Comments
Description
Transcript
甲第26号証
申第ユ6 号証 日本生物地理学会会報 第四巻第 2004 年 12 月 20 日 B u l1 .b i o g e o gr .S o c .Japl川 5 9 . 7 5 8 1 .D e c .20 , 2 0 0 4 ゲンジボタルの発光パターンに及ぼす温度環境の影響 一地理的差異による 2 型分布に対する考察として阿部 宣男 1 ・稲垣 l 干 316-8511 Z 〒 175-8571 照美 1 ・石) 1 秀之 l ・安達政伸 1 ・干場英弘 2 目立市中成沢 4-12・ i 茨城大学大学院理工学研究科 東京都板橋区高島平 1-9-1 大東文化大学第一高等学校 Thee f f e c t so ftemperatureont h el i g h te m i s s i o np a t t e r no fL u c i o l ac r u c i a t a - Ac o n s i d e r a t i o no ft h ecommontheoryoft h eg e o g r a p h i c a ld i s t r i b u t i o nOホ t h etwot y p e so ft h efirefty一 〆一\ N o r i oA. be l, TerumiInagaki' , H i d e y u k iIshikawa' , MasanobuA .d a c h i 'and H i d e h i r oH o s h i b a2 IG raduateSchoolofScienceandEngine巴ring , Ibarak . iUniversity , 4 1 2 1Naka-narusawa , Hitachi , Ibaraki , 3 1 6 8 5 1 1Japan 2D aitoBunkaUniversityDai-IchiHighSchool , 1-9・ 1 Takashimadaira , Itabashi , Tokyo , Abstract . Theef マ e c t so fa m b i e n tt 己 mpさ rature 己口 vironment 1 7 5 8 5 7 1Japω1 ont h el i g h te m i s s i o np a t t e r no ft h e u c i o l aC/'uGÍala , a r ee X l ll 1 li n e di nt h p r e s c n tstudy.λVεcon5ide.r t h ecommonth巴 ory G e n j ifirξ 日 y , L , p o s t u l a t i n gt h ee x i s t c n c eo ftwomaing e o g r a p h i c a l l ydi. tributed t y p e so fth 邑日 reflies , . ie .th 邑 West Japan 巴se , 2 s巴conds fa s h typ三 and t h eEast- Ja pane.se , 4s己conds f t a s ht y p e . Th 巴 light e m i s s i o np a t ュ t e r noft h ef i r e 1 fi e sb巴came s h o r t e rt o w a r dh i g ht e m p e r a t u r e sa r o l l l l d2 5 ' Candlongerunderl h elow t巴mperatllr巴 s し t o w a r d15 ・ C , r e g a r d l e s s01・ lheir g e o g r a p h i c a lb u c k g r o u n d s . i g h !e m i s s i o npatl巴1'11, t e m p e r a l u r eC l 1Vl r o n m e n. t Keyw o r d s : G 巴nji firefly , l (要約) ゲンジボタルの発光パターンに及ぼす温度環境の影響を東日本型(秋田,福島から運搬)と西| 日本型(徳島,福岡から運扱)で調査した.ベンチレーターを用いて温度を変化させて調査したと ころ,全体としてどの地域からの個体も高温環境 (25 0 C)に近づくにつれ発光間隔が短くなり‘低 温環境(l 5 0 C)に近づくにつれ長くなり,地域による個体差はむしろ認められなかった温度環境 がホタルの発光パターンに及ぼす影響は地域差異よりも大きいと考えられ,今後の詳細な確認 実験が待たれる. 