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実地震記録波を用いた実物大ブロック擁壁の耐震

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実地震記録波を用いた実物大ブロック擁壁の耐震
3-385
土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)
実地震記録波を用いた実物大ブロック擁壁の耐震安全性解析
東京ガス㈱(前東京都立大学大学院)
正
○竹田
岳史
首都大学東京都市環境学部
正
長嶋
文雄
東京セメント工業㈱技術部関東設計室
正
原
洋介
東京工業大学大学院総合理工学研究科
学
新才
浩之
1.はじめに
擬似立体個別要素法を用いたブロック擁壁の地震応答解析と実験との比較・検討を通して、ブロック擁壁の
耐震安全性を明らかにしてきた 1)。しかし、これまでは 1/10 スケールモデルに対する検討であり、また入力
波も水平方向正弦波に限られていた。本報告は、より現実的な挙動を把握するため、水平・上下両方向の実地
震波を入力した実物大ブロック擁壁の地震応答解析を試みたものである。
800
NS 方向
UD方向
600
加速度(gal)
2.数値積分による速度・変位波形の算出
本研究において、小千谷市で記録された新潟県中越地震(最大加速度
779.2gal)の地震波形を実地震波として採用した。図 1 に加速度波形(NS,
400
200
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
-200
-400
UD 成分)を示す。一般的に、加速度波形の数値積分を行うと基線がずれる
-600
-800
ドリフトという現象が生じる。これは、計測器の周波数特性が原因である
時間(sec)
と考えられており、これを取り除く必要がある。通常は図 2,3 に示すよう
図 1 加速度波形
な、速度と変位に対するローカットフィルタを用いて数値積分を行う(図 4, 5)が、フーリエ逆変換などの
周波数領域での扱いが必要である。これに対して、部分的に基線を補正する簡便な方法(部分線形補正型基線
補正と呼ぶ)であっても、適切な補正区間(時間間隔 2.5sec)を採れば、図 6,7 に示すように、ローカット
フィルタを用いたときと同等な効果(おおよそ 0.1 Hz 以下のローカット)が得られ、遜色の無い積分波形が
得られる。
80
80
60
60
20
0
-20 0
10
20
30
40
N S方向
U D方 向
-40
速度(cm/s)
速度(cm /s)
40
40
20
0
-20 0
10
時間(sec )
変位用
図 6 基線補正 による速度波形
20
20
15
15
10
10
5
0
10
20
30
40
N S方向
U D方 向
変位(cm)
変位(cm )
図 4 フィルターによる速度波形
5
0
-5 0
-10
-10
-15
-15
-20
図 3 フィルター
NS方向
UD方向
-80
時間(sec)
-5 0
40
-60
-80
速度用
30
-40
-60
図 2 フィルター
20
10
20
30
40
NS方向
UD方向
-20
時間(sec)
図 5 フィルターによる変位波形
時間(sec )
図 7 基線補正 による変位波形
3.実物大ブロック擁壁の地震応答解析
3.1
演算加速手法
本研究では、実物大ブロック擁壁の地震応答解析を行うため、プログラム内の見直しを行い高速化とメモリ
ーの節約についての検討も行った。解析プログラムにおいて各計算部分の所要時間を計測した結果、接触判定
と要素間力の計算で約9割の時間を費やしていることがわかった。そこで、高速化手法として接触判定部分で
キーワード
連絡先
ブロック擁壁,擬似立体個別要素法,新潟県中越地震,基線補正,演算加速手法
〒192-0397 東京都八王子市南大沢 1-1 首都大学東京都市環境学部都市基盤環境コース TEL0426-77-1111 内(4531)
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土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)
の高速化とメモリーの節約を実現するため、セル登録法、L型接触判
定 2)、ブロック内部接触判定除外、セル登録法における新要素配列の
3
4つの手法を試みた。L型接触判定とは、セル登録法を行う際に隣接
セルを8つではなく、L型にした4つにする手法である。セル登録法
2
用して効率的に記憶する手法である。cell のマトリックスには、各セ
ていき、全ての要素がどこのセルに存在するかを記憶したものである。
具体例を図 8 に示す。
3.2
11
14
5
6
⎡2 1 7⎤
cell = ⎢⎢14 3 11⎥⎥
⎢⎣ 5 4 9 ⎥⎦
16
20
10
4
1
ルに存在する最小要素番号を記憶し、earray のマトリックスには、
各セルに存在する最小要素番号の位置に次に低い要素番号を記憶し
7
3
15
1
12
1
13
17
における新要素配列とは、セル登録法を使用する際に必要となる各セ
ルに存在する要素の要素番号と要素数を3種類のマトリックスを使
8
18
2
9
19
2
3
⎡2 3 2⎤
cesu = ⎢⎢2 2 3⎥⎥
⎢⎣2 3 1⎥⎦
⎡ 8 13 6 10 15 −1 12 18 −1 19 ⎤
earray = ⎢
⎥
⎣16 −1 −1 17 −1 20 −1 −1 − 1 − 1⎦
解析モデル
解析対象とした大型ブロック擁壁は、おおよそ高さ 1m、幅 2m、
図 8 セル登録法における新要素配列
奥行き 1m の空積みブロック擁壁であり、内部に砂が詰められている
状態の擬似立体化 1)イメージ図を図 9 に示す。
4.解析結果
部分線形補正型基線補正による数値積分より求めた変位を用いて、
図 10 に示すような総要素数約 12700 個の実物大ブロック擁壁3段の
地震応答解析を行った。図 11 に3段目ブロックの水平方向変位量と
入力波の比較図を、同様に、図 12 に上下方向変位量と入力波の比較
図を示す。
15
5
0
0
2
4
6
8
10
12
基礎 上下
3段 目上下
10
14
-5
-1 0
変位(cm)
変位(cm)
15
基礎 水平
3段 目水平
10
5
図 9 ブロック擁壁の擬似立体図
ブロック擁壁
背面砂
0
0
2
4
6
8
10
12
14
-5
-1 0
-1 5
-1 5
-2 0
時間(sec)
図 11 水平方向変位量
時間(sec)
図 12 上下方向変位量
5.おわりに
切土面
擬似立体個別要素法を用いた変位入力による地震応答解析を行う
ために、数値積分に関する検討を行い、部分線形補正による簡便な基
総要素数:12693 個
線補正でもローカットフィルタとほぼ同様の効果が得られることが
12.5 秒間の地震応答解
析に要した演算 時間:
414 時間
( CPU : Pentium Ⅳ
基礎工 3.6GHz , メ モ リ ー :
1.5GB)
分かった。また、プログラムを見直して高速化とメモリー節約を実現
したことにより、総要素数が1万を超えるモデルでも解析可能となっ
た。新潟県中越地震の実地震記録波を用いた地震応答解析を行った結
果、最大相対変位が 6cm 程度であり、転倒に至るほどの大きな変位
図 10 実物大ブロック擁壁モデル図
ではなくブロック段数3段の場合での耐震安全性が確認できた。今後の課題として、種々の実地震記録波によ
る耐震安全性の確認や、PC 性能の向上、高速化に応じて、ブロック段数を増やしてのシミュレーション解析
を行う予定である。
【参考文献】
1) 原洋介,長嶋文雄、竹田岳史:ブロック擁壁−砂地盤連成系の擬似立体個別要素解析手法,第 27 回地震工学研究発表会,
2)
Ante Munjiza:The Combined Finite-Discrete Elment Method,John Wiley & Sons(2004)
-770-
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