 回日本化学会春季年会 平成 15 年 3 月 18 日 23) 八木 宏幸・鈴木 健・矢田部 有香・程島 真哉・斉藤 泰和 「炭素担持ニッケル系複合触媒 を用いたデカリンからの水素生成」 第 83 回日本化学会春季年会 平成 15 年 3 月 18 日 24) 永田 寛明・高岩 茂樹・程島 真哉・斉藤 泰和 「デカリンとテトラリンを用いる水素貯蔵・ 輸送システムの特質」 第 83 回日本化学会春季年会 25) 平成 15 年 3 月 18 日 斉藤 泰和 「液体有機化合物による水素の長期間貯蔵と長距離輸送」 経営技術懇話会セミ ナー 平成 14 年 6 月 19 日 325 26) 斉藤 泰和 「デカリンによる水素製造・貯蔵システム」 技術情報セミナー「燃料電池にお ける改質技術・改質器及び水素供給システムの開発動向」 平成 14 年 8 月 23 日 27) 程島 真哉 「活性炭担持ナノサイズバイメタリック触媒のエネルギー化学的応用」 CPC 研 究会 平成 14 年 9 月 6 日 28) 斉藤 泰和 「液体有機ハイドライドの開発とその応用」 技術情報協会セミナー 平成 14 年 10 月 23 日 29) 斉藤 泰和 「デカリンによる水素の貯蔵・輸送システム」 三井業際研究所講演会 平成 14 年 10 月 28 日 30) 斉藤 泰和 「エネルギーと環境」 生涯学習センターシンポジウム”科学としての環境を考 える-地球は、人類はどうなるのか-” 31) 平成 14 年 11 月 2 日 斉藤 泰和 「燃料電池自動車に向けた水素の貯蔵・輸送と供給」 第 1 回産・学連携東京理 科大学オープン講演会 平成 14 年 11 月 12 日 32) 斉藤 泰和 「水素の製造と利用」 石油学会第 11 回触媒シンポジウム「クリーンエネルギ ーと新規材料を創り出す触媒技術」 平成 14 年 11 月 26 日 33) 斉藤 泰和 「自動車・家庭用燃料電池への水素供給システム」 東京理科大学総合研究所環 境エネルギー研究部門シンポジウム 平成 14 年 11 月 30 日 34) 松岡 慶、稲垣 浩伸 「内部循環流動床ガス化炉によるバイオマスからの水素製造」 第 22 回水素エネルギー協会大会 ( A9) 35) 平成 14 年 12 月 11 日 西田和弘・西口宏泰・石原達己・滝田祐作 「水素透過が可能な Pd-Ag 膜からなる膜型反応 器を用いた CH4-O2-H2O 反応」 第 91 回触媒討論会 B( 1P25 ) 36) 平成 15 年 3 月 26 日 岡野敬裕、松崎亜由美、松本宏一、沼澤健則 「ADR 用 Gd-Dy ガーネットの熱磁気特性」 2002 年度春季低温工学・超電導学会 平成 14 年 5 月 19 日 37) 神谷宏治、沼澤健則、柳谷高公 「酸化物蓄冷材の熱特性」 2002 年度秋季低温工学・超電 導学会 平成 14 年 10 月 31 日 38) 岡野敬裕、松本宏一、神谷宏治、沼澤健則 「磁気冷凍用磁性材料 Gd5(SixGe1−X)4の磁気 特性」 2002 年度秋季低温工学・超電導学会 平成 14 年 10 月 31 日 39) 熊田伸弘,関島和史,武井貴弘,木野村暢一 「層状リン酸ジルコニウムのソフト化学特性 とシリル化」 日本セラミックス協会第 15 回秋季シンポジウム 平成 14 年 9 月 10 日 40) 立川利彦,金子吉一,湯泉正喜,初鹿敏明,鈴木喬 「層状バナジウム系化合物の酸素吸着特 性」 第 18 回日本イオン交換学会発表会 平成 14 年 10 月 10 日∼11 日 41) 内田新二,宮嶋尚哉,湯泉正喜,初鹿敏明,鈴木喬 「球状セルロース系吸着剤の酸素・窒 素吸着特性」 第 16 回日本吸着学会研究発表会 平成 14 年 10 月 18 日 42) 宮嶋尚哉,鈴木喬,産総研・羽鳥浩章,山田能生 「ナノ金属粒子分散による活性炭の吸着特 性変化」 無機マテリアル学会第 105 回学術講演会 平成 14 年 11 月 15 日 43) 武井貴弘,熊田伸弘,木野村暢一「メソポーラスシルカの化学修飾による無機-有機複合多孔 体の作製とその電気化学的特性」第 41 回セラミックス基礎科学討論会 平成 15 年 1 月 23 日 44) 武井貴弘,新谷絵美,熊田伸弘,木野村暢一 「ソフト化学反応を利用した層状リン酸ジル コニウムのシリル化とその多孔体特性」 第 83 回日本化学会春季年会 平成 15 年 3 月 20 日 326 45) Akimitsu Hatta, Haruka Matsuhisa, Tetsuya Kaneko, Michio Watamori, Yoshinori Koga, Hironobu Inagaki, Kenzo Fukuda “Application of diamond like carbon films to gas barrier for hydrogen fuel cell technology” ADC/FCT 2003 平成15年8月18日∼21日(発表予定) 46) 大塚 潔、山田 知佐、蕪木 智裕、竹中 壮 “Storage and Generation of Pure Hydrogen by Utilization of Modified Iron Oxides” The 14th World Hydrogen Energy Conference, Montreal, Quebec, Canada 47) 松岡 慶、稲垣 浩伸 平成14年6月10日 “Internally Circulating Fluidized-Bed Gasifier for Hydrogen Production from Biomass” The 14th World Hydrogen Energy Conference, Montreal, Quebec, Canada 平成14年6月10日 48) H.Sekiguchi, S.Nakanishi, K.Fukuda, H.Inagaki “Hydrogen production from hydrocarbon using atmospheric pure steam plasma generated by microwave discharge” 16 th Internatinal Symposium on Plasma Chemistry 平成15年6月23日∼28日(発表予定) 49) N.Kinomura,D.Wang,R.Yu,T.Takei,N.Kumada, T.Suzuki “Hydrothermal Synthesis of New Zirconium Hydroxy Phosphates Using Organic Templates” Fourth International Symposium on Inorganic Phosphate Materials 平成14年7月10日 50) D.Wang,R.Yu,T.Takei,N.Kumada,N.Nobukazu “Non-aqueous Synthesis of Novel Low-Dimensioinal Zirconium Phospates” International Symposium on Solid State Chemistry in China Book of Abstracts 平成14年8月9日 51) N. Miyajima, H. Hatori, Y. Yamada “Adsorption behavior of surface-modified porous carbons” An International conference on Carbon 2002 平成14年9月15日∼19日 (5)特許出願リスト(名称、出願番号、発明者名) 学校法人早稲田大学:“脱硫剤及びその製造、脱硫方法並びに燃料電池用水素の製造方法“、 特願2003-65060 2003年3月11日 (6)「ノウハウ(知的所有権等)」リスト なし (7)その他報道等の概要 a.新聞発表 なし b.カタログ(製品)発表 なし 327 Ⅳ.実用化、事業化の見通しについて 1−1.実用化、事業化の見通し(タスク1) 該当しないので省略する。 2−1.実用化、事業化の見通し(タスク2) 2-1.1 実用化のイメージ 望まれる規制緩和が許されたことを前提として水素充てんスタンドを市街地に設置しようとする 場合、安全性はまだ十分に確認されていないといえる。現行法規で規定されている水素貯蔵量、離 隔距離等が適用されると、スタンドの設置、運用は必ずしも容易ではなく、解決しておくべき課題 がある。本研究開発の成果として水素の性質、挙動等がある程度明らかになったので、将来必要な 安全対策が検討されその安全性を根拠づけることに活用される。2∼3年のうちに先行事例である 圧縮天然ガススタンドと少なくとも同等な安全性を確保した水素スタンドを実用的な条件で設置、 運用することが可能になることが期待される。 2-1.2 成果の実用化可能性 水素エネルギーに対する社会のニーズは強く、燃料電池自動車、定置用燃料電池および水素供給 インフラ施設がすでに実現しつつある。実用化初期から本格的な普及に移行するためには、水素利 用に伴う災害リスクを低減し、現行法規制が見直されることが求められている。また、他のエネル ギーシステムと経済的に競争できるようになることも普及の条件になると思われる。本格的な普及 にはまだ解決すべき課題があるが、タスク2安全対策の成果はこれらの検討に活用される。 2-1.3 波及効果 特に水素充てんスタンドの安全性を中心に検討したが、水素の性質等タスク2の研究開発で得ら れた成果は他の水素施設、輸送システム等の安全性評価にも利用することができる。 2−2.今後の展開(タスク2) ① 実用化に向けての長期計画や研究開発目標のマイルストーン等の記述 平成 16 年 保安距離と水素貯蔵量に関する規制緩和案を根拠づける 平成 17 年 (燃料電池が本格的に導入され始める) 平成 22 年 (燃料電池自動車5万台の普及が予想される) ② 実用化、事業化のシナリオ (ア)克服すべき課題 ・法規制で緩和の望まれる項目のうち、特に水素充てんスタンドの保安距離と水素貯蔵量を 重点的に検討した。水素は天然ガス等より爆風圧が高く、使用圧力が高いので、規制緩和 を実現するには災害リスクを許容値以下に抑えるための安全対策を立案することが重要で ある。 ・採用されやすくコストの小さな安全対策が確立され、技術基準としてまとめられることが 望ましい。 ・保安距離と貯蔵量以外に規制緩和の望まれる項目として、充てん容器の上限温度、水素用 複合容器の型式認定、付臭剤添加の可否等が将来の課題として挙げられる。また、障害物 の存在下あるいは半閉空間で水素が爆燃すると、開放空間での場合より爆風圧が著しく増 大することが知られている。これらの影響を安全評価に反映させるには、実験とシミュレ ーションによるさらなる検討が必要と思われる。水素の容器、配管、付属部品に使われる 金属材料は高圧水素により経時劣化することが懸念される。水素圧力 20MPa までは工業的 な実績はあるが、35MPa 以上の圧力下での金属材料の寿命についてはほとんど知見がない。 金属材料の高圧水素下寿命試験を実施することが望まれる。 328 (イ)産業界における具体的利用に向けてのシナリオ 燃料電池自動車、定置用燃料電池および水素インフラを設置、運転する際の安全性向上に 貢献し、社会的ニーズに応える。 (ウ)実用化までの実現可能性・迅速性、市場ニーズとの関係 水素充てんスタンドはすでに9個所で設置され、今後さらに建設が計画されている。社会 のニーズは強いが、本格的な普及のためにはさらなる安全性の向上が望まれる。 (エ)実用化の見通し 水素充てんスタンド建設はすでに実証段階であるが、本格的な普及に必要な水準にまで建 設費を下げるにはまだかなりの期間を要すると思われる。 安全対策技術はそれ自体が独立して実用化されるものではなく、必ず水素充てんスタンド 等の施設・設備と一体となって実用化されるものである。問題は、これら施設・設備の開 発に安全対策の検討が遅れる場合、当該施設・設備の実用化の遅れの原因となりかねない ことである。この観点から、WE-NET タスク2の成果は水素関連施設・設備の開発と同期し ているといえる。 3−1.実用化、事業化の見通し(タスク3) WE-NET 計画の研究開発は水素製造、水素の輸送・貯蔵、水素の利用等の個別要素技術を開発しつつ、 それらの要素技術を総合して地球に優しい革新的なクリーンエネルギーシステムとして、全世界的 なネットワークを構築することを目標としている。世界的なエネルギー資源の確保の問題に加え、 地球環境問題が世界的に重要な課題となってきている現在、この水素利用国際クリーンエネルギー システム技術(WE-NET)の構想は、21世紀のグローバルエネルギーネットワーク構築の上でます ます重要性が増大している。 世界的には米、加、ヨーロッパ等の各国において、水素エネルギー推進の活動が大々的に展開さ れてはいるものの大半が水素関連技術の個別の開発実証化である。その点で日本の WE-NET 計画は、 水素製造技術から水素利用技術までを一連のシステムとして取り組んだビッグプロジェクトであり、 非常に珍しく貴重な存在である。このような WE-NET の基本構想に対する理解と認識は、世界的にも 徐々に広がりつつあり、国際協力を進める絶好の環境となってきた。現在、技術は既に実証化段階 へと進んで来ており、国際的な標準化作業が進む中で、これらの計画を効率よく推進させていくに は、単なる技術情報交換にとどまらず、技術や国際標準(ISO)に関して日本からの積極的な提 案を行っていく事が必要である。本タスクの活動により、グロ−バルなネットワ−クが構築されつ つある。 4−1.実用化、事業化の見通し(タスク4) 1.研究開発成果の産業界における具体的利用のイメージ、あるいは実用化を想定してできる製 品、プロセス、サービス等の内容のイメージ。 短期的にはアルミ精錬工場など食塩電解により副生水素が発生する工場や国立公園など環境 保護地域での発電・コージェネレーション用原動機として実用化が期待できる。中長期的に は水素インフラが整備されれば、トラック・バスなどの大出力自動車や船舶などの原動機と して実用化が期待できる。 2.産業技術としての見極め(適用可能性の明確化) アルミ精錬工場など食塩電解により副生水素が発生する工場で実用化するための産業技術と しては、水素ディーゼルエンジンを導入したときのコストメリットが適用可能性のキーポイ ントとなる。現時点では明確でない。 3.当該分野への波及効果。(当該分野の研究開発を促進するなどの波及効果) 高圧噴射方式の水素ディーゼルエンジンの開発は 1990 年代にドイツの MAN B&W 社により 単筒実験機を使用して行われたが、着火の安定性や熱効率の面で満足できる結果が得られな 329 かった。本研究開発結果はこれらの面で十分高い成果を上げており再び研究開発を促進する 効果は大きいと期待される。 4.関連分野への波及効果。 高圧噴射方式の水素ディーゼルエンジンの高い発電効率と NOx 低減策が実証されたことに より、天然ガスや天然ガスを改質した CO を含む水素を利用する高圧噴射方式のエンジン開 発など関連分野への波及が期待される。 5.実用化・事業化までのシナリオ。 実用化・事業化までのシナリオについては具体的な要請があった時点で検討する。 5−1. 実用化、事業化の見通し(タスク5) 本研究開発は、燃料電池自動車を想定した水素燃料タンクの開発である。従って燃料電池自動車 開発の進捗状況と併行して開発が続けられる必要がある。現在燃料電池自動車は、市販されたとは いえ、まだ月額リース料が 100 万円前後であり、少なくとも価格の点でとても実用化にはほど遠い といえる。価格低減には、システムの簡素化が最も大きな要因を持つが、そのためにも構成部品の コストダウンを図っていく必要がある。又法規制の簡略化も大きなコストダウンの効果がある。 MH タンクそのものの実用化は、急速充填技術の開発とタンクの軽量化が大きな鍵となる。この急 速充填技術ではタンク構造の最適化により伝熱特性の向上を図ることで充填時間の短縮化が達成で き、MH タンクの設計法も含めて MH タンクの実用化の可能性に大きく寄与する。 圧縮タンクについては、現在高圧ガスの認定品は 1 社であり、アルミライナーの加工については、 現在まだない。将来実用化には、コスト削減が必須のことでもあり、製造メーカの開発に期待した いところである。 これらの開発の進展と法規制の簡素化により実用化が図られていくと考える。さらに、自動車用 燃料タンクの開発には、燃料電池自動車の運転実績が必要で、そのための水素供給ステーションの 維持運営が、WE-NET や経済産業省のプロジェクトで行われているが、それを今後も続けていくこと が必要である。 6−1. 実用化、事業化の見通し(タスク6) 水素社会が実現され、水素インフラが整備されればすべての燃料電池は純水素型になる。しかし、 現状では、水素インフラのあるところに導入される。純水素型燃料電池の大きな市場としては、副 生水素が発生する電解工場、排水素が発生する半導体製造工場、さらに、燃料電池自動車の普及と ともに増加する水素ステーション、水素貯蔵合金やケミカルハイドライド等の水素貯蔵手段との組 み合わせによる通信・中継基地や一般の非常用の電源が考えられる。また、バイオガスから直接水 素を作り出す技術が確立されれば、生ごみ処理場なども市場になりうる。 固体高分子形燃料電池は 2005 年の導入段階、2010 年の普及段階に位置付け開発が進められており、 2010 年の導入目標として燃料電池自動車約 5 万台、定置用燃料電池約 210 万 kW が国から示されてい る。しかし、現状は、燃料電池自動車よりも家庭用 1kW 級や業務用 5kW 級燃料電池が先行導入され る可能性が高い。燃料電池の導入・普及にとって信頼性、耐久性とともに低コストがきわめて重要 であり、量産化が大きく寄与する。量産化が期待できる家庭用や業務用燃料電池の普及の過程で材 料の低コスト化が進み、純水素型燃料電池の実用化がはじめて可能になると考えられる。 7−1. 実用化、事業化の見通し(タスク7) 水素供給ステーションの開発では、システム開発及び要素技術開発の実証はほぼ完了したものと 思われる。しかし、システム全体を運用した技術検証が時間的な制約もあり充分とは言えなかった。 WE-NET 最終年度には、JHFC 実証試験プログラムが併行して開始され、また WE-NET 終了後の NEDO の 新規プロジェクトにおいてもステーションは継続利用されてステーションの開発を図っている。 燃料電池自動車の普及には、燃料供給のインフラ整備が欠かせないものであることは、誰しも認 330 めるところである。自動車の大量普及を前に、安全、大規模、安定した燃料供給整備に向けて、さ らなる技術検証が必要であると共に、普及に向けた法規制の見直しと経済性を考慮した設備コスト の低減も解決すべき不可欠な課題である。 開発を通じて検証して取得したハード・ソフト技術、そして運用データをこれら課題を解決する ために、充分生かすことが実用化・事業化に向け望まれる。 7AB−1.実用化、事業化の見通し(タスク7AB) 本研究開発では、外部より水素を運び入れるオフサイト型水素供給ステーションの開発、建設を 行い、約 8 ヶ月の実証運転を通じて、システムおよび安全性の検証を行い、オフサイト方式の水素 供給ステーションの有効性を実証した。また、本ステーションは WE-NET タスク 7 で先行して建 設された 2 形式のオンサイト型ステーション(水素製造規模:30Nm3/h)から規模の拡大が図られ (水素圧縮能力:100Nm3/h)、さらに、連続して乗用車 5 台分の充填能力を有するなど、実用規模 のステーションにより近いものとなっている。 水素供給ステーションは、次世代のクリーンエネルギー自動車の本命と目される燃料電池自動車 に対する燃料供給インフラとしての導入普及が期待されており、燃料電池自動車の導入目標である 2020 年 500 万台に対して、3,300 ヶ所の水素供給ステーションが必要とされている。 水素供給ステーションの実用化は、2005∼2010 年にかけて立ち上がることが期待されるが、本研 究開発の対象であるオフサイト型ステーションは、既存の水素製造・流通インフラが利用できるこ と、ステーションシステムとして簡易であること等の特徴から、特に水素ステーションの導入普及 期において重要な役割を担うものと見なされる。 現状、オフサイト型水素供給ステーションの建設には約 185 百万円/ヶ所の費用を要しているが、 自動車用燃料費としてガソリンと等価となる水素価格 40 円/Nm3 を実現するためには、大元の水素 製造プラントでの水素製造コスト、輸送コストの低減と併せてステーション建設コストを現状のガ ソリン SS の建設コスト並(約 1 億円)に引き下げることが課題となる。 7C−1 実用化、事業化の見通し(タスク7C) 本研究開発の成果として実用化される水素圧縮機は、完成後直ちに、燃料電池自動車および水素 供給インフラの実証試験へ供することができる。本研究開発で得られる技術的成果は、燃料電池車 の普及のための水素燃料供給インフラ整備に資すると期待する。 7D−1.実用化・事業化の見通し(タスク7D) (1) 本研究成果を基に、平成 15 年度から研究開発プロジェクト「水素安全利用基盤技術開発」の下 で更なる研究開発を行い、平成 19 年度末には普及時の標準とされる容量 300Nm3/h,吐出圧力 100MPa 級の量産型圧縮機の研究開発を行う。 (2) 本研究に所定の成果が得られ、プランジャー型圧縮機は水素圧縮機として適用可能な見通し を得、従来型ダイヤフラム式に比べ安全性・信頼性共凌駕出来るものと考えられ、当該分野へ の主流機となり得るものと考えられる。 (3) 実用化までには上記開発を継続して実行する必要があり、更なる高効率化・コストダウンに関 する研究が必要である。 331 7E−1. 実用化、事業化の見通し(タスク7E) 本研究開発の成果として実用化される水素ディスペンサは、完成後直ちに、燃料電池自動車およ び水素供給インフラの実証試験へ供することができる。本研究開発で得られる技術的成果は、燃料 電池車の普及のための水素燃料供給インフラ整備に大いに貢献し、かつ、世界で最も先進的かつ安全 な水素ディスペンサの実用化および普及に資すると期待できる。 7F−1. 実用化、事業化の見通し(タスク7F) ・ 実用化を想定してできる製品のイメージ。 本研究開発事業の成果は、水素充てんインフラ(水素ステーション)で用いられる水素充てん機 に係るものである。 ・ 産業技術としての見極め 本研究開発事業の成果は、工業製品としての水素充てん機にそのまま展開させることが可能であ る。 ・ 当該分野への波及効果。 (当該分野の研究開発を促進するなどの波及効果) 水素燃料電池自動車では、車載タンクへの水素ガスの充てん圧力の高圧化が計られており、本研 究開発事業の成果は、水素充てんインフラ(水素ステーション)で用いられる水素充てん機にそ のまま展開させることが可能で、70MPa 級充てんインフラの実用化の推進に資するのである。 ・ 関連分野への波及効果。 本開発成果を発展させた 70MPa 級流量計は、水素ステーション以外にも、高圧ガス施設でのガ ス流量の高精度計測への転用も可能である。 ・ 実用化・事業化までのシナリオ。 現在、35MPa 充てんを行う水素ステーションは試験的な運用が行われているが、70MPa 級につ いては、実証試験のスケジュールが未確定な状況にある。水素ステーションの経済性及び構成機 器の価格等については、現在、検討中である。 8−1. 実用化、事業化の見通し(タスク8) 水電解による水素製造は直接的には化石燃料を原料としない点で最もクリーンな水素製造方法で あるが水素の発生に多量の電力を必要とすることから他の先進国に比べて相対的に電力料金が高い といわれている我が国では経済性の観点から短期的な実用化、事業化は難しいといわれている。し かしながら、本研究において固体高分子膜型水電解装置による大容量水素製造の目途が開けたこと により、構成機器、システムの更なる低コスト化に向けての開発により中・長期的にみて実用化の展 望が見えてきたといえる。 個別研究開発の観点からみた実用化、事業化の見通しは以下のとおりである。 <三菱重工> 地球温暖化防止の観点から、国内外の水力・火力・原子力の余剰電力、さらには自然エネルギ ーを利用した水素の製造、水素需要など将来のエネルギー動向を鑑みたとき、水電解法による水 素製造技術の必要性は必ずあるものと予想される。事業終了後は市場環境を睨みながら、実用化研 究を更に推進し、平成19年度には初号機を市場投入計画中である 具体的市場として、本成果は燃料電池自動車が普及し水素の市場環境が整えば、水素ステーショ ンとして実用化の可能性も非常に高くなってくるものと予想される。また、水電解装置は、余剰電 力の有効利用により負荷平準化に寄与できるとともに、地球温暖化防止の観点から太陽光発電、風 力発電の自然エネルギーを電源として利用することで、CO2 フリーな燃料供給サイクルを確立するこ とが可能である。 332 <富士電機> 本研究では水素発生量 10m3/hの大型電解層の開発を行い上記成果が得られた。実用化プラント として想定されている水素発生量は現在の研究レベルを一桁上げる必要がある。また従来のアル カリ水電解方式の設備コストに対抗するには、弊社見積もりで 1 桁のコストダウンが必要である。 固体高分子形水素製造技術は、従来製品比べ、設備のコンパクト化及び対環境性で大きなメリ ットがあり、実用化が強く望まれている。しかし弊社においては本研究で固体高分子形大型電解 槽の信頼性評価が出来た段階であり、今後は大幅なコストダウンの開発及び大型プラントの技術 評価が必要であり、現段階では固体高分子形水素製造装置の実用化及び事業化を見通すことが困 難と考えている。更なる多大な技術開発が必要と考えている。 <三井造船> 水電解水素製造システムは、2005 年以降に実用化が期待される PE-FCV(固体高分子形燃料電池自 動車)の水素供給インフラとしての実用化が期待される。逆に言えば、FCV の普及は水素供給インフ ラの整備拡大が鍵となる。周知のとおり、水電解方式による水素製造システムは、炭化水素改質に よる水素製造とは異なり、温室効果ガスである CO2 を全く発生せず高効率で水素を製造できる究極の クリーンエネルギーシステムであるため、水電解による水素製造システムの普及拡大は、地球温暖 化防止に大きく貢献する。また、水電解水素製造システムの普及促進を行なうためには、水素製造 コストを低減する必要がある。そのため、要素技術としてセルの低コスト化、大面積化、積層化に 関する技術開発を今後も行う必要がある。また、水素製造コスト占める電力コストの割合は大きい ため、安価かつクリーンな再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力等)による電力供給システム の整備・普及が将来的に行なわれることは、水電解製造システムの実用化に向けて追い風となる。 <SRI インターナショナル> 第Ⅱ期で開発された第二世代の膜は、良好な伝導度および機械特性を有しているため、今後の実 用化の見通しはかなり高い。平成 14 年度の最後に製作した高温安定性を高めた膜の水電解テストを 行い、そのデータをフィードバックして、より高温安定性を増した大きな膜を作製し、水電解テス トを進める必要がある。 また本技術は、高温高圧運転水電解法の高性能化に不可決な技術開発であるが、高温 PEM 燃料 電池用の膜にも技術利用することが可能である。現在の膜(例えばナフィオン)は、長時間運転す る温度が 85℃位に制限されるが、150℃まで使用できれば、120 – 150℃の温度範囲で PEM 燃料電 池を制御できるようになり、燃料電池の効率は飛躍的に向上し、また水分を殆ど必要ない膜にする ことが可能なため、燃料電池全体のサイズと複雑さ、およびコストを大幅に減らすことができるよ うになる。 <産業技術総合研究所> 燃料電池による発電および水電解による水素製造が可能な可逆燃料電池は、来るべき水素エネル ギー社会におけるキーデバイスとなりうる可能性があり、各エネルギー利用単位において水素をエ ネルギー媒体としたエネルギー変換を容易に行えることは、現状のエネルギーシステムを抜本的な 改善へと導く可能性がある。 9−1.実用化、事業化の見通し(タスク9) 本タスクの成果は、基本的には水素輸送・貯蔵に関する要素技術の開発が主体であり、その点に おいては、実用化に向けて適用できる研究開発項目になっている。内容的には、実用化においてす ぐにでも供することができる断熱構造体のデータベースから、実証化研究を経て実用化すべきもの (輸送兼貯蔵コンテナ、液体水素ポンプ)、実際の建設規模に基づく設計仕様に併せて技術要素(水 素圧縮機、膨張タービン、LNG 冷熱利用)の実設計を行うべきものがある。また、研究開発の一環と 333 して実施したFS(可能性検討)についてもその条件設定は実用化、事業化段階で大いに活用でき るものと期待している。 いずれにせよ、本タスクの成果は、平成15年度から開始された、プロジェクト「水素安全利用 等基盤技術開発」に継承され、実証、実用化研究開発を進めることになっている。 以下に各研究開発項目の今後の展開のイメージを記す。 9-1.1 タスク9−1:液体水素輸送・貯蔵設備の開発 液体水素コンテナは次期プロジェクトに引き継がれ、H15年度に液体水素試験で性能が確認さ れた後、H16年度から液体水素製造基地から水素ステーションまで液体水素輸送機器として使用 される予定である。なお、高圧ガス保安法や公道及び海上輸送の関連法規改正の動向に注視して進 める必要がある。 各断熱構造体の断熱性能及び低温圧縮強度に係る基本的なデータベースがほぼ完成した。このデ ータベースはすぐにでも実用に供することができるものであり、今後は実用化に適用しつつ補完し ていくことになる。 9-1.2 タスク9−2:共通機器類の開発 小容量低揚程汎用液体水素ポンプの設計を行い実際に製作し、その実証化試験を行う。 連続安定運転の実証に関しては次期プロジェクトに引き継がれ軸受け、構成機器の耐久性の実証 化を行う。また、水素供給ステーションにおいて実際に採用し、その実証化を行う。その後考えら れる展開としては、発電用水素ガスタービン向け大容量高圧液体水素ポンプの設計、製作並びに実 証化試験を行う。 以上のように、本技術開発項目は今後実証化していく必要がある。これらは現在別プロジェクト で進んでいる水素供給ステーションの実証化計画の中に具体的に採用され、そこで実際に試験する ことが必要と考えている。具体的には、液体水素を扱う際の共通機器の中心的存在である液体水素 ポンプとして、小容量コンテナ、小容量液体水素汎用ポンプ、水素液化機用高効率遠心型圧縮機、 外部冷熱利用の水素液化プロセス等との関連付けを行い、実証的、かつ、実用化に向けた開発を進 めることになる。 9-1.3 タスク9−3:水素液化設備の概念設計(高効率設計) 本研究を通して、水素供給ステーションを対象とする水素液化設備の高効率化について、主たる 技術課題となる水素圧縮機、水素膨脹タービンおよび LNG 外部冷熱を利用した液化動力低減につい ての研究開発を実施した。本研究開発成果により従来の水素液化機をベースに、本研究で得られら た技術の適用を加速することで、飛躍的に液化コストの低減可能な水素液化設備の実現が可能であ る。また液体水素を安価に製造できる水素液化設備の実現により、自動車用水素供給ステーション における燃料電池自動車への燃料供給が安価に行えることから、水素インフラ普及への波及効果も 大きい。また本研究で得られた水素環境下におけるターボ機械(水素圧縮機、水素膨脹タービン) の設計技術は、水素インフラ共通要素技術を含んでおり、関連水素機器技術構築時に適用効果が期 待できる。 平成20年度までの実用化のシナリオとしては、実水素環境での水素圧縮機及び膨張タービン性 能実証ならびに高圧水素シール機構及び流体軸受の検証が、残る要素技術検証項目としての課題で ある。次に要素技術確立後、小容量水素液化設備を実証するために、小容量水素液化設備のプロセ ス設計を行い、水素原単位の低減効果について評価し、具体的な設備設計、設備建設を行って、水 素供給ステーションでの実証化試験を行う。LNG 冷熱利用には、既設 LNG 基地との協力が不可欠 であり、設備実証において既設 LNG 基地との連携を図る。また小容量液化設備での液化効率向上を 狙った高効率な磁気冷凍水素液化プロセスの設計、モデル機の製作についても同時に検証する必要 がある。 事業化については、燃料電池自動車の導入が 2020 年における目標値に向かって段階的に行われる ことが予測されるため、自動車用水素供給ステーション普及に伴い水素液化設備の建設需要が増大 する。設備需要の増大は、量産効果による単位設備あたりの建設コスト低減の効果を生ずるととも に、水素供給ステーションの地域的な建設密度増加により、供給側である水素液化容量増大のニー 334 ズが発生し、容量アップによるプロセス効率上昇が期待できるため、液体水素供給単価低減への波 及効果が期待できる。 10−1. 実用化、事業化の見通し(タスク10) 研究開発で得られたデータは、極低温タンク・タンカー設計に必要なデータとして提供できる。 SUS304L、316L および 316LN 鋼の RPEB 溶接継手および完全γ型の JJ1 溶接材を用いた TIG 溶接継手は、 極めて優れた極低温靱性を有し、かつ水素チャージ処理による劣化もほとんどないことから、耐水 素脆化感受性も高いと判断される。さらに、良好な溶接性をも有すると推定されることから、本開 発の目標の一つである溶接割れ感受性と水素脆化感受性が低く、かつ極低温靱性に優れる溶接継手 の効率的施工法の開発に対して、大きな貢献ができたと思われる。 最近の燃料電池車およびこれに関連した水素インフラ整備に関する研究開発の急速な進展に対応 し、水素分散利用を前提とした中・小型容器用材料の極低温特性、高圧水素ガス環境下に曝された構 造材料への水素侵入と材料特性変化を把握する必要性が高まっている。 高圧水素ガス環境下では、低合金鋼、オーステナイト系ステンレス鋼およびチタン等の構造用材 料にもある程度の水素侵入が生ずることが明らかになった。今後、水素の分散利用を展開する上で は、高圧・長期間、特に 350 気圧以上の水素ガス環境における材料への水素吸収挙動の見極めと、 それによる材料特性変化を定量的に把握する必要があり、本研究開発成果は今後の研究開発、実用 化のベースとなるものである。 本開発では、水素分散利用を意識した研究開発も柔軟に取り入れ、国内外の研究機関と活発な議 論を積み重ねてきた。我が国のエネルギー供給の安定化・効率化、地球温暖化問題・地球環境問題 の解決、新規産業・雇用の創出、水素エネルギー社会の実現等に資するため、固体高分子形燃料電 池の早期の実用化・普及を目指す「水素安全利用等基盤技術開発」が始動した。水素に係わる共通 的で基盤的な材料基礎物性を取得して、燃料電池の初期段階の普及が円滑に進むよう「安全技術」 に関する技術開発、安全の確保に資する研究開発の重要性がますます高まってきている。本研究開 発で得られた知見、手法、情報網は、次期水素エネルギー利用プログラムでも大いに活用されるこ とを確信している。 11−1.実用化、事業化の見通し(タスク11) (1)軽量水素吸蔵合金の研究 Ca 系 PuNi3 構造 AB2C9 型合金に関しては、安価な元素を用いた比較的高容量な水素吸蔵合金で あるため、水素供給ステーションにおける一次貯蔵用水素貯蔵容器等、水素吸蔵量への要求は厳し くないが大量に水素吸蔵合金が必要な用途への適用に適していると考えられる。今後、合金製造プ ロセスと低コスト化の検討を進める必要がある。 (2)高圧用水素吸蔵合金に関する研究 35MPa 程度で使用される軽量高圧容器と水素吸蔵合金を組み合わせて高圧容器の体積水素密度 を向上させることが、体積水素密度の高い希土類系 AB5 型水素吸蔵合金によってある程度可能であ ることが明らかになった。今後、システムの実証的研究開発によって新たな貯蔵技術として実用化 が期待される。 (3)無機系水素貯蔵材料の研究 水素吸蔵量が 5.5mass%を超えうる錯体系水素貯蔵材料 NaAlH4 について、反応機構の解明が進 みつつある状況である。反応速度の更なる向上のための技術開発はこれからであるが、錯体系水素 貯蔵材料としては反応熱の小さいもの(37kJ/mol(H2))であるため、水素貯蔵材料として実用化さ れるポテンシャルは十分あると考えられる。 (4)有機系水素貯蔵材料の研究 水素吸蔵量が 7mass%以上あり、高圧水素や液体水素や液体水素方式に較べてエネルギー効率が 高い、即ち運転コストが低く、ガソリン並みに取扱易いので有利であるが、設備費を低く押さえる 335 事が実用化のカギである。膜分離型反応器によりそれを克服できれば、規模が大きな輸送・貯蔵に も実用化される可能性は高い。 (5)炭素系材料の評価 (この項は開発項目ではないので実用化に関する記述は省きます。) 12−1. 実用化、事業化の見通し(タスク12) 本研究では、WE−NETプロジェクトの将来に有益な示唆および提案を行うという目的を達成 するため、WE−NETプロジェクトで現在研究開発が行われていないあらゆる技術を対象に調 査・研究を進めてきた。委員会の議論においても、以上に記載したタスク12の研究成果の評価は年々 高くなり、タスク12で実践されている研究開発は今後も必要であるとのコメントを受けている。 以上の成果により、タスク12の研究管理手法の有効性を示すことができたと考えるので、この 運営管理手法をさらに強化して実施する方針である。 具体的には、下記の事項を実施すべきと考える。 水素液化技術については、平成12年度より「磁気冷凍法による水素液化技術の基礎研究」に着手 し、平成14年度には10㎏/日水素液化量の磁気冷凍法による世界最初のプロトタイプ水素液化機を試 作する予定で研究開発を進めてきた。研究は中止となったが、本技術は高いプロセス効率と経済性 の向上に関して有望であり、将来の液体水素社会実現には必要不可欠なものであると考えられ、次 期プロジェクトでの早期研究再開を図りたい。 水素貯蔵技術については、平成13年度から「過熱液膜方式によるデリカン/ナフタレン系の新規 水素化・脱水素化を用いた水素貯蔵輸送システム技術研究」を実施している。平成14年度では実験 規模を大きくして、1/20ベンチスケールの過熱液膜方式脱水素連続反応装置を試作し、本手法での 水素発生の優位性を確認した。今後の開発に注目する。 平成14年度にはNEDOホームページを用いた新規アイデア募集による新提案技術収集を新たに 実施した。その結果、概念検討は10件の研究テーマを実施し、それぞれ多分野にわたる興味深い結 果が得られた。新規テーマ発見に結びつく新規アイデア募集を継続する。 なお、今後のプロジェクトの有効性を保つために、関連技術の動向を常に監視してゆく方針であ る。 336 2.分科会における説明資料 本資料は、分科会において、プロジェクト実施者がプロジェクトを説明する際に 使用したものである。 2-2 水素エネルギー利用技術(第Ⅱ期)研究開発事後評価分科会 水素エネルギー利用技術 (第Ⅱ期)研究開発の事業概要 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 燃料電池・水素技術開発部 独立行政法人産業技術総合研究所 2004年2月20日(金) 1 Ⅰ.事業の目的・政策的位置付け Ⅰ.事業の目的・政策的位置付け 1.1 事業の背景 社会的背景 地球規模での エネルギー・ 環境問題の解決 地球温暖化、増大するエ ネルギー消費に対する化 石燃料に代わる新たなエ ネルギー源の確保のため に再生可能エネルギーか ら製造できる水素を利用 技術的背景 近年、固体高分子型燃料電池 (PEFC)が長足の進歩を見せ、 自動車や家庭用に導入が期待 される。低コスト化、耐久性・信 頼性や周辺技術のインフラが未 熟。これらの技術開発の推進が 必要。 水素は、燃料として使用しても水を生成す るのみで、CO2等の温室効果ガスを発生 しないため、環境に対する負荷を与えない 二次エネルギー。ただし、当面は化石燃料 からの水素製造が水電解よりコスト面で有 利であるので、製造時にCO2を発生する が、燃料電池自動車からは水のみ生成。 2 WE-NETⅠ期の研究開発体制 工業技術院(現経済産業省) 第Ⅰ期は、基礎的研究、要素技術の研 究及び調査研究等を行い、全体システムの 最適化設計に必要な基盤の確立、システ ム構築の鍵となる中核技術の開発を図る。 (1)全体システム 全体システム (2)水素製造技術 水素製造技術 補助 NEDO WE- -NET開発委員会 開発委員会 委託 (3)輸送貯蔵技術 (3)輸送貯蔵技術 (4)水素利用技術 (4)水素利用技術 サブタスク2 サブタスク2 国際協力推進の ための調査検討 サブタスク4 サブタスク4 水素製造技術 の開発 サブタスク5 サブタスク5 水素輸送・貯蔵 技術の開発 (財)エン振協 (財)エン振協 (財)エン振協 サブタスク3 サブタスク3 全体システム概念 設計 固体高分子電解質 水電解法 電流密度1A/cm2以上 以上 電流密度 エネルギー効率90% エネルギー効率 ①全体システム概念設計 電源開発㈱ ②グローバルネットワーク研究 電源開発㈱ ③一国規模での予測評価 (財)電中研 ④都市規模での予測評価 ロンドンリサーチ他 ⑤安全対策・評価技術 (財)エネ総工研 ①大型水素液化設 備の開発②液化水 素輸送タンカーの開発 ③液化水素貯蔵設 備の開発④各種共 通機器類の開発 ⑤水素吸蔵合金の 開発 JRCM : 財)金属系材料研究開発センター サブタスク1 サブタスク1 総合評価と開発計画のため の調査研究 (財)エネ総工研 サブタスク6 サブタスク6 低温材料技術 の開発 JRCM (5)革新的・先導的技術 (5)革新的・先導的技術 サブタスク8 サブタスク8 水素燃焼タービン の開発 (財)電中研、発電 サブタスク9 サブタスク9 革新的・先導的 技術に関する調 査検討 設備技術検査協会 (財)エネ総工研 ①最適システムの評価 ②燃焼制御技術開発 ③主要構成機器の開発 ④主要補機類の開発 ⑤超高温材料の開発 サブタスク7 サブタスク7 水素利用技術に 関する調査検討 (財)エン振協 3 1.2 事業の目標 第Ⅰ期最終評価結果 第Ⅱ期の目標 第Ⅰ期の要素技術開発は、 第Ⅱ期の研究開発では、 (1)概ね順調に技術開発が進捗 (1)概ね順調に技術開発が進捗 (2)研究開発の方向も妥当 (2)研究開発の方向も妥当 (3)世界的に高い技術レベルの (3)世界的に高い技術レベルの 成果有り (4)実用化に向けた中間的目標 (4)実用化に向けた中間的目標 の設定が必要 (5)分散利用技術にも一層の重 点を置き長期構想への段階的 ステップを構築のこと (1)水素の段階的導入を図るため (1)水素の段階的導入を図るため の、短・中期での実用化を目指 す研究開発を実施する。 小規模分散利用に重点を置く。 (燃料電池の周辺技術) (2)再生可能エネルギーのグロー (2)再生可能エネルギーのグロー バルな大規模・有効利用を図る ための実用化には長期を要す る研究開発を行う。 1.3 事業の意義・必要性 ■燃料電池を利用したエネルギー体系は、クリーンな技術体系であると共 に、高いエネルギー効率を有している。従って、環境へのクリーンさとエネ ルギー効率の向上を同時に達成することができる。 4 WE-NETⅡ期プロジェクトの研究内容 Ⅰ期より継続 Ⅰ期より継続 酸素 Ⅱ期から新規 Ⅱ期から新規 T6:固体高分子型燃料電池 水素 (H14よりFCに統合移管) T8:水素製造 電極 T5:水素燃料タンク T9:水素液化機 断熱材、液水ポンプ T10:低温材料 T11:水素貯蔵材料 (3mass% mass%以上) 以上) (3 mass% T7:水素供給ステー ション T4:水素ディーゼル オープンサイクル水素ディ-ゼル(600 級) オープンサイクル水素ディ ゼル(600kW級) ゼル(600 を目指した単筒機で100kW水素 水素 を目指した単筒機で100 ディ-ゼルエンジン本体と熱燃焼室の製作 ディ ゼルエンジン本体と熱燃焼室の製作。 共通 共通 T1:システム(水素導入シナリオ、経済性評価、再生可能エネルギー利用) T2:安全技術 T3:国際協力 T12:革新的・先導的技術に関する調査・研究 5 1.4 NEDO及び産総研が関与することの意義 ■本技術開発は、水素の製造、輸送・貯蔵、利用と水素エネルギーシステム全般 に係る多分野にわたる基礎的・基盤的な技術開発であるため民間のみで事業を 行うことは、困難である。 ■当該技術は燃料供給インフラ等、水素エネルギー社会の構築に係る技術開発 であり、我が国の新エネルギー政策に深く関与することから、国が主体となって実 施する必要がある。 ■本事業は、「エネルギーの安定供給」、「地球環境保全」の達成を可能にするた めの研究開発であり、エネルギー政策の基本方針と合致する。 1.5 世界動向の中での位置付け ■太陽光発電や風力発電などの電力を水素に変換する数多くのプロジェクトがド イツやカナダ、アメリカをはじめとする多くの国で国際協力を交えながら推進されて いる。アメリカではDOEによるHydrogen いる。アメリカではDOEによるHydrogen Programにおいて水素の製造技術、貯蔵、 Programにおいて水素の製造技術、貯蔵、 水素供給技術、燃料電池による利用技術の研究開発を行っている。また、 California Fuel Cell Partnership プロジェクトで プロジェクトで2000 2000~ 2000~2007年に約 2007年に約50 年に約50台の燃料電池 50台の燃料電池 車をサンフランシスコなどの市内で導入して実証試験を行っている。欧州では、ヨー ロッパ・バス・プロジェクト(C ロッパ・バス・プロジェクト(Clean Urban lean Urban Transport for Europe)が、10都市におい Europe)が、10都市におい て30台のバスを使い、さまざまな水素供給施設を用いて実証試験が行われている。 30台のバスを使い、さまざまな水素供給施設を用いて実証試験が行われている。 6 (2003~ 2003~2005) 2005) Ⅱ.研究開発マネージメント Ⅱ.研究開発マネージメント 2.1 研究開発の目標 (1)システム研究 システム研究 ①システム評価 タスク1 システム評価 タスク ②安全対策 タスク2 タスク ③国際協力 タスク3 タスク (2)水素製造技術 水素製造技術 タスク8 タスク (3)水素輸送・貯蔵技術 水素輸送・貯蔵技術 ①水素輸送・貯蔵技術 タスク9 タスク ②低温材料 タスク10 ②低温材料 タスク タスク5 ③自動車用水素燃料タンクシステム タスク ④水素貯蔵材料 タスク11 ④水素貯蔵材料 タスク (4)水素利用技術 水素利用技術 ①水素供給ステーション タスク7 ①水素供給ステーション タスク ②動力発生技術 タスク4 ②動力発生技術 タスク タスク6 ③純水素供給固体高分子型 タスク 燃料電池 (5)革新的・先導的技術 革新的・先導的技術 タスク12 タスク 水素導入戦略の検討 ・安全評価手法の確立 ・法規制見直しのデータ取得 国際研究協力及び国際的情報交流の推進 ・水素供給ステーション(電極面積1000cm2、 、積層型)への応用 ・水素供給ステーション(電極面積 ・薄型セパレータの開発 ・積層化電解槽(電極面積:2500cm2、 、電流密度: 1A/cm2、 、 積層化電解槽(電極面積: 効率: 効率:90%以上) 以上) 要素技術開発 低温材料の材料特性評価とデータベースの拡充等 ・水素燃料タンクシステムの要素技術開発 ・水素供給ステーションと組み合わせた技術開発 ・移動体/定置用:有効水素吸蔵量:3mass%、 、放出温度: ・移動体/定置用:有効水素吸蔵量: 100℃以下、 ℃以下、5000サイクル時の性能が初期の サイクル時の性能が初期の90%以上 ・自動 以上 ・自動 ℃以下、 サイクル時の性能が初期の 車用:有効水素吸蔵量:5.5mass%、 、放出温度: 放出温度:150℃以下、 車用:有効水素吸蔵量: ℃以下、 累積走行距離10万 の寿命 累積走行距離 万kmの 供給能力:30Nm3/h(オンサイト、オフサイト方式、要素技術開発) 供給能力: オンサイト、オフサイト方式、要素技術開発) 水素ディーゼルエンジン(100kW級単筒機)技術の確立 級単筒機)技術の確立 水素ディーゼルエンジン( 定置用30~ 定置用 ~50kW燃料電池送電端効率: 燃料電池送電端効率: 約45%(HHV基準) 基準) 7 革新的・先導的水素製造、輸送・貯蔵、利用技術の調査等 2.2 研究開発計画 99(H11) (1)システム研究 システム研究 ①システム評価 ②安全対策 ③国際協力 (2)水素製造技術 水素製造技術 (3)水素輸送・貯蔵技術 水素輸送・貯蔵技術 ①水素輸送・貯蔵技術 ②低温材料 ③自動車用水素燃料 タンクシステム ④水素貯蔵材料 (4)水素利用技術 水素利用技術 ①水素供給ステーション ②動力発生技術 ③純水素供給固体 高分子型 燃料電池 (5)革新的・先導的技術 革新的・先導的技術 00(H12) 01(H13) 02(H14) 03(H15) 各種システムの設計・評価 水素導入戦略の検討 安全設計基準の検討・安全評価手法の確立 国際研究協力及び国際的情報交流 電解法技術開発 要素技術開発・概念設計 材料特性試験・要素技術開発 要素技術開発 水素貯蔵材料の開発 要素技術開発・システム開発 システム開発 要素技術開発 要素技術開発・単筒機運転試験 要素技術開発・システム実証 調査・基礎研究 FCプロジェクトへ移管 8 2.3 研究開発体制(H11,H12年度) 工業技術院(現経済産業省) 特会評価費、基礎基盤評価費 補助 NEDO 工技院研究所(現産総研) 委託 (1)水素製造 水素製造 技術 (2)水素輸送 (2)水素輸送 ・貯蔵技術 T8 水素製造 (財)エン振協 (3)水素利用技術 (3)水素利用技術 (4)水素エネルギー (4)水素エネルギー システム技術 T4 動力発生 (財)エン振協 T9 輸送貯蔵 (財)エン振協 T1 システム評価 (財)エネ総工研 水素ディーゼル 研究調整会議 T5 自動車システム (財)エン振協 T10低温材料 T10低温材料 JRCM T2安全対策 T2安全対策 (財)エネ総工研 T6PEM型燃料電池 PEM型燃料電池 (財)エン振協 T11吸蔵合金 T11 吸蔵合金 OSTEC T12革新先導 T12革新先導 (財)エネ総工研 T7 T7 供給ステーション (財)エン振協 PEM: :polymer Electrolyte Membrane T3 T3 国際協力 9 (財)エン振協 OSTEC: : (財)大阪科学技術センター WEWE NET WENETプロジェクトの研究開発スケジュールと情勢変化 プロジェクトの研究開発スケジュールと情勢変化 WE--NETプロジェクトの研究開発スケジュールと情勢変化 NETプロジェクトの研究開発スケジュールと情勢変化 期間区分 第Ⅰ期 93 年 度 全体システム 水素製造技術 水素輸送貯蔵技術 水素利用技術 革新的先導的技術 情勢の変化 基本計画 の見直し 第 Ⅱ 期 98 99 大規模シス テムの概念 検討 00 第 Ⅰ 期 最 終 評 価 01 第Ⅲ期 02 小規模な分散利用技術の 研究開発 初期予定 実績 03 04 第 Ⅱ 期 事 後 評 価 第Ⅳ期~ 10 20 分散利用技術の実用 化、大規模利用技術 1年前倒して終了 一部半年繰越実施 工業技術院 経済産業省 省庁再編 燃料電池実用化戦略研究会が発足 5省庁の副大臣 ( 01年 年 1 月) 01 し、産学官が技術開発戦略の共有、 による「燃料電池 適切な役割分担、有機的・体系的な 燃料電池実用化戦略 プロジェクトチーム」が 技術開発取り組みが必要不可欠と 研究会が技術開発戦 燃料電池の実用 提言。(01年 月) 提言。( 年1月) 略を提言。(01年 月) 化・普及の施策を 略を提言。( 年8月) 取り纏めた(02 02年 取り纏めた( 02年 基本計画策定( 工技院が99年 月) 燃料電池自動車 工技院が 年3月) 2010年に5万台の 年に5万台の 5月)→水素安全 ■水素エネルギーの段階的導 水素エネルギーの段階的導 参考目標を設定。 改訂(02 改訂(02年 02年3月) 入を図るため、主として短期・ ■T2,T4,T7, 中期での実用化を目指す研 究開発を行う。 T8,T9,T11は 目標変更、T6の ■再生可能エネルギーのグロー 再生可能エネルギーのグロー 純水素固体高分 バルな大規模・有効利用を図 改訂( 01年 01年8月) 子型燃料電池は、 るため、実用化には長期を ■オフサイト方式水素 オフサイト方式水素 燃料電池プロジェ 要する研究開発も着実に実 供給ステーション追加 クトへ移管。 施する。 02年 02年6月 ■燃料電池自動 燃料電池自動 車と水素インフラ (水素ステーション)の 普及を加速する ため新プロジェク トを03年に立ち 上げるため、WE -NET事業は02 -NET事業は02 年度で終了と決 年度で終了と決 定。 10 2.4 情勢変化への対応 ・平成12年度に入り、燃料電池関連の技術開発を促進することが、求められ た。予算も大幅に増え(10億) た。予算も大幅に増え( 億) 、この分野に対する技術開発を強化が必要。 WE-NETでの開発は、燃料電池本体以外の周辺技術が適当 →H13年3月、8月に基本計画を改訂。 ・タスク5 水素燃料タンクシステム 旧称「水素自動車システム」を燃料電池自動車に搭載する水素燃料タンクに 旧称「水素自動車システム」を燃料電池自動車に搭載する水素燃料タンクに 関する技術開発に限定。 ・タスク7 水素供給ステーション(H13年8月改訂) ・タスク7 水素供給ステーション(H13年8月改訂) オンサイトで水素製造を行うタイプのみであったが、工場から水素を運んでく オンサイトで水素製造を行うタイプのみであったが、 工場から水素を運んでく るオフサイト型の水素供給ステーションも対象とする。(H13年から開始) とする。(H13年から開始) るオフサイト型の水素供給ステーションも対象 ・タスク9 水素製造・貯蔵技術 ・タスク9 水素製造・貯蔵技術 旧称「液体水素輸送・貯蔵技術」を「液体」を外して、液体水素に限らず、他の 旧称「液体水素輸送・貯蔵技術」を「液体」を外して、液体水素に限らず、他の 水素の輸送・貯蔵形態を扱えるようにした。大規模な液体水素の他に ようにした。大規模な液体水素の他に水素供 水素供 水素の輸送・貯蔵形態を扱える ようにした。大規模な液体水素の他に 給ステーション用などの小規模分散型の液体水素を取り扱えるように変更。 給ステーション用などの小規模分散型の液体水素を取り扱えるように変更。 ・タスク11 水素貯蔵材料 ・タスク11 水素貯蔵材料 旧称「水素分散輸送・貯蔵用水素吸蔵合金」を水素吸蔵合金に限らず、ケミ 旧称「水素分散輸送・貯蔵用水素吸蔵合金」を水素吸蔵合金に限らず、ケミ 11 カル水素貯蔵材料やカーボンナノチューブ等も対象とするよう変更。 とするよう変更。 カル水素貯蔵材料やカーボンナノチューブ等も対象 ・研究開発の方針変更(H13年度~) ・タスク2 安全 高圧水素燃料タンクに関する安全対策も対象に加え、高圧水素の漏洩着火 高圧水素の漏洩着火 高圧水素燃料タンクに関する安全対策も対象に加え、 高圧水素の漏洩着火 に関するデータ採取も対象。水素供給ステーションに関する安全対策 水素供給ステーションに関する安全対策も強化。 も強化。 に関するデータ採取も対象。 水素供給ステーションに関する安全対策 ・タスク10 低温材料 ・タスク10 低温材料 液体水素ローリーに関する材料開発も対象に加えた。 液体水素ローリーに関する材料開発も対象に加えた。 ・タスク4 ・タスク4 動力発生技術 CO2を排出しないクローズドサイクル型の高効 動力発生技術 CO2を排出しないクローズドサイクル型の高効 率水素ディーゼルエンジンの開発を行ってきたが、早期の実用化が望めないた め、H13年度からは はオープンサイクル型の研究に方針変更 オープンサイクル型の研究に方針変更し、予算を縮小。 し、予算を縮小。 め、H13年度から 12 ・平成14年3月 基本計画を改訂。 ・タスク8 水素製造技術 固体高分子型水電解技術開発は、初期の目標を達成し、本タイプで初の 固体高分子型水電解技術開発は、初期の目標を達成し、本タイプで初の 水素ステーションを完成した。H14年度からは、電解セルの低コスト化 電解セルの低コスト化に 水素ステーションを完成した。H14年度からは、 電解セルの低コスト化に 研究を絞り、予算を縮小化。 研究を絞り、予算を縮小化。 ・タスク7 水素供給ステーション 高圧水素ガスが燃料電池自動車の燃料として急浮上し、水素圧縮機と水 高圧水素ガスが燃料電池自動車の燃料として急浮上し、水素圧縮機と水 素ディスペンサの要素技術開発が必要となり、H14から水素圧縮機と水 素ディスペンサの開発を開始。 素ディスペンサの開発を開始。 ・タスク11 水素貯蔵材料 ・タスク11 水素貯蔵材料 V-Ti- -Crー ーMn合金で 合金で2.6mass%の有効水素吸蔵量を達成したので、 の有効水素吸蔵量を達成したので、自動 合金で の有効水素吸蔵量を達成したので、自動 車用として有効水素吸蔵量 %、放出温度 車用として有効水素吸蔵量 5.5mass%、 有効水素吸蔵量 %、放出温度 150℃以下、累積走 放出温度 ℃以下、累積走 行距離 10万 の寿命を追加。 行距離 万kmの寿命を追加。 の寿命を追加。 ・タスク6 固体高分子型燃料電池 ・タスク6 固体高分子型燃料電池 副生水素の有効利用を目的として30KW級のシステムを開発し、完成 級のシステムを開発し、完成 副生水素の有効利用を目的として (H13年度)。H14年度から「固体高分子形燃料電池システム技術開発」 「固体高分子形燃料電池システム技術開発」 (H13年度)。H14年度から の方へ移管。 13 基本計画H14 年度変更後のタスク概要(1/2 (1/2) 基本計画 H14 (1/2 基本計画H14 H14年度変更後のタスク概要 年度変更後のタスク概要(1/2 (1/2) 基本計画H14年度変更後のタスク概要 H14年度変更後のタスク概要 年度変更後のタスク概要 (1/2)) タスク1:システム評価 タスク1:システム評価 タスク4:水素ディーゼル タスク4:水素ディーゼル クローズド型のアル ゴン循環型からオー プンサイクル方式 に簡略化 変更無し タスク2:安全対策 タスク2:安全対策 タスク5:水素自動車システム タスク5:水素自動車システム 法規制緩和のため の研究対象を追加。 1,貯蔵量を増加し た場合安全か。 爆燃実験、高圧水素 噴出実験を継続。 変更無し 2,離隔距離を短く して 安全か。 タスク3:国際協力 タスク3:国際協力 タスク6:純水素固体高分子型燃料電池 タスク6:純水素固体高分子型燃料電池 燃料電池プロジェクト 変更無し に移管 14 基本計画変更後のタスク概要(2/2 (2/2) 基本計画変更後のタスク概要 (2/2 基本計画変更後のタスク概要(2/2 (2/2) 基本計画変更後のタスク概要 (2/2)) タスク7:水素供給ステーション タスク7:水素供給ステーション タスク10:低温材料 タスク10:低温材料 水素供給ステーション 要素技術の開発 を追加。 変更無し ・往復式水素圧縮機 ・水素ディスペンサ タスク8:水素製造 タスク8:水素製造 酸素 水素 電極 タスク11:水素貯蔵材料 タスク11:水素貯蔵材料 FCVへの適用を目的とし て 水素貯蔵量 ①開発規模の縮小。 ②セルの低コスト化な どの要素技術に重点 を置く。 : 5.5mass% %以上 5.5 タスク9:輸送貯蔵 タスク9:輸送貯蔵 (目標値変更) タスク12 12:革新・先導的技術 :革新・先導的技術 タスク タスク12 12:革新・先導的技術 :革新・先導的技術 タスク12 12 ①断熱材等の共通要素 技術開発は継続。 ②液体水素ローリーの 変更無し 開発を追加。 15 研究開発体制(H13,H14年度) 経済産業省 経済産業省 補助 NEDO H13年1月省庁再編 委託費 産総研(H13) 産総研 委託 (1)水素製造 (1)水素製造 技術 T8 水素製造 (財)エン振協 (2)水素輸送 (2)水素輸送 ・貯蔵技術 T9 輸送貯蔵 (財)エン振協 T10低温 T10低温材料 低温材料 (財)JRCM T11水素貯蔵 T11 水素貯蔵 OSTEC (3)水素利用技術 (3)水素利用技術 (4)水素エネルギー (4)水素エネルギー システム技術 T4 動力発生 (財)エン振協 T1 システム評価 (財)エネ総工研 T5水素燃料タンク T5水素燃料タンク (財)エン振協 T6 燃料電池 (財)エン振協 H13) 燃料電池プロジェクトへ移管H14~ 燃料電池プロジェクトへ移管 ~ T7 供給ステーション エン振協, エン振協,岩谷, 岩谷, 日立インダストリイズ (H14), H14), トキコ トキコ((H14) 研究調整会議 T2安全対策 T2安全対策 (財)エネ総工研 T12革新先導 T12革新先導 (財)エネ総工研 T3 T3 国際協力 16 (財)エン振協 ・平成14年の情勢変化 ・平成14年2月 燃料電池の実用化に関して、小泉総理大臣は、施政方針 演説において、自動車の動力や家庭の電源として、3年以内の実用化を目 指すと表明した。これを受け、4月26日の閣僚懇談会において、試験的な 市販が予定される燃料電池自動車を政府として率先導入することを表明。 率先導入に必要となる措置を2002年中に講じるとともに、初期段階の普 及を睨み、2005年を目途 及を睨み、2005年を目途に、安全性の確保を前提としつつ、 2005年を目途に、安全性の確保を前提としつつ、包括的な規 に、安全性の確保を前提としつつ、包括的な規 制の再点検を進めるよう指示を行った。 を行った。 制の再点検を進めるよう指示 ・こうした状況から、経済産業省、国土交通省、環境省の各副大臣による 「燃料電池プロジェクトチーム」が、我が国における燃料電池の実用化・普 及の加速のため、拡充・強化すべき施策を取り纏めた。(5月27日) ・この政府方針を受けて経済産業省は、燃料電池の早期実用化に向けた 取り組みを行うため「水素安全利用等基盤技術開発事業」を立ち上げる 取り組みを行うため「水素安全利用等基盤技術開発事業」を立ち上げるこ 「水素安全利用等基盤技術開発事業」を立ち上げるこ とにしたため、WE-NET事業は、1年前倒しして平成14年度で終了 とにしたため、WE-NET事業は、1年前倒しして平成14年度で終了する WE-NET事業は、1年前倒しして平成14年度で終了する ことになった。 ・内閣府及び関係省庁の局長等で構成される「燃料電池実用化に関する関 係省庁連絡会議」は、6法律28項目の関連規制項目毎に、規制の再点 係省庁連絡会議」は、6法律28項目の関連規制項目毎に、規制の再点 検の道筋を取りまとめた。(10月25日) 17 2. 5 予算の推移 研 究 開 発 項 目 タスク1 システム評価 H11年度 H12年度 H13年度 H14年度 72百万 82百万 82百万 94百万 66百万 75百万 125百万 243百万 37百万 52百万 40百万 57百万 63百万 113百万 158百万 163百万 31百万 83百万 114百万 149百万 30百万 93百万 173百万 タスク2 安全対策 タスク3 国際協力 タスク4 動力発生技術 タスク5 水素燃料タンク システムの開発 タスク6 純水素供給固体 高分子型燃料電池の開発 タスク7 水素供給ステーション の開発 タスク8 水素製造技術 75百万 404百万 788百万 784百万 413百万 274百万 417百万 292百万 148百万 92百万 115百万 247百万 タスク9 水素輸送・貯蔵技術 タスク10 低温材料 85百万 70百万 91百万 152百万 180百万 143百万 264百万 339百万 35百万 52百万 99百万 104百万 39百万 タスク11 水素貯蔵材料 タスク12 革新的・先導的技術 NEDO研究管理費他 18百万 16百万 13百万 134百万 128百万 237百万 特別会計(高度化) 産総研 一般会計 産総研 予 算 37百万 41百万 38百万 1,424百万 1,718百万 2,754百万 2,663百万 18 3.1 実用化、事業化の見通し ・タスク1 タスク1のシステム評価は、次期プロジェクト「水素安全利用等基盤技術開発」 のシステム評価は、次期プロジェクト「水素安全利用等基盤技術開発」 でも引き続き水素燃料電池導入・普及シナリオの策定、水素供給インフラ整備シ ナリオの策定を行い、水素エネルギーシステム導入に関わる。 ・タスク2 タスク2の安全に関する研究は、次期プロジェクトでも主要な課題である事故予 の安全に関する研究は、次期プロジェクトでも主要な課題である事故予 防、安全の確保及び安全に係るデータの採取等に資する研究を行う。 ・タスク3 タスク3は、次期プロジェクトでも国際協力、国際標準に関する業務を行う。 は、次期プロジェクトでも国際協力、国際標準に関する業務を行う。 ・タスク4 タスク4の水素ディ-ゼルは、実用機を造る技術開発は完了。実用化、事業化 の水素ディ-ゼルは、実用機を造る技術開発は完了。実用化、事業化 は可能。 ・タスク5 タスク5の燃料電池自動車用タンクシステムの研究は、次期プロジェクトでも航 の燃料電池自動車用タンクシステムの研究は、次期プロジェクトでも航 続距離を確保するために「70 続距離を確保するために「70MPa 70MPa高圧タンクの開発」として、引き継がれ、H19 MPa高圧タンクの開発」として、引き継がれ、H19 年度に実用化する予定である。 ・タスク7 タスク7の水素供給ステーションの の水素供給ステーションの4 4年間の開発で、水素供給ステーションを3 の水素供給ステーションの システム開発した。この開発成果は、JHFC(Japan システム開発した。この開発成果は、JHFC(Japan Hydrogen & Fuel Cell Demonstration Project) が行っているFCVの実証試験に引き継がれており、今 後のFCVの普及に役立つと考えられる。要素技術である水素ディスペンサ、水 素圧縮機等の開発は、次期プロジェクトでは70 素圧縮機等の開発は、次期プロジェクトでは70MPa 70MPa級の機器を開発するために、 MPa級の機器を開発するために、 19 引き続き研究を進め、H19年度に実用化する予定である。 ・タスク8 タスク8の水素製造技術は、高効率、低コストを目指して次期プロジェ の水素製造技術は、高効率、低コストを目指して次期プロジェ クトでも開発を進め、実用化のための課題解決を図る。 ・タスク9 タスク9の水素輸送・貯蔵技術開発は、次期プロジェクトで液体水素の の水素輸送・貯蔵技術開発は、次期プロジェクトで液体水素の 高圧化、移送式ポンプ、液体水素コンテナの開発として引き継がれ実用 化を目指す。 ・タスク10 タスク10の低温材料は、次期プロジェクトでも水素用材料の基礎物性 の低温材料は、次期プロジェクトでも水素用材料の基礎物性 の研究として共通基盤技術を確立するため、引き続き主要な研究として 実施する。 ・タスク11 タスク11の水素貯蔵材料の開発は、 の水素貯蔵材料の開発は、5.5 の水素貯蔵材料の開発は、5.5mass% 5.5mass%以上の水素貯蔵材料を mass%以上の水素貯蔵材料を 開発する目標を達成するため、引き続き次期プロジェクトで研究を行い、 自動車メーカ等の採用を待つ。 ・タスク12 タスク12の革新的・先導的技術の研究は、次期プロジェクトでも引き の革新的・先導的技術の研究は、次期プロジェクトでも引き 続き、調査・研究の形で引き継いでいる。 ・「水素安全利用等基盤技術開発」では、法規制の再点検に資するデ ータを採取し、例示基準(案)の作成に役立て、FCVの普及の道筋を つけることを主な目標として実施している。 このため、車両関連機器、水素インフラの安全に関するデータの採 取をH15、H16に集中して実施している。 20 4.1 事業全体の成果 (1)基本計画を情勢変化に応じて変更することで計画 的にWE-NETⅡ期事業を終了させた。 (一部(タスク4,タスク7D、7F)は、半年繰越して事 業を行ったが、その他の事業はH14年で終了) (2)タスク1に設けた研究調整会議で各タスクが実施し ている研究開発内容を発表し、関係者間で情報を共 有することで、各タスク間の開発を効率よく進めること ができた。 (H11年 7回、H12年 8回、H13年 9回、H14年 8回) (3)各タスク内に設置した委員会、WGに所属する委員 は当該技術に関する専門家であり、開発項目に対し て適切な助言、指摘等により効果的にその研究開発 を進めることに貢献した。 (4)論文 「査読付き」 123件 「査読なし」 79件 特許 「出願済」 66件 「登録」 0件 21 タスク1の目標達成度 タスク1の目標達成度 目標 (1) (1) シナリオの策定 ① 燃料電池自動車の導入 シナリオ作成 ② 定置用燃料電池の導入 シナリオ作成 ③ 水素エネルギー普及シナ リオの作成 (2) システム検討 ① 水素ステーションと水素コ ストの検討 ② 学習曲線による燃料電池、 ステーションコストの検討 ステーションコストの検討 ③ 副生水素利用システム等 結果 (1)シナリオの策定 (1)シナリオの策定 ① 燃料電池自動車の導入シナリオを作成した。 ② 定置用燃料電池の導入シナリオを作成した。 ③ 水素エネルギー普及シナリオを作成した。 (2)システム検討 ① 水素ステーションと水素コストを検討した。 ② 学習曲線による燃料電池、ステーションコス トを検討した。 ③ 副生水素利用システムを検討した。 (3)総合調整 WE WENET各タスク間の総合調整 各タスク間の総合調整するために するために 研 WE-NET各タスク間の総合調整 するために 研 究調整会議を実施した。 (H11 7回、H12 8回、H13 9回、H14 8回) 目標は、達成した。 22 タスク2の目標達成度 タスク2の目標達成度 目標 結果 (1)実験的検証にもとづく安全評価手法の確立 (1) 実験的検証にもとづく安全評価手法の確立 (2)法規制見直しのためのデータ取得 ①液体水素流出・蒸発試験 ①液体水素流出・蒸発試験 ②水素燃焼試験、爆燃試験 ③高圧水素の着火試験、噴出試験、拡散試 験 ④漏えい・蒸発・拡散計算モデルおよび 爆燃計算モデルの改良 (3)予備的安全評価の実施 ① 水素拡散、爆燃等のシミュレーションモ デルの開発 ・水素関連施設で発生する可能性のある 災害事象、原因、発生頻度に関するデー タを収集、整理し、これらをもとに実用水素 充てんスタンドの安全性に関し、災害リスク 評価を行い、主なリスクを洗い出した。 評価を行い、主なリスクを洗い出した。 ・水素の漏えい、着火性、拡散、爆発等の 実験を行うとともに、シミュレーションモデル を構築して、予想される災害の大きさを概略 推定できるようになった。 目標は、達成した。 23 タスク3の目標と達成状況 タスク3の目標と達成状況 目標 (1) 事業の目標 WEWE-NET研究開発に関する国際研究協 NET研究開発に関する国際研究協 力及び国際情報交流を推進すること により、世界的規模の水素利用国際ク リ-ンエネルギ-ネットワ-ク構想に ついて積極的に提唱する。 IEA IEA水素実施協定への対応を通じて、 IEA水素実施協定への対応を通じて、 国際協力、各国の最新技術情報の 収集を図る。 ISO/TC197 ISO/TC197( ISO/TC197(水素技術)の国際標準化 活動に参加し、標準化テ-マを積極的 に提案する。 (2) 研究開発の内容 1)国際的研究協力の推進 2)国際的情報交換等の実施 3)水素エネルギ-技術の標準化研究 結果 (1) 事業の目標 ・国際会議において、水素エネルギー、燃 料電池開発に関する我が国の方針、 WEWE-NETプロジェクトの進捗状況を発表 NETプロジェクトの進捗状況を発表 し、世界の関係者にWE し、世界の関係者にWEWE-NETプロジェク NETプロジェク トの存在を浸透させた。 ・IEA ・IEA水素実施協定への対応を通じて、国 IEA水素実施協定への対応を通じて、国 際協力、各国の最新技術情報の 収集を図った。 ・ISO/TC197 ・ISO/TC197( ISO/TC197(水素技術)の国際標準化活 動に参加し、国際標準化に我が国の主 張を取り込んだ。 (2) 研究開発の内容 1)IEA専門家会議へ専門家を派遣 2)国際会議へ参加、成果発表等 3)水素エネルギ-技術標準化委員会 の設置、WG委員会設置 目標は、達成した。 24 タスク4の目標と達成状況 タスク4の目標と達成状況 目標 ・発電効率40% ・発電効率40%(高位発 40%(高位発 熱量基準、低位発熱量 基準では47.3% 基準では47.3%)程度の 47.3%)程度の オープンサイクル水素 ディーゼルエンジン (600kW (600kW級システム kW級システム) 級システム)を開 発することを念頭にお いて、単筒機で100 いて、単筒機で100kW 100kW 級オープンサイクル水 素ディーゼルエンジンを 開発する。 結果 (1) 発電効率 ・高負荷で41.6 ・高負荷で41.6%(高位発熱量基準, 41.6%(高位発熱量基準, 低位発熱量基準では49.2% 低位発熱量基準では49.2%)を得た。 49.2%)を得た。 ・次世代機関(最高圧力19.6 19.6MPa ・次世代機関(最高圧力 19.6MPa) MPa) では 44.0 44.0% 44.0% (高位発熱量基準,低位発熱量 基準では52.0% 52.0% )が期待できる。 基準では 目標は、達成した。 25 タスク5の目標達成度 タスク5の目標達成度 目標 (1) 急速充填法の開発 ・MH ・MH( MH(水素吸蔵合金)タンク の構造検討 ・急速充填方法 (2) MH ) MHタンクの安全性評価 MHタンクの安全性評価 ・水素吸蔵放出時のMH ・水素吸蔵放出時のMH タンク安全の検討 タンク安全の検討 ・火災時の安全対策 (3) 圧縮水素タンクシステム の実用化調査研究 ・システム構成部材の 耐久性評価 結果 実体タンク試作((有効H (1) 実体タンク試作 有効H2吸蔵量 31. 25Nm 25Nm3) 3 充填試験で、 充填試験で、25 充填試験で、25m 25m を10分以内充填を確認した。 10分以内充填を確認した。 分割方式 分割方式 7分、プレートフィン方式 プレートフィン方式 2.6分 2.6分 (2) MHタンクの安全性評価 MHタンクの安全性評価 安全性評価の試験として、既存の消防法と国連法 安全性評価の試験として、既存の消防法と国連法 で危険物に該当しない合金は、大気に飛散しても 自然発火しない。 加熱試験で、溶栓をリリーフ弁と併用する対策が 有用であることを確認。 (3) 圧縮水素タンクシステムの実用化調査研究 CFRP(炭素繊維強化プラスチックス)の材料特性 CFRP(炭素繊維強化プラスチックス)の材料特性 を評価した。疲労強度試験(リング状試験片) 25万回後の強度は、初期の70% 目標は、達成した。 26 タスク7,7 タスク7 ,7,7AB AB タスク7,7 ABの目標達成度 タスク7,7AB ,7ABの目標達成度 ABの目標達成度 の目標達成度 目標 結果 (1) FCV用水素供給ステーション の開発 オンサイト方式: ・大阪(改質型) ・高松(水電解型) オフサイト方式: ・鶴見(水素ボンベ)(H13 ・鶴見(水素ボンベ)(H13以降) H13以降) 仕様 : 供給能力 30Nm 30Nm3/h (実用規模の 1/10) ) (実用規模の1/10 実用規模の1/10 (2) 急速充てん(10min以内) (3) 運転試験、評価技術調査 (1) FCV用水素供給ステーション オンサイト水素供給ステーション ・大阪(改質型)を建設し、H14年2月に 運用を開始した。 ・ 高松(水電解型)を建設し、H14年2月 に運用を開始した。 オフサイト水素供給ステーション ・ 鶴見(水素ボンベ)を建設し、H14年8月 から運用を開始した。 (2) 急速充てん技術の開発 10min以内で充填(MH、高圧タンク) ・安全評価を行った。 (3) 安全指針ドラフトを製作した。 ・効率算定データを採取した。 目標は、達成した。 27 タスク7CDの目標達成度 タスク7CDの目標達成度 目標 (1) 容量100 100Nm3/h Nm3/h、 容量100 Nm3/h、40MP 40MPa プランジャ式プロトタイプ ・油分混入量 0.5ppm 以下 ・信頼性 部品寿命5, ・信頼性 部品寿命5,000 時間以上 ・全断熱効率 70%以上 (2) 84MPa 84MPa昇圧運転試験 MPa昇圧運転試験 (3) 基盤技術研究 油分混入極少化技術、 微少油分測定技術及び 外部漏れ量極小化技術 の開発 結果 (1) 容量100 100Nm3/h Nm3/h、 容量100 Nm3/h、40MP 40MPa プランジャ 式プロトタイプ機の性能試験結果 ・油分混入量 0.11ppm ・部品寿命 405, ・部品寿命 405,000時間 ・全断熱効率 71.3% (2) 84MPaの昇圧試験を実施した。 (3) 基盤技術研究 ・高圧シール要素試験装置を用いて 外部漏れ量1%以下を達成 ・注油量と外部漏れ量の相関関係を 確認 ・微少油分測定方法を検討し選定した。 目標は、達成した。 28 タスク7EFの目標達成度 タスク7EFの目標達成度 目標 結果 (1) 水素ディスペンサの主要部 品である35MPa級流量計、 充てんカップリング、緊急離 脱カップリングの開発を行う。 (2) 70MPa級水素ガス流量計 測技術の研究開発 (3) 7MPa対応水素ガス流量 計測技術の開発 (1)70MPa級充てん機の構成部品とし て、充てんカップリング、緊急離脱カッ プリング表示・制御部及び自動弁、手 動弁、充てんホース等を開発した。 (2) 35MPa級及び70MPa級の高圧 ガスの流量を計測する流量計を開発 した。 (3) コリオリ流量計以外の新しい高圧水 ガス流量の計測方式として、音速ノズ ルと超音波を用いた流量計について 予備試験を行い、それらの可能性を 確認した。 目標は、達成した。 29 タスク8の目標達成度 タスク8の目標達成度 目標 電極面積1000 1000cm cm 2 ,2500cm 2セル (1) 電極面積 1000 の積層化電解層の製作、評価 の積層化電解層の製作、評価 -電流密度:1 電流密度:1A/cm2以上、エネルギー 変換効率:90%以上 (2) 電解層構成材料コストの低減技術 の開発。 (3) 小規模水素製造システムの開発。 (4) 耐高温固体高分子電解質膜の 開発。(耐高温性:150 150℃) 開発。(耐高温性: 150℃) (5) 小型セルによる要素技術の開発・ 耐久性の向上 耐久性の向上 (6) 大型セルでは積層化技術・システム 技術の開発 (7) 水素供給ステーション用水電解スタック 技術の確立 結果 (!) 1000cm セル、,2500 ,2500cm 000cm 2 ×10セル、 10セル、 ,2500cm 2セルにて、電流密度: 1A/cm2以上、エネルギー変換効率:90%以上を達成 (2) コストの低減のため、薄板型セパレータの試作、検 討を行ったが、多くの課題があることが判った。 (3) 小規模水素製造システム( (3) 小規模水素製造システム( 1000cm 000cm 2×10セル)を開 10セル)を開 発し、高松水素供給ステーションにて実証試験を行った。 発し、高松水素供給ステーションにて実証試験を行った。 (4) 芳香族系化合物にスルホン酸を修飾した化合物で、 初期値ながら150 150℃の温度に耐えるプロトン伝導膜 ℃の温度に耐えるプロトン伝導膜を を 初期値ながら 150 ℃の温度に耐えるプロトン伝導膜 開発した。 (5) 小型セル( 1000cm 000cm 2×10セル)で400回のDSS 10セル)で400回のDSS (2年間運用)を行い効率低下が殆どないことを確認。 10セル)で10 10,,000時 (6) 大型セル( 2500cm 2500cm 2セル2×10セル)で セル)で10 間の長期連続運転を達成した。 (7) 水素供給ステーション用水電解スタック( 000cm (7) 水素供給ステーション用水電解スタック( 1000 cm 2 ×2スタックで定格水素量20 20Nm3/h Nm3/h時 ×10セル) 10セル) ×2スタックで定格水素量 20 Nm3/h 時 (1 (1A/cm2) A/cm2)でエネルギー効率90%以上を達成 目標は、ほぼ達成した。 30 タスク9の目標の達成度 タスク9の目標の達成度 結果 目標 (1) 水素輸送・貯蔵設備の開発 水素輸送・貯蔵設備の開発 水素輸送・貯蔵設備の開発 ・各種断熱構造体の断熱特性 と低温圧縮強度のデータベー スを得る。 ・高性能液体水素コンテナの (1) 水素輸送・貯蔵設備の開発 水素輸送・貯蔵設備の開発 ・PUF、泡ガラス、マイクロスフェア等を使った断熱構造体の断 ・PUF、泡ガラス、マイクロスフェア等を使った断熱構造体の断 熱性能試験、低温圧縮試験結果から各種断熱構造体 の断熱特性データベースがほぼ完成。 の断熱特性データベースがほぼ完成。 ・容量15m3、 、蒸発率 蒸発率0.5%/dの液体水素コンテナを開発。 の液体水素コンテナを開発。 ・容量 開発 (2 2) 共通機器類の開発 共通機器類の開発 ・大容量高揚程液体水素ポンプを製作し、目標回転数 ・大容量高揚程液体水素ポンプを製作し、 目標回転数 36,000rpm迄の回転性能を確認した。 迄の回転性能を確認した。 迄の回転性能を確認した。 ・小型汎用液体水素ポンプに適用可能なファイル軸受を 開発し、定格回転数20,000rpmで で10分間静定保持。 開発し、定格回転数 分間静定保持。 (2) 共通機器類の開発 共通機器類の開発 共通機器類の開発 ・液体水素ポンプの要素技術 開発 ・小型汎用液体水素ポンプ、 電動モータの設計条件、仕様 等 の確立 (3) 水素液化設備の高効率設計 ・水素液化設備の概念設計 ・ 水素膨張タービンの高効率 化の検討(タービン効率 化の検討(タービン効率80%) (タービン効率80%) (3) 水素液化設備の高効率設計 水素液化設備の高効率設計 ・大型水素液化設備(30,10,1t/ /d) )用水素圧縮機として ・大型水素液化設備( 遠心圧縮機が適用可能であることが判った。 ・水素膨張タービンの空気性能試験でピーク効率 ・水素膨張タービンの空気性能試験でピーク効率 ピーク効率 83.3% 83.3%を達成。 83.3%を達成。 目標は、ほぼ達成した。 31 タスク10の事業目標と達成度 タスク10の事業目標と達成度 目標 (1)水素 水素の輸送・貯蔵用構造材料 水素の輸送・貯蔵用構造材料と の輸送・貯蔵用構造材料と しての候補材料(母材および溶 母材および溶 しての候補材料( 接部)の適合性を検討し、材料 接部)の適合性を検討し、材料 特性のデータベース化 特性のデータベース化を図る データベース化を図る (2)分散 分散利用下での 分散利用下での容器 利用下での容器材料( 容器材料(薄肉 材料(薄肉) 薄肉) の機械特性評価、 の機械特性評価、データベース 評価、データベース 拡充 (3)最適 最適溶接技術に関わる要素 最適溶接技術に関わる要素技術 溶接技術に関わる要素技術 の開発 開発 の (4)低温 低温脆化・水素脆化挙動の 低温脆化・水素脆化挙動の解明 脆化・水素脆化挙動の解明 目標は、達成した。 結果 (1 1)候補材料( 候補材料(母材 母材) 低下は見られるものの は見られるものの、 候補材料( 母材)は、靭性の 靭性の低下 は見られるものの、 実使用上 実使用上、十分な特性 、十分な特性を示す。疲労特性については、 、十分な特性を示す。疲労特性については、 TIG溶接金属 も 回の疲労強度が0.2%耐力 0.2%耐力 TIG溶接金属 も10 溶接金属 も106~107回の疲労強度が0.2 と同程度以上。 (2)極低温での 極低温でのTIG TIG、 TIG、MIG溶接 MIG溶接部の靭性 溶接部の靭性は母材に比べ低 部の靭性は母材に比べ低 い。ステンレス鋼では、減圧電子ビーム溶接( 減圧電子ビーム溶接(RPEB RPEB) い。ステンレス鋼では、減圧電子ビーム溶接( RPEB) 法、摩擦撹拌接合( 法、摩擦撹拌接合(FSW FSW) FSW)法やレーザー溶接の可能性 など、低温靭性を著しく向上させ、 など、低温靭性を著しく向上させ、溶接作業性も改善 低温靭性を著しく向上させ、溶接作業性も改善 できる。アルミニウム合金でもFSW できる。アルミニウム合金でもFSW法や FSW法やRPEB 法やRPEB法 RPEB法適用 が、極めて微細な組織形成を介して低温靭性を飛躍 が、極めて微細な組織形成を介して 低温靭性を飛躍 的に向上させることを見出した。 (3)極低温での溶接部まで含めた特性データを、広く設 計・エンジニアリング・研究に活用できるよう検索・解 析ツール等も備えたデータベースシステムとして構 築。 築。 (4)溶接部の熱履歴 溶接部の熱履歴の の低温靭性に及ぼす影響、破壊靭 性の精密な評価試験、金属成分の水素環境脆化への 影響、金属への水素侵入条件の評価など、新たな研 影響、金属への水素侵入条件の評価など、新たな研 究手法、水素用材料の開発指針を示した。 32 タスク11の事業目標 タスク11の事業目標 目標 結果 (1) 移動体及び定置式設備用 移動体及び定置式設備用 有効水素貯蔵量 以上、 有効水素貯蔵量3mass%以上、 有効水素貯蔵量 放出温度 100℃以下、 ℃以下、5000サイクル時の サイクル時の 放出温度 ℃以下、 吸蔵能力が初期の90%以上 以上 吸蔵能力が初期の 以上 (2) 燃料電池自動車用 燃料電池自動車用(H14に目標追加)有 に目標追加)有 燃料電池自動車用 効水素貯蔵量5.5%以上、放出温度 以上、放出温度150℃ ℃ 効水素貯蔵量 以上、放出温度 以下、累積走行距離 10万 以下、累積走行距離 万km相当寿 相当寿 命を持つ水素貯蔵材料開発 (3) 高性能合金開発の新技術を幅広く検討、 高性能合金開発の新技術を幅広く検討、 有望材料を研究・探索する。 (1)V系水素吸蔵合金で有効水素 V系水素吸蔵合金で有効水素 吸蔵量2.58%mass%,放出温度 吸蔵量 放出温度 100℃以下、 ℃以下、1000サイクル時の吸蔵 サイクル時の吸蔵 ℃以下、 放出能力初期の90%以上を開 以上を開 放出能力初期の 発した。 (2)有効水素貯蔵量 有効水素貯蔵量5.5%以上の 以上の 有効水素貯蔵量 貯蔵材料の探索を行ったが、合 金系材料、水素錯体系化合物、 有機系水素化合物、炭素系材料 は目標に対し、まだ十分でない 結果であった。 (4) 産学官の総力を挙げて研究・探索を進 産学官の総力を挙げて研究・探索を進 め、早期に有望材料・技術を絞り込む。 目標は、達成した。 33 タスク12の事業目標と達成度 タスク12の事業目標と達成度 目標 1)革新的・先導的技術、改 良型在来技術の調査・検 討・評価 2)必要に応じて更なる研究 の実施 3)WE-NETプロジェクトの 方向性に有益な示唆・提 案の実施 成果 1)アイデア募集、階層化意志決 定法等を組み合わせた調 査・検討・評価スキームを構築 した。 42件(4年間) 2)可能性の高いと判断したテー マにつき、概念検討研究(2 2件)、基礎研究(3件)を実 施した。 3)水素製造・貯蔵・利用技術 等分野の技術開発の方向 性に示唆・提案を実施した。 目標は、達成した。 34 NEDO水素エネルギー技術開発室における 水素/ 水素/PEFC関連事業 事業年度 H12 H13 H14 H15 H16 H17 01 02 03 04 05 1992 シナリオ 基盤整備・ 技術実証段階 指標 FCV、住宅用コジェネの導入 1992 第1フェーズ 研究開発 ・ 技術開発 2010 2000 1996 第2フェーズ 固体高分子形燃料電池の 運輸・民生用高効率 エネルギーシステム 研究開発 技術開発 高効率燃料電池システム 2000 実用化技術開発 導入段階 2020 普及段階 FCV 5万台 FCV 500万台 定置用 2.1百万kW 定置用 10百万kW 固体高分子形 燃料電池システム 技術開発 固体高分子形燃料電池 要素技術開発等 固体高分子形燃料電池 システム化技術開発 携帯用燃料電池技術開発 LPガス固体高分子形燃料電池システム開発 水素エネルギー 利用技術開発 ソフト面 (制度面) での インフラ整備 1993 第1フェーズ 1999 第2フェーズ 水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術開発(WE 水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術開発(WEWE-NET) 水素安全利用等 基盤技術開発 燃料電池普及基盤整備 (ミレニアムプロジェクト) 高効率燃料電池システム 基盤技術開発 その他の関連事業 【主要諸元】 実用化・普及促進 2000 2000 固体高分子形 燃料電池システム 普及基盤整備 固体高分子形燃料電池 システム実証等研究 (METIで計上) 35 技術評価委員会 第1回「水素エネルギー利用技術第Ⅱ期研究開発」(事後評価)分科会 タスク1 システム評価に関する調査・研究 財団法人 エネルギー総合工学研究所 平成16年2月20日 (1/27) 報告内容 1.事業の目標 2.事業の実施内容 2.1 研究開発の内容 2.2 研究開発の実施体制 3.情勢変化への対応 4.事業の成果 4.1 水素インフラ整備シナリオ 4.2 定置用燃料電池導入シナリオ 5.対外発表件数 6.H15年度事業の内容 (2/27) 1.事業の目標 1.水素エネルギー導入普及シナリオの策定 水素エネルギー技術に関するシステム検討 水素導入シナリオおよび水素導入・普及戦略を策定 水素エネルギー導入・普及の道筋を明確化 水素エネルギ-技術の開発計画立案 水素エネルギーの普及実現 研究調整会議の実施 2.WE-NET 各タスク間の連絡調整 :WE-NET WE-NET各タスク間の調査研究および研究開発を調整 研究および開発の円滑で効果的な推進 (3/27) 2.事業の実施内容 2.1 研究開発の内容 (1) システム検討 ① 水素ステーションと水素コストの検討 ② 学習曲線による燃料電池、ステーションコストの検討 ③ 副生水素利用システム (2) シナリオの策定 (2) シナリオの策定 ① 燃料電池自動車の導入シナリオ作成 ② 定置用燃料電池の導入シナリオ作成 (4/27) 報告 内容 2.2 実施体制 経済産業省 補助 NEDO 水素エネルギー技術開発室 委託 (財)エネルギー総合工学研究所 タスク1 タスク1委員会 水素エネルギー導入シナ リオ検討WG 燃料電池度導入導入 燃料電池度導入導入シナ 導入導入シナ リオ検討WG 水素エネルギー 供給検討WG 研究調整会議 (5/27) 3.情勢変化への対応 燃料電池システムの検討(H13~H14) 水素システム全般の検討(H11~H12) 海外水素エネルギー動向の把握 燃料電池自動車導入 水素供給システムの検討 定置用燃料電池導入 シナリオの作成 離島における水素エネルギーシステム シナリオの作成 自然エネルギーによる水素製造 1. シナリオ検討へのシフト 平成12年以降 燃料電池実用化戦略研究会、燃料電池実用化推進協議 会など燃料電池の導入、普及を目指す活動 活発化 H13年、H14年 燃料電池導入シナリオ作成 2. 新規ワーキングの発足 水素エネルギーの普及には、水素コストの影響大 鉄鋼、石油、都市ガス、化学(水素供給主体業種)業界の代表 者を委員とする水素供給ワーキンググループ新設 (6/27) 報告 内容 4.事業の成果 4.1 燃料電池自動車導入シナリオ (1) 燃料電池車導入シナリオ検討スキーム (2) 前提条件 (3) 経済性分析 (4) まとめ 4.2 定置用燃料電池導入シナリオ (1) 定置用燃料電池導入可能世帯・業種条件の抽出 (2) 導入容量の推計 (3) 経済性 (4) まとめ (7/27) 4 事業の成果 >4.1 水素インフラ整備シナリオ (1) 燃料電池車導入シナリオ検討スキーム 燃料電池実用化戦略研究会 燃料電池車代替車種メーカヒアリング ロジスティック曲線による普及分析 影響・効果 フューエルサイクル分析 車種別普及台数 水素ステーション数 経済性 副生水素供給ポテンシャル調査 水素需要 学習曲線による将来コスト分析 燃料電池車コスト 水素ステーションコスト 追加的投資 ユーザメリット 水素コスト 燃料選択 水素ステーションタイプ同定 コスト低減 ステーション事業者メリット CO2排出 H15年度研究として実施 感度分析・不確実性分析 水素コスト低減検討&外部コスト検討 自立的普及可能性評価 (8/27) 4 事業の成果 >4.1 水素インフラ整備シナリオ (2) 前提条件 ○ 導入台数: 燃料電池車導入目標 2010年5万台、2020年500万台 ○ 自動車 ・ 導入車種:路線バス、フリート乗用車 ⇒ 乗用車中心 ・ 燃料:圧縮水素車載車 ⇒ 車上改質車 ・効率:50% ⇒ 60% ○ ステーション: 100Nm3/hオフサイト ⇒ 大型化 ⇒ オンサイト (3) 経済性分析 ○ 学習曲線による燃料電池自動車コストの検討 ○ 学習曲線による水素ステーションコストの検討 ○ 学習曲線による水素コストの検討 ○ 燃料電池自動車自立的普及可能性の検討 (9/27) 4 事業の成果 >4.1 水素インフラ整備シナリオ>(3)経済性検討 -1/ 7 学習曲線による燃料電池自動車コストの検討 成熟度 進歩係数 学習曲線 25.0 車体等 充分 100% 台数 価格(百万円) 20.0 燃料電池 低 価 格 85% 台数 15.0 価 格 高圧タンク 低~中 90% 台数 10.0 価 格 2次電池 低~中 90% 台数 5.0 ・・・・・・・ ・・・・・ ・・・% 価 格 台数 (単位:百万円) 燃料電池自動車 ガソリン小型自動車 2004年初頭 2006年 23.4 1.7 20 20 20 15 20 10 20 06 0.0 20 04 初 20 04 ガソリン小型乗用車 170万円 価 格 5.5 1.7 (10/27) 2010年 2015年 2020年 3.1 1.7 2.3 1.7 1.9 1.7 4 事業の成果 >4.1 水素インフラ整備シナリオ>(3)経済性検討 -2/ 7 学習曲線によるステーションコストの検討 ステーションコスト [百万円] 600 ステーション規模 :300Nm3/h 400 オンサイト型 改質水素製造・高圧充填 200 オフサイト型 高圧水素輸送・高圧充填 0 2002 2006 2010 2015 2020 年 (11/27) 4 事業の成果 >4.1 水素インフラ整備シナリオ>(3)経済性検討 -3/ 7 オンサイトステーション (NG改質) 2020年 オフサイトステーション (COG副生水素) 水素コストのブレークダウン 2020年 2015年 2015年 2006年 圧縮機 2004年 貯蔵 改質・精製 工事費 NG 電気 2015年 2010年 2006年 2004年 0 工事費 20 40 COG H2 60 80 100 水素供給コスト[円/Nm3] (12/27) 120 140 STコスト 固定費(ディスペンサー) STコスト 固定費(蓄圧器) STコスト 固定費(コンプレッサー) STコスト 固定費(改質・精製) STコスト 固定費(計装機器類) STコスト 固定費(工事費) STコスト 固定費(ユーティリティ) STコスト 固定費(諸経費) STコスト 人件費 STコスト 変動費(都市ガス) STコスト 変動費(電気) STコスト 変動費(上水) STコスト 変動費(工水) 輸送コスト 固定費 輸送コスト 人件費 輸送コスト 変動費 製造コスト 固定費 製造コスト 人件費 製造コスト 変動費(電気・工水) 製造コスト 水素ガス受入単価 4 事業の成果 >4.1 水素インフラ整備シナリオ>(3)経済性検討 -4/ 7 燃料電池自動車自立的普及可能性の検討 <燃料電池自動車の自立的に普及が可能条件の設定> 「燃料電池自動車ユーザ、ステーション事業 者、両方が経済的なメリットを受けるとき」、 水素燃料電池自動車は自立的普及可能性 があるとする。 (13/27) 4 事業の成果 >4.1 水素インフラ整備シナリオ>(3)経済性検討 -5/7 <燃料電池車ユーザ/ステーション事業者ーメリット検討スキーム> ○ ユーザー損益分岐水素価格:ライフサイクルコスト差がゼロ になる水素価格_比較燃料(ガソリン、軽油)は税込み価格 従来車取得コスト 単年度燃料価格×10年 燃料電池自動車取得コスト 燃料電池自動車取得コスト メリット デメリット 単年度燃料価格×10年 単年度燃料価格×10年 ○ ステーション事業者損益分岐価格:NPVがゼロになる水素 価格-耐用年数8年、割引率4% 利益 初期 投資額 1 2 3 4 5 6 7 8 年 年 年 年 年 年 年 年 目 目 目 目 目 目 目 目 現在価値 メリット デメリット に換算 割引率4% 初期投資額と比較 (14/27) 4 事業の成果 >4.1 水素インフラ整備シナリオ>(3)経済性検討 - 6/7 <燃料電池自動車自立的普及可能性-結果> 3 損益分岐水素価格(円/Nm ) <車両:上限、ステーション:下限> 150 3 500Nm -on 100 3 31円/Nm 3 300Nm -off 50 0 -50 軽油営業用 普通バス ↓ 燃料電池営業用 普通バス 追加投資(経済的助成) 自立的普及 ガソリン小型乗用車 ↓ 燃料電池小型乗用車 -100 2010年 2006年 2015年 2020年 2017年 (15/27) 4 事業の成果 >4.1 水素インフラ整備シナリオ>(3)経済性検討 -7/7 <追加投資コスト(2020年まで)> <累積補助額> 億円 -現行施策モデル- 40,000 最大9000万円 万円 最大 ステーション建設 ステーション1基 30,000 ステーション分 自動車差分 <総追加投資額> 3兆7, 3兆7,726億円 7,726億円 建設費全額 ステーション建設 ステーション1基 20,000 1兆7,986億円 7,986億円 従来車との差額の 燃料電池自動車 購入 1/2 10,000 従来車との差額の 燃料電池自動車 購入 全額 0 累積補助額 総追加投資額 (単位:億円) 車両 ステーション 合計 累積補助額 総追加投資額 15,863 2,123 17,986 17,986 (16/27) 31,726 6,000 337,726 7,726 7,726 補助 効果 4 事業の成果 >4.1 水素インフラ整備シナリオ (4) まとめ 1. 燃料電池自動車の導入目標台数を達成 するために必要な水素ステーション数、ス テーションの仕様につき策定を行った。 2. 燃料電池自動車、水素ステーション、水素 それぞれの将来に於けるコスト推算を行い、 経済的自立普及可能性を検討した。 3. 補助的な経済助成の効果を試算し、その 有効性を確認した。 事業 成果 (17/27) 4 事業の成果 >4.2 定置用燃料電池導入シナリオ >(1) 定置用燃料電池の導入量 -1/ 3 家庭用燃料電池導入-メリット/デメリット -世帯条件- ○熱・電エネルギ-消費パタ-ン ○電気価格/都市ガス・LPG・灯油価格 一戸建て 3人以上 人以上 大都市圏 × 3人以上 × 総世帯数 一戸建て 大都市圏 876万kW 1 876万軒 ,688万軒 2,304万軒 4,397万軒 都市ガス 2020年 家庭用燃料電池導入目標 2020年 家庭用燃料電池導入目標 570 年 家庭用燃料電池導入目標 570万 570万kW / (18/27) = 66% 4 事業の成果 >4.2 定置用燃料電池導入シナリオ >(1) 定置用燃料電池の導入量 -2/ 3 業務用で導入が期待できる業種と容量 電力 2 (kWh/m ) 食堂・レストラン そば・うどん店 寿司店 保育園 ホテル リゾートホテル ビジネスホテル 旅館 総合病院 その他の病院 児童・老人福祉施設 理容店 美容院 洗濯業(取り次ぎ専門) 洗濯業(工場併設) 合計 325.5 160.9 289.0 40.0 224.0 169.3 169.0 147.0 168.8 158.6 36.9 227.3 134.7 104.7 187.1 - その他 その他 合計 延床面積 棟数 平均電力容量 FC総容量 熱需要 2 2 (kW) (百万kW) (kWh/m ) (kWh/m ) (百万m2) (棟) 2 (kWh/m ) 575.9 9.8 911.2 60 238,649 13.5 3.22 290.8 21.3 472.9 7 34,526 5.3 0.18 384.0 0.0 673.0 8 42,496 9.6 0.41 45.8 88.0 173.8 19 22,275 5.5 0.12 242.4 101.8 568.2 300.0 79.5 548.8 46 76,169 17.8 1.35 202.2 84.7 455.9 224.8 57.1 428.9 204.9 101.0 474.7 4 1,475 65.2 0.10 178.1 99.0 435.7 267.9 105.5 410.3 11 7,540 8.8 0.07 188.7 54.9 470.9 4 123,940 0.9 0.11 79.4 24.1 238.1 8 173,978 0.6 0.10 112.3 0.0 217.0 2 89,354 0.5 0.04 1443.0 7.0 1637.1 2 4,381 15.4 0.07 - - - 170 814783 - 580万 kW 580万5.8 2020年 業務用燃料電池導入目標 2020年 業務用燃料電池導入目標 440 年 業務用燃料電池導入目標 440万 440万kW / = 約80% = 約80% (19/27) 4 事業の成果 >4.2 定置用燃料電池導入シナリオ >(1) 定置用燃料電池の導入量 -3/ 3 定置用燃料電池の導入量 定置用燃料電池発電容量 (百万kW) 15 燃料電池実用化戦略研究会目標 家庭用 :570万 万kW 業務用 :440万 万kW 民生用合計 10 家庭用 5 業務用 0 2000 2010 2020 年 ロジスティック曲線によるFC ロジスティック曲線によるFC導入容量の経時変化 FC導入容量の経時変化 10.3百万 を上限値と設定(2020 2020年導入目標: 10.1百万 百万kW 10.3百万kW 百万kWを上限値と設定( kWを上限値と設定( 2020年導入目標:10.1 年導入目標:10.1 百万kW) kW) (20/27) 2030 年 4 事業の成果 >4.2 定置用燃料電池導入シナリオ > (2)学習曲線による将来コストの設定 -1/ 2 定置用燃料電池の将来コスト(家庭用:1kW) 125 燃料電池コスト(万円/ 燃料電池コスト(万円/kW) kW) 年 2005 年 2005 2020 高コストケース 120 54 低コストケース 67 30 (進歩係数: 進歩係数:087) 087) 燃料電池コスト 燃料電池コスト ((万円 万円/ /kW) 高コストケース 100 75 50 低コストケース 25 燃料電池実用化戦略研 究会目標:30万円 究会目標: 万円/kW 万円 0 2005 2010 年 2015 2020 将来コストとして、低コスト、高コストの2ケース想定 燃料電池コスト) = (1kW 燃料電池コスト)×(X)2/3 業務用:(X kW 燃料電池コスト) = (1 (21/27) 4 事業の成果 >4.2 定置用燃料電池導入シナリオ > (3)経済性 -1/ 2 燃料電池導入の経済性(家庭用) 400000 コスト節減額 (円/台) 経済性有り 低コストケース 0 補助金必要 高コストケース -400000 コスト節減額=給湯器コスト(30万円)+5年間光熱費削減額 -燃料電池システムコスト -800000 2005 2010 2015 年 関東地域の都市ガス料金、電気料金にて試算。 (22/27) 2020 4 事業の成果 >4.2 定置用燃料電池導入シナリオ > (3)経済性評価 -2/ 2 燃料電池導入に伴う必要追加投資額 2005年~2020年の必要追加投資費用 家庭用 業務用 合計 低コストケース 高コストケース 560億円 11,000億円 3,240億円 9,000億円 3,800億円 20,000億円 (23/27) 4 事業の成果 >4.2 定置用燃料電池導入シナリオ (4)まとめ 1.導入容量数の推算 ・ 燃料電池導入により経済メリットが期待 できる世帯条件・業種を整理。 ・ 本条件に基づき導入容量を推算。 2.経済性の評価 ・ 代替対象の給湯器価格・光熱費削減額 より、経済メリットを評価。 ・ 経済性評価より定置用燃料電池導入 に必要な追加投資額を試算。 (24/27) 報告 内容 5.対外発表等の件数 (1)研究項目別論文、講演、特許、報道の件数一覧 新聞 発表 出願済 0 0 特許 登録 0 論文発表 国内 海外 34 9 実施 0 (2)年度別研究項目別成果総括表 年度 H11 H12 H13 H14 計 新聞 発表 出願済 特許出願 登録 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 実施 0 0 0 0 0 口頭 発表 54 43 論文発表 国内 海外 8 1 9 0 9 5 13 3 34 9 口頭 発表 4 11 18 21 54 文献引用件数:多数 P154参照 報告 内容 (25/27) 水素インフラの導入シナリオの検討 水素インフラの導入シナリオの検討 燃料電池実用化戦略研究会のシナリオの実現には、水素インフラのバランスのとれた計画的導入が 必要。他方、燃料電池・水素技術の双方とも経済性をはじめ今後明らかになる不確定要素が多い。 このため燃料電池と水素の一体的導入の検討・シミュレーションが可能なモデルを開発中。 [試算例] 2005年(短期) 2010年(中期) 2005年(短期) 2010 年(中期) 2020 2020年(長期) 2020年(長期) 前提条件 車の導入台数 (研究会報告による) 5万台 万台 導入される車種 (メーカーヒアリングによる) 導入される水素 ステーションの規模 500万台 万台 小型貨物・ 一般乗用車 公用車・バスが中心 業務用乗用車 シェア シェア 3 3 3 100Nm /hレベルの レベルの 300Nm /h 80% 300Nm /h 20% 3 500Nm /hレベル レベル 3 3 500Nm /h 20% 500Nm /h 80% ステーションが中心 上記の前提条件をもとに試算した結果 水素の需要量 2億 年 億 Nm3/年 水素ステーションの数 62億 億Nm3/年 年 数百ヶ所*1 数百ヶ所 燃料電池車ユーザーにとっ 燃料電池車ユーザーにとっ てメリットがでる水素価格 3300ヶ所 ヶ所*1 ヶ所 1 60円 円/Nm3 *2 今後、詳細なモデルを開発し、燃料電池、水素技術の経済性の見通しなどの 変化に対応したシミュレーションを実施し、最適な導入シナリオを検討する。 ( ) 26/27 (出典:第11回燃料電池実用化戦略研究会) 6.