連絡先:阿部宣男, hOlaru-~be@ ll1 v f. biglob己 .ne.jp FJ 、 「i ゲンジボタルの発光パターンに及ぼす温度環境の影響 たヘイケボタル (Luciola はじめに l a t e r a l i sMotscbulsky , 1860) は,栃木県栗山村から 1989 年にホタル ホタルの発光パターンは,雌雄間のコミュ 飼育施設に導入し,累代飼育をしているもの ニケーションの手段として知られている.日 である. 本に生息するゲンジボタルにおいて,その発 計測方法 光パターンは,現在 2 つのタイプとその中間 クリル製シャーレ(幅 20 Cffi ,高さ 20 cm) に 型の存在が報告されている (Ohba , 1984; 大場, それぞれのホタル(雌雄混合)を入れ,ベンチ 1988). すなわち,西日本に生息する 2 秒間隔 レータで,温度を 15 0 C から 25 0 C まで温度を で発光するタイフ\東日本に生息する 4 秒間 上昇させその後, 25 0 C から 15 0 C まで温度を 隔で発先するタイフ\およびその境界地域に 下降させた時(以下,“上昇下降測定円とする) 見られる 3 秒間隔で発光するタイプである. と,この逆の温度変化,すなわち 25 0 C から 近年,この地域による発光パターンの相違を 15 0 C まで温度を下降させその後,再び 25 0 C 遺伝子レベルで確認する試みがなされ,ミト まで温度を上昇させた時(以下,“下降上昇測 コンドリア COII 遺伝子の各地域における相 定"とする)のホタルの発光パターン(明滅間 違が調査されてきた(鈴木, 1 9 9 9 ;S u z u k ie tal. , 隔の変化)を撮影・測定し,各温度での明滅 2002). その結果,発光パターンの地域性と矛 間隔の平均と信頼区間を求めた.このアクリ 盾しない見解が出ているが,地域によるぱら ル製シャーレ内は, 6 つの小部屋に独立して つきもあり,また上記遺伝子は発光を詞節す 分割され,雌雄の組み合わせ匹数は,常時 1: 5 る遺伝子とは独立しているため,遺伝子解析 である.したがって,雌雄を区別して計測を行 による発光パターンの地域性解明とは直接に うことができる.なお,湿度は,いずれも 80- 結びつかないと考えられる. 95% の条件下で調査した. ここでは図 l に示したようなア 我々は,ゲンジポタルの光のゆらぎと人の ゲンジポタルの撮影は, 6 月上旬から下旬 感性を分析する退程(稲垣ほか, 2001; 阿部ほ にかけて,ヘイケボタルの撮影は 7 月中旬か か , 2003a; 阿部ほか、 2003b) で\上記 2 程の発 ら下旬にかけて,ホタル飼育施設において行 光パターンを識別することが難しいという事 った.1'最影には,デジタ lレビデオカメラ(シャ 実に遭遇した.したがって,本研究では,統計 ープ製 VL-PD7 ,京セラ製 DV-L200) を用い, 解析や画像解析を援用して,ホタルの発光パ カメラは照射を弱めた赤外線暗視モード(ナ ターンがその生息環境,特に温熱環境から受 イトショット)に設定した.時間分解能は, ける影響を実験的に明らかにすることにした 1 1 3 0s 巴c である.なお,正確な輝度データ採取 の妨げとなり得るピデオカメラの自動機能は 材料と計測方法 作動しないよう予め設定したすなわち,ホタ ルの明滅に伴う自動露出補正機能の誤作動 rp- 材料研究対象であるゲンジポタル (Luciola が生じないようホワイトバランスを固定し, c r u c ホ a t aMotscbulsky , 1854) は,東京都板橋区 また暗闇においてはオートフォーカスが正確 立エコポリスセンターホタル飼育施設(以下, に機能しないことから手動焦点調節に切り換 ホタル飼育施設)で累代飼育している個体 え,パンフォーカス昂影とした.以上の工夫に (1989 年に福島県大熊町から移入)の他,秋田 より,ホタルの淡い光の明 i戒を正確に撮影す 県本荘市,徳島県阿波池田町,福岡県北九州 ることが可能となった.なお,一連の計測で 市のそれぞれの地域からホタル飼育施設に成 は,湿度も同時に計測した. 虫を輸送したものである.比較として測定し 画像処理法 itail--1 -76 ゲンジボタルあるいはへイケボ jj il- 阿部宣男・稲垣照美・石川秀之・安達政伸・干 i嘉英弘 1 1 1 2 3 1 2 η ー ....