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復命書(PDF 388KB)

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復命書(PDF 388KB)
低出生体重児・発達障害児・児童虐待の支援(復命)
期間
平成 28 年 11 月 9 日(水)~11 日(金)
場所
エル・大阪 7 階 709 会議室
参加者 山鹿市健康増進課 保健師 中原 恵
1 日目
【 児童虐待の現状と予防的支援 】
才村 純 氏(関西学院大学人間福祉学部人間福祉研修科教授)
■虐待の基本
全国 208 ヶ所の児童相談所における平成 27 年度虐待相談対応件数は 103260 件で、その数は 25 年前
の 90 倍以上にのぼる。特にここ数年の増加は著しく、虐待の予防・早期発見は喫緊の課題と言える。相
談件数の増加には、①ポジティブな要因(虐待への関心の高まりによる発見・通告率の上昇)、②ネガテ
ィブな要因(虐待の増加)の両方が影響したと考えられるが、後者における保健・福祉分野の役割は重要
である。虐待に関する調査の結果、虐待増加には「子育て家庭の孤立」が大きく影響していることがわか
ってきた。子育てが苦手な保護者は昔からいたが、地域の“おせっかいおばさん”や祖父母の保護者支援、
保護者役割の代行によって子育てが成立していた。しかし、時代の変化(核家族化・祖父母世代の就労率
増加・晩婚による祖父母の高齢化等)に伴って地域における子育て支援機能や育児伝承機能が低下してお
り、地域保健師の「おせっかい型支援(訪問)」へのニーズと期待が高まっている。
■虐待に関する法律・制度
国家レベルにおいても虐待への関心は高まっており、平成 28 年 5 月の児童福祉法改正ではこれまで当
然のこととして考えられていた子どもの権利や親の責任について法文化された。また、平成 12 年の児童
虐待防止法制定を契機に、虐待通告・調査・リスクアセスメント・個別対応(保護、警察官の援助、面会
や通信制限、接近禁止命令等)といった一連の流れが円滑に進むよう制度の充実が図られている。要保護
児童対策地域協議会(以下 要対協)も虐待予防の中核を担う制度として多くの自治体で設置されている
が、国の虐待死事例のうち要対協で検討されていたのは約 2 割という現状であり、より効果的な運営に
向けて今後検討が必要である。
■虐待への対応
虐待対応でしばしば問題となるのが“虐待としつけの線引き”であるが、親の気分や子どもが理解しが
たい理由で罰せられることは虐待(感情的な対応)である。虐待の確証を求めすぎると対応が遅れてしま
うため、保護者がいかに親権を主張してもそれが子どもの利益のために行使されていない場合は虐待と
判断する。虐待が疑われる際は決して一人で抱え込まず、組織内・関係機関で協議を行う。
【 不妊症・不育症の基礎と治療の実際 】
中塚 幹也 氏(岡山大学大学院保健学研究科教授、岡山大学産婦人科 生殖医療担当医)
■不妊症
結婚した夫婦 6 組のうち 1 組は不妊症であり、晩婚化によってその割合は徐々に増加している。加齢
に伴って卵子も老化することがわかっており、40 歳女性の体外受精での生児獲得率は 10%以下、35 歳
でも 20%弱にとどまるのが不妊治療の現状である。稀ではあるが、卵巣過剰刺激症候群による血栓(特
に脳梗塞)
、麻酔事故や腹腔内出血・損傷等のリスクも伴う。また、1 回につき 30~50 万円の費用がかか
るため、妊娠を断念せざるを得ない夫婦も少なくない。先述した現状を不妊外来で初めて知って落胆され
る方も多く、避妊や性感染症に重点を置いたこれまでの思春期性教育を見直す時期が来たと感じている。
もちろん、これまでの教育内容が軽視されてはならないが、家族計画を立てる際に必要な正しい知識とし
て「妊よう性(妊娠のしやすさ)」についても取り上げられたい。
このように教育のあり方が見直されると同時に、全ての女性が妊娠のチャンスを得られる研究も進ん
でおり、日本の生殖医療にも変革が起きた。3 年前には日本の民間団体 OD-NET が卵子バンク(卵子機
能が低下した患者を対象に、第三者の健康な卵子を使って体外受精させ、妊娠を目指すもの)を開始して
