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 平 成 15 年 度
米国における対日貿易問題に関する情報収集事業
報
告
書
-工作機械-
平成16年3月
社団法人 日本機械工業連合会
社団法人 日本工作機械工業会
序
戦 後 の わ が 国 の 経 済 成 長 に 果 た し た 機 械 工 業 の 役 割 は 大 き く 、ま た 機 械 工 業 の 発
展 を 支 え た の は 技 術 開 発 で あ っ た と 云 っ て も 過 言 で は あ り ま せ ん 。ま た 、そ の 後 の
公 害 問 題 、石 油 危 機 な ど の 深 刻 な 課 題 の 克 服 に 対 し て も 、機 械 工 業 に お け る 技 術 開
発 の 果 た し た 役 割 は 多 大 な も の で あ り ま し た 。し か し 、近 年 の 東 ア ジ ア の 諸 国 を 始
め と す る 新 興 工 業 国 の 発 展 は め ざ ま し く 、一 方 、わ が 国 の 機 械 産 業 は 、国 内 需 要 の
停 滞 や 生 産 の 海 外 移 転 の 進 展 に 伴 い 、勢 い を 失 っ て き つ つ あ り 、将 来 に 対 す る 懸 念
が台頭しております。
こ れ ら の 国 内 外 の 動 向 に 起 因 す る 諸 課 題 に 加 え 、環 境 問 題 、少 子 高 齢 化 社 会 対 策
等 、今 後 解 決 を 迫 ら れ る 課 題 が 山 積 し て い る の が 現 状 で あ り ま す 。こ れ ら の 課 題 の
解 決 に 向 け て 従 来 に も ま し て ま す ま す 技 術 開 発 に 対 す る 期 待 は 高 ま っ て お り 、機 械
業 界 あ げ て 取 り 組 む 必 要 に 迫 ら れ て お り ま す 。わ が 国 機 械 工 業 に お け る 技 術 開 発 は 、
戦 後 、既 存 技 術 の 改 良 改 善 に 注 力 す る こ と か ら 始 ま り 、や が て 独 自 の 技 術・製 品 開
発 へ と 進 化 し 、近 年 で は 、科 学 分 野 に も 多 大 な 実 績 を あ げ る ま で に な っ て き て お り
ます。
こ れ か ら の グ ロ ー バ ル な 技 術 開 発 競 争 の 中 で 、わ が 国 が 勝 ち 残 っ て ゆ く に は こ の
力 を さ ら に 発 展 さ せ て 、新 し い コ ン セ プ ト の 提 唱 や ブ レ ー ク ス ル ー に つ な が る 独 創
的 な 成 果 を 挙 げ 、世 界 を リ ー ド す る 技 術 大 国 を 目 指 し て ゆ く 必 要 が 高 ま っ て お リ ま
す 。幸 い 機 械 工 業 の 各 企 業 に お け る 研 究 開 発 、技 術 開 発 に か け る 意 気 込 み に か げ り
は な く 、方 向 を 見 極 め 、ね ら い を 定 め た 開 発 に よ り 、今 後 大 き な 成 果 に つ な が る も
のと確信いたしております。
こ う し た 背 景 に 鑑 み 、当 会 で は 機 械 工 業 に 係 わ る 技 術 開 発 動 向 等 の 補 助 事 業 の テ
ー マ の 一 つ と し て 社 団 法 人 日 本 工 作 機 械 工 業 会 に「 米 国 に お け る 対 日 貿 易 問 題 に 関
する情報収集事業」を調査委託いたしました。本報告書は、この研究成果であり、
関係各位のご参考に寄与すれば幸甚であります。
平成16年3月
社団法人
会
長
日本機械工業連合会
相 川 賢 太 郎
序
本調査研究事業は、日本自転車振興会から機械工業振興資金の補助により社団法人日本
機械工業連合会の受注を受けて、当工業会が受託調査した「米国における対日貿易問題に
関する情報収集事業」の研究成果を取りまとめたものです。
米 国 工 作 機 械 市 場 に お い て 2003年 最 も 注 意 を 払 う べ き 問 題 と し て 、 米 国 下 院 軍 事 委 員 会
Hunter委 員 長 が 提 唱 し て い る バ イ ・ ア メ リ カ ン 法 が あ げ ら れ ま す 。 同 法 案 は 、 米 国 内 の 防
衛機器メーカーに対して米国製の工作機械の購入を奨励するための兵器システム契約入札
プ ロ セ ス に お け る イ ン セ ン チ ブ を 採 択 す る も の で 、 2003年 の 米 国 国 家 に お い て 物 議 を か も
し出しました。同法案が実行に移されれば、日本の基幹産業である工作機械の米国内での
販売に大きな影響を及ぼすことが考えられます。日本の工作機械業界に最も大きな影響を
与える市場であるだけに今後の進展を見守って行きたいと考えております。
一方、日本の工作機械の輸出は昨年から順調に伸び始め、このまま米国向け輸出が増加
し た 場 合 、 米 国 内 に お い て 貿 易 摩 擦 を 生 じ る 懸 念 が あ り ま す 。 工 作 機 械 分 野 は か つ て 、 NC
工 作 機 械 の 競 争 力 に 関 し て 米 国 と 我 が 国 に 格 差 が 生 じ た 結 果 、 1987年 か ら 1993年 ま で 輸 出
自主規制という措置が取られた背景があることから、景気上昇時においては、十分な情報
収集を行い、貿易摩擦を未然に防ぐ必要があります。
以上の背景を踏まえ、本事業では日米通商関係全般、工作機械分野の状況、最新の米国
工作機械産業と個別企業動向等に関しての調査及び情報の収集等、詳細にわたる分析を報
告書として取りまとめました。本報告書は、この研究成果であり、関係各位にいささかな
りともお役に立てば幸甚に存じます。
平成16年3月
社団法人 日本工作機械工業会
会 長
大
西
匡
目
次
事 業 の 実 施 要 領 ····················································································· 1
第1章
総 論 ························································································· 3
第2章
日 米 の 通 商 関 係 ········································································ 9
2.1 最 近 の 対 日 論 調 ·············································································· 9
2.2 日 米 通 商 関 係 ··············································································· 13
2.3 工 作 機 械 分 野 の 状 況 ······································································ 17
2.4 ま と め ························································································· 23
第3章
米 国 工 作 機 械 産 業 動 向 ···························································· 27
3.1 産 業 概 況 ······················································································ 27
3.2 工 作 機 械 企 業 動 向 ········································································· 39
3.4 ま と め ························································································· 53
第 4 章 米 国 の 輸 出 管 理 政 策 動 向 ·························································· 58
4.1 連 邦 政 府 の 姿 勢 ············································································ 58
4.2 工 作 機 械 輸 出 規 制 を 巡 る 動 向 ·························································· 60
4.3 ま と め ························································································· 62
参 考 資 料 ······························································································ 64
事 業 の実 施 要 領
1.事 業 の目 的
我が国の工作機械の輸出は、NC工作機械を中心に米国市場において比較的大きな市
場 を 占 め る よ う に な り 、そ の 戦 略 的 重 要 性 か ら 国 際 間 問 題 を 引 き 起 こ す 可 能 性 を 内 包 し
て い る 。世 界 的 に 産 業 構 造 変 化 が 進 展 す る 中 、国 際 競 争 は ま す ま す 激 化 し つ つ あ り 、引
き続き市場動向に注意を向けておくことが必要である。
我が国の基幹産業である工作機械産業が安定的な成長を持続するためには、米国との
協 調 体 制 を 確 立 す る 必 要 が あ り 、米 国 政 府 、議 会 及 び 業 界 の 動 向 、知 的 財 産 を 巡 る 係 争
等の情報を入手し、協調体制の確立に資することを目的とする。
2.事 業 の内 容
本事業では、下記事業項目の下、日米通商関係と米国工作機械分野の状況、工作機械
産 業 に 対 す る 政 府 施 策 、そ の 他 関 連 立 法 、法 改 正 等 に 関 す る 情 報 、及 び 米 国 工 作 機 械 産
業 及 び 個 別 企 業 動 向 、ま た 、必 要 に 応 じ て 、安 全 保 障 貿 易 管 理 、特 許( 知 的 財 産 )係 争
等に関する情報を現地専門機関を通じて収集する。
収集されたこれらの情報について、詳細な分析・検討を行う。
(1)日 米 通 商 関 係 に 関 す る 情 報 収 集
現地専門機関を通じて、米国の対日論調、日米通商関係全般、工作機械分野の状
況、並びに米国政府の施策、その他関連立法・法改正等に関する情報を収集する。
収集された情報を社団法人日本工作機械工業会において詳細に分析・検討する。
(2)米 国 工 作 機 械 産 業 動 向 等 に 関 す る 情 報 収 集
現 地 専 門 機 関 を 通 じ て 、最 新 の 米 国 工 作 機 械 産 業 及 び 個 別 企 業 動 向 並 び に 、必 要
に応じて米国の工作機械輸出規制を巡る動向等に関する情報を収集する。
収集された情報を社団法人日本工作機械工業会において詳細に分析・検討する。
3.事 業 の実 施 方 法
上記情報については、主として米国専門機関が収集に当り、事務局が分析する。
- 1 -
4.事 業 のタイム・スケジュール
半 期 別 ・月 別
項
目
上
15/
4
5
半
6
期
7
①日米通商関係に関する
情報収集
②米国工作機械産業動向
等に関する情報収集
③報告書の作成・公表
- 2 -
下
8
9
10
11
12
半
期
16/
1
2
3
第1章
総
論
本 報 告 書 は 、米 国 に お け る 対 日 貿 易 問 題 に 関 し 、幅 広 く 情 報 を 収 集 し 取 り ま と め た も
のである。
第 2章 ( 日 米 の 通 商 関 係 ) で は 、 最 近 の 対 日 論 調 、 日 米 通 商 関 係 、 工 作 機 械 分 野 の 状
況 、 第 3章 ( 米 国 工 作 機 械 産 業 動 向 ) で は 、 米 国 を 含 む 世 界 の 経 済 動 向 ・ 展 望 、 米 国 工
作 機 械 の 概 況 、産 業 展 望 、工 作 機 械 企 業 動 向 、第 4章( 米 国 の 輸 出 管 理 政 策 動 向 )で は 、
米 国 の 輸 出 管 理 を 巡 る 業 界 の 姿 勢 及 び 連 邦 政 府 の 姿 勢 に つ い て 概 観 し て き た 。い ず れ も 、
日 米 間 の 貿 易 関 係 、と り わ け 工 作 機 械 分 野 に お け る 関 係 、世 界 貿 易 と の 関 わ り を 論 ず る
際 に 欠 く こ と の で き な い 要 素 で あ る 。各 章 に お い て は 出 来 る 限 り 詳 細 な 分 析 を 行 っ て き
た。以下は各章の論点並びに提言等を総論としてまとめたものである。
【日米の通商関係】
第 2章 で は 、 日 米 の 通 商 関 係 と 題 し 、 最 近 の 対 日 論 調 、 日 米 通 商 関 係 、 工 作 機 械 分 野
の状況について概観した。
最 近 の 日 米 関 係 を 概 観 す る と 、対 日 論 調 で は 2003年 上 期 、日 本 政 府 の 銀 行 救 済 の た め
に 公 的 資 金 を つ ぎ 込 ん だ 問 題 及 び 、日 本 政 府 の 円 売 り 介 入 に も 拘 ら ず 、ド ル と ユ ー ロ が
円 に 対 し て 下 げ て い る 問 題 に つ い て が 紙 面 を に ぎ わ せ て い る 。 ま た 9 月 2 6 日 付 Wall
Street Journalは 、 日 本 の 輸 出 企 業 が 数 年 前 と 比 べ 円 高 へ の 免 疫 力 を 高 め て い る と 報 じ
た 。 同 記 事 に よ れ ば 、「 日 本 の 輸 出 業 者 、 依 然 と し て 円 の 上 昇 を 抑 え る た め 記 録 的 な ペ
ー ス で ド ル を 購 入 し て い る 。し か し 、日 本 企 業 は 自 ら の 努 力 で 為 替 変 動 に よ る 損 失 に 耐
え ら れ る 態 勢 を 整 え て き て い る 。そ れ は 主 に 生 産 を 米 国 や 他 の オ フ シ ョ ア 市 場 へ と 移 動
す る 努 力 を 加 速 す る こ と で 対 応 し て い る 。」 と 書 か れ て い る 。 為 替 変 動 に よ る 影 響 を 減
らし始める日本企業の様子が伺える。
2003年 下 期 の 対 日 論 調 で は 、日 本 経 済 の 成 長 率 の 予 想 を 上 回 る 成 長 率 に つ い て 報 じ る
記 事 が 見 ら れ た 。 ま た 12月 5日 付 の Wall Street Journalは 、 日 本 の 製 造 業 の 大 企 業 は 円
高 を 予 測 し て い る に も 拘 ら ず 、今 後 の 景 気 の 見 通 し に 積 極 的 で あ る と 報 じ て 、日 本 経 済
の 更 な る 回 復 の 証 拠 と し て い る 。日 本 の 回 復 の 兆 し と 強 気 の 見 通 し を 論 じ た 記 事 が 目 立
った。
さ て 、2003年 の 米 国 政 府 の 動 向 で 最 も 日 本 の 製 造 業 に 影 響 が あ る と 思 わ れ た も の と し
て は 、バ イ・ア メ リ カ ン 法 案 が 議 会 で 提 案 さ れ た こ と で あ ろ う 。本 章 で は 、同 法 案 を 巡
る動きを追ってみた。
こ の 法 案 は 、 2004年 下 院 国 防 予 算 執 行 承 認 法 案 H.R.1588に 含 ま れ て い る 拡 大 「 バ イ ・
- 3 -
ア メ リ カ ン 」規 定 の こ と で あ る が 、基 本 的 に 国 防 総 省 に 対 し て 、す べ て の 必 需 兵 器 シ ス
テ ム か ら 購 入 す る こ と を 強 制 す る 一 方 、そ れ ら 兵 器 シ ス テ ム の メ ー カ ー に 対 し て は 、す
べてのコンポーネントを米国コンテント最低70%の工作機械を使って加工すること
を規定している。
同 法 案 が 可 決 さ れ れ ば 、米 国 内 で 工 作 機 械 を 販 売 す る 日 本 メ ー カ ー に と っ て 重 大 な 局
面を迎えることになるため非常に危惧された。
し か し な が ら 、上 院 の 承 認 を 得 る こ と が で き な か っ た こ と か ら 、同 法 案 可 決 に は 至 ら
ず 、最 終 的 な 2004年 会 計 年 度 国 防 予 算 支 出 法 案 か ら は 、大 幅 に バ イ ア メ リ カ ン 規 定 を 削
減した。
ハ ン タ ー 下 院 軍 事 委 員 長 は 、こ の 代 案 と し て 産 業 基 盤 能 力 研 究 を 創 出 し た 。こ の プ ロ
グ ラ ム は 、防 衛 関 係 請 負 業 者 に 米 国 製 工 作 機 械 を 使 用 さ せ る こ と を 盛 り 込 ん だ 刺 激 策 で
ある。
さ ら に 、米 議 会 は ハ ン タ ー 氏 主 導 の 下 、米 国 製 工 作 機 械 の 購 入 を 奨 励 す る た め の 兵 器
シ ス テ ム 契 約 入 札 プ ロ セ ス に お け る イ ン セ ン チ ブ を 採 択 す る 一 方 、 新 た な 工 作 機 械 R&D
基金を許可した。
こ れ ら の 動 き が 今 後 業 界 に 与 え る 影 響 は 未 知 数 で あ る こ と か ら 、引 き 続 き 動 向 を 見 守
っていきたい。
工 作 機 械 産 業 の 業 況 を 見 る と 、 2003年 の 受 注 累 計 は 18億 413万 ド ル と 前 年 2002年 の 受
注 累 計 19億 2,696万 ド ル よ り 6.4%減 少 と い う 結 果 に な っ た 。
2001年 の テ ロ 後 、景 気 の 減 速 が さ ら に 加 速 を 早 め 、2002年 に は イ ラ ク 問 題 に よ り 米 国
経済の先行きを不確実にしたことが、さらなる回復の遅れを招いたとも言える。
米 国 工 作 機 械 メ ー カ ー は 、議 会 に 対 し 、設 備 購 入 費 の 経 費 計 上 枠 を 拡 大 す る よ う 議 会
に 要 請 し て い る 。こ れ に よ り 、米 国 製 造 業 者 の 過 半 数 が 使 用 し て い る 6 0 年 代 、7 0 年
代の機械の買い替えを促そうとする政策である。
2003年 に 入 り 、イ ラ ク 戦 争 の 終 焉 と 景 気 刺 激 策 に よ り 、景 気 の 低 迷 は 底 を 打 ち 回 復 に
向かう様子が見られるようになった。
業 界 団 体 AMT( 米 国 製 造 技 術 工 業 協 会 )で は 、政 府 関 係 委 員 会 が 立 法・行 政 上 、AMT
に と り 最 も 重 要 な 案 件 に つ い て 検 討 し 、優 先 課 題 と し て 取 り ま と め て い る が 、そ の 活 動
報 告 に よ れ ば 、米 国 工 作 機 械 業 界 の 当 面 の 関 心 は 、30% 経 費 処 理 許 容 措 置 と 有 効 期 限 の
延 長 、 相 続 税 の 恒 久 的 廃 止 、 輸 出 政 策 、 R & Dを 主 と す る 製 造 技 術 政 策 、 中 小 製 造 業 者
への支援、健全なドル政策等があげられている。
ま た 米 議 会 の 公 聴 会 で AMTを 代 表 し て 、 Extrude Hone社 の Rhoades社 長 が 米 国 工 作 機 械
産 業 の 窮 状 を 訴 え る な ど 、政 府 に 対 し て は 積 極 的 な 働 き か け を し て い る 様 子 を 概 観 し た 。
対 日 関 係 で は 、 政 府 関 係 委 員 会 に お け る 最 優 先 事 項 に 2000 年 4 月 ま で は 入 っ て い た 、
- 4 -
「 日 本 市 場( 日 本 及 び 在 米 日 系 自 動 車・自 動 車 部 品・そ の 他 ト ラ ン ス プ ラ ン ト )へ の ア
ク セ ス 改 善 」と い う 項 目 は 見 ら れ な か っ た 。こ の こ と か ら 、米 国 業 界 に お い て 、日 本 問
題 は 当 面 の 取 組 課 題 か ら 外 れ た も の と 見 ら れ る が 、同 委 員 会 活 動 を 含 め 米 国 業 界 の 動 向
には引き続き注意していく必要があろう。
さ て 、2003年 、工 作 機 械 を 巡 っ て は 日 米 間 に 特 別 の 問 題 は 発 生 し な か っ た が 、バ イ ア
メ リ カ ン 法 問 題 等 油 断 で き な い 動 き が あ る こ と は 否 め な い 。無 用 な 摩 擦 を 事 前 回 避 す る
た め 、工 作 機 械 を 含 む 個 別 業 界 が 米 国 内 に 早 期 警 戒 シ ス テ ム を 整 備 し て お く こ と は 有 効
で あ る 。早 期 警 戒 シ ス テ ム と は 具 体 的 に は 、米 国 の 業 界 、政 府 、議 会 筋 と 長 期 に わ た り
高 い 信 頼 関 係 を 有 す る 者 と の 関 係 を 築 き 、当 該 産 業 の 状 況 及 び 通 商 問 題 化 懸 念 等 に つ い
て 、極 め て 初 期 の 段 階 で 情 報 を 収 集 し 、適 切 な 対 策 を 講 じ る こ と で あ る 。一 方 、個 別 企
業 に お い て も 常 日 頃 よ り 、社 員 研 修 等 を 通 じ 現 地 商 慣 習 遵 守 の 重 要 性 に つ き 教 育 し 、誤
解 が 生 じ る こ と の な い 企 業 行 動 を と る 必 要 が あ る 。業 界 全 体 と し て は 、現 地 情 報 の 収 集
強 化 に 加 え 、各 国 の 同 業 者 団 体 と の 間 で 定 期 対 話 チ ャ ン ネ ル を 作 っ て お く と と も に 、世
界 の 工 作 機 械 業 界 の 共 通 課 題 解 決 の た め 積 極 的 に 協 力・協 調 し て い く 姿 勢 を 示 し 、ま た 、
日本の業界に関する正確な情報を積極的に発信・公開していく努力が必要であろう。
こ う し た 努 力 を も っ て し て も 摩 擦 発 生 の 可 能 性 は あ る た め 、摩 擦 が 惹 起 し た 際 、即 座
に 対 応 で き る よ う 、相 手 国 市 場 の 現 状 に つ い て 統 計 資 料 を 含 め 分 析・整 備 、さ ら に は 自
らの意見をポジションペーパーとして作成、常に更新しておくことが有益である。
工 作 機 械 産 業 は 、1987年 か ら 1993年 ま で 、対 米 工 作 機 械 輸 出 自 主 規 制 協 定( VRA)に
基 づ き 、輸 出 規 制 を 実 施 し た 歴 史 を 持 つ 。そ の よ う な 業 界 ゆ え に 、現 地 の 状 況 に 敏 感 で
あること、競争と協調の精神に基づき事業活動を行うことが大いに期待される。
【米国工作機械産業動向】
第 3章 で は 、 米 国 工 作 機 械 の 概 況 、 産 業 展 望 、 工 作 機 械 企 業 動 向 に つ い て 概 観 し た 。
米 国 経 済 は 、 第 3 四 半 期 の GDP( 国 内 総 生 産 ) が 年 率 5.0%か そ れ 以 上 の 成 長 率 と な る 模
様であり、第 4 四半期も、やや低下するものの、ほぼ同じ程度の成長率となる見込みが強
ま っ て お り 、イ ン フ レ な き 成 長 と い え る 。主 な 問 題 点 は 、2004 年 度 に お い て も 、こ の 高 い
成 長 率 を 維 持 で き る か 、 ま た は 成 長 率 が 年 率 4%を か な り 下 回 る の か 、 ひ ょ っ と す る と 3%
を す ら 下 回 る の か 、 と い う こ と で あ る 。 米 国 経 済 は 2002 年 と 2003 年 上 半 期 を 通 じ て 年 平
均 約 2.5%の 拡 大 を 示 し た 。
- 5 -
USTR は 、今 や 米 国 は WTO 体 制 の 下 で グ ロ ー バ ル な 自 由 化 の た め に 、相 互 的 か つ 地 域 的 な
FTA(Free Trade Agreement=自 由 貿 易 協 定 )の 選 択 肢 を 推 進 す る と 表 明 し た 。USTR の 論 拠 は 、
貿易自由化に賛成する国・地域と共に一つ一つ前進してゆくことが他の政府に対して、参
加するか自由化のメリットから除外されるリスクを負うか、という圧力を増すことになる
と い う 点 に あ る 。 よ り 多 く の 相 互 的 か つ 地 域 的 な FTA が 、 世 界 中 の 残 り の 諸 国 に 対 し て 参
加させる圧力になるというのが、この論拠であるが、どうもそれは弱々しく見える。一方
で は 、 EU は 米 国 が 「 地 域 主 義 」 (regionalism)と 「 相 互 主 義 」 (bilateralism)の 立 場 で よ
り 深 く 関 与 す る こ と を 歓 迎 し て い る が 、 そ れ は 、 過 去 何 十 年 に も わ た り 交 渉 し て き た EU
の多くの既存の協定に対して、より強い適法性を与えるからである。日本もまた、技術的
に ガ ッ ト ( GATT) 第 24 条 6 項 の 違 反 と な り 得 る 農 産 物 に つ い て 、「 例 外 扱 い 」 を 強 い る 隣
国との相互協定(二国間協定)に関して適法性を求めることが出来るであろう。
『米国工作機械企業動向』
2003年 、世 界 経 済 の 不 況 の 底 打 ち と 企 業 再 建 策 の 効 果 が 現 れ 始 め た こ と か ら 、過 去 数 年
の赤字から脱却して黒字決算となった企業が見られるようになった。
UNOVA 社 は 、2003 年 度 売 上 は 12 億 7,000 万 ド ル か ら 11 億 2,261 万 ド ル に 低 下 し 、純
利 益 は 前 年 の 利 益 240 万 ド ル 、 1 株 当 た り 0.04 ド ル 1,930 万 ド ル 、 1 株 当 た り 0.33 ド ル
の 損 失 に 転 落 し た 。継 続 事 業 の 営 業 損 益 は 4,370 万 ド ル の 利 益 を 計 上 し た が 、前 年 の 9,540
万 ド ル を 大 き く 下 回 っ た 。 決 算 に は 1,250 万 ド ル に 上 る 知 的 所 有 権 訴 訟 決 着 費 用 な ら び に
一 部 知 的 所 有 権 の 販 売 益 が 含 ま れ て い る 。な お 、2003 年 に お け る 製 品 な ら び に サ ー ビ ス 部
門 の 営 業 利 益 は 前 年 を 2,590 万 ド ル 上 回 っ た 。
Hardinge 社 の 2003 年 第 4 四 半 期 の 営 業 利 益 は 前 年 同 期 比 70 万 ド ル( 33% )増 の 280
万 ド ル と な り 、 通 年 ベ ー ス で も 280 万 ド ル 改 善 し 450 万 ド ル に 拡 大 し た 。 し か し 、 第 4 四
半 期 の 純 利 益 は 前 年 同 期 の 200 万 ド ル 、 1 株 当 た り 0.23 ド ル か ら 170 万 ド ル 、 1 株 当 た り
0.19 ド ル に 縮 小 し 、 通 年 で は 前 年 の 200 万 ド ル 、 1 株 当 た り 0.23 ド ル か ら 1,130 万 ド ル 、
1 株 当 た り 1.30 ド ル の 純 損 失 と な っ た 。
一 方 、 第 4 四 半 期 の 売 上 高 は 前 年 同 期 の 4,193 万 ド ル か ら 5,291 万 ド ル に 、 26% 拡 大 し
た。ただし、これは同社欧州子会社の売上をドル換算する際のユーロに対するドル安効果
が 反 映 し て お り 、2002 年 為 替 相 場 の 恒 常 ド ル に よ る 換 算 で は 18% 増 に 止 ま る 。通 年 ベ ー ス
で も 売 上 は 安 定 価 値 換 算 で 3% 伸 び た 。
Hurco 社 の 2003 年 度( 10 月 31 日 締 )の 決 算 は 46 万 2,000 ド ル 、1 株 当 た り 0.08 ド ル の
純 利 益 を 計 上 し 、 前 年 度 の 純 損 失 826 万 3,000 ド ル 、 1 株 当 た り 1.48 ド ル 、 か ら 黒 字 回 復
を 果 た し た 。 な お 、 第 4 四 半 期 は 57 万 4,000 ド ル 、 1 株 当 た り 0.10 ド ル の 純 利 益 と な り 、
- 6 -
前 年 同 期 の 176 万 ド ル 、 1 当 た り 0.32 ド ル の 純 損 失 か ら 大 き き 改 善 し た 。 同 社 で は 、 ユ ー
ロ に 対 す る ド ル 安 、第 4 四 半 期 の 大 幅 な 売 上 と サ ー ビ ス 手 数 料 収 入 の 伸 び 、過 去 18 ヵ 月 間
に 実 施 し た リ ス ト ラ の 効 果 等 が 黒 字 転 換 に 貢 献 し た と し て い る 。ち な み に 、2002 年 度 の 決