ー--_... 】工町一」白 - ωωωC 2 コ r-', 、 t 3 T i m e[ s e c ] t n Fig , 2 ,ホタルの発光パターンの変化. 一 1_ーユ ・ . 1 ;\ :;; ターンの時間変動を図 2 に示すように定義し た.発光の発生時間を tl , r:.:i.l,~ :~:y;~.;守顎日 差から明滅間隔 i 1 , 一一向プ:ー-_ ~, 記,手三 、 (2 , [3 ,… J とし ,その i2, /3 , ..., in を求める.なお Jヱ 一連の明滅間隔の測定には,比較的明滅の区 C o m p u t 0 f 別が明確な映像を用い,データ数を 1024 fram 己とした. ホタルの発光にはフラッシュ発光,刺激弱 F i g s1.実験装置の概略図. 光,微光,飛刻時の発光(矢島, 1978; Ohba , 1983) などいくつかの様式が報告されている \一/ タルの明滅の一連の動画像を,動画像処理ボ が,これら調査では小型のアクリル容器と言 ードを介してコンビューターに取り込んだ. う閉鎖環境での詞歪であったため,容器内で この際,動画像の時間分解能が 30 fralη 巴Is 己C 雌雄が発光したすべてのパターンを一括して であることから,サンプリング周波数を 30 Hz 対象とし,温熱環境の変遷や地理的差異がホ とし,総数 1024 f r a m e(時間にして 34 , 1 sec 間) タルの明滅間隔に及ぼす全体の傾向を調査す の酉像を取り込んだ.この計測条件は,ホタ るに至っていない. ルの明滅持続時間による生態的な要因を考 慮したものである.次に,コンピューターに耳え 結果及び考察 り込んだ動画像は,画像濃度変位量解析シス テム((株)ライブラリー製, Gray-va132) によ ゲンジボタルの温度変化 図 3 は,板橋区 り画像処理し,発光パターンの輝度変動に関 ホタル飼育施設で採取したゲンジボタ jレ(雌 する時系列データを構築した.その後,得ら 雄混合)をベンチレータに入れ,上昇下降測 れた時系列データから発光パターンの明滅間 定を行った時の明滅間隔の変化をまとめたも 隔を測定し,温度上昇時と下降時の各温度で のである, 25 0 C 時はほぼ l 目 5 s巴c 周期で明滅し, の平均と信頼区間を求める.この時,信頼区 1SOC 時は 2 , 0-2 , 7 s巴c 周期で明滅した.図 4 は, 間は 95 %とした.すなわち,ホタルの発光パ 下降上昇測定の結果を示したものである. -77- ゲンジボタルの発光パターンに及ぼす温度環境の影響 「lill---111111Jelli--J -ULU F 除問 T 副悶 ll--ill 中 中 2 3 一 』凸 一凸 」 3一同 4 4 V rl V nμ ・ e Ti H ρ】 ムmm 2 !」 :一 一円 」 22戸 2 3 5m 0 3 m 4 2-LU 2 5 一川 u p TA 20 。 • • d o v . . m 3 A m b i e n tT e m p e r a t u r er C J 一町同 コ 」 3 1 5. 0 2 E 1 1 1 0 1 0 1 1 8 dO ' l ln 3 0 ー wi1 LM u p 己 ''f < 宇中 。 2 i - コ 」 コ 。 日 E ,, PIl--I1 ( / ) 。 ロ 己 u 。 0 ア ロ ν LU . • . . • H 2 a' < 〈 ( / ) 巴 。 コ 。 c 。 「mMmw 目別 r - 4 ゆd ・・l 』 AU- ω 申 叩 ACIDI---lha と Q) 吋_, . o l e E r o の と 1t ( / ) up • down rapi--11 Q) 小 ω ~・・4 ρ uavnH .。 寸 6 o Und 巴 r decreasingtemperature 。 ω4 t 寸 山由山 ι jMMM 白白 UU 111 l Und 巴 r i n c r e a s i n gtemp邑 ratur己 & J . . - Underi n c r e a s i n gt 巴 mperature " Underi n c r e a s i n gtemperature o Und 邑 r decreasingtemperature o Underd e c r e a s i n gtemperature C I I u Q) ( / ) 4 . _ _ . up• down r o 中 ロ ω c ( / ) コ 」ω吉一 ωコ OC 一 E コ」 と 喝_, 白 ロ ロ • 2 中 。 • o c u p • • • 0 1 3 10 1 0 1 0 1 1 1 2 1 2 1 4 1 1 1 0 ・ 15 20 a 2 5 A m b i e n tT e m p e r a t u r er C J 中 中 中 中 申 2 • u p 申 • . ロ 。 申 • 1 3 1 3 j5 15 1 7 1 6 1 5 1B 1 5 2 2 1 6 。 lI 「円以 0 . 申 ロ E コ ー」 down • up j 中 ロ 1 5 2 0 2 5 A m b i e n tT e m p e r a t u r er C J 6 円 。 • O Q) ( / ) 4 r I Underi n c r e a s i n gtemperatur巴 " Underi n c r e a s i n gtemperatur己 o Underdecreasingtemperature ? 5l ω 中 ( / ) . _ _ . rp • down 百 。 中 宇 : c 宮中 ( / ) 1 ・ コ o 2 0 • c E 1 1 7 1 5 申 吟ーJ コ ー」 1 0 7 。 4 の 中 戸 u p dow円→ up 」ー 。 c コ temperatur己 > 。 キ 2 ー」 o Underd 巴 creasing 仁2 u p 20 2 5 7 A m b i e n tT e m p e r a t u r e[ : J C ] -78- 。 中 2 d即.'n 0 官 4 _ L _ _ _ . ! . . _ _ _ t 1 5 2 0 2 5 A m b i e n tT e m p e r a t u r er C J B 阿部宣男・稲垣照美・石川秀之・安達政伸・干場英弘 . - ,- I " Underi n c r e a s i n gtemperature 84 o Underd 告 creasing temperature ( / ) . . . . . . . . . . と up• down 中中 5 up ー」 20 25 。L...Lー] 15 9 3 4 E 3 15 1 コ 5 AmbientTemperaturer C ] 20 25 AmbientTemperaturer C J 2 1 0 3 ずのの}一旬〉ω』 旦 己コ 一」 コO EE C I • Underi n c r e a s i n gt e m p e r a t u r e Underi n c r e a s i n gt e m p e r a t u r e o Underd e c r e a s i n gt e m p e r a t u r e ( / ) 百 E + down • up 2 。 c 噌~ 申 コ o 申 c 白 ロ コ 泊五戸 M 0・ M Tl 市 ιou lω 一白 」 一 nU e 7-m g E !」白 一 」 64mm 3 」5m E4Lυ 円U 3 i --A 白山 E -拘留 ・叩 -E 口・叩 M g・情 T内O E a - 1 1 2 内4 n a ,, .M 申 。 . • 0 中 中 ( / ) 申 。 中 o Underd e c r e a s i n gtemperature ιコ ω up• down up 申 o c 'a 2 4T 0 コ • 2 E 7 E up down 3 /一\ • ・ • • c / ) 企-向日' • ・ o c E c 0 m事 o 6 司・d Aψ・. + 2 」 ロ Q) 。 中 。 コ down • up 申 と 由 申 c コ o Underd e c r e a s i n gtemperature 4 何 崎~ ( / ) Q) c n ,___. -mwes-ュ ω 仁3 0 --m,M ,,‘マ目 r o Underi n c r e a s i n gtemperatur己 8 . . . 」 • • up 2 d即:n 6 4 O 1 1 E - 。(i)‘ Z 官・ 5 6 9 5 1 0 ユ 7 1 5 20 25 AmbientTemperaturer C ] 1 2 Figs3-10. 温度上昇下降,下降上昇時の各温度におけるゲンジボタルの明滅間隔. 3. 温度上 昇→程度下降,生息地:板橋. 4. 温度下降→温度上昇,生息地:板橋. 5. 温度上昇→温度 下降,生息地:徳島. 6. 