「水素安全利用等基盤技術開発」 -水素シナリオの研究- 実施内容 <水素インフラ整備シナリオ> ○ 水素コストの構成要素感度分析 ○ 水素供給プロセスフローの見直し ○ シナリオ策定アシストシミュレーションコード作成 ○ 黎明期、導入・普及期の水素インフラ整備シナリオの策定 ○ 技術ロードマップの策定 <以上で報告を終了します> (27/27) 4 事業の成果 >4.1 水素インフラ整備シナリオ>(2)前提条件 ステーションタイプの想定 年 − 億Nm3/年 水素需要 ステーション数 − <ステーションタイプ> 100 Nm3/h オフサイト 300 Nm3/h オフサイト 500 Nm3/h オフサイト 500 Nm3/h オンサイト(電解) 500 Nm3/h オンサイト(NG改質) 燃料電池自動車台数 (28/27) 2010 50,255 1.6 169 2020 4,999,315 61.7 3,341 56 100 13 0 0 56 645 1027 719 894 前提 条件 4 事業の成果 >4.1 水素インフラ整備シナリオ>(3)経済性検討 - 6/ 7 <現行補助金よる自立的普及可能時期の変化> 3 損益分岐水素価格(円/Nm ) <車両:上限、ステーション:下限> 150 3 500Nm -on 100 3 33 31円/Nm 51円/Nm 3 300Nm -off 50 0 軽油営業用普通バス ↓ 燃料電池営業用 普通バス -50 ガソリン小型乗用車 ↓ 燃料電池小型乗用車 -100 2006年 2010年 (16 29/27) 2015年 2017年 2012年 2020年 第1回「水素エネルギー利用技術第Ⅱ期研究開発」(事後評価)分科会 タスク2:安全対策に関する調査・研究 財団法人 エネルギー総合工学研究所 0 報告内容 1.タスク-2(安全対策)の目標 2.背景 (1)現行の法規制 (2) 水素の物性 3.研究開発の内容 4.主な成果 (1)水素の爆発 (2)高圧水素の噴出・火炎 (3)水素の拡散 (4)予備的安全評価 5.実用化の見通し 6.今後の課題 1 1.タスク-2(安全対策)の目標 (1) 実験的検証にもとづく安全評価手法の確立 (2) 法規制見直しのためのデータ取得 (3) 予備的安全評価の実施 2 2.背景 (1) 主な法規制 (高圧ガス保安法) ①高圧ガス製造設備の離隔距離 ・第1種保安物件(学校等)から17 m以上 ・第2種保安物件(住宅)から11.3 m以上 ・火気から8 m以上 ・他の可燃性高圧ガス設備から5 m以上 ②有資格者(保安技術管理者,保安係員)の配置 3 (消防法) ・給油取扱所構内への水素製造設備 あるいは充てん設備の設置不可 (道路法) ・危険物積載車両(高圧水素60Nm3超、容器 容積120L以上)の水底トンネル通行の制限 (建築基準法) ・都市計画区域における建築物建築の禁止 圧縮ガスの貯蔵量 / 処理量の上限 住居地域 350 Nm3 (またはNm3/日) 700 Nm3 (またはNm3/日) 商業地域 準工業地域 3,500 Nm3 (またはNm3/日) 可燃性ガスの上限はこれらの10分の1 圧縮ガス・可燃性ガスの製造:製造量の多寡によらず不可 CNGスタンドでの製造は例外的に可 4 (2) 水素の物性 水素 メタン プロパン ガソリン 水素の特性 拡散係数(空気中) [cm2/s] (1atm,20℃) 0.61 0.16 0.12 0.05 (ガス状) 拡散しやすい。 小孔から透過しやすい。 金属材料を脆化 あり なし なし なし 金属をもろく、割れやすく する。 最小着火 エネルギー(mJ) 0.02 0.29 0.26 0.24 着火しやすい -75 4.1- 5.3- 15 2.1-10 1.0-7.8 燃焼可能濃度範囲が 広い 0.04 ~ 0.25 0.15 ~ 0.35 ガソリン並 0.3~0.4 熱放射による被害や 類焼は少ない 346 43.0 47.2 42.0 爆風圧が大きい。ジェッ ト火炎が保炎しやすい 10.77 35.9 93.6 - 高圧、高い内部応力 燃焼範囲 (下限-上限)[ vol% ] 熱放射 (輻射率ε) 最大燃焼速度 [cm/s] 燃焼熱 [MJ/Nm3] 真発熱量 5 出典: NASA, NSS1740.16 Safety Standard for Hydrogen and Hydrogen Systems, Appendix A (1997) 等 実 験 災害発生 の確率 シミュレーション 燃焼/爆発 の大きさ 災害リスク の評価 水素量/ 離隔距離の 緩和案 水素ステーション の基準案 (法規制の見直し) 安全対策 6 ・(発生頻度)×(被害の大きさ) → 災害リスク 許容範囲内? ・高圧水素スタンド 実績少ない → 安全性が不明確 ・(爆発/火炎/拡散)実験/シミュレーション → データを補充 7 研究の経緯と予算 平11 当 初 予 算 69百万円 平12 平13 平14 75百万円 125百万円 243百万円 1.研究計画の立案及び成果 とりまとめ 2.事故の要因分析 3.事故発生頻度の検討 4.事故の影響評価 5.試験によるデータ取得 (液体水素の流出・蒸発) (水素の爆燃) (水素の噴出火炎) (水素の拡散) 6.シミュレーションモデル の開発、改良、検証 8 実施体制 NEDO 水素エネルギー技術開発室 委託 (財)エネルギー総合工学研究所 (全体調整、現行法規の調査) タスク2 安全対策に 関する調査・研究委員会 再委託 タスク2 安全対策に 関する調査・研究WG 三菱重工業株式会社 (水素火炎、拡散、シミュレーション) SRIインターナショナル (水素の爆燃) 共同研究 日本原子力研究所 (都市ガスの爆燃) 9 4.主な成果 (1) 水素の爆発 (ア) 開放空間 (5.2m3、37m3)(障害物あり、なし)(電気火花、爆薬着火)(障壁の効果) (イ) ダクト内 Wall Wall P1 P9 P9 tent tent P2 P6 P2 P4 P6 P4 図 爆燃装置(5.2m3)と障壁 10 図 開放系水素爆燃試験 11 図 37m3均一濃度混合気テント(爆燃試験) ( 4.3m x 4.3m x 2m(H) ) 12 表 開放空間における水素爆燃の最大爆風圧とインパルス 最大爆風圧 (kPa) 水素濃度 (%) 障害物 インパルス (Pa-s) 着火点からの距離 (m) 点火源 障害物 上部 混合気 端下 11m 21m 41m 11m 火炎伝播 速度 (ガス端 付近) (m/s) 距離 20 なし 電気火花 - 2.1 0.44 0.20 0.11 10 − 30 なし 電気火花 - 8.2 1.5 0.85 0.38 26 (43) 57 なし 電気火花 - 11 3.1 1.6 0.79 32 20 30 なし 爆薬 - 1,290 23 7.9 2.7 45 1,980 30 あり 電気火花 3,270 764 23 7.3 2.7 42 780 都市ガス*) 濃度9.5% なし 電気火花 - 0.18 0.09 0.03 ~4 7.5 0.40 水素/空気体積 : 5.2m3 障害物:3次元格子 (参考 *) 日本原子力研究所の実験結果 13 表 水素爆燃における障壁の効果、水素量の影響(開放空間) 水素/ 空気 混合気 障壁 *1) 点火源 混合気 端下 (m3) なし (Pa-s) 着火点からの距離 (m) 体積 5.2 インパルス 最大爆風圧 (kPa) 電気火花 8.2 火炎伝播 速度 (ガス端 付近) 7m 11m 21m 41m 距離 11m (計算) 1.5 0.85 0.38 26 − (m/s) 2.5 5.2 あり 電気火花 5.6 1.8 1.1 0.70 0.36 19 44 5.2 なし 爆薬 1,290 − 23 7.9 2.7 45 約1,980 5.2 あり 爆薬 1,269 21.2 14 6.2 3.4 36 約1,980 37 なし 電気火花 8.4 2.9 1.7 1.0 82 37 なし 爆薬 1,266 66 20 8.5 194 約1,980 水素30%/空気70%濃度均一混合気に点火、 障害物なし *1) 障壁:混合気端から4mの位置に2m(高)x10m(幅)のコンクリート 1. 障壁の後方では爆風圧が約30%低減された。 2. 爆風圧は水素量のほぼ1/3乗に比例した。 14 5.2m3, spark 5.2m3, explosive 5.2m3, spark, wall 5.2m3, explosive, wall 37m3, spark 37m3, explosive 図 換算距離と最大ピーク過圧 ( 水素濃度30% ) R: 距離(m) R0 = (E/P0)1/3, E: 燃焼熱(J) (LHV) P0:大気圧(Pa) ΔP = Pm − P0 Pm:最大ピーク圧(Pa) Mf: マッハ数 水素/空気混合気体積に依らず一般化 15 (イ) ダクト内 990cm 38.1 イオンピン、熱電対 圧力計 50 BR=0.32 38.1 38.1 11.4 遮蔽板 H2 センサー ポンプ 図 ダクト型爆燃試験装置 16 図 ダクト型爆燃試験装置の内部 17 表 ダクト内水素爆燃試験結果 最大爆風圧(kPa) 障害物 火炎伝播速度 (ダクト端付近) (m/s) ダクト端 ダクト端 から10m 遮蔽板なし 320 12 遮蔽板7個 1,580 11 1,230 遮蔽板13個 1,720 11 1,460 遮蔽板25個 1,050 9 1,660 (参考) 開放系障害物なし (水素濃度30%) (ガス端) 8 開放系障害物なし (水素濃度57%) 11 610 (ガス端10m) 1.5 (43) 3.1 20 ダクト:38.1 x 38.1 x 990 cm (角型4面壁) 遮蔽板:ダクト断面遮蔽率0.32 水素濃度:30 vol% 18 (2) 高圧水素ガスの噴出火炎 噴出元圧:20 MPaG 噴出元圧: 火炎長:約 2.0m m 噴出元圧:40 MPaG 噴出元圧: 火炎長:約 2.9m 300℃ 300℃の領域:約4.5 の領域:約4.5m 4.5m先 図 高圧水素噴出火炎の状況 (ノズル径1.17mmφ(丸型) (Naの炎色反応により約1,100℃以上を可視化) 自己着火は起きなかった 19 噴出圧力(Δ 噴出圧力(ΔP)と火炎長(L と火炎長(L)の関係 火炎長 Lf (mm) 10000 1000 100 d=1mmφ 10 0.01 0.1 1 10 噴出圧力,P (MPa) 100 ・火炎の長さと幅はノズル径にほぼ比例 ・亜音速域:長さと幅、圧力に依らない ・超音速域:L ・超音速域:L∝ΔP ∝ΔP 0.5 ・保炎不可の 範囲有り(口径d d:≦ :≦0.5mm 0.5mmΦ) ・保炎不可のΔ 保炎不可のΔP範囲有り(口径 0.5mmΦ) 20 (3) 水素の拡散 16 70 12 50 煙軸高さ(m) 体積分率(%) 60 煙突 14 実験(平行排出) 実験(直角排出) 数値計算(平行) 40 30 風向 平行排出 10 直角排出 8 [排出方向の定義] 6 4 20 2 10 0 0 -2 0 2 4 6 8 10 12 風下距離 x(m) 噴流中心軸濃度 14 16 18 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 風下距離 x(m) 噴流中心軸高さ 図 数値計算と風洞実験(1/20縮小, 模擬ガス使用)の比較 ( 想定 水素元圧: 15 MPa, 口径: 0.8 mm, 風速: 3 m/s, 障害物なし ) 1. 構造物がない場合、風下約3mで水素濃度4%となる。 2. 壁上部が開放した建物内で15MPa水素がピンホールから漏えいする場合、 いずれの地点でも濃度1%以下であった。 21 0.2 風 向 0.5 0.8 m 拡散主軸上 側面図 6 5 4 3 2 1 0m 図 風洞内ピンホールからの噴出水素の拡散 (ノズル径0.8mm、圧力35MPa、風速0.5m/s、風下側流出) (実物スケール、水素を噴出) 水素濃度4%以上の範囲 水素濃度1%以上の範囲 22 20 15 15 10 20 高さ (m) 20 高さ (m) 高さ (m) 水素濃度 (vol%) 10 20 15 16 10 12 5 5 5 8 5 10 15 Y 20 25 30 5 距離 (m) 10 15 Y 20 25 距離 (m) TIME=2.0 sec TIME=4.0 sec 30 5 10 15 Y 20 25 30 距離 (m) 4 TIME=6.0 sec 図 漏えい水素拡散シミュレーション (初期元圧40MPa,口径13.3mmΦ) 風速 5m/s 0 水素80Nm3を2.23秒で放出 放出開始4秒後に着火を想定、9m地点 計算ピーク過圧:約32kPa 23 (4) 予備的安全評価 想定される実用水素充てんスタンドの安全性に関し、 災害リスク評価を行って主なリスクを洗い出した。 ・高リスクの可能性のある災害シナリオ: (1)高圧水素貯槽/配管の亀裂(疲労、腐食、材料性能) (2)ディスペンサー/貯槽への車両衝突 (3)大地震(揺れ、液状化) →水素が大量に漏えい、爆発 (4) ジェット火炎による火傷 (5) ガス改質管の破損(クリープ、熱疲労)→火災、爆発 24 (5) まとめ 1.実験/シミュレーション (1) 水素の爆発: 都市ガスの爆発より爆風圧が高く、万一、爆発事故が 起きると大きな被害が生ずる恐れがある。 (2) 高圧水素の噴出・火炎: ジェット火炎の長さは、ピンホールの口径に ほぼ比例する。音速で噴出するときの長さは元圧の約0.5乗に比例した。 (3) 拡散: ピンホールから漏えいする水素は、例えば風下約3mで水素濃 度が4%となる。短時間で大量の水素が漏えいすると、 4%濃度以上の 領域は風下約20mにまで達し、 これに着火したときの最大爆風圧は約 32kPaと試算された。 2. 水素の性質を明確化 → 安全対策を実施 → 安全な水素社会を実現 することが可能となる。 3. 目標の達成度 水素の安全に関する主なデータを取得し、安全評価の実施に見通しが たった。目標をほぼ達成したと考える。 25 研究項目別論文、講演、特許の件数 特許 新聞 発表 0 論文発表 出願済 登録 実施 国内 海外 口頭 発表 0 0 0 4 6 5 26 5.実用化の見通し ・本研究により水素の性質、挙動がある程度明らかになった。この 成果は、特に水素スタンドの離隔距離と水素貯蔵量の見直しに おいて、必要な安全対策が今後検討されその安全性を根拠づけ ることに活用される。 ・成果は水素スタンドの安全性以外にも、他の水素施設、輸送シス テム等の安全性評価にも利用することができる。今後展開が期待 される水素社会実現のための活動に寄与する。 ・本研究により得られた水素の性質、挙動に関する知見は平成15 年度に開始された水素安全利用等基盤技術開発に引き継がれる。 27 6.今後の課題 水素インフラ関連の規制を見直すにあたり、水素特有の性質を 正確に把握し、災害リスクの推定精度をさらに高めることが求 められる。また、リスクを低減するために必要となる安全対策を 基準案として具体化することになる。安全に関する今後の検討 対象として以下の項目が挙げられる。 (1) 障害物存在、半閉鎖空間における爆発の影響 (2) シミュレーション精度の確認 (3) 水素スタンドにおける保安距離、水素貯蔵量 (4) 充てん容器の認定基準 (5) 付臭剤添加の可否(安全面から) (6) 機器材料の水素による劣化 (7) 必要な安全対策の選択 (8) 安全評価による確認 28 水素エネルギー利用技術第Ⅱ期研究開発( 水素エネルギー利用技術第Ⅱ期研究開発(事後評価)分科会 水素利用国際クリ-ンエネルギ-システム技術 (WEWE-NET)タスク NET)タスク3 タスク3 国際協力に関する調査・研究 平成1 平成16年2月20日 (財)エンジニアリング振興協会 技術部 水素プロジェクト室 家入 裕治 1 Ⅰ.事業の目標・研究開発の内容 1. 事業の目標 WEWE-NET研究開発に関する国際研究協力及び国際情報交流を推進する事 NET研究開発に関する国際研究協力及び国際情報交流を推進する事 により、世界的規模の水素利用国際クリ-ンエネルギ-ネットワ-ク構想に ついて積極的に提唱する。 IEA IEA水素実施協定への対応を通じて、国際協力、各国の最新技術情報の IEA水素実施協定への対応を通じて、国際協力、各国の最新技術情報の 収集を図る。 ISO/TC197 ISO/TC197( ISO/TC197(水素技術)の国際標準化活動に参加し、標準化テ-マを積極 的に提案する。 2. 研究開発の内容 - WE 研究開発の内容 - WEWE-NET第Ⅱ期 研究開発項目 NET第Ⅱ期 研究開発項目 1)国際的研究協力の推進 2)国際的情報交換等の実施 3)水素エネルギ-技術の標準化研究 2 Ⅱ.研究開発の実施体制 通商産業省( 通商産業省(経済産業省) 経済産業省) 補 助 NEDO NEDO 委 託 エンジニアリング振興協会 IEA水素実施協定対応委員会 IEA水素実施協定対応委員会 水素エネルギー技術標準化委員会 水素エネルギー技術標準化委員会 水素エネルギー技術標準化WG 水素エネルギー技術標準化WG 3 Ⅲ.研究開発の内容 1.国際的研究協力の推進 1.国際的研究協力の推進 ・IEA( IEA(国際エネルギー機関) 水素実施協定への対応 - 専門家の国際会議派遣支援 - IEA - IEA IEA ExCo総会 ExCo総会( 総会(1回/ 1回/半期)への参加 - IEA - IEA水素実施協定国内対応委員会開催(1回 IEA水素実施協定国内対応委員会開催(1回/ 水素実施協定国内対応委員会開催(1回/半期) ・IEA水素実施協定の研究開発項目 IEA水素実施協定の研究開発項目 (2000 水素実施協定の研究開発項目 (2000年以降) (2000年以降) 1 1.Annex12: 水素吸蔵合金 (1995~ 1995~2000年. 2000年.9 年.9月) 2 2.Annex13: Annex13: 総合システムの設計と最適化 (2000~ 2000~2002年) 2002年) 3 3.Annex14: Annex14: 光電気化学的水素製造 (1999~ 1999~2006年) 2006年) 4.Annex15: 光生物学的水素製造 (1999~ (1999~2004年) 2004年) Annex16: 炭素系物質からの水素製造 (2002~ (2002~2004年) 2004年) 5.Annex16: 6.Annex 17: 水素貯蔵( 水素貯蔵(固相・液相) (2001~ (2001~2004年) 2004年) 4 2.国際的情報交換等の実施 2.国際的情報交換等の実施 ①国際会議への参加によるWE ①国際会議への参加によるWEWE-NET構想の提唱、情報収集 NET構想の提唱、情報収集 ・DOE ・DOE DOE (米国エネルギー省)主催・燃料電池セミナー・水素関連 会議 ・WHEC ・WHEC( WHEC(世界水素会議) ・各国水素協会主催の国際会議 など ②水素ビデオの日本語翻訳版製作、配付 ③インタ-ネットホ-ムペ-ジのレビュー・維持管理 ④海外関係機関へのWEWE-NET成果報告書英文概要版の発送 ⑤海外からの協力要請への対応、調査依頼の企画及び調査 の実施 5 3. 3.水素エネルギ-技術標準化研究 3.水素エネルギ-技術標準化研究 ①ISO/ ①ISO/TC197(水素技術)本会議及びWG国際会議への専門家 TC197(水素技術)本会議及びWG国際会議への専門家 派遣、同行支援 ②国内「水素エネルギー技術標準化委員会」同WG ②国内「水素エネルギー技術標準化委員会」同WG委員会の設置、 WG委員会の設置、 会議開催 ③燃料電池、燃料電池自動車、高圧ガス容器の国際標準化国内 審議団体との連携、情報交換 ④我が国及び世界各国の水素技術、燃料電池に関する関連法規 規格等の調査 6 ISO/TC197 (水素技術)国際標準化項目 水素技術)国際標準化項目 ①H11年度時点での標準化項目 H11年度時点での標準化項目 ・WG1: 燃料電池自動車用液体水素容器 ・WG2: 液体水素輸送用コンテナ ・WG3: WG3: 水素の製品仕様 ・WG4: 空港に於ける水素燃料供給設備 ・WG5: WG5: 自動車用ガス水素供給ステーション 燃料電池車用ガス水素コネクター ・WG6: 燃料電池自動車用ガス水素燃料タンク ・WG7: 水素システムの安全性 ②H12 ②H12年度以降採択された項目 H12年度以降採択された項目 ・WG8: 水電解装置 ・WG9: 改質器 ・WG10: WG10:水素吸蔵合金容器 7 Ⅳ.研究開発の成果 事業全体の成果 ・種々の国際会議において水素エネルギー、燃料電池開発 に関する我が国方針、WE に関する我が国方針、WEWE-NETプロジェクトの推進状況を NETプロジェクトの推進状況を 積極的に発表し、世界の関係者に「WE WE積極的に発表し、世界の関係者に「 WE-NETプロジェクト」 NETプロジェクト」 の存在を浸透させた。 ・ IEA水素実施協定対応活動を通じ、国際協力、各国の水素 IEA水素実施協定対応活動を通じ、国際協力、各国の水素 技術に関する最新情報を収集できた。 ・ ISO活動に関して、国際会議の場で我国の考えを積極的 ISO活動に関して、国際会議の場で我国の考えを積極的 に発言、国際標準化作業に我が国の主張を取り込んだ。 ・ 本研究の成果を平成 本研究の成果を平成15 15年度よりスタートした「水素安全利用 15年度よりスタートした「水素安全利用 基盤技術開発」の「国際標準・国際協力の研究」として継続 して活動中である。 8 Ⅴ.