算 に は 383 万 8,000 ド ル の リ ス ト ラ 費 用 が 含 ま れ て い た 。
【米国の輸出管理政策動向】
第 4 章 で は 、米 国 の 輸 出 管 理 政 策 動 向 と 題 し 、米 国 連 邦 政 府 の 姿 勢 及 び 工 作 機 械 輸 出 規 制
を巡る動向について概観した。
米 国 製 造 技 術 工 業 協 会( AMT)の 政 府 関 係 委 員 会 で は 、輸 出 管 理 を 行 政 上 の 最 優 先 課 題 と
し て 2000年 6 月 以 降 、 取 り 上 げ て き た 。
ま た ブ ッ シ ュ 政 権 も 輸 出 管 理 法 を 延 長 す る な ど 、輸 出 管 理 政 策 に 対 す る 米 政 府 内 で の ウ
エイトの高さが伺える。また、長引くイラク戦争を受けて、安全保障上の問題の懸念材料
となりうる製品の取り締まり、および対テロ対策の意味合いでも、一層厳しくコントロー
ルをしていく政策が取られている。
2003年 9月 の 米 商 務 省 の Kenneth I. Juster産 業 ・ 安 全 保 障 担 当 次 官 の 半 導 体 な ら び に
半導体製造機器の中国と台湾に対する輸出管理問題に関する講演の内容を見ると、米国の
半導体機器メーカーにとって台湾は巨大市場になっており、また台湾と米国の緊密な世辞
関 係 か ら 台 湾 へ の 輸 出 が 安 全 保 障 問 題 に な る ケ ー ス は ほ と ん ど な く 、先 生 の 承 認 率 は 高 い 。
一方、現段階での中国市場における半導体生産における中国の世界シェアは今のところ小
さいが、今後急成長することが予測されている。
ところが、中国が主要な半導体生産国として台頭し、その半導体産業がグローバルな体
制 の 一 貫 と な っ て い る こ と が 、半 導 体 が 先 端 的 兵 器 シ ス テ ム の 中 核 に な っ て い る こ と か ら 、
米国にとってはジレンマであるという。中国軍組織関連のユーザーに対する管理大量製品
の輸出については、今後も拒否政策が続くであろう。
日本にとっても影響を及ぼすことが予測される中米自由貿易協定については、ブッシュ
政権に勢力バランスが傾いていることからその設立は難しくなってきている。
ま た 、民 主 党 の Levin下 院 議 員 は 、中 国 な ら び に 日 本 の 通 貨 捜 査 が 米 国 の 製 造 業 に 悪 影 響
を及ぼしているため、米国は通貨操作に反対する権利があると述べている。
一 方 、 米 国 内 の 貨 物 に 対 す る 対 テ ロ 対 策 で 2003年 に は 各 種 の 指 令 や ル ー ル が 敷 か れ た 。
11月 17日 、 米 輸 送 安 全 保 障 局 管 理 局 ( TSA: Transportation Security Administration)
が航空貨物の安全保障に関する新指令を発行した。新指令はテロリスト・グループが貨物
機を武器として利用することを意図している可能性があるとの報告を受けたもので、今後
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は米国を発着する貨物の空輸に当たる内外の輸送業者には取扱貨物の無作為検査を含む、
安全保障強化措置の実施が求められる。
米 国 土 安 全 保 障 省( DHS)は 11月 20日 、2002年 貿 易 法 の 下 で 必 要 な 事 前 マ ニ フ ェ ス ト ・
ルール最終案を議会に提出した。米国内の貨物の移動に関する告知用件としてのルール
を定めたものである。
以上、米国輸出管理政策は、政府、業界にとって重大な関心事であり、同盟国であ
る日本にも多大な影響が予想される。
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第2章
日米の通商関係
2.1 最 近 の 対 日 論 調
2.1.1 2003年 上 期
6 月 12日 付 の New York Times記 事「 日 本 政 府 、銀 行 救 済 に 165億 ド ル を 注 入 予 定 」は 、
日 本 政 府 が 公 的 資 金 の 注 入 に よ る り そ な 銀 行 の 救 済 を 決 め た と し て 、次 の よ う に 報 じ て
いる。
日 本 政 府 は 12日 、民 間 の 痛 み を 緩 和 す る た め 、企 業 に よ り 発 行 さ れ る 証 券 購 入 に 85億
ド ル 、り そ な 銀 行 を 救 済 す る た め 165億 ド ル 、計 250億 ド ル を 支 出 す る と 発 表 し た 。り そ
な 救 済 は 、数 千 社 の 中 小 企 業 に 融 資 し て い る 同 行 が 資 本 不 足 と な り 支 払 い 不 能 に 陥 る の
を 防 ぐ た め の 努 力 で あ る 。金 融 庁 関 係 者 は 、金 融 シ ス テ ム 全 体 に 関 わ る 著 し い リ ス ク が
あ る た め 、救 済 し た と 述 べ た 。一 方 、日 銀 は 今 後 3 年 間 、企 業 の 資 産 担 保 付 証 券 を 1 兆
円まで購入するとした。日銀が企業の債務証券購入に同意したのは初めてである。
一 方 、 同 日 付 の Washington Post記 事 「 日 本 政 府 、 企 業 の 銀 行 債 務 を 購 入 予 定 」 は 、
日 銀 が 中 小 企 業 の 銀 行 債 務 を 資 産 担 保 証 券 と し て 購 入 す る 旨 発 表 し た こ と に つ い て 、次
のように報じた。
日 銀 は ク レ ジ ッ ト ・ ク ラ ン チ( 金 融 の 極 端 な 逼 迫 )を 緩 和 す る た め 、中 小 企 業 が 銀 行
に 負 っ て い る 債 務 の 購 入 を 始 め る と 発 表 し た 。そ れ は 日 本 経 済 を 12年 来 の 不 振 か ら 脱 却
さ せ る こ と を 意 図 し た 緊 急 対 策 措 置 で あ る 。日 銀 は 約 86億 ド ル の 企 業 の 資 産 担 保 付 証 券
を 来 月 に も 購 入 し 始 め 、 2006年 3月 ま で 続 け る と し た 。 こ の 日 銀 の 新 政 策 は 驚 き で は な
か っ た 。4 月 の 政 策 会 合 の 最 後 に 、そ う し た 措 置 を 検 討 す る と し 、市 場 へ の イ ン パ ク ト
を 調 査 す る と 言 っ て い た か ら だ 。し か し 、そ う し た 予 測 が あ っ た に も 拘 ら ず ア ナ リ ス ト
た ち は 日 銀 が ジ ャ ン ク 債( 投 資 対 象 と し て 不 適 格 な 信 用 度 の 低 い 債 権 )ほ ど に リ ス ク の
高い証券にまで踏み込んで購入するとしたことに驚いている。
7 月 8 日 付 の Wall Street Journal記 事 「 日 本 政 府 、 6 月 に 大 量 円 売 り 介 入 も 、 デ ー
タ に は 現 れ ず 」は 、日 本 政 府 に よ る 円 安 誘 導 の た め の 介 入 に つ い て 、次 の よ う に 報 じ て
いる。
日 本 は 新 し い 戦 術 に よ る 円 安 誘 導 の た め の 介 入 を 行 っ て い る 。日 本 財 務 省 の た め ド ル
買 い 円 売 り を し て い る 銀 行 筋 ト レ ー ダ ー を 通 じ て の all-or-nothing介 入 と 呼 ば れ る こ
の 戦 術 は 、政 府 が 円 が 強 ま る の を 防 ぐ た め 激 し く 介 入 す る の を 可 能 と す る と 同 時 に 、多
くの介入が絵師府のデータに現れないよう防いでいる 。
旧 来 の 円 売 り 介 入 は 財 務 省 が 日 銀 を 通 じ て 民 間 銀 行 に 対 し 、財 務 省 の 指 定 し た 価 格 で
- 9 -
一 定 量 の ド ル 買 い 円 売 り を 要 請 す る 。そ の 意 向 を 受 け た 特 定 銀 行 は 市 場 で ド ル 買 い オ ー
ダーを出し、市場取引が完了したら財務省は当該銀行にドルと引き換えに円を支払う。
そ の 取 引 は 財 務 省 記 録 に 残 る 。新 し い 方 法 は 、あ る 銀 行 が 当 局 の た め ド ル 買 い 円 売 り を
している事実を他の銀行が察知するように仕向ける。他の銀行は便乗してドル買いし、
財 務 省 は ド ル を 強 め る 目 的 が 達 せ ら れ た ら 買 い 要 請 を 止 め る だ け 。そ の 結 果 、公 式 の 記
録 に 残 ら な い 。当 初 の 銀 行 は も は や 財 務 省 も 日 銀 も 取 引 に 関 わ っ て い な い た め 高 い 価 格
で ド ル を 売 る こ と で 利 益 を 得 ら れ る 。財 務 省 は 徹 底 介 入 す る か 、あ る 時 点 で オ ー ダ ー を
撤 回 す る こ と で 、全 力 介 入 か 無 介 入 の all-or-nothing介 入 を し て い る 。こ の テ ク ニ ッ ク
は 、通 貨 と レ ー ダ ー は 日 銀 か ら 介 入 指 示 が な く と も 、巨 額 取 引 が 行 わ れ て い れ ば 介 入 が
起 き て い る と し ば し が 認 識 す る こ と を 利 用 し て い る 。財 務 省 は 円 を 1 ド ル = 115円 ~ 120
円に維持しようとしているようだ。
8 月 21日 付 の Wall Street Journal記 事 「 日 本 政 府 の 明 ら か な 介 入 に も 拘 ら ず 、 ド ル
と ユ ー ロ は 円 に 対 し て 下 落 」は 、日 銀 の 円 安 誘 導 に も 拘 ら ず 、ド ル と ユ ー ロ が 円 に 対 し
て下げていることについて、次のように伝えている。
円高によって経済回復が失速するのを防ごうとした日本財務省の明らかな介入にも
か か わ ら ず ド ル と ユ ー ロ は 20日 、 円 に 対 し て 1 ヶ 月 来 の 安 値 を 更 新 し た 。
市 場 筋 に よ る と ニ ュ ー ヨ ー ク 外 為 市 場 で は 20日 、日 本 政 府 の 要 望 に 沿 っ て 行 動 し て い
る 日 銀 が 市 場 介 入 資 金 を 注 ぎ 込 ん だ 後 主 要 通 貨 で 注 目 さ れ た の は 円 だ っ た 。ロ ン ド ン を
拠 点 と す る ト レ ー ダ ー は 、ド ル が 一 時 、1 ド ル = 118円 を 下 回 り そ う に な っ た と き に“ 東
京 の ビ ッ グ ・ ネ ー ム ( 有 力 為 替 取 引 筋 )” を 通 じ て の “ 一 寸 し た ” 円 売 り が あ っ た ( 日
銀筋からの働きかけがあった)と報告している。
こ の 明 ら か な 介 入 は 即 座 に ド ル を 約 118円 30銭 ま で 押 し 戻 し た 。 し か し 、 そ の 介 入 が
本気に見えなかったことに勇気付けられてトレーダー達はドル売りに乗って日銀の決
意 を 試 し た 。今 度 は 日 銀 は 傍 観 し た こ と で 、ド ル と ユ ー ロ は 円 に 対 し て そ れ ぞ れ 1 ド ル
= 117円 81銭 、 1 ユ ー ロ = 130円 82銭 と 新 た な 1ヶ 月 来 の 安 値 を つ け た 。 そ し て 終 盤 で 神
経 質 と な っ た 市 場 は ド ル を 118円 29銭 よ り も 依 然 、ド ル 安・円 高 と な っ た 。ユ ー ロ も 131
円 35銭 に 回 復 し た が 、 こ れ も 前 日 の 131円 80銭 を 下 回 っ た 。
日 本 の 金 融 当 局 が 再 び 通 貨 市 場 に 介 入 し た と い う 事 実 は 驚 き で は な い 。日 本 は す で に
今 年 に 入 っ て こ れ ま で 数 十 億 ド ル を 介 入 に 使 っ て き て お り 、上 昇 を 始 め た 日 本 の 株 式 市
場 へ の 資 本 流 入 で 更 に 円 高 と な る の を 防 ご う と 懸 命 の 模 様 で あ る 。 Reusch
International社 ( ニ ュ ー ヨ ー ク ) の 上 級 市 場 ア ナ リ ス ト は 「 日 本 政 府 は 、 輸 出 が 経 済
回復の見通しに重要な役割を果たすため依然、円高を受け入れることには躊躇してい
る」とし「今回のようなひそかな介入が引き続き行われるだろう」と言っている。
ニ ュ ー ヨ ー ク の 日 本 の 投 資 機 関 の 上 級 ト レ ー ダ ー は 、 日 本 財 務 省 は ド ル が 117円 50銭
よ り も 下 落 す る こ と を 許 さ な い だ ろ う と 述 べ た 。ま た ニ ュ ー ヨ ー ク の 欧 州 銀 行 の チ ー フ
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デ ィ ー ラ ー は 、 次 の 大 き な ド ル の 円 に 対 す る テ ク ニ カ ル な サ ポ ー ト 水 準 は 1 ド ル = 117
円 75銭 だ と 述 べ た 。HSBC証 券( ロ ン ド ン )の 上 級 通 貨 エ コ ノ ミ ス ト は 、積 極 的 な 日 銀 介
入 を 招 く 分 岐 点 は さ ら に 低 い だ ろ う と し 、 今 年 5 月 に 日 銀 が 116円 レ ベ ル に な っ て か ら
ドル高・円安へと戻すために巨額を費やしたときのことを指摘している。
9 月 26日 付 の Wall Street Journal記 事「 円 高 被 害 の 管 理 術 を 実 践 す る 日 本 企 業 」は 、
日 本 の 輸 出 企 業 が 数 年 前 と 比 べ 円 高 へ の 免 疫 力 を 高 め て い る と し て 、次 の よ う に 報 じ て
いる。
日 本 政 府 は 、輸 出 業 者 を 円 高 か ら 守 る た め 最 大 限 の 努 力 を し て き て い る 。し か し 、日
本の大手製造業は僅か数年前よりも為替変動に免疫性を身につけてきている。
日本の大手エレクトロニクスや自動車企業の幹部たちが円高の脅威に脅かされたの
は さ ほ ど 昔 の こ と で は な い 。日 本 の 輸 出 業 者 は 依 然 と し て 円 の 上 昇 を 抑 え る た め 記 録 的
な ペ ー ス で ド ル を 購 入 し て い る 。し か し 、日 本 企 業 は 自 ら の 努 力 で 為 替 変 動 に よ る 損 失
に 耐 え ら れ る 態 勢 を 整 え て き て い る 。そ れ は 主 に 生 産 を 米 国 や 他 の オ フ シ ョ ア 市 場 へ と
移 動 す る 努 力 を 加 速 す る こ と で 対 応 し て い る 。今 年 の 円 上 昇 は 輸 出 利 益 を 削 減 す る だ ろ
う が 、そ の ダ メ ー ジ は 日 本 の 主 要 な 輸 出 企 業 の 自 動 車 メ ー カ ー や 消 費 者 エ レ ク ト ロ ニ ク
ス 企 業 に と っ て は 、さ ほ ど 深 刻 で は な い だ ろ う 。ト ヨ タ や 他 の 輸 出 企 業 は 海 外 で の 生 産
を拡大することで、すでに10年以上前から為替変動による影響を減らし始めており、
そ の スピードは 最 近 、 加 速 し て き て い る 。
2.1.2 2003年 下 期
11月 14日 付 の New York Times記 事 「 予 想 を 上 回 っ た 日 本 の 四 半 期 経 済 成 長 率 」 は 、 第
3四半期の経済成長率について、次のように報じている。
日 本 経 済 は 第 3 四 半 期 ( 7 - 9 月 期 )、 輸 出 と 設 備 投 資 が 約 2 年 来 始 ま っ て い た が 緩
慢 だ っ た 経 済 回 復 を 引 き 続 き 活 気 づ け る な か 、予 測 を 上 回 る 年 率 2 .2 % 成 長 と な っ た 。
第3四半期の国内総生産の成長率はエコノミストたちの予測していた約2倍だった
が 、 冷 夏 に よ り 消 費 者 支 出 が 抑 制 さ れ た た め 第 2 四 半 期 ( 4 - 6 月 期 ) の 年 率 3.5% 成
長(改定値)からは減少した。
し か し 、大 半 の 民 間 エ コ ノ ミ ス ト は 、日 本 経 済 は 第 4 四 半 期 に 勢 い を 増 し 、2004年 は
約 2.5% 成 長 と す る 最 近 の 日 銀 の 予 測 に 同 意 し て い る 。 こ の 自 信 は 、 日 本 の 輸 出 企 業 が
引 き 続 き 米 国 や 中 国 な ど の 市 場 で 売 り 上 げ 増 が 期 待 で き る と の 予 測 に 基 づ い て い る 。日
本の大手企業は自動車や電子機器や機械の需要に応じるため工場や設備に投資を増や
している。また企業は数年来、減らしてきた在庫を再び積み増している。
第 3 四 半 期 は 年 率 2 .2 % の 緩 や か な 成 長 を 遂 げ た こ と で 当 面 、小 泉 首 相 へ の 圧 力 を
避 け る の に 十 分 だ ろ う も し 経 済 成 長 が も っ と 減 速 し て い れ ば 、議 員 た ち は 小 泉 氏 に 対 し
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て 財 政 赤 字 を 抑 制 す る 公 約 を 捨 て 、経 済 を 刺 激 す る た め に 更 な る 対 策 を と る よ う 圧 力 を
か け て い る だ ろ う 。日 銀 は 既 に 緩 い 金 融 政 策 を い っ そ う 緩 和 す る よ う 要 求 さ れ て い る だ
ろう。
投 資 家 は 、 民 間 ア ナ リ ス ト が 予 測 し た 年 率 1.3% 成 長 よ り も 良 い 第 3 四 半 期 成 長 率 を
歓 迎 し た 。第 3 四 半 期 は 輸 出 と 設 備 投 資 の 伸 び が 再 び 寄 与 し た 。し か し 、第 2 四 半 期 ほ
ど で は な く 設 備 投 資 は 年 率 11.7% 、輸 出 は 11.5% 成 長 だ っ た 。一 方 、経 済 の 55% を 占 め
る 消 費 者 支 出 は 0.2% 成 長 に 止 ま っ た 。 公 共 投 資 は 小 泉 首 相 の 緊 縮 計 画 に 沿 っ て 変 化 な
かった。
ド レ ス ナ ー・ク ラ イ ン オ ー ト・ワ ッ サ ー ス タ イ ン 証 券 の エ コ ノ ミ ス ト 、城 田 修 司 氏 は
「 第 3 四 半 期 の 弱 さ の 多 く は 消 費 者 支 出 に あ る 」と 指 摘 。そ れ は 日 本 の 経 済 拡 大 が 依 然
と し て 輸 出 、ひ い て は 海 外 の 消 費 者 に 大 き く 依 存 し て い る こ と を 示 し て い る 。そ れ と 対
照的に日本の消費者は高い失業率や高まる医療保険や年金のコストに直面して依然慎
重だ。
エ コ ノ ミ ス ト た ち は 、消 費 者 支 出 が 増 加 し な か れ ば 日 本 の 成 長 は 抑 制 さ れ 、経 済 は 海
外の出来事に左右されるという脆弱な体質のままだと言っている。日本の経済回復は、
企 業 の 海 外 収 益 を 損 な っ て い る ド ル 安・円 高 と い う 障 害 に も 直 面 し て い る 。ま た 円 高 は
輸 入 品 価 格 を 下 げ 、企 業 に と っ て 製 品 の 値 上 げ を よ り 困 難 と す る こ と で 、日 本 の 慢 性 的
デフレを強めることにもなる。
12月 5日 付 の Wall Street Jornal記 事 「 米 政 府 、 日 本 の 経 済 成 長 に 楽 観 的 」 は 、 最 近
の日本経済に関するブッシュ政権の見方について、次のように報じている。
ブ ッ シ ュ 政 権 は 、日 本 経 済 が 10年 余 の 不 振 の あ と つ い に 峠 を 越 し た と 見 て い る 。テ イ
ラ ー 財 務 次 官( 国 際 問 題 担 当 )は ニ ュ ー ヨ ー ク の ジ ャ パ ン・ソ サ エ テ ィ で の 5 日 の 講 演
で 、小 泉 政 権 の 市 場 改 革 と 日 銀 の マ ネ ー サ プ ラ イ 拡 大 が 日 本 経 済 に 勢 い を も た ら す こ と
を 促 し た と す る だ ろ う 。そ の 原 稿 は「 持 続 的 か つ 力 強 い 経 済 成 長 に 向 け て 着 々 と 積 み 上
げ ら れ つ つ あ る 」「 日 本 を ウ ォ ッ チ し て い る 多 く の 人 々 は 依 然 慎 重 の よ う で 、 か つ て の
1996年 と 2000-2001年 の 回 復 は 短 命 だ っ た こ と を 忘 れ て い な い 。
し か し 、幸 い に 現 在 の 回 復 は よ り 持 続 的 と な る こ と が 示 唆 さ れ て い る 」と し た 。同 氏
は 、デ フ レ と 戦 う た め の 日 銀 の マ ネ ー サ プ ラ イ 拡 大 の 積 極 策 が 報 わ れ 始 め て い る 証 拠 が
あ る と し て 、 生 鮮 食 品 を 除 く 10月 消 費 者 物 価 が 5年 ぶ り に 前 年 水 準 を 上 回 っ た と し た 。
他 の 楽 観 的 理 由 と し て 同 氏 は 、日 本 当 局 が り そ な 銀 行 や 足 利 銀 行 な ど 脆 弱 な 銀 行 に 断 固
た る 措 置 を と る 意 欲 を 示 し 、日 本 企 業 が コ ス ト や 債 務 を 削 減 す る 動 き を み せ 、政 府 も 規
制 緩 和 の 努 力 を 強 め て い る こ と を 指 摘 し て い る 。し か し 、同 氏 は「 日 本 経 済 の 見 通 し は
依 然 、輸 出 に 大 き く 依 存 し て い る 。持 続 的 回 復 の た め に は 、国 内 支 出 が 所 得 と と も に 成
長する、より均衡のとれ他成長が必要だ」と忠告している。
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12月 15日 付 の Wall Street Journal記 事「 円 高 で も 抑 え ら れ な い 日 本 経 済 の 回 復 」は 、
12日 の 日 銀 短 観 に つ い て 、 次 の よ う に 報 じ て い る 。
日 銀 の 12月 の 企 業 短 期 経 済 観 測 調 査( 短 観 )に よ る と 、日 本 の 製 造 業 の 大 企 業 は 今 会
計 年 度 に 円 高 と な る こ と を 予 測 し て い る に も か か わ ら ず 、今 後 の 景 気 の 見 通 し に 、よ り
積 極 的 だ っ た 。こ う し た 引 き 続 く 信 頼 度 の 改 善 は 、最 近 の 大 幅 な 円 上 昇 が 輸 出 に 悪 影 響
を及ぼすとの懸念にもかかわらず、日本経済が回復している更なる証拠を示している。
日 銀 短 観 に よ る と 、製 造 業 で の 大 企 業 の 業 況 判 断 指 数 は 前 回 の 9 月 調 査 時 の プ ラ ス 1
か ら プ ラ ス 1 1 へ と 1 0 ポ イ ン ト 改 善 し 、2 四 半 期 連 続 で 景 況 感 が「 良 い 」と 答 え た 企
業 の 割 合 が 「 悪 い 」 と 答 え た 企 業 の 割 合 を 上 回 っ た 。 プ ラ ス 1 1 と い う 指 数 は 1997年 6
月以来の高い水準である。
し か し 、製 造 業 で の 大 企 業 は 今 後 の 四 半 期 に つ い て よ り 楽 観 的 で な く 、来 年 3 月 に は
業 況 判 断 指 数 は プ ラ ス 8 に な る と 予 測 し て い る 。そ れ は 、円 高 予 測 が 今 後 数 ヶ 月 の 景 気
見 通 し に 影 響 し 始 め る 可 能 性 を 示 し て い る 。 製 造 業 で の 大 企 業 は 来 年 3月 ま で の 今 会 計
年 度 の 円 相 場 を 平 均 で 1 ド ル = 1 1 4 円 6 8 銭 と 予 測 し て お り 、 9 月 調 査 時 の 117円 99
銭 の 予 測 か ら 上 昇 し た 。 10月 か ら の 今 会 計 年 度 下 半 期 の 円 相 場 は 平 均 で 1 ド ル = 111円
40銭 と 予 測 し て お り 、9月 調 査 時 の 117円 53銭 の 予 測 か ら 上 昇 し た 。し か し 、そ れ は 最 近
の ス ポ ッ ト 市 場 の 水 準 よ り も 依 然 、か な り の 円 安 予 測 で あ る 。11日 、ニ ュ ー ヨ ー ク 外 為
市 場 で は 1 ド ル = 108円 で 取 引 さ れ た 。
製 造 業 で の 大 企 業 は 、 今 会 計 年 度 の 輸 出 売 り 上 げ は 前 年 比 1.5% 増 加 す る と 予 測 し て
お り 、 9 月 調 査 時 の 1.7% 減 少 の 予 測 か ら 改 善 し た 。 し か し 、 今 会 計 年 度 の 税 引 前 利 益
は 14.1% 増 と 予 測 し て お り 、 9 月 調 査 時 の 15.4% 増 の 予 測 か ら は 下 げ て い る 。
非製造業での大企業は主に海外よりも国内で操業しているが、その業況判断指数は、
9 月 調 査 時 の マ イ ナ ス 1 3 か ら マ イ ナ ス 9 へ と 4 ポ イ ン ト 改 善 し た 。 来 年 3月 に は マ イ
ナス7へと改善すると予測している。
中 小 企 業 の 設 備 投 資 計 画 は 、1996年 以 来 初 め て 積 極 的 と な っ て お り 、今 会 計 年 度 に は
前 年 比 1.2% 増 や す 計 画 で あ る 。
製 造 業 と 非 製 造 業 、大 企 業 と 中 小 企 業 を 合 わ せ た 全 体 的 な 予 測 で は 、今 会 計 年 度 利 益
は 平 均 で 前 年 比 1 0 % 増 と 予 測 し て お り 、9 月 調 査 時 の 10.4% 増 の 平 均 予 測 か ら は 若 干
下げた。
2.2 日 米 通 商 関 係
2.2.1 概
況
2003 年 1-3 期 の 実 質 GDP 成 長 率 は 前 期 比 年 率 1.9% と な り 、 2 期 連 続 で 1% 台 の 低 い
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伸 び と な っ た 。 4 月 の 鉱 工 業 生 産 は 前 月 比 0.5% 減 と な り 、 2 ヶ 月 連 続 で 減 少 し た 。 た
だ し 、 5 月 の 製 造 業 の ISM 指 数 は 49.4 と な り 、 5 ヶ 月 振 り に 上 昇 し た 。 製 造 業 活 動 の
拡 大 ・ 縮 小 の 分 岐 点 で あ る 50 を 下 回 っ て は い る が 、 生 産 の 下 げ 止 ま り を 示 唆 す る 動 き
となった。
2003 年 4-6 期 に 入 る と 実 質 GDP 成 長 率 は 前 期 比 年 率 3.1% と な り 、 速 報 値 の 2.4% か
ら 上 方 修 正 さ れ た 。 生 産 に も 改 善 の 兆 し が み ら れ る 。 7 月 の 鉱 工 業 生 産 は 前 月 比 0.5%
増 と な り 、 2003 年 1 月 ( 同 0.7% 増 ) 以 来 の 高 い 伸 び と な っ た 。 ま た 、 8 月 の 製 造 業
ISM 指 数 54.7 と な り 、 2 ヶ 月 連 続 で 50 を 上 回 っ た 。
さ ら に 2003 年 7-9 期 に 入 り 景 気 は 急 速 に 上 昇 し た 。 実 質 GDP 成 長 率 は 前 期 比 年 率
8.2% と な り 、 四 半 期 の 成 長 率 と し て は 1984 年 1-3 期 ( 同 9.0% ) 以 来 の 高 成 長 と な っ
た 。ま た 、生 産 も 回 復 の 動 き が 続 き 、10 月 の 鉱 工 業 生 産 は 前 月 比 0.2% 増 と な り 、4 ヶ
月連続で前月を上回った。
こ う い っ た 上 向 き の 指 標 を 受 け て 、米 国 経 済 は 楽 観 度 を 増 し て い る 。米 国 主 要 予 測 機
関 の 見 通 し を 集 計 し た「 ブ ル ー チ ッ プ・エ コ ノ ミ ッ ク・イ ン デ ィ ケ イ タ ー ズ 」に よ る と 、
約 50 機 関 平 均 の 2004 年 の 実 質 国 内 総 生 産 成 長 見 通 し は 4.4% と な っ て い る 。
そ こ で 設 備 投 資 で あ る が 、し ば し ば 指 摘 さ れ る 過 剰 設 備 に つ い て は 、実 質 設 備 ス ト ッ
ク の 前 年 比 伸 び 率 が 、 90 年 代 初 頭 の 景 気 後 退 期 と 同 水 準 ( 1% 台 半 ば ) に ま で 低 下 し て
お り 、全 体 と し て 、過 剰 設 備 の 調 整 は か な り 進 ん だ と み て よ い 。そ し て 、何 よ り 設 備 投
資 の 見 通 し 自 体 が 明 る さ を 増 し て い る 。1 つ は 、生 産 活 動 に 約 半 年 遅 れ て 連 動 す る 機 械
投 資 ( 機 械 投 資 全 体 か ら 、 情 報 技 術 <IT>関 連 と 輸 送 機 器 へ の 投 資 を 除 い た 部 分 )。 製 造