温度下降→温度上昇,生息地:徳島. 7. 温度上昇J 温度下降,生息 地:北九州. 8. 温度下降→温度上昇,生息地:北九'l"Ii .9. 温度上昇→温度下降,生息地:秋 田. 10. 程度下降→温度上昇,生息地:秋田. F i g s11-12. 福度上昇下降,下降上昇時の各温度におけるヘイケポタルの明滅間関. 1 1.温度 上昇→温度下降,生息地:板橋. 12. 温度下降→温度上昇,生息地:板橋. グラフ下部の up , down は,それぞれ温度を上昇したときおよび下降したときに発光が確 認された個体の延べ数を表す. 15 0 C 時は 3.5-3.6 sec 周期で明滅し, 25 0 C 時は ものである. 2 50C時はほぼ1. 6 sec 周期で明滅 l .9 3 . 5sec 周期で明減した. し, 15 0 C 時はほぼ 2.5-3.5 sec 周期で明滅した. 図 51 ま,徳島県池田町で採取した西日本型 図 6 は,このホタルを下降上昇測したもので のゲンジポタル(雌雄混合)をベンチレータ ある. 25 0 C 時は 1.6-2.3 sec 周期で明滅し, に入れ,上昇下降測定を行った結果を示した 15 0 C 時は約 3 .4 sec周期で明滅した. -79 ー ゲンジボタ Jレの発光パターンに及ぼす温度環境の影響 図 7 は,北九州で採取した西日本型のゲン をベンチレータに入れ,上昇下降測定を行っ ジボタル(雌雄混合)をベンチレータに入れ, た結果を示したものである .25 0 C 時は O.ι 1. 0 上昇下降測定を行った結果を示したものであ sec 周期で明滅し , 15 0 C 時は 0.9- 1. 1 sec 周期 50C る. 25 0 C 時はほぼ 2.0 s己c 周期で明滅し, 1 で、明滅した.図 12 は,下降上昇測定を行った c周期で‘明滅した.図 8 は,下降 e 時は 2.5-3.8 s c周期で、明滅 e 結果である • 15 0 C 時は 0.8-2.3 s 上昇測定の結果を示したものである. 15 0 C 時 し, 25 0 C 時はほぼ 0.5 sec 周期で明滅した.こ は 3.6-4 .1 sec 周期で明滅し, 25 0 C 時は1. 7- 1. 9 の測定において , 15 0 C 時に 0.8-2.3 sec 周期と sec 周期で明滅していることがわかる. 変化が大きかったのは,観察された個体数が 図 9 , 10 は,秋田で採取した東日本型のゲン 2 と少なかったことに起因すると考えられる. ジポタル(雌雄混合)をベンチレータに入れ, しかしながら,へイケボタルも,ゲンジポタル それぞれ,上昇下降測定,下降上昇測定を行 と同様に,温度が上昇すると徐々に発光間隔 25 0 C が短くなり,逆に温度が下降すると発光間隔 った結果を示したものである.前者では, 時はほぼ1. 5 sec 周期で明滅し, 15 0 C 時は 2.8- 0sec 周期で明滅した.また,後者では J5 0 C . 3 時は 2.8-3.6 s 巴 c 周期で明滅し , 25 0 C 時は が長くなることから,発光パターンは,温熱環 境に大きく影響を受けることがわかる. ゲンジポタルとへイケボタ jレの発光パター ンを比較したとき,過去の報告通り(大場, 4sec 周期で明滅した 2. 7 . 1 以上の結果から,ゲンジボタルは,温度が 1979) ,へイケボタルの方が発光間隔は短かっ 上昇すると徐々に発光間隔が短くなり,逆に た.また,ヘイケポタルにおいては,その発光間 温度が下降すると発光間隔が長くなることが 隔への温度の影響がゲンジボタルのそれより 判明した.このことからも,発光パターンは, 小さいようである.このことは,ヘイケボタル 温熱環境に大きく影響を受けることが判断で の方が元々の明滅パターンが早いことに原因 きる. しているのであろう. ホタル飼育施設では,上記のホタルの他に, 発光パターンの温熱環境による変遷 以上の 青森県弘前市(東日本型) ,福岡県北九州市 結果から,ホタルの発光パターンは,採集場 (西日本型)から輸送したゲンジボタルと‘施 所や雌雄に関わらず、周囲温度に大きく影響 設で飼育しているゲンジボタルをそれぞれ別 を受けることが示された.ホタルは,温度が上 5cm) のプラスチック容器 (20 cmX 40cmX 2 昇すると徐々に発光間隔は短くなり,逆に温 に入れて同じ室内(1 8-21 oC に調節)に並べ 度が下降すると発光間隔は長くなることか て,同時明滅の発光パターンを観察したそ ら,発光パターンは温熱環境に大きく影響を の結果,これら 3 地域からのホタルは,同じ温 受けることが判断できる.