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紀州梅どり・梅たまご 生産マニュアル - 和歌山の紀州うめどり 関西
紀州梅どり・梅たまご 生産マニュアル 平成 18 年 3 月 和歌山県農林水産部農業生産・就農局畜産課 目 次 1.はじめに ・・・・・・・・・・・・2 2.紀州梅どり・梅たまごとは? ・・・・・・・・・・・・2 3.脱塩濃縮梅酢(BX70)とは? ・・・・・・・・・・・・3 4.BX70の使用方法 ・・・・・・・・・・・・3 ・養鶏研究所での配合方法 ・・・・・・・・・・・・4 5.BX70添加による効果 ・・・・・・・・・・・・6 A.採卵鶏への効果 ・・・・・・・・・・・・6 B.ブロイラーへの効果 ・・・・・・・・・・・・10 6.まとめ ・・・・・・・・・・・・12 - 1 - 1 はじめに 養鶏研究所では、平成10年より当時産業廃棄物として環境汚染に困っていた、梅酢を 養鶏飼料として、利用するため研究を続けてきました。しかしながら梅酢には、塩分が約 20%含まれており、過剰摂取すると鶏自身への弊害もあり、その利用方法について苦慮 していました。 このたび、(株)紀州ほそ川が梅酢を脱塩濃縮し、それを共同研究により飼料として利 用し、採卵鶏、ブロイラー両方に有効な成果が得られましたので、紹介します。 (特許出願中、日本家禽学会 2003 春期、2004 春期、秋期大会発表) 2.紀州梅どり・梅たまごとは? 養鶏研究所で開発された、脱塩濃縮梅酢を利用した養鶏飼養法で作られた鶏肉・鶏卵を 「紀州梅どり・梅たまご」と命名し、本県の新たなブランド畜産物としての普及定着化が 図られています。 平成17年4月1日には、関係者らにより「紀州梅どり・梅たまごブランド化推進協議 会」が発足し、様々な生産拡大・消費促進活動に取り組まれております。 この組織の活動は、「紀州梅どり・梅たまご」の商標登録やロゴマークの作成及び商標 登録、生産者への取組説明会や試食展示販などの活動にとどまらず、「紀州梅どり・梅た まご」を取り扱って頂ける店舗拡大のため、バイヤーなどへの積極的なPR活動など精力 的な取組が行われております。 これらの取組の結果、平成17年度末現在ではブロイラー約100万羽、採卵鶏約5万 羽で「紀州梅どり・梅たまご」の生産が行われています。 なお、梅どりは一般ブロイラーに対し1~2割程度の小売価格の上昇。梅たまごについ ては、白玉で 200 円以上/10 個、赤玉で 300 円以上/10 個での小売販売がなされることと なっております。 - 2 - 3 脱塩濃縮梅酢(BX70)とは? (株)紀州ほそ川により開発されたもので、通常の梅酢を電気分解により脱塩、濃縮し たものです。 通常の梅酢の場合、塩分が約20%、可溶性固形分(以下BXという)が17~18% のものを脱塩、濃縮し、BXを70%にしたものがBX70です。 一般成分としては、脂質は含まれておらず、クエン酸、リンゴ酸の有機酸の他、ミネラ ルでは、ナトリウム、カリウム、鉄、マグネシウム、カルシウム、リン、そして各種アミ ノ酸が微量に含まれています。 (株)紀州ほそかわでの作業工程 BX70(通常はペットボトルで保存) 2 脱塩作業 BX70の使用方法 養鶏研究所では、以下の一般飼料に、採卵鶏では70日齢から、ブロイラーでは初生か ら、添加濃度は採卵鶏で 0.07~0.14%、ブロイラーでは 0.1~1.0%添加して成果を得まし た。 使用した一般飼料 採卵鶏 ブロイラー 70~120 日齢 ME 2,780kcal CP14%以上 120 日齢以降 ME 2,850kcal CP17%以上 前期 ME 3,000kcal CP22%以上 後期 ME 3,150kcal CP18.5%以上 仕上げ ME 3,150kcal CP18.5%以上 - 3 - ☆養鶏研究所での配合方法(100kgを作成する場合) (1)タライに20kg(1袋)の飼料に100kgに添加する量のBX70を5~ 10倍の水で薄め混ぜる。 (2)手で均等にほぐす - 4 - (3)2で作成したもの(20kg)と、残り80kgを攪拌機に入れ、混ぜ合わせる。 (養鶏研究所では再度20kgずつ分け、袋づめしています。) (4) 養鶏研究所では、各試験区ごとに分けて飼料給与 - 5 - 各飼料へのBX70の量は次の通りです。(1tを基準) 採卵鶏 ブロイラー 添加濃度 一般飼料 BX70 0.07% 1,000kg(1t) 0.7kg(700g) 0.14% 1,000kg(1t) 1.4kg 0.1% 1,000kg(1t) 1.0kg(後期飼料 から給与) 5 A BX70添加による効果 採卵鶏への効果 ※グラフ中の1倍区は 0.14%、0.5倍区は 0.07%のBX70の添加による結果です。 (広島大学と共同試験) (1)産卵性能の向上 季節、日齢に関係なく、産卵率の向上、商品化された産卵個数の増加などの成果 が得られました。 産卵率の向上(151~510日齢) 93 産卵率 a a 92.5 92 b % 91.5 91 90.5 90 1倍区 0.5倍区 試験区 - 6 - 対照区 aとbの間には有意差あり(P<0.05) (2)飼料要求率の低減 飼料要求率の効率化 1.94 飼料要求率 1.93 1.92 1.91 1.9 1.89 1.88 1倍区 0.5倍区 対照区 試験区 (3)強健性(免疫性)の向上 BX70の添加により生存羽数が多く、また免疫性に有効なワクチン抗体価や IgG な ども高い数値を示しました。 510日齢までの生存率 99 98 97 96 95 % 94 93 92 91 90 1倍区 0.5倍区 試験区 - 7 - 対照区 (4)卵質の向上 卵白の盛り上がりが良く、指標となるハウユニットが高い数値を示しました。 BX70添加によるHUへの影響 97 a a 96 b 95 HU HU 94 93 92 1倍区 0.5倍区 対照区 a とbの間には P<0.05 で有意差あり (5)鶏卵への移行物質の増加 亜鉛やアミノ酸などの鶏卵に含まれる有用物質が増加しました。 鶏卵中の亜鉛濃度 mg/100g 1.42 1.4 1.38 1.36 1倍区 0.5倍区 対照区 1.34 1.32 1.3 1.28 1.26 1倍区 0.5倍区 - 8 - 対照区 (6) 官能検査での好評価 10~50代の135名のゆで卵の試食で対照区と比較したところ、良好な成果が得 られました。 鶏卵のおいしさにおよぼすBX70添加の影響 (n=87) * 45 まずい 変わらない おいしい 40 35 30 人 * * 25 20 * * 15 10 5 0 男 女 計 男 女 計 男 女 計 男 女 計 男 女 計 男 女 計 10代 20代 30代 40代 50代 全体 被験者 (7)肝臓の代謝性の亢進 肝臓内の脂肪含量や、脂肪細胞の面積が減少しました。 BX70添加による脂肪細胞面積への影響 脂肪細胞面積 70 60 a a 1倍区 0.5倍区 b 50 40 μm2/mm2 30 20 10 0 a とbの間には P<0.05 で有意差あり - 9 - 対照区 B ブロイラーへの効果 (1)保水性の向上 保冷時のドリップ量が減少しました。 (2)歯ごたえの向上 - 10 - (3)免疫応答の亢進 東北大学との共同研究により、リンパ球幼弱反応を実施、採卵鶏同様、免疫応答が亢進 されることがわかりました。 リンパ球幼若化反応 1 .6 (((( 刺 激 の な い 条 件 を 1 と す る 1 .4 リ ン 1 .2 パ 球 幼 若 1 .0 化 1 .0 % 梅 酢 区 対照区 )))) 0 .8 0 .6 40μ g/m l 80μ g/m l ※数値の大きい方が免疫応答が活性化されている。 (4) 官能検査での好評価 10~50代の135名の試食で対照区と比較したところ、特に香り、味について良 好な成果が得られました。 - 11 - まとめ ☆脱塩濃縮梅酢を利用した飼育について 採卵鶏の場合 ・採卵鶏用飼料1トンあたり 0.7kg(0.07%)~1.4kg(0.14%)の脱塩濃縮梅酢を添 加したものを70日齢から給与する。 ・脱塩濃縮梅酢は粘稠性が高いため、最初に水で薄めて(5~10 倍)から混合する、 まず少量の飼料と混合してから残りの飼料とともに攪拌機にかける等均一に混ざ るように注意する。 ・飼料混合以外の飼養管理は通常どおりに行う。 ブロイラーの場合 ・ブロイラー用飼料1トンあたり 1.0kg(0.1%)~10.0kg(1.0%)の脱塩濃縮梅酢を 添加したものを初生から給与する。 ・脱塩濃縮梅酢は粘稠性が高いため、最初に水で薄めて(5~10 倍)から混合する、 まず少量の飼料と混合してから残りの飼料とともに攪拌機にかける等均一に混ざ るように注意する。 ・飼料混合以外の飼養管理は通常どおりに行う。 ☆期待される効果 採卵鶏の場合 ・産卵性能の向上:産卵率の向上、商品化された産卵個数の増加など ・飼料効率の向上 ・強健性(免疫性)の向上:生存羽数の増加 ・卵質の向上:ハウユニットの増加、維持 ・鶏卵への移行物質の増加:葉酸、パテトン酸などの有用物質含量の増加 ・鶏卵の食味性の向上 ・肝臓の代謝性の亢進:肝臓中の脂肪含量の減少 ブロイラーの場合 ・保水性の向上(ドリップの減少) ・歯ごたえの向上(剪断力価の上昇) ・強健性(免疫性)の向上 ・鶏肉の食味性の向上(特に香り、味) - 12 - - 13 -