業の出荷の前年比伸び率から在庫残高の前年比伸び率を引いた「出荷・在庫バランス」
は 、03 年 5 月 を 底 に 反 転 し て い る が 、こ の 出 荷・在 庫 バ ラ ン ス で み た 米 国 の 在 庫 循 環 は 、
90 年 代 以 降 、概 ね 30 ヶ 月 で 一 巡 。今 回 も 28 ヶ 月 で 反 転 し て お り 、ISM 製 造 業 景 況 指 数
に み ら れ る 03 年 中 以 降 の 生 産 拡 大 は 、 在 庫 循 環 の 上 昇 局 面 に 沿 っ た 持 続 的 な も の と い
え る 。 そ れ ゆ え に 生 産 連 動 の 機 械 投 資 も 04 年 に 入 る と 増 勢 を 増 す こ と が 期 待 で き る の
である。
2.2.2 「 バ イ ・ ア メ リ カ ン 」 法 案 の 懸 念
2003 年 10 月 27 日 付 、ア ン ダ ー ソ ン 事 務 所 か ら 入 手 し た レ ポ ー ト に よ る と 、米 国 工 作 機
械産業に影響を与え、また米国に輸出をしている日本の工作機械産業にとっても重大な問
題となりうる「バイ・アメリカン」法案が提案されているとの情報があった。その法案の
内容及び議会での進展状況を以下に述べる。
2004 年 下 院 国 防 予 算 執 行 承 認 法 案 H.R.1588 に 含 ま れ て い る 拡 大 「 バ イ ・ ア メ リ カ ン 」
規定が最近、米国産業基盤の健康と対策を巡って、ワシントンの政策関係者の間で大きな
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議論を巻き起こしている。
基本的に、同法案は国防総省に対して、すべての必需兵器システムを米国メーカーから
購入することを強制する一方、それら兵器システムのメーカーに対しては、すべてのコン
ポ ー ネ ン ト を 米 国 コ ン テ ン ト 最 低 70%の 工 作 機 械 を 使 っ て 加 工 す る こ と を 規 定 し て い る 。
今日現在、この問題については同法案に関する立法会議で依然白熱した議論が続いてい
る。上記の規定を同法案に挿入したのは下院軍事委員会のダンカン・ハンター委員長で、
その修正ないしは除去を図っている国防総省のあらゆる試みに激しく抵抗している。ハン
ター委員長はイラクで使用する予定であったスマート爆弾の主要コンポーネントを作って
いるあるスイス企業が、米国のイラク政策に同意できないとして、その供給を拒否したこ
とに怒っていた。結局、当のコンポーネントは後に米国メーカーによって供給されたが、
ハンター委員長はこの件で、米国兵器システムの重要コンポーネントの供給を、国防総省
が危険なほどに外国メーカーに依存していると反論したのだ。
外国製部品およびコンポーネントに対する過剰依存を是正するために、ハンター委員長
は同法案にいくつかの規定を書き込み、国防総省調達規則内の「バイ・アメリカン」規則
を強化した。工作機械に関する規定は、ハンター委員長に言わせると、米国政府が自国防
衛のために軍事力を使用する主権を行使したい時に、外国政府に左右されてしまうような
事態の再発を避けるために設けた、いくつかの規定のひとつに過ぎない。同委員長は米国
政府が重要部品を国内の防衛産業から調達出来なくなったら、政府としての選択肢が限定
されることを恐れた。
皮肉なことに、これまで何年かの間、ハンター委員長は対中ハイテク技術貿易の制限を
主 張 す る 先 兵 の 一 人 で あ っ た 。彼 は デ ユア ル・ユ ー ス 品 目 分 野 に お け る 中 国 と の ハ イ テ ク 技
術貿易は、東アジアにおける利益のみならず究極的には米国自体を脅かす中国の能力を強
化することになるとして、中国との貿易自由化に取り組んできたクリントンならびにブッ
シュ政権を非難してきた。しかし、国防予算執行承認法案に含まれた直近の規定一式は、
ハンター委員長が工作機械に関しては一貫していることを示している。要するに、もし工
作機械が極めて重要かつハイテクであるために、中国には売れないと言うことであれば、
そ れ ら の 能 力 は 米 国 の 産 業 基 盤 内 で 保 護 し 、保 存 す る に 足 る ほ ど 重 要 だ と 言 う こ と に な る 。
さ ら に 10 月 30 日 付 ア ン ダ ー ソ ン 事 務 所 か ら の レ ポ ー ト で は 以 下 の よ う な 続 報 が 伝 え ら
れた。
10 月 28 日 、 2004 会 計 年 度 国 防 予 算 執 行 承 認 法 案 の 論 点 「 バ イ ・ ア メ リ カ ン 」 規 定 に 関
する新たな妥協案が提案された。それが採択されると、兵器関連ハードウエアを米国に販
売できる国の数が大幅に増えることになる。
上 下 院 の ス タ ッ フ に よ る と 、新 妥 協 案 は ポ ー ル・ウ ォ ル フ ウ ィ ッ ツ 国 防 副 長 官 が 起 草 し 、
ホワイトハウスの行政管理予算局が承認したもので、バイ・アメリカン規定原案では米国
防 総 省 と の 取 引 が 出 来 な く な る 国 の 内 、(日 本 も 含 め て )約 70 カ 国 が そ の 適 用 を 免 除 さ れ る
- 15 -
ことになる。
10 月 27 日 付 け の 報 告 で 述 べ た よ う に 、 下 院 軍 事 委 員 会 の ダ ン カ ン ・ ハ ン タ ー 委 員 長 が
外国メーカーに対する米国の依存を軽減するために必要として提案した規定では、国防総
省は外国製の機器、部品、サービスの購入を制約されることになる。しかし、数人の有力
上 院 議 員 (上 院 軍 事 委 員 会 ジ ョ ン ・ ワ ー ナ ー 委 員 長 を 含 む )の 支 持 を 得 た ブ ッ シ ュ 政 権 は ハ
ンター原案に反対してきた。
ブッシュ政権の妥協案では、必需軍用機器に関する制限はイラクならびにアフガニスタ
ンにおける米国主導の作戦に陸、海、空軍ないしは復興部隊を参加させ、ないしは協力し
た国には適用しないとしている。また、米国と国際防衛協定を結んでいる国にも適用を除
外することが提案されている。我々の理解では、この妥協案によると、イラクやアフガニ
スタンに対する米国の政策を概して支持してきた日本は制約を免れると見ている。
バイ・アメリカン規定に関する新たな妥協案には、ハンター原案をさらに緩和する上院
可 決 の 法 案 (S.1050)も 含 ま れ て お り 、 そ の 一 つ は 米 国 の 防 衛 品 目 に 対 す る 差 別 が 、 米 国 に
よる当該国の防衛品目に対する差別より少ない国には、国防長官に適用除外権限を与える
としている。
11月 17日 付 け ア ン ダ ー ソ ン レ ポ ー ト に よ る と 、何 週 間 に も 渡 る 交 渉 の 末 、米 国 下 院 と
上 院 は 、 2004年 会 計 年 度 国 防 予 算 支 出 法 案 を 可 決 し 、 4,013億 ド ル で 同 意 し た 。 両 院 に
承 認 さ れ た 妥 協 協 定 は 、懸 念 さ れ て い た「 バ イ ア メ リ カ ン 」規 定 を 大 幅 に 削 減 し た も の
となった。
同 法 案 で は 、軍 が 広 範 囲 に わ た る 製 品 を 米 国 サ プ ラ イ ヤ ー か ら も の を 使 用 す る こ と を
要 求 す る 条 項 を 削 除 し た 。ま た 、軍 需 品 の 購 入 に 当 た っ て は 、最 低 6 5 % 米 国 製 の 部 品
から成る製品でなくてはならないという要求も退けた。
「 バ イ ア メ リ カ ン 」規 定 は 、米 国 防 衛 産 業 の 閉 鎖 と 失 業 率 の 増 加 を 懸 念 し た 下 院 で 広
く支持されたものである。
し か し な が ら 、上 院 の 反 対 と ホ ワ イ ト ハ ウ ス の 拒 否 の 懸 念 に 直 面 し 、ハ ン タ ー 下 院 軍
事 委 員 長 は 、「 バ イ ア メ リ カ ン 」 規 定 の 大 半 を あ き ら め ざ る を 得 な か っ た 。 同 氏 は 、 代
案 と し て 産 業 基 盤 能 力 研 究 を 創 出 し た 。こ の プ ロ グ ラ ム は 、防 衛 関 係 請 負 業 者 に 米 国 製
工 作 機 械 を 使 用 さ せ る こ と を 盛 り 込 ん だ 刺 激 策 で あ る 。そ の 目 的 は 重 要 な 防 衛 物 資 等 の
米国生産能力を引き出すための基金の創出にある。
と り あ え ず 2004年 会 計 年 度 国 防 予 算 支 出 許 可 は 日 本 及 び 外 国 の 工 作 機 械 を 使 用 す る
軍事関連請負業者に影響はないという結果となった。
さ ら に 2003年 12月 に 発 表 さ れ た 、 AMTの オ ン ラ イ ン ニ ュ ー ス に よ る と 、 下 院 軍 事 委 員
長 ハ ン タ ー 氏 の 主 導 の 下 、米 議 会 は 米 国 の 防 衛 機 器 メ ー カ ー に 対 し て 米 国 製 工 作 機 械 の
購入を奨励するための兵器システム契約入札プロセスにおけるインセンチブを採択す
- 16 -
る 一 方 、新 た な 工 作 機 械 R&D基 金 を 許 可 し た 。こ の イ ン セ ン チ ブ な ら び に R&D基 金 規 定 は
下院が先ごろ可決したより制約的な規定に対する妥協案として採択されたものである。
同 法 案 の 可 決 で 議 会 は 工 作 機 械 R&Dへ の 資 金 拠 出 を 承 認 さ れ た こ と に な り 、 一 方 国 防
総 省 は 同 省 か ら 落 札 し た 兵 器 シ ス テ ム の 製 造 に 当 た っ て 、米 国 製 工 作 機 械 を 使 用 す る こ
と に 同 意 し た 米 国 メ ー カ ー に 報 い る た め に 、お そ ら く ボ ー ナ ス・ポ イ ン ト を 含 む 奨 励 制
度の創設に取り組むことになる。
2.3 工 作 機 械 分 野 の 状 況
2.3.1 概
況
こ の 数 年 来 、日 米 貿 易 関 係 に 関 す る 議 論 に お い て 、米 国 政 府 当 局 者 か ら 、日 本 か ら の
工作機械輸入に関する言及はなされていない。
1999年 の 一 時 期 、米 国 工 作 機 械 業 界 に お い て は 国 内 工 作 機 械 受 注 の 下 落 傾 向 が 顕 著 に
な り 、経 済 全 般 が 好 調 な 中 、工 作 機 械 受 注 が 低 迷 し て い る の は 、資 本 設 備 投 資 停 滞 に 加
え 、輸 入 品 の 増 大 が 影 響 し て い る と し て 、輸 入 工 作 機 械 を 巡 り 議 論 が 発 生 し た 。そ の 後 、
受 注 が 緩 や か な が ら も 回 復 基 調 を 辿 っ た た め 、こ う し た 議 論 は 収 束 し た が 、2000年 の 状
況 は と て も 満 足 す べ き も の と は い え ず 、さ ら に 2001年 に 入 る と 深 刻 な 事 態 と な り 、9 月
以 降 は こ の 事 態 を 打 開 し よ う と AMTも 政 府 に 支 援 政 策 の 要 請 を 強 力 に 打 出 す こ と と な っ
た 。2002年 に 入 り 、こ の 低 迷 は さ ら に 続 き 、景 気 刺 激 策 の 効 果 も 思 っ た ほ ど 見 ら れ な か
っ た 。2002年 末 に は さ ら な る 追 加 支 援 策 を 求 め る 声 も 出 始 め た 。2003年 、イ ラ ク 問 題 が
進 展 し た こ と に よ り 長 期 に 渡 っ た 苦 し い 状 況 か ら 、這 い 上 が り 始 め た 。2003年 秋 以 降 に
は回復に向かう動きが見られた。今後の動向を注意深く見守る必要があろう。
米 国 製 造 技 術 工 業 協 会 ( AMT) と 米 国 工 作 機 械 販 売 協 会 ( AMTDA) で は 、 米 国 の 工
作 機 械 受 注 統 計 ( USMTC) を 共 同 集 計 ・ 発 表 し て い る が 、 そ の コ メ ン ト の 推 移 を 見 る
と、今年米国市場が業界の期待を裏切る形で推移したことが窺われる。
す な わ ち 、2000年 年 初 こ そ 受 注 は ま ず ま ず の 水 準 と 述 べ て い た が 、地 域 別 の ム ラ が 出
る に つ れ 、ユ ー ザ ー が 競 争 力 を 維 持 す る 鍵 は 高 生 産 性 で あ り 、そ の た め に は 最 新 工 作 機
械への投資が不可欠というように、投資を促すメッセージへと変化を遂げていった。
受 注 動 向 は 2001年 1 月 か ら さ ら に 下 降 を 辿 る こ と と な る が 、3 月 ま で は こ う い う 状 況
の 中 で も 投 資 を す る 勇 気 を 持 つ こ と の 重 要 性 が 述 べ ら れ て い る 。し か し 、5 月 こ ろ ま で
こ の 不 況 が 続 い た こ と か ら 、経 済 促 進 政 策 を 政 府 に 求 め る コ メ ン ト が 見 ら れ る よ う に な
っ た 。さ ら に 9 月 の テ ロ 後 の 不 況 を 受 け て 、さ ら な る 実 効 性 の あ る 経 済 政 策 を 求 め る と
共 に 、 11月 頃 に は 議 会 の 経 済 対 策 に 対 す る 遅 れ を 非 難 す る よ う に と な る 。
- 17 -
2002年 に 入 り 、景 気 刺 激 策 が 一 部 実 効 さ れ た に も 拘 わ ら ず 、際 だ っ た 効 果 は 現 わ れ ず 、
相 変 わ ら ず の 低 迷 を 続 け る こ と と な っ た 。2002年 後 半 頃 よ り 、よ り 大 幅 な 景 気 刺 激 策 を
ブ ッ シ ュ 大 統 領 の 政 策 に 盛 り こ む こ と に よ り 、製 造 業 者 に 大 き な 変 化 を 起 こ そ う と す る
業界を上げての団結した議会への働きかけキャンペーンが見られるようになった。
2003年 は 、イ ラ ク 戦 争 の 終 焉 で 米 国 景 気 の 不 透 明 感 が 一 掃 さ れ つ つ あ る と の 期 待 の コ
メントから、さらにはブッシュ大統領の景気刺激策を歓迎するコメントが見られた。
2003年 後 半 に は い よ い よ 景 気 低 迷 が 底 を 打 ち 、回 復 に 向 か っ て 伸 び 始 め て い る 様 子 が 伝
えられた。
2.3.2 業 界 の 動 き
(1)業
況
米 国 工 作 機 械 四 半 期 受 注( 切 削 形 )、2003年 の 受 注 累 計 は 、前 年 比 6.4% 減 の 18億 413
万 ド ル で あ っ た 。地 域 別 に は 、南 部 を 別 に す れ ば 、全 地 域 で 前 年 比 マ イ ナ ス 成 長 と な
っ た が 、 大 き な 需 要 を 占 め る 中 西 部 で 3.0% 下 回 っ た こ と か ら 、 全 体 の 下 降 は わ ず か
な も の に 止 ま っ た 。う ち 西 部 は 15.3% の 減 少 と 最 も 落 ち 込 み が 見 ら れ 、南 部 で は 4.1%
の 増 加 が 見 ら れ た こ と か ら 、地 域 間 の 差 が あ る こ と が 伺 え る 。2003年 末 に は 、中 央 部
を 除 く 全 地 域 で 大 幅 な 上 昇 が 見 ら れ 、景 気 回 復 の 局 面 に 向 か っ て い る こ と を 明 ら か に
なったが、依然各地域の足並みが不ぞろいであることが言える。
図2-2.米国工作機械受注の地域別月次受注推移
西部
切削型工作機械受注額の地域別・月別推移
中央部
350
百万ドル
中西部
300
南部
250
北東部
200
150
100
50
- 18 -
10
月
11
月
12
月
9月
8月
7月
6月
5月
4月
3月
2月
10
月
11
月
12
月
03
/1
月
9月
8月
7月
6月
5月
4月
3月
2月
02
/1
月
0
表 2 - 3 . USMTCの コ メ ン ト 推 移
受注年月
コメント者
Carlson専 務 理 事
( AMT)
7月の受注減と予測される8月の減少はIMTS開催年
である為だ。
8月 分
Nappi専 務 理 事
( AMTDA)
一般的な経済報告と同様,米国製造業は低迷した状
態である。
9月 分
Carlson専 務 理 事
( AMT)
9月の結果は前月比では増加を見たが、この産業に
おける投資関連の回復が遅れていることを示してい
る。
最近の製造業界の縮小と消費財の生産過剰が、米国
製造業の永久的な構造改革への必要を強調するもの
である。
米国製造業の回復は精彩を欠いている。議会が大統
領の経済刺激策を製造技術投資の出費の為に、企業
規模に拘わらず適用できるようにする追加政策が必
要である。
2002年 7月 分
コメントの骨子
10月 分
Nappi専 務 理 事
( AMTDA)
11月 分
Moore専 務 理 事
( AMT)
12月 分
Nappi専 務 理 事
( AMTDA)
みじめな結果の2002年は、良い報告で終わることに
なった。
2003年 1月 分
Moore専 務 理 事
( AMT)
製造業者が国際競争力を取り戻すことができる唯一
の手段は、設備購買の年間費用を経費として認める
ことである。
2月 分
Nappi専 務 理 事
( AMTDA)
最近のイラク問題の進展は、何ヶ月にも及んだ不透
明感を一掃するものである。
3月 分
Moore専 務 理 事
( AMT)
米国議会両院で提案された税法案は、機械購入経費
枠の経費枠を要求している。
4月 分
Nappi専 務 理 事
( AMTDA)
ブッシュ大統領の景気刺激策の議会通過は、米国製
造業が新製品と新技術に投資する無比のチャンスと
なるであろう。
5月 分
Moore専 務 理 事
( AMT)
政府はまさに今、米国経済のとっての製造業の重要
性を認識し、投資する時期に来ているといえよう。
6月 分
Moore専 務 理 事
( AMT)
ブッシュ大統領の経済刺激策のおかげで、今年の伸
びはさらに期待できるであろう。
7月 分
Nappi専 務 理 事
( AMTDA)
米国経済回復の目安となる、消費財受注と購買意欲
と製造業の成長リポートを裏付けるものとなった。
8月 分
Byrd専 務 理 事
( AMT)
製造技術投資の減少は下げ止まったと見られる。設
備投資の回復は兆しが見えていることは確かである
が、まだ始まっていない。
9月 分
Nappi専 務 理 事
( AMTDA)
製造業が回復に向かっている明らかな兆候を見るこ
とができる。
10月 分
Byrd専 務 理 事
( AMT)
製造業生産高は回復しており、工作機械受注も好調
であるが、一様ではない。
11月 分
Nappi専 務 理 事
( AMTDA)
数値は、安定した2004年製造業の回復を示している。
12月 分
Byrd専 務 理 事
( AMT)
2003年第4四半期は、製造技術受注がが好調であっ
た。顧客の生産能力及び利益は上昇している。
備考:コメントは、切削型工作機械以外も含めた受注合計に対するもの。
- 19 -
(2)AMTの 優 先 課 題
表 2 - 4 . AMT政 府 関 係 委 員 会 の 優 先 課 題
時期
対象
2003年 2月 26日 決 定
2003年 5月 15日 決 定
租税及
び予算
◆資金コストの削減ならびに最近制
定 さ れ た 30% 経 費 か 許 容 措 置 の 改 善
と適用期限
◆相続税の恒久的廃止による家内企
業の保存。
◆米国製造業の利益に対する差別的
税率の引き下げによる外国販売会社
( FSC) の 置 換 。
◆資本財購入コストの加速的経費計
上許容への備えとして、財蓄免除か
つ国境調整可能なキャッシュ・フロ
ー税による現行法人所得税の置換。
◆資金コストの逓減と最近制定され
た 30% 経 費 処 理 許 容 制 度 の 適 用 期 間
延長による新品機械の購入促進。
◆国外営業企業を廃止する代わりに、
米国製造企業の利益に課税される差
別税率の引き下げによる米国産業の
競争力保全。
◆相続税の恒久的撤廃による同族企
業の保全。
◆現行法人所得税を廃止する代わり
に、資本財購入コストの経費化に備
えるための貯蓄免除勝越境調整可能
なキャッシュ・フロー税の導入。
◆健全なドル政策の継続的追及。
◆米国の輸出金融および輸出促進プ
ログラムに対する十分な資金の確
保。
◆米国輸出管理政策とライセンシン
グ手続きの改革。
◆米国産業の国外顧客からの入国査
証申請に対するタイムリーな対応を
促進するための査証審査プロセス改
革。
◆健全なドル政策の継続的追及。
◆対中自由市場通貨政策の積極的追
求。
◆米国輸出管理政策およびライセン
ス手続きの改革。
◆外国顧客によるビザ申請の処理迅
速化に向けた改革。
国際経
済政策
職 場 資 本 財 に 対 す る 18 年 間 の 連 邦 PL
法適用休止。
法律
時期
対象
2003年 7月 21日 決 定
2004年 2月 25日 決 定
租税及
び予算
◆資本コストの削減並びに最近制定
さ れ た 50% 経 費 化 許 容 制 度 の 改 善 と
適用期間延長による新品機械の購入
促進。
◆国外営業企業制度に換え、米国製造
企業の利益に対する差別的低課税の
導入。
◆相続税の恒久的廃止による家族経
営企業の保全。
◆貯蓄に対する課税免除、調整効果の
ある国境税、資本購入コストの経費
計上許容への対応、等が可能な税制
への移行。
◆資本コストの削減並びに最近制定
さ れ た 50% 経 費 化 許 容 制 度 の 改 善 と
適用期間延長による新品機械の購入
促進。
◆ 国 外 営 業 企 業 制 度 に 換 え 、米 国 製 造
企業の利益に対する差別的低課税の
導入。
◆相続税の恒久的廃止による家族経
営企業の保全。
◆ 貯 蓄 に 対 す る 課 税 免 除 、調 整 効 果 の
ある国境税、資本購入コストの経費
計上許容への対応、等が可能な税制
への移行。
- 20 -
国際経
済政策
法 務・法
規改革
◆自由市場流通通貨に基づいた対中
関係の積極的追及。
◆輸出金融・促進プログラムに対する
十分な資金手当。
◆輸出管理政策ならびにライセンス
供与手続きの改革。
◆米国産業の外国顧客に対する訪米
ビザ申請のタイムリーな処理を促進
するためのビザ発給プロセスの改
革。
◆ 職 場 資 本 財 に 対 す る 18 年 間 の 連 邦
PL法 適 用 休 止 。
◆全国レベルの業界団体が加盟企業
のための健康保険制度を保証できる
ような法律の制定。
◆ 政 府 R&Dプ ロ グ ラ ム を 中 心 と す る 健
全な製造技術政策の採用。
◆自由市場流通通貨に基づいた対中
関係の積極的追及。
◆輸出金融・促進プログラムに対する
十分な資金手当。
◆輸出管理政策ならびにライセンス
供与手続きの改革。
◆米国産業の外国顧客に対する訪米
ビザ申請のタイムリーな処理を促進
するためのビザ発給プロセスの改
革。
◆ 職 場 資 本 財 に 対 す る 18 年 間 の 連 邦
PL法 適 用 休 止 。
◆全国レベルの業界団体が加盟企業
のための健康保険制度を保証できる
ような法律の制定。
◆ 政 府 R&Dプ ロ グ ラ ム を 中 心 と す る 健
全な製造技術政策の採用。
技術
(3)AMTの 通 商 政 策
①下院状況
4 月 9 日 の 下 院 中 小 企 業 委 員 会 で 、 AMT( 米 国 製 造 技 術 工 業 会 ) の Paul Freedenberg 副
専務理事が証言し、工作機械生産の窮状を訴え、政府の製造部門活性化対策を要請した。
要点は以下の通り。
AMT の 第 107 議 会 に 対 す る 立 法 関 連 の 最 優 先 ロ ビ ー 活 動 課 題 は 、 新 品 機 械 購 入 金 額 の 初
年 30% 経 費 計 上 許 容 で あ っ た が 、そ の 要 望 は 昨 年 制 定 さ れ た 経 済 刺 激 策 に 組 み 込 ま れ 達 成
さ れ た 。 第 108 議 会 に 対 し て は 、 同 規 定 を 改 善 し 、 恒 久 化 す る こ と が 最 優 先 課 題 に な る 。
過 去 30 年 間 で 製 造 部 門 の GDP に 対 す る 貢 献 度 は 50% 近 く 低 下 し 、 1999 年 の 同 部 門 の 新
品 機 械 へ の 投 資 額 は 過 去 70 年 間 で 初 め て 設 備 投 資 総 額 の 20% を 割 り 、 現 在 は 17.4% 程 度
に 止 ま っ て い る 。そ の よ う な 状 況 の な か で 、工 作 機 械 の 受 注 額 は 1997 年 の ピ ー ク か ら 55%
以上落ち込む一方、輸入はドル高と競争相手国の反競争的補助金制度や自国通貨下方誘導
操 作 と あ い ま っ て 、過 去 4 年 間 で 40% 拡 大 し て い る 。そ れ に 加 え て 、一 部 の 工 作 機 械 最 大
手ユーザーが国外へのアウトソーシングを増強している。
工 作 機 械 産 業 の 主 要 ア ナ リ ス ト は 2003 年 の 受 注 に つ い て 、18% 増 を 見 込 ん で い る が 、こ
の 予 測 が 正 確 だ と し て も 金 額 的 に は 50 年 以 上 の な か で 最 低 で あ る こ と に 変 わ り は な い 。
これは工作機械産業に限ったことではないが、今米国の産業界は輸出と対中投資拡大を
目的とする中国政府の人民元安値誘導戦略に大きな危惧を抱いている。ちなみに、昨年の
米 国 の 対 中 貿 易 赤 字 は 1,030 億 ド ル を 上 回 り 、そ の お 陰 で 中 国 は 月 々 60 億 ド ル の ペ ー ス で
外貨準備高を増やしている。
- 21 -
中国政府はドルに対して人民元を安く誘導することで、輸出を拡大し、輸入を抑えるこ
とを戦略としており、実際ドル大量買いによって人民元は、巨額な貿易黒字と外貨流入に
も 拘 わ ら ず 、通 常 の 市 場 価 値 を 推 定 40% 以 上 下 回 っ て い る と み ら れ て い る 。こ れ は 、実 質
的に通貨操作による産業助成といえる。
米 国 の 昨 年 の 世 界 貿 易 赤 字 幅 は 4,700 億 ド ル で 、 過 去 5 年 間 に 3,000 億 ド ル 拡 大 し 、 現
在 で は GDP の 5.0% 弱 を 占 め て い る 。そ の 中 で 、1,030 億 ド ル と い う 対 中 赤 字 は 二 国 間 ベ ー
スでは最大となっている。その最たる理由は過去 5 年間でドルの価値が他の通貨に対して
大幅に高まったことにある。
例 え ば 、 2002 年 2 月 に ピ ー ク に 達 し た ド ル 高 は 、 1990 年 代 の 正 常 水 準 を 30% も 上 回 っ
て い た 。そ の 後 は あ る 程 度 正 常 化 し 、2003 年 2 月 時 点 で は 正 常 水 準 を 15.0% 上 回 る に 止 ま
っている。しかし、この調整の殆どはユーロに対するもので、人民元に対する調整は、中
国 通 貨 が ド ル に 対 し 8.2 人 民 元 の レ ー ト で 人 為 的 に 固 定 さ れ て い る た め 、 皆 無 で あ る 。
他の課題としては、輸出金融および輸出促進への強力な支援を含む健全な輸出政策、政
府 R&D プ ロ グ ラ ム に 対 す る 十 分 な 資 金 手 当 を ベ ー ス に し た 健 全 な 製 造 技 術 政 策 、 国 外 営 業
企 業 ( FSC) を 廃 止 し 、 替 わ り に 米 国 内 の 製 造 活 動 に 対 す る 低 有 効 税 率 の 採 用 、 等 が あ る 。
更に、輸出管理の改革も必要である。中国ではいくつもの工場が欧州や日本製の 5 軸工
作 機 械 を 使 っ て Boeing や Airbus 機 の 部 品 を 作 っ て い る 。 と こ ろ が 、 米 国 は 中 国 の 工 作 機
械バイヤーに対して、根拠のない仮定に基づいていると思われる輸出管理プログラムを適
用しているため、中国による米国製工作機械の輸入を依然困難にしている。
② 米 議 会 公 聴 会 で の AMT会 長 発 言
6 月 5 日 に 開 か れ た 米 議 会 の 公 聴 会 で 、 Extrude Hone Corporation 社 の Lawrence J.
Rhoades 社 長 兼 CEO が 証 言 し 、 米 国 製 造 部 門 の 競 争 力 を 画 期 的 に 強 化 す る に は 、 国 を 挙 げ
た製造技術開発のインフラ構築が必要として、以下のような方策を提唱した。
1.
構築する国家的技術インフラは米国のメーカーが利用でき、米国独特の創造性を取り
入れて、米国経済に見合った手法での物作りを可能にすることが目的。
2.
米国の納税者にとってもインフラ構築は適切な投資である。なぜなら、成果は技術の
利用者とその顧客にもたらされ、最終的には納税者でもある製品のエンド・ユーザー
に還元されるからだ。
3.
投 資 は 産 業 や 研 究 セ ン タ ー (大 学 等 )内 の 革 新 の 担 い 手 に 集 中 し て お こ な い 、 開 発 さ れ
た革新的技術はパイロット生産とフル生産テストを経て、最終的に米国産業の諸分野
で利用する。
4.
投資対象には「新しい科学」を生み出している研究センターや革新的製造技術を活用
した製品を開発している有力なメーカーを含めるようにするが、投資は米国産業基盤
に対する「技術提供者」の役割を担っている中小企業に集中配分する。これらは製造
機械メーカー、特殊素材ならびにツーリング・サプライヤー、技術支援企業等で、米
- 22 -
国の「製造技術インフラ」を構成している。
5.