また,ホタ Jレの明滅 度条件下では同調して発光した.また,これ 間隔は,温度を上昇させてから下降させた場 らのホタルを同じ容器に入れたところ,交尾 合と下降させてから上昇させた場合のいずれ も行われ,それぞれの子孫をも残している(阿 においても,温度を上昇させた時と下降させ 部ほか,投稿準備中) .プラスチック容器内で た時では同一温度でも明滅間隔に差が生じ の同時明滅は,野外などでの同時明滅とほぼ る.すなわち,温度を下降させた時の方が同 同じ現象であると考えられ,発光パターンと 一温度でも明滅間隔が長くなる傾向にある. 温熱環境の変化の関係は,地理的差異と関連 して重要な関係であると考える. へイケボタルの温度変化 まとめ 図 11 は,ホタル 飼育施設で採取したヘイケポタル(雌雄混合) 本研究で測定したのは,シャーレという限 -80- 阿部宣男・稲垣照美・石川秀之・安達政伸・干場英弘 ー誌 . 定空間で測定し求愛行動に現れる明滅現象 「感性情報計測と福祉応用 J .感性工学研究論 文集, 3 ・ 41-50. とは必ず、しも一致していないが,こうした j昆 度の発先パターンへの影響は飛刻時にも現れ 稲垣照美・犬塚浩二-安久正紘・赤羽秀朗・阿 部宣男, 200 1.ホタルの発光パターンにおける るものと思われる.このことから,各地でみら l !fn ゆらぎ現象と癒し効果.日本機械学会論文 れる発光間隔の遣いは,地域による周囲気温 の違いによる可能性がある.一般に自然界で 集 C 縞, 67: 3 6 5 37 2 . 大場信義, 1979. ホタ Jレの発光パターンと活動習 性予報.神奈川県博物館協会会報, 41: 1 9 . は,日没後,温度が下がる傾向にある時に上 昇下降条件下で発光するものと考えられる. しかしながら,今回のような比較的短時間の 温度変化条件下における実践が,どの程度自 然界の現象を再現できているのかに関して r--、 T は,今後の重要な研究課題である. Ohba , N. , 1 9 8 3 .S t u d i e so nt h ec o m m u n i c a t i o ns y s ュ t e mo fJ apan 巴 se f i r e f l i e s .S c i .R e p .YokosukaC i t y M仏\., 30: 1-62 , p l s1 6 . 一一一一, 1 9 8 4 .Synchro 口 ous f t a s h i n gi nt h eJ a p a n e s e 日 1・己目 y , L u c i o l ac r u c i a t a( C o l e o p t e r a :Lampyrida 己). S c i .R e p .Y o k o s u k aC i t yMuん 32: 23-33 , p . l8 . 一一一一(大場信義), 1988. ゲンジポタル. 1 9 8p p . 文一総合出版,東京. 謝辞 鈴木浩文, 1999. 多摩地域におけるゲンジボタル 集団の遺伝的多様性と保全対策. 2 6pp. 東京 本報告を提出するにあたり,故酒井清六博 士にご尽力を賜った.深謝の意を表する次第 である. 引用文献 阿部宣男・稲垣照美・石川秀之・松井隆文・安 ホタル会議(編). Suzuki , H. , Sato , Y .& Ohba, N. , 2 0 0 2 .Gen 己 diversi t ya n dg e o g r a p h i cdiffer巴 ntiation i nm i t o c h o n d l i a l DNAo ft h eG巴吋 i fire 毘 y , L u c i o l ac r u c i a t a(Col 己 0p t e r a :Lampyrida巴). M o l e c .P h y l o ; t e n e t .Evol. , 2 2 : 1 9 3 2 0 5 . 矢島稔, 1978. ホタルの日周活動と発光信号ーゲ 久正法 , 2003a. ホタルの光と人の感性について ンジボタ Jレの場合.インセクタリウム 15 ( 6 ) : 「発光現象のゆらぎ特性J.感性工学研究論文集, 1 2 1 9 . 1 ・ 35 -4 4. 阿部宣男・稲垣照美・木村尚美・松井隆文・安 久正紘 , 2003b. ホタルの光と人の感性について ¥ _ / -8 1- (2004 年 10 月 16 日受理)