研究開発の成果ー個別研究の成果 1)国際的研究協力の推進 1)国際的研究協力の推進 ①IEA ①IEA専門家会議への専門家派遣 IEA専門家会議への専門家派遣 ( 専門家会議への専門家派遣 (国際協力、情報収集) ・H11 ・H11年度 H11年度: 年度: Annex12,13,15: Annex12,13,15: 延べ6名 (米国、スイス) ・H12 ・H12年度 H12年度: 年度: Annex12,13,14,15 Annex12,13,14,15: 延べ6名 12,13,14,15: 延べ6名 (オーストラリア、オランダ、スイス、ドイツ) ・H13 ・H13年度 H13年度: 年度: Annex14,15,17 Annex14,15,17: 延べ7名 14,15,17: 延べ7名 (米国、スエーデン、ハンガリー) ・H14 Annex13,15,17 3,15,17: 延べ5名 ・H14年度 H14年度: 年度: Annex1 3,15,17: 延べ5名 (オランダ、ドイツ、スイス、カナダ) ②IEA水素プログラム・ExCo ExCo..総会: 総会:H 12年度、 年度、H14 ②IEA水素プログラム・ ExCo H12 年度、H14年度 参加 H14年度 参加 ③水素実施協定国内対応委員会の開催: 2回/ 2回/年(H11 年(H11年度~ H11年度~14 年度~14年度) 14年度) 9 2)国際的情報交換等の実施 2)国際的情報交換等の実施 国際的情報交換等の実施 ①国際会議への参加によるWE ①国際会議への参加によるWEWE-NET構想成果の発表、各国の開発 NET構想成果の発表、各国の開発 の進捗状況情報収集・報告 ・H11 ・H11年度 H11年度: 年度: 6回 (日韓水素シンポ、DOE 6回 (日韓水素シンポ、DOE会議、全米水素協会会議など) DOE会議、全米水素協会会議など) ・H12 ・H12年度 H12年度: 年度: 6回 (カナダ水素協会、世界水素エネルギー会議 など) ・H13 ・H13年度 H13年度: 年度: 7回 (国際ガス連盟、カナダ水素協会、欧州水素会議 など) ・H ・H14年度 14年度: 年度: 3回 (14回世界水素エネルギー会議、米国水素協会 など) 3回 (14回世界水素エネルギー会議、米国水素協会 など) 10 <国際会議参加の事例> International Hydrogen Energy Engineering & Applied Technology Exhibition Exhibition 日時:H14 日時:H14年 H14年 5 年 5月9日-12日 中国・北京 12日 中国・北京 展示者:カナダ、米国、ドイツ、中国から等18 展示者:カナダ、米国、ドイツ、中国から等18件 18件 日本はNEDO/ 日本はNEDO/ENAAブ-スを開設しWEENAAブ-スを開設しWE-NETに活動報告及び 最近のFCV並びに水素供給ステ-ション状況をパネル展示した。 最近のFCV並びに水素供給ステ-ション状況をパネル展示した。 < <日本ブースの見学> 日本ブースの見学> 11 14th 14th World Hydrogen Energy Conference 日時:平成14年6 日時:平成14年6月9日-13日 カナダ、モントリオ-ル 13日 カナダ、モントリオ-ル 参加者:約1000 参加者:約1000名(日本からの参加は約 1000名(日本からの参加は約100 名(日本からの参加は約100名)、発表件数 100名)、発表件数282 名)、発表件数282件 282件 日本からの発表件数は、NEDO 日本からの発表件数は、NEDOからの「 NEDOからの「Hydrogen からの「Hydrogen Activities in Japan」 Japan」 をはじめとして をはじめとして40 をはじめとして40件。 40件。 会場にて日本ブ-スを開設しWE 会場にて日本ブ-スを開設しWE-NET活動及びFCV並び 水素供給ステ-ションのパネルを展示。 12 2)国際的情報交換等の実施 (続) ②水素ビデオの日本語翻訳版製作、配付による水素安全の啓蒙 ・平成12年度: 米国エネルギー省、カナダ環境局、NEDO NEDOなどの協力 ・平成12年度: 米国エネルギー省、カナダ環境局、 NEDOなどの協力 により水素の安全性の啓蒙を目的に安全ビデオを 製作し(日本語翻訳含む)関連機関に配布。 ・平成14年度: ・平成14年度: 一般向けの第2弾水素安全ビデオを製作、配布した。 ③WEWE-NETインタ-ネットホ-ムペ-ジを用いた NETインタ-ネットホ-ムペ-ジを用いたWE インタ-ネットホ-ムペ-ジを用いたWEWE-NET成果の公表 NET成果の公表 ④海外関係機関へのWE ④海外関係機関へのWEWE-NET成果報告書英文概要版の発送による NET成果報告書英文概要版の発送による WEWE-NET成果のアピール NET成果のアピール ⑤海外からの協力要請への対応、調査依頼の企画及び調査の実施 13 3) 水素エネルギー技術標準化研究 - 成果 ①国際会議へ積極的に専門家の派遣を行い、国際標準作成への 協力と我が国の主張の取込を図った。 ②我が国からの提案として「燃料電池車用水素燃料仕様」及び「水 素ステーション」の提案書作成の準備を行った。 ③14年度に新規採択された改質器、水素吸蔵合金容器について、 年度に新規採択された改質器、水素吸蔵合金容器について、 我が国における実用化、商業化も進んでいることから、研究機 関・産業界からの積極的参加によりWG委員会を立上げ(延べ 関・産業界からの積極的参加によりWG委員会を立上げ 延べ 20機関以上)、国際標準化活動推進の為の組織を強固にした。 機関以上)、国際標準化活動推進の為の組織を強固にした。 ④燃料電池車、燃料電池に関する我が国の審議団体との交流・ 情報交換を積極的に連携を図った。 情報交換を積極的に連携を図った。 14 3)水素エネルギ-技術標準化研究 ( )水素エネルギ-技術標準化研究 (続) ①ISO/TC197本会議及び 本会議及びWG会議への専門家派遣による国 会議への専門家派遣による国 本会議及び 際準作成 への協力と我が国主張の取り込み 1)本会議 Meeting)への専門家派遣 への専門家派遣 本会議(Plenary 本会議 ・H11年度 ・ 年度(第8回) 第8回): 2名 (米国、 2名 (米国、Vienna) 年度 第8回) 名 (米国、 ・H12年度 年度(第9回): 6名 (ドイツ、ミュンヘン) 年度 第9回): 6名 (ドイツ、ミュンヘン) ( ・H13年度 年度(第10回): (フランス、パリ)) 年度 第10回): 0 フランス、パリ)) ・H14年度 年度(第11回): ・ 年度 第11回): 6名 (カナダ、モントリオール) 6名 カナダ、モントリオール) 2)WG会議への専門家派遣 WG会議への専門家派遣 ・H11年度:1名 年度:1名 WG7会議 会議 (米国) 米国) ・ 年度:1名 ・H12年度:延べ8名 年度:延べ8名 WG2,5,6,7 (ドイツ、フランス) ドイツ、フランス) ・ 年度:延べ8名 ・H13年度:3名 年度:3名 WG2,8 (米国、カナダ) 米国、カナダ) ・ 年度:3名 ・H14年度:延べ17名 ・ 年度:延べ17名 WG1,5,6,8,10 (カナダ、ドイツ、米国、東京) カナダ、ドイツ、米国、東京) 15 3. ISO/ ISO/TC197 審議中の規格案と現況概要 (2003-3 月末現在) WG No. ISO 13984 1 Expert 武松敏弌 (岩谷産業) CD 13986 3 ISO 14687 4 DPAS 15594 WD 15866 5 WD 17268 武松敏弌 液体水素輸送用コンテナ- 高瀬博行 (三愛石油) 空港における水素燃料供給設備 投票で承認され、若干の改 訂後 PAS として出版予定 石山日出夫 (いすゞ) 自動車用水素ガス及び混合水素ガスサ WD 作成中 ービスステーション (実質的に中断) WD 作成中 自動車用ガス水素燃料コネクター 秋山浩司 (鋼管ドラム) 自動車用ガス水素燃料タンク 7 WD 15916 武松敏弌 (岩谷産業) 水素システムの安全性 8 WD22734 N241 N241 DIS は承認されたが、欧州 規格案との整合を議論中 CD は 破 棄 、 TC220 に て ISO 化することに決定。 終了 1999.3 CD 15869 9 況 水素の製品仕様 花田卓爾 (日本エア・リキード) 6 10 現 自動車用液体水素燃料供給システムイ 終了 ンタ-フェイス 1999.3 自動車用液体水素燃料タンク DIS13985 2 タイトル 小関 和雄 (ENAA) 岡田 治 (大阪ガス) 木村 良雄 (トヨタ自動車) 水電解水素製造装置 水素製造改 水素製造改質装置 水素吸蔵合金タンク CD は承認さ れたが、欧州 規格案との整合調整中。 標準化困難との判断で TR での出版を決定。近々発行 予定 。03.3 03.3 月に次回開催 CD 完 成予定。 02. 02 . 11 月 12 日参加の返 事。12 事。12 月 19 日 WG 採択。 02. 02 . 11 月 12 日参加の返 事。12 事。12 月 19 日 WG 採択。 16 3)水素エネルギ-技術標準化研究 ( )水素エネルギ-技術標準化研究 (続) ②我が国からの提案準備項目 ②我が国からの提案準備項目-1 ②我が国からの提案準備項目 <現行ISO14687> 現行ISO14687> H純度 不 純 物 Type ⅠGradeA 内燃機関・FC用 98.0% HC:100ppm,CO: :1ppm, S:2ppm Grade 内燃機関・FC用 (ガスH)Grade ガスH)GradeB 工業用 99.90 O:100, N:400,水銀: 水銀:.004,S:10 ガスH)Grade 水銀: Grade 航空宇宙用 99.995 He 39, GradeC Grade 航空宇宙用 Type Ⅱ Ⅱ 航空宇宙用 99.995 He39, (液水) Type Ⅲ 航空宇宙用 99.995 (Slush) <提案準備> TypeⅠ Grade DとしてFC車用を提案 提案準備> TypeⅠ Grade DとしてFC車用を提案 ・H2純度: 99.99% ・H2純度: % ・不純物: CO: 0.2ppm, S:検知せず( 検知せず(0.02ppm)、 )、蟻酸・ホルムアセトヒド:ND ・不純物: 検知せず( )、蟻酸・ホルムアセトヒド:ND 17 3)水素エネルギ-技術標準化研究 ( )水素エネルギ-技術標準化研究 (続) ②我が国からの提案準備項目-2 ②我が国からの提案準備項目 ・WE-NET・ ・タスク7(水素ステーション)と連携し、同タス クでの成果の一つとして作成された「水素ステーション 設置についての技術基準(案)」をベースに国際標 設置についての技術基準 案)」をベースに国際標 準化提案の検討を行った。 18 3)水素エネルギ-技術標準化研究(続) ③国内「水素エネルギー技術標準化委員会」, ③国内「水素エネルギー技術標準化委員会」,WG委員会設置 WG委員会設置 による国内意見の集約: による国内意見の集約: ・通産省、工業技術院、大学、企業団体、企業の技術専門家13名からな る「水素エネルギー技術標準化委員会」及び研究員11名からなる 「水素エネルギー技術標準化WG委員会」を設置し、各WGの進捗状況報告 我が国からのコメントの議論・集約を行った。 ( 我が国からのコメントの議論・集約を行った。 (各年度2回、合同会議) 各年度2回、合同会議) ・H14年度採択の改質器、水素吸蔵合金容器について各々国内 H14年度採択の改質器、水素吸蔵合金容器について各々国内WG 年度採択の改質器、水素吸蔵合金容器について各々国内WG委員 WG委員 会を設置し、標準化活動を強固にした。(延べ20機関以上参加) ④ISO/ ④ISO/TC197リエゾン国内審議団体との連携による情報の 迅速な交換と広範囲な意見の収集:: 迅速な交換と広範囲な意見の収集 ・TC105 (燃料電池): JEMA(日本電機工業会)への協力、連携 ・TC105 (燃料電池): JEMA(日本電機工業会)への協力、連携 ・TC22(自動車): JEVA(日本電動車輌協会)との連携 ・TC58(ガス容器): KHK(高圧ガス保安協会)との連携 19 他の審議団体との連携・協力 経済産業省 経済産業省 NEDO エン振協 日本電機 日本電動 工業会 車輌協会 (ENAA) (JEMA) (JEVA) ISO/TC197 IEC/TC105 ISO/TC22 (水素技術) 水素技術) (燃料電池) 21 (燃料電池車) 水素技術) 燃料電池) /SC21 21 燃料電池車) 高圧ガス保安協会(KHK) ・相互に委員会・委員就任 高圧ガス保安協会( (ISO/TC58ガス容器) ガス容器) ・国際会議への連携、情報交換 ( 20 ⑤国内外の水素技術国内外の水素技術-関連法規・規格調査(続) ・H11年度:我が国に於ける水素エネルギー利用に関する法規、規則、 H11年度:我が国に於ける水素エネルギー利用に関する法規、規則、 ガイドラインの調査・研究 ・H12年度:水素供給ステーションの建設に関わる米国における関連法規 H12年度:水素供給ステーションの建設に関わる米国における関連法規 規格の調査・研究、我が国の法規・規格との相違調査 ・H13 ・H13年度:水素ステーション建設実証試験開始に伴う、我が国関連法規・ 13年度:水素ステーション建設実証試験開始に伴う、我が国関連法規・ 規格の詳細見直し、規制緩和項目の抽出検討 ・H14 ・H14年度:・米国、ドイツにおける水素ステーション建設に関わる法規・ 14年度:・米国、ドイツにおける水素ステーション建設に関わる法規・ 規格の調査、最新の法規・規格の見直し状況の調査 ・燃料電池車用水素高圧容器、水素燃料仕様の法規・ 規格に関する我が国及び海外の現状調査・研究 21 Ⅵ.実用化・事業化の見通し Ⅵ.実用化・事業化の見通し 1.IEA活動においては、水素実施協定対応委員会に 参加している各研究機関・企業を中心にその研究 成果の実用化が積極的に進められている。 2.ISO・国際標準化活動については、Ⅱ期事業スター ト時はまだ、国際会議での議論内容を把握するの が精一杯であったが、我が国での実証化の動きが 急速に進んだこともあり、ISO国際標準の内容を開 国際標準の内容を開 急速に進んだこともあり、 発対象システムや装置の実用化・事業化に積極的 に取り込んでいこうとする姿勢が顕著にみられるよ うになった。(水素吸蔵合金容器、改質器、定置式燃料電池、 水素吸蔵合金容器、改質器、定置式燃料電池、 マイクロ 燃料電池の開発) 22 終わりに WEWE-NET構想に対する理解と認識は、その名称の世界的浸透と NET構想に対する理解と認識は、その名称の世界的浸透と 共に、世界中の水素関係者に広がり、国際協力を進める絶好の 環境を生んできた。 現在、技術は既に実証化段階へと進んで来ており、国際的な標 準化作業が進む中で、国際標準(ISO)に関して日本からの積極 的な提案を行っていく事が重要であると考えている。 現在、本タスクの活動をさらに発展させて、日本発の国際標準化 提案やドラフト案の送付など国内ワーキンググループ体制の強 化を進めている。 23 水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術 水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術 (WE-NET (WE-NET) WE-NET)第Ⅱ期研究開発 成果概要 タスク4 動力発生技術の開発 (平成11 (平成11年~平成 11年~平成14 年~平成14年) 14年) 平成15 15年 年 2月 平成15 委託先 (財)エンジニアリング振興協会 共同研究 産業総合技術研究所 再委託先 三菱重工業株式会社 再委託先 川崎重工業株式会社 1 内 容 事業の全体目標 研究開発の内容 全体計画と工程 全体位置付けと役割 研究体制と分担 情勢変化への対応 事業の成果 ・水素ディーゼルの着火安定性 ・水素ディーゼルの高発電効率性能 ・水素ディーゼルの低NOx排ガス特性 ・燃焼解析の高精度性 成果のまとめ 実用化,事業化の見通し 2 事業の全体目標 (1)第Ⅱ期以降において、発電効率40%(高位 発熱量基準、低位発熱量基準では47.3%) 程度のオープンサイクル水素ディーゼルエ ンジン(600kW級システム)を開発すること を念頭において、単筒機で100kW級オープ ンサイクル水素ディーゼルエンジンを開発。 (2)開発した単筒機の性能評価試験を実施し、 実用化のための研究開発課題を抽出。 (3)水素ディーゼル機関の開発において、 燃焼室の筒内現象を数値解析により予測。 3 開発目標値 水素ディーゼル エンジン目標値 発電効率 備考 従来ディーゼル実績 (高位発熱量基準) (低位発熱量基準) 40.0 % 以上 (47.3 % 以上) 38% (41%) ) NOx (残O20%換算) 100 ppm以下 ガスエンジン規制値 100 ppm(大阪市) 4 研究開発の内容 (1)平成11、12年度 ・アルゴン循環型水素ディーゼルの要素技術開発、 基礎試験、および単筒実験機システム開発を実施。 ・急速圧縮膨張装置における水素ガス噴射等の解 析を行い、結果を検証するための試験を実施。 (2)平成13、14年度 ・早期実用化を目指しオープンサイクル方式に変更 して水素ディーゼルの要素技術開発、単筒実験機 システムの検討、単筒実験機システムの製作、およ び単筒実験機試験を実施。 ・単筒試験機のシリンダ内現象の数値解析を実施。 5 全体計画と工程 H11年度 H12年度 H13年度 H14年度 アルゴン循環型水素ディーゼルの開発 オープンサイクル水素ディーゼルの開発 [要素技術開発] (1)水素噴射装置単体試験 [単体実験機システムの検討] (1)石油系燃料との物性の違いを考慮した 熱効率向上策の検討 (2)高圧縮比化による水素自着火の検討 (3)排ガス再循環等によるNOx低減策の検討 [単筒実験機システムの製作] (1)単筒実験機の製作 (2)試験設備の製作 [単筒実験機試験] (1)着火システム開発試験 (2)熱効率向上試験 (3)NOx低減試験 (4)熱効率向上・NOx低減総合評価試験 (5)信頼性試験 [数値解析] (1)単筒実験機の燃焼解析 6 経済産業省 位置付けと役割 補 助 NEDO NEDO 水素エネルギー技術開発室 委 託 (財)エンジニアリング振興協会 タスク4 タスク4 委員会 共同研究 産業技術総合研究所 再委託 三菱重工業株式会社 川崎重工業株式会社 7 研究体制と分担 アルゴン循環型水素ディーゼルの開発 H11 年度 要素技術開発 担当:三菱重工 基礎試験 担当:三菱重工 数値解析 担当:川崎重工 潤滑油 担当:川崎重工 H12 年度 単筒実験機システム開発 担当:三菱重工 オープンサイクル水素ディーゼルの開発 H13 年度 要素技術開発 担当:三菱重工 数値解析 担当:川崎重工 単筒実験機システムの検討 担当:三菱重工 H14 年度 単筒実験機システムの製作 担当:三菱重工 単筒実験機試験 担当:三菱重工 開発目標値達成 発電効率:41.6%実現 (高位発熱量基準) NOx:100ppm まで低減可能 8 情勢変化への対応 水素社会実現の動きが加速されつつある状 況をふまえて、超高効率で一切有害物質の排 出のない理想のエンジンではあるが実用化ま でに時間のかかるアルゴン循環型から、信頼 性が高く早期実用化が可能なオープンサイク ル方式に変更し、H14年度をもって単筒実験 機レベルの技術開発を完了。 9 水素ディーゼル開発の背景 1.高信頼性 燃料系以外が従来ディーゼルと同じ 2.クリーン排ガス 粒子状物質、SOx、CO2の排出なし 3.低純度水素利用可能 炭化水素やCOを含む水素も利用可能 10 水素ディーゼルエンジンシステム 水素 噴射装置 排気 空気 T 発電機 ~ ディーゼル エンジン C 排気ターボ 過給機 空気冷却器 11 水素と石油系燃料の物性比較 自発火温度 (大気圧) 低位発熱量 理論空気量 理論空気量÷ 低位発熱量 音速(300K、30MPa から臨界まで膨張) ℃ 水素 571 石油系 230 kJ/kg 120,000 42,570 kg/kg 34.3 14.3 g/kJ 0.286 0.336 m/s 1,370 (-) 12 技術課題と対策 技術課題 1. 安定着火 水素は着火温度 が高い 2. 