以下のプログラムを支援・拡大する。
( a) 防 衛 関 連 製 造 技 術 プ ロ グ ラ ム 。
( b) 中 小 メ ー カ ー に と っ て 不 可 欠 な 支 援 を 提 供 し て い る NIST( 国 家 標 準 技 術 院 ) の
MEP プ ロ グ ラ ム 。
( c) 革 新 的 製 造 プ ロ セ ス の 創 出 に 重 き を 置 い て い る NIST の ATP プ ロ グ ラ ム 。
( d) National Center for Manufacturing Sciences( 全 米 製 造 科 学 セ ン タ ー ) の よ う
な 、 自 由 加 盟 の 米 国 産 業 共 同 R&D コ ン ソ ー シ ア ム の 構 築 と 発 展 支 援 。
③優遇税制
米 議 会 が 可 決 し た ブ ッ シ ュ 大 統 領 の 減 税 法 案 に よ る と 、 2003 年 5 月 6 日 か ら 2004 年 12
月 30 日 の 間 に 発 注 し 、 2004 年 12 月 31 日 ま で に 稼 動 を 開 始 し た 工 作 機 械 ・ そ の 他 機 械 に
つ い て は 、 購 入 金 額 の 50% を 2004 年 末 日 ま で の 経 費 と し て 計 上 す る こ と が 認 め ら れ る 。
ち な み に 、 2002 年 制 定 の 旧 法 で は 時 限 措 置 と し て 30% の 経 費 計 上 が 認 め ら れ て い た 。
今 回 の 新 方 式 に よ る と 、例 え ば あ る 会 社 が 10 万 ド ル の 機 械 を 発 注 し た 場 合 、そ の 金 額 の
57% を 購 入 初 年 に 、 ま た 通 算 で 69% を 2 年 に わ た っ て 経 費 と し て 落 と す こ と が 認 め ら れ 、
結 果 と し て 購 入 初 年 の 減 税 額 は 従 来 の 4,900 ド ル か ら 15,050 ド ル 増 え る こ と に な る 。
更に、新法では中小企業のための特別規則も定められ、購入したすべての種類の新品機
械 の 合 計 額 が 40 万 ド ル 未 満 の 企 業 に 対 し て は 、 2005 年 12 月 31 日 に 至 る 間 、 当 初 購 入 額
の 10 万 ド ル を 全 額 経 費 と し て 計 上 し た 上 で 、 残 り 分 の 50% を 経 費 と し て 落 と す こ と が 認
められている。
と い う こ と は 、10 万 ド ル の 機 械 を 買 っ た 適 格 中 小 企 業 は そ の 全 額 を 購 入 初 年 に 経 費 と し
て 計 上 で き る と い う こ と に な る 。ま た 、20 万 ド ル の 場 合 は 15.7 万 ド ル( 78.5% )、30 万 ド
ル の 場 合 は 21.4 万 ド ル ( 71.3% ) を 購 入 初 年 に 経 費 と し て 落 と す こ と が で き る 。
( AMT フ ァ ク ト ・ シ ー ト )
2.4 ま と め
第 2章 で は 、 日 米 の 通 商 関 係 と 題 し 、 最 近 の 対 日 論 調 、 日 米 通 商 関 係 、 工 作 機 械 分 野
の状況について概観した。
最 近 の 日 米 関 係 を 概 観 す る と 、対 日 論 調 で は 2003年 上 期 、日 本 政 府 の 銀 行 救 済 の た め
に 公 的 資 金 を つ ぎ 込 ん だ 問 題 及 び 、日 本 政 府 の 円 売 り 介 入 に も 拘 ら ず 、ド ル と ユ ー ロ が
円 に 対 し て 下 げ て い る 問 題 に つ い て が 紙 面 を に ぎ わ せ て い る 。 ま た 9 月 2 6 日 付 Wall
Street Journalは 、 日 本 の 輸 出 企 業 が 数 年 前 と 比 べ 円 高 へ の 免 疫 力 を 高 め て い る と 報 じ
た 。 同 記 事 に よ れ ば 、「 日 本 の 輸 出 業 者 は い 前 途 し て 円 の 上 昇 を 抑 え る た め 記 録 的 な ペ
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ー ス で ド ル を 購 入 し て い る 。し か し 、日 本 企 業 は 自 ら の 努 力 で 為 替 変 動 に よ る 損 失 に 耐
え ら れ る 態 勢 を 整 え て き て い る 。そ れ は 主 に 生 産 を 米 国 や 他 の オ フ シ ョ ア 市 場 へ と 移 動
す る 努 力 を 加 速 す る こ と で 対 応 し て い る 。」 と 書 か れ て い る 。 為 替 変 動 に よ る 影 響 を 減
らし始める日本企業の様子が伺える。
2003年 下 期 の 対 日 論 調 で は 、日 本 経 済 の 成 長 率 の 予 想 を 上 回 る 成 長 率 に つ い て 報 じ る
記 事 が 見 ら れ た 。 ま た 12月 5日 付 の Wall Street Journalは 、 日 本 の 製 造 業 の 大 企 業 は 円
高 を 予 測 し て い る に も 拘 ら ず 、今 後 の 景 気 の 見 通 し に 積 極 的 で あ る と 報 じ て 、日 本 経 済
の 更 な る 回 復 の 証 拠 と し て い る 。日 本 の 回 復 の 兆 し と 強 気 の 見 通 し を 論 じ た 記 事 が 目 立
った。
さ て 、2003年 の 米 国 政 府 の 動 向 で 最 も 日 本 の 製 造 業 に 影 響 が あ る と 思 わ れ た も の と し
て は 、バ イ・ア メ リ カ ン 法 案 が 議 会 で 提 案 さ れ た こ と で あ ろ う 。本 章 で は 、同 法 案 を 巡
る動きを追ってみた。
こ の 法 案 は 、 2004年 下 院 国 防 予 算 執 行 承 認 法 案 H.R.1588に 含 ま れ て い る 拡 大 「 バ イ ・
ア メ リ カ ン 」規 定 の こ と で あ る が 、基 本 的 に 国 防 総 省 に 対 し て 、す べ て の 必 需 兵 器 シ ス
テ ム か ら 購 入 す る こ と を 強 制 す る 一 方 、そ れ ら 兵 器 シ ス テ ム の メ ー カ ー に 対 し て は 、す
べてのコンポーネントを米国コンテント最低70%の工作機械を使って加工すること
を規定している。
同 法 案 が 可 決 さ れ れ ば 、米 国 内 で 工 作 機 械 を 販 売 す る 日 本 メ ー カ ー に と っ て 重 大 な 局
面を迎えることになるため非常に危惧された。
し か し な が ら 、上 院 の 承 認 を 得 る こ と が で き な か っ た こ と か ら 、同 法 案 可 決 に は 至 ら
ず 、最 終 的 な 2004年 会 計 年 度 国 防 予 算 支 出 法 案 か ら は 、大 幅 に バ イ ア メ リ カ ン 規 定 を 削
減した。
ハ ン タ ー 下 院 軍 事 委 員 長 は 、こ の 代 案 と し て 産 業 基 盤 能 力 研 究 を 創 出 し た 。こ の プ ロ
グ ラ ム は 、防 衛 関 係 請 負 業 者 に 米 国 製 工 作 機 械 を 使 用 さ せ る こ と を 盛 り 込 ん だ 刺 激 策 で
ある。
さ ら に 、米 議 会 は ハ ン タ ー 氏 主 導 の 下 、米 国 製 工 作 機 械 の 購 入 を 奨 励 す る た め の 兵 器
シ ス テ ム 契 約 入 札 プ ロ セ ス に お け る イ ン セ ン チ ブ を 採 択 す る 一 方 、 新 た な 工 作 機 械 R&D
基金を許可した。
こ れ ら の 動 き が 今 後 業 界 に 与 え る 影 響 は 未 知 数 で あ る こ と か ら 、引 き 続 き 動 向 を 見 守
っていきたい。
工 作 機 械 産 業 の 業 況 を 見 る と 、 2003年 の 受 注 累 計 は 18億 413万 ド ル と 前 年 2002年 の 受
注 累 計 19億 2,696万 ド ル よ り 6.4%減 少 と い う 結 果 に な っ た 。
2001年 の テ ロ 後 、景 気 の 減 速 が さ ら に 加 速 を 早 め 、2002年 に は イ ラ ク 問 題 に よ り 米 国
経済の先行きを不確実にしたことが、さらなる回復の遅れを招いたとも言える。
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米 国 工 作 機 械 メ ー カ ー は 、議 会 に 対 し 、設 備 購 入 費 の 経 費 計 上 枠 を 拡 大 す る よ う 議 会
に 要 請 し て い る 。こ れ に よ り 、米 国 製 造 業 者 の 過 半 数 が 使 用 し て い る 6 0 年 代 、7 0 年
代の機械の買い替えを促そうとする政策である。
2003年 に 入 り 、イ ラ ク 戦 争 の 終 焉 と 景 気 刺 激 策 に よ り 、景 気 の 低 迷 は 底 を 打 ち 回 復 に
向かう様子が見られるようになった。
業 界 団 体 AMT( 米 国 製 造 技 術 工 業 協 会 )で は 、政 府 関 係 委 員 会 が 立 法・行 政 上 、AMT
に と り 最 も 重 要 な 案 件 に つ い て 検 討 し 、優 先 課 題 と し て 取 り ま と め て い る が 、そ の 活 動
報 告 に よ れ ば 、米 国 工 作 機 械 業 界 の 当 面 の 関 心 は 、30% 経 費 処 理 許 容 措 置 と 有 効 期 限 の
延 長 、 相 続 税 の 恒 久 的 廃 止 、 輸 出 政 策 、 R & Dを 主 と す る 製 造 技 術 政 策 、 中 小 製 造 業 者
への支援、健全なドル政策等があげられている。
ま た 米 議 会 の 公 聴 会 で AMTを 代 表 し て 、 Extrude Hone社 の Rhoades社 長 が 米 国 工 作 機 械
産 業 の 窮 状 を 訴 え る な ど 、政 府 に 対 し て は 積 極 的 な 働 き か け を し て い る 様 子 を 概 観 し た 。
対 日 関 係 で は 、 政 府 関 係 委 員 会 に お け る 最 優 先 事 項 に 2000 年 4 月 ま で は 入 っ て い た 、
「 日 本 市 場( 日 本 及 び 在 米 日 系 自 動 車・自 動 車 部 品・そ の 他 ト ラ ン ス プ ラ ン ト )へ の ア
ク セ ス 改 善 」と い う 項 目 は 見 ら れ な か っ た 。こ の こ と か ら 、米 国 業 界 に お い て 、日 本 問
題 は 当 面 の 取 組 課 題 か ら 外 れ た も の と 見 ら れ る が 、同 委 員 会 活 動 を 含 め 米 国 業 界 の 動 向
には引き続き注意していく必要があろう。
さ て 、2003年 、工 作 機 械 を 巡 っ て は 日 米 間 に 特 別 の 問 題 は 発 生 し な か っ た が 、バ イ ア
メ リ カ ン 法 問 題 等 油 断 で き な い 動 き が あ る こ と は 否 め な い 。無 用 な 摩 擦 を 事 前 回 避 す る
た め 、工 作 機 械 を 含 む 個 別 業 界 が 米 国 内 に 早 期 警 戒 シ ス テ ム を 整 備 し て お く こ と は 有 効
で あ る 。早 期 警 戒 シ ス テ ム と は 具 体 的 に は 、米 国 の 業 界 、政 府 、議 会 筋 と 長 期 に わ た り
高 い 信 頼 関 係 を 有 す る 者 と の 関 係 を 築 き 、当 該 産 業 の 状 況 及 び 通 商 問 題 化 懸 念 等 に つ い
て 、極 め て 初 期 の 段 階 で 情 報 を 収 集 し 、適 切 な 対 策 を 講 じ る こ と で あ る 。一 方 、個 別 企
業 に お い て も 常 日 頃 よ り 、社 員 研 修 等 を 通 じ 現 地 商 慣 習 遵 守 の 重 要 性 に つ き 教 育 し 、誤
解 が 生 じ る こ と の な い 企 業 行 動 を と る 必 要 が あ る 。業 界 全 体 と し て は 、現 地 情 報 の 収 集
強 化 に 加 え 、各 国 の 同 業 者 団 体 と の 間 で 定 期 対 話 チ ャ ン ネ ル を 作 っ て お く と と も に 、世
界 の 工 作 機 械 業 界 の 共 通 課 題 解 決 の た め 積 極 的 に 協 力・協 調 し て い く 姿 勢 を 示 し 、ま た 、
日本の業界に関する正確な情報を積極的に発信・公開していく努力が必要であろう。
こ う し た 努 力 を も っ て し て も 摩 擦 発 生 の 可 能 性 は あ る た め 、摩 擦 が 惹 起 し た 際 、即 座
に 対 応 で き る よ う 、相 手 国 市 場 の 現 状 に つ い て 統 計 資 料 を 含 め 分 析・整 備 、さ ら に は 自
らの意見をポジションペーパーとして作成、常に更新しておくことが有益である。
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工 作 機 械 産 業 は 、1987年 か ら 1993年 ま で 、対 米 工 作 機 械 輸 出 自 主 規 制 協 定( VRA)に
基 づ き 、輸 出 規 制 を 実 施 し た 歴 史 を 持 つ 。そ の よ う な 業 界 ゆ え に 、現 地 の 状 況 に 敏 感 で
あること、競争と協調の精神に基づき事業活動を行うことが大いに期待される。
- 26 -
第3章
米国工作機械産業動向
3.1 産 業 概 況
3.1.1 米 国 の 経 済 動 向
米 国 経 済 は 、 第 3 四 半 期 の GDP( 国 内 総 生 産 ) が 年 率 5.0%か そ れ 以 上 の 成 長 率 と な る 模
様であり、第 4 四半期も、やや低下するものの、ほぼ同じ程度の成長率となる見込みが強
ま っ て お り 、イ ン フ レ な き 成 長 と い え る 。主 な 問 題 点 は 、2004 年 度 に お い て も 、こ の 高 い
成 長 率 を 維 持 で き る か 、 ま た は 成 長 率 が 年 率 4%を か な り 下 回 る の か 、 ひ ょ っ と す る と 3%
を す ら 下 回 る の か 、と い う こ と で あ る 。当 社 の 最 新 報 告 に も あ る と お り 、米 国 経 済 は 2002
年 と 2003 年 上 半 期 を 通 じ て 年 平 均 約 2.5%の 拡 大 を 示 し た 。 米 国 経 済 は 、 高 い 成 長 を 示 し
た 2003 年 下 半 期 の 後 、そ の ペ ー ス に 戻 る だ ろ う か 。ま た は 、4.0%程 度 の 強 い 成 長 力 を 維 持
できるのだろうか。
連 邦 準 備 銀 行 内 部 で は 、 2004 年 上 半 期 の 実 質 成 長 率 は 2003 年 下 半 期 を か な り 下 回 り 、
3.5%か ら 3.7%の 間 が 一 番 近 い 線 で あ ろ う と 見 て い る 。「 一 流 の 経 済 ア ナ リ ス ト 」 達 (Blue
Chip Economic Forecasters)は 、 2004 年 の GDP 実 質 成 長 率 を 前 年 比 3.9%と す る 見 解 で 一 致
し て い る 。そ の 低 下 の 程 度 は 2003 年 下 半 期 比 で は 、幾 つ か の 要 因 に 基 づ き 次 の よ う な も の
と な ろ う 。第 一 に 、個 人 消 費 支 出 (PCE)は 、自 動 車 販 売 が 不 振 で あ る に も か か わ ら ず 、第 3
四半期に極めて高い成長を示した。これは何と言ってもブッシュ大統領の賃金給与の源泉
徴収税引き下げや児童手当支給等の減税と住宅ローンに対する優遇策の継続によるもので
ある。将来的には、住宅ローン金利は上昇し、その借り換えを抑制するであろう。また、
2004 年 の 平 均 的 家 計 に 対 し て 、減 税 は そ れ ほ ど 意 味 を 持 た な い も の と 思 わ れ る 。2003 年 下
半 期 の 資 本 的 支 出 は 、事 業 用 設 備 と ソ フ ト ウ エ ア に お け る 実 質 投 資 が 年 率 8.3%増 加 し た も
の の 、第 2 四 半 期 よ り は 幾 分 減 速 す る で あ ろ う 。在 庫 は 2003 年 下 半 期 に 積 み 増 す も の と 多
くの方面から期待されているが、相当な総需要が生じない限り積み増し率は来年には低下
するものと思われる。
消 費 者 の 自 信 を 失 わ せ る 大 き な 不 安 定 要 素 は 、 2003 年 末 ま で の 労 働 市 場 の 動 き で あ る 。
報道とメディアは「失業者の回復」について不満を述べているが、就業者の純増対策にも
かかわらず、失業者が増えるのか減るのかの先行き見通しについては議論がある。製造業
の就業者が長期的な減少傾向にあることについては誰も異論がないのだが、非製造業の分
野における雇用形態について、特にまた、新規創業を含む中小企業における雇用について
は多くの議論がある。新規事業の起業により創出された雇用と急速に拡大しつつある小企
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業 に 関 す る 労 働 省 の 公 式 デ ー タ は 、現 実 よ り 6 ヶ 月 か ら 18 ヶ 月 は 確 実 に 遅 れ て い る 。過 去
の 上 昇 傾 向 に お け る 中 小 企 業 の 雇 用 の 分 析 に 基 づ き 、経 済 諮 問 委 員 会 (Council of Economic
Advisers)は 、 2004 年 に お け る 新 規 雇 用 創 出 は 強 力 な も の で あ り 、 製 造 業 に お け る 継 続 的
な減少を補うものと期待している。
金属切削業、金属成型業の従業員数
(単位
年度
年度
千人)
全従業員
製造部門従業員
*8 月中の数字に基づく予備的推計
資料提供
労 働 統 計 局 (Bureau of Labor Statistics)
生 産 性 は 1996 年 か ら 2000 年 に か け て 引 き 続 き 年 率 約 2.6%で 向 上 し て い る が 、最 近 の 生
産 性 向 上 率 は 年 率 約 4%に 上 昇 し た も の と 思 わ れ る 。こ の こ と は 、米 国 経 済 が 雇 用 の 拡 大 を
も た ら す の に 十 分 な 速 度 で 成 長 し て お り 、失 業 者 が 減 少 し て い る こ と を 意 味 し て い る 。FRB
( 連 邦 準 備 制 度 理 事 会 )は 、新 規 雇 用 を 創 出 し つ つ 高 い 生 産 性 向 上 を な し と げ る た め に は 、
年 率 4%以 上 の GDP の 伸 び が 必 要 で あ る と 確 信 し て い る 。ま た 、こ の 伸 び 率 は イ ン フ レ の 圧
力 が 再 現 す る こ と な し に 後 2 年 以 上 は 続 く も の と 見 て い る 。 FRB 内 に は 、 米 国 経 済 が 「 沈
滞」から抜け出すのには後、少なくとも 2 年は必要だという考えが今でもある。
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本 当 の と こ ろ FRB が 今 考 え て い る の は 、 公 定 歩 合 (official interest rates)を 、 イ ン フ レ
圧力の再現のおそれなしに、来年中は現在の水準かそれに近い水準に保つべきであるとい
う こ と で あ る 。 更 に は 、 FRB は 、 新 規 雇 用 創 出 率 を 公 定 歩 合 引 上 げ の タ イ ミ ン グ を 判 断 す
る際の主要指標として見るものと思われる。このことは、来年以降の資本コストが非常に
低いものとなることを示唆しており、事業拡大のための資本支出を促すであろう。
2003 年 か ら 2004 年 の 連 邦 政 府 予 算 の 不 足 に つ い て は 、 第 3 四 半 期 の 税 収 の 増 加 を 勘 案
し て 最 近 再 試 算 さ れ た 。 最 新 の 試 算 に よ れ ば 、 予 算 不 足 が 約 3,700 億 ド ル ($370 billion)
と な り 、 そ れ は 僅 か 6 週 間 前 に 不 足 額 4,500 億 ド ル ($450 billion)と さ れ た と き よ り 大 幅
に減少している。
し か し な が ら 、 3,000 億 ド ル ($300 billion)の 余 剰 か ら 3,500 億 ド ル ($350 billion)の
不 足 へ と 上 下 6,500 億 ド ル ($650 billion)も の 巨 額 の 振 れ が 経 済 に 大 き な 影 響 を 及 ぼ し た 。
それは、防衛・安全保障および新規の老人医療手当支出の増加により、次の財政年度にお
いて本年度の水準を越える予算不足をもたらすものと思われる。
既 に 述 べ た よ う に 、 国 家 予 算 と 地 方 政 府 予 算 の 大 幅 な 不 足 が 、 今 後 2-3 年 間 は 米 国 の 経
済成長を抑制するであろうと予測している。このマイナスの影響は今のところ顕在化しつ
つある。
6 月 に 起 き た 世 界 的 な 債 券 売 却 の 動 き は 安 定 し て き た が 、こ れ に よ り 2003 年 の 初 め 数 ヶ
月間比べて、債券利回りの更なる上昇がもたらされた。それは直ちに米国内での住宅ロー
ン金利にマイナスの影響を与えた。今度はこのことが、毎月の住宅ローン返済の負担のせ
いだけではなく、更に住宅価格の問題が家計支出を抑制するものと思われる。住宅ローン
金利の上昇により住宅価値の値上がりが鈍り、住宅市場の冷え込みが予想される。米国の
個人資産の大部分は住宅価格なのである。
既に述べたように、現在、米国内市場での資本コストは異常に低く、上場企業の利益は
改善しつつある。企業統治の再編と年金およびバランスシート管理の問題があり、新規投
資 に は 踏 み 込 み に く い 状 況 に あ る 。 こ の 時 点 で 、 多 く の CEO( 最 高 経 営 責 任 者 ) の 個 人 的
な意見では、企業統治の再編は、はるかに手の届かないものであり、企業の資本支出決定
の新しい枠組みを作り上げるには、何年かの期間が必要であろうと見ている。
3.1.2 資 本 支 出 と 工 作 機 械
い わ ゆ る「 一 流 の 経 済 ア ナ リ ス ト 」達 の 見 解 で は 、2003 年 の 非 居 住 者 の 固 定 資 産 へ の 実
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質 投 資 は 年 率 3.3%程 度 の 成 長 を 示 す で あ ろ う が 、2004 年 に お け る そ の 成 長 率 は 、よ り 活 力
の あ る 8.5%以 上 と な る と み ら れ て い る 。こ れ ら の 投 資 の あ る も の は 、既 存 の 大 企 業 の 中 で
はコスト削減を目標としているが、それらの大部分は中小企業の事業拡大志向によって生
み出されるのである。
このような来年度の見解に対して希望をもたらしたのは、8月の工作機械需要が7月よ
り 16.6%増 加 し た こ と で あ る 。言 い 換 え る と 、そ の 増 加 は 、8 月 の 中 西 部 地 域 に お け る 工 作
機 械 需 要 が 7 月 比 ほ ぼ 39%も 増 加 し た こ と に よ り も た ら さ れ た も の で あ る 。
2003 年 7 月 の 米 国 内 需 要 に 対 す る 新 規 受 注 総 額
国内受注総額
(単位
受注総額
日付
台数
千ドル)
金属切削用機械
金額
台数
金額
金属成型機械
台数
金額
7月
8月
9月
10 月
11 月
12 月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
平均
資 料 提 供 : 2003 年 9 月 8 日 付 け USMTC ニ ュ ー ス
FRB の い わ ゆ る Beige Book( 地 区 連 邦 準 備 銀 行 経 済 報 告 )も 含 め て 、そ の 他 の 現 実 的 な 指
標は、米国経済全般に、工業部門を含む生産活動はより一層の広範囲な成長を示唆してい
る。
3.1.3 ド ル 政 策 と G7
グ ロ ー バ ル マ ー ケ ッ ト は ド バ イ G7 が 発 表 し た コ ミ ュ ニ ケ に 過 剰 反 応 を 示 し て い る 。 報
道 と メ デ ィ ア は ド バ イ G7 の 後 、米 国 が ド ル 安 を 求 め た こ と を「 理 解 し た 」と 報 じ た が 、そ
れ は 正 し く な い 。米 国 と 米 国 以 外 の G7 政 府 と の 間 に 、そ の よ う な 取 引 は な く 、特 に 米 国 と
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日本との間に取引はなかった。
ス ノ ー 財 務 長 官 は「 こ の コ ミ ュ ニ ケ は 、通 貨 調 整 に つ い て 、よ り 一 層 の 柔 軟 性 が 期 待 で
き る こ と を 反 映 し て い る 。従 っ て 私 は 、こ れ が G7 の 世 界 的 な 視 野 で の 方 向 性 に つ い て の 工
程 表 (milestone)の 変 更 を 示 し て い る こ と を 歓 迎 す る 」 と 述 べ た 。 こ の コ メ ン ト の 一 部 は 、
国内の工業部門からの不満に対して、何か新しく訴えることを意図した米国内向けのもの
で あ る 。ま た 一 部 は 、ス ノ ー 財 務 長 官 の 経 験 不 足 を 反 映 し て お り 、か つ 過 去 30 年 間 の 、G7
における為替相場問題の討論に関する財務省内部機関の資料がないことをも示している。
英 国 と そ の 他 の 欧 州 諸 国 の 財 務 大 臣 の 代 表 達 は 、 G7 の コ ミ ュ ニ ケ に つ い て 全 く 異 な る
解 釈 を 公 式 に 示 し た 。彼 等 は 、日 本 以 外 の ア ジ ア 諸 国 政 府 に 対 し て 、そ れ ら 諸 国 に 対 し て 、
より柔軟な為替相場政策が将来的に望ましいということを示唆しようとしたことを除けば、
これは基本的には何ら新しいことを意図したのではないということを明らかにした。欧州
諸国は、日本は新しい約束の対象ではないと見ている。更に、欧州諸国間には、中国をグ
ローバルな経済競争において悪の根源であると見てはならないとの感触がある。そして、
中 国 や そ の 他 の 国 を 個 別 に 名 指 し す る こ と に は 強 い 抵 抗 が あ る 。G7 内 で の 欧 州 諸 国 の 見 解
としては、スノー財務長官は、アメリカ国内でのブッシュ政権に対する政治的反対勢力を
なだめるために、通貨政策の柔軟性に関して或る特定の約束を求めていたのだが、これに
日本を巻き込んだという考え方に市場が過剰反応したのだというものである。
日 本 経 済 は 、 最 近 GDP の 伸 び が 年 率 で 3.9%に 達 し た と 言 わ れ て お り 、 や や 改 善 し て い
る よ う に 見 え る 。 日 本 の 四 半 期 の GDP の 数 値 は 、 計 算 上 の 、 調 査 結 果 と し て の 、 そ し て 信
頼できないデフレーター(名目数値と実質数値の転換調整値)に過度に依拠した、信頼性
の 低 い 悪 名 高 き も の で あ る 。政 府 発 表 の 実 質 成 長 率 は 第 2 四 半 期 の 半 分 程 度 の よ う で あ る 。
しかしながら、公表された成長率には、自信を取戻した外国投資家の日本株買いが効果を
与え、円相場を押し上げた。円がもし今後数ヶ月のうちに強くなるとしたら、日本の資本
支出と成長にブレーキをかけることになるだろう。米国と日本の政府幹部は、このことを
熟知している。
ブッシュ大統領と小泉首相の会談で、ブッシュ大統領は、日本の為替介入については米
国側には何ら問題はないと言うものと思われる。しかし米国は、そのような介入は国内経
済の成長戦略なしには効果はないものと感じている。ホワイトハウスと米財務省は、経済
成長を加速することについて日本は明確な戦略を持っていないと考えており、ブッシュ大
統領は側近から、この種の国内経済成長促進を支援する為に財政金融刺激策を実施するよ
うに、そしておそらく、思い切った為替介入をするように、小泉首相に迫るよう進言を受
けているであろう。
- 31 -
10 月 の 初 め に 、 通 貨 市 場 は MOF(Ministry of Finance=財 務 省 )が 効 果 的 な 介 入 を す る の
で は な い か と 疑 っ た 。当 社 は 、
「 内 密 の 介 入 」は 経 験 的 に 強 い 効 果 を 発 揮 し た と は 言 い 難 い
と考えるし、円の上昇に圧力をかけるのなら、市場に強力なサインを出すような一層明白
な介入をすることが今は必要であると考える。それでも、思い切った為替介入のような何
か新しいものが加わらない限り、海外からの日本への投資は円相場を押し上げる傾向にあ
る。
従って、通貨市場はドル―円の将来に関してワシントンの方を向くのではなく、谷垣財
務大臣就任後の日本の為替政策に重点を置かねばならない。ドルに対する円の強さに「キ
ャ ッ プ 」 を 被 せ る と い う MOF の 新 し い タ ー ゲ ッ ト と は 何 で あ ろ う か 。 MOF は 新 し い キ ャ ッ
プを被せられるであろうか。または市場の勢いは今や強すぎるのだろうか。
結論としては、ドル―円政策は東京で決まるのであって、ワシントンで決まるのではな
いということである。当分の間は、ブッシュ政権のドル政策に関する問題は的外れなもの
と な る だ ろ う 。 日 本 に お い て は MOF が ( 日 本 銀 行 で は な く ) 介 入 政 策 を 決 定 す る か ら 、 焦
点は日本の財務省の政策にあてられている。
3.1.3 カ ン ク ン 会 議 後 の 米 国 の 通 商 政 策
カンクン会議で妥当な合意が何も得られなかったのは、別に驚くことではない。ただ一
つ 驚 か さ れ た の は 、 皆 が 驚 い た こ と で あ る 。 米 国 、 EU、 日 本 の 間 で も 、 先 進 工 業 国 と 後 進
国および新興市場との間でも、主要な問題についてはほとんど前進がなかったことは、も
う何ヶ月も前から分かっていたことである。更には、開発途上国自体の間でも違いが目立
っ て 来 た 。何 ヶ 月 か 前 に 、フ ラ ン ス の シ ラ ク 大 統 領 は 既 に 、2013 年 以 後 ま で の 共 同 農 業 政
策 (Common Agricultural Policy)の 基 本 的 な 点 の い か な る 変 更 に も 、 強 い 反 対 を 正 式 に 表
明 し て お り 、2006 年 以 後 ま で の 変 更 に つ い て 、い か な る 討 論 を す る こ と に も 反 対 し て い る 。
こ の こ と は 、EU 委 員 会 が 有 意 義 な 提 案 を す る こ と や 、カ ン ク ン 会 議 の 最 後 の 1 分 で 最 終 的
になされた提案すら妨げており、主要農産物輸出国にとって不適切なものであると考えら
れている。
WTO(World Trade Organization=世 界 貿 易 機 構 )の ド ー ハ 開 発 議 事 日 程 ま た は ラ ウ ン ド の
日 程 は 一 番 最 初 か ら つ ま ず い た 。 米 国 と EU は ラ ウ ン ド 締 結 の 目 標 日 を 2005 年 1 月 1 日 と
す る こ と に 合 意 し た 。 こ の 日 は 、 EU 委 員 会 の メ ン バ ー と EU 委 員 会 の パ ス カ ル ・ ラ ミ ー 委
員 長 (EU Commissioner Pascal Lamy)の ロ ー テ ー シ ョ ン の た め に 設 定 さ れ た も の で あ る ( ラ
ミ ー 委 員 長 は 社 会 主 義 者 で あ り 、パ リ の 与 党 連 合 に 反 対 の メ ン バ ー で あ る の で 、2005 年 に
- 32 -
委 員 に 再 任 さ れ る と は 期 待 し て い な い )。
こ の 2005 年 1 月 1 日 と い う 日 は 、 米 国 の 交 渉 担 当 者 に と っ て は 不 可 能 な 日 取 り で あ る 。
そ れ は 、2004 年 は 大 統 領 選 挙 と 議 員 選 挙 が 重 な る 年 だ か ら で あ る 。過 去 数 十 年 間 、ど の 政
権も、大統領選挙前の数ヶ月間は議会と協議するというリスクを犯そうとはしなかった。
重要な選挙のキャンペーン期間中に国際交渉を終結させるということは、間違いなく、巨
大利権グループとの対決とアメリカの譲歩の提案がメチャクチャになる危険を招くのであ
る 。米 国 に と っ て は 、議 員 の 中 で は 1 月 1 日 と い う 日 を 2005 年 末 ま で 延 期 す る の が よ い し 、