話題となった。それを追うように「卵子凍結のガイドライン」が作られ、抗がん剤治療や加齢等によって
妊よう性の低下が予測される場合、事前の卵巣・卵子凍結が認められた(こうのとりマリーン基金:特に
白血病治療による妊よう性低下が予測される患者に対して、凍結や凍結卵子を使った体外受精の費用を
一部助成)このような生殖医療の発展でターナー症候群等で不妊に悩む夫婦を救うことが出来る一方、社
会的・倫理的な問題や晩婚化の助長効果が心配されており、その適応は慎重に審議されるべきである。
■不育症
流産は妊娠の約 15%に起こるとされているが、不育症に気づかず治療をしていないと、連続流産の可
能性は 32%、3 回連続は 61%、4 回連続は 86%と言われている。そのため、2 回連続で流産した場合は
不育症である可能性が否定できないとして、スクリーニング検査や予防療法等の医学的介入が望ましい。
不育症の原因については研究段階で原因不明が 6 割を占めるが、それ以外では抗リン脂質抗体が原因の
不育症が最も多く、低用量アスピリンとヘパリンの併用が標準治療となっている。今後、不育症分野にお
ける研究の発展と、実用的な流産予防法の確立が期待される。
2 日目
【 児童虐待の予防と発見 】
大場 エミ 氏(総合母子保健センター研修部長)
■子育て世代包括支援センターについて
平成 26 年虐待における死亡数は 44 人、心中 27 人との報告で、福祉分野はもちろん、母子保健分野で
も虐待が大きな課題となっている。母子保健で最近注目を集めているのは平成 32 年度末までに全国展開
が目指される「子育て世代包括支援センター」だが、ここにも虐待予防の役割が期待されている。 これ
までの子育て支援に“福祉の視点”を加えたかかわりが展開される予定だが、既存の支援センターや相談
事業とどのように役割を調整して整合性を保つのか明確でなく、今後検討が必要である。
■虐待予防と虐待防止、虐待する保護者の特徴について
・予防:結果を予測して悪化しないように支援し、プロセスを変えること(保健・医療)
・防止:虐待を水際で防ぐこと。虐待発生の際は速やかに安全確保する(福祉)
・保護者の特徴
訪問拒否、一方的な長電話、強い依存性、親しい相手への試し行動、共感・愛情を受けた経験の不足。
■精神疾患をもつ保護者へのかかわり
母子保健では産後ケアのニーズが高まっており、特に精神疾患を持つ保護者や産後うつの母親への支
援は欠かせない。このような保護者との面接では、効果的に面接時間を設定する(事前に自分が予定して
いる 10 分前を終了時刻と告げる。10 分延長したという形で話を聞くと満足感や信頼感が得られる)等、
次回に繋がりやすい対応が求められる。また、支援には精神疾患・愛着形成のこと等、日常業務では意外
と身につかない基礎知識を要するため、支援者の学習と力量形成が重要と言える。不安を抱えながら生活
する保護者の苦痛や寂しさに共感し、不安の軽減に努めることが、虐待予防にも繋がる。
【
医療機関における低出生体重児の看護 】
藤原 美由紀 氏(大阪府立母子保健総合医療センター新生児棟看護師)
■NICU 入院児と家族を結ぶケア
2500g 未満の出生児は低出生体重児と呼ばれるが、最近では体重より週数での分類が主流になってお
り、32~36 週で出生する早産児の増加が課題となっている。早産児には低体重やその他の理由で NICU
管理が必要な子も多く、母子分離による愛着形成不全のリスクが高まる。また、NICU に入院する児は生
命維持にエネルギーを使うため反応が乏しく、双方向のやりとりが困難な傾向にある。さらに、全ての子
に障害が残るわけではないが、合併症や後遺症による障害を持って生活していく子も少なくない。障害を
持った子が虐待を受けるリスクは通常の 4~10 倍高い。そのため、NICU では子どもの全身管理と同様
に子どもと家族を結ぶケアにも力を入れている。その第一段階として母子の直接的な接触(skin to skin)
に取り組まれており、早期における愛着形成支援が図られている。また、家族が子どもの微妙な動きや表
情を読み取り、そのリズムに合わせて声をかけるという交流が徐々にできるような支援(面会のタイミン
グでケアをする、子どもが目覚めるタイミングを事前に伝えておく等)を心がけている。このような関わ
り・経験の積み重ねが父性・母性の獲得、保護者の成長に繋がっていく。
