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顔ならびに照明の向きが表情認知におよぼす影響

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顔ならびに照明の向きが表情認知におよぼす影響
日心第70回大会(2006)
顔ならびに照明の向きが表情認知におよぼす影響
○尾田政臣
(立命館大学 文学部)
Key words: 表情,方向,照明
目 的
顔の表情が観察角度によって異なることや,また照明の当た
り方によって顔から受ける印象が変化することは日常的に経
験している.文献[1]では 3 種の基本表情(微笑み,怒り,悲
しみ)に対して,3 種の方向から同時に撮影された顔写真(正
面顔,斜め顔,横顔)について表情の認識率を実験的に求め
た.その結果,基本表情であっても観察角度が異なると表情
は微妙に異なって捉えられていることが明らかになった.本
稿では,表情認知に対する顔の向きと照明の向きの影響を同
時に検討する.
方 法
被写体となる人に,表情を作ってもらい,顔を 5 種の異なる
角度から同時に撮影する.
その際照明も 4 方向に変化させた.
撮影映像を被験者に提示し,どのような表情に見えるかを評
価させた.その結果から,顔の向きと照明の向きが表情認知
に及ぼす影響を分析する.
刺激撮影:男女各 2 名を被写体として微笑み,怒り,偽りの
微笑み,偽りの怒り,無表情の 5 種の表情に対して,上(H),
正面(F),下(L),横(S)からの4照明条件のもとに,上(H,15°),
正面(F),下(L,15°),横(S),斜め(D,45°)からカメラで同時
撮影した.なお,照明条件ごとに上,正面,下,横カメラの
位置のすぐ下に昼色蛍光管(20w直管)を水平に配置した.4
被写体×5 表情×5 カメラ位置×4 照明位置=400 枚のカラー
写真を白黒写真に変換し,
顔の大きさにそろえて切り出した.
被験者:男性 7 名,女性 11 名の大学生・院生合計 18 名.
刺激提示:コンピュータの CRT に 8×8cm の写真を1枚ずつ提
示し 40~50cm の距離から評定させた.評定は各写真に対し,
怒り,嫌悪,恐怖,幸福,悲しみ,驚き,真実性の程度を 0
(最低)~10(最高)の 11 段階で評定させた.400 の刺激を
5 ブロックに分割し,被験者ごとにブロックをランダマイズ
して提示した.ブロック間に適宜休憩を取った.各ブロック
(80 刺激)の実験時間は約 20 分であった.
結 果
本報告では,実験結果の中から無表情顔に対する代表的な課
題についての分析結果を示す(表1).分析は分散分析を用い,
下位検定の水準は 5%とした.
1-1.怒り度評定に対するカメラ角度の影響
F(4,68)=2.58, p<0.05 で有意差あり.D>(L,F), S>F.
なお,括弧内は条件間に差がないことを示す.
1-2.怒り度評定に対する照明角度の影響
H
2.9
F
L
2.3
2.8
S
2.8
D
3.3
F(3,51)=1.47, p=0.23 で有意差なし.
1-3.怒り度評定に対するカメラ角度と照明角度の交互作用
F(12,204)=3.33, p<0.01 で有意差あり.(SL,DS,DH)>LL.
なお,連続するアルファベットはカメラ・照明条件を示し,
SL は下からの照明で横からの撮影をあらわす.
2-1.悲しみ度評定に対するカメラ角度の影響
F(4,68)=16.03, p<0.01 で有意差あり.H>(D,L,F)>S.
2-2.悲しみ度評定に対する照明角度の影響
F(3,51)=5.26, p<0.01 で有意差あり.(L,S,H)>F.
2-3.
悲しみ度評定に対するカメラ角度と照明角度の交互作用
F(12,204)=3.06, p<0.01 で有意差あり.
(DL,HL,LL,HF,HS,HH)>(LF,SF,SS)など.
3-1.真実度評定に対するカメラ角度の影響
F(4,68)=1.46, p=0.22 で有意差なし.
3-2.真実度評定に対する照明角度の影響
F(3,51)=1.98, p=0.14 で有意差なし.
3-3.真実度評定に対するカメラ角度と照明角度の交互作用
F(12,204)=1.42, p=0.16 で有意差なし.
考察とまとめ
•無表情顔の怒り度は斜め顔で最大になる.
•無表情顔の怒り度は下から照明が当たった顔を下から眺め
たときに最小となる.
•無表情顔の悲しみ度は上から見下ろすと最大となり,横から
眺めると最小となる.
•無表情顔に対する悲しみ度は正面からの照明で最小となる.
•無表情顔に対する悲しみ度は横からの照明が当たった横顔
で最小となる.
•無表情顔に対する真実度はカメラの角度,照明条件の影響を
受けにくい.
先行研究をまとめた文献[2]によると,上向きの顔は,幸福,
高慢,下向きの顔は屈辱,悲しみなどの表情として受け止め
られることを示している.本研究結果で上から撮影顔を下向
き顔とすると,悲しみ度が最大となり,また上向き顔に対し
ては怒り度が最小になるなど,カメラの上下方向の角度の影
響に関して整合性があると結果となっている.本研究結果で
はさらに,斜め方向から見た場合に怒り度が大きくなること
や,横からの照明で上から眺めた顔(HS)が最大の悲しみ度に
見えることなど,カメラと照明角度の交互作用を明らかにし
た.
引用文献
[1]尾田,顔の角度が表情認知に
表1.無表情顔に対する怒り,悲しみ,真実度の評定値
及 ぼ す 影 響 , 信 学 技 報
怒り度の評定値
悲しみ度の評定値
真実度の評定値
HIP2004-105,pp.31-36, 2005.3.
平均 H
平均 H
平均
[2]A. Mignault, A. Chaudhuri,The
F
L
S
F
L
S
F
L
S
many faces of a neutral face: Head
2.1 2.5 3.0
2.6 3.9 3.4 3.4 4.3
3.8 5.9 6.0 6.0 6.2
6.0
tilt and perception of dominance
2.4 2.6 2.5
2.5 2.7 2.1 2.6 2.9
2.6 5.5 5.4 5.2 6.0
5.5
and emotion, Journal of Nonverbal
3.0 1.8 2.5
2.5 2.9 1.9 3.4 2.9
2.8 5.7 5.2 5.6 6.0
5.6
Behavior,
Vol.27,
Iss.
2,
3.0 2.9 2.8
2.9 2.1 1.9 2.3 1.6
2.0 5.7 6.0 5.4 5.7
5.7
pp.111-132, 2003.
2.5 3.1 3.1
3.0 3.0 2.7 3.5 2.4
2.9 6.0 5.6 5.7 6.0
5.8
平均
2.8
2.6
H
2.6
2.8
2.9
2.4
3.0
2.8
5.8
5.7
5.6
6.0
(ODA Masaomi)
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