多 分 に 、更 に そ れ よ り 後 の 方 が よ い と す ら 考 え ら れ て い る 。こ れ は 、議 会 が 交 渉 権 限 を 2007
年まで延長する用意があることが明らかであるからに他ならない。
EU で は 、2006 年 に フ ラ ン ス と ド イ ツ に お い て 主 な 選 挙 が 行 わ れ る 。そ れ 以 前 の 政 治 的 譲
歩 は 予 想 す る こ と す ら 不 可 能 で あ る 。更 に は 、そ の 他 の 幾 つ か の 政 策 的 な 論 争 が 2004 年 ―
2005 年 に か け て 行 わ れ る 。こ れ は 、中 央 ヨ ー ロ ッ パ 地 域 内 の 多 く の 新 し い 加 盟 国 を 包 含 す
る EU の 拡 大 を 含 む も の で あ っ て 、そ の 新 し い 加 盟 国 の 或 る も の は 実 際 に 巨 大 な 農 業 生 産 国
な の で あ る ( 例 え ば 、 ポ ー ラ ン ド と ハ ン ガ リ ー )。 今 の 時 点 で 、 EU の 新 し い 「 憲 法 」 の 原
案作成について大きな論争が持ち上がっており、これは貿易と農業を含む多くの問題に関
し て 、EU 内 部 の 決 定 を 妨 げ る 可 能 性 が あ る 。更 に そ の 他 の 爆 発 的 な 挑 戦 と し て は 、明 ら か
にフランスとドイツが支えているユーロ(通貨)の基礎を成す「安定と成長の協定」
(Stability and Growth Pact)の 予 算 規 律 違 反 が あ る 。 フ ラ ン ス と ド イ ツ 以 外 で は 、 ポ ル ト
ガル、イタリーなどであり、また多分その他の国々が近い将来これに参画するであろう。
フランスとドイツは現在、新年度に向けて、今後数年間にわたる、より多額の予算不足を
許容するような「安定の協定」についての「再解釈」を進めている。若しこれが合意され
れ ば 、他 の 加 盟 諸 国 に お い て 財 政 の 節 度 は 失 わ れ 、更 に 加 え て 、一 方 の EU 加 盟 の 小 国 群 と 、
他方のフランス・ドイツとの政治的協調はつまずきを見せることであろう。そのような文
脈 か ら 見 て 、EU 委 員 会 は ド ー ハ・ラ ウ ン ド に お い て 工 業 ま た は 農 業 の 分 野 で 、少 な く と も
今後2年間は大幅な譲歩をする様子はない。
そ の よ う な 事 情 に も か か わ ら ず 、 USTR(Office of the U.S. Trade Representative=米 国
貿 易 代 表 部 )の ゾ ー リ ッ ク (Zoellick)と EU 委 員 会 の ラ ミ ー 委 員 長 は 、 US-EU 間 の 農 業 交 渉
に関する枠組みの共同文書を、カンクン会議の直前に起草した。他の農産物輸出国は、こ
の 文 書 を ア メ リ カ と 連 携 し た EU 諸 国 に よ る ア メ リ カ 的 報 復 措 置 で あ る と 受 け 止 め 、カ ン ク
ン会議に参加した諸政府間に深い不信の念を抱かせた。
米 国 と EU が 、カ ン ク ン 会 議 に 向 け て 準 備 す る 中 で 、開 発 途 上 国 政 府 の 多 様 で 特 別 な 関 心
をほとんど無視したことは明らかである。従って、開発途上国政府の多くが自分達の議案
- 33 -
を 提 出 す る 為 に 連 盟 を 結 成 し た 。特 に 知 ら れ て い る の は 、ブ ラ ジ ル が 主 導 し た い わ ゆ る G21
( ま た は 、21 カ 国 以 上 を 擁 す る GX)で あ る 。綿 花 生 産 国 で あ る 数 カ 国 は 、米 国 を 市 場 の 外
に置くという驚くべき新しい要求を出して来た。幾つかの国は、過去において争点とは思
わ れ て い な か っ た 税 関 手 続 (「 貿 易 を 容 易 化 す る こ と 」) の 近 代 化 と 簡 素 化 に 対 し て 、 非 常
に強硬な態度に出てきた。開発途上国の多くは、特別にそれぞれに異なる取扱いがなされ
な か っ た の で 、米 国 お よ び EU と 開 発 途 上 国 と の 間 の 協 力 が 保 証 さ れ な か っ た こ と に つ い て
苦情を申立てた。
カンクン会議におけるこの失敗については、会議の議長個人や個別の政府を咎めるべき
ではない。悪かったのはカンクン会議の大臣の会合が、参加国の首都において十分に準備
されていなかったことである。多くの国の貿易大臣と外務省幹部には政治力がなかったの
で あ る 。 難 し い 問 題 の 政 治 的 決 断 は 首 都 で 行 わ れ る も の で あ る 。 WTO の リ ー ダ ー 達 、 特 に
米 国 と EU の リ ー ダ ー 達 が 、世 界 中 の 主 要 国 の 首 都 で 事 前 の 政 治 的 活 動 を 十 分 に し な か っ た
ことは明らかである。
カ ン ク ン 会 議 で の 話 し 合 い が 決 裂 し た 後 、EU と 米 国 は WTO の 決 定 手 続 と( ラ ミ ー 委 員 長
は WTO の 決 定 方 式 は 時 代 遅 れ で あ る と 述 べ た )、 そ し て 頑 固 で 手 に 負 え な い 不 従 順 な 政 府
( ゾ ー リ ッ ク は 政 府 を 、「 で き る 」(can)と「 し な い 」(won’t)の 二 つ に 分 類 し た )と を 非 難
し た 。米 国 と EU は 自 分 達 の 準 備 が 不 適 切 で あ っ た こ と を 認 め て い な い 。WTO と 主 要 国 政 府
に 対 し て 公 に な さ れ た 攻 撃 は 、 WTO の 分 裂 を 深 刻 化 さ せ た 。 そ れ は 、 世 界 貿 易 自 由 化 の 次
の局面における国際的なコンセンサス形成の再スタートや再活性化への重要な努力を、更
に遅らせることになる。
USTR は 、今 や 米 国 は WTO 体 制 の 下 で グ ロ ー バ ル な 自 由 化 の た め に 、相 互 的 か つ 地 域 的 な
FTA(Free Trade Agreement=自 由 貿 易 協 定 )の 選 択 肢 を 推 進 す る と 表 明 し た 。USTR の 論 拠 は 、
貿易自由化に賛成する国・地域と共に一つ一つ前進してゆくことが他の政府に対して、参
加するか自由化のメリットから除外されるリスクを負うか、という圧力を増すことになる
と い う 点 に あ る 。 よ り 多 く の 相 互 的 か つ 地 域 的 な FTA が 、 世 界 中 の 残 り の 諸 国 に 対 し て 参
加させる圧力になるというのが、この論拠であるが、どうもそれは弱々しく見える。一方
で は 、 EU は 米 国 が 「 地 域 主 義 」 (regionalism)と 「 相 互 主 義 」 (bilateralism)の 立 場 で よ
り 深 く 関 与 す る こ と を 歓 迎 し て い る が 、 そ れ は 、 過 去 何 十 年 に も わ た り 交 渉 し て き た EU
の多くの既存の協定に対して、より強い適法性を与えるからである。日本もまた、技術的
に ガ ッ ト ( GATT) 第 24 条 6 項 の 違 反 と な り 得 る 農 産 物 に つ い て 、「 例 外 扱 い 」 を 強 い る 隣
国との相互協定(二国間協定)に関して適法性を求めることが出来るであろう。
米 国 は 、モ ロ ッ コ 、UAE、バ ー レ ー ン 、中 央 ア メ リ カ 諸 国 の 幾 つ か の よ う な「 よ り 小 さ い 」
- 34 -
貿易相手国と協定を結ぶことができるが、それらの協定の貿易に対するインパクトは全世
界 的 に 見 て 相 対 的 に 小 さ な も の で あ る 。FTAA と し て 知 ら れ て い る 全 ラ テ ン ア メ リ カ 諸 国 と
の よ り 大 規 模 で 重 用 な FTA は 、 ブ ラ ジ ル が 米 国 の 交 渉 戦 術 と 米 国 の 交 渉 議 題 の 制 限 に 反 対
し て い る 限 り は 実 現 し な い だ ろ う( 米 国 は ア ン チ ・ダ ン ピ ン グ と 農 業 補 助 金 と を 地 域 交 渉 で
討 議 す る こ と を 拒 否 し て い る が 、そ れ は ブ ラ ジ ル に と っ て は 必 須 条 件 な の で あ る )。更 に は 、
米 国 政 府 は カ ン ク ン 会 議 に お け る ブ ラ ジ ル の 役 割 が 、 ル ー ラ ・ ブ ラ ジ ル 大 統 領 (Brazil’s
President Lula)の 政 治 的 抵 抗 を 硬 化 さ せ る も の で あ る と 攻 撃 し て い る 。 ル ー ラ 大 統 領 は 、
世界的な問題についてのブラジルの、新しく確固たるリーダーシップをカンクン会議でア
ピールした。
EU― 米 国 間 の 相 互 FTA の 公 式 協 議 が い ず れ 行 わ れ る で あ ろ う が 、こ れ は 議 会 に と っ て は 、
EU の 農 業 政 策 に 大 き な 変 化 が な い 限 り 政 治 的 に 不 可 能 で あ り 、EU に と っ て も 政 治 的 に 今 後
数年間は不可能である。
更にまた、米国とオーストラリアとの間では、農産物についての深刻な意見の相違を米
国が克服することは、少なくとも次の米国の選挙までは無理であろうし、多分その後も無
理 で あ ろ う 。 長 期 的 に 見 て 可 能 性 が あ る の は 、 米 国 ― ASEAN 間 の 協 定 で あ ろ う 。 し か し 、
これは政治的に非常に慎重な準備が必要と思われる。特に、中国と日本との交渉をどのよ
うにするかである。このことは、再選された場合の二期目のブッシュ大統領にとって、可
能性はあるが難しい課題である。
米国が支援している貿易自由化グループ内部の成員の連携は、農産物関係グループの利
害の変化に伴って崩れつつあるということが、背景にある。一方では、大豆のような主要
輸出品目はブラジルおよびアルゼンチンとの猛烈な競争に直面しており、それら米国との
競 争 国 に 対 し て グ ロ ー バ ル ・マ ー ケ ッ ト を 開 く 利 益 は ほ と ん ど な い か 、全 く な い( ブ ラ ジ ル
は今年、大豆生産で米国を追い越し、また、米国向けオレンジジュース、砂糖、綿花、肉
な ど の 輸 出 増 加 を 求 め て い る )。他 方 で は 、米 国 の 多 く の 農 家 グ ル ー プ は 、議 会 で 成 立 し た
新しい補助金制度に頼り切っており、そのような補助金を削減するという国際的ないかな
る約束にも関心を失いつつある。
その間、米国議会の二大政党の議員達は、重要な貿易問題が来年の選挙の前に議会に上
程 さ れ る こ と を 望 ん で い な い 。 そ こ に は 、 2004 年 中 に USTR が 交 渉 す る で あ ろ う 貿 易 に 関
する協定について審議することに対する強烈な抵抗がある。ブッシュ大統領は、再選を狙
っている年にわざわざ、このような政治的反感を招き、貿易上の譲歩を議論するような問
題に立ち向かうようなことはしないだろう。
- 35 -
結 論 と し て は 、WTO で の 多 国 間 交 渉 は 、将 来 、米 国 と EU の 政 治 的 事 情 に よ る 支 配 が 少 な
い 適 当 な 枠 組 み が 出 来 る ま で 、延 び 延 び に さ れ て い る 。WTO の 可 能 な タ ー ゲ ッ ト と し て は 、
2007 年 か 2009 年 の 或 る 時 点 ( 選 挙 の な い 年 ) で 、 相 互 ・ 地 域 的 な FTA が 政 治 的 現 実 性 を
も っ て 再 検 討 さ れ る こ と で あ ろ う 。 大 統 領 選 挙 と 同 じ く 、 2004 年 11 月 の 議 会 選 挙 は 、 将
来の米国の貿易政策に重大な影響を及ぼすであろう。ブッシュ大統領が再選されなかった
ら、民主党の大統領が少なくとも2年間は、新しい貿易政策議案の成立に携わることにな
る。そして、民主党の大統領による最初の議案は、保守派の偏見に満ちたものになる可能
性が高いだろう。共和党が上下両院の議席(の過半数)を占めるなら、更なる貿易自由化
への議会の支持を得られる大きなチャンスがあるだろう。若し、民主党が議席を占めたな
ら、更なる貿易の自由化は、数年間は阻止されるだろう。
今の時点で、当社は、米国の貿易政策に有意義で新たなイニシアティブを期待すること
は で き な い 。USTR は 、「 小 さ な 」FTA( 複 数 の )の 交 渉 を 進 め る で あ ろ う 。し か し 、将 来 に
向 け て の 主 要 な ス テ ッ プ は 、2005 年 か そ れ 以 後 の あ る 時 点 ま で は 単 純 に は 実 現 し な い で あ
ろう。
3.1.4 2003年 の 米 国 工 作 機 械 の 動 向
工作機械主要統計(金額ベース)
単位:百万ドル
年
1985
1986
1987
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003(p)
出荷額
輸入額
1,846.8
1,880.5
1,748.7
1,698.6
2,391.1
2,339.4
2,109.2
1,963.8
2,048.7
2,422.5
2,984.9
3,093.9
3,520.2
3,434.2
2,467.5
2,509.3
2,082.6
1,344.7
1,315.7
1,235.0
1,526.7
1,316.9
1,415.0
1,723.0
1,640.5
1,510.9
1,285.4
1,495.3
1,887.3
2,476.9
2,745.3
3,089.0
3,383.0
2,873.0
3,209.1
2,494.0
1,659.8
1,761.3
輸出額
貿易収支
232.8
322.1
324.2
366.7
419.9
518.3
496.5
554.5
438.2
687.0
628.2
712.1
714.4
681.6
603.1
703.8
851.6
519.6
471.2
-1,002.2
-1,204.6
-992.7
-1,048.3
-1,303.1
-1,122.2
-1,014.4
-730.9
-1,057.1
-1,200.3
-1,848.7
-2,033.2
-2,374.6
-2,701.4
-2,269.9
-2,505.3
-1,642.4
-1,140.2
-1,290.7
国 内
消費額
2,849.0
3,085.1
2,741.4
2,746.9
3,694.2
3,461.6
3,123.6
2,694.7
3,105.8
3,622.8
4,833.7
5,127.1
5,894.8
6,135.6
4,737.4
5,014.6
3,725.0
2,485.0
2,606.4
輸出比率
輸入比率
12.6%
17.1
18.5
21.6
17.6
22.2
23.5
28.2
21.4
28.4
21.0
23.0
20.3
19.8
24.4
28.0
40.9
38.6
35.8
43.3%
49.5
48.0
51.5
46.6
47.4
48.4
47.7
48.1
52.1
51.2
53.5
52.4
55.1
60.6
64.0
67.0
66.8
67.6
出所:米国商務省
(p)暫 定 値
備 考 : デ ー タ は 単 価 3,025 ド ル (1990 年 ま で は 2,500 ド ル )以 上 の 機 械 を 対 象 。
- 36 -
単位:百万ドル
図3-1 工作機械の出荷額推移
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03
2003 年 の 米 国 工 作 機 械 出 荷 額( 中 古・再 生 機 、3,025 ド ル 未 満 の 機 械 を 含 ま な い 。)
は 、 前 年 比 2.2% 減 の 13 億 1,566 万 ド ル で あ り 、 前 年 よ り 若 干 減 少 し て い る 。 一 方
で 、 同 年 出 荷 台 数 に つ い て は 前 年 の 16,944 台 か ら 11.3% 増 の 18,853 台 と な っ て い
る。
●受
注
AMT( 米 国 製 造 技 術 工 業 協 会 ) 及 び AMTDA( 米 国 工 作 機 械 販 売 協 会 ) で は 、 1996
年 か ら 両 会 の 共 同 プ ロ グ ラ ム と し て 、米 国 工 作 機 械 受 注 デ ー タ を 地 域 別( 全 米 を 5 地 域
に 分 割 )に 集 計 し て い る 。本 統 計 は 工 作 機 械 需 給 動 向 の み な ら ず 製 造 業 の 設 備 投 資 動 向
等を把握する上で重要な経済指標となっている。
図3-2 米国工作機械国内受注の月別推移
金額
金額 単位:千ドル
台数
台数 単位:台
250,000
5,500
200,000
4,500
3,500
150,000
2,500
100,000
1,500
50,000
1
2
3
4
02年 500
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
03年
出 所 : USMTC
- 37 -
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
本 統 計 に よ れ ば 、 米 国 の 2003 年 切 削 型 工 作 機 械 国 内 受 注 総 額 は 、 18 億 413 万 ド
ル で 、 前 年 比 6.4% 減 と な っ た 。 地 域 別 の 動 向 を 見 る と 、 自 動 車 関 連 の 多 い 中 西 部
(ウィスコンシン、イリノイ、インディアナ、ミシガン及びオハイオの 5 州)が 7
億 878 万 ド ル で 年 間 国 内 受 注 総 額 の 39.3% を 占 め て お り 、次 い で 石 炭・化 学 産 業 の
多 い 南 部 が 3 億 3,239 万 ド ル ( 18.4% )、 石 油 関 連 産 業 の 多 い 中 央 部 が 3 億 2,763
万 ド ル ( 18.2% )、 以 下 、 鉄 鋼 産 業 が 集 ま る 北 東 部 が 2 億 4,365 万 ド ル ( 13.5% )、、
航 空 機 や ハ イ テ ク 産 業 の 集 ま る 西 部 が 1 億 9,169 万 ド ル ( 10.6% ) と い う 構 成 に な
っている。
- 38 -
3.2 工 作 機 械 企 業 動 向
3.2.1 Bridgeport Machines, Inc.
設 立 : 1938年 ( 1999年 Goldman Industrial Groupが 買 収 )
事 業:汎 用 / CNCフ ラ イ ス 盤 、立 形 マ シ ニ ン グ セ ン タ 、平 面 研 削 盤 、CNC旋 盤 、CAM、
機械制御ソフト、アクセサリーの製造・販売
業績:非公開
役 員 : 社 長 D. J. Griffith
株 主 : Goldman Industrial Group, Inc. 100%
本社:コネチカット州ブリッジポート市
住 所 : 500 Lindley St., Bridgeport, CT 06606, U.S.A.
電 話 : (800)243-4292
フ ァ ッ ク ス : (203)335-0454
ホ ー ム ペ ー ジ : http://www.bpt.com
工
場:アメリカ大 陸 - コ ネ チ カ ッ ト 州 Bridgeport、イ リ ノ イ 州 Elgin(Harig Products社 )、
ブ ラ ジ ル (Industrias Romi社 に よ る OEM生 産 )
欧
州 - イ ギ リ ス Leicester、 ド イ ツ Kempten
ア ジ ア - 中 国 ・ 成 都 市 (ジョイントベンチャー)、 インドネシアJakarta(ジョイントベンチャー)
従 業 員 : 934名 ( 1999年 )
生産品目:マシニングセンタ、フライス盤、旋盤、平面研削盤
ブ ラ ン ド 名 : Bridgeport, Harig, EZFeatureMILL
● Goldman Industrial Group 入 り
Bridgeport Machines社 は 1999年 、 Goldman Industrial Group社 ( 本 社 : ボ ス ト ン )
に 買 収 さ れ 同 社 の 傘 下 に 入 っ た 。 Goldman Industrial Group社 は 株 式 非 公 開 企 業 で 、 6
社の子会社を通じて金属加工機械を提供している。製品としては、マシニングセンタ、
旋盤、歯車製造機械、研削盤、歯切り用工具、光学検査機、鋳造機械ならびにその他関
連 機 器 等 で 、こ れ ら の 機 械 は「 Bridgeport」、
「 Fellows」、「Bryant Grinder」、「 Harig」、
「 J&L Metrology」、「 Jones & Lamson」、「 Hill Acme」、「 Loma Machines」等 の ブ ラ ン
ドで販売されている。
傘下各社の概略は次のとおり。
【 Goldman Industrial Group】
◆ Bridgeport Machines, Inc.( Goldmanに よ る 買 収 : 1999年 )
設 立 : 1938年
製品:マシニングセンタ、フライス盤、旋盤、平面研削盤
◆ Bryant Grinder( Goldmanに よ る 買 収 : 1988年 )
設 立 : 1938年
製品:研削盤(内面、円筒)
◆ Fellows Corporation( Goldmanに よ る 買 収 : 1987年 )
設 立 : 1896年
製品:歯車機械、歯切り工具
- 39 -
● Hardingeと 提 携
2002 年 9 月 16 日 付 プ レ ス ・ リ リ ー ス に よ る と 、 Hardinge 社 と 同 社 の 金 額 出 資 子 会 社
Bridgeport Machine社 に よ る と 、 両 社 が 9月 16日 付 で 調 印 し た 同 意 書 に よ り 、 Hardinge
社 は 従 来 Bridgeport Machines社 の 米 国 コ ネ チ カ ッ ト 工 場 が 供 給 し て き た Bridgeportニ
ーミル、同部品、サービス支援機能ならびにその他製品に関わる活動に関し、北米にお
け る 製 造 ・販 売 の 全 責 任 を 引 き う け る こ と と な っ た 。
ま た 、 2002 年 11 月 25 日 付 ウ ェ ブ ・ ニ ュ ー ス に よ る と 、 Hardinge 社 Bridgeport ひ ざ
形 フ ラ イ ス 盤 の 北 米 に お け る 製 造 ・ 販 売 に 関 し 、 2002 年 11 月 25 日 付 で Bridgeport
International 社 と の 最 終 契 約 に 調 印 し た 。 こ の 契 約 に よ り 、 同 社 は か つ て の Bridgeport
Machines 社 が 米 国 コ ネ チ カ ッ ト 工 場 で 生 産 し て き た ひ ざ 形 フ ラ イ ス 盤 の ほ か 、 同 機 種 及
び立形マシニングセンタ用部品の北米における製造・販売及びサービスを担当することと
なった。
3.2.2 Cincinnati Machine – a UNOVA Company
設 立 : 1884年 ( 前 身 Cincinnati Milacron社 )【 1998年 10月 UNOVA社 が 買 収 】
事業:マシニングセンタ、プロファイラー、テープレイヤー、他
業 績 (2003年 ): 売 上 11億 2,261万 ド ル ( UNOVA)
役 員 : 会 長 Larry D. Brady
株 式 公 開 市 場 ( 親 会 社 ): NASDAQ( 略 号 :UNA)
住 所 : 4701 Marburg Avenue, Cincinnati, Ohio 45209, U.S.A.
電 話 : (513)841-8100
フ ァ ッ ク ス : (513)841-8991
ホ ー ム ペ ー ジ : http://www.cinmach.com
事業所:オハイオ州シンシナティ工場、英国バーミンガム工場
● UNOVA 社 に お け る 位 置 付 け
Cincinnati Machine 社 は 、 1998 年 10 月 2 日 、 UNOVA 社 が Cincinnati Milacron 社 か
ら 工 作 機 械 事 業 を 買 収 す る こ と で 設 立 さ れ た 。 現 在 、 Cincinnati Machine 社 は 、 UNOVA
社 Industrial Automation Systems/ IAS( 産 業 用 自 動 化 シ ス テ ム )事 業 本 部 の Advanced
Manufacturing Equipment/ AME( 先 進 製 造 装 置 ) 事 業 部 に 位 置 付 け ら れ て い る 。
UNOVA 社 に お け る そ の 他 の 工 作 機 械 事 業 は 、 Integrated Production Systems/ IPS( 統
合生産システム)事業部の金属切削部門・精密研削/研磨剤部門が手掛けている。これら
部 門 を 構 成 す る 工 作 機 械 企 業 は 、 Lamb Technicon Machining Systems、 Lamb U.K.、
Honsberg Lamb、 R&B Machine Tool、 Michigan Machine & Engineering、 Landis 北 米
研 削 盤 事 業 / 英 国 Landis Lund で あ る 。 な お 、 IPS 事 業 部 に は 工 作 機 械 部 門 の 他 に Auto
Body Assembly Systems/ ABAS( 自 動 車 ボ デ ィ ー 組 立 シ ス テ ム ) 事 業 部 が あ り 、 Lamb
Technicon Body & Assembly と し て 活 動 し て い る 。
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● 2003 年 度 業 績
7 月 28 日 付 け UNOVA 社 に よ る と 、 第 2 四 半 期 の 純 損 益 は 前 年 同 期 が 2,230 万 ド ル 、 1 株
当 た り 0.38 ド ル の 純 利 益 を 計 上 し た の と 対 称 的 に 、 売 上 2 億 9,210 万 ド ル に 対 し 、 80 万
ド ル 、 1 株 当 た り 0.01 ド ル の 純 損 失 と な っ た 。
な お 、2003 年 と 2002 年 の 第 2 四 半 期 に 同 社 は ス マ ー ト 蓄 電 池 に 関 す る 知 的 所 有 権( IP)
係 争 を 和 解 で 決 着 し 、2003 年 同 期 に は 720 万 ド ル の 売 上 と 530 万 ド ル の 営 業 利 益 を 計 上 し
た が 、 前 年 同 期 の IP 関 連 営 業 利 益 と 比 べ る と 、 同 期 は 2,820 万 ド ル 減 と な っ た 。
ま た 、2003 年 第 2 四 半 期 に は 、現 在 進 行 中 の Industrial Automation Systems 部 門( ISA)
の 統 合 と 本 社 移 転 に 関 す る 特 別 費 用 90 万 ド ル が 計 上 さ れ 、税 引 前 営 業 損 益 を 悪 化 さ せ る 一
因になっている。
以 上 の 結 果 、 2003 年 当 初 6 ヵ 月 間 の 純 損 益 は 売 上 高 5 億 6,580 万 ド ル に 対 し 、 1,570 万
ド ル 、1 株 当 た り 0.27 ド ル の 純 損 失 と な っ た 。ち な み に 、前 年 同 期 は 売 上 6 億 4,760 万 ド
ル 、 410 万 ド ル 、 1 株 当 た り 0.07 ド ル の 純 利 益 を 計 上 し た 。
部 門 別 で は 、ISA 部 門 の 第 2 四 半 期 売 上 高 が 前 年 同 期 の 1 億 5,720 万 ド ル か ら 1 億 1,310
万 ド ル に 低 下 し 、そ れ に 伴 い 純 損 失 が 90 万 ド ル か ら 990 万 ド ル に 拡 大 し た 。ま た 、当 初 6
ヵ 月 の 売 上 も 前 年 同 期 の 3 億 930 万 ド ル か ら 2 億 2,380 万 ド ル に 落 ち 込 み 、営 業 損 失 は 100
万 ド ル か ら 2,030 万 ド ル に 悪 化 し た 。
な お 、 ISA 部 門 の 6 月 30 日 現 在 の 受 注 残 高 は 2 億 8,570 万 ド ル で 、 2002 年 末 日 水 準 を
5,070 万 ド ル 上 回 っ て い る 。
同 社 の 2003 年 決 算 に よ る と 、 売 上 は 12 億 7,000 万 ド ル か ら 11 億 2,261 万 ド ル に 低 下
し 、純 損 益 は 前 年 の 利 益 240 万 ド ル 、1 株 当 た り 0.04 ド ル 1,930 万 ド ル 、1 株 当 た り 0.33
ド ル の 損 失 に 転 落 し た 。 継 続 事 業 の 営 業 損 益 は 4,370 万 ド ル の 利 益 を 計 上 し た が 、 前 年 の
9,540 万 ド ル を 大 き く 下 回 っ た 。 決 算 に は 1,250 万 ド ル に 上 る 知 的 所 有 権 訴 訟 決 着 費 用 な
ら び に 一 部 知 的 所 有 権 の 販 売 益 が 含 ま れ て い る 。な お 、2003 年 に お け る 製 品 な ら び に サ ー
ビ ス 部 門 の 営 業 利 益 は 前 年 を 2,590 万 ド ル 上 回 っ た 。
● トピックス
7 月 21 日 付 け UNOVA プ レ ス リ リ ー ス に よ る と Cincinnati Machine 社 に よ る と 、 同 社 は
最 近 European Aeronautic Defense & Space 社 ( EADS) と 生 産 機 械 な ら び に シ ス テ ム の 調
達 に 関 す る 合 意 覚 書 に 調 印 し た 。こ の 合 意 は EADS 社 が 全 社 的 に 実 施 し て い る 世 界 調 達 戦 略
の一環をなすもので、市場ニーズによりよく対応するために持続的かつ優れた仕事の達成
に意欲的なサプライヤーと長期的関係を構築するのが狙い。
合 意 内 容 は EADS 社 の 全 事 業 ユ ニ ッ ト に 適 用 さ れ 、同 社 と「 競 争 的 パ ー ト ナ ー シ ッ プ 」と
称する最良サプライヤーとの関係強化を可能にすると言う。なお、その対象となる生産機
械ならびに同システム分野の製品としては自動複合テープ敷設機械や繊維配置システムが
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ある。
9 月 5 日 付 け UNOVA 社 プ レ ス ニ ュ ー ス に よ る と 、 同 社 は 9 月 5 日 を も っ て 、 Lamb Body &
Assembly Systems 事 業 の 全 資 産 な ら び に 受 注 残 の Utica Body & Assembly 社 へ の 売 却 を 完
了した。なお、売却額は売却資産の正味簿価相当となっている。
Lamb Body & Assembly Systems 事 業 は ロ ボ ッ ト 溶 接 や 縁 曲 げ シ ス テ ム を 含 む 、 自 動 車 車
体・組立機械の開発、統合、製造を行っており、今回の売却には同事業の工学サービス子
会 社 J.S. McNamara Company も 含 ま れ て い る 。
UNOVA 社 の 9 月 15 日 付 発 表 に よ る と 、 同 社 の ス マ ー ト 蓄 電 池 管 理 技 術 を 巡 る 、 Gateway
社に対する特許権侵害訴訟が決着した。但し、決着の条件と金額は公表されていない。
同 社 の Daniel S. Bishop 上 級 副 社 長 兼 法 律 顧 問 は 今 回 の 結 果 に つ い て 、 次 の よ う に 述 べ
て い る 。「 北 米 市 場 の 80% 以 上 を 占 め て い る ポ ー タ ブ ル ・ コ ン ピ ュ ー タ ー ・ メ ー カ ー 10 社
が、当社知的所有権の法的有効性を認め、現在スマート蓄電池管理技術を当社からライセ
ン ス し て い る 。当 社 の Intermac 事 業 部 門 が 他 社 に 先 駆 け て 開 発 し た 産 業 用 ポ ー タ ブ ル・コ
ンピューターの蓄電池寿命延長技術が、何百万もの商業用コンピューター・ユーザーを益
し て い る 。」
3.2.3 Giddings & Lewis, Inc.
設 立 : 1859年 ( 1997年 9月 30日 、 ド イ ツ Thyssenに よ り 吸 収 合 併 )
事業:産業用オートメーション製品、工作機械の製造並びにこれらに対するサービス
業績:非公開
役員:社長
Stephen M. Peterson
株 主 : Thyssen Krupp USA Inc.( 99% )、 Thyssen Krupp Industries AG( 1% )
本社:ウィスコンシン州フォンデュラック市
住 所 : 142 Doty Street, P.O.Box 590, Fond du Lac, WI 54936-0590, U.S.A.