■NICU の課題
子どもの出生数は減少している一方、低出生体重・高齢出産・妊婦のやせ・体外受精による子どもは増
加している。また、保護者の養育能力不足や保護者支援の不足が深刻化しており、子どもより自分が優
先、不安はあるが先の見通しを立てずに行き当たりばったりで対応するという人が増えてきた。核家族化
等によって乳幼児と接する機会や育児を手伝う経験が減少し、理想の出産・育児と現実のギャップについ
ていけない保護者も少なくない。このような現代の特徴から、生命維持医療の発展はもちろん、家族とふ
れあう時間の確保、地域との連携強化による切れ目のない支援が NICU の課題となっている。
【 発達障害児の早期発見と支援 】
高田 哲 氏(神戸大学大学院保健学研究科地域保健学領域教授)
発達障害者とは、発達障害を有するために日常生活または社会生活に制限を受ける者を言い、学習障
害、注意欠陥多動性障害、自閉症スペクトラム症(ASD)に代表される広汎性発達障害、その他の発達障
害に分類される。ASD はかつて、自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害と細分類され
ていたが、成長に伴う状態変化によって先述の 3 分類内で診断名が変わっていく子どもも多かった。そ
のため、ASD という新しい概念が作られ、これまでの細分類を ASD のある時期における状態として捉
えるようになった。ASD の子どもによく見られる随伴症状として睡眠障害が挙げられるが、早産児にも
同じような特徴がある。そのため、早産児には ASD が疑われる子が多いが、その睡眠障害は修正 24 ヶ
月頃にはほとんど消失する。
健診は子どもの発達障害を早期発見するひとつの機会であるが、年少頃までは親の心配や困り感が薄
く、サポートに繋がらないことも多い。また、行動上の問題がない子(特に知的障害)をフォローするの
は難しく、小学校にあがってから困り感が出てくる子も少なくない。以上のようなことを踏まえて 5 歳
児健診を取り入れる自治体も出てきた。いずれにしても、ある一点でその子全体を把握してフォローする
ことは難しいため、支援者間での“横の連携”はもちろん、ライフステージに応じた“縦の連携”が欠か
せない。
発達障害児支援におけるポイントは以下の 2 つである。
■子ども自身が自立する能力を身に付ける
“自立=全て一人で出来ること”ではなく、個性(長所・短所)を子ども自身が理解して、苦手な部分
は必要に応じて援助や専門家のアドバイスを求めて行動する社会・生活力を身に付けることである。例え
ば、人の話を聞くことが難しいなら、聞くフリの技術を身に付けるのもひとつのやり方である。やり方は
様々で誰にでも合うとは限らないが、合わないときもやってどうだったのかというフィードバックが重
要で、それが次のやり方に繋がる。子どもにとって、自分の個性やありのままの姿を認めてくれる相手、
信頼できる支援者は欠かせない存在であり、保健師も支援の輪を繋ぐという大きな役割を担っている。
■見通しを持った支援(講師の先生が取り組まれているプログラム)
発達障害を持つ子どもの保護者にとって、子どもが将来どのように生活するのか、どの部分で支援が必
要なのか見通しが立たないのは最も大きな不安要素である。そのため、発達障害児の合同イベントや様々
な体験教室を開催している。教室は子どもが親以外の人と遊ぶ機会、保護者が同じ立場の人たちと気持ち
や情報を共有する機会、支援者側が家族の気持ちを学ぶ機会となっている。特にスポーツ教室は、ルール
に従う経験・簡単な動きで成功体験を持つことができ、子どもにとってメリットが大きい(集団競技より
個人競技の方が無理なく楽しめる子が多い)また、保護者も上級生の姿から自分の子どもの将来像を描
き、見通しを持つことができるため、不安やストレスが軽減されるということがわかっている。しかし、
イベント型プログラムの効果は長続きせず、不安やストレスは再燃する。そのため、子どもが眠った時間
を利用した保護者会等、日常生活の中でも取り入れられるプログラムも平行して開催している。
3 日目
【 児童虐待における保健師活動 ~予防から支援まで~ 】
上野 昌江 氏(大阪府立大学看護学研究科地域看護学教授)