熱効率向上 従来ディーゼル より高い発電 効率目標 3. NOx低減 水素噴射方式 ではNOx発生 対 策 ・高圧縮比化で自着火 ・点火プラグによる 強制点火 ・高圧縮比化で燃焼サイクル 効率向上 ・高噴出速度、高燃焼速度を 積極活用 ・低酸素濃度の排ガス再循環 ・触媒による排ガス後処理 13 着火・燃焼システム 高圧水素噴射 点火プラグ 高圧縮比燃焼室 空気旋回流 14 始動時電気火花点火試験結果 針弁リフト 電着信号 [V] 噴射装置 筒内圧力 [MPa] 15 水素 10 常温給気 回転数500 rpm 回転数500rpm 5 0 5-20 20サイクル連続 20サイクル連続 失火無し -15 -10 -5 0 5 10 15 20 -5 0.6-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 0 -20 -15 -10 10 15 20 0 燃焼室 -5 0 5 クランク角度 [°ATDC] 噴流先端がプラグ位置に到達後に点火すれば常温で安定始動可能 15 高負荷自着火試験結果 エンジン定格回転数1500 エンジン定格回転数1500min-1 圧縮比22 圧縮比 100 750 圧縮比20 圧縮比 圧縮比18.3 圧縮比 120 90 700 650 130 100 80 90 70 80 60 70 50 110 100 90 給気温度 [°C] 圧縮温度 [°C] 800 80 600 60 70 80 90 100 110 120 発電出力 [kW] 圧縮温度690 ℃ (圧縮比18.3 で給気温度100 100℃)程度 ℃)程度 圧縮温度690℃ (圧縮比18.3で給気温度 16 以上で安定自着火 以上で安定自着火 発電効率計測結果 41.6% (排ガス再循環なし) 42 圧縮比18.3 40 圧縮比20 目標値 38 36 20 40 60 80 100 120 発電出力 [kW] 定格100% 負荷で発電効率41.6% 41.6%を達成 を達成 定格100%負荷で発電効率 17 燃焼解析結果 定格回転数1,500 min-1 定格回転数1,500min 負荷率100% 負荷率100% 0.6 0.4 0.2 0 20 水素ディーゼルは 噴射期間が長い割には 燃焼期間が短い 15 10 1 5 0 0 -30 0 30 60 クランク角度 [° °ATDC] クランク角度 針弁リフト 受熱率 受熱率 [kJ/° °] 0.8 筒内圧力 筒内圧力 [MPa] 発電効率( 発電効率(HHV) ) ) [%] 44 90 18 高圧縮比+高圧化 53 44 筒内最高圧力 19.6MPa 52 43 17.7MPa 51 15.7MPa 50 14.8MPa実測 実測 49 42 41 次世代機関(筒内最高圧力 次世代機関(筒内最高圧力19.6 19.6MPa MPa) ) では発電効率52 %(低位発熱量基準) では発電効率52% 低位発熱量基準) 40 が期待できる 14.8MPa実測 実測 39 14 16 18 20 22 圧縮比 [-] 24 48 47 26 19 排ガス再循環試験結果 EGR率24%程度でNOxを835ppm (残O20%)に低減 触媒脱硝は10分の1に低減の実績がある ↓ 目標100ppm(残O20%)達成可能 3000 NOx(残O20%換算) [ppm] 発電効率(高位発熱量基準) 発電効率(高位発熱量基準)[[%] 45 発電効率(低位発熱量基準) 発電効率(低位発熱量基準) [[%] 高効率化のシミュレーション結果 2500 2000 1500 1000 500 0 0 5 10 20 15 EGR率 [wt%] 25 30 20 400 350 300 250 200 150 100 温度 [℃] 温度 [℃] 燃焼室温度計測試験結果 水素 400 350 300 250 200 150 100 ディーゼル 水素 400 350 300 250 200 150 100 水素 ディーゼル キャビティ内 温度 [℃] 温度 [℃] ピストン頂面 400 350 300 250 200 150 100 ディーゼル 水素 ピストントップランド ディーゼル ライナtopリング ピストン触火面、ライナtopリング位置温度ともに従来 ディーゼル並であった。熱負荷による燃焼室周り部品 の信頼性は、従来ディーゼル並みである。 21 実験結果と解析結果の比較(エンジン負荷100% ) 実験結果と解析結果の比較(エンジン負荷100%) 16 シリンダ内圧力 [MPa] 12 実験結果(圧力) 解析結果(圧力) 解析結果(温度) 1400 1200 10 1000 8 800 6 600 4 400 2 200 0 -90 シリンダ内温度[K] 14 1600 0 -60 -30 0 クランク角度 30 60 90 22 成果のまとめ 1.着火安定性 ・高負荷で安定自着火が可能 ・電気火花点火により常温給気で始動可能 2.発電効率 ・高負荷で41.6%(高位発熱量基準,低位発熱量基準では 49.2%)を得た ・次世代機関(最高圧力19.6MPa) では44.0% (高位発熱 量基準,低位発熱量基準では52.0% )が期待できる 3. NOx NOx ・排ガス再循環により835ppmに低減 ・触媒脱硝を行えば100ppm (残O20%) まで低減可能 4. 燃焼解析 ・燃焼解析モデルは水素の自着火及び強制着火燃焼のい 23 ずれにも適用でき、実験結果との対応性良好 タスク4 研究項目別論文、講演、特許、報道の件数一覧 年度 新聞発表 特許出願 登録 実施 0 0 論文発表 国内 海外 0 0 口頭発表 H11 0 出願済 0 H12 0 0 0 0 0 1 1 H13 0 2 0 0 3 0 2 H14 9 0 0 0 4 1 8 計 9 2 0 0 7 2 14 3 P174参照 24 実用化,事業化の見通し 1.研究開発成果の産業界における具体的利用のイメージ、あるいは実用化を想定してできる製品、プロ セス、サービス等の内容のイメージ。 ・短期的にはアルミ製錬工場など食塩電解により副生水素が発生する工場や国立公園など環境保護地 域での発電・コージェネレーション用原動機として実用化が期待できる。 ・中長期的には水素インフラが整備されれば、トラック・バスなどの大出力自動車や船舶などの原動機と して実用化が期待できる。 2.産業技術としての見極め ・アルミ製錬工場など食塩電解により副生水素が発生する工場で実用化するための産業技術としては、 水素ディーゼルエンジンを導入したときのコストメリットが適用可能性のキーポイントとなる。現時点では 明確でない。 3.当該分野への波及効果 ・高圧噴射方式の水素ディーゼルエンジンの開発は1990年代にドイツのMANB&W社により単筒実験機 を使用して行われたが、着火の安定性や熱効率の面で満足できる結果が得られなかった。本研究開発 結果はこれらの面で十分高い成果を上げており再び研究開発を促進する効果は大きいと期待される。 4.関連分野への波及効果 ・高圧噴射方式の水素ディーゼルエンジンの高い発電効率とNOx低減策が実証されたことにより、天然ガ スや天然ガスを改質したCOを含む水素を利用する高圧噴射方式のエンジン開発など関連分野への波及 が期待される。 5.実用化・事業化までのシナリオ 25 ・実用化・事業化までのシナリオについては具体的な要請があった時点で検討する。 今後の展望 1.水素をエンジンで利用する意義 ・信頼性が高い(燃料系以外従来ディーゼルと同じ) ・コージェネレーション(排気温度500℃) ・非発電用途(電動機不要) ・HC、CO含有水素(副生水素、水素添加天然ガス) 2.用途 ・業務用コージェネレーション(ホテル、病院、店舗) ・自動車用(トラック、バス) ・舶用(漁船、フェリー、海洋調査船) ・産業用発電(副生ガス発生製鉄所、化学工場) 26 水素ディーゼルエンジンの トラックへの応用例 300kW 定格出力 走行時負荷率 33% 走行時出力 100kW 稼働率 30% 導入予想台数 50万台(現在の全国台数の5%) CO2削減 炭素換算1,150万t/年 (1990年排出量4.0%) 27 燃料電池との比較 水素ディーゼル エンジン 単機出力 100kW∼数十MW 排熱温度 500℃程度 レベル 燃料電池 (PEFC) 数百kW以下 70℃程度 低純度 直接利用可能 水素利用 精製が必要 耐久性 摩耗部品交換により 今後の課題 数十年使用可能。 負荷変化も問題ない 28 04/2/21 事後評価委員会 タスク5 H11、H12 水素自動車システムの開発 H13 水素燃料タンクシステムの開発 H14 自動車用水素燃料タンクシステムの 開発 財)エンジニアリング振興協会 1 5-1 事業の 目 標 1. 急速充填法の開発 ・MH(水素吸蔵合金)タンクの構造 ・急速充填方法 2. MHタンクの安全対策 ・水素吸蔵放出時のMHタンク安全 ・火災時の安全対策 3.圧縮水素タンクシステムの実用化調査研究 ・システム構成部材の耐久性評価 4.その他の車載燃料タンク調査 ・燃費、特許、要求仕様 2 5-2 事業の計画内容 年 度 H 11 H 12 H 13 H 14 急速充填法開発 MHタンクの安全 圧縮タンクの実 用化調査 性評価 急速充填モデルタンク 事故時を想定した MHタンク仕様。 仕様検討。 MHの物性調査 安全指針立案 その他の調査 - 水素消費率の測 定法調査 伝熱向上モデルタンク モデルタンク仕様作成・ 仕様検討。 試作。 MH充填法 安全指針作成 - 水素車燃費調査 MHタンク改良設計。 構成部材の安全 圧縮水素ガス法充 性評価 填試験 設計指針作成 - 車載液体水素特 許調査 35MPaタンク技術動 向調査。構成部材 の耐久性評価 圧縮タンクの耐久 性評価。 技術動向調査 2方式充填試験。 充填法改良 構成部材の安全性 評価と伝熱向上 設計指針作成 3 5-2.2 研究開発の実施体制 共同研究 H13,14 財)エンジニアリング振興協会 水素自動車システム開発委員会 再 委 託 佐賀大学 MHタンクの 最適形状 水素自動車システムWG H11~14 (財)日本自動車研究所 急速充填法開発 H11~14 H14 マツダ㈱ 鋼管ドラム㈱ MHタンクの安全性評価 圧縮水素タンク実用化調査研究 4 5.3 情勢変化への対応 ①FCVのH2タンクに圧縮ガスタンクが利用されてきた ・MHタンクだけでなく、圧縮ガスタンクを開発対象 ②開発期間5年が4年に短縮: H14中途で全面見直し。 ・圧縮ガスタンク振動試験: H15からH14 ・H14予定の各種試験、海外調査等を削減、H15 以降の研究開発に期待。 5 タスク5 研究開発成果 6 (1)急速充填法の開発 再委託 JARI H12 ミニサイズタンク試作(吸蔵H2量1.25Nm3) 水素供給口 冷媒入口 352 mm 冷媒出口 プレートフィン方式 冷媒入口 冷媒出口 628 mm 水素供給口 分割方式、プレートフィン方式 分割方式 充填試験⇒充填条件と充填時間の関係把握 7 H13 実体タンク試作 (吸蔵H2量31.25Nm3) 側面より 上面より TX-4 冷媒通路 伝熱板 計算領域 冷媒 T1-1 タンク 1 MH T2-1 冷媒 水素 T2-2 冷媒 タンク 2 79.7 フィルタ T3-1 冷媒 TX-3 T1-2 T3-2 水素 TX-1 TX-2 タンク 3 XはタンクNo. プレートフィン方式 分割方式 充填試験 ⇒H 充填試験 ⇒ 2 25Nm3/10min 以上確認 8 MHタンク 急速充填 定圧供給法 30 0.6 水素充填量 20 0.4 1.0 初期条件 タンク温度:60℃ 水素貯蔵量:0% 冷却水条件 流量:125L/min 温度:25℃ 40 プレートフィン方式 0.8 タンク入口圧力 30 0.6 水素充填量 20 0.4 3 流量[m /min] , 水素充填量 [m 3 ] 0.8 圧力 [MPaG] 40 50 タンク入口圧力 10 0.2 流量 0 0.0 -5 0 5 10 流量 10 0.2 0 15 0.0 -1 0 1 時間 [min] 2 3 4 5 時間 [min] 分割方式 プレートフィン方式 25Nm3 2.6分 分 25Nm3 7分 分 9 定圧供給と定流量供給 分割方式 100 分割方式 50 60 水素入口圧力 20 40 充填量 10 20 流量 0 0 0 2 4 6 8 10 時間 [min] 定圧供給 100 冷媒:125 L/min, 6℃ 分割方式 3 3 30 80 流量 [Nm /min] / 充填量 [Nm ] MH温度 40 温度 [℃] / 圧力 [×0.01MPaG] 3 3 流量 [Nm /min] / 充填量 [Nm ] 冷却水:125 L/min, 25℃ 40 80 MH温度 30 60 水素入口圧力 20 40 充填量 10 20 温度 [℃] / 圧力 [×0.01MPaG] 50 流量 0 0 0 2 4 6 8 10 時間 [min] 25Nm3 7分 分 図3 水素充填特性(水素供給圧力制御 ) 定流量供給 25Nm3 9.3分 分 図4 水素充填特性(水素供給流量制御 ) 10 圧力 [MPaG] 1.0 初期条件 タンク温度:65℃ 水素貯蔵量:0% 冷却水条件 流量:125L/min 温度:25℃ 3 3 流量 [m /min] , 水素充填量[m ] 50 急速充填法 成果 実体タンク 有効吸蔵量 31.25m3 ・80%充填時間 分割方式 7分、プレートフィン方式2.6分 ・ミニサイズタンクと同等性能 → ミニサイズによる設計ツール有効確認 ステーションでの充填 ・ 80%充填時間 10分以内 ・供給流量アップで時間短縮 残存水素の影響 ・充填時間は短縮 初期目標達成 開発終了 11 (2)MHタンクの安全性評価 再委託 マツダ㈱ 加熱試験(アルミ合金容器) 溶栓作動 温度(K) バネ式圧力リリーフ弁作動 500 400 1.8 1.4 400 1.6 1.2 350 1 0.8 合金温度 300 0.6 タンク破裂 タンク破裂 200 0.4 100 0.2 0 0 0 10 20 時間(min.) 30 40 1.4 300 1.2 タンク表面温度 250 1 合金温度 200 0.8 150 0.6 100 0.4 圧力 50 0.2 0 0 0 5 10 15 20 25 30 時間(min) 安全弁のみ 溶栓付加 12 圧力(MPa) 1.4MPa リリーフ弁作動 600 450 温度(℃) 圧力 700 1.6 圧力(MPa) 800 H2吸蔵放出試験 仕切板・ハニカム追加 チューブフィルタ追加 2000 2000 4,000 1500 1500 1000 1000 ひずみ量(με) εt (底部) 3,000 2,000 1,000 0 ひずみ 量(με) 5,000 500 0 -500 -1000 -1,000 5 10 サイクル数 15 20 0 -500 -1000 -2000 -2000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 サイクル数 歪みはサイクル数 と共に増加→亀裂 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 サイクル数 100サイクルでも塑性域に至る歪みなし 13 MHタンクの変形評価 7 400 400 6 6 歪み量 内部応力 350 発生応力 300 5 4 歪量 250 200 200 3 4 発生応力(MPa) 300 150 2 100 100 2 1 50 0 0 0 35 40 35 40 45 45 50 MH充填率 50 55 60 65 55 60 65 発生応力(MPa) 450 歪み量(με) 0 500 -1500 -1500 歪 量(με) ひずみ量(με) プレートフィルタのみ 0 MH 充てん率(%) 充填率と膨張圧 合金粉充てん部 MH充填部 水通路部 冷媒通路 FEM解析(X方向) 14 MHタンクの安全性評価 成果 (1) 安全性評価の試験方法: 既存の消防法、国連法で危険物に該当しない合金: ⇒大気に飛散しても自然発火しない (2) 加熱試験: 設定圧でリーフ弁からH2放出。 タンク温度上昇でタンク強度 低下により、リリーフ圧以下で破損。 ⇒ 対策: 溶栓をリリーフ弁と併用 (3)MHの水素吸蔵膨張で水素圧以上の応力を発生 AB5系MHで充填率55%時、5MPa発生 原因: タンク内MH合金の偏在が原因 対策: 充填したMHの膨張圧測定で、タンク変形量予測可能 ハニカム、仕切り板、チューブフィルタの設置 初期目標達成 開発終了 15 (3)圧縮水素タンクの実用化技術調査 C-FRP アルミ合金 容器断面 16 再委託: JFEコンテイナー㈱ (3)圧縮水素タンクの実用化技術調査 FRPの信頼性 試験体:TRH50/エポキシ樹脂 2.2t×25w×φ510 繊維方向:フープ巻き 試験温度: 室温 検 査 :カラーチェック 30 25.3MPa 25.3MPa Pressure (MPa) 25 20 15 10 5 25万回推定70% 0 1 10 100 1000 10000 10000 1E+06 0 Number to fracture 疲労試験結果 17 動的負荷時の耐久性 試験条件 ・タンク容量: 34L ・ 〃 元圧:0,5,15,25MPa ・充填速度:高速、低速 ・歪み測定:胴中央部 ③ ② ④ ① ⑤ 図2 温度測定個所 80 70 容器内温度 入口肩表面 容器中心表面 エンドプラグ肩表面 エンドプラグ表面 40 ① 30 25 50 ④ 40 20 ⑤ ③ 15 30 ② 10 20 5 10 充てん圧力(MPa) 0 0 20 40 60 時間 [sec] 図5 充填時の容器温度変化 図3 充てん時容器温度変化 80 0 100 18 充てん圧力 [MPa] 容器内温度 [℃] 60 35 圧縮水素タンク実用化技術の調査研究 成果 ①CFRPの材料特性 破裂圧力: 25.3MPa 疲労強度試験(リング状試験片) ⇒25万回後の強度は初期の70% カラーチェックでは、繊維破断認めず ②動的負荷時の耐久性(不活性ガスの繰返し急速充填) EIHPドラフト案に準拠した試験で、減圧弁、継ぎ手のい ずれも異常なし。 ③海外調査 局所加熱による容器損傷は製造過程で、ピエゾセンサー を容器に埋設し、検知できた。Aℓは乾燥水素で脆化なし 初期目標達成、安全基盤技術で70MPa検討中 初期目標達成、安全基盤技術で 検討中 19 (4)圧縮タンクの加振試験 加加速度センサー: ch2 速 度加速度センサー: ch3 セ ン サ加速度センサー: ch4 漏れが生じて発泡してい る様子 気泡発生 20 (4)圧縮水素タンクの加振試験 成果 35MPa水素充填容器の振動試験 •試験体: 4社、各社2本をバルブ等と配管固定 Integrated Hydrogen Project Compressed Gaseous •加振条件:EIHPに準拠 European Hydrogen Regulation(Draft) Revision 8,23.11.01 方向:鉛直1軸、 加速度:1.7G 波形:サイン波、周波数:17Hz 加振時間: 2h×3回= 6h •試験結果 1社は容器つなぎ部より水素漏れ。容器に異常はなし。 つなぎ部加工後再検査で漏れなし。 対策・課題 ①容器と付属部品の振動を一致させる。 ②実車搭載条件下での試験必要 初期目標達成、試験終了 21 (5)MHタンクの最適形状 120 1 Experiment C 0.8 Calculation 80 0.6 T 60 0.4 Experiment TC #1 #2 #3 40 20 0 Calculation 5 time , min 10 0.2 15 0 MHの温度変化 フィンの配置 22 C , M/H T l = 21 ℃ P = 0.8 MPa T o = 60 ℃ 100 T , ℃ 試験MHタンクの設計 ・充填時間:10min以内 ・6分割、角部に冷媒通路 ・材質:アルミ 佐賀大学共同研究 水素導入時のシミュレーション 100s H2組成 温度分布 40s H2組成 温度分布 800s 100s 3600s 200s 0 (H/M) 1 5 (℃) 40 フィンなし 0 (H/M) 1 5 (℃) 40 フィン 17枚 23 MHタンクの最適形状 成果 ・MHタンク内熱移動計算プログラムを開発 ・MHの見かけの熱物性値を測定 ・フィン付き模擬タンクで、計算プログラムを検証 ・冷却フィンはMH層を挟み2mm以内にすれば、 冷却性能は影響されず。 ・冷却フィンの数は、伝熱、MH量から 17枚が 最適 初期目標達成、開発終了 24 成果発表 年度 特許出願 H11 論文発表 口頭発表 国内 海外 1 1 0 3 H12 0 0 0 1 H13 0 2 0 3 H14 0 3 3 8 計 1 6 3 15 P180参照 25 実用化、事業化の見通し ・水素タンクは、FCVと並行して開発する必要がある。 ⇒FCVが現状非常に高価、実用化にはまだ遠い。 ・MHタンクは、伝熱特性の向上が充填時間短縮に役立つ。 ⇒MHタンク構造の最適化が必要。 ・圧縮タンクは、国内の高圧ガス認定品は1社のみである。 ⇒将来の実用化には、複数のメーカーの開発を期待。 ・圧縮タンクの振動試験は軽負荷であった。 ⇒実車搭載を模擬した試験が必要。 ・圧縮タンクにかかる法規制の緩和を要す。 26 MHタンク急速充填法の開発 目的:温度上昇によりH2充填長時間→短縮化 目標:有効吸蔵量の80%を10min以内で充填 方法:ミニサイズタンク(有効吸蔵量1.25m3)で構造検討 2種試作試験(プレートフィン方式、分割方式) →実体タンク設計(有効吸蔵量31.25m3) 方 実体タンク仕様 プレートフィン 分割 MH 充填量[kg] 264 244 総 重 量 468 384 390x610x729 244x832x666 173 135 寸 法 式 [kg] [mm] タンク体積[L] 27 04/2/21 事後評価委員会 タスク 7, 7A, 7B 水素供給ステーションの開発 財)エンジニアリング振興協会 1 FCV用水素供給ステーション 供給能力:実用規模の1/10 (30Nm3/h) 形式 オンサイト 改 質 型(大阪)、 水電解型(高松) オフサイト 副生水素利用(鶴見)(H13以降) H2純度 99.99%、 露点 -60℃以下 不純物 CO 1ppm以下、 O2 10ppm以下 運転試験、評価手法調査 2 7-2 事業内容 H11 基本設計 H12 H13 H14 検討項目抽出 調査検討 指針作成 詳細設計 構成機器製作・試験 建設、試運転 充填制御技術開発 システム最適化 技術指針作成 :改質型、 :水電解型、 :オフサイト方式 3 7-2.2 研究開発の実施体制 T7 財)エンジニアリング振興協会 T7A 水素供給ステーション開発委員会 委員長 東工大岡崎教授 WG1(改 質 型) WG2(水電解型) 再 委 託 WG3(オフサイト型) 技術指針検討会議 H11~14 H11~14 T7B 岩谷産業㈱ 天然ガス改質型 日本酸素㈱ 水電解型 岩谷産業㈱ オフサイト型 4