電 話 : (920)921-9400
フ ァ ッ ク ス : (920)929-4522
ホ ー ム ペ ー ジ : http://www.giddings.com
従 業 員 : 3,100名 ( 1999年 )【 Thyssen Production Systems: 8,578名 】
主 な ブ ラ ン ド 名 : Cordax, Fadal, Giddings & Lewis, Sheffield Measurement, PiC,
Kearney & Trecker, Warner & Swasey, Cross, G.A.Gray, Gisholt,
Bickford, Winslow, Drillunit, Gilman
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● 事業再編
Giddings & Lewis社 は 北 米 最 大 の 工 作 機 械 及 び 関 連 製 品 サ プ ラ イ ヤ ー で あ る 。機 構 的
に は 、 Giddings & Lewis, Inc. が 、 Fadal Engineering 、 Automation Technology 、
Automation Control、Sheffield Measurement、Gilman、Gidding & Lewis Cross Hüller、
Cross Hüllerの 各 事 業 部 門 を 統 括 す る 形 で あ る 。 各 部 門 の 製 品 ラ イ ン 等 は 次 の と お り で
ある。
◆ Fadal Engineering( Giddings & Lewis, Inc.の 子 会 社 )
製品:立形マシニングセンタ
工 場 : カ リ フ ォ ル ニ ア 州 Chatsworth
◆ 自 動 化 技 術 ( Automation Technology) 事 業
製品:工作機械単体(大型横形マシングセンタ、大型立て旋盤、ターニングセン
タ 、ド リ ル 研 削 盤 )、シ ス テ ム 製 品 、ツ ー リ ン グ・取 付 具 、レ ト ロ フ ィ ッ ト
事業
本 拠 : ウ ィ ス コ ン シ ン 州 Fond du Lac
主 な ブ ラ ン ド:Bickford、Davis、Giddings & Lewis、Gisholt、Gray、Kearney
& Trecker、 Warner & Swasey
特徴:大型横形マシニングセンタ、大型立て旋盤の市場リーダー
◆ 自 動 制 御 ( Automation Control) 事 業
製 品:産業用制御装置、CNC装置、サーボモーター、サーボドライブ、ソフトウェア
主 な ブ ラ ン ド : Giddings & Lewis、 Navigator、 PiC、 NumeriPath
本 拠 : ウ ィ ス コ ン シ ン 州 Fond du Lac
◆ シ ェ フ ィ ー ル ド 測 定 ( Sheffield Measurement) 事 業
製品:座標測定装置、検査用ソフトウェア
本 拠 : オ ハ イ オ 州 Dayton
◆ ギ ル マ ン ( Gilman) 事 業
製品:組立・溶接システム(航空宇宙、自動車、家電向け)
主 な ブ ラ ン ド : Gilman、 Cross
工 場 : ウ ィ ス コ ン シ ン 州 Janesville
◆ G&Lク ロ ス ・ ヒ ュ ー ラ ー ( 英 国 Giddings & Lewis Ltd.の 一 事 業 )
製 品:ト ラ ン ス フ ァ ー ラ イ ン 、横 形 マ シ ニ ン グ セ ン タ( 重 切 削 用 )、立 形 マ シ ニ ン
グセンタ
主 な ブ ラ ン ド : Kearney & Trecker 、 Warner & Swasey 、 Kearney Trecker
Marwin (KTM) 、 Flexible Mfg. Technology (FMT) 、 Kearnes
Richards、Cross、Hüller Hille、Diedesheim、Hessap、Witzig &
Frank
工 場 : 英 国 マ ー ジ ー サ イ ド 州 Knowsley
◆ ク ロ ス ・ ヒ ュ ー ラ ー ( Cross Hüller) 事 業
製品:トランスファーライン/専用機(自動車産業向け)
主 な ブ ラ ン ド:Colonial Broach、 LaSalle、Buhr、Avey、Drillunit、Michigan
Special Machine、Giddings & Lewis、Place、Cross & Trecker、
Hüller Hille
工 場:ミ シ ガ ン 州 Fraser/ Port Huron/ Warren、カ ナ ダ・オ ン タ リ オ 州 Windsor
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3.2.4 Haas Automation, Inc.
設 立 : 1983年
業 績 ( 2000年 ): 売 上 3億 2,880万 ド ル
本 社 : カ リ フ ォ ル ニ ア 州 Oxnard
住 所 : 2800 Sturgis Rd., Oxnard, CA 93030 U.S.A.
電 話 : (805)278-1800
フ ァ ッ ク ス : (805)278-8540
ホ ー ム ペ ー ジ : http://www.haascnc.com
従 業 員 : 894名 ( 2000年 )
主 な 生 産 品 目 : 横 形 マ シ ニ ン グ セ ン タ 、 立 形 マ シ ニ ン グ セ ン タ 、 NC旋 盤 、 NCロ ー タ
リーテーブル、心押し台等
Haas Automation社 は 、1983年 に 経 済 的 で 高 信 頼 性 の 工 作 機 械 生 産 に 重 点 を 置 く べ く 、
Gene Haasに よ り 設 立 さ れ た 。 1987年 に フ ラ イ ス 、 研 削 、 タ ッ ピ ン グ 、 中 ぐ り と い っ た
工程を全て可能にした立形マシニングセンタの開発に着手し、その後、横形マシニング
セ ン タ 、CNC旋 盤 等 へ と 製 品 ラ イ ン を 大 幅 に 拡 大 し た 。現 在 、カ リ フ ォ ル ニ ア 州 Oxnard
に 約 75,000平 方 メ ー ト ル の 面 積 を 誇 る 敷 地 に 、 本 社 及 び 工 場 を 所 有 し て お り 、 ま た 、 こ
の 工 場 に は FMSが 敷 設 さ れ 、 24時 間 操 業 (無 人 運 転 含 む )を 行 っ て い る 。 同 社 の 1990年 代
初 頭 の 売 上 高 は 、僅 か 1,500万 ド ル 程 で あ っ た が 、1990年 代 半 ば に は 2億 ド ル 強 へ と 急 成
長 、 2000年 に は 、 さ ら に 3億 ド ル を 突 破 し た 。 現 在 の 主 力 生 産 品 目 は 、 立 形 マ シ ニ ン グ
セ ン タ( VMC's)、横 形 マ シ ニ ン グ セ ン タ( HMC's)、CNC旋 盤 及 び ロ ー タ リ ー テ ー ブ ル
の4品目となっている。
Haas Automation社 の 2001年 12月 6日 付 ニ ュ ー ス ・ リ リ ー ス に よ る と 、 同 社 は こ の ほ
ど ISO 9001:2000の 認 証 を 取 得 し た 。こ れ は 、品 質 管 理 、品 質 保 証 、継 続 的 改 善 の 規 格
としては最新のものである。これによって、同社では製品開発、生産、出荷、支援事業
のすべてに渡って品質システムが確立したことになる。
な お 、 認 証 取 得 に あ た っ て は 、 同 社 の 品 質 工 程 な ら び に 手 続 き の 評 価 機 関 と し て TUV
Management Systems社 が 起 用 さ れ 、 2001年 11月 29日 に 認 証 監 査 を 完 了 し た 。
2002年 1月 10日 付 プ レ ス・リ リ ー ス に よ る と 、同 社 の 2001年 に お け る CNC工 作 機 械 の
総 売 上 台 数 は 4,583台 で 、米 国 の 工 作 機 械 受 注 が 31%落 ち 込 む 中 、11%減 に 止 ま っ た 。製
品 別 で は 、立 形 マ シ ニ ン グ セ ン タ と 新 製 品 Toolroom Millの 販 売 が 好 調 に 推 移 し 、特 に マ
シ ニ ン グ セ ン タ の シ ェ ア は 国 内 消 費 ベ ー ス で 5 % 拡 大 し 、 39% に 達 し た 。 そ の 他 で は 、
旋 盤 の 売 上 も 堅 調 で 台 数 ベ ー ス で 前 年 を 10.5%上 回 り 、 国 内 シ ェ ア も 15%に 上 っ て い る 。
ち な み に 、 2000年 の 売 上 は 3億 2,880万 ド ル で あ っ た 。
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2003 年 4 月 11 日 付 Venture County Star 紙 に よ る と 、 IRS( 米 国 税 歳 入 局 ) が 2003 年 4
月 10 日 、 Haas Automation 社 の 財 務 記 録 を 押 収 し た 。 IRS の 犯 罪 捜 査 部 門 ス ポ ー ク ス マ ン
によると、捜査の目的と内容は明かせないが、犯罪捜査であることは間違いないと言う。
同 社 の Dennis Dupois ゼ ネ ラ ル・マ ネ ー ジ ャ ー も 、捜 査 令 状 の 内 容 は 一 般 的 な の も で 、IRS
が何を探しているのか不明だとしている。
Haas Automation 社 は カ リ フ ォ ル ニ ア 州 ベ ン チ ュ ラ 郡 の オ ッ ク ス ナ ー ド に 本 社 を 構 え て 6
年 、従 業 員 735 人 を 擁 し て CNC 工 作 機 械 を 製 造・販 売 す る か た わ ら 、1995 年 以 来 モ ー タ ー
ス ポ ー ツ に も 関 わ り 、 2002 年 に は NASCAR Winston Cup シ リ ー ズ に 参 加 し て い る 。
3.2.5 Hardinge Inc.
設 立 : 1937年
製品(子会社含む)
:旋盤、マシニングセンタ、研削盤、放電加工機、ツーリング、アクセサリー
業 績 (2003年 ): 売 上 1億 8,530万 ド ル
役 員 : 会 長 / CEO Robert E. Agan
株 式 公 開 市 場 : NASDAQ( 略 号 :HDNG)
株 主 : 関 係 者 36% 、 機 関 投 資 家 61% ( 浮 動 株 の 95% )
本社:ニューヨーク州エルミラ市
住 所 : One Hardinge Drive, P.O.Box 1507 Elmira, NY14902-1507, U.S.A.
電 話 : (607)734-2281
フ ァ ッ ク ス : (607)734-5517
ホ ー ム ペ ー ジ : http://www.hardinge.com
従 業 員 数 : 1,266名 ( 2000年 12月 現 在 )
子会社・合弁会社:
◆ Canadian Hardinge Machine Tools, Ltd.
設 立 : 1958年
◆ Hardinge Machine Tools, Ltd.( 英 国 )
設 立:1939年( 完 全 子 会 社 化:1981年 )
◆ Hardinge GmbH
設 立 : 1987年
◆ L. Kellenberger & Co., AG
設 立 : 1995年 11月 ( 株 式 100% 買 収 )
本 拠 : ス イ ス St. Gallen
◆ Hardinge Shanghai Company, Ltd.
設 立 : 1996年
◆ Hansvedt Industries, Inc.
設 立 : 1997年 ( 株 式 100% 買 収 )
◆ Hardinge Taiwan Precision Machinery Limited.
◆ HTT Hauser Tripet Tschudin AG
(株式の過半を保有)
2000年 12月 20日 ( 完 全 買 収 を 合 意 )
◆ Hardinge EMAG GmbH
設 立 : 2000年 ( 合 弁 会 社 )
● 四半期業績の推移
Hardinge 社 の 発 表 に よ る と 、第 1 四 半 期( 2003 年 1~ 3 月 )決 算 は 10 万 ド ル 、基 本 な ら び
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に 稀 薄 化 1 株 あ た り 0.01 ド ル の 損 失 と な っ た 。 ち な み に 、 前 年 同 期 は 10 万 ド ル の 純 利 益
を計上した。
一 方 、 同 期 の 売 上 高 は 4,090 万 ド ル で 、 前 年 同 期 の 4,380 万 ド ル を 6.6% 下 回 っ た 。 地
域 別 で は 北 米 が 1,470.7 万 ド ル( - 22% )、欧 州 が 1,813.1 万 ド ル( - 4% )、ア ジ ア そ の 他
が 好 調 な 中 国 向 け を 中 心 に 806.4 万 ド ル ( + 33% ) と な っ た 。
第 1 四 半 期 の 受 注 額 は 4,980 万 ド ル で 、 前 年 同 期 の 3,940 万 ド ル を 4% 上 回 っ た 。 地 域
別 で は 北 米 が 1,961.7 万 ド ル ( + 1% )、 欧 州 が 1,260.7 万 ド ル ( - 6% )、 ア ジ ア そ の 他 が
858.0 万 ド ル( + 32% )と な っ た 。な お 、3 月 末 日 現 在 の 受 注 残 高 は 3,670 万 ド ル で 、前 年
同 期 末 日 な ら び に 12 月 末 日 残 高 を 各 々 21.6% 、 1.0% 下 回 っ て い る 。
Hardinge 社 の 第 2 四 半 期 ( 4- 6 月 ) 決 算 に よ る と 、 売 上 は 前 年 同 期 の 4,410 万 ド ル を
7.7% 上 回 る 4,750 万 ド ル に 拡 大 し 、 純 利 益 も 10 万 ド ル 、 基 本 な ら び に 稀 薄 化 1 株 当 た り
0.02 ド ル か ら 60 万 ド ル 、 同 1 株 当 た り 0.07 ド ル と な っ た 。
以 上 の 結 果 、 2003 年 度 当 初 6 ヵ 月 の 売 上 高 は 前 年 同 期 の 8,780 万 ド ル を 60 万 ド ル 上 回
る 8,840 万 ド ル と な っ た が 、 純 利 益 は 50 万 ド ル 、 基 本 並 び に 稀 薄 化 1 株 当 た り 0.06 ド ル
に 止 ま っ た 。ち な み に 、前 年 同 期 の 純 利 益 は 20 万 ド ル 、同 1 株 当 た り 0.02 ド ル で あ っ た 。
同社によると、売上増は欧州子会社の売上をドル換算する際に、ドル安が有利に作用し
た た め で 、 恒 常 ド ル に よ る 換 算 で は 、 第 2 四 半 期 の 前 年 比 伸 び 率 は 0.2% に す ぎ な い 。
一 方 、 第 2四 半 期 の 受 注 額 は 4,522万 ド ル で 、 前 年 同 期 を 13% 上 回 っ た 。 ま た 、 1- 6
月 ベ ー ス で は 8,602万 ド ル と な り 、 前 年 同 期 比 9% 増 加 し た 。
Hardinge 社 に よ る と 、 第 3 四 半 期 の 税 引 前 利 益 ( EBT) は 売 上 4,400 万 ド ル に 対 し 、
60 万 ド ル と な り 、前 年 同 期 の 売 上 3,930 万 ド ル 、損 失 160 万 ド ル か ら 黒 字 転 化 し た 。ま た 、
1- 9 月 の 通 算 で は 、 売 上 1 億 3,240 万 ド ル に 対 し て 160 万 ド ル と な り 、 前 年 同 期 の 売 上 1
億 2,710 万 ド ル 、 損 失 40 万 ド ル か ら 大 き く 改 善 し た 。
なお、第 3 四半期の税引後損益には米国事業関連の繰延税資産に対する評価引当金とし
て 1,370 万 ド ル 相 当 の 非 現 金 費 用 が 含 ま れ て お り 、 そ れ が 同 期 の 純 損 失 1,340 万 ド ル ( 1
株 当 た り 基 本 ・ 希 薄 化 共 1.54 ド ル ) の 一 因 に な っ て い る 。 ち な み に 、 前 年 同 期 は 20 万 ド
ル ( 基 本 ・ 希 薄 化 共 0.02 ド ル ) の 純 損 失 を 計 上 し た 。
以 上 を 含 め 、 1- 9 月 の 評 価 引 当 費 用 の 影 響 を 算 入 し た 純 損 失 は 1,290 万 ド ル ( 1 株 当 た
り 基 本 で 1.54 ド ル 、希 薄 化 で 1.48 ド ル )と な っ た 。前 年 同 期 の 損 益 は 純 利 益 10 万 ド ル 弱
( 1 株 当 た り 基 本 ・ 希 薄 化 共 に 0.01 ド ル 弱 ) で あ っ た 。
一 方 、第 3 四 半 期 の 売 上 高 4,400 万 ド ル は 前 年 同 期 の 3,930 万 ド ル を 12%上 回 っ て お り 、
1- 9 月 の 売 上 高 1 億 3,240 万 ド ル も 前 年 同 期 の 1 億 2,710 万 ド ル よ り 4%多 い 。
地域別では、第 3 四半期は米国内の売上が同社中核事業の改善と今年の 1 月に新たに加
わ っ た Bridgeport 製 品 と 部 品 の 販 売 で 増 加 し た 。 同 期 の 欧 州 向 け 売 上 は 80 万 ド ル に 上 る
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通 貨 換 算 差 益 の 恩 恵 を 受 け た が 、現 地 通 貨 に よ る 1- 9 月 の 売 上 高 が 減 少 し た こ と は 、欧 州
市 場 が 2002 年 以 降 大 き く 落 ち 込 ん で い る こ と を 反 映 し て い る 。一 方 、ア ジ ア 向 け が 15%減
少したのは出荷のタイミングが影響していると言う。
Hardinge 社 の 発 表 に よ る と 、2003 年 第 4 四 半 期 の 営 業 利 益 は 前 年 同 期 比 70 万 ド ル( 33% )
増 の 280 万 ド ル と な り 、通 年 ベ ー ス で も 280 万 ド ル 改 善 し 450 万 ド ル に 拡 大 し た 。し か し 、
第 4 四 半 期 の 純 利 益 は 前 年 同 期 の 200 万 ド ル 、 1 株 当 た り 0.23 ド ル か ら 170 万 ド ル 、 1 株
当 た り 0.19 ド ル に 縮 小 し 、 通 年 で は 前 年 の 200 万 ド ル 、 1 株 当 た り 0.23 ド ル か ら 1,130
万 ド ル 、 1 株 当 た り 1.30 ド ル の 純 損 失 と な っ た 。
一 方 、 第 4 四 半 期 の 売 上 高 は 前 年 同 期 の 4,193 万 ド ル か ら 5,291 万 ド ル に 、 26% 拡 大 し
た。ただし、これは同社欧州子会社の売上をドル換算する際のユーロに対するドル安効果
が 反 映 し て お り 、2002 年 為 替 相 場 の 恒 常 ド ル に よ る 換 算 で は 18% 増 に 止 ま る 。通 年 ベ ー ス
で も 売 上 は 安 定 価 値 換 算 で 3% 伸 び た 。
市 場 別 で は 、北 米 の 売 上 が 米 国 に お け る Bridgeport 製 品 系 列 の 追 加 や 自 動 車 サ プ ラ イ ヤ
ー 1 社 と の 大 型 案 件 等 で 、第 4 四 半 期 が 前 年 同 期 比 54% 増 、通 年 ベ ー ス で も 前 年 を 15% 上
回 っ た 。 欧 州 も 経 常 ド ル 換 算 で は 第 4 四 半 期 が 16% 増 、 通 年 が 4% 増 と な っ た が 、 恒 常 ド
ル で は 第 4 四 半 期 が 前 年 同 期 並 、通 年 が 外 貨 換 算 調 整 済 み で 13% 減 と な る 。一 方 、ア ジ ア・
そ の 他 は 中 国 を 中 心 に 好 調 に 推 移 し 、第 4 四 半 期 が 高 水 準 の 前 年 同 期 と 横 ば い 、通 年 が 10%
増となった。
ま た 、受 注 は 第 4 四 半 期 が 恒 常 ド ル 換 算 で 前 年 同 期 を 19% 上 回 り 、通 年 ベ ー ス で も 前 年
比 2,000 万 ド ル( 13% )増 と な っ た 。地 域 別 で は 、北 米 の 第 4 四 半 期 受 注 が 前 年 同 期 比 26%
増 の 2,368 万 ド ル と な り 、通 年 で も 25% 増 の 8,782 万 ド ル に 拡 大 し た 。一 方 、第 4 四 半 期
の 外 貨 換 算 調 整 済 み の 欧 州 か ら の 受 注 は 前 年 同 期 を 約 27% 上 回 り 、通 年 ベ ー ス の 恒 常 ド ル
換 算 の 受 注 は 1% の 伸 び に 止 ま っ た 。 ア ジ ア ・ そ の 他 の 受 注 は 第 4 四 半 期 が 前 年 同 期 比 横
ば い 、 通 年 で 16% 拡 大 し た 。
な お 、 Hardinge 社 の 2003 年 12 月 31 日 現 在 の 連 結 受 注 残 高 は 4,250 万 ド ル で 、 前 年 を
15% 上 回 っ て い る 。
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表3-3.損益計算書
【 Hardinge】
単 位 : 千 ド ル (1 株 当 り データを 除 く )
売上高
売上原価
売上高総利益
販売費・一般管理費
営業利益
支払利息
利 息 (受 取 )
所得税引前利益
所得税(利益)
連 結 子 会 社 売 却 に 伴 う 少 数 株( 受 取 )
連結対象外会社への投資利益
純利益(損失)
1株当り利益-基準(損失)
加 重 平 均 発 行 済 株 式 数 -基 準
1株当り利益-希薄後(損失)
加 重 平 均 発 行 済 株 式 数 -希 薄 後
粗利率
営業利益率
資本支出
償却・償還
2003年 12月 31日
185,302
130,698
54,604
47,731
(6,873)
2,917
(500)
4,456
14,667
(1,257)
184
(11,284)
(1.30)
8,708,000
(1.30)
8,708,000
29.5%
3.7%
1,504
8,668
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2002年 12月 31日
169,014
117,403
51,611
46,448
(5,163)
3,978
(496)
1,681
(868)
(566)
17
2,000
.23
8,687,000
.23
8,687,000
30.5%
3.1%
2,337
8,967
● トピックス
2003 年 6 月 1 日 付 American Machinist 誌 に よ る と 、 Hardinge 社 は 去 年 9 月 に 調 印 し た
同 社 の 子 会 社 Bridgport Machine 社 と の 合 意 に よ り 、 Bridgeport Machne 社 コ ネ チ カ ッ ト
工場が供給してきた製品の製造・販売を引き受けることになっているが、この程コネチカ
ッ ト 工 場 の 製 造 ラ イ ン 移 設 が 完 了 し 、 す で に Bridgeport 製 品 の 供 給 が 再 開 さ れ て い る 。
そ れ に 至 る 経 緯 に つ い て 、 American Machnist 誌 が 両 者 関 係 者 の イ ン タ ビ ュ ー に 基 づ い
て、次のように伝えている。
コ ネ チ カ ッ ト 工 場 の 全 製 造 ラ イ ン を ニ ュ ー ヨ ー ク 州 の Hardinge 社 エ ル ミ ラ 工 場 に 移 設
する作業は、単に機械数台を移せば生産が再開できるという程簡単な話ではない。まず、
工作機械メーカーの納期は厳しく、第 1 号機をわずか 9 週間で完成させねばならない。し
か も 、 生 産 を 合 理 化 し 、 元 の 設 備 を か つ て の 10 分 の 1 の ス ペ ー ス に 収 め る 必 要 が あ っ た 。
コ ネ チ カ ッ ト 工 場 が 生 産 を 停 止 し た の が 昨 年 6 月 。ま ず 、サ プ ラ イ・チ ェ ー ン を 復 旧 し 、
部品供給を確保する必要があった。一方、両社合同の移設チームは同工場の在庫を調べ、
移設機械の選別やエルミラ工場の床面レイアウトに取り組んだ。
最初の移設機械が設置されたのが今年初。2 月中頃までには殆どの機械の設置と配線が
完 了 し た 。そ し て 、生 産 が 始 ま り 、第 1 号 機 が 3 月 6 日 に ラ イ ン オ フ し て 、Westec 社 に 納
入された。
こ の よ う な 短 期 の 生 産 立 ち 上 げ が で き た の は 、 Hardinge 社 が Bridgeport Machine 社 や
外部のエキスパートとチームを組んで取り組んだためである。例えば、フロー製造のレイ
ア ウ ト 面 で は JCIT Training Institute が 、 コ ー テ ィ ン グ で は Allspec 社 が 、 エ レ ク ト ロ
ニ ク ス に つ い て は Zeller Electric 社 が 、 部 品 製 造 に 関 し て は Skico 社 が 、 清 算 関 係 で は
Kosker Industries 社 が パ ー ト ナ ー と な っ た 。し か し 、こ の チ ー ム の 第 1 人 者 は Bridgport
Machine 社 の 従 業 員 グ ル ー プ か ら 成 る Machine Tool Builders of New England で あ っ た 。
チ ー ム が 結 成 さ れ る や 、 Hardinge 社 は 作 業 面 積 を 144,000 平 方 フ ィ ー ト か ら 15,500 平
方 フ ィ ー ト に 圧 縮 す る 作 業 に 取 り 掛 か っ た 。 機 械 の 数 も 76 台 か ら 32 台 に 減 ら し た 。 ち な
み に 、コ ネ チ カ ッ ト 工 場 の 月 産 能 力 は 約 400 台 で あ っ た が 、最 後 は わ ず か 85 台 に な っ て い
た 。 エ ル ミ ラ 工 場 の 月 産 能 力 は 300 台 が 目 標 。
ま た 、Hardinge 社 が 引 き 受 け た 時 点 の コ ネ チ カ ッ ト 工 場 の 仕 掛 品 在 庫 は 150 万 ド ル 、営
業 在 庫 は 350~ 400 万 ド ル あ っ た が 、エ ル ミ ラ 工 場 で は 435,000 ド ル を 目 指 し て い る 。更 に 、
Bridgeport 社 時 代 は 原 材 料 搬 入 か ら 製 品 化 ま で の サ イ ク ル タ イ ム が 約 90 日 だ っ た が 、 現
在 は 約 10 日 に 短 縮 さ れ て お り 、 最 終 的 に は 5 日 を 目 指 し て い る 。
加 工 機 械 に つ い て も 、 Hardinge 社 は Bridgeport 社 が ニ ー ミ ル の 生 産 に 長 年 使 っ て き た
特 別 仕 様 の 機 械 を 使 い 続 け て い る 。そ の な か に は 、1 回 の セ ッ ト ア ッ プ で 17 の 個 別 作 業 を
こなせる機械もあると言う。
- 49 -
3.2.6 Hurco Companies, Inc
設 立 : 1968年
事 業 : CNC装 置 ( 対 話 型 )、 ソ フ ト ウ ェ ア 、 CNC工 作 機 械 の 設 計 ・ 製 造 ・ 販 売
業 績 (2003年 10月 期 ): 売上7,553万ドル
役 員 : 会 長 / CEO
Michael Doar
株 式 公 開 市 場 : NASDAQ( 略 号 :HURC)
本社:インディアナ州インディアナポリス市
住 所 : One Technology Way, Indianapolis, IN 46268, U.S.A.