母子保健分野の大きな動きとして母子保健法の改正(平成 29 年 4 月公布)があり、これまでの母子・
障害保健活動に加えて、虐待の予防及び早期発見についても新たに明記された。虐待が及ぼす子どもへの
影響としては、①身体的影響(怪我、栄養障害)
、②知的発達への影響(安心できない環境で集中できな
い)
、③心理的影響(対人関係障害、多動、低い自己評価、PTSD、偽成熟、解離など)が挙げられる。虐
待相談件数は 3 歳から小学生の割合が圧倒的に多いが、虐待死亡例の 7 割以上は 0~3 歳児であり、保健
師が最もかかわる時期である。自分で言えない年齢の子どもたちを守るのは、保健・医療・福祉の役割で
あり、虐待予防(特に虐待死予防)に最善を尽くさなければならない。
予防においては、特に保護者への支援が重要であり、保健師による早期の効果的介入が求められる。そ
のため、気になる妊婦を妊娠から出産、育児まで継続フォローするシステムが整ってきたが、その中で保
健師がどのように動くと良いのか、システムから漏れていく人(母子手帳未発行等)をどうフォローして
いくのかという部分は今後検討が必要である。
虐待のリスク整理や家族パターンを把握する方法としてはジェノグラム・危機経路図を紹介された。家
族システムを図式化すると、どこに介入すべきなのか、どういう支援が必要なのか具体的に見えるように
なる。また、虐待が起こった事例の図式化も、いつ関わり方を変えるべきだったのか、危険徴候はいつご
ろからあったのか確認するのに役立つ。講義では事例を通した学習も行われた。
■近年の虐待の特徴
・加害者:圧倒的に実母が多いが、0 歳児においては父親の割合も高い。10 代、30 代後半の母親が多い。
・リスク:母子手帳未発行、健診未受診(妊婦・乳幼児)、望まない妊娠、自宅出産、予防接種未接種、
精神疾患を持つ保護者、自殺企図、連絡がつかない、夫婦不和、経済的不安、母親の夜間就労、
不法滞在外国人、保護者自身の被虐待歴・非行歴・犯罪歴。
【 グループワーク 】
グループには保健師の他に乳児院の保育士がおられ、今回の研修で関心があること、日常業務で困って
いること等を話し合った。それぞれの地域特性によって課題は様々で、宗教での短期的な参拝や転勤する
方が多い地域では、情報収集や対象者の把握に終われて充実したかかわりが出来ないとのことだった。ま
た、神戸の乳児院は一時保護で児童を預かる他、気分の落ち込みがある等育児が困難な母親が施設に直接
連絡し、保育園のような形で一時預かりをされており、そこで心配な家族に関しては保健センターへ情報
提供されているとのことだった。地域ごとの多様な支援の方法を学ぶことができた。
【 気になる子どもへの支援 】
式部 陽子 氏(奈良教育大学特別支援教育研究センター特任講師)
「気になる子ども」に明確な定義はないが、健診や集団活動等、様々な面で他の子と違った行動や感性
が見られる子どものことである。最近は、知的な遅れはあまりみられないが発達障害の特性が見られる
子、虐待や家庭環境の影響が見られる子が増えており、その対応や支援が課題となっている。定義が曖昧
であるため、フォローが必要な子かどうか判断に迷う支援者も多いが、支援者の“ん?”という感覚、こ
の違和感はだいたい当たっていることが多い。
子どもの年齢によって気になる部分は変わってくるが、乳幼児期だと“敏感さ・視線の合いにくさ・ク
レーン”
、就学前だと“集団活動ができない・集団での理解が難しい・興味がないものには集中できない”
等が挙げられる。このような子どもへの支援で有効なのは、気になることの具体化である(いつ・どのよ
うな時・どのようなことで・どうなるのか、誰にとってどれくらい困り事があるのか等)また、子どもの
「行動」には必ず意味があるため、そのメッセージを考えることが必要である。例えば、親の用事を待て
ずに泣きわめくという行動の原因として、家でやりたいことがある、他に何をして良いのかわからず困っ
ている、ただ待ちくたびれた等いくつか考えられるが、それを保護者がわかる、子どもが言えるようにな
ると事前の対応が可能になる。このように「気づき」を具体化すると自然と「支援」が見えてくる。
乳幼児支援で欠かせないのが保護者へのアプローチだが、支援の基本は傾聴と共感にある。子どもの障
害に対する肯定と否定を繰り返し、多くのエネルギーを費やして育児をしている保護者の思いを把握し、