電 話 : (317)293-5309
フ ァ ッ ク ス : (317)347-6201
ホ ー ム ペ ー ジ : http://www.hurco.com
従 業 員 : 292名 ( 2001年 10月 現 在 )
在外製造拠点: (完全子会社)台湾
(パートナー)ポーランド、スペイン、イタリア、台湾、チェコ
主 要 顧 客:産 業 用 装 置( 45% )、電 子・電 気( 20% )、自 動 車( 15% )、金 属 製 品( 15% )、
航 空 宇 宙 ・ 防 衛 ( 5% )
● 2003年 業 績
Hurco 社 に よ る と 、2003 年 度( 10 月 31 日 締 )の 決 算 は 46 万 2,000 ド ル 、1 株 当 た り 0.08
ド ル の 純 利 益 を 計 上 し 、 前 年 度 の 純 損 失 826 万 3,000 ド ル 、 1 株 当 た り 1.48 ド ル 、 か ら 黒
字 回 復 を 果 た し た 。な お 、第 4 四 半 期 は 57 万 4,000 ド ル 、1 株 当 た り 0.10 ド ル の 純 利 益 と
な り 、前 年 同 期 の 176 万 ド ル 、1 当 た り 0.32 ド ル の 純 損 失 か ら 大 き き 改 善 し た 。同 社 で は 、
ユ ー ロ に 対 す る ド ル 安 、 第 4 四 半 期 の 大 幅 な 売 上 と サ ー ビ ス 手 数 料 収 入 の 伸 び 、 過 去 18
ヵ 月 間 に 実 施 し た リ ス ト ラ の 効 果 等 が 黒 字 転 換 に 貢 献 し た と し て い る 。ち な み に 、2002 年
度 の 決 算 に は 383 万 8,000 ド ル の リ ス ト ラ 費 用 が 含 ま れ て い た 。
一 方 、 2003 年 度 の サ ー ビ ス 手 数 料 収 入 を 含 む 総 売 上 高 は 7,553 万 2,000 ド ル で 、 前 年 の
7,048 万 6,000 ド ル を 大 き く 上 回 っ た 。し か し 、そ の 内 の 国 外 売 上 高 は 欧 州 通 貨 に 対 す る ド
ル安のプラス効果を反映しており、安定価値での総売上高は欧州への出荷減により前年度
を 183 万 7,000 ド ル ( 3%) 下 回 っ た 。 な お 、 第 4 四 半 期 の 総 売 上 高 は 2,377 万 2,000 ド ル
で 、 前 年 同 期 の 1,876 万 7,000 ド ル を 大 き く 上 回 わ り 、 安 定 価 値 で も 米 国 等 で の 売 上 増 を
背 景 に 前 年 同 期 を 314 万 3,000 ド ル ( 17%) 上 回 っ た 。
2003 年 度 は 受 注 も 好 調 で 、前 年 度 の 6,699 万 2,000 ド ル を 16%上 回 る 7,785 万 1,000 ド ル
と な っ た 。 第 4 四 半 期 は 全 年 同 期 比 41%増 の 2,450 万 ド ル で 、 安 定 価 値 で も 国 内 や そ の 他
で の 伸 び で 前 年 同 期 を 487 万 6,000 ド ル( 28%)上 回 っ た 。な お 、10 月 31 日 現 在 の 受 注 残
高 は 815 万 3,000 ド ル 、 前 年 同 時 点 で は 531 万 5,000 ド ル で あ っ た 。
● トピックス
Hurco は 2003 年 6 月 2 日 現 在 、 同 社 普 通 株 を 最 大 で 99 株 所 有 し て い る 個 人 株 主 か ら 持
ち 株 の 全 数 を 、 1 株 3.35 ド ル で 買 い 取 る 株 式 公 開 買 い 付 け を 開 始 し た 。 取 得 価 格 に は 6
- 50 -
月 2 日 現 在 の NASDAQ 全 国 市 場 で の 最 終 売 値 に 対 す る 19.6% の プ レ ミ ア ム が 含 ま れ て い
る。
今 回 の 公 開 買 い 付 け で は 売 却 申 し 出 総 株 数 の 最 低 条 件 は 設 け ら れ て い な い が 、同 社 は 買
い 付 け を 進 め る こ と が 得 策 で な い と 判 断 し た 場 合 は 、買 い 付 け を 取 り 消 す 権 利 を 留 保 し て
いる。
表3-4.損益計算書
【 Hurco】
売上高
売上原価
売上高総利益
販売費・一般管理費
リストラ費用
営業利益(損失)
ライセンス料 及 び 訴 訟 和 解 金 純 収 入
支払利息
その他純所得(費用)
所得税引前利益(損失)
所得税引当金
純利益(損失)
単 位 : 千 ド ル (1 株 当 り データ/配 当 金 を 除 く )
2003年 10月 31日
75,532
54,710
20,822
18,749
(124)
19,658
2,755
2,197
(7,167)
658
(119)
1,420
958
462
普通株1株当り利益(損失)
基 準
希薄後
加重平均発行済株式数
基 準
希薄後
貸借対照表データ
2002年 10月 31日
70,486
54,157
15,246
0.08
0.08
5,582,000
5,582,000
163
634
(36)
(7,674)
589
(8,263)
(1.48)
(1.48)
5,583,000
6,583,000
2003年 10月 31日
2002年 10月 31日
現金・現金等価物
受取手形
在 庫
その他流動資産
流動資産総計
長期受取ライセンス料
所有物・設備
(減 価 償 却 ・償 還 費 控 除 後 )
ソフトウェア開 発 費
(減 価 償 却 ・償 還 費 控 除 後 )
その他資産
資産総計
5,289
12,823
22,247
1,409
42,390
4,358
13,425
22,548
1,204
41,535
8,382
8,808
1,922
1,604
5,264
57,958
5,205
57,152
流動負債総計
長期債務
繰延貸方/その他負債
非流動負債総計
20,154
8,577
486
9,063
21,185
7,572
378
7,950
- 51 -
負債総計
自己資本
負債・自己資本計
29,217
28,714
57,958
29,135
28,017
57,152
表3-5.四半期業績の推移
期間
1Q
2Q
3Q
4Q
年計
売
2003年
15,953
17,453
18,354
23,772
75,532
上 高
2002年
前年比
18,520 ▲ 13.9%
14,995
16.4%
18,204
0.8%
18,767
26.7%
70,486
7.2%
2003年
▲ 582
139
331
574
462
単位:千ドル
希薄後
営業利益高
1株 益
2002年
前年比
▲ 1,641
▲ 0.10
n.a.
▲ 4,211
n.a.
0.02
▲ 651
n.a.
0.06
▲ 1,760
n.a.
0.10
▲ 8,263
n.a.
0.08
出 所 : SECレ ポ ー ト 様 式 10-Q及 び 10-K
3.2.7 Ingersoll Milling Machine Co.
設 立 : 1887年 ( 1978年 持 株 会 社 Intersoll International Inc.傘 下 )
事業:工作機械(航空宇宙・自動車・一般向け)
業 績 (2000年 ): 売 上 3億 9,170万 ド ル
役 員 : George H. Dorkhom (社 長 ・ CEO)
本社:イリノイ州ロックフォード市
住 所 : 707 Fulton Ave., Rockford, IL 61103, U.S.A.
電 話 : (815)987-6000
フ ァ ッ ク ス : (815)987-6725
ホ ー ム ペ ー ジ : http://www.ingersoll.com
従 業 員 : 3,873名 ( 2000年 )
* 以 上 、 2000年 現 在 の デ ー タ
● 厳しい経営の中で独立採算制の導入と切削工具事業の売却
厳 し い 経 営 が 続 く 中 、 債 権 団 と の 合 意 に 基 づ き 、 Ingersoll Milling社 は 2000年 9月 、 4
つ の 組 織 に 再 編 さ れ 、そ れ ぞ れ 独 立 採 算 制 の 下 に 運 営 さ れ る こ と と な っ た 。具 体 的 に は 、
1)マ シ ン シ ョ ッ プ 、 2)大 型 機 、 3)生 産 型 機 械 、 4)保 守 部 品 ・ サ ー ビ ス の 各 部 門 。
こ う し た 再 編 作 業 の 一 環 と し て 、 大 型 機 の 受 注 低 迷 を 背 景 に 、 2001年 2月 に は 最 大 70
人 規 模 の レ イ オ フ を 追 加 実 施 、 同 社 は 昨 年 10月 に 40人 、 年 初 に も 70人 を 削 減 し て い る 。
ま た 、 2000 年 12 月 Ingersoll 社 は 、 イ ス ラ エ ル の Iscar Metal Working Cos. 社 に
Ingersoll Cutting Tool社 並 び に Ingersoll Werkzeuge社 ( ド イ ツ ) の 株 式 の 過 半 を 売 却
し た 。 売 却 後 も Ingersollの 名 称 は 維 持 さ れ る 。
こ れ に よ り Ingersoll社 は 工 作 機 械 事 業 に 軸 を 置 き 直 す と と も に 、 生 産 性 の 高 い 企 業 へ
の脱皮を目指すことになる。
- 52 -
● Ingersoll Milling社 が 創 業 を 停 止
2003 年 4 月 16 日 付 Rockford Register Star 紙 に よ る と 、 112 年 の 歴 史 を 誇 っ て き た
Ingersoll International 社 が 4 月 8 日 付 で 会 社 を 閉 じ 、 従 業 員 370 人 が 失 職 し た 。 同 社
はこれまで資産売却と債務再編交渉に取り組んできたが、不調に終わったためこの程営業
を 停 止 し た 。 な お 、 同 社 は 米 国 破 産 裁 判 所 に 会 社 更 生 法 ( Chapter 11) に よ る 債 権 者 か ら
の保護を申請することを検討している。
なお、今回の措置により手持ち受注分の消化と販売された機械のサービス等課題が残る
が 、 今 の と こ ろ 対 策 は 決 ま っ て い な い 。 ち な み に 、 同 社 の 製 品 に は 価 格 2,500 万 ド ル 、 高
さ が 3 階 建 て ビ ル 程 も あ る 機 械 が 含 ま れ て お り 、 機 械 寿 命 は 30 年 に も 及 ぶ と い う
Ingersoll International 社 は か つ て 、 地 元 ロ ッ ク フ ォ ー ド 最 大 の 株 式 非 公 開 機 械 メ ー
カ ー と し て 、1990 年 代 に は 従 業 員 2,200 人 を 擁 し 、今 か ら 4 年 前 に は 1,600 人 が ロ ッ ク フ
ォ ー ド の フ ラ イ ス 盤 工 場 で Bowing や Airbus 社 向 け の 大 型 工 作 機 械 の 製 造 に 取 り 組 む 一 方 、
そ の 他 に 500 人 が 切 削 工 具 部 門 に 従 事 し て い た 。し か し 、同 社 は 2000 年 に 切 削 工 具 部 門 を
イスラエル企業に売却している。
そ の 後 は レ イ オ フ や 資 産 売 却 等 で 雇 用 の 縮 小 が 続 き 、 ロ ッ ク フ ォ ー ド で 約 300 人 、 そ の
他 で 100 人 未 満 と な っ て い た 。
3.3 ま と め
第 3章 で は 、 米 国 工 作 機 械 の 概 況 、 産 業 展 望 、 工 作 機 械 企 業 動 向 に つ い て 概 観 し た 。
米 国 経 済 は 、 第 3 四 半 期 の GDP( 国 内 総 生 産 ) が 年 率 5.0%か そ れ 以 上 の 成 長 率 と な る 模
様であり、第 4 四半期も、やや低下するものの、ほぼ同じ程度の成長率となる見込みが強
ま っ て お り 、イ ン フ レ な き 成 長 と い え る 。主 な 問 題 点 は 、2004 年 度 に お い て も 、こ の 高 い
成 長 率 を 維 持 で き る か 、 ま た は 成 長 率 が 年 率 4%を か な り 下 回 る の か 、 ひ ょ っ と す る と 3%
を す ら 下 回 る の か 、 と い う こ と で あ る 。 米 国 経 済 は 2002 年 と 2003 年 上 半 期 を 通 じ て 年 平
均 約 2.5%の 拡 大 を 示 し た 。
USTR は 、今 や 米 国 は WTO 体 制 の 下 で グ ロ ー バ ル な 自 由 化 の た め に 、相 互 的 か つ 地 域 的 な
FTA(Free Trade Agreement=自 由 貿 易 協 定 )の 選 択 肢 を 推 進 す る と 表 明 し た 。USTR の 論 拠 は 、
貿易自由化に賛成する国・地域と共に一つ一つ前進してゆくことが他の政府に対して、参
加するか自由化のメリットから除外されるリスクを負うか、という圧力を増すことになる
と い う 点 に あ る 。 よ り 多 く の 相 互 的 か つ 地 域 的 な FTA が 、 世 界 中 の 残 り の 諸 国 に 対 し て 参
加させる圧力になるというのが、この論拠であるが、どうもそれは弱々しく見える。一方
で は 、 EU は 米 国 が 「 地 域 主 義 」 (regionalism)と 「 相 互 主 義 」 (bilateralism)の 立 場 で よ
り 深 く 関 与 す る こ と を 歓 迎 し て い る が 、 そ れ は 、 過 去 何 十 年 に も わ た り 交 渉 し て き た EU
- 53 -
の多くの既存の協定に対して、より強い適法性を与えるからである。日本もまた、技術的
に ガ ッ ト ( GATT) 第 24 条 6 項 の 違 反 と な り 得 る 農 産 物 に つ い て 、「 例 外 扱 い 」 を 強 い る 隣
国との相互協定(二国間協定)に関して適法性を求めることが出来るであろう。
工作機械産業の動向
米 国 の 2003 年 切 削 型 工 作 機 械 国 内 受 注 総 額 は 、 18 億 413 万 ド ル で 、 前 年 比 6.4% 減
と な っ た 。地 域 別 の 動 向 を 見 る と 、自 動 車 関 連 の 多 い 中 西 部( ウ ィ ス コ ン シ ン 、イ リ ノ
イ 、イ ン デ ィ ア ナ 、ミ シ ガ ン 及 び オ ハ イ オ の 5 州 )が 7 億 878 万 ド ル で 年 間 国 内 受 注 総
額 の 39.3% を 占 め て お り 、次 い で 石 炭・化 学 産 業 の 多 い 南 部 が 3 億 3,239 万 ド ル( 18.4% )、
石 油 関 連 産 業 の 多 い 中 央 部 が 3 億 2,763 万 ド ル ( 18.2% )、 以 下 、 鉄 鋼 産 業 が 集 ま る 北
東 部 が 2 億 4,365 万 ド ル ( 13.5% )、、 航 空 機 や ハ イ テ ク 産 業 の 集 ま る 西 部 が 1 億 9,169
万 ド ル ( 10.6% ) と い う 構 成 に な っ て い る 。
企業業績
2003年 、 世 界 経 済 の 不 況 の 底 打 ち と 企 業 再 建 策 の 効 果 が 現 れ 始 め た こ と か ら 、 過 去 数 年
の赤字から脱却して黒字決算となった企業が見られるようになった。
表3-6.主要企業の売上高・純利益比較
単 位 : 千 ド ル ( 1株 益 =ド ル )
売 上 高
会 社 名
Hardinge
Hurco
2003
2002
185,302
169,014
9.6%
75,532
70,486
7.2%
増減率
2003
(6,873)
(11,284)
462
462
営業利益高
純 利 益
増減率
2002
(5,163 )
n.a.
2,000
n.a.
(8,263)
n.a.
(8,263)
n.a.
備 考 : 2003年 12月 期 業 績 ( Hurco社 は 10月 )
(
)は 損 失
UNOVA 社 は 、 2003 年 度 売 上 は 12 億 7,000 万 ド ル か ら 11 億 2,261 万 ド ル に 低 下 し 、
純 損 益 は 前 年 の 利 益 240 万 ド ル 、 1 株 当 た り 0.04 ド ル 1,930 万 ド ル 、 1 株 当 た り 0.33
ド ル の 損 失 に 転 落 し た 。 継 続 事 業 の 営 業 損 益 は 4,370 万 ド ル の 利 益 を 計 上 し た が 、 前 年
の 9,540 万 ド ル を 大 き く 下 回 っ た 。 決 算 に は 1,250 万 ド ル に 上 る 知 的 所 有 権 訴 訟 決 着 費
用 な ら び に 一 部 知 的 所 有 権 の 販 売 益 が 含 ま れ て い る 。な お 、2003 年 に お け る 製 品 な ら び
に サ ー ビ ス 部 門 の 営 業 利 益 は 前 年 を 2,590 万 ド ル 上 回 っ た 。
Hardinge 社 の 2003 年 第 4 四 半 期 の 営 業 利 益 は 前 年 同 期 比 70 万 ド ル( 33% )増 の 280
- 54 -
万 ド ル と な り 、 通 年 ベ ー ス で も 280 万 ド ル 改 善 し 450 万 ド ル に 拡 大 し た 。 し か し 、 第 4 四
半 期 の 純 利 益 は 前 年 同 期 の 200 万 ド ル 、 1 株 当 た り 0.23 ド ル か ら 170 万 ド ル 、 1 株 当 た り
0.19 ド ル に 縮 小 し 、 通 年 で は 前 年 の 200 万 ド ル 、 1 株 当 た り 0.23 ド ル か ら 1,130 万 ド ル 、
1 株 当 た り 1.30 ド ル の 純 損 失 と な っ た 。
一 方 、 第 4 四 半 期 の 売 上 高 は 前 年 同 期 の 4,193 万 ド ル か ら 5,291 万 ド ル に 、 26% 拡 大 し
た。ただし、これは同社欧州子会社の売上をドル換算する際のユーロに対するドル安効果
が 反 映 し て お り 、2002 年 為 替 相 場 の 恒 常 ド ル に よ る 換 算 で は 18% 増 に 止 ま る 。通 年 ベ ー ス
で も 売 上 は 安 定 価 値 換 算 で 3% 伸 び た 。
Hurco 社 の 2003 年 度( 10 月 31 日 締 )の 決 算 は 46 万 2,000 ド ル 、1 株 当 た り 0.08 ド ル の
純 利 益 を 計 上 し 、 前 年 度 の 純 損 失 826 万 3,000 ド ル 、 1 株 当 た り 1.48 ド ル 、 か ら 黒 字 回 復
を 果 た し た 。 な お 、 第 4 四 半 期 は 57 万 4,000 ド ル 、 1 株 当 た り 0.10 ド ル の 純 利 益 と な り 、
前 年 同 期 の 176 万 ド ル 、 1 当 た り 0.32 ド ル の 純 損 失 か ら 大 き き 改 善 し た 。 同 社 で は 、 ユ ー
ロ に 対 す る ド ル 安 、第 4 四 半 期 の 大 幅 な 売 上 と サ ー ビ ス 手 数 料 収 入 の 伸 び 、過 去 18 ヵ 月 間
に 実 施 し た リ ス ト ラ の 効 果 等 が 黒 字 転 換 に 貢 献 し た と し て い る 。ち な み に 、2002 年 度 の 決
算 に は 383 万 8,000 ド ル の リ ス ト ラ 費 用 が 含 ま れ て い た 。
グループ化の時代
米 国 工 作 機 械 産 業 で は グ ル ー プ 化 に 向 け 再 編 が 進 ん で い る 。 例 え ば 、 Giddings &
Lewis (G&L)社 は 、 1997年 9月 30日 、 ド イ ツ Thyssenに よ り 吸 収 さ れ た 。 機 構 的 に は 、
Thyssen Krupp 社 が G&L 社 を 保 有 し 、 G&L 社 が Fadal Engineering 、 Automation
Technology、Automation Control、Sheffield Measurement、Gilman、Gidding & Lewis
Cross Hüller、 Cross Hüllerの 各 事 業 部 門 を 統 括 す る 形 を と っ て い る 。
Cincinnati Machine社 は 、1998年 10月 2日 、UNOVA社 が Cincinnati Milacron社 か ら 工
作 機 械 事 業 を 買 収 す る こ と で 設 立 さ れ た 。 現 在 、 UNOVA社 の 工 作 機 械 事 業 部 門 に は 、
Cincinnati社 の ほ か 、 Lamb Technicon Machining Systems、 Lamb U.K.、 Honsberg
Lamb、 R&B Machine Tool、 Michigan Machine & Engineering、 Landis北 米 研 削 盤 事
業 / 英 国 Landis Lundが あ る 。
1999年 、 Bridgeport Machines社 は Goldman Industrial Group社 ( 本 社 : ボ ス ト ン )
に 買 収 さ れ 同 社 の 傘 下 に 入 っ た 。 Goldman Industrial Group社 は 株 式 非 公 開 企 業 で 、
Bridgeport Machines, Inc.、Bryant Grinder、Fellows Corporation、Hill-Loma, Inc.、
J&L Metrology Company, Inc.、 Jones & Lamson Corporationの 6社 の 子 会 社 を 通 じ て
金属加工機械を提供している。
- 55 -
以 上 は 他 社 に よ り 買 収・吸 収 さ れ た 事 例 で あ る が 、Hardinge社 の 場 合 は 、老 舗 企 業 の
中 で 唯 一 自 ら が 買 収 に 乗 り 出 し た 。 同 社 は 研 削 盤 メ ー カ ー L.Kellenberger社 ( 1995年 11
月 )、EDMメ ー カ ー Hansvedt社( 1997年 )に 続 い て 、2000年 12月 20日 に は 精 密 研 削 盤 メ
ー カ ー HTT Hauser Tripet Tschudin社 の 完 全 買 収 に つ い て 合 意 し た 。
ま た 、 2003年 6月 1日 付 の American Machinist 誌 に よ る と 、 Hardengeは 2002年 6月 に 調
印 し た 同 社 の 子 会 社 Bridgeport Machine社 と の 合 意 に よ り 、 Bridgeport Machine社 コ ネ
チカット工業が供給してきた製品の製造・販売を引き受けることになっているが、この
程 コ ネ チ カ ッ ト 工 場 の 製 造 ラ イ ン 移 設 が 完 了 し 、す で に Bridgeport 製 品 の 供 給 が 再 開 し
ている。
いずれのケースも、製品ラインの拡充、生産拠点のグローバル展開を目指したもので
あるが、その背景にあるのは、自動車などの大手ユーザー産業でグループ化が進行する
中、世界規模で同一設備を調達したり、ターンキー納入を求める動きを強めつつあるた
めである。
一 方 で 、経 営 陣 が 投 資 会 社 と 組 ん で 会 社 を 買 収 す る 一 種 の MBO( マ ネ ー ジ メ ン ト・バ
イ ア ウ ト )の 動 き も 見 ら れ る 。100年 の 歴 史 を 持 つ Monarchの 経 営 陣 は ベ ン チ ャ ー・キ ャ
ピ タ ル と 組 ん で 、1999年 、Genesis Worldwide社 か ら Monarch事 業 部 を 買 収 し た 。ま た 、
歯 車 機 械 の 世 界 的 企 業 Gleason社 で は 、 経 営 陣 と Vestor Capital Partners社 が 組 ん で 会
社を買収し、上場廃止となった。
名門企業も経営改革へ
Ingersoll Milling社 は 、 1999年 、 3,130万 ド ル の 損 失 を 出 し 債 務 超 過 の 状 態 に 陥 っ た 。
2000年 春 に は Edson Gaylord会 長 が 死 去 し 、 グ ル ー プ の 求 心 力 も 失 わ れ て い っ た 。 同 社
は設立以来、独立自尊の精神を貫き、かつて、日米間で輸出規制協定が締結されること
になった際には、自由な取引の維持を主張してこれに強く反対、業界団体を脱退した。
一方で非常に家族的な会社で、高い技術力も持っていたが、大型機や特注機の受注が不
調 を き わ め 、 厳 し い 経 営 が 続 い て い た 。 Gaylord会 長 の 死 後 、 同 社 と 債 権 団 と の 間 で 合
意 が 成 立 し 、 2000年 9月 、 同 社 は 4つ の 組 織 に 再 編 さ れ 、 そ れ ぞ れ 独 立 採 算 制 の 下 に 運 営
さ れ る こ と と な っ た 。 併 せ て 、 そ れ ま で 手 を つ け な か っ た 人 員 削 減 や イ ス ラ エ ル Iscar .