子どものいいところをほめ、成長を共に喜ぶことが支援の第一歩である。保護者との信頼関係を築き、困
った子ではなく、
「自分も困っている子」という視点で支援を考えていく。また、支援者は保護者が変わ
ることに期待しすぎず、保護者が子どもの変化に注目できるように支援することが重要である。
【 産後うつの知識と母親への支援 】
玉木 敦子 氏(神戸女子大学看護学部看護学科教授)
平成 26 年統計で精神科治療を受ける日本人は 392 万人だったが、未治療の人や病気ではないが精神的
問題を抱える人を含めると、このデータは全体の 3 割程度にすぎないと推測されている(健康的なうつ
気分と病気でのうつ症状の境界線が曖昧であるため、本人も周りの人も気づかず、うつ病支援には困難を
要することが多い)このことからもわかるように、地域では多くの人が精神症状によって苦痛を感じ、生
活や対人関係に困難を感じていると言える。妊産婦に限って見ると、精神科で治療を行っていない妊婦の
うち約 10%が妊娠期・産褥期にうつ病を発症すると言われており、妊産婦のこころの問題は多岐に渡る。
また、妊産婦期の死因は自殺が最も多く、産婦人科においても精神疾患を持つ妊婦へのケアは喫緊の課題
である。精神面のフォローが必要な妊婦は、平成 28 年度診療報酬からハイリスク妊娠管理加算の対象と
なり、今後精神科と産婦人科連携がさらに進むことが期待される。
■産後うつ病
産後の抑うつエピソードの 50%は実際には出産前から始まっており、妊娠期からの早期支援や疾患の
早期発見は重要である。産後うつ病のスクリーニングとして EPDS が広く用いられているが、9 点以上
だった場合は以下のことを確認し、必要に応じて医療機関へ繋ぐことが必要である。
・希死念慮:聞きにくいがこれが一番大切。聞ける関係を築いておけると支援しやすい
・症状による生活への影響
・うつ病の中核症状の有無:2 週間以上抑うつ気分が続く、興味や喜びの減退
・支援者の確認:主観的に「誰もいない」→要注意、客観的に「誰もいない」→ハイリスク
■産後うつ病リスク因子
・強い関連(妊娠中のうつ、家族との死別・離婚、失業、ライフイベント、支援の欠如、うつ既往)
・中等度関連(神経質、妊娠中の婚姻関係)
・軽度関連(出産時の異常:妊娠高血圧・早産・帝王切開・吸引・大量出血)
■うつ状態にある母親の支援
うつは、脳が勝手に喜怒哀楽をシャットダウンしている状態であり、自分自身を守る正常な反応とも言
える(うつ≠心の問題→うつ=脳の疲れである)うつからの回復にはある程度時間がかかることを念頭に
おき、苦しみを抱えたまま生活・育児をしている母親の気持ちを受け止めながら長期的に支援していくこ
とが重要である。うつ病・うつ状態になった場合、可能であればきっぱり休む方が予後良好だが、生活を
していく上ではそれが困難な場合も多い。その場合は、あきらめるところ・支援者に頼るところ・自分で
やれているところを母親と一緒に確認することから始めると良い。ただ、母親の支援をする上で留意すべ
きは、安易に手を出して母親の自尊心を傷つけないことである。母親は“自分はこんなこともできないダ
メな母親”と自責の念を感じやすい状態にあるため、どこまで支援するのかの線引きはしっかり話し合っ
ておく必要がある。
【 感想 】
育児だけでなく生活自体が心配、虐待リスクを重なっている等、幅広い支援を要するケースが増えてい
るなと日常業務でも感じる中での参加でしたが、保健・医療・福祉(虐待・障害)それぞれの現状や課題
を知り、虐待予防や保護者支援がどの分野においても課題であること、虐待は身近でも起こり得るという
ことを再認識しました。また、今回の研修はこれまでの母子へのかかわりでどういう支援が不足していた
のか、困っている家族・ハイリスク対象者に今後こういうかかわりが出来るのではないか等、自分自身を
振り返る機会にもなりました。子どもの成長発達はもちろんですが、母子保健において保護者支援のニー
ズが高まっていることも意識し、保護者の不安や悩みに寄り添いながら、共に育児を考える関係性を築い
ていきたいと思います。このような研修の機会をいただき、ありがとうございました。
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