社 へ の Ingersoll Cutting Tool社 並 び に Ingersoll Werkzeuge社 ( ド イ ツ ) の 株 式 過 半 売
却などを実施した。同社は工作機械事業に集中し、高生産性企業への脱皮を図ることと
なった。
2003 年 4 月 16 日 付 Rockford Register Star 紙 に よ る と 、 112 年 の 歴 史 を 誇 っ て き た
Ingersoll International 社 が 4 月 8 日 付 で 会 社 を 閉 じ 、 従 業 員 370 人 が 失 職 し た 。 同 社
はこれまで資産売却と債務再編交渉に取り組んできたが、不調に終わったためこの程営業
- 56 -
を 停 止 し た 。 な お 、 同 社 は 米 国 破 産 裁 判 所 に 会 社 更 生 法 ( Chapter 11) に よ る 債 権 者 か ら
の保護を申請することを検討している。
なお、今回の措置により手持ち受注分の消化と販売された機械のサービス等課題が残る
が 、 今 の と こ ろ 対 策 は 決 ま っ て い な い 。 ち な み に 、 同 社 の 製 品 に は 価 格 2,500 万 ド ル 、 高
さ が 3 階 建 て ビ ル 程 も あ る 機 械 が 含 ま れ て お り 、 機 械 寿 命 は 30 年 に も 及 ぶ と い う 。
事業集中
株 式 上 場 し て い る 米 国 工 作 機 械 専 業 メ ー カ ー は 今 や Hardinge社 と Hurco社 の 2社 の み
と な っ て し ま っ た 。 Gleason社 な ど は 上 場 企 業 で あ る こ と の デ メ リ ッ ト ( コ ス ト 負 担 や
各種制約)を回避し、もって、変動の激しい工作機械事業において、迅速な経営判断が
下 せ る 体 制 を 確 保 し よ う と MBOを 実 施 し た 。現 在 、米 国 工 作 機 械 産 業 は 、コ ン グ ロ マ リ
ッ ト に よ る 買 収 が 盛 ん に 行 わ れ た 1970年 代 以 来 の 再 編 の 時 代 を 迎 え て い る 。
これまで見てきたように、米国工作機械企業は生き残りをかけ懸命に努力している。
それは総合力の強化を目指したグループ化であり、事業集約や周辺事業の売却などコ
ア・コンピーテンスへの資源集中である。今後、我が国においても、内外からの競争圧
力増大を背景に、事業毎の採算性重視の中で、コア・コンピーテンスへの資源集中をは
じめ、これまで以上の事業合理化努力が求められるであろう。しかしながら、現状我が
国には、製造業の事業転換(不採算事業の整理・売却、コア事業に対する資源の集中配
分)に当たり、技術、人材、資金等の移動を円滑化するための媒介機能が確立されてお
らず、また、税制面・金融面をはじめ制度面の整備も十分ではない。我が国企業が今後
とも競争力を維持するためには、日本企業同士・日本企業と外国企業間の様々な協力関
係構築が不可欠であり、早急に体制整備が図られることを期待する。
- 57 -
第4章
米国の輸出管理政策動向
4.1 業 界 の 姿 勢
4.1.1 基 本 姿 勢
AMT( 米 国 製 造 技 術 工 業 協 会 )の 政 府 関 係 委 員 会 で は 、年 に 数 回 会 合 を 開 き 、立 法 府
(議会)及び行政府に対して、どのような活動を行うかを決めている。輸出管理は常に
そ の 改 革( 緩 和 )を 求 め て い る 問 題 で 、2000年 6月 以 降 、行 政 上 の 最 優 先 課 題 と し て は 唯
一取り上げられている。
ま た 2003年 8 月 、 ブ ッ シ ュ 政 権 は 、 ブ ッ シ ュ 大 統 領 が 輸 出 管 理 法 ( EAA) を 2004年 8月
17日 ま で 延 長 す る 旨 決 定 し た こ と を 官 報 で 発 表 し た 。こ の 決 定 は 2001年 8月 17日 付 の 大 統
領 命 令 13222で 発 令 し た EAAの 延 長 を さ ら に 継 続 す る も の で あ る 。
原 EAAは 1994年 に 期 限 切 れ と な り 、 そ の 後 は 議 会 が EAAの 更 新 に 至 ら な か っ た た め 、 一
連 の 大 統 領 命 令 、権 利 放 棄 、継 続 措 置 等 で 2003年 8月 17日 ま で 延 長 さ れ て い た 。議 会 で は
い く つ か の EAA改 定 案 が 審 議 さ れ て き た が 、特 に 軍 事 目 的 に 転 用 可 能 な「 デ ュ ア ル・ユ ー
ス品」の輸出保護方法を巡って合意が得られず、現在に至っていた。
ブッシュ政権においても輸出管理政策が重要な米国の行政上の課題であることは明ら
かである。また長引くイラク戦争を受け、安全保障上の問題からいっそう対象製品に対
する規制およびテロ対策のための貨物の管理を強化させている様子が伺える。
基本的に、米国の輸出管理政策は他の同盟国と比べ厳しく、明確な国際合意もない中
で、中国及びロシアが厳しく取り扱われているという考えがあり、同盟国と同等の競争
条件を付与されるべきとしている。
4.1.2 商 務 次 官 講 演
9 月 に カ リ フ ォ ル ニ ア の サ ン ノ ゼ で 開 催 さ れ た U.S.-Taiwan Business Council と
Fabless Semiconductor Association共 催 の 会 議 で 、 米 商 務 省 の Kenneth I. Juster産 業 ・
安全保障担当次官が講演し、半導体ならびに半導体製造機器の中国と台湾に対する輸出
管理問題について、次のように述べた。
今 日 、 台 湾 は 世 界 最 大 の 半 導 体 特 化 メ ー カ ー Taiwan Semiconductor Manufacturing
Corporation ( TSMC) と United Microelectronics Corporation ( UMC) を 擁 す る 半 導 体
生産、特に委託生産拠点として米国企業にとってきっても切れない存在になっている。
そ れ ば か り か 、米 国 の 半 導 体 製 造 機 器 メ ー カ ー に と っ て 台 湾 は 巨 大 な 市 場 に な っ て お り 、
2002年 の 輸 出 額 は 10億 ド ル に も 上 っ て い る 。 米 国 と 台 湾 は 緊 密 な 政 治 関 係 に あ る こ と か
ら、台湾への半導体製造機器の輸出が安全保障問題になるケースは殆どなく、輸出許可
申請の承認率は極めて高い。
- 58 -
一 方 、 IC生 産 に お け る 中 国 の 世 界 シ ェ ア は 今 の と こ ろ は 小 さ い が 、 今 後 の 急 激 な 成 長
が 予 測 さ れ て お り 、 実 際 同 国 の Semiconductor Manufacturing International
Corporation ( SMIC)と Grace Semiconductor Manufacturing Corporation ( Grace) は 、
台 湾 の TSMCや UMC社 な み の 生 産 水 準 を 達 成 す る こ と を 目 指 し て い る 。こ れ ら の 企 業 は 外 国
からの大きな投資を惹きつけており、世界の大手半導体メーカーとの提携関係も構築し
て い る 。 さ ら に 、 中 国 に は 世 界 の 主 要 な ICメ ー カ ー が 生 産 拠 点 を 開 設 し つ つ あ る 。
ま た 、 中 国 は 半 導 体 製 造 機 器 の 市 場 と し て も 成 長 し て お り 、 2002年 の 需 要 は 世 界 需 要
の 6%に 相 当 す る 12億 ド ル に 上 り 、今 後 数 年 間 で 更 な る 成 長 が 期 待 さ れ て い る 。ち な み に 、
2002年 に お け る 米 国 製 半 導 体 製 造 機 器 の 対 中 輸 出 額 は 3億 5,000万 ド ル で 、 中 国 は 米 国 に
と っ て 世 界 で 4番 目 に 大 き い 市 場 に な っ て い る 。
ところが、中国が主要な半導体生産国として台頭し、その半導体産業がグローバルな
体制の一貫となっていることが、米国の輸出管理政策策定当事者にとってはジレンマに
なっている。つまり、米国政府としては半導体産業にとっての経済的機会を支援したい
ところだが、先進的半導体が今日の先端的兵器システムの中核になっているため、中国
で発生する経済的機会の一部は安全保障上の潜在的懸念材料になるからだ。
現状では、中国向けの汎用チップないしはマイクロプロセッサーは輸出管理の対象に
なっておらず、管理されているのは軍用を意図したものだけである。また、高度な半導
体を製造するために使う機器の輸出も国家安全保障上の理由から、米国とワッセマー・
アレンジメントによって厳しく規制されている。
しかし、米国政府としては、半導体デバイスや半導体製造機器の輸出で得る収入によ
って、米国のハイテク企業が体力と競争力を維持できれば、安全保障上のメリットがあ
るため、実際には中国の商業エンド・ユーザーに対する半導体関連製造機器の輸出許可
申請は、しばしば厳しい条件付で大部分が認可されている。また、中国の軍組織と関係
があるエンド・ユーザーに対する管理対象品目の輸出については、今後も拒否政策を続
けることになる。
4.1.3 中 米 自 由 貿 易 協 定
民 主 党 の Sander Levin下 院 議 員 に よ る と 、 下 記 の よ う な 傾 向 や 展 開 が あ る た め 、 貿 易
問題に関する審議が一段と難しくなっている。
ま ず 、貿 易 促 進 権 限( TPA)の 更 新 以 降 、勢 力 バ ラ ン ス が 議 会 か ら ブ ッ シ ュ 政 権 側 に 移
っ て い る た め 、議 会 監 視 グ ル ー プ( COG)の 効 率 が 落 ち て い る 。超 党 派 的 提 携 関 係 の 崩 れ
が深刻になっているため、二極化が進み、審議は自由貿易主義者対保護主義者の形にな
っている。そのなかで、ブッシュ政権は二極化に屈服し、自由貿易の保護主義の中道を
歩 む こ と に 背 を 向 け が ち に な っ て い る 。 Levin議 員 は 、 こ の よ う な 傾 向 が 今 後 も 続 く と 、
将来の二国間や多国間貿易交渉が行き詰まり、現在ですら議会は中米自由貿易協定を可
決しそうにないと見ている。
- 59 -
なお、同氏は中国ならびに日本との貿易関係にも言及し、両国の通貨操作が米国の
製造部門に悪影響を及ぼすため、米国は通貨操作に反対する権利があるとしている。ま
た 、中 国 が 自 国 通 貨 の 相 場 を 変 動 さ せ な い 場 合 、中 国 製 品 に 対 す る 関 税 を 引 き 上 げ た り 、
そ の 他 の 障 壁 を 設 け る と す る 懸 案 の 中 国 法 案 ( HR 3058と S1586) に つ い て 、 中 国 に 圧 力
をかける道具としては良いが、議会が同法案を可決するとは思えないとコメントしてい
る。
4.2 輸 出 管 理 政 策 の 現 状 と 方 向 性
4.2.1
通商代表部レポ-ト
米 国 通 商 代 表 部 ( USTR) が 4 月 1 日 付 け で 外 国 貿 易 障 壁 報 告 書 ( NTE レ ポ ー ト ) の 2003
年 版 を 発 行 し た 。NTE レ ポ ー ト は 1988 年 貿 易 法 に 従 い 毎 年 発 行 さ れ て お り 、米 国 の 輸 出 額
が 大 き い 世 界 56 ヵ 国 の 対 米 貿 易・投 資 障 壁 な ら び に 知 的 所 有 権 問 題 等 を 分 析・報 告 し て い
る。
2003 年 NTE 報 告 書 は 日 本 に 対 し て 、 以 下 の よ う な 注 文 を 付 け て い る 。
1.
特に農産物と林産物を中心とする米国製品数品目の更なる輸入規制削減。米国製自動
車の日本における販売が引き続き下降し、日本の自動車および鉄鋼市場へのアクセス
が制約されていることも、大きな懸念材料である。
2.
電 気 通 信 、 IT、 法 務 サ ー ビ ス 、 エ ネ ル ギ ー お よ び 金 融 サ ー ビ ス 部 門 の 規 制 変 更 。
3.
規制システムの透明性ならびに独禁法、競争政策、商法、法律制度、流通・通関制度
の構造的規制改革。
4.2.2
米輸送安全保障管理局の新指令
2003 年 11 月 17 日 、 米 輸 送 安 全 保 障 局 管 理 局 ( TSA: Transportation Security
Administration) が 航 空 貨 物 の 安 全 保 障 に 関 す る 新 指 令 を 発 行 し た 。 新 指 令 は テ ロ リ ス
ト・グループが貨物機を武器として利用することを意図している可能性があるとの報告
を受けたもので、今後は米国を発着する貨物の空輸に当たる内外の輸送業者には取扱貨
物 の 無 作 為 検 査 を 含 む 、安 全 保 障 強 化 措 置 の 実 施 が 求 め ら れ る 。TSAは 米 国 の 航 空 貨 物 輸
送 網 の 安 全 を 保 障 す る た め に 、 以 下 の 4戦 略 を 優 先 事 項 と し て 上 げ て い る 。
1.サプライ・チェーンの安全保障強化
Known Shipper Program( 周 知 荷 主 制 度 ) へ の 参 加 を 申 請 し て い る 間 接 航 空 貨 物 取 扱 業
者の素性調査強化。当該業者に関する情報収集の強化とテロリスト・グループに関する
情報と業者情報の比較。
2.高リスク貨物の把握
貨物全量の検査は不可能であるため、荷主から収集した情報とテロリスト監視リスト
に 基 づ く Cargo Prescreening System( 貨 物 事 前 検 査 シ ス テ ム ) を 使 っ て 、 高 リ ス ク 貨 物
を 把 握 す る 。 な お 、 同 シ ス テ ム は Customs and Border Protection( 関 税 ・ 国 境 保 護 局 )
- 60 -
が使用しているリスク管理システムと密接に連携する。また、貨物事前検査システムが
完 成 す る ま で は 、 航 空 会 社 が 無 作 為 検 査 を 行 い 、 TSA職 員 が そ の 監 督 に 当 た る 。
3.貨物検査技術の把握
TSAは 貨 物 安 全 保 障 の 強 化 に 向 け 採 用 す る 新 た な か つ 邪 魔 に な ら な い よ う な 検 査 技 術
に関するいくつかのパイロット調査を企画している。
4.施設安全保障措置の強化
TSAは 航 空 貨 物 取 扱 場 所 の 安 全 保 障 を 強 化 す る た め に 航 空 機 事 業 者 の 安 全 保 障 規 則 を
更新する予定で、それには貨物機にアクセス出来る従業員の素性調査強化と無人状態の
貨物機の安全保障が含まれている。
4.2.3. 国 土 安 全 保 障 省 、 事 前 マ ニ フ ェ ス ト ・ ル ー ル
米 国 土 安 全 保 障 省 ( DHS) は 11月 20日 、 2002年 貿 易 法 の 下 で 必 要 な 事 前 マ ニ フ ェ ス
ト ・ ル ー ル 最 終 案 を 議 会 に 提 出 し た 。 本 来 は 10月 に 提 出 予 定 で あ っ た 同 マ ニ フ ェ ス ト ・
ルールは、貨物の移動に関する以下のような告知要件を定めている。
[米 国 到 着 貨 物 ]
航 空 ・ ク ー リ エ 便 : 米 国 到 着 4時 間 前 ま た は 近 く の 一 定 地 域 で 離 陸 し た 時 点 。
鉄 道 便 : 米 国 通 関 港 到 着 2時 間 前 。
船 便 : 外 国 港 で の 船 積 24時 間 前 。
ト ラ ッ ク 便 : FAST( Free and Secure Trade) の 場 合 は 米 国 到 着 30分 前 。 非 FASTの 場 合
は 米 国 到 着 1時 間 前 。
[米 国 出 国 貨 物 ]
航 空 ・ ク ー リ エ 便 : 米 国 出 発 予 定 時 間 の 2時 間 前 。
鉄 道 便 : 列 車 が 国 境 に 到 着 す る 2時 間 前 。
船 便 : 貨 物 が 船 済 み さ れ た 米 国 港 出 港 24時 間 前 。
ト ラ ッ ク 便 : ト ラ ッ ク が 国 境 に 到 着 す る 1時 間 前 。
(国土安全保障省
2003年 11月 20日 付 )
4.2.4. 税 関 国 境 警 備 局 、 ト ン 税 を 改 定
税 関 国 境 警 備 局( CBP)は 8 月 13 日 付 の 官 報( 68FR48279)で 、外 国 の 港 か ら 米 国 に 入 港
する船舶に賦課するトン税を改定する旨発表した。この改定は大統領が調印し、トン税が
増 額 さ れ た Budget Reconciliation Act of 1990( 1990 年 財 政 調 整 法 ) 成 立 以 前 の 税 額 を
反 映 す る も の で あ る 。同 法 の 増 税 規 定 は 2002 年 会 計 年 度 で 期 限 切 れ に な っ て お り 、議 会 が
その延長をしなかったため今回の措置となった。
ち な み に 、1990 年 財 政 調 整 法 に よ り 、北 米 、一 部 中 米 、南 米 な ら び に カ リ ブ 諸 国 の 港 か
ら 米 国 に 入 港 す る 船 舶 に 対 す る ト ン 税 の 額 は 、年 総 額 ト ン 当 た り 25 セ ン ト を 限 度 に 、ト ン
当たり 9 セントに増額された。また、上記以外の国の港から米国に入港する船舶に対して
- 61 -
は 、 年 総 額 ト ン 当 た り 1.35 ド ル を 限 度 に 、 ト ン 当 た り 27 セ ン ト に 引 き 上 げ ら れ て い た 。
今 回 の 発 表 に よ り 、8 月 13 日 付 で 上 記 第 1 グ ル ー プ 諸 国 の 港 か ら 米 国 に 入 港 す る 船 舶 に
対 す る 税 額 は 以 前 通 り ト ン 当 た り 2 セ ン ト ( 年 総 額 上 限 ト ン 当 た り 10 セ ン ト )、 そ の 他 諸
国 の 船 舶 に 対 し て は ト ン 当 た り 6 セ ン ト ( 年 総 額 上 限 ト ン 当 た り 30 セ ン ト ) と な る 。
4.3 まとめ
第4章では、米国の輸出管理を巡る業界の姿勢及び輸出管理政策の現状と方向性など
を概観した。
米 国 製 造 技 術 工 業 協 会 ( AMT) の 政 府 関 係 委 員 会 で は 、 輸 出 管 理 を 行 政 上 の 最 優 先 課 題
と し て 2000年 6 月 以 降 、 取 り 上 げ て き た 。
ま た ブ ッ シ ュ 政 権 も 輸 出 管 理 法 を 延 長 す る な ど 、輸 出 管 理 政 策 に 対 す る 米 政 府 内 で の ウ
エイトの高さが伺える。また、長引くイラク戦争を受けて、安全保障上の問題の懸念材料
となりうる製品の取り締まり、および対テロ対策の意味合いでも、一層厳しくコントロー
ルをしていく政策が取られている。
2003年 9月 の 米 商 務 省 の Kenneth I. Juster産 業 ・ 安 全 保 障 担 当 次 官 の 半 導 体 な ら び に
半導体製造機器の中国と台湾に対する輸出管理問題に関する講演の内容を見ると、米国の
半導体機器メーカーにとって台湾は巨大市場になっており、また台湾と米国の緊密な世辞
関 係 か ら 台 湾 へ の 輸 出 が 安 全 保 障 問 題 に な る ケ ー ス は ほ と ん ど な く 、先 生 の 承 認 率 は 高 い 。
一方、現段階での中国市場における半導体生産における中国の世界シェアは今のところ小
さいが、今後急成長することが予測されている。
ところが、中国が主要な半導体生産国として台頭し、その半導体産業がグローバルな体
制 の 一 貫 と な っ て い る こ と が 、半 導 体 が 先 端 的 兵 器 シ ス テ ム の 中 核 に な っ て い る こ と か ら 、
米国にとってはジレンマであるという。中国軍組織関連のユーザーに対する管理大量製品
の輸出については、今後も拒否政策が続くであろう。
日本にとっても影響を及ぼすことが予測される中米自由貿易協定については、ブッシュ
政権に勢力バランスが傾いていることからその設立は難しくなってきている。
ま た 、民 主 党 の Levin下 院 議 員 は 、中 国 な ら び に 日 本 の 通 貨 捜 査 が 米 国 の 製 造 業 に 悪 影 響
を及ぼしているため、米国は通貨操作に反対する権利があると述べている。
一 方 、 米 国 内 の 貨 物 に 対 す る 対 テ ロ 対 策 で 2003年 に は 各 種 の 指 令 や ル ー ル が 敷 か れ た 。
11月 17日 、 米 輸 送 安 全 保 障 局 管 理 局 ( TSA: Transportation Security Administration)
- 62 -
が航空貨物の安全保障に関する新指令を発行した。新指令はテロリスト・グループが貨物
機を武器として利用することを意図している可能性があるとの報告を受けたもので、今後
は米国を発着する貨物の空輸に当たる内外の輸送業者には取扱貨物の無作為検査を含む、
安全保障強化措置の実施が求められる。
米 国 土 安 全 保 障 省( DHS)は 11月 20日 、2002年 貿 易 法 の 下 で 必 要 な 事 前 マ ニ フ ェ ス ト ・
ルール最終案を議会に提出した。米国内の貨物の移動に関する告知用件としてのルール
を定めたものである。
以上、米国輸出管理政策は、政府、業界にとって重大な関心事であり、同盟国であ
る日本にも多大な影響が予想される。
- 63 -
資
料
参考資料:1
米 国 の 工 作 機 械 輸 出 入 統 計 (2003 年 )
単位:金額千ドル、台数:台
輸
数
1,020
602
293
入
金
額
70,501
47,433
17,792
131,026
73,750
2,080
3,277
1,689
321
486,813
131,520
53,418
47
12,773
910
250,983
477
42,423
357
95,892
60
12,420
317
192,973
1,127
308
55
153
48
52
59,494
38,322
4,992
14,164
5,764
13,402
6,615
3,651
499
2,172
815
165
476,476
379,891
75,195
170,733
102,800
31,163
340
47
2
9
7
29
8,136
7,806
99
4,023
816
2,868
2,269
316
30
113
55
118
37,984
48,783
6,668
17,116
1,218
23,781
432
5,230
379
9,808
ボール盤
839
28,719
683
43,921
中ぐりフライス盤
102
8,114
408
27,185
中ぐり盤
138
7,767
151
10,034
1,576
41,744
3,520
82,934
505
2,692
250
13,202
2,286
66
80,464
6,735
4,758
1,349
255,681
39,021
機
種
名
放電加工機
内、ワイヤ放電加工機
内、NC機(ワイヤ型を除く)
マシニングセンタ
立軸 Y 軸移動量
Y 軸移動量
横軸 Y 軸移動量
Y 軸移動量
Y 軸移動量
その他
660mm 未 満
660mm 超
685mm 未 満
685-1016mm
1016mm 超
台
輸
数
195
n.a.
n.a.
出
金
額
14,536
n.a.
n.a.
1,205
666
15
ステーション型専用機
旋
盤
NC横軸
多軸
単 軸 /出 力 18.65kW 未 満
出 力 18.65-37.3kW
出 力 37.3kW 超
非NC横形
NCその他
立タレット旋盤(多軸)
立タレット旋盤(その他)
その他(多軸)
その他(その他)
非NCその他
フライス盤
ねじ切り盤またはねじ立て盤
研削盤または仕上げ機械
平面研削盤
- 65 -
台
内、NC平面研削盤
その他の研削盤
工具研削盤
ホーニング盤またはラッピング盤
他に分類されない研削盤または仕上げ機械
その他の工作機械
平削り盤
形削り盤または立削り盤
ブローチ盤
歯車加工機
金切り盤または切断機
他に分類されないもの
28
355
223
1,154
448
2,615
30
221
76
390
973
925
5,626
18,550
6,152
35,512
13,515
306
1,383
847
228
951
27,508
126,866
26,501
20,061
43,232
84,246
618
4,828
4,085
35,335
15,997
23,383
2,859
10
198
59
196
2,254
142
102,130
572
6,509
6,073
36,351
46,539
6,086
合
計
200,400
651,928
1427928 1,917,682
出所:米国商務省
備 考 : デ ー タ は 単 価 3,025 ド ル 以 上 の 機 械 ( 中 古 ・ 再 生 品 を 除 く ) を 対 象 。
- 66 -
- 67 -
12
13
14
46
01
06
11
01
07
17
21
26
種
名
ボール盤・中ぐり盤
歯車加工機
研削盤・ポリッシ盤等
内、3,025ドル未満のもの
旋 盤 1)
内、NC横軸旋盤
多軸
単軸/チャック径 10インチ未満
10以上-15インチ未満
15インチ以上
内、NC立軸旋盤
内、非NC旋盤 1)
フライス盤 1)
マシニングセンタ
内、立軸マシニングセンタ
Y軸移動量 20インチ未満
20以上-26インチ以下
26インチ超
内、横軸マシニングセンタ
パレットサイズ 500mm未満
500-800mm
800mm超
内、その他のマシニングセンタ
専用機
その他
合
計 2)
内、3,025ドル以上のもの
内、3,025ドル未満のもの 2)
機
2003年1Q
数 金
額
573
31,408
57
43,577
9,521
49,202
9,012
3,046
397
27,569
397
27,569
(D)
(D)
265
14,962
(D)
(D)
132
12,607
(D)
(D)
(D)
(D)
51
6,938
1,281
63,223
1,016
54,179
(D)
(D)
914
43,962
102
10,217
31
4,602
(D)
(D)
(D)
(D)
31
4,602
234
4,442
(D)
(D)
4,190
55,473
16,508 293,867
4,038 279,467
12,360
6,428
台
金額単位:千ドル
2003年2Q
2003年3Q
2003年4Q
台 数
金 額
台 数
金 額
台 数 金
額
564
27,966
618
29,793
930
40,103
53
90,436
97
71,315
150
69,398
7,415
42,776
7,948
33,199
7,832
39,131
6,900
2,617
7,399
2,520
7,189
2,767
518
44,416
626
40,113
734
39,766
417
31,183
421
27,187
577
33,459
(D)
(D)
(D)
(D)
(D)
(D)
273
17,783
285
15,269
407
18,928
(D)
(D)
(D)
(D)
(D)
(D)
144
13,400
136
11,918
170
14,531
21
9,512
16
9,579
9
3,629
80
3,721
189
3,347
148
2,678
129
12,420
226
10,599
163
9,398
1,349
67,102
1,336
76,388
1,881 115,944
1,090
58,786
1,109
58,018
1,450
74,048
552
16,898
(D)
(D)
821
25,100
448
32,367
1,028
50,055
512
36,744
90
9,521
81
7,963
117
12,204
27
4,910
28
3,691
32
12,462
(D)
(D)
(D)
(D)
(D)
(D)
(D)
(D)
(D)
(D)
(D)
(D)
27
4,910
28
3,691
32
12,462
232
3,406
199
14,679
399
29,434
(D)
(D)
(D)
(D)
(D)
(D)
4,014
70,683
4,121
49,968
4,139
73,574
14,397 368,283
15,534 321,364
16,375 396,091
4,286 350,209
4,577 305,667
5,914 381,570
9,999
5,742
10,856
6,039
10,376
6,075
米国の工作機械出荷統計(2003 年)
出所 :米 国商 務省 Current Industrial Reports; MQ333W(00)1-4
注: 1)3,025 ドル未満の非 NC 旋盤及びフライス盤は合計欄のみに含まれる。2)3,025 ドル未満の非 NC 旋盤及びフライス盤は本欄のみ に含 まれ る
3) NC 横軸旋盤-単軸-15 インチ以上に含む。4)横軸マシニングセンタ(800mm 超)に含む。 a)16-25%の推定値、b)26-50%の推定値、c)50%超の推定値
3335 1280
3335 1290
3335 1240
3335 1270
3335 1231
機 種
番 号
3335 12A 1
3335 1211 00
3335 1221
参考資料:2
- 68 -
月
計
1,561
1,256
1,217
1,186
934
1,073
1,064
955
1,051
1,170
855
855
数
額
198,560
172,484
142,895
197,515
128,684
121,480
216,480
125,827
129,672
162,262
96,125
112,149
金
-6.4%
13,177 1,804,133
台
国内受注計
台
23,580
19,272
20,263
27,073
177
185
213
240
-12.7
2,151 243,650
25,368
173
18,199
150
19,797
15,260
143
263
22,248
184
25,336
13,729
135
167
13,525
121
額
金
数
北 東 部
264
194
185
199
173
188
240
157
198
221
167
161
数
額
28,544
16,873
18,811
28,274
20,452
22,405
79,939
17,473
19,939
39,393
17,124
23,164
金
部
4.1
2,347 332,391
台
南
台
4,148
504
378
398
384
266
298
331
326
333
347
285
298
数
額
-3.0
708,777
78,044
62,320
61,286
98,399
43,201
42,262
73,084
52,908
55,292
52,152
41,309
48,520
金
中 西 部
米国の工作機械受注統計 (2003年)
出所:USMTC レポート(AMT/AMTDA)
前年比
年
12月
11月
10月
9月
8月
7月
6月
5月
4月
3月
2月
2003年1月
年
参考資料:3
台
額
35,737
55,423
26,268
30,054
22,761
25,359
24,219
24,275
24,961
29,927
12,357
16,288
金
部
-11.9
2,691 327,629
298
277
268
259
204
195
192
197
222
246
155
178
数
中
台
額
29,163
17,605
17,258
17,208
16,902
11,657
13,902
12,972
14,220
18,542
11,606
10,652
金
部
-15.3
1,839 191,687
254
194
181
167
118
129
134
125
155
172
113
97
数
西
金額単位:千ドル
- 69 -
27,919
20,525
ねじ切り盤
トランスファーライン
1,480
61.4
16.8
17.8
14.4
12.9
12.7
43.6
27.5
22.7
38.4
21.0
26.2
26.5
37.8
24.9
27.1
24.1
13.4
35.8
22.8
30.3
20.0
21.1%
6-10
11.1
60.5
43.7
64.6
60.8
60.8
18.7
20.2
60.0
63.8
79.9
32.0
68.1
51.2
69.9
64.8%
18.2%
15.5
17.4
2.6
21.7
18.9
21.3
13.1
10.6
19.2
18.7
13.7
15.3
18.0
24.8
14.8
13.8%
1-19
(年)
11 以上
経 過 年 数
44.6%
51.6
44.1
9.8
46.3
42.9
46.0
45.5
45.3
39.1
44.7
49.9
48.1
45.6
45.7
41.8
43.9%
20-99
27.1%
18.0
29.3
30.0
23.8
28.3
23.8
31.0
30.8
30.2
26.1
22.9
24.2
27.4
22.7
30.1
30.1%
10.2%
14.9
9.2
57.7
8.1
10.0
8.8
10.5
13.3
11.5
10.5
13.5
12.5
9.1
6.8
13.3
12.2%
100-499 500 以上
属
品
20.2%
24.9
22.7
13.1
35.3
25.8
17.7
14.9
32.7
17.8
18.7
11.1
15.6
23.0
22.2
18.2
17.4%
金
製
従 業 員 規 模 別 (人)
米国の工作機械設備統計
合
計
1,903,733
16.5%
25.6%
57.8%
出所:American Machinist 第 15 回設備調査 (1996 年)
ウォータージェット加工機
404,599
59,335
ねじ立て盤
盤
291,790
フライス盤
旋
154,838
54.9
9,903
マシニングセンタ
12.9
6.8
47,831
36,168
歯車加工機
32.2
12.1
35,994
EDM、ECM
9.1
18.5
10.1
14.1%
0-5
261,813
291,758
ボール盤
研削盤
ホーニング/ラップ/
仕上/ポリッシ盤
レーザー加工機、
熱切断機
147,401
金切り盤、のこ盤
29,254
(台)
ブローチ盤
名
83,125
種
総設備台数
中ぐり盤
機
参考資料:4
業
械
44.8%
21.6
43.5
30.0
30.0
30.2
46.6
51.8
37.6
45.1
50.9
52.4
54.1
38.9
42.7
48.3
48.0%
産
機
機
14.4%
21.8
13.5
2.1
14.7
21.2
16.1
11.2
15.1
11.0
13.2
6.9
13.5
17.1
16.0
11.4
14.0%
電
産
業
送
械
別
13.2%
20.3
13.1
54.1
13.2
13.7
10.8
15.2
9.7
16.9
11.3
24.3
11.3
12.2
10.1
19.0
15.3%
輸
機
密
械
7.4%
11.5
7.2
0.7
6.8
9.2
8.7
6.9
4.8
9.1
5.8
5.3
5.6
8.8
9.0
3.0
5.2%
精
機
参考資料:5
米国工作機械企業売上高ランキング (2000年)
(世界ランキング)
単位:百万ドル
世界順位
企
業
名
2000年
従業員数
5
UNOVA, Inc. (Western Atlas)
1,112.5
8,461
19
Ingersoll Milling Machine Co.
u391.7
u3,873
27
Haas Automation
328.8
894
32
Speedfam-Ipec, Inc.
274.0
1,020
33
Gleason Works
262.7
2,550
35
Goldman Industrial Group
238.0
1,100
56
Hardinge Brothers, Inc.
120.3
1,508
61
Minster Machine Co.
101.8
850
66
Allied Products Corp.
93.7
800
71
Esterline Technologies
86.0
u3,700
81
Hurco Companies, Inc.
71.7
292
82
Simmons Machine Tool Group
u71.2
u420
89
Textron Inc.
60.0
71,000
99
Cargill Detroit Corp.
u55.0
u390
152
Moore Tool Co. (PMT Group)+EJ9
u27.9
u430
163
Newcor Inc.
22.0
1,600
190
Huffman Corp.
16.1
98
出 所 : AMT Financial Bulletin “2000 Machine-Tool Scorecard
備 考 : 鍛 圧 機 械 メ ー カ ー を 含 む 。 u=前 年 か ら 未 修 正 。 従 業 員 数 は 工 作 機 械 部 門 以
外のものを含むことがある。
- 70 -
発
行 平成 年 月
発行者 社団法人 日
本 機 械 工 業 連 合 会
〒 東 京都港区芝公園三丁目 番 号
社団法人 日
〒 東 京都港区芝公園三丁目 番 号
電話 (
)
− 本 工 作 機 械 工 業 会
電話